特許第6211044号(P6211044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211044
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】薬物含有中空粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/50 20060101AFI20171002BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20171002BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20171002BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20171002BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20171002BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20171002BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20171002BHJP
【FI】
   A61K9/50
   A61K47/38
   A61K47/10
   A61K47/32
   A61K47/34
   A61K47/36
   A61K47/42
【請求項の数】7
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2015-221708(P2015-221708)
(22)【出願日】2015年11月12日
(62)【分割の表示】特願2014-531644(P2014-531644)の分割
【原出願日】2013年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-29097(P2016-29097A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2012/071016
(32)【優先日】2012年8月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】大日本住友製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】木挽 光昭
(72)【発明者】
【氏名】落合 康
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−130214(JP,A)
【文献】 特開平02−096516(JP,A)
【文献】 特開昭63−150220(JP,A)
【文献】 特開2003−096108(JP,A)
【文献】 特開2004−002582(JP,A)
【文献】 特開2012−056859(JP,A)
【文献】 特表2011−518234(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/019043(WO,A1)
【文献】 川島 嘉明,コントロールリリース基剤としての微粉化低置換度ヒドロキシプピルセルロース(L-HPC)の湿式造粒による徐放,粉体工学会誌,1992年,vol.29, no.6,p.456-459
【文献】 三宅由子,口腔内速崩錠の製剤設計−崩壊剤のスクリーニング−,三重県工業研究所研究報告,2010年,vol.34,p.30-37
【文献】 三宅由子,口腔内速崩錠の製剤設計(第2報)−ロータリー打錠機による錠剤成形とキャッピング防止(撹拌造粒法)−,三重県工業研究所研究報告,2011年,vol.35,p.22-27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル及び中空部からなる粒子であって、シェルが薬物と高分子を含み、粒子全体に対する中空の体積比率が1%〜50%であり、シェル厚みが15μm以上である中空粒子の製造方法であって、薬物と高分子を含む粉末状の混合物に高分子を溶解し得る溶媒を噴霧しながら、造粒する工程を含むことを特徴とし、粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物の平均粒子径に対して5倍以上である、製造方法(但し、高分子として、分散液の状態のものを使用する場合は、該高分子は、粉末にした後、粉末として用いる。)
【請求項2】
シェル及び中空部からなる粒子であって、シェルが薬物と高分子を含み、粒子全体に対する中空の体積比率が1%〜50%であり、シェル厚みが15μm以上であり、原料として用いる高分子の平均粒子径が、原料として用いる薬物の平均粒子径に対して5倍以上であるか、又は、シェルがさらに他の添加剤を含み、原料として用いる高分子の平均粒子径が、原料として用いる薬物又は薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径に対して5倍以上である、中空粒子の製造方法であって、薬物、高分子及び他の添加剤を含む粉末状の混合物に高分子を溶解し得る溶媒を噴霧しながら、造粒する工程を含むことを特徴とし、粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径に対して5倍以上である、製造方法(但し、高分子として、分散液の状態のものを使用する場合は、該高分子は、粉末にした後、粉末として用いる。)
【請求項3】
高分子が、水溶性高分子、水不溶性高分子、腸溶性高分子、胃溶性高分子及び生分解性高分子からなる群から選択される一種又は二種以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
水溶性高分子が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、コポリビドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、α化デンプン、デキストリン、デキストラン、プルラン、アルギン酸、ゼラチン、ペクチン、及びそれらの一種又は二種以上の混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
水不溶性高分子が、エチルセルロース、酢酸セルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、酢酸ビニル樹脂、及びそれらの一種又は二種以上の混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
腸溶性高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸−アクリル酸n−ブチルコポリマー、及びそれらの一種又は二種以上の混合物からなる群から選択される、請求項3記載の製造方法。
【請求項7】
造粒が、攪拌造粒である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物を含有する中空粒子、具体的には、薬物を主成分として壁(シェル)部分に含有する中空粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
固形医薬品製剤においては、一般的に、薬物のみ、又は薬物と他の製剤化成分を混合して、造粒して薬物含有粒子を製造し、その後、他の成分と混合、他の造粒物と混合、又は他の成分を加えてさらに造粒等を行い、打錠して錠剤にしたり、顆粒剤にしたり、カプセルにつめてカプセル剤にしている。
【0003】
さらに、所望の部位で所望の時間により薬物を吸収させ、所望の薬効を得るためには、上記の薬物含有粒子そのものに、腸溶性、胃溶性等、所望の機能性を付与させるか、さらに、その上に所望の機能を付与できる処理を行う必要があった。
この薬物含有粒子に機能を付与することによって、より有効な治療を施すことが可能となるが、固形医薬品製剤として最も一般的な錠剤にするためには薬物含有粒子が打錠工程で機能を損なわない程度に壊れないような強度を有する必要がある。しかしながら、水溶性、胃溶性、腸溶性等の機能を付与した薬物含有粒子において所望の部位での適切な溶出を保持しつつ、粒子の強度を上げるということを同時に解決することは容易ではなかった。
また、口腔内崩壊錠であれば、さらに口腔内でのザラツキがないような粒子径を制御した薬物含有粒子が必要である。また、カプセル剤であれば、薬物含有粒子が所定量封入されるような流動性を有する必要がある。
また、一般的に、核粒子に薬物をコーティングして薬物含有粒子を製造する方法も知られている。製剤の小型化のためには薬物含有率の高い粒子が要望されるが、核粒子に薬物をコーティングして薬物含有粒子を製造する方法では、薬物のコーティングに時間がかかる、得られた粒子が大きくなる、十分な薬物高含有率が得られない等の課題があった。
【0004】
所望の機能を付与するためには、例えば一般的な流動層造粒機(転動流動層造粒機、ワースター型流動層造粒機等を含む)や整粒解砕機構付複合型流動層造粒機等を用い、薬物のみ、あるいは薬物と他の添加剤の混合物を、腸溶性、胃溶性等の機能性添加剤でコーティングする方法、あるいは、事前に製造した薬物含有粒子を、機能性添加剤でコーティングする方法が挙げられる。しかしながら、この方法でコーティングされた薬物含有粒子の強度は一般的に低く脆い、形状は多核状となるため表面に凹凸が多く、流動性が低くなるという課題があった。
【0005】
また、一般的な攪拌造粒機を用い、薬物のみ、あるいは薬物と他の添加剤の混合物に、多量の機能性高分子などの機能性添加剤を攪拌造粒機で混合しながら、結合剤の溶液を添加し、造粒する方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、一般的に所望の機能性を有した薬物含有粒子を得るためには、機能性添加剤の必要量が多くなり、薬物含有率の高い粒子が作製できないうえ、得られる粒子の個々は均質ではない。また、攪拌造粒は通常圧縮しながら造粒する機構であるが故に、密度の高い薬物含有粒子が得られ、密度が高すぎるため、その後他の添加剤と混合し打錠する際に混合均一性に課題がある。さらに、一般的に薬物含有粒子の粒度制御が困難であるという課題があった。また、該方法において機能性添加剤として水溶性高分子を用いた場合には薬物含有粒子の崩壊が遅く、薬物の溶出が遅延するという課題があった。
【0006】
その他の手法として、核粒子に薬物又は薬物含有組成物をコーティングし薬物含有粒子を作製した上で、さらに機能性添加剤をコーティングする方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、コーティングする工程がさらに増えることで作業時間が非常に長くなり、コストが高くなる。また、核粒子上に薬物層及び機能性添加剤層が積層されるために薬物含有粒子の粒子径は大きくなるという課題があった。
【0007】
特許文献1では、その後に放出制御のためのコーティングをすることを目的として、溶媒を保持する性質を有する賦形剤粉末と薬物粉末を含む混合物に、結合剤の溶液を添加し、高速転動造粒することを特徴する平均粒子径200μm以下の球形微粒子の製法を開示している。該方法によれば、放出制御の機能性を有させるためには、その後にコーティング等を行う必要があることが記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、単核状粒子を製造する方法が開示されている。具体的には、有効成分としての薬物及び/又は結合剤を含む水溶液を、液体窒素中に滴下することにより得られた粒状物について、流動層造粒機にて賦形剤又は/及び薬物を含有することもある粉体を氷の解凍温度以上の温度で混合し、又は流動させながら解凍造粒しつつ共存する粉体を付着させて中空の球形粒子を製造する方法が記載されている。しかし、この特許文献中の製造装置に関する記載には、『造粒時に大きな衝撃が掛からず粉体と凍結した粒状物を均一に混合できるような装置であればよい。ここで大きな衝撃とは、造粒物が壊れない程度の衝撃をいう。』とあるように、この記載の方法では造粒物が壊れないような製造装置が必要であることから造粒物の強度に課題がある。さらに、この記載の方法では液体窒素に滴下して粒状物を製造し、そこに粉体を付着させるため、大きさとしては氷の粒状物の大きさに起因し、0.5mm〜10mmの大きさのものが製造されるため、通常使用される粒子よりも大きく、また、該方法によれば、造粒に水溶性高分子しか使用できないので、放出制御の機能性を有させるためにはその後にコーティング等を行う必要があることが記載されている。
【0009】
特許文献3には、薬物、水溶性高分子、及び、糖又は糖アルコールの成分を含み、各成分を造粒して、粒子化してなる薬物含有粒子を開示している。具体的には、薬物、D−マンニトール、ポリビニルピロリドンを高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーターに仕込み、精製水を噴霧し、造粒した粒子が開示されている。
特許文献4には、核と核を被覆する膜層から構成され、該核中には不快な味の薬物及び水膨潤性物質が少なくとも含有されていると開示されている。具体的には薬物、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乳糖水和物、ヒドロキシプロピルセルロースを高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーターに仕込み、95%エタノール溶液を滴下し、造粒した核(粒子)が開示されている。
非特許文献1には、口腔内速崩壊錠の製造に適した崩壊剤の選定を目的として、アセトアミノフェン、マンニトール、崩壊剤を攪拌混合し、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を添加して攪拌造粒する錠剤成形用顆粒の調製方法が記載されている。具体的には薬物、D−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを高速攪拌型造粒機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロースを精製水に溶解させた造粒液を滴下し、造粒した顆粒(粒子)が記載されている。
しかし、特許文献3、4、非特許文献1に具体的に記載された原料及び方法で製造した粒子は、後述の比較例で示すように、いずれも中空粒子ではなかった。
【0010】
このように、薬物含有粒子の強度と機能性を付与することを同時に満足させることは容易ではなかった。また、所望の粒子径を有し、流動性がよく、薬物含有率を高くすることが可能であり、粒子の均質性に優れ、他の成分との混合均一性がよい粒子を簡便に製造することも、知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−128774号
【特許文献2】特開2000−72660号
【特許文献3】国際公開第2011/019043号
【特許文献4】特開平3−130214号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】三重県工業研究所研究報告,2010,Vol.34,pp.30−37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
打錠やコーティング等に耐えうる十分な強度を有し、所望の部位で溶出制御できるなど所望の機能性を付与された薬物含有粒子を簡便に得る技術が望まれている。また、所望の粒子径を有し、流動性がよく、薬物含有率を高くすることが可能であり、粒子の均質性に優れ、他の成分との混合均一性がよい粒子を簡便に製造する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、薬物粉末と高分子、特に所望の機能性を有する高分子を粉末混合し、高分子を溶解させることができる溶媒を噴霧しながら攪拌造粒するという非常に簡便な手段により、十分な粒子強度を有し、粒子自体の良好な崩壊性や所望の部位での溶出制御等の高分子の機能を発揮できる薬物含有粒子を効率よく製造しうることを見出し、本発明を完成した。そして、該粒子が中空構造を有することを見出した。また、本発明によれば、薬物含有粒子の粒子径と粒度分布幅を任意にコントロールでき、目的に応じた粒子を簡便に製造することができることも見出した。さらに、本発明によれば、流動性がよく、薬物含有率を高くすることが可能であり、粒子の均質性に優れ、他の成分との混合均一性がよい粒子を製造することができることも見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、以下のものに関する。
[1]シェル及び中空部からなる粒子であって、シェルが薬物と高分子を含み、粒子全体に対する中空の体積比率が1%〜50%である、中空粒子(本明細書において「本発明の薬物含有粒子」とも称する。)。
[2]薬物と高分子を含む組成物からなる壁で中空部が包囲された構造を有する粒子であって、粒子全体に対する中空の体積比率が1%〜50%である、中空粒子。
[3]薬物と高分子を含有する中空構造を有する粒子であって、粒子全体の体積に対する中空の体積比率が4%〜50%の中空粒子。
ここで、「シェル及び中空部からなる粒子であって、シェルが薬物と高分子を含む」中空粒子と「薬物と高分子を含む組成物からなる壁で中空部が包囲された構造を有する粒子である」中空粒子と「薬物と高分子を含有する中空構造を有する粒子である」中空粒子(又は、「薬物と高分子を含有する中空構造を有する粒子」)はすべて同義である。
[4]シェル厚み(又は壁厚み)が15μm以上である、上記[1]又は[2]に記載の中空粒子。
[5]中空部(又は中空構造)の直径が10μm以上である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の中空粒子。
[6]原料として用いる高分子の平均粒子径が、原料として用いる薬物の平均粒子径に対して5倍以上である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の中空粒子。
[7]原料として用いる高分子の平均粒子径が、原料として用いる薬物の平均粒子径に対して10倍以上である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の中空粒子。
[8]原料として用いる高分子の平均粒子径が、原料として用いる薬物の平均粒子径に対して15倍以上である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の中空粒子。
[9]原料として用いる高分子の平均粒子径が、原料として用いる薬物の平均粒子径に対して25倍以上である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の中空粒子。
[10]中空粒子100重量%あたりの薬物の含有量が0.1〜96重量%である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の中空粒子。
[11]中空粒子100重量%あたりの高分子の含有量が4〜50重量%である、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の中空粒子。
[12]高分子が、水溶性高分子、水不溶性高分子、腸溶性高分子、胃溶性高分子及び生分解性高分子からなる群から選択される一種又は二種以上である、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の中空粒子。
[13]高分子が、水溶性高分子を含む、上記[12]記載の中空粒子。
[14]高分子が、水不溶性高分子、腸溶性高分子、胃溶性高分子及び生分解性高分子からなる群から選択される一種又は二種以上である、上記[12]記載の中空粒子。
[15]水溶性高分子が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、コポリビドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、α化デンプン、デキストリン、デキストラン、プルラン、アルギン酸、ゼラチン、ペクチン、及びそれらの一種又は二種以上の混合物からなる群から選択される、上記[12]又は[13]に記載の中空粒子。
[16]水不溶性高分子が、エチルセルロース、酢酸セルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、酢酸ビニル樹脂、及びそれらの一種又は二種以上の混合物からなる群から選択される、上記[12]又は[14]に記載の中空粒子。
[17]腸溶性高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸−アクリル酸n−ブチルコポリマー、及びそれらの一種又は二種以上の混合物からなる群から選択される、上記[12]又は[14]に記載の中空粒子。
[18]胃溶性高分子が、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、及びそれらの一種又は二種以上の混合物からなる群から選択される、上記[12]又は[14]に記載の中空粒子。
[19]生分解性高分子が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの共重合体、コラーゲン、キチン、キトサン、及びそれらの一種又は二種以上の混合物からなる群から選択される、上記[12]又は[14]に記載の中空粒子。
[20]シェル(又は壁)を構成する組成物がさらに他の添加剤を含む、上記[1]〜[19]のいずれかに記載の中空粒子。
[21]他の添加剤が、賦形剤、結合剤、甘味剤、矯味剤、矯臭剤、香料、流動化剤、帯電防止剤、着色剤、崩壊剤、滑沢剤、可塑剤、凝集防止剤及びコーティング剤からなる群から選択される、上記[20]記載の中空粒子。
[22]他の添加剤が、賦形剤、結合剤、甘味剤、矯味剤、矯臭剤、香料、流動化剤、帯電防止剤、着色剤及びコーティング剤からなる群から選択される、上記[20]記載の中空粒子。
[23]原料として用いる他の添加剤の平均粒子径が、原料として用いる高分子の平均粒子径に対して1/5以下である、上記[20]〜[22]のいずれかに記載の中空粒子。
[24]原料として用いる他の添加剤の平均粒子径が、原料として用いる高分子の平均粒子径に対して1/10以下である、上記[20]〜[22]のいずれかに記載の中空粒子。
[25]原料として用いる他の添加剤の平均粒子径が、原料として用いる高分子の平均粒子径に対して1/15以下である、上記[20]〜[22]のいずれかに記載の中空粒子。
[26]原料として用いる他の添加剤の平均粒子径が、原料として用いる高分子の平均粒子径に対して1/25以下である、上記[20]〜[22]のいずれかに記載の中空粒子。
[27]原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径が、原料として用いる高分子の平均粒子径に対して1/5以下である、上記[20]〜[22]のいずれかに記載の中空粒子。
[28]原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径が、原料として用いる高分子の平均粒子径に対して1/10以下である、上記[20]〜[22]のいずれかに記載の中空粒子。
[29]原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径が、原料として用いる高分子の平均粒子径に対して1/15以下である、上記[20]〜[22]のいずれかに記載の中空粒子。
[30]原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径が、原料として用いる高分子の平均粒子径に対して1/25以下である、上記[20]〜[22]のいずれかに記載の中空粒子。
[31]中空粒子のアスペクト比が、1.0〜1.5である、上記[1]〜[30]のいずれかに記載の中空粒子。
[32]中空粒子の粒子シェル強度(又は粒子壁強度)が、2.0MPa以上である、上記[1]〜[31]のいずれかに記載の中空粒子。
[33]中空粒子の粒子シェル強度(又は粒子壁強度)が、3.0MPa以上である、上記[1]〜[31]のいずれかに記載の中空粒子。
[34]上記[1]〜[33]のいずれかに記載の中空粒子を複数含有する医薬組成物。
[35]中空粒子の粒度分布幅(D90/D10)が6以下である、上記[34]記載の医薬組成物。
[36]中空粒子の平均粒子径が50〜1000μmである、上記[34]又は[35]に記載の医薬組成物。
[37]中空粒子の平均粒子径が50〜500μmである、上記[34]又は[35]に記載の医薬組成物。
[38]顆粒剤、錠剤又はカプセル剤のいずれかの形態である、上記[34]〜[37]のいずれかに記載の医薬組成物。
[39]錠剤の形態である、上記[38]記載の医薬組成物。
[40]薬物と高分子を含む粉末状の混合物に高分子を溶解し得る溶媒を噴霧しながら、造粒する工程を含むことを特徴とする、上記[1]〜[5]及び[12]〜[19]のいずれかに記載の中空粒子の製造方法。
[41]造粒が、攪拌造粒である、上記[40]記載の製造方法。
[42]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物の平均粒子径に対して5倍以上である、上記[40]又は[41]に記載の製造方法。
[43]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物の平均粒子径に対して10倍以上である、上記[40]又は[41]に記載の製造方法。
[44]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物の平均粒子径に対して15倍以上である、上記[40]又は[41]に記載の製造方法。
[45]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物の平均粒子径に対して25倍以上である、上記[40]又は[41]に記載の製造方法。
[46]粉末状の混合物が、薬物と高分子以外の他の添加剤をさらに含む、上記[40]〜[45]のいずれかに記載の製造方法。
[47]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物及び/又は他の添加剤の平均粒子径に対して5倍以上である、上記[46]記載の製造方法。
[48]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物及び/又は他の添加剤の平均粒子径に対して10倍以上である、上記[46]記載の製造方法。
[49]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物及び/又は他の添加剤の平均粒子径に対して15倍以上である、上記[46]記載の製造方法。
[50]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物及び/又は他の添加剤の平均粒子径に対して25倍以上である、上記[46]記載の製造方法。
[51]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径に対して5倍以上である、上記[46]記載の製造方法。
[52]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径に対して10倍以上である、上記[46]記載の製造方法。
[53]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径に対して15倍以上である、上記[46]記載の製造方法。
[54]粉末状の混合物中の高分子の平均粒子径が、薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径に対して25倍以上である、上記[46]記載の製造方法。
[55]他の添加剤が、賦形剤、結合剤、甘味剤、矯味剤、矯臭剤、香料、流動化剤、帯電防止剤、着色剤、崩壊剤、滑沢剤、可塑剤、凝集防止剤及びコーティング剤からなる群から選択される、上記[46]〜[54]のいずれかに記載の製造方法。
[56]他の添加剤が、賦形剤、結合剤、甘味剤、矯味剤、矯臭剤、香料、流動化剤、帯電防止剤、着色剤及びコーティング剤からなる群から選択される、上記[46]〜[54]のいずれかに記載の製造方法。
[57]薬物と高分子を含む粉末状の混合物に高分子を溶解し得る溶媒を噴霧しながら、造粒する工程を含むことを特徴とする、中空粒子の製造方法。
[58]薬物と高分子を含む粉末状の混合物に高分子を溶解し得る溶媒を噴霧しながら、造粒することによって得られる中空粒子。
[59]薬物と高分子を含む粉末状の混合物に高分子を溶解し得る溶媒を噴霧しながら、造粒することによって得られる上記[1]〜[33]のいずれかに記載の中空粒子。
【発明の効果】
【0016】
本発明の薬物含有粒子は、十分な強度を有するため、打錠やコーティング等の加工も容易に行うことができる。また、添加する高分子によって所望の機能性(例えば、速崩性、速溶性、腸溶性、胃溶性、徐放性、苦味マスク等)を有することができるので、より簡便に製剤への応用ができ、所望の部位で所望の時間により薬物を吸収させ、所望の薬効を得る製剤が提供可能となる。さらに、高分子の粒子径、粒度分布を選択することで、薬物含有粒子の粒子径と粒度分布幅を任意にコントロールできるので、目的に応じた粒子を容易に製造することが可能である。
本発明の薬物含有粒子は、薬物の割合を増やすことで、薬物を高含有率で含む粒子も製造可能となることから、製剤の小型化が可能であり、製剤の服用性改善につながる。また、本発明によれば真球度が高い薬物含有粒子を製造することが可能であり、真球度が高い本発明の薬物含有粒子は、薬物の流動性不良を改善し、任意の粒子径や粒度分布幅で、少量であっても精度良くカプセル充填することが可能であるうえ、粒子の均質性に優れていることからカプセルへの少量充填であってもカプセルごとの品質にばらつきが生じにくく、医薬品の初期臨床開発において、用量が大きく異なる製剤を提供する時に、任意の用量のものを簡便に供給することが可能である。
また、本発明の粒子は中空を有しているため、その中空の割合を変化させることで消化管内の移動速度を変化させることができる。さらに粒子密度を適切に制御できるため、本発明の粒子と他の添加剤と混合し打錠する際に、混合均一性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1-1】図1−1は、実施例1−1における、化合物A90%球形粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図1-2】図1−2は、実施例1−2における、化合物B90%球形粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図1-3】図1−3は、実施例1−3における、化合物C90%球形粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図1-4】図1−4は、実施例1−4における、化合物D90%球形粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図1-5】図1−5は、実施例1−5における、化合物E90%球形粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図1-6】図1−6は、実施例1−6における、化合物F90%球形粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図1-7】図1−7は、実施例1−1における、化合物A90%球形粒子の断面を示す、電子顕微鏡写真である。
図1-8】図1−8は、実施例1−3における、化合物C90%球形粒子の断面を示す、電子顕微鏡写真である。
図1-9】図1−9は、実施例1−4における、化合物D90%球形粒子の断面を示す、電子顕微鏡写真である。
図1-10】図1−10は、実施例1−6における、高分子(ヒドロキシプロピルセルロース)の粒度分布と薬物含有粒子の粒度分布との関係を示す図である。
図2-1】図2−1は、実施例2−1における、化合物A含有球形粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図2-2】図2−2は、実施例2−2における、化合物A含有球形粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図2-3】図2−3は、実施例2−1における、化合物A含有球形粒子の断面を示す、電子顕微鏡写真である。
図2-4】図2−4は、実施例2−2における、化合物A含有球形粒子の断面を示す、電子顕微鏡写真である。
図2-5】図2−5は、実施例2−3における、化合物A含有球形粒子の断面を示す、電子顕微鏡写真である。
図3図3は、実施例3−5における、化合物A含有球形粒子のX線CT画像である。
図4図4は、実施例5−3における、錠剤中の化合物A含有粒子の断面を示す、電子顕微鏡写真である。
図5図5は、比較例1における、薬物含有粒子のX線CT画像である。
図6-1】図6−1は、高分子として乾燥メタクリル酸コポリマーLDを用いた比較例2−1、2−2、実施例3−7における、化合物A含有球形粒子の溶出試験第2液中での溶出率を示す図である。
図6-2】図6−2は、高分子としてアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを用いた比較例2−1、2−3、実施例6−2における、化合物A含有球形粒子の溶出試験第2液中での溶出率を示す図である。
図6-3】図6−3は、高分子としてアミノアルキルメタクリレートコポリマーRSを用いた比較例2−1、2−4、実施例6−3における、化合物A含有球形粒子の溶出試験第2液中での溶出率を示す図である。
図6-4】図6−4は、高分子としてヒドロキシプロピルセルロースを用いた比較例2−1、2−5、実施例6−4における、化合物A含有球形粒子の溶出試験第2液中での溶出率を示す図である。
図6-5】図6−5は、高分子としてアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを用いた比較例2−1、2−3、実施例6−2における、化合物A含有球形粒子の溶出試験第1液中での溶出率を示す図である。
図7図7は、種々の高分子を用いた実施例7−1、7−2、7−3、7−4における、化合物G含有球形粒子の溶出試験第2液中での溶出率を示す図である。
図8-1】図8−1は、実施例8−1における、化合物A含有球形粒子の粒度分布を示す図である。
図8-2】図8−2は、実施例8−1における、化合物A含有球形粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図9-1】図9−1は、比較例3−1における、薬物含有粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図9-2】図9−2は、比較例3−1における、薬物含有粒子の断面を示す、電子顕微鏡写真である。
図9-3】図9−3は、比較例3−2における、化合物A含有粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図9-4】図9−4は、比較例3−2における、化合物A含有粒子のX線CT画像である。
図9-5】図9−5は、比較例3−3における、薬物含有粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図9-6】図9−6は、比較例3−3における、薬物含有粒子のX線CT画像である。
図10-1】図10−1は、実施例9−1における、化合物A含有粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
図10-2】図10−2は、実施例9−2における、化合物A含有粒子の外観を示す、電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき、さらに詳しく説明する。
【0019】
本発明の薬物含有粒子は、薬物と高分子を必須の構成要素とする。また、該粒子は粒子1個及び複数の粒子の集合物の両方を意味する。
本発明において『平均粒子径』とは、粉体粒子の体積基準測定における累積50%粒径D50を意味する。かかる平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、パウレック社製、Particle Viewer又は島津製作所社製、SALD−3000J又はSympatec社製HELOS&RODOS)で体積基準により測定する。
(i)薬物
薬物としては、特に限定されることなく、使用することができる。本発明の方法に用いられる『薬物』とは、塩基性、酸性、両性、中性などの性質、溶解度を問わず、どのような薬物、化合物でも用いることができる。その中で、安定性や取り扱い易さの観点から、結晶性であることが好ましい。また、薬物は一種又は二種以上を混合して用いても良い。本発明の粒子は、薬物が溶解性の低いものにも効果を発揮する。例えば、高分子として、下記水溶性高分子を用いた場合には、速崩性、速溶性を発揮することができる。
本発明における原料として用いる薬物の平均粒子径は、小さい方がより表面の滑らかな薬物含有粒子を得ることができる。好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下である。薬物の平均粒子径 は、通常0.1μm以上である。
本発明において薬物の平均粒子径は、原料として上記の範囲であればよく、薬物含有粒子の製造過程等で変化してもよい。
【0020】
薬物は、必要に応じ、粒子を製造する前に、所望の粒子径に粉砕してもよい。粉砕は微粉砕機を用いる粉砕等の慣用法で行われるが、非常に細かい粒子(平均粒子径1μm以下)であっても良い。薬物の含有率は任意に設定できるが、好ましい薬物の使用量は、作製される薬物含有粒子(中空粒子)100重量%あたり96重量%以下、好ましくは94重量%以下、より好ましくは92重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。具体的には、薬物含有粒子100重量%あたり0.1〜96重量%、好ましくは0.1〜95.9重量%、より好ましくは、1〜94重量%、さらに好ましくは5〜92重量%、もっとも好ましくは10〜90重量%である。
本発明においては、薬物を、低含有率で含む粒子のみならず、高含有率(例えば薬物含有粒子100重量%あたり50〜96重量%、好ましくは70〜96重量%、さらに好ましくは90〜96重量%)で含む粒子を製造することも可能である。低含有率で含む場合には、下記に記載の、その他の添加剤、好ましくは、溶媒に溶解されない添加剤を混合することで、製造することができる。
【0021】
(ii)高分子
本発明における『高分子』とは、相対分子質量の大きい分子で、相対分子質量の小さい分子の多数回の繰り返しで構成された構造を有するものをいい、特に機能性高分子を指す。前記「相対分子質量の大きい分子」とは、平均分子量(重量平均分子量)が通常1000以上のものを指し、好ましくは5000以上のものを指し、さらに好ましくは10000以上のものを指す。また、分子量の上限は特に規定はないが、好ましくは10000000以下、より好ましくは5000000以下、さらに好ましくは2000000以下、特に好ましくは1000000以下のものを指す。機能性高分子の例としては、水溶性高分子、水不溶性高分子、腸溶性高分子、胃溶性高分子、大腸ターゲティングに用いられるようなキトサン等の生分解性高分子が挙げられ、好ましくは水溶性高分子、水不溶性高分子、腸溶性高分子、胃溶性高分子が挙げられる。高分子は、一種又は二種以上を混合して用いても良い。
【0022】
水溶性高分子としては、例えば、メチルセルロース(例、商品名:SM−4、SM−15、SM−25、SM−100、SM−400、SM−1500、SM−4000、60SH−50、60SH−4000、60SH−10000、65SH−50、65SH−400、65SH−4000、90SH−100SR、90SH−4000SR、90SH−15000SR、90SH−100000SR)、ヒドロキシプロピルセルロース(例、商品名:HPC−SSL、HPC−SL、HPC−L、HPC−M、HPC−H)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例、商品名:TC5−E、TC5−M、TC5−R、TC5−S、SB−4)、ヒドロキシエチルセルロース(例、商品名:SP200,SP400,SP500,SP600,SP850、SP900、EP850、SE400,SE500,SE600,SE850、SE900、EE820)、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(例、商品名:NS−300)などのセルロース誘導体およびその塩、ポリビニルピロリドン(例、商品名:プラスドンK12、プラスドンK17、プラスドンK25、プラスドンK29−32、プラスドンK90、プラスドンK90D)、ポリビニルアルコール(例、商品名:ゴーセノールEG−05、ゴーセノールEG−40、ゴーセノールEG−05P、ゴーセノールEG−05PW、ゴーセノールEG−30P、ゴーセノールEG−30PW、ゴーセノールEG−40P、ゴーセノールEG−40PW)、コポリビドン(例、商品名:コリドンVA64、プラスドンS−630)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(例、商品名:POVACOAT)、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体(例、商品名:コリドンVA64)、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー(例、商品名:コリコートIR)などの水溶性ビニル誘導体、α化デンプン(例、商品名:アミコールC)、デキストリン、デキストラン、プルラン、アルギン酸、ゼラチン、ペクチン等が挙げられ、一種又は二種以上を混合して用いても良い。好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、α化デンプンが挙げられ、さらに好ましくはヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0023】
水不溶性高分子としては、例えば、エチルセルロース(例、商品名:エトセル(エトセル10P))、酢酸セルロースなどの水不溶性セルロースエーテル、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(例、商品名:オイドラギットRL100、オイドラギットRLPO、オイドラギットRL30D、オイドラギットRS100、オイドラギットRSPO、オイドラギットRS30D)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(例、商品名:オイドラギットNE30D)などの水不溶性アクリル酸系コポリマー、酢酸ビニル樹脂等が挙げられ、一種又は二種以上を混合して用いても良い。好ましくはエチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRSが挙げられる。本発明において、高分子として水不溶性高分子を用いることで、徐放性や苦味を有する薬物の苦味マスクの機能を付与することが可能である。
【0024】
腸溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(例、商品名:AQOAT LF、AQOAT MF、AQOAT HF、AQOAT LG、AQOAT MG、AQOAT HG)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(例、商品名:HPMCP50、HPMCP55、HPMCP55S)、メタクリル酸コポリマーL(例、商品名:オイドラギットL100)、メタクリル酸コポリマーLD(例、商品名:オイドラギットL30D−55)、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(例、商品名:オイドラギットL100−55)、メタクリル酸コポリマーS(例、商品名:オイドラギットS100)、メタクリル酸−アクリル酸n−ブチルコポリマーなどのメタクリル酸コポリマー等が挙げられ、一種又は二種以上を混合して用いても良い。好ましくはメタクリル酸コポリマーL、乾燥メタクリル酸コポリマーLDが挙げられる。
【0025】
胃溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートなどの胃溶性ポリビニル誘導体、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(例、商品名:オイドラギットE100、オイドラギットEPO)などの胃溶性アクリル酸系コポリマー等が挙げられ、一種又は二種以上を混合して用いても良い。好ましくはアミノアルキルメタクリレートコポリマーEが挙げられる。
【0026】
生分解性高分子とは、生体内において分解しうる高分子のことである。例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの共重合体、コラーゲン、キチン、キトサン(例、商品名:フローナックC−100M)等が挙げられ、一種又は二種以上を混合して用いても良い。好ましくはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの共重合体、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサンが挙げられる。
【0027】
本発明において、高分子は目的に応じて選択することができる。例えば、消化管において薬物粒子からの速やかな薬物の溶出を達成するためには、高分子として水溶性高分子を用いることが好ましく、薬物の徐放性を達成するためには、高分子として水不溶性高分子を用いることが好ましく、苦味マスクを達成するためには、水不溶性高分子、腸溶性高分子、胃溶性高分子等を用いることが好ましく、胃での薬物の溶出を抑制し、小腸での溶出を速やかにするには、腸溶性高分子を用いることが好ましく、大腸ターゲティングを達成するためには、キトサン等を用いることが好ましい。また、目的に応じて、水溶性高分子、水不溶性高分子等のように、異なる機能を有する高分子を二種以上混合して用いてもよい。
【0028】
本発明における高分子は、粉末状態のものを使用することが好ましく、目的とする薬物含有粒子の平均粒子径や粒度分布に応じて、適当な平均粒子径や粒度分布のものを選択することができる。また、上記に例示したものの中には、分散液の状態のものも含まれるが、例えば噴霧乾燥等により粉末にした後、粉末として用いることで、本発明に使用可能である。例えば、粒度分布の狭い薬物含有粒子を得るには、粒度分布の狭い高分子粉末を使用することが好ましい。さらに、平均粒子径の大きい薬物含有粒子を得るには、平均粒子径の大きい高分子粉末を使用することが好ましく、平均粒子径の小さい薬物含有粒子を得るには、平均粒子径の小さい高分子粉末を使用することが好ましい。これはとりもなおさず、高分子粉末の大きさ及び粒度分布を調整することで、目的に応じた粒度分布を有する薬物含有粒子が作製できることを意味する。
本発明における原料として用いる高分子の好ましい平均粒子径としては0.5μm以上であり、好ましくは5μm以上であり、好ましい態様として、20μm以上、25μm以上、40μm以上、50μm以上であり、原料として用いる薬物及び/又は以下に記載する他の添加剤の平均粒子径に対して5倍以上、好ましくは10倍以上、より好ましくは15倍以上、さらに好ましくは20倍以上、特に好ましくは25倍以上のものが好ましい。
ここで、本明細書において、原料として用いる高分子の平均粒子径が、原料として用いる薬物及び/又は以下に記載する他の添加剤の平均粒子径に対して何倍であるかは、原料として用いる高分子と、原料として用いる薬物及び/又は以下に記載する他の添加剤の平均粒子径の粒度分布比(D50/D50)で示される。
例えば、後述の実施例1−1では、原料として用いる高分子(ヒドロキシプロピルセルロース(100−165mesh))のD50は137.8、原料として用いる薬物(化合物A)のD50は2.7であり(表4)、粒度分布比(D50/D50)は、51.0(137.8/2.7=51.0)であるが(表38−1)、原料として用いる高分子の平均粒子径が、原料として用いる薬物の平均粒子径に対して51.0倍であると言える。
粒子シェル強度という観点では、原料として用いる高分子と、原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D50/D50)は大きいほど好ましい。また、通常1000倍以下であり、好ましくは500倍以下、より好ましくは100倍以下のものが好ましい。高分子の平均粒子径は、通常5mm以下である。好ましくは1mm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm、特に好ましくは200μm以下である。高分子粉末は例えば篩い法によって、ある粒度画分のものを選択的に用いることもできる。
例えば、USP(米国薬局方)、EP(欧州薬局方)、JP(日本薬局方)に記載の篩い番号の篩いを適宜選択し、分画することで、所望の粒度分布を持つ高分子として用いることが可能となる。また、粒子シェル強度という観点では、原料として用いる高分子の粒度分布幅(D90/D10)は小さいほど好ましい。
本発明において高分子の平均粒子径は、原料として上記の範囲であればよく、薬物含有粒子の製造過程等で変化してもよい。
【0029】
すなわち、本発明においては、高分子を溶液、懸濁の状態で造粒液として使用するのではなく、粉体の形で薬物と混合し、その後溶媒を添加、例えば噴霧しながら造粒することを特徴とする。ただし、本発明の効果を発揮する範囲において、高分子や薬物の一部を、溶媒に溶解、懸濁させて使用してもよい。高分子の使用量は、薬物、他の添加剤の量、粒子径、高分子の結合力の強さなどにより異なるが、通常、作製される薬物含有粒子(中空粒子)100重量%あたり4〜50重量%、好ましくは4〜40重量%、より好ましくは6〜40重量%や8〜40重量%、さらに好ましくは10〜40重量%、さらにより好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%の範囲で用いられる。
別の観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは5〜25重量%の範囲で用いられる。
【0030】
本発明の薬物含有粒子としては、薬物含有粒子100重量%あたり、薬物が60〜96重量%、高分子が4〜40重量%で含有するもの;好ましくは、薬物が70〜95重量%、高分子が5〜30重量%で含有するもの;より好ましくは、薬物が80〜90重量%、高分子が10〜20重量%で含有するものが挙げられる。
本発明の薬物含有粒子としては、薬物含有粒子100重量%あたり、薬物が55〜95.9重量%、高分子が4〜40重量%、後述の他の添加剤が0.1〜5重量%で含有するもの;好ましくは、薬物が65〜94.9重量%、高分子が5〜30重量%、後述の他の添加剤が0.1〜5重量%で含有するもの;薬物が75〜89.9重量%、高分子が10〜20重量%、後述の他の添加剤が0.1〜5重量%で含有するものが挙げられる。
本発明の薬物含有粒子としては、薬物含有粒子100重量%あたり、薬物が0.1〜95.9重量%、高分子が4〜40重量%、後述の他の添加剤が0.1〜95.9重量%で含有するもの;好ましくは、薬物が1〜94重量%、高分子が5〜30重量%、後述の他の添加剤が1〜94重量%で含有するもの;薬物が10〜80重量%、高分子が10〜20重量%、後述の他の添加剤が10〜80重量%で含有するものが挙げられる。
【0031】
本発明の薬物含有粒子としては、薬物含有粒子100重量%あたり、薬物が60〜96重量%、高分子が4〜40重量%で含有するもの(好ましくは、薬物が70〜95重量%、高分子が5〜30重量%で含有するもの;より好ましくは、薬物が80〜90重量%、高分子が10〜20重量%で含有するもの)であって、原料として用いる高分子の好ましい平均粒子径が原料として用いる薬物の平均粒子径に対して10倍以上(好ましくは15倍以上、より好ましくは25倍以上)であるものが挙げられる。
本発明の薬物含有粒子としては、薬物含有粒子100重量%あたり、薬物が55〜95.9重量%、高分子が4〜40重量%、後述の他の添加剤が0.1〜5重量%で含有するもの(好ましくは、薬物が65〜94.9重量%、高分子が5〜30重量%、後述の他の添加剤が0.1〜5重量%で含有するもの;より好ましくは、薬物が75〜89.9重量%、高分子が10〜20重量%、後述の他の添加剤が0.1〜5重量%で含有するもの)であって、原料として用いる高分子の好ましい平均粒子径が原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径に対して10倍以上(好ましくは15倍以上、より好ましくは25倍以上)であるものが挙げられる。
本発明の薬物含有粒子としては、薬物含有粒子100重量%あたり、薬物が0.1〜95.9重量%、高分子が4〜40重量%、後述の他の添加剤が0.1〜95.9重量%で含有するもの(好ましくは、薬物が1〜94重量%、高分子が5〜30重量%、後述の他の添加剤が1〜94重量%で含有するもの;より好ましくは、薬物が10〜80重量%、高分子が10〜20重量%、後述の他の添加剤が10〜80重量%で含有するもの)であって、原料として用いる高分子の好ましい平均粒子径が原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径に対して10倍以上(好ましくは15倍以上、より好ましくは25倍以上)であるものが挙げられる。
【0032】
製造方法
本発明の薬物含有粒子は、薬物(上記(i))と高分子(上記(ii))を含む粉末状の混合物に、該高分子を溶解し得る溶媒を添加、例えば、噴霧しながら造粒し、乾燥することで製造することができる。
造粒方法としては、攪拌機能を有するものであれば適宜選択することができる。例えば、攪拌造粒法、混合攪拌造粒法、高速攪拌造粒法、高速混合攪拌造粒法、転動攪拌流動層造粒法、転動造粒法を用いて製造することができる。この中でも、攪拌造粒法、混合攪拌造粒法、高速攪拌造粒法、高速混合攪拌造粒法を用いることが好ましい。攪拌造粒、混合攪拌造粒などに用いる造粒機としては、例えば、万能混合機(品川工業所製)、スーパーミキサー(株式会社カワタ製)、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製)SPGシリーズ(不二パウダル株式会社製)、バーチカルグラニュレーター(例えば、FM−VG−05型、FM−VG−100型、株式会社パウレック製)、高速攪拌混合造粒機ファーママトリックス(株式会社奈良機械製作所製)、ハイスピードミキサー(深江パウテック株式会社製)、グラニュマイスト(フロイント産業株式会社製)、ニューグラマシン(株式会社セイシン企業製)、トリプルマスター(株式会社品川工業所製)などが挙げられる。本発明において、単純な流動層造粒法は、乾燥効率が高すぎて造粒が進まないために好ましくない。
乾燥方法としては、自体公知の方法を適宜選択することができる。例えば、棚式乾燥機や流動層による乾燥などが挙げられ、製造性の観点から流動層による乾燥が好ましい。
【0033】
本発明における『溶媒』とは、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品などの分野で許容される全ての溶媒を意味し、使用する高分子を溶解しうるものであれば何でも良い。本発明の薬物含有粒子を医薬として用いる点からは、医薬上許容される溶媒が好ましい。このような溶媒は、薬物、高分子、添加剤の種類等に応じて適宜選択され、数種類の溶媒を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明における『溶媒』としては、例えば、水、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールなどの置換されていてもよい低級アルカノール)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどの低級アルキルケトン)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチルエステルなどの酢酸の低級アルキルエステル)及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
具体的には、本発明において、高分子として水溶性高分子を使用する場合は、溶媒として該高分子を溶解しうるもの(例えば、水、含水アルコール系溶媒等)を使用することができ、水又は含水エタノールを特に好適に使用することができる。また、高分子として水不溶性高分子を使用する場合は、溶媒として該高分子を溶解しうるもの(例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等)を使用することができ、胃溶性高分子、腸溶性高分子、キトサン等の高分子も、すべて溶媒として該高分子を溶解しうるもの(例えば、アルコール系溶媒、より具体的にはエタノール)を使用することができる。
本発明における溶媒の使用量は薬物、高分子の種類、量などにより異なるが、通常、粒子を構成する各成分の総量100重量部に対して、5〜60重量部、好ましくは10〜53重量部、より好ましくは10〜40重量部、さらに好ましくは15〜40重量部である。薬物及び高分子を含む粉末状の混合物への添加は、噴霧により行うことが好ましい。
【0035】
本発明における溶媒の噴霧は、通常造粒時に使用されるスプレーガンを用いて行って良い。具体的には、ニードルスプレーガン(トミタエンジニアリング株式会社製)などが挙げられる。造粒物の収率を高くするため、造粒容器内の粉末以外の部分、つまり造粒容器内壁等へのスプレーができるだけ少なく、かつ、造粒容器内の粉末のできるだけ広い範囲に溶媒をスプレーすることが好ましい。
【0036】
本発明の薬物含有粒子の製造に際しては、必要に応じて他の添加剤を含有させることもできる。その添加量は薬物、高分子及び溶媒の種類や量に応じて適宜調節することができる。他の添加剤は、溶媒の添加前の薬物及び高分子の混合物に添加することができる。
【0037】
他の添加剤は、粉末であることが好ましい。添加剤が粉末である場合、原料として用いる粉末の添加剤の平均粒子径は20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、前記原料として用いる薬物粉末の平均粒子径と同程度かそれ以下のものが好ましい。添加剤の粒子径が大きい場合には、高分子、薬物、添加剤を含む所望の粒子を形成できず、添加剤が粗大な場合には本発明の薬物含有粒子と分離した状態になる。添加剤の使用量は特に限定されず、添加剤量が少ないほど薬物含有率の高い粒子が得られる。薬物含有率が少ない粒子は、該添加剤の量を増やすことで製造できる。添加剤を溶媒に溶解又は分散させて添加することも可能であり、溶解させる場合、特にその平均粒子径は限定されないが、分散させる場合は前記添加剤粉末の平均粒子径と同程度かそれ以下のものが好ましい。他の添加剤の平均粒子径は、通常0.005μm以上である。
本発明において他の添加剤の平均粒子径は、原料として上記の範囲であればよく、薬物含有粒子の製造過程等で変化してもよい。
本発明の薬物含有粒子における、他の添加剤の量は、薬物の量を減ずればよく、薬物と他の添加剤とを合わせた含有率は、任意に設定できるが、好ましい使用量は、作製される薬物含有粒子100重量%あたり96重量%以下、好ましくは94重量%以下、より好ましくは92重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。具体的には、粒子100重量%あたり50〜96重量%、好ましくは60〜94重量%、より好ましくは60〜90重量%、さらに好ましくは70〜90重量%、特に好ましくは80〜90重量%である。
本発明の薬物含有粒子における、他の添加剤の量は、任意に設定できるが、好ましい使用量は、作製される薬物含有粒子100重量%あたり95.9重量%以下、好ましくは94重量%以下、より好ましくは92重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。具体的には、粒子100重量%あたり0.1〜95.9重量%、好ましくは1〜94重量%、より好ましくは5〜92重量%、さらに好ましくは10〜80重量%である。
【0038】
添加剤としては、一般的に用いられる添加剤であれば特に限定されることなく、例えば、賦形剤(例、コメデンプン等のデンプン、D−マンニトール、炭酸マグネシウム)、結合剤、甘味剤、矯味剤、矯臭剤、香料、流動化剤(例、アエロジル)、帯電防止剤、着色剤、崩壊剤、滑沢剤、可塑剤、凝集防止剤、コーティング剤等が挙げられる。該添加剤は、特に限定されないが、上記高分子の該当する場合であっても、用いられる溶媒に溶解しない場合には、本発明の高分子の機能を発揮することなく、添加剤として配合される。
薬物含有粒子の製造には、原料として用いる高分子の平均粒子径は、原料として用いる薬物及び/又は他の添加剤の平均粒子径に対して5倍以上、好ましくは10倍以上、より好ましくは15倍以上、さらに好ましくは20倍以上、特に好ましくは25倍以上のものが好ましい。また、通常10000000倍以下である。
さらには、原料として用いる高分子の粒度分布と、原料として用いる薬物及び/又は他の添加剤の粒度分布が重ならない方が好ましい。具体的には、例えば高分子の体積基準測定における累積10%粒子径D10が、薬物及び/又は他の添加剤の累積90%粒子径D90よりも大きい方が好ましい。言い換えると、高分子の累積10%粒子径D10が、薬物及び/又は他の添加剤の累積90%粒子径D90よりも1倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。また、通常5000000倍以下である。
【0039】
他の添加剤を用いる場合、薬物含有粒子を製造する上で、原料として用いる薬物と他の添加物との混合末の平均粒子径が重要である。この場合、原料として用いる高分子の平均粒子径は、原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の平均粒子径に対して5倍以上、好ましくは10倍以上、さらに好ましくは15倍以上、特に好ましくは25倍以上のものが好ましい。また、通常1000倍以下であり、好ましくは500倍以下、より好ましくは100倍以下のものが好ましい。
さらには、原料として用いる高分子の粒度分布と、原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布が重ならない方が好ましい。具体的には、例えば原料として用いる高分子の体積基準測定における累積10%粒子径D10が、原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の累積90%粒子径D90よりも大きい方が好ましい。言い換えると、原料として用いる高分子の累積10%粒子径D10が、原料として用いる薬物と他の添加剤の混合末の累積90%粒子径D90よりも1倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。また、通常500倍以下であり、好ましくは250倍以下、より好ましくは50倍以下のものが好ましい。
【0040】
本発明の薬物含有粒子
本発明の薬物含有粒子は、シェル(又は壁)及び中空部からなる粒子であって、シェルに薬物と高分子を含んでいる粒子である。又は、薬物と高分子を含む組成物からなる壁で中空部が包囲された構造を有する粒子である。
本発明の粒子の特徴として、粒子内部が中空構造を有している点である。この『中空』とは、通常の錠剤において存在するような存在位置が定まっていない多数の空隙が存在する状態とは異なり、薬物含有組成物の壁(シェル(shell))で包囲され完全に独立した単一で、粒子中心に存在する空孔を指し、例えば、電子顕微鏡や光学顕微鏡でその存在を確認できる。
本発明の薬物含有粒子の粒子全体の体積に対する中空の体積比率は、1%〜50%、好ましくは1%〜30%、より好ましくは1.5%〜30%、特に好ましくは2%〜30%程度である。別の観点から4%〜50%、好ましくは4%〜40%、より好ましくは10%〜40%、さらに好ましくは10〜30%程度である。中空の体積比率は中空の体積を粒子の体積で除して求める。本発明の粒子は一般に球形度が高いので、中空、粒子とも球体と仮定して体積を求める。中空および粒子の体積は、X線CT(コンピュータ断層撮影装置)により粒子中心部分での中空および粒子の長径と短径を求め、各々その平均を中空直径、粒子直径と仮定して、球体の体積を求めることで算出する。
詳細には、本発明における『中空の体積比率』とは、以下の式により計算にて求められる。
中空の体積比率[%]=(4/3×π×(中空部の直径/2))/(4/3×π×(薬物含有粒子の粒子径/2))×100
かかる薬物含有粒子の粒子径、中空部の直径は卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いる。
【0041】
本発明の薬物含有粒子は中空の外側に壁(シェル)が存在する。シェル厚みは任意に設定することは可能であるが、シェル厚みが小さいと該粒子の強度が弱くなる。本発明のシェル厚みは好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上、最も好ましくは30μm以上である。シェル厚みは例えばX線CT(コンピュータ断層撮影装置)により測定することができる。
また、本発明のシェル厚み率は任意であり、以下の式により求められる。好ましくは20〜80%であり、より好ましくは30〜70%である。
シェル厚み率[%]=(シェル厚み/(薬物含有粒子の粒子径/2))×100
【0042】
本発明の薬物含有粒子の特徴としては、粒子の大きさを自在に調整できる点にある。したがって、平均粒子径が1〜7000μm程度、好ましくは5〜1000μm程度、より好ましくは10〜500μm程度、さらに好ましくは10〜400μm程度、さらにより好ましくは20〜300μm程度、特に好ましくは50〜300μm程度の粒子を調整することができる。
粒子の強度の観点から、好ましくは50〜7000μm程度、より好ましくは50〜1000μm程度、さらに好ましくは50〜500μm程度、別の観点から、好ましくは70〜7000μm程度、より好ましくは70〜1000μm程度、さらに好ましくは70〜500μm程度、特により好ましくは70〜300μm程度、最も好ましくは100〜300μm程度の粒子を調整することができる。
本発明において、薬物含有粒子の大きさは、前述した通り、高分子の平均粒子径を調整することにより、調整することができる。
【0043】
本発明の薬物含有粒子の中空が存在するが、通常、中空部の直径は10μm以上である。また、中空部の直径は自在に調節することが可能であり、通常10〜5000μm程度、好ましくは20〜700μm程度、より好ましくは30〜300μm程度、さらに好ましくは50〜200μm程度に調整することができる。上記、粒子の大きさと合わせて、中空の割合を自在に変化させることが可能である。
【0044】
本発明の薬物含有粒子は、『表面が滑らか』な形状を有することも一態様としてある。ここにおいて、表面が滑らかとは、角がなく、表面が凸凹していないことを意味する。打錠時、カプセル剤製造時等の薬物含有粒子充填時には、充填する粒子の流動性が求められるため、薬物含有粒子は表面が滑らかであることが好ましい。薬物含有粒子にさらに機能性を付与するためにコーティングする際にも、効率が向上するため、薬物含有粒子は表面が滑らかであることが好ましい。かかる表面の滑らかさは、例えば、目視で観察することができる。目視で観察する際、顕微鏡等で拡大して観察しても良い。その評価としては「非常に滑らか」(+++)、「滑らか」(++)、「やや滑らか」(+)、「滑らかでない」(−)で表す。「非常に滑らか」とは、粒子表面に明らかな角が認められなく、表面が凸凹していないことを表す。「滑らか」とは、粒子表面に明らかな角は認められないが、表面に緩やかな凹凸が認められることを表す。「やや滑らか」は、粒子表面に明らかな角が認められるか、明らかな凸凹が認められることを表す。「滑らかでない」は、粒子表面に明らかな角が認められ、明らかな凸凹が認められることを表す。本発明の薬物含有粒子は、「滑らかでない」であってもよいが、「非常に滑らか」、「滑らか」又は「やや滑らか」が好ましく、「非常に滑らか」又は「滑らか」がより好ましく、「非常に滑らか」がさらに好ましい。また、形状測定レーザマイクロスコープVK−X200(KEYENCE)を用いて測定することができる。『表面が滑らか』とは、具体的には、上記機器により測定した表面粗さ(Raの値)が3.5以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは1.5以下であることを意味する。
表面の滑らかさは、高分子と薬物及び/又は他の添加剤の平均粒子径の比に影響される。高分子の平均粒子径は、薬物及び/又は他の添加剤の平均粒子径に対して5倍以上、好ましくは10倍以上、より好ましくは15倍以上、さらに好ましくは20倍以上、特に好ましくは25倍以上のものが好ましい。また、通常1000倍以下であり、好ましくは500倍以下、より好ましくは100倍以下のものが好ましい。
【0045】
また、本発明の薬物含有粒子は、球形を有することを一態様とするものである。ここにおいて『球形』とは、アスペクト比が1.0〜1.5であることを意味する。好ましくは1.0〜1.4、より好ましくは1.0〜1.3である。この形状を有することにより、打錠時、カプセル剤製造時等の薬物含有粒子充填時の流動性がよく、さらにコーティング等の加工をする際にも、効率が向上する。
【0046】
本発明における『アスペクト比』とは、粒子の短径と長径との比であり、真球度を示す目安となるものである。かかるアスペクト比は、例えば、以下の式により計算にて求められる。
アスペクト比=粒子の長径/粒子の短径
かかる粒子の長径、短径は卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いる。
また、ミリトラックJPA(日機装株式会社)を用いて測定することができる。
【0047】
本発明における『粒度分布幅』とは、粉体粒子の体積基準測定における累積90%粒子径D90と累積10%粒子径D10の比(D90/D10)で求められる。本発明の薬物含有粒子は、高分子の粒子径を調節することによって、簡便に粒度分布を調節することができ、例えば、粒度分布幅が狭い粒子群を製造することができる。かかる粒度分布幅は、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)で体積基準により測定する。
【0048】
本発明において『粒度分布の幅が狭い』とは、具体的な粒度分布幅(D90/D10)が6.0以下、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下であることを意味する。
【0049】
中空粒子の強度は、粒子シェル強度で評価することができる。本発明における『粒子シェル強度』は、以下の式により計算して求められる。
粒子シェル強度[MPa]=2.8P/(π×d-π×d’)×1000
P:粒子の破壊試験力[mN]、d:薬物含有粒子の直径[μm]、d’:中空部の直径[μm]
かかる粒子の破壊試験力、薬物含有粒子の直径は島津微小圧縮試験機MCT−W500(島津製作所製)によって測定する。
【0050】
本発明における『中空部の直径』とは、以下の式により計算にて求められる。
中空部の直径[μm]=(中空部の長径+中空部の短径)/2
かかる粒子の中空部の長径、短径は卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いる。
【0051】
本発明において、薬物含有粒子は、追加の機能を付与するために流動層造粒機やさらに粒子の機械的強度が必要な種々の微粒子コーティング装置等を用いて機能性高分子等を被覆する際にも割れ欠けすることなく効率的に被覆され、錠剤化しても潰れることなく中空が維持されるような十分な粒子強度を有することが望まれる。
本発明の粒子は十分な粒子強度を有する。該粒子は中空部を有するため、通常の粒子強度の測定方法では中空部も固形物と計算してしまうことにより、正しく評価できないため、中空部分を除いた粒子シェル強度で測定が可能である。本発明における『十分な粒子強度』とは、具体的には、薬物含有粒子の粒子シェル強度が2.0MPa以上、好ましくは3.0MPa以上、より好ましくは4.0MPa以上、さらに好ましくは5.0MPa以上であることを意味する。
【0052】
本発明における『薬物含有粒子の粒子径』とは、以下の式により計算にて求められる。
薬物含有粒子の粒子径は、以下の式により計算にて求められる。
薬物含有粒子の粒子径[μm]=(粒子の長径+粒子の短径)/2
かかる粒子の長径、短径を卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いる。
【0053】
本発明における『シェル厚み』とは、以下の式により計算にて求められる。
シェル厚み[μm]=(薬物含有粒子の粒子径−中空部の直径)/2
かかる薬物含有粒子の粒子径、中空部の直径は卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いる。
【0054】
本発明における『シェル厚み率』とは、以下の式により計算にて求められる。
シェル厚み率[%]=(シェル厚み/(薬物含有粒子の粒子径/2))×100
かかる薬物含有粒子の粒子径は卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いる。
【0055】
本発明における『中空の体積比率』とは、以下の式により計算にて求められる。
中空の体積比率[%]=(4/3×π×(中空部の直径/2))/(4/3×π×(薬物含有粒子の粒子径/2))×100
かかる薬物含有粒子の粒子径、中空部の直径は卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いる。
【0056】
本発明における『高分子と薬物の粒度分布比(D50/D50)』とは、以下の式により計算にて求められる。
高分子と薬物の粒度分布比(D50/D50)=高分子のD50/薬物のD50
本発明における『高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D50/D50)』とは、以下の式により計算にて求められる。
高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D50/D50)=高分子のD50/薬物と他の添加剤の混合末のD50
かかる高分子、薬物、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)又はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)で体積基準により測定する。
【0057】
本発明における『高分子と薬物の粒度分布比(D10/D90)』とは、以下の式により計算にて求められる。
高分子と薬物の粒度分布比(D10/D90)=高分子のD10/薬物のD90
本発明における『高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D10/D90)』とは、以下の式により計算にて求められる。
高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D10/D90)=高分子のD10/薬物と他の添加剤の混合末のD90
かかる高分子、薬物、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)又はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)で体積基準により測定する。
【0058】
本発明の薬物含有粒子は、医薬又は医薬原料として有用であり、ヒト又は動物に対して経口的又は非経口的に投与することができる。投与量は使用される薬物によって適宜選択すればよい。
本発明の薬物含有粒子は、通常は当該薬物含有粒子を複数含有する医薬又は医薬組成物として用いられる。
【0059】
本発明の薬物含有粒子は、使用目的に応じて各種剤形とすることができる。例えば、本発明の薬物含有粒子は、そのまま、顆粒剤、用時調製用の注射剤、体内埋め込み剤形等として使用することができる。また、任意の添加剤と混合し、打錠して錠剤(口腔内崩壊錠を含む)にしたり、カプセルにつめてカプセル剤にすることもできる。さらに、本発明の薬物含有粒子は、懸濁剤(水性懸濁剤、油性懸濁剤)、乳剤等としても使用することができる。
【0060】
本発明はまた、薬物と高分子を含む粉末状の混合物に高分子を溶解し得る溶媒を噴霧しながら、造粒する工程を含むことを特徴とする、中空粒子の製造方法、及び該方法で製造した中空粒子にも関する。
薬物、高分子、高分子を溶解し得る溶媒は、本発明の薬物含有粒子の製造方法について前述したものと同様のものが例示される。該方法において、必要に応じて他の添加剤を含有させることもでき、他の添加剤としては、本発明の薬物含有粒子の製造方法について前述したものと同様のものが例示される。
造粒方法、乾燥方法、溶媒の噴霧方法等は、本発明の薬物含有粒子の製造方法について前述したものと同様のものが例示される。
【実施例】
【0061】
以下、実施例、試験例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
本実施例、試験例及び比較例において、特に断りのないかぎり、溶媒における%は(W/W%)を示し、粒子における%は、重量%を示す。
本実施例、試験例及び比較例において使用した添加剤は、特に断りがない限り、以下のものを使用した。
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L):日本曹達株式会社
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SSL):日本曹達株式会社
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、TC5−R):信越化学工業株式会社
ポリビニルピロリドン(PVP、プラスドンK29−32):ISP社
ポリビニルアルコール(PVA、ゴーセノールEG−05):日本合成化学工業株式会社
α化デンプン(アミコールC):日澱化学株式会社
アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRSPO):エボニックデグサジャパン株式会社
エチルセルロース(エトセル10P):ダウケミカル日本株式会社
乾燥メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL100−55):エボニックデグサジャパン株式会社
アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギットE100):エボニックデグサジャパン株式会社
キトサン(フローナックC−100M):日本水産株式会社
D−マンニトール(パーリトール160C):ロケットジャパン株式会社
D−マンニトール(パーリトール200SD):ロケットジャパン株式会社
結晶セルロース(セオラスKG−1000):旭化成ケミカルズ株式会社
結晶セルロース(セオラスUF−711):旭化成ケミカルズ株式会社
トウモロコシデンプン(コーンスターチXX16):日本食品化工株式会社
コメデンプン:日本コーンスターチ株式会社
炭酸マグネシウム(軽質):協和化学工業株式会社
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH−21):信越化学工業株式会社
カルメロース(NS−300):五徳薬品株式会社
クロスカルメロースナトリウム(アクチゾルSD−711):FMC社
アスパルテーム(アスパルテーム):味の素
ネオテーム:DSP五協フード&ケミカル株式会社
アエロジル(アエロジール200):日本アエロジル株式会社
ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム):太平化学産業株式会社
【0063】
本実施例、試験例及び比較例における試験方法は以下の通りである。
(粒度分布)
薬物、高分子、他の添加剤、薬物と他の添加剤の混合末、得られた薬物含有粒子の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)又はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)で体積基準により測定した。
(薬物含有粒子の外観及び断面)
粒子の外観及び断面は、走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−3400N型)にて観察した。
(薬物含有粒子の内部状態)
薬物含有粒子の内部状態は、卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に観察した。
(アスペクト比の算出)
得られた薬物含有粒子のアスペクト比は、特に断りがない限り、粒子の長径、短径を卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、以下の式にて算出した。10回測定した平均値を用いた。
アスペクト比=粒子の長径/粒子の短径
(比較例の粒子強度の測定)
中空構造を有しない比較例の粒子の破壊試験力、粒子径は島津微小圧縮試験機MCT−W500(島津製作所製)によって測定し、以下の式にて粒子強度を算出した(n=5)。
粒子強度[MPa]=2.8P/(π×d)×1000
P:粒子の破壊試験力[mN]、d:薬物含有粒子の直径[μm]
(粒子シェル強度の測定)
粒子シェル強度は、以下の式により計算にて求めた(n=5)。
粒子シェル強度[MPa]=2.8P/(π×d-π×d’)×1000
P:粒子の破壊試験力[mN]、d:薬物含有粒子の直径[μm]、d’:中空部の直径[μm]
中空部の直径はシェル厚み率(下記記載の卓上型マイクロCTスキャナを用いて測定、算出する)より算出した値を用いる。すなわち以下の式により計算にて求められる。
中空部の直径[μm]=薬物含有粒子の直径×(1−シェル厚み率/100)
かかる粒子の破壊試験力、薬物含有粒子の直径は島津微小圧縮試験機MCT−W500(島津製作所製)によって測定した。
(薬物含有粒子の粒子径)
薬物含有粒子の粒子径は、以下の式により計算にて求めた。
薬物含有粒子の粒子径[μm]=(粒子の長径+粒子の短径)/2
かかる粒子の長径、短径を卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いた。
(中空部の直径)
中空部の直径は、以下の式により計算にて求めた。
中空部の直径[μm]=(中空部の長径+中空部の短径)/2
かかる粒子の中空部の長径、短径は卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いた。
(シェル厚み)
シェル厚みは、以下の式により計算にて求めた。
シェル厚み[μm]=(薬物含有粒子の粒子径−中空部の直径)/2
かかる薬物含有粒子の粒子径、中空部の直径は卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いた。
(シェル厚み率)
本発明における『シェル厚み率』とは、以下の式により計算にて求めた。
シェル厚み率[%]=(シェル厚み/(薬物含有粒子の粒子径/2))×100
かかる薬物含有粒子の粒子径は卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いた。
(中空の体積比率)
中空の体積比率は、以下の式により計算にて求めた。
中空の体積比率[%]=(4/3×π×(中空部の直径/2))/(4/3×π×(薬物含有粒子の粒子径/2))×100
かかる薬物含有粒子の粒子径、中空部の直径は卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に測定し、10回測定した平均値を用いた。
(高分子と薬物の粒度分布比(D50/D50);高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D50/D50))
高分子と薬物の粒度分布比(D50/D50)は、以下の式により計算にて求めた。
高分子と薬物の粒度分布比(D50/D50)=高分子のD50/薬物のD50
高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D50/D50)は、以下の式により計算にて求めた。
高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D50/D50)=高分子のD50/薬物と他の添加剤の混合末のD50
かかる高分子、薬物、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)又はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)で体積基準により測定した。
(高分子と薬物の粒度分布比(D10/D90);高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D10/D90))
高分子と薬物の粒度分布比(D10/D90)は、以下の式により計算にて求めた。
高分子と薬物の粒度分布比(D10/D90)=高分子のD10/薬物のD90
高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D10/D90)は、以下の式により計算にて求めた。
高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D10/D90)=高分子のD10/薬物と他の添加剤の混合末のD90
かかる高分子、薬物、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)又はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)で体積基準により測定した。
(表面の滑らかさ)
目視で観察した。評価としては「非常に滑らか」を(+++)、「滑らか」を(++)、「やや滑らか」を(+)、「滑らかでない」を(−)で表す。「非常に滑らか」とは、粒子表面に明らかな角が認められなく、表面が凸凹していないことを表す。「滑らか」とは、粒子表面に明らかな角は認められないが、表面に緩やかな凹凸が認められることを表す。「やや滑らか」は、粒子表面に明らかな角が認められるか、明らかな凸凹が認められることを表す。「滑らかでない」は、粒子表面に明らかな角が認められ、明らかな凸凹が認められることを表す。
(粒度分布幅)
粒度分布幅は、以下の式により計算にて求めた。
粒度分布幅=薬物含有粒子のD90/薬物含有粒子のD10
かかる薬物含有粒子の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)で体積基準により測定した。
【0064】
実施例1
<薬物の種類>
表1の処方比及び仕込量に従い、実施例1−1〜1−7の薬物含有粒子を製造した。使用した薬物(いずれもジェットミル粉砕品)は、ゾニサミド(1,2−benzisoxazole−3−methanesulfonamide、以下、化合物A)、ルラシドン塩酸塩((3aR,4S,7R,7aS)−2−{(1R,2R)−2−[4−(1,2−benzisothiazol−3−yl)piperazin−1−ylmethyl]cyclohexylmethyl}hexahydro−4,7−methano−2H−isoindole−1,3−dione hydrochloride、以下、化合物B)、塩酸メトホルミン(1,1−dimethylbiguanide monohydrochloride、以下、化合物C(新日本薬業株式会社))、メサラジン(5−amino−2−hydroxybenzoic acid、以下、化合物D(新日本薬業株式会社))、3−[(1S)−1−(2−fluorobiphenyl−4−yl)ethyl]−5−{[amino(morpholin−4−yl)methylene]amino}isoxazole(以下、化合物E)及び5−(3−methoxyphenyl)−3−(5−methyl−1,2,4−oxadiazol−3−yl)−2−oxo−1,2−dihydro−1,6−naphthyridine(以下、化合物F)である。
高分子としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)の粒度コントロール品(100−165mesh画分及び165−200mesh画分)を全仕込量に対し10重量%を粉末で下記の造粒機に仕込んだ。実施例1−1〜1−6については、高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)を用い、表2に示す製造条件にて50%エタノール又は20%エタノール水溶液(溶媒)をスプレーしながら30分間造粒し、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、それぞれの薬物を90重量%含有する粒子を得た。実施例1−7については、高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−100型(容量:100L)(株式会社パウレック製)を用い、表3に示す製造条件にて精製水(溶媒)をスプレーしながら24分間造粒し、フローコーターFLO−5型(フロイント産業製)を用いて流動層乾燥し、薬物を90重量%含有する粒子を得た。
得られた粒子は中空であることを確認し、中空部の直径を表37−1に示した。
用いた薬物の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、用いた高分子の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、値を表4に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
作製した粒子の外観及び断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−3400N型)にて観察した。粒子の外観を図1−1〜1−6に、断面を図1−7〜1−9に示す。図1−1〜1−6で観察されるように、いずれの薬物を用いても、非常に球形度の高い球形粒子が作製できた。また、図1−7〜1−9で観察されるように、その断面は中空となっていた。また、代表として、実施例1−1および1−4で得られた粒子の短径、長径をミリトラックJPA(日機装株式会社製)で測定し(n=1)、式:アスペクト比=長径/短径にてアスペクト比を算出したところ、各々、1.22および1.25であり、球形であることが判明した。
【0070】
つぎに、作製した球形粒子の粒度分布をParticle Viewer(パウレック社製)にて測定した。その結果を表5に示す。表5で示されるように、いずれの薬物を用いても、薬物に限定されることなく、粒度分布幅(粉体粒子の体積基準測定における累積90%粒子径D90と累積10%粒子径D10の比(D90/D10))が非常に狭い球形粒子が作製できた。
【0071】
【表5】
【0072】
実施例1−6における高分子(ヒドロキシプロピルセルロース)の粒度分布と薬物含有粒子の粒度分布との関係を図1−10に示す。図1−10に示されるように、薬物含有粒子の粒度分布は高分子の粒度分布を反映していることが確認された。
【0073】
実施例2
<ヒドロキシプロピルセルロースの添加量>
表6の処方比及び仕込量に従い、薬物として化合物Aのジェットミル粉砕品、高分子としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)の粒度コントロール品(100−165mesh画分を全仕込量に対し5、15及び30重量%を粉末で高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込んだ。表7に示す製造条件にて、精製水又は50%エタノール水溶液(溶媒)をスプレーしながら20〜30分間造粒し、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、実施例2−1、2−2及び2−3の化合物A含有球形粒子を得た。得られた粒子は中空であることを確認し、中空部の直径を表37−1に示した。
薬物の粒度分布はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、用いた高分子の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、値を表4に示した。また、実施例1−1の処方及び薬物含有粒子の粒度分布は表6及び8に記載した。
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
作製した粒子の粒度分布をParticle Viewer(パウレック社製)にて測定した。その結果を表8に示す。表8に示されるように、高分子の量が5〜30重量%の間で、粒度分布幅(粉体粒子の体積基準測定における累積90%粒子径D90と累積10%粒子径D10の比(D90/D10))が非常に狭い粒子が作製できた。
【0077】
【表8】
【0078】
作製した粒子の外観及び断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−3400N型)にて観察した。球形粒子の外観を図2−1、2−2に、断面を図2−3〜2−5に示す。図2−1、2−2で観察されるように、非常に球形度の高い球形粒子が作製できた。また、図2−3〜2−5で観察されるように、その断面は中空となっていた。
【0079】
実施例3
<各種高分子を用いた粒子>
表9−1、9−2の処方比及び仕込量に従い、薬物として化合物Aのジェットミル粉砕品、高分子として水溶性高分子である、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)(100−165mesh画分)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(200mesh on品)、ポリビニルピロリドン(200mesh on品)、ポリビニルアルコール(60−140mesh画分)及びα化デンプン(100−200mesh画分)、水不溶性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS (100−140mesh画分)、エチルセルロース(80mesh pass品)、腸溶性高分子である乾燥メタクリル酸コポリマーLD(200mesh on品)をそれぞれ粉末で高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込んだ。表10に示す製造条件にて、精製水、50%エタノール水溶液、80%エタノール水溶液又は95%エタノール水溶液(溶媒)をスプレーしながら20〜45分間造粒し、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、実施例3−1〜3−7の化合物A含有球形粒子を得た。得られた粒子は中空であることを確認し、中空部の直径を表37−1に示した。
用いた薬物の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、用いた高分子の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、値を表11−1に示した。また、実施例1−1の処方は表9−1に、薬物、高分子及び薬物含有粒子の粒度分布は表11−1及び11−2に記載した。
【0080】
【表9-1】
【0081】
【表9-2】
【0082】
【表10】
【0083】
【表11-1】
【0084】
代表として、実施例3−5で作製した薬物含有粒子の内部状態を、卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に観察した(図3)。図3に示されるように、中空の薬物含有粒子が作製できたことを確認した。
【0085】
作製した粒子の粒度分布をParticle Viewer(パウレック社製)にて測定した。その結果を表11−2に示す。
【0086】
【表11-2】
【0087】
実施例4
<他の添加剤>
表12の処方比及び仕込量に従い、薬物として化合物A、化合物B(いずれもジェットミル粉砕品)、高分子としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)(実施例4−1:粒度コントロールなし、実施例4−2:200−325mesh画分)及び表12に示す他の添加剤を粉末で高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込んだ。表13に示す製造条件にて、50%エタノール水溶液又は80%エタノール水溶液をスプレーしながら23−31分間造粒し、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、実施例4−1及び4−2の薬物球形粒子を得た。得られた粒子は中空であることを確認し、中空部の直径を表37−1に示した。
用いた薬物、他の添加剤、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、用いた高分子の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、値を表14−1に示した。
【0088】
【表12】
【0089】
【表13】
【0090】
【表14-1】
【0091】
作製した粒子の粒度分布をParticle Viewer(パウレック社製)にて測定した。その結果を表14−2に示す。
【0092】
【表14-2】
【0093】
実施例5 錠剤
実施例3−5、4−2で製造した薬物含有粒子を用い、表15の処方量及び仕込量に従い、添加剤を混合し、打錠し、実施例5−1及び5−2の錠剤を得た。
具体的には、実施例5−1では、表15の仕込量に従い、薬物含有粒子及び添加剤を秤量し、ミクロ型透視式混合機(筒井理化学器械)を用い、回転数30rpmにて5分間混合した。その混合品をロータリー式打錠機(VEL2:菊水製作所)を用い、回転数20rpmにて打錠した(平面すみ角、φ8.0mm、打錠圧:11−12kN)。作製した錠剤について、試験例1に従って溶出試験を行った。
実施例5−2では、表15の仕込量に従い、薬物含有粒子及び添加剤を秤量し、ポリ袋にて混合し、簡易成型機 テーブルプレス TB−20H(NPaシステム)にて打錠した(平錠、φ7.5mm、打錠圧:8kN)。作製した錠剤について、試験例2に従って溶出試験を行った。
さらに、上記実施例5−1で作製した打錠前の混合粉末を、簡易成型機 テーブルプレス TB−20H(NPaシステム)にて打錠し(平すみ角、φ8.0mm、打錠圧:5kN)、実施例5−3の錠剤を得た。作製した錠剤を分割し、その断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−3400N型)にて観察した。その結果、図4に示す中空粒子の存在が確認できた。
【0094】
【表15】
【0095】
(試験例1)
実施例5−1の錠剤を用いて溶出試験を行った。第十五改正日本薬局方に基づき溶出試験法パドル法で、試験液として37℃/900mLの精製水又は溶出試験第2液(約pH7)を用いて、回転数50rpmにて測定した。測定時間は5、10、15、30、45、60分とし、サンプリング液をフィルターろ過して、紫外可視吸光光度計にて測定し、溶出率を算出した。
<測定波長>
測定波長:285nm
【0096】
(試験例2)
実施例5−2の錠剤を用いて溶出試験を行った。第十五改正日本薬局方の溶出試験法パドル法に基づき、試験液として37℃/900mLのMclIvaine 緩衝液pH3.8を用いて、回転数50rpmにて測定した。測定時間は5、15、30、45、60分とし、サンプリング液をフィルターろ過して、HPLCにて測定し、溶出率を算出した。
<HPLC測定条件>
検出器:紫外吸光光度計
測定波長:230nm
カラム:Onyx Monolithic C18(4.6mmΦ×100 mmL)
カラム温度:40℃
流量:2.5mL/mim
注入量:25μL
サンプルクーラー:25℃
シリンジ洗浄液:水/アセトニトリル混液=1/1
移動相:薄めたリン酸(1→1000)/アセトニトリル混液(3:2)
【0097】
実施例5−1、5−2で得た錠剤の溶出試験結果を表16に示す。水不溶性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーRSを用いて作製した錠剤は、溶出試験第2液、精製水共に緩やかな溶出がみられた(実施例5−1)。水溶性高分子であるヒドロシキプロピルセルロースを用いて作製した錠剤は、速やかな溶出がみられた(実施例5−2)。これらの実施例より、高分子の機能性が付与されていることを確認した。
【0098】
【表16】
【0099】
比較例1
特許文献1で開示されている手法にて球形粒子を得た。即ち、ハンマーミル(パウレック社製)で粉砕したアセトアミノフェン80部、結晶セルロース19部(商品名:セオラス PH−F20JP、旭化成社製)を高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込み、よく混合した。これを25℃、400回転/分で攪拌を続けながら、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC−SL、日本曹達社製)1部をエタノール79部及び水20部の混液に溶解した溶液を添加し、25分間造粒した。造粒後、棚乾燥で45°C、3時間乾燥し、球形の粒子を得た。作製した球形粒子の内部状態を、卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に観察した。粒子の内部状態を図5に示すが、中空ではなかった。粒子強度は、2.3(MPa)であった。
【0100】
用いた薬物(アセトアミノフェン)の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、用いた他の添加剤(結晶セルロース(セオラス PH−F20JP))の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、値を表17に示した。
【0101】
【表17】
【0102】
実施例6及び比較例2
<高分子の効果(1)>
表18−1の処方比及び仕込み量に従い、実施例6−1〜6−4の薬物含有粒子を製造した。薬物として化合物Aのジェットミル粉砕品、高分子として腸溶性高分子である乾燥メタクリル酸コポリマーLD(100−150mesh画分)、胃溶性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(フィッツミル(スクリーン径:42mesh)で粉砕し、60−100mesh画分を用いた)、徐放性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(100mesh on品)、水溶性高分子であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)(100−150mesh画分)を秤量し、それぞれ粉末で高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込んだ。表19−1に示す製造条件にて、95%エタノール水溶液(溶媒)をスプレーしながら32〜47分間造粒し、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、化合物A含有粒子を得た。得られた粒子は中空であることを確認し、中空部の直径を表37−2に示した。
表18−2の処方比及び仕込み量に従い、比較例2−1〜2−5の薬物含有粒子を製造した。薬物として化合物Aのジェットミル粉砕品、高分子として腸溶性高分子である乾燥メタクリル酸コポリマーLD(未分画品)、胃溶性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギットEPO、未分画品)、徐放性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(未分画品)、水溶性高分子であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)(未分画品)を秤量し、ポリ袋にて十分に混合した。その混合末をローラーコンパクターTF−MINI(フロイント社製)を用い、表19−2に示す製造条件にて乾式造粒を行い、化合物A含有粒子を得た。
用いた高分子の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、用いた薬物の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、値を表20−1に示した。また、実施例3−7の処方は表18−1に、薬物、高分子及び薬物含有粒子の粒度分布は表20−1及び20−2に記載した。
【0103】
【表18-1】
【0104】
【表18-2】
【0105】
【表19-1】
【0106】
【表19-2】
【0107】
【表20-1】
【0108】
【表20-2】
【0109】
(試験例3)
実施例3−7、6−1〜6−4、比較例2−1〜2−5で作製した薬物含有粒子の30−140mesh画分を用い、以下の手順で溶出試験を行った。試験液は第十五改正日本薬局方の溶出試験第1液(約pH1.2)又は溶出試験第2液(約pH7)を用いた。
標準溶液の調製>
化合物A標準品を105℃で3時間乾燥し、その約22mgを精密に量り、試験液に溶かし、正確に200mLとした。この溶液4mLを正確に量り、試験液を加えて正確に20mLとし、標準溶液とした。
<試料溶液の調製>
化合物Aとして25mg相当量の薬物含有粒子を精密に量り試料とした。試験液900mLを用い、第十五改正日本薬局方の溶出試験法第2法により、毎分50回転で試験を行った。溶出試験開始5、10、15、30、45、60、120、180、240、360分後、溶出液20mLをサンプリングし、直ちに37±0.5℃に加温した同容量の試験液を注意して補充した。溶出液は孔径0.45μm以下のメンブランフィルター(Millex−HA(登録商標))でろ過した。初めのろ液約10mLを除き、次のろ液を試料溶液とした。
<分析方法>
試料溶液及び標準溶液につき、紫外可視吸光度測定法により試験を行い、波長285nmにおける吸光度を測定し、溶出率を算出した。
【0110】
溶出試験第2液での結果を図6−1〜6−4に示す。
図6−1より、機能性高分子(腸溶性高分子である乾燥メタクリル酸コポリマーLD)を用いて乾式造粒した薬物含有粒子(比較例2−2)の溶出試験第2液での溶出は、機能性高分子を用いていない薬物含有粒子(比較例2−1)とほぼ同等であり、機能性高分子の効果が発揮できていなかった。一方で、本発明の薬物含有粒子(実施例3−7)は非常に速やかな溶出がみられ、機能性高分子の効果が発揮できていた。
【0111】
図6−2より、機能性高分子(胃溶性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーE)を用いて乾式造粒した薬物含有粒子(比較例2−3)の溶出試験第2液での溶出は、機能性高分子を用いていない薬物含有粒子(比較例2−1)とほぼ同等であり、機能性高分子の効果が発揮できていなかった。一方で、本発明の薬物含有粒子(実施例6−2)は溶出の抑制効果がみられ、機能性高分子の効果が発揮できていた。
【0112】
図6−3より、機能性高分子(徐放性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS)を用いて乾式造粒した薬物含有粒子(比較例2−4)の溶出試験第2液での溶出は機能性高分子を用いていない薬物含有粒子(比較例2−1)とほぼ同等であり、機能性高分子の効果が発揮できていなかった。一方で、本発明の薬物含有粒子(実施例6−3)は溶出の徐放化がみられ、機能性高分子の効果が発揮できていた。
【0113】
図6−4より、機能性高分子(水溶性高分子であるヒドロキシプロピルセルロース)を用いて乾式造粒した薬物含有粒子(比較例2−5)の溶出試験第2液での溶出は機能性高分子を用いていない薬物含有粒子(比較例2−1)とほぼ同等であり、機能性高分子の効果が発揮できていなかった。一方で、本発明の薬物含有粒子(実施例6−4)は非常に速やかな溶出がみられ、機能性高分子の効果が発揮できていた。
【0114】
これらの実施例より、本発明の薬物含有粒子は高分子の機能性が付与されていることが確認できた。
【0115】
溶出試験第1液での結果を図6−5に示す。
図6−5より、機能性高分子(胃溶性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーE)を用いて乾式造粒した薬物含有粒子(比較例2−3)の溶出試験第1液での溶出は、機能性高分子を用いていない薬物含有粒子(比較例2−1)とほぼ同等であり、機能性高分子の効果が発揮できていなかった。一方で、本発明の薬物含有粒子(実施例6−2)は非常に速やかな溶出がみられ、機能性高分子の効果が発揮できていた。
これらの実施例より、本発明の薬物含有粒子は高分子の機能性が付与されていることが確認できた。
【0116】
実施例7
<高分子の効果(2)>
表21の処方比及び仕込み量に従い、実施例7−1〜7−4の薬物含有粒子を製造した。薬物としてインドメタシン(1−(4−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1−H−インドール−3−酢酸、以下、化合物G)のジェットミル粉砕品、高分子として腸溶性高分子である乾燥メタクリル酸コポリマーLD(100mesh on品)、胃溶性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(フィッツミル(スクリーン径:42mesh)で粉砕し、60−100mesh画分を用いた)、徐放性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(100mesh on品)、水溶性高分子であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)(100−150mesh画分)を秤量し、それぞれ粉末で高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込んだ。表22に示す製造条件にて、精製水又は95%エタノール水溶液(溶媒)をスプレーしながら29〜61分間造粒し、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、化合物G含有粒子を得た。得られた粒子は中空であることを確認し、中空部の直径を表37−2に示した。
用いた高分子の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、用いた薬物の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、値を表23−1に示した。
【0117】
【表21】
【0118】
【表22】
【0119】
【表23-1】
【0120】
作製した粒子の粒度分布をParticle Viewer(パウレック社製)にて測定した。その結果を表23−2に示す。
【0121】
【表23-2】
【0122】
(試験例4)
実施例7−1〜7−4で作製した薬物含有粒子を用い、以下の手順で溶出試験を行った。試験液は第十五改正日本薬局方の溶出試験第2液(約pH7)を用いた。
標準溶液の調製>
化合物G標準品を約30mg精密に量り、水/アセトニトリル(1/1)約70mLを加えた。5分間超音波を照射して溶解させ、水/アセトニトリル(1/1)を加えて正確に100mLとした。この液2mLを正確に量り、水/アセトニトリル(1/1)を加えて正確に20mLとし、標準溶液とした。
<試料溶液の調製>
化合物Gとして25mg相当量の薬物含有粒子を精密に量り試料とした。試験液900mLを用い、第十五改正日本薬局方の溶出試験法第2法により、毎分50回転で試験を行った。溶出試験開始5、10、15、30、45、60、120、180、240、360分後、溶出液5mLをサンプリングした。溶出液は孔径0.20μm以下のメンブランフィルター(ADVANTEC製DISMIC−13HP 13mm)でろ過した。初めのろ液約3mLを除き、次のろ液をHPLCにて測定し、溶出率を算出した。
<HPLC測定条件>
検出器:紫外吸光光度計
測定波長:320nm
カラム:Waters ACQUITY UPLC C18 2.1mm×30mm 1.7μm
カラム温度:40℃
流量:0.5mL/mim(A:0.25mL/mim、B:0.25mL/mim)
注入量:5μL
サンプルクーラー:25℃
シリンジ洗浄液:水/アセトニトリル混液=1/1
移動相:A:薄めたリン酸(1→1000)
B:アセトニトリル
【0123】
溶出試験第2液での結果を図7に示す。
図7より、溶出試験第2液に溶解する機能性高分子(腸溶性高分子である乾燥メタクリル酸コポリマーLD、水溶性高分子であるヒドロキシプロピルセルロース)を用いた薬物含有粒子(実施例7−1、7−4)は非常に速やかな溶出がみられ、溶出試験第2液に溶解しにくい機能性高分子(徐放性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、胃溶性高分子であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーE)を用いた薬物含有粒子(実施例7−2、7−3)の溶出は徐放性を示した。
これらの実施例より、本発明の薬物含有粒子は高分子の機能性が付与されていることが確認できた。
【0124】
実施例8
<低含量薬物粒子>
実施例8−1については、表24の処方比及び仕込み量に従い、薬物として化合物Aのジェットミル粉砕品、高分子として水溶性高分子であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)(100−150mesh画分)、表24に示すその他の添加剤を粉末で高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込んだ。表25に示す製造条件にて、95%エタノール水溶液(溶媒)をスプレーしながら55分間造粒し、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、化合物A含有粒子を得た。得られた粒子は中空であることを確認し、中空部の直径を表37−2に示した。
用いた高分子の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、用いた薬物の及びその他の添加剤の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、値を26−1に示した。
【0125】
【表24】
【0126】
【表25】
【0127】
【表26-1】
【0128】
作製した粒子の粒度分布をParticle Viewer(パウレック社製)にて測定した。その結果を表26−2及び図8−1に示す。
【0129】
【表26-2】
【0130】
図8−1に示されるように、薬物含有量が非常に低含量でも、粒度分布幅が非常に狭い薬物含有粒子が作製できた。
【0131】
作製した粒子の外観を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−3400N型)にて観察した。球形粒子の外観を図8−2に示す。図8−2で観察されるように、非常に球形度の高い球形粒子が作製できた。
【0132】
比較例3−1
特許文献3で開示されている手法にて粒子を作製した。クエン酸モサプリド250g、D−マンニトール(パーリトール50C)750g、ポリビニルピロリドン(プラスドンK29−32)250gを高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込み、よく混合した。これをブレード回転数400rpm、チョッパー回転数3000rpmで攪拌を続けながら、精製水130gを8g/分の速度で噴霧し、20分間造粒した。造粒後、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、薬物含有粒子を得た。作製した粒子の外観及び断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−3400N型)にて観察した。粒子の外観を図9−1に、断面を図9−2に示すが、得られた粒子は球形でもなく、中空でもなかった。粒子強度は、1.7(MPa)であった。
以上より、特許文献3に開示されている製造方法では、薬物含有中空粒子が作製できないことが分かった。
【0133】
比較例3−2
特許文献4で開示されている手法にて粒子を作製した。化合物Aのミクロナイズド品133g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH−31)347g、乳糖水和物(Pharmatose 200M)87g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)33gを高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込み、よく混合した。これをブレード回転数400rpm、チョッパー回転数3000rpmで攪拌を続けながら、95%エタノール溶液380gを滴下し、28分間造粒した。造粒後、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、薬物含有粒子を得た。作製した粒子の外観を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−3400N型)にて観察したが、一部球形粒子が認められた(図9−3)。その球形粒子の内部状態を、卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に観察したが、中空ではなかった(図9−4)。粒子強度は、2.2(MPa)であった。
以上より、特許文献4に開示されている製造方法では、薬物含有中空粒子が作製できないことが分かった。
【0134】
比較例3−3
非特許文献1で開示されている手法にて粒子を作製した。アセトアミノフェン サンプルミル粉砕品350g、D−マンニトール(パーリトール50C)301g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH−21)35gを高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込み、よく混合した。これをブレード回転数400rpm、チョッパー回転数3000rpmで攪拌を続けながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)7gを精製水126gに溶解させた造粒液を滴下し、5分間造粒した。造粒後、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、薬物含有粒子を得た。作製した粒子の外観を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−3400N型)にて観察したが、球形粒子は認められなかった(図9−5)。また、その球形粒子の内部状態を、卓上型マイクロCTスキャナ(SKYSCAN社製、SKYSCAN1172)にて非破壊的に観察したが、中空ではなかった(図9−6)。粒子強度は、1.6(MPa)であった。
以上より、非特許文献1に開示されている製造方法では、薬物含有中空粒子が作製できないことが分かった。
【0135】
用いた薬物の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、用いた高分子、他の添加剤の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、値を表27に示した。
【0136】
【表27】
【0137】
実施例9
<薬物の粒子径>
表28の処方比及び仕込み量に従い、薬物として平均粒子径の異なる化合物Aのジェットミル粉砕品、機能性高分子としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)の粒度コントロール品(100−165mesh画分)を仕込み量に対し10%粉末添加した。高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)を用い、表29に示す製造条件にて、50%エタノール水溶液又は精製水をスプレーしながら30分間造粒し、マルチプレックスFD−MP−01型を用いて流動層乾燥し、実施例9−1、9−2の化合物A含有粒子を得た。得られた粒子は中空であることを確認し、中空部の直径を表37−2に示した。
用いた高分子の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、用いた薬物の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、値を30−1に示した。また、実施例1−1の処方は表28に、薬物、高分子及び薬物含有粒子の粒度分布は表30−1及び30−2に記載した。
【0138】
【表28】
【0139】
【表29】
【0140】
【表30-1】
【0141】
作製した粒子の粒度分布をParticle Viewer(パウレック社製)にて測定した。その結果を表30−2に示す。
【0142】
【表30-2】
【0143】
作製した粒子の外観及び断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−3400N型)にて観察した。実施例9−1、9−2について、球形粒子の外観を図10−1、10−2に示す。図10−1、10−2で観察されるように、薬物含有粒子が作製できた。
【0144】
実施例10
<高分子の粒子径>
表31の処方比及び仕込み量に従い、実施例10−1〜10−4の薬物含有粒子を製造した。薬物として化合物Aのジェットミル粉砕品、高分子として水溶性高分子であるヒドロキシプロピルセルロースの各種画分を、粉末で高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込んだ。表32に示す製造条件にて、50%エタノール水溶液(溶媒)をスプレーしながら29−39分間造粒し、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、化合物A含有粒子を得た。得られた粒子は中空であることを確認し、中空部の直径を表37−2に示した。
用いた高分子の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、用いた薬物の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、値を表33−1に示した。また、実施例1−1の処方は表31に、薬物、高分子及び薬物含有粒子の粒度分布は表33−1及び33−2に記載した。
【0145】
【表31】
【0146】
【表32】
【0147】
【表33-1】
【0148】
作製した粒子の粒度分布をParticle Viewer(パウレック社製)にて測定した。その結果を表33−2に示す。
【0149】
【表33-2】
【0150】
実施例11
<異なるグレードの水溶性高分子の検討>
実施例11−1について、表34の処方比及び仕込み量に従い、薬物として化合物Aのジェットミル粉砕品、高分子としてヒドロキシプロピルセルロースHPC−SSL(100−140mesh画分)を、粉末で高速攪拌型造粒機バーチカルグラニュレーター(VG) FM−VG−05型(容量:5L)(株式会社パウレック製)に仕込んだ。表35に示す製造条件にて、80%エタノール水溶液(溶媒)をスプレーしながら19分間造粒し、マルチプレックスMP−01型(株式会社パウレック製)を用いて流動層乾燥し、球形度の高い化合物A含有中空粒子を得た。得られた粒子は中空であることを確認し、中空の粒子径を表37−2に示した。
用いた高分子の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(パウレック社製、Particle Viewer)にて測定し、用いた薬物の粒度分布については、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−3000J)にて測定し、値を表36−1に示した。
【0151】
【表34】
【0152】
【表35】
【0153】
【表36-1】
【0154】
作製した粒子の粒度分布をParticle Viewer(パウレック社製)にて測定した。その結果を表36−2に示す。
【0155】
【表36-2】
【0156】
試験例5
実施例1〜4、6〜11で得られた薬物含有粒子(中空粒子)について上記した試験方法及び/又は計算方法に従って、アスペクト比、粒子シェル強度、薬物含有粒子の粒子径、中空部の直径、シェル厚み、シェル厚み率、粒子全体の体積に対する中空の体積比率、表面の滑らかさについて評価した。結果を、表37−1、表37−2に示す。
【0157】
実施例、比較例で使用した、高分子と薬物の粒度分布比(D50/D50)、高分子と薬物の粒度分布比(D10/D90)、高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D50/D50)、高分子と、薬物と他の添加剤の混合末の粒度分布比(D10/D90)を表38−1〜38−3に示す。
【0158】
【表37-1】
【0159】
【表37-2】
【0160】
【表38-1】
【0161】
【表38-2】
【0162】
【表38-3】
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明によれば、打錠やコーティング等の加工も容易に行うことができる程度に十分な強度を有し、かつ薬学的に有用な所望の機能を有する中空構造を有する球状の粒子を提供することができる。また、本発明によれば、流動性がよく、薬物含有率を高くすることが可能であり、粒子の均質性に優れ、他の成分との混合均一性がよい粒子を提供することができる。さらに、本発明によれば、比重の小さい粒子から大きい粒子までを単一の方法で工業的に製造することができ、中空の大きさを自由に制御して密度を変化させ、胃内浮遊製剤などとして有用な浮遊粒子の製造が期待できる。
【0164】
本出願は、特許協力条約に基づく国際出願PCT/JP2012/071016を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図1-10】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図9-5】
図9-6】
図10-1】
図10-2】