特許第6211039号(P6211039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211039
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの配索構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20171002BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   H02G3/04 062
   B60R16/02 620A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-177225(P2015-177225)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-55537(P2017-55537A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(74)【代理人】
【識別番号】100175536
【弁理士】
【氏名又は名称】陸名 智之
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 健太
(72)【発明者】
【氏名】足立 英臣
(72)【発明者】
【氏名】石原 義之
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−094619(JP,A)
【文献】 特開2006−310066(JP,A)
【文献】 特開2011−150991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体形状の外装部材と、該外装部材に挿通・保護される一又は複数本の導電路とを備えるワイヤハーネスの配索構造において、
配索先の形状に合わせて前記ワイヤハーネスを曲げて配索する部分を曲げ配索部分と定義するとともに、該曲げ配索部分同士の間を、ストレートに配索する部分と定義すると、該ストレートに配索する部分では、前記ワイヤハーネスの配索時に前記外装部材を蛇行させて、該外装部材の管内面と前記導電路とを接触させた状態にする
ことを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスの配索構造において、
前記配索先に対し前記ワイヤハーネスを固定するための固定部材を用いて前記外装部材の前記蛇行を維持する
ことを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体形状の外装部材と、この外装部材に挿通・保護される一又は複数本の導電路とを備えるワイヤハーネスの配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される機器間を電気的に接続するためにワイヤハーネスが用いられる。ワイヤハーネスは、管体形状の外装部材と、この外装部材に収容される一又は複数本の導電路とを備えて構成される。例えば下記特許文献1のワイヤハーネスにあっては、自動車の車両床下を通るように配索される。ワイヤハーネスは、車両床下に対応する部分がストレートに配索される。このようなワイヤハーネスは、長尺に形成される。尚、下記特許文献1では、特にストレートに配索される部分に関し次のようなことが分かる。すなわち、外装部材内の導電路が走行中の振動等により振れてしまうということが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−254614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、外装部材内の導電路が走行中の振動により大きく振れてしまうと、導電路の被覆が(シールド機能を有する場合、導電路外側の編組や金属箔が)外装部材の管内面に強く当たって損傷してしまうという問題点を有する。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、外装部材内での導電路の振れを抑制することが可能なワイヤハーネスの配索構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のワイヤハーネスの配索構造は、管体形状の外装部材と、該外装部材に挿通・保護される一又は複数本の導電路とを備えるワイヤハーネスの配索構造において、配索先の形状に合わせて前記ワイヤハーネスを曲げて配索する部分を曲げ配索部分と定義するとともに、該曲げ配索部分同士の間を、ストレートに配索する部分と定義すると、該ストレートに配索する部分では、前記ワイヤハーネスの配索時に前記外装部材を蛇行させて、該外装部材の管内面と前記導電路とを接触させた状態にすることを特徴とする。
【0007】
このような特徴を有する本発明によれば、導電路の振れが生じ易い部分において、外装部材を蛇行させてこの管内面と導電路とを接触させるような配索構造を採用することから、導電路と外装部材との相対的な振れを抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のワイヤハーネスの配索構造において、前記配索先に対し前記ワイヤハーネスを固定するための固定部材を用いて前記外装部材の前記蛇行を維持することを特徴とする。
【0009】
このような特徴を有する本発明によれば、例えば既存のクランプを用いてワイヤハーネスを配索先に固定することで外装部材の蛇行の状態も維持することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された本発明によれば、ワイヤハーネスの配索時に外装部材を蛇行させて外装部材の管内面と導電路とを接触させるような配索構造を採用することから、導電路の振れが生じ易い部分であっても、外装部材内での導電路の振れを抑制することができるという効果を奏する。
【0011】
請求項2に記載された本発明によれば、ワイヤハーネスを配索先に固定するための固定部材を用いて外装部材の蛇行の状態を維持することから、例えば既存のクランプを採用することで、部品を新設せずに導電路の振れを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ワイヤハーネスに係る図であり、(a)は高電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図、(b)は(a)とは別の低電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図である。
図2】本発明のワイヤハーネスの配索構造に係る図であり、(a)は曲げ配索部分とストレートに配索する部分とを示す模式図、(b)は(a)の矢印Aの方向から見た配索構造に係る図である。
図3図2の矢印Bの部分における作用の説明図であり、(a)は導電路が一本の場合の図、(b)は導電路が二本の場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ワイヤハーネスは、外装部材内での導電路の振れを抑制するために次のような配索構造を採用する。すなわち、外装部材に導電路を挿通した後、外装部材を蛇行させて外装部材の管内面と導電路とを接触させた状態にするような配索構造を採用する。この配索構造は、配索先の形状に合わせてワイヤハーネスを曲げて配索する部分を曲げ配索部分と定義するとともに、曲げ配索部分同士の間を、ストレートに配索する部分と定義し、このストレートに配索する部分が対象になる。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1はワイヤハーネスに係る図であり、(a)は高電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図、(b)は(a)とは別の低電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図である。また、図2は本発明のワイヤハーネスの配索構造に係る図であり、(a)は曲げ配索部分とストレートに配索する部分とを示す模式図、(b)は(a)の矢印Aの方向から見た配索構造に係る図である。さらに、図3図2の矢印Bの部分における作用の説明図であり、(a)は導電路が一本の場合の図、(b)は導電路が二本の場合の図である。
【0015】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車やエンジンで走行する一般的な自動車等であってもよいものとする)に配索されるワイヤハーネスに対し本発明を採用する。
【0016】
<ハイブリッド自動車1の構成について>
図1(a)において、引用符号1はハイブリッド自動車を示す。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給される。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載される。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載される(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0017】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス8(高電圧用のモーターケーブル)により接続される。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続される。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車両における(車体における)車両床下11に配索される。また、中間部10は、車両床下11に沿って略平行に配索される。車両床下11は、公知のボディ(車体)であるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔が形成される。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が水密に挿通される。
【0018】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続される。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段が電気的に接続される。また、ワイヤハーネス9とインバータユニット4は、前端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段を介して電気的に接続される。
【0019】
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを含んで構成される。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んで構成される。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成される。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成される。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化することによりなる。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能である。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないのは勿論である。
【0020】
図1(b)において、引用符号15はワイヤハーネスを示す。ワイヤハーネス15は、低圧の(低電圧用の)ものであって、ハイブリッド自動車1における自動車後部7の低圧バッテリー16と、自動車前部17に搭載される補器18(機器)とを電気的に接続するために備えられる。ワイヤハーネス15は、図1(a)のワイヤハーネス9と同様に、車両床下11を通って配索される(一例であり、車室側を通って配索されてもよいものとする)。
【0021】
図1(a)及び(b)に示す如く、ハイブリッド自動車1には、高圧のワイヤハーネス8、9及び低圧のワイヤハーネス15が配索される。本発明は、いずれのワイヤハーネスであっても適用可能であるが、代表例として低圧のワイヤハーネス15を挙げて以下に説明をする。
【0022】
<ワイヤハーネス15の構成について>
図1(b)において、車両床下11を通って配索される長尺なワイヤハーネス15は、ハーネス本体19と、このハーネス本体19の両端末にそれぞれ配設されるコネクタ20とを備えて構成される。また、ワイヤハーネス15は、これ自身を所定位置に配索するための固定部材(例えば後述するクランプ27等)と、図示しない止水部材(例えばグロメット等)とを備えて構成される。
【0023】
<ハーネス本体19の構成について>
図2において、ハーネス本体19は、外装部材21と、この外装部材21に収容保護される一本又は二本の導電路22(図3参照)とを備えて構成される。尚、導電路22の本数に関し、本実施例においては一本又は二本であるが、これは一例であるものとする(三本以上であってもよいものとする。複数本の場合、高圧のワイヤハーネス9を一緒にしてもよいものとする)。
【0024】
ハーネス本体19は、矢印Cの部分が特許請求の範囲に記載された曲げ配索部分、矢印Dの部分がストレートに配索する部分に相当するものとする。すなわち、曲げ配索部分Cは、車両取付形状(ワイヤハーネス配索先の形状。固定対象の形状)に合わせてワイヤハーネス15を曲げて配索する部分であり、ストレートに配索する部分Dは、曲げ配索部分C、C同士の間の配索部分(車両床下11に配索される部分)であるものとする。
【0025】
先ず、ハーネス本体19における外装部材21、導電路22について説明をし、次に、ワイヤハーネス15の製造及び本発明の配索構造について説明をする。
【0026】
<外装部材21について>
図2において、外装部材21は、樹脂成形にて一本の真っ直ぐな管体形状のものに形成される(使用前は真っ直ぐである。尚、樹脂製に限らず後述する蛇行が可能であれば金属製であってもよいものとする)。また、外装部材21は、本実施例において腹割きなしの形状に形成される。別な言い方をすれば、スリットのない形状に形成される(割チューブでない形状に形成される)。さらに、外装部材21は、断面円形状に形成される。
【0027】
このような外装部材21は、本実施例において、上記ストレートに配索する部分Dに対応する部分(ストレート配索対応部分23)が蛇腹管形状に形成される(後述する蛇行が可能であれば形状は特に限定されないものとする)。具体的には、ストレート配索対応部分23が周方向の蛇腹凹部及び蛇腹凸部を有するとともに、これら蛇腹凹部及び蛇腹凸部が管軸方向に交互に連続するようにな形状に形成される。この他、本実施例においては、曲げ配索部分Cに対応する部分(曲げ配索対応部分24)も蛇腹管形状に形成される。
【0028】
<導電路22について>
図2及び図3において、導電路22は、導電性を有する導体25と、この導体25の外側に設けられる絶縁性の絶縁体26とを備えて構成される。導体25は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により断面円形に形成される。導体25に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は円形(丸形)になる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。以上のような導体25は、この外面に絶縁性の樹脂材料からなる絶縁体26が押出成形される。
【0029】
絶縁体26は、熱可塑性樹脂材料を用いて導体25の外周面に押出成形される。絶縁体26の上記熱可塑性樹脂としては、公知の様々な種類のものが使用可能であるものとする。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの高分子材料から適宜選択される。
【0030】
<ワイヤハーネス15の製造について>
図2において、ワイヤハーネス15は、先ずハーネス本体19の部分が製造される。そして、次に端末の加工が施される。ハーネス本体19の部分は、真っ直ぐな状態の外装部材21の一端開口部から他端開口部に向けて導電路22を挿通することにより製造される。ワイヤハーネス15の製造後は、所定の荷姿に梱包されて車両組み立て工場まで運ばれる。そして、この後に車両所定位置に配索される。
【0031】
<本発明の配索構造について>
図2において、ワイヤハーネス15は、曲げ配索部分Cと低圧バッテリー16との間、及び、曲げ配索部分Cと補器18との間は従来同様の状態で配索される。また、曲げ配索部分C、C同士の間となる、ストレートに配索する部分Dでは、本発明を採用した状態に配索される。別な言い方をすれば、導電路22の振れが生じ易い車両床下11の部分では、本発明を採用した状態に配索される。本発明は、ワイヤハーネス15の配索に係る構造が特徴であって、次のような配索構造になる。
【0032】
すなわち、ストレートに配索する部分Dでは、外装部材21を例えば図2(b)に示すような状態に蛇行させて、この外装部材21の管内面と導電路22とを接触させるような状態の配索構造になる(例えば図2の矢印B及び図3の矢印Eで示すような箇所で上記接触が生じる)。本発明の配索構造では、上記接触により導電路22が保持されたような状態になり、その結果、導電路22と外装部材21との相対的な振れが抑制される。外装部材21の蛇行は、ワイヤハーネス15を所定位置に配索するためのクランプ27(固定部材)を例えば図示のように組み付けることにより維持される。
【0033】
<本発明の効果について>
以上、図1ないし図3を参照しながら説明してきたように、本発明によれば導電路22の振れが生じ易い部分、すなわちワイヤハーネス15をストレートに配索する部分Dを対象にして、外装部材21を蛇行させ且つこの外装部材21の管内面と導電路22とを接触させるような配索構造を採用することから、導電路22と外装部材21との相対的な振れを抑制することができる。これにより、導電路22の絶縁体26が外装部材21の管内面に強く当たって損傷してしまうのを防止することができる。また、導電路22がダメージを受けてしまうのを防止することができる(シールド機能を有する導電路の場合、編組や金属箔へのダメージを防止することができる)。
【0034】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1…ハイブリッド自動車、 2…エンジン、 3…モータユニット、 4…インバータユニット、 5…バッテリー、 6…エンジンルーム、 7…自動車後部、 8、9…ワイヤハーネス、 10…中間部、 11…車両床下、 12…ジャンクションブロック、 13…ハーネス端末、 14…シールドコネクタ、 15…ワイヤハーネス、 16…低圧バッテリー、 17…自動車前部、 18…補器、 19…ハーネス本体、 20…コネクタ、 21…外装部材、 22…導電路、 23…ストレート配索対応部分、 24…曲げ配索対応部分、 25…導体、 26…絶縁体、 27…クランプ(固定部材)、 C…曲げ配索部分、 D…ストレートに配索する部分、 E…接触が生じる箇所
図1
図2
図3