【文献】
Biochem. J.,2001年,Vol.356,p.747-756
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記還元剤が、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、ジチオエリスリトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
前記mRNAが、ロックド核酸(LNA)、2’−O−アルキル−RNA単位、2’−OMe−RNA単位、2’−アミノ−DNA単位、および2’−フルオロ−DNA単位からなる群から選択される1つ以上のヌクレオチド修飾を含む、請求項28に記載の方法。
前記1つ以上のポリヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、snRNA、snoRNA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
前記タンパク質または酵素が、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、α1−抗トリプシン、酸アルファグルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、カルボキシペプチダーゼN、アルファガラクトシターゼA、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、アルギナーゼ1(ARG1)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、生存運動ニューロン(SMN)、第IX因子、第VIII因子、および低密度リポタンパク質受容体(LDLR)からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
前記1つ以上の還元剤が、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、ジチオエリスリトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
前記1つ以上のポリヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、snRNA、snoRNA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
前記RNAが、mRNAであり、前記mRNAが、ロックド核酸(LNA)、2’−O−アルキル−RNA単位、2’−OMe−RNA単位、2’−アミノ−DNA単位、および2’−フルオロ−DNA単位からなる群から選択される1つ以上のヌクレオチド修飾を含む、請求項64に記載の方法。
前記還元剤が、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、ジチオエリスリトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
前記酵素が、アルカリホスファターゼ、カルボキシペプチダーゼG2、シトシンデアミナーゼ、ニトロ還元酵素、β−グルクロニダーゼ、α−ガラクトシターゼ、チオレドキシン、およびガンマ−インターフェロン誘導性リソソームチオール還元酵素(GILT)からなる群から選択される、請求項81に記載の方法。
前記mRNAが、ロックド核酸(LNA)、2’−O−アルキル−RNA単位、2’−OMe−RNA単位、2’−アミノ−DNA単位、および2’−フルオロ−DNA単位からなる群から選択される1つ以上のヌクレオチド修飾を含む、請求項93に記載の組成物。
前記mRNAが、5−メチルシトシン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5−ブロモウラシル、5−プロピニルウラシル、6−アミノプリン、2−アミノプリン、イノシン、プソイドウリジン、2−チオウリジン、ジアミノプリン、および2−クロロ−6−アミノプリンシトシンからなる群から独立して選択される、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドを含む、請求項93に記載の組成物。
前記薬剤が、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、ジチオエリスリトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤である、請求項100に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
新規脂質、およびそのような脂質を含むリポソーム組成物が、本明細書において説明される。そのようなリポソーム組成物において1つ以上の治療薬(例えば治療用ポリヌクレオチド)の被包を容易にするために、リポソーム組成物の成分としてそのような脂質(例えば切断可能なカチオン性脂質)を使用する方法も開示される。高い被包効率(例えば従来の中性リポソーム組成物に対して)を有すると特徴付けられる中性リポソーム組成物を調製する方法も、本明細書において開示される。本明細書に記載される新規方法、脂質、および組成物は、1つ以上の治療薬の中性リポソーム組成物への被包、そして後続のそのようなリポソーム組成物による1つ以上の標的細胞の形質移入を容易にするための多機能戦略を採用する。
【0008】
新規脂質、および例えばそのような新規脂質が組み込まれるリポソームビヒクル(例えば脂質ナノ粒子)の性質(例えば表面電荷)を調節するためにそのような脂質を使用する関連する方法が、本明細書において開示される。例えば、ある実施形態では、本発明は、放出可能な極性ヘッド基を有する少なくとも1つの脂質を含むリポソームビヒクル(例えば脂質ナノ粒子)を操作する方法に関し、そのような方法は、リポソームビヒクルを1つ以上の薬剤と接触させて、少なくとも1つの脂質から極性ヘッド基を放出させるステップを含む。いくつかの実施形態では、脂質からそのような極性ヘッド基が放出されたとき、残りのリポソームビヒクルの表面電荷が修飾される。例えば、脂質から極性ヘッド基が放出された後、リポソームビヒクルは、全体的に中性表面電荷(例えば約−2.5〜約+2.5mVの正味表面電荷またはゼータ電位)を有し得る。代替として、脂質から極性ヘッド基が放出された後、リポソームビヒクルは、全体的に負の表面電荷(例えば約−25mV未満の正味表面電荷またはゼータ電位)を有し得る。
【0009】
ある実施形態では、本明細書に開示される脂質は、一般的に、リンカー基として親油性テール基(例えばR
2基として表される)に結合される極性ヘッド基(例えばR
1基として表される)を含む。いくつかの実施形態では、リンカー基は、1つ以上の薬剤または環境に曝露されたとき(例えば酸性環境または還元条件に曝露されたとき)、化学または酵素切断(例えば還元により、または加水分解により)を受けやすい(または受けやすい官能基を含む)。一実施形態では、本発明は、リポソーム組成物を中和する、ないしは別の方法で修飾する方法に関する。一般に、そのようなリポソーム組成物は、式I
【0010】
【化1】
【0011】
の構造を有する、放出可能なヘッド基、テール基、および切断可能なリンカー基を有する少なくとも1つの脂質を含み、式中、R
1は、放出可能な(極性)ヘッド基であり、イミダゾール、グアニジウム、イミン、エナミン、アミノ、任意に置換されたアルキルアミノ(例えばジメチルアミノなどのアルキルアミノ)、および任意に置換されたピリジル(例えばピリジンまたはニトロピリジル)からなる群から選択され、R
2は、
【0012】
【化2】
【0013】
からなる群から選択される親油性または非極性基であり、
式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択され、xは、ジスルフィド、エステル、ヒドラゾン、イミン、アセタール、ケタール、シス−アコニチル、オルト−エステル、無水物、ベータ−チオプロピオン酸塩、ビニルエーテル、ホスホロアミド酸、GLFG、Val−Cit、GG、AA、GGGF、およびPVGLIGからなる群から選択される官能基を含む切断可能なリンカー基であり、nは、ゼロまたは任意の正の整数である。
【0014】
ある実施形態では、本明細書に開示される方法は、極性ヘッド基(R
1)が切断されるか、ないしは別の方法でリポソーム組成物を含む切断可能な脂質のうちの1つ以上から遊離し得(例えば切断可能なリンカー基の還元により)、それによって、親油性R
2基がリポソーム組成物の成分として残るように、脂質またはリポソーム組成物を1つ以上の薬剤と接触させるステップを含む。脂質からの極性R
1基の切断および/または放出により、残りの脂質(および脂質が成分であるリポソーム組成物)の全体的な電荷を修飾し、ある場合では、リポソーム組成物を中和させる。
【0015】
ある実施形態では、切断可能なリンカー基は、還元または切断され、極性ヘッド基は、脂質を薬剤または環境(例えば還元剤または酸性条件)と接触させたときに遊離する。想定される薬剤には、還元剤、例えばトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、およびジチオエリスリトールのうちの1つ以上を含む水性溶液が含まれる。適切な還元剤は、脂質を含む切断可能なリンカー基の性質に基づき選択され得る。例えば、酵素消化を受けやすいリンカー基を含む脂質は、脂質からの極性ヘッド基の切断を容易にするために、適切な酵素と接触されるか、ないしは別の方法でそれに曝露され得る。例えば、ある実施形態では、そのような酵素は、アルカリホスファターゼ、カルボキシペプチダーゼG2、シトシンデアミナーゼ、ニトロ還元酵素、β−グルクロニダーゼ、α−ガラクトシターゼ、チオレドキシン、およびガンマ−インターフェロン誘導性リソソームチオール還元酵素(GILT)からなる群から選択される酵素のうちの1つ以上を含み得る。代替として、他の実施形態では、切断可能なリンカー基は、エステル官能基を含み得、対応する薬剤は、そのようなエステル官能基を容易に加水分解することができる化合物または薬剤を含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、リポソーム組成物の性質(例えば表面電荷または平均ゼータ電位)が修飾される程度は、リポソーム組成物が曝露される選択された還元剤、および/またはそのような曝露期間の関数である。ある実施形態では、リポソーム組成物を、約5分〜約24時間(例えば少なくとも約1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、12分、15分、30分、45分、1時間、3時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間以上)還元剤と接触させる。例えば、本発明に従い調製された脂質ナノ粒子は、脂質ナノ粒子を1つ以上の還元剤と接触させる前は少なくとも約+25mVの平均ゼータ電位(Z
平均)を有し得る。ある実施形態では、脂質ナノ粒子の正の電荷は、1つ以上の治療薬、特に負に荷電された治療薬(例えば機能タンパク質または酵素をコードする治療用核酸)の被包または充填を容易にすることができる。例えば、本明細書に開示される方法に従い調製されるリポソーム組成物は、高被包効率(例えば少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、99%、99.5%以上)を示し得る。同様に、本明細書に開示される方法に従い調製されたリポソーム組成物は、そのような組成物に被包された1つ以上の治療薬の平均濃度に関して特徴付けされ得る。例えば、ある実施形態では、本発明に従い調製されたリポソーム組成物に被包された治療薬の平均濃度は、約0.025μg/mL〜約250μg/mL(例えば少なくとも約0.05μg/mL、0.1μg/mL、0.25μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、75μg/mL、100μg/mL、150μg/mL、200μg/mL以上)である。
【0017】
一旦1つ以上の治療薬で充填されれば、リポソーム組成物の物理的性質は、さらに修飾することができる。例えば、正に荷電されたリポソーム組成物の表面電荷(例えば約+20mVより大きいZ
平均を有する脂質ナノ粒子)は、標的細胞または組織の特徴などの1つ以上の目的に基づき還元されるか、または中和され得る(例えば約+10mV未満にZ
平均を還元する)。ある実施形態では、リポソーム組成物の物理的性質は、リポソーム組成物を、1つ以上の還元剤を含む水性溶液と接触させることにより調節される。リポソーム組成物をそのような還元剤と接触させることにより、脂質の切断可能なリンカー基のうちの1つ以上を切断し、脂質の親油性基(R
2)からの極性ヘッド基(R
1)の解離、および残りのリポソーム組成物のZ
平均の対応する還元をもたらす。ある実施形態では、還元剤への曝露後、リポソーム組成物のZ
平均は、約+10mV〜約−20mV(例えば+10mV、+7.5mV、+5mV、+4mV、+3mV、+2.5mV、+2mV、+1mV、+0.5mV、0mV、−0.5mV、−1mV、−2mV、−2.5mV、−3mV、−4mV、−5mV、−7.5mV、−10mV、−12.5mV、−15mV、または−20mV)である。ある実施形態では、還元剤への曝露後、リポソーム組成物のZ
平均は、約−50mV〜約−5mVである。
【0018】
リポソーム組成物の物理的性質のうちの1つ以上を調節する能力(例えばZ
平均を還元する能力)は、そのような組成物を含む構成要素脂質の組成物に関し、特に、そのようなリポソーム組成物を含む構成要素脂質を含む1つ以上の切断可能なリンカー基の存在に関する。ある実施形態では、リポソーム組成物を含む構成要素脂質のうちに1つ以上は、例えば次の構造
【0019】
【化3】
【0020】
により表される、切断可能なジスルフィド(S−S)リンカー基を含み、式中、R
1は、イミダゾール、グアニジウム、イミン、エナミン、アミノ、任意に置換されたアルキルアミノ(例えばジメチルアミノなどのアルキルアミノ)、および任意に置換されたピリジンまたはピリジル(例えばピリジンまたはニトロピリジル)からなる群から選択される放出可能な(極性)ヘッド基であり、R
2は、
【0021】
【化4】
【0022】
からなる群から選択されるテール基であり、
式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択され、nは、ゼロまたは任意の正の整数である。
【0023】
脂質(またはそのような脂質を含むリポソーム組成物)を1つ以上の薬剤(例えばジスルフィドリンカー基を還元的に切断することができる少なくとも1つの薬剤を含む水性溶液)と接触させたとき、ジスルフィドリンカー基が、脂質から切断され、次の構造
【0024】
【化5】
【0025】
により表される極性基が遊離し、式中、R
1は、イミダゾール、グアニジウム、イミン、エナミン、アミノ、任意に置換されたアルキルアミノ(例えばジメチルアミノなどのアルキルアミノ)、および任意に置換されたピリジルからなる群から選択される放出可能なヘッド基であり、脂質(および脂質が成分であるリポソーム組成物)の物理的性質がそれによって修飾される(例えば中和される)。
【0026】
ある実施形態では、脂質、特に脂質を含む切断可能なジスルフィドリンカー基の1つ以上の還元剤(例えばβ−メルカプトエタノール(β−ME))への曝露後、次の構造
【0027】
【化6】
【0028】
により表されるように、チオール基は、リポソーム組成物の成分として残り、式中、R
2は、
【0029】
【化7】
【0030】
からなる群から選択され、式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択される。
【0031】
還元的に修飾された、または中和された1つ以上の脂質の物理的および化学的性質をさらに修飾する追加の手段も、本明細書において開示される。ある実施形態では、脂質の残りのチオール基を含むスルフヒドリル基を、還元されたリポソーム組成物の物理的および/または化学的性質をさらに修飾するために、1つ以上の追加の化合物でさらに反応させることができる。したがって、ある実施形態では、追加の化学的性質または官能基を導入するために、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の脂質成分を還元的に中和した後、修飾した(例えば中和した)リポソーム組成物の外表面をコーティングする残りのスルフヒドリル基を、さらに反応させることができる。例えば、修飾された、または中性脂質の残りのチオール基を、次の構造
【0032】
【化8】
【0033】
により表される二次薬剤、構造、または化合物と接触させるか、ないしは別の方法で反応させることができ、式中、R
5は、ペプチド、アプタマー、ビタミン、およびオリゴヌクレオチドからなる群から選択される標的リガンドである。ある実施形態では、ジスルフィド結合が形成され、それによって中性脂質がさらに修飾されるような酸化条件下で、還元された脂質を二次薬剤または構造と接触させる。修飾された脂質は、次の構造
【0034】
【化9】
【0035】
により表すことができ、式中、R
5は、ポリマー(例えばポリエチレングリコール)、ペプチド、標的リガンド(例えばアポリポタンパク質B、アポリポタンパク質E、グルコース、ガラクトース、および/またはマンノース)、アルキル(例えば任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
1−C
20アルキル)、およびキャップ構造からなる群から選択され、nは、ゼロまたは任意の正の整数であり、R
2は、
【0036】
【化10】
【0037】
からなる群から選択され、
式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択される。
【0038】
例えば、ある実施形態では、修飾された脂質は、次の構造
【0039】
【化11】
【0040】
のうちの1つにより表すことができ、
式中、R
5は、ポリマー(例えばポリエチレングリコール)、ペプチド、標的リガンド(例えばアポリポタンパク質B、アポリポタンパク質E、グルコース、ガラクトース、および/またはマンノース)、アルキル(例えば任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
1−C
20アルキル)、およびキャップ構造からなる群から選択され、nは、ゼロまたは任意の正の整数である。他の実施形態では、修飾された、または中性脂質のチオール基を、好適な条件下で(例えば酸化条件)、上記の構造(IX)および/または(X)のうちの1つ以上により表される二次薬剤、構造、または化合物と接触させるか、ないしは別の方法で反応させることができる。
【0041】
ある実施形態では、切断可能な脂質は、共同所有米国出願第61/494,745号(代理人整理番号SHIR−022−001)に開示される脂質化合物、および関連する方法のうちの1つ以上に関し、その内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。例えば、いくつかの実施形態では、切断可能な脂質は、式XIの構造を有する化合物5−(((10,13−ジメチル−17−(6−メチルヘプタン−2−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イル)ジスルファニル)メチル)−1H−イミダゾール(本明細書において「HGT4001」と称される)である。
【0042】
【化12】
【0043】
いくつかの実施形態では、切断可能な脂質は、式XIIの構造を有する化合物1−(2−(((3S,10R,13R)−10,13−ジメチル−17−((R)−6−メチルヘプタン−2−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イル)ジスルファニル)エチル)グアニジン(本明細書において「HGT4002」と称される)である。
【0044】
【化13】
【0045】
いくつかの実施形態では、切断可能な脂質は、式XIIIの構造を有する化合物2−((2,3−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)プロピル)ジスルファニル)−N,N−ジメチルエタンアミン(本明細書において「HGT4003」と称される)である。
【0046】
【化14】
【0047】
また他の実施形態では、切断可能な脂質は、式XIVの構造を有する化合物5−(((2,3−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)プロピル)ジスルファニル)メチル)−1H−イミダゾール(本明細書において「HGT4004」と称される)である。
【0048】
【化15】
【0049】
さらに他の実施形態では、切断可能な脂質は、式XVの構造を有する化合物1−(((2,3−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)プロピル)ジスルファニル)メチル)グアニジン(本明細書において「HGT4005」と称される)である。
【0050】
【化16】
【0051】
本明細書に記載される方法、脂質、およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、1つ以上の治療薬を標的細胞、臓器、および組織(例えば肝細胞)に送達するために使用され得る。ある実施形態では、想定される治療薬は、1つ以上の治療用核酸またはポリヌクレオチド(例えばDNAまたはRNA)を含む。したがって、対象における1つ以上の核酸の発現を調節するための方法および組成物が、本明細書において開示される。ある実施形態では、そのような治療用核酸は、RNA(例えばmRNA、siRNA、snoRNA、またはマイクロRNA)を含むか、またはそれからなる。
【0052】
1つ以上の治療薬を中性リポソーム組成物に被包する方法も、本明細書において開示される。そのような方法は、一般的に、リポソーム組成物(例えば切断可能な脂質HGT4002、DMG−PEG2000、コレステロール、およびDOPEを含む脂質ナノ粒子)を1つ以上の治療薬で充填するステップと、リポソーム組成物が修飾される、または中和されるように、リポソーム組成物を1つ以上の還元剤と接触させるステップとを含む。好ましい実施形態では、そのような方法に従い調製されたリポソーム組成物(例えば1つ以上の切断可能な脂質、PEG修飾された脂質、およびヘルパー脂質を含む脂質ナノ粒子)は、還元剤と接触させる前、ないしは別の方法でさらなる修飾(例えば中和)を受ける前に1つ以上の治療薬で充填される。
【0053】
ある実施形態では、本明細書に開示される脂質化合物は、リポソーム組成物または別の方法としてはリポソーム組成物の成分(例えば脂質ナノ粒子)として使用することができるカチオン性および/またはイオン化可能な脂質である。ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)を富化し、それによって改善された性質(例えば、被包されたポリヌクレオチドの1つ以上の標的細胞への送達の改善および/または生体内でのリポソーム組成物の毒性の減少)をそのような富化したリポソーム組成物に付与するために使用される。したがって、本明細書に開示される脂質のうちの1つ以上を含むリポソーム組成物、特に脂質ナノ粒子も想定される。ある実施形態では、そのようなリポソーム組成物は、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質のうちの1つ以上を含む。
【0054】
ある実施形態では、本明細書に記載されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上は、1つ以上の追加の脂質を含む。例えば、本明細書に開示される切断可能な脂質化合物のうちの1つ以上を含む、ないしは別の方法でそれにより富化される脂質ナノ粒子は、DOTAP(1,2−ジオレイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン)、DODAP(1,2−ジオレイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン)、DOTMA(1,2−ジ−O−オクタデセニル−3−トリメチルアンモニウムプロパン)、DLinDMA、DLin−KC2−DMA、C12−200、およびICEのうちの1つ以上をさらに含み得る。一実施形態では、リポソーム組成物は、HGT4001、DOPE、およびDMG−PEG2000を含む脂質ナノ粒子である。別の実施形態では、リポソーム組成物は、HGT4003、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2000を含む脂質ナノ粒子である。
【0055】
ある実施形態では、本明細書に記載されるリポソーム組成物のうちの1つ以上は、1つ以上のPEG修飾された脂質を含み得る。例えば、本明細書に開示される脂質化合物のうちの1つ以上を含むか、ないしは別の方法でそれで富化される脂質ナノ粒子は、1つ以上のC
6−C
20アルキルを含む脂質に共有結合される、長さが最大5kDaのポリ(エチレン)グリコール鎖を含むPEG修飾された脂質のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0056】
同様に、本明細書に開示されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、本明細書に開示される脂質化合物のうちの1つ以上を含み得るか、ないしは別の方法でそれで富化され得、DSPC(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、DPPC(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、DOPE(1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DPPE(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DMPE(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DOPG(,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−(1’−rac−グリセロール))、DOPE(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DSPE(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DLPE(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DPPS(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン)、セラミド、スフィンゴミエリン、およびコレステロールからなる群から選択されるヘルパー脂質のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0057】
ある実施形態では、切断可能な脂質ならびにそのような脂質を含むリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、1つ以上のポリヌクレオチド(例えば被包されたDNAまたはRNA)を含む。他の実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドは、少なくとも1つのロックド核酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、16、18、20以上のロックド核酸残基またはモノマー)を含む。1つ以上の被包されたポリヌクレオチドがRNAを含む場合、そのようなRNAは、例えばmRNA、siRNA、snoRNA、ミクロRNA、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0058】
ある実施形態では、その薬学的およびリポソーム組成物に被包されたポリヌクレオチドは、例えば、機能性ポリペプチド、タンパク質、または酵素をコードするmRNAを含み、1つ以上の標的細胞によって発現される(すなわち翻訳される)とき、機能性ポリペプチド生成物(例えばタンパク質または酵素)が生成され、いくつかの場合では、標的細胞によって対象の末梢循環内に分泌される。ある実施形態では、本明細書に記載される化合物ならびに薬学的およびリポソーム組成物を含む(ないしは別の方法でその中に充填されるか、または被包される)ポリヌクレオチドのうちの1つ以上は、対象によって異常に発現される核酸(例えばポリペプチド)をコードする。
ある実施形態では、そのような化合物またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)を含む被包されたポリヌクレオチドのうちの1つ以上は、尿素回路酵素(例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、またはアルギナーゼ1(ARG1))等の機能性タンパク質または酵素をコードする。 ある実施形態では、被包されたポリヌクレオチドのうちの1つ以上は、リソソーム貯蔵障害に関連する酵素をコードするmRNAを含む(例えば被包されたポリヌクレオチドは、酵素アルファガラクトシターゼA、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、ベータ−グルコシダーゼ、およびガラクトセレブロシダーゼのうちの1つ以上をコードするmRNAである)。核酸がmRNAを含む他の実施形態では、そのようなmRNAは、1つ以上のタンパク質または酵素、例えば対象において欠乏し得るタンパク質または酵素(例えばエリスロポエチン、ヒト成長ホルモン、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、アルファ−L−イズロニダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン 6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、酸アルファ−グルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、およびヒアルロニダーゼからなる酵素群から選択される酵素またはタンパク質)をコードし得る。
【0059】
本明細書において、本明細書に開示される脂質化合物のうちの1つ以上、および1つ以上のポリヌクレオチド(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)、特に1つ以上の化学修飾を含むポリヌクレオチドを含む薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)も想定される。例えば、ポリヌクレオチドがmRNAである、ある実施形態では、そのような化学修飾は、mRNAにより大きな安定性を付与し、例えば、mRNAの5’または3’非翻訳領域の末端封鎖修飾(end blocking modification)を含み得る。ある実施形態では、化学修飾は、mRNAの5’非翻訳領域へのCMV最初期1(IE1)遺伝子の部分配列の包含を含む。他の実施形態では、化学修飾は、mRNAの3’非翻訳領域へのポリAテールの包含を含む。mRNAの5’非翻訳領域へのCap1構造の包含を含む化学修飾も想定される。さらに他の実施形態では、化学修飾は、mRNAの3’非翻訳領域へのヒト成長ホルモン(hGH)をコードする配列の包含を含む。
【0060】
本明細書に記載される脂質およびリポソーム組成物は、1つ以上の標的細胞、組織、および器官を具体的に標的とする、および/またはそれらに形質移入されるように製剤化され得る。ある実施形態では、そのような脂質およびリポソーム組成物は、1つ以上の機構(例えば、膜融合に基づく放出および/または標的細胞の脂質2重層膜のプロトン−海綿質媒介破壊)により、そのような標的細胞への形質移入を容易にする。想定される標的細胞は、例えば、肝細胞、造血細胞、上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、骨細胞、幹細胞、間葉細胞、神経細胞、心細胞、脂肪細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、β細胞、下垂体細胞、滑液系統細胞、卵巣細胞、精巣細胞、線維芽細胞、B細胞、T細胞、網状赤血球、白血球、顆粒球、および腫瘍細胞からなる群から選択される1つ以上の細胞を含む。
【0061】
対象の疾患(例えば遺伝子または核酸の異常発現に関連する疾患)を治療する方法も開示され、本方法は、本明細書に記載される脂質および/またはリポソーム組成物のうちの1つ以上を対象に投与することを含む。1つ以上の標的細胞に1つ以上のポリヌクレオチドを形質移入する方法も想定され、本方法は、1つ以上の標的細胞に被包された1つ以上のポリヌクレオチドが形質移入されるように、1つ以上の標的細胞を本明細書に記載される脂質またはリポソーム組成物と接触させることを含む。
【0062】
本発明の上述および多くの他の特徴および付随する利点は、付随する実施例と合わされるとき、以下の本発明の詳細な説明を参照することによりさらに理解されるだろう。本明細書に記載される様々な実施形態は補足であり、本明細書に含まれる教示を考慮して当業者により理解される様式で組み合わされる、または一緒に使用され得る。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
脂質ナノ粒子を中和する方法であって、上記脂質ナノ粒子が放出可能な極性ヘッド基を有する少なくとも1つの脂質を含み、上記方法が、上記極性ヘッド基が上記脂質から放出され、上記脂質ナノ粒子がそれによって中和されるように、上記脂質ナノ粒子を1つ以上の薬剤と接触させるステップを含む、方法。
(項目2)
上記脂質が、構造
【化33】
を有し、式中、R1が、上記放出可能な極性ヘッド基であり、イミダゾール、グアニジウム、イミン、エナミン、アミノ、任意に置換されたアルキルアミノ、および任意に置換されたピリジルからなる群から選択され、
R2が、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のアルキル、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のアシル、任意に置換されたピリジル、
【化34】
からなる群から選択され、
R3およびR4がそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC6−C20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC6−C20アシルからなる群から選択され、
nが、ゼロ、または任意の正の整数である、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記1つ以上の薬剤が、上記脂質のジスルフィド結合を還元的に切断することができる、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記脂質の上記ジスルフィド結合を還元的に切断するとき、構造
【化35】
が上記脂質から遊離し、上記脂質がそれによって中和される、項目3に記載の方法。
(項目5)
上記脂質の上記ジスルフィド結合を還元的に切断するとき、残りの中性脂質は、構造
【化36】
を有する、項目3に記載の方法。
(項目6)
修飾された脂質が形成されるように、上記残りの中性脂質を修飾するステップをさらに含み、
上記修飾された脂質が、次の構造
【化37】
を有し、式中、R5が、ポリマー、ペプチド、標的リガンド、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のアルキル、およびキャップ構造からなる群から選択され、
nが、ゼロまたは任意の正の整数である、項目5に記載の方法。
(項目7)
上記中性脂質を修飾する上記ステップが、ジスルフィド結合が形成され、上記中性脂質がそれによって修飾されるような酸化条件下で、上記中性脂質を、次の構造
【化38】
を有する二次化合物と接触させることを含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
上記中性脂質を修飾する上記ステップが、上記中性脂質を、次の構造
【化39】
を有する二次化合物と接触させることを含み、
式中、R5が、ポリマー、ペプチド、標的リガンド、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のアルキル、およびキャップ構造からなる群から選択され、
nが、ゼロ、または任意の正の整数である、項目6に記載の方法。
(項目9)
上記中性脂質を修飾する上記ステップが、上記中性脂質を、次の構造
【化40】
を有する二次化合物と接触させることを含み、
式中、R5が、ポリマー、ペプチド、標的リガンド、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のアルキル、およびキャップ構造からなる群から選択され、
nが、ゼロ、または任意の正の整数である、項目6に記載の方法。
(項目10)
R5が、ペプチド、アプタマー、ビタミン、およびオリゴヌクレオチドからなる群から選択される標的リガンドである、項目6に記載の方法。
(項目11)
R5が、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質E、グルコース、ガラクトース、およびマンノースからなる群から選択される標的リガンドである、項目6に記載の方法。
(項目12)
R5が、ポリエチレングリコールである、項目6に記載の方法。
(項目13)
R5が、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC1−C20アルキルである、項目6に記載の方法。
(項目14)
上記1つ以上の薬剤が、還元剤である、項目1に記載の方法。
(項目15)
上記還元剤が、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、ジチオエリスリトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目16)
上記還元剤が、溶液の形態である、項目15に記載の方法。
(項目17)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約5分間、上記還元剤と接触させる、項目15に記載の方法。
(項目18)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約1時間、上記還元剤と接触させる、項目15に記載の方法。
(項目19)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約3時間、上記還元剤と接触させる、項目15に記載の方法。
(項目20)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約24時間、上記還元剤と接触させる、項目15に記載の方法。
(項目21)
上記脂質ナノ粒子のゼータ電位が、上記脂質ナノ粒子を上記還元剤と接触させる前は少なくとも約25mVであり、上記脂質ナノ粒子を上記還元剤と接触させた後は約5mV未満である、項目15に記載の方法。
(項目22)
上記脂質ナノ粒子のゼータ電位が、上記脂質ナノ粒子を上記還元剤と接触させた後は約−25.0mV〜約5.0mVである、項目21に記載の方法。
(項目23)
上記脂質ナノ粒子のゼータ電位が、上記脂質ナノ粒子を上記還元剤と接触させた後は約−5.0mV〜約5.0mVである、項目21に記載の方法。
(項目24)
上記脂質ナノ粒子が、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目25)
上記脂質ナノ粒子が、1つ以上の治療薬を被包する、項目1に記載の方法。
(項目26)
上記脂質ナノ粒子が、上記脂質ナノ粒子を中和する前に1つ以上の治療薬で充填される、項目1に記載の方法。
(項目27)
上記治療薬が、1つ以上のポリヌクレオチドを含む、項目25に記載の方法。
(項目28)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、mRNAを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
上記mRNAが、ロックド核酸(LNA)、2’−O−アルキル−RNA単位、2’−OMe−RNA単位、2’−アミノ−DNA単位、および2’−フルオロ−DNA単位からなる群から選択される1つ以上のヌクレオチド修飾を含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
上記中和された脂質ナノ粒子が、少なくとも0.1μgの被包されたポリヌクレオチドを含む、項目27に記載の方法。
(項目31)
上記中和された脂質ナノ粒子が、少なくとも0.5μgの被包されたポリヌクレオチドを含む、項目27に記載の方法。
(項目32)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、snRNA、snoRNA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目27に記載の方法。
(項目33)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、1つ以上のLNAを含む、項目27に記載の方法。
(項目34)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、DNAを含む、項目27に記載の方法。
(項目35)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、RNAを含む、項目27に記載の方法。
(項目36)
上記RNAが、mRNA、siRNA、snoRNA、マイクロRNA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目35に記載の方法。
(項目37)
上記RNAが、タンパク質または酵素をコードする、項目35に記載の方法。
(項目38)
上記タンパク質または酵素が、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、α1−抗トリプシン、酸アルファグルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、カルボキシペプチダーゼN、アルファガラクトシターゼA、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、アルギナーゼ1(ARG1)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、生存運動ニューロン(SMN)、第IX因子、第VIII因子、および低密度リポタンパク質受容体(LDLR)からなる群から選択される、項目37に記載の方法。
(項目39)
項目1に記載の方法に従い調製された、中性脂質ナノ粒子。
(項目40)
1つ以上の治療薬をさらに含む、項目39に記載の中性脂質ナノ粒子。
(項目41)
項目9に記載の方法に従い調製された、修飾された脂質ナノ粒子。
(項目42)
1つ以上の治療薬をさらに含む、項目41に記載の修飾された脂質ナノ粒子。
(項目43)
項目40または42に記載の脂質ナノ粒子を対象に投与することを含む、治療方法。
(項目44)
中性脂質ナノ粒子に1つ以上の治療薬を被包する方法であって、(a)少なくとも1つの還元可能なカチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子を1つ以上の治療薬で充填するステップと、(b)上記脂質ナノ粒子が中和されるように、上記脂質ナノ粒子を1つ以上の還元剤と接触させるステップと、を含む、方法。
(項目45)
上記中性脂質ナノ粒子が、少なくとも50%の被包効率を有する、項目44に記載の方法。
(項目46)
上記中性脂質ナノ粒子が、少なくとも75%の被包効率を有する、項目44に記載の方法。
(項目47)
上記中性脂質ナノ粒子が、少なくとも90%の被包効率を有する、項目44に記載の方法。
(項目48)
上記還元可能なカチオン性脂質が、構造
【化41】
を有する、項目44に記載の方法。
(項目49)
上記還元可能なカチオン性脂質が、構造
【化42】
を有する、項目44に記載の方法。
(項目50)
上記還元可能なカチオン性脂質が、構造
【化43】
を有する、項目44に記載の方法。
(項目51)
上記1つ以上の還元剤が、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、ジチオエリスリトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目44に記載の方法。
(項目52)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約5分間、上記還元剤と接触させる、項目44に記載の方法。
(項目53)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約1時間、上記還元剤と接触させる、項目44に記載の方法。
(項目54)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約3時間、上記還元剤と接触させる、項目44に記載の方法。
(項目55)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約24時間、上記還元剤と接触させる、項目44に記載の方法。
(項目56)
上記脂質ナノ粒子のゼータ電位が、上記脂質ナノ粒子を上記1つ以上の還元剤と接触させる前は少なくとも約25mVであり、上記脂質ナノ粒子を上記1つ以上の還元剤と接触させた後は約5mV未満である、項目44に記載の方法。
(項目57)
上記脂質ナノ粒子のゼータ電位が、上記脂質ナノ粒子を上記1つ以上の還元剤と接触させた後は約−25.0mV〜約5.0mVである、項目56に記載の方法。
(項目58)
上記脂質ナノ粒子のゼータ電位が、上記脂質ナノ粒子を上記1つ以上の還元剤と接触させた後は約−10.0mV〜約5.0mVである、項目56に記載の方法。
(項目59)
上記脂質ナノ粒子が、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、項目44に記載の方法。
(項目60)
上記治療薬が、1つ以上のポリヌクレオチドを含む、項目44に記載の方法。
(項目61)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、snRNA、snoRNA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目60に記載の方法。
(項目62)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、1つ以上のLNAを含む、項目60に記載の方法。
(項目63)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、DNAを含む、項目60に記載の方法。
(項目64)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、RNAを含む、項目60に記載の方法。
(項目65)
上記RNAが、mRNAであり、上記mRNAが、ロックド核酸(LNA)、2’−O−アルキル−RNA単位、2’−OMe−RNA単位、2’−アミノ−DNA単位、および2’−フルオロ−DNA単位からなる群から選択される1つ以上のヌクレオチド修飾を含む、項目64に記載の方法。
(項目66)
上記RNAが、mRNA、siRNA、snoRNA、マイクロRNA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目64に記載の方法。
(項目67)
上記RNAが、タンパク質または酵素をコードする、項目64に記載の方法。
(項目68)
項目44に記載の方法に従い調製された中性脂質ナノ粒子。
(項目69)
項目68に記載の中性脂質ナノ粒子を対象に投与することを含む、治療方法。
(項目70)
脂質ナノ粒子を中和する方法であって、上記脂質ナノ粒子が放出可能な極性ヘッド基を有する少なくとも1つの脂質を含み、上記方法が、上記極性ヘッド基が上記脂質から放出され、それによって上記脂質ナノ粒子を中和するように、上記脂質ナノ粒子を1つ以上の薬剤と接触させるステップを含み、上記脂質が、構造
【化44】
を有し、式中、R1が、放出可能な極性ヘッド基であり、イミダゾール、グアニジウム、イミン、エナミン、アミノ、任意に置換されたアルキルアミノ、および任意に置換されたピリジルからなる群から選択され、
R2が、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のアルキル、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のアシル、任意に置換されたピリジル、
【化45】
からなる群から選択され、
式中、R3およびR4がそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC6−C20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC6−C20アシルからなる群から選択され、
xが、ジスルフィド、エステル、ヒドラゾン、イミン、アセタール、ケタール、シス−アコニチル、オルト−エステル、無水物、ベータ−チオプロピオン酸塩、ビニルエーテル、ホスホロアミド酸、GLFG、Val−Cit、GG、AA、GGGF、およびPVGLIGからなる群から選択される切断可能なリンカー基であり、
nが、ゼロ、または任意の正の整数である、方法。
(項目71)
上記切断可能なリンカー基が、ジスルフィドである、項目70に記載の方法。
(項目72)
上記1つ以上の薬剤が、還元剤である、項目71に記載の方法。
(項目73)
上記還元剤が、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、ジチオエリスリトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目72に記載の方法。
(項目74)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約5分間、上記還元剤と接触させる、項目72に記載の方法。
(項目75)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約1時間、上記還元剤と接触させる、項目72に記載の方法。
(項目76)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約3時間、上記還元剤と接触させる、項目72に記載の方法。
(項目77)
上記脂質ナノ粒子を、少なくとも約24時間、上記還元剤と接触させる、項目72に記載の方法。
(項目78)
上記脂質ナノ粒子の上記ゼータ電位が、上記脂質ナノ粒子を上記1つ以上の還元剤と接触させる前は少なくとも約25mVであり、上記脂質ナノ粒子を上記1つ以上の還元剤と接触させた後は約5mV未満である、項目72に記載の方法。
(項目79)
上記脂質ナノ粒子の上記ゼータ電位が、上記脂質ナノ粒子を上記還元剤と接触させた後は約−25.0mV〜約5.0mVである、項目78に記載の方法。
(項目80)
上記脂質ナノ粒子の上記ゼータ電位が、上記脂質ナノ粒子を上記還元剤と接触させた後は約−5.0mV〜約5.0mVである、項目78に記載の方法。
(項目81)
上記1つ以上の薬剤が、酵素である、項目71に記載の方法。
(項目82)
上記酵素が、アルカリホスファターゼ、カルボキシペプチダーゼG2、シトシンデアミナーゼ、ニトロ還元酵素、β−グルクロニダーゼ、α−ガラクトシターゼ、チオレドキシン、およびガンマ−インターフェロン誘導性リソソームチオール還元酵素(GILT)からなる群から選択される、項目81に記載の方法。
(項目83)
上記脂質が、構造
【化46】
を有する、項目71に記載の方法。
(項目84)
上記脂質が、構造
【化47】
を有する、項目71に記載の方法。
(項目85)
上記脂質が、構造
【化48】
を有する、項目71に記載の方法。
(項目86)
上記切断可能なリンカー基が、エステルである、項目70に記載の方法。
(項目87)
上記1つ以上の薬剤が、上記脂質ナノ粒子を接触させたとき、上記エステルを加水分解する、項目86に記載の方法。
(項目88)
項目70に記載の方法に従い調製された脂質ナノ粒子。
(項目89)
上記脂質ナノ粒子が、少なくとも50%の被包効率を有する、項目88に記載の脂質ナノ粒子。
(項目90)
上記脂質ナノ粒子が、少なくとも75%の被包効率を有する、項目88に記載の脂質ナノ粒子。
(項目91)
上記脂質ナノ粒子が、少なくとも90%の被包効率を有する、項目88に記載の脂質ナノ粒子。
(項目92)
1つ以上の治療薬をさらに含む、項目88に記載の脂質ナノ粒子。
(項目93)
上記治療薬が、mRNAである、項目92に記載の脂質ナノ粒子。
(項目94)
上記脂質ナノ粒子が、少なくとも0.1μgの被包された治療薬を含む、項目92に記載の脂質ナノ粒子。
(項目95)
上記脂質ナノ粒子が、少なくとも0.5μgの被包された治療薬を含む、項目92に記載の脂質ナノ粒子。
(項目96)
上記mRNAが、ロックド核酸(LNA)、2’−O−アルキル−RNA単位、2’−OMe−RNA単位、2’−アミノ−DNA単位、および2’−フルオロ−DNA単位からなる群から選択される1つ以上のヌクレオチド修飾を含む、項目93に記載の脂質ナノ粒子。
(項目97)
上記mRNAが、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間連結基を含む、項目93に記載の脂質ナノ粒子。
(項目98)
上記mRNAが、全てのホスホロチオエートヌクレオチド間連結基を含む、項目93に記載の脂質ナノ粒子。
(項目99)
上記mRNAが、5−メチルシトシン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5−ブロモウラシル、5−プロピニルウラシル、6−アミノプリン、2−アミノプリン、イノシン、プソイドウリジン、2−チオウリジン、ジアミノプリン、および2−クロロ−6−アミノプリンシトシンからなる群から独立して選択される、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドを含む、項目93に記載の脂質ナノ粒子。
(項目100)
リポソームビヒクルの表面電荷を調節する方法であって、上記リポソームビヒクルが、放出可能な極性ヘッド基を含む少なくとも1つの脂質を含み、上記方法が、上記リポソームビヒクルを少なくとも1つの薬剤と接触させるステップを含み、上記リポソームビヒクルを少なくとも1つの薬剤と接触させるとき、上記極性ヘッド基が、上記脂質から放出され、上記リポソームビヒクルの上記表面電荷がそれによって調節される、方法。
(項目101)
上記リポソームビヒクルが、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、項目100に記載の方法。
(項目102)
上記リポソームビヒクルの正味表面電荷が、上記リポソームビヒクルを上記少なくとも1つの薬剤と接触させる前は少なくとも約+25mVであり、上記リポソームビヒクルを上記少なくとも1つの薬剤と接触させた後は約−5.0mV未満である、項目101に記載の方法。
(項目103)
上記リポソームビヒクルが、脂質ナノ粒子である、項目101に記載の方法。
(項目104)
上記調節されたリポソームビヒクルの上記正味表面電荷が、約−25mV未満である、項目100に記載の方法。
(項目105)
上記調節されたリポソームビヒクルの上記正味表面電荷が、約−50mV未満〜約−10mVである、項目100に記載の方法。
(項目106)
上記調節されたリポソームビヒクルの上記正味表面電荷が、約−5.0mV未満〜約+5.0mVである、項目100に記載の方法。
(項目107)
上記薬剤が、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、ジチオエリスリトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤である、項目100に記載の方法。
(項目108)
上記脂質が、構造
【化49】
を有する、項目100に記載の方法。
(項目109)
上記脂質が、構造
【化50】
を有する、項目100に記載の方法。
(項目110)
上記脂質が、構造
【化51】
を有する、項目100に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0064】
新規脂質およびそのような新規脂質を使用して調製されたリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)が、本明細書において提供される。本明細書に開示される組成物は、従来の表面電荷が中性のリポソーム送達系に関連する限界の多く、例えば電荷が神経の脂質(charge neural lipid)に頻繁に関連する低被包効率に対処する。ある場合では、本明細書に記載される発明は、一般的に、新規切断可能な脂質(例えば切断可能なカチオン性脂質)、および1つ以上の治療薬(例えばポリヌクレオチド)のリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)への効率的な被包を容易するためにそのような脂質を使用する方法に関する。
【0065】
薬物動態性質および全身投与された脂質またはリポソームに基づく組成物(例えば脂質ナノ粒子)が標的細胞、臓器、または組織に達する能力は、そのような組成物の表面電荷によって頻繁に影響を受ける。例えば、対象への全身投与後、高表面電荷を有するリポソーム組成物は、末梢循環においてある細胞、臓器、または巨大分子と相互作用する可能性が高く、それによって、そのようなリポソーム組成物の排出が、それらが標的細胞または組織に達する前に促進される。結果として、被包されたあるリポソームに基づく組成物および治療薬の有効性および利用性は大幅に制限され得る。
【0066】
比較的電荷が神経(charge neural)であると特徴付けされる脂質およびリポソームに基づく組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、それらの荷電された対応物に対して改善された薬物動態特徴を頻繁に示してきたが、そのような電荷が中性のリポソーム組成物は、従来、低被包効率、特に核酸またはポリヌクレオチドの被包に関して悩まされてきた。例えば、中性脂質およびそのような脂質から調製された表面電荷が中性のリポソーム組成物は、非常に低い被包効率を示し、これは、頻繁に、核酸に基づく療法に関して10%未満である。比較的中性の表面電荷を保有し、高被包効率を示す、技術認識された脂質ナノ粒子の必要性が残存する。
【0067】
新規脂質、リポソーム組成物、およびその表面電荷が中和される、ないしは別の方法で修飾される、改善された被包効率を示す関連する使用方法が、本明細書において開示される。したがって、本明細書に開示される脂質および関連する方法は、一般的に、荷電された脂質に関連する有益な性質を維持し、(例えば高被包効率)ある実施形態では、比較的中性の表面電荷を保有するように設計され得る。
【0068】
一般に、本明細書に開示される脂質は、中間体リンカー基を手段として親油性(非極性)基に結合される親水性(極性)ヘッド基を含む。そのような脂質は、1つ以上の治療薬(例えば機能タンパク質または酵素をコードするポリヌクレオチド)を被包するのに好適なリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)を調製するために使用され得る。ある実施形態では、本発明の脂質を含むリンカー基は、例えば脂質を還元剤または環境に曝露することによって切断することができ、親水性ヘッド基が遊離し、それによって、脂質またはリポソーム組成物の表面電荷を中和する、ないしは別の方法で修飾する。好ましい実施形態では、本発明の脂質は、リポソーム組成物の成分として製剤化され、そのような組成物の表面電荷は、治療薬がそのような組成物に被包された後に中和される、ないしは別の方法で修飾される。そのような組成物の表面が荷電されると同時に治療薬をリポソーム組成物内に被包することにより、被包効率が改善される。
【0069】
ある実施形態では、本明細書に開示される方法は、脂質の極性ヘッド基(R
1)が切断されるか、ないしは別の方法でリポソーム組成物を含む切断可能な脂質のうちの1つ以上から放出され得(例えば切断可能なリンカー基の還元により)、それによって、親油性R
2基が脂質ナノ粒子の成分として残るように、脂質(または脂質が成分であるリポソーム組成物)を1つ以上の薬剤と接触させるステップを含む。脂質からの極性ヘッド基(R
1)の切断および/または放出により、残りの脂質(および脂質が成分であるリポソーム組成物)の全体的な電荷を修飾し、ある場合では、脂質ナノ粒子を中和する。
【0070】
本明細書で使用される、用語「中性」および「中和する」は、本明細書に提供される方法に従い、脂質、特に実質的に表面電荷が中性であるか、または実質的に表面電荷を中性の状態にするリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)を指す。例えば、ある実施形態では、本明細書に開示されるカチオン性脂質は、正の表面電荷(例えば約+30mVのZ
平均)を有し、1つ以上のポリヌクレオチドを被包するリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)を調製するために使用され得る。そのようなリポソーム組成物は、組成物が比較的中和された状態になるように(例えば約−3.0mV〜+3.0mVのZ
平均)、本明細書に提供される教示に従い修飾され得る。ある実施形態では、本明細書に開示される中性脂質ナノ粒子は、約−10.0mV〜+10.0mV(例えば約+10mV、+8mV、+7.5mV、+6mV、+5mV、+4mV、+3mV、+2.5mV、+2mV、+1mV、+0.5mV、+0.25mV、0mV、−0.25mV、−0.5mV、−1mV、−2mV、−2.5mV、−3mV、−4mV、−5mV、−7.5mV、または−10mV)、または好ましくは約−2.5mV〜+2.5mVのZ
平均を有すると特徴付けされ得る。代替として、ある実施形態では、本明細書に記載される修飾された脂質ナノ粒子は、約−5mV〜約−50mVのZ
平均を有すると特徴付けされ得る。
【0071】
平均ゼータ電位(Z
平均)は、リポソーム組成物の集団の平均表面電荷を示し、そのようなリポソーム組成物の平均電荷の程度を表す。Z
平均は、リポソーム組成物の粒径、粒子の安定性、被包効率、および薬物動態性質に影響を及ぼす。被包される治療薬がアニオン性ポリヌクレオチド(例えば機能酵素をコードするmRNA)を含むある実施形態では、本発明の1つ以上のカチオン性脂質を組み込むリポソーム組成物にそのようなポリヌクレオチドを被包することはさらに効率的であり得る。そのような実施形態では、アニオン性ポリヌクレオチドとの相互作用、およびアニオン性ポリヌクレオチドのリポソーム組成物のカチオン性脂質二重層内への被包は、リポソーム組成物の被包効率を強化するのに役立つ。ある実施形態では、治療薬が一旦被包されると、リポソーム組成物の表面電荷は、その教示に従い修飾され得る(例えば中和される)。
【0072】
ある実施形態では、本明細書に開示される脂質は、式I
【0074】
により示される構造を有し、式中、R
1は、親水性(極性)基を表し、R
2は、親油性(非極性)基を表す。ある実施形態では、R
1は、イミダゾール、グアニジウム、イミン、エナミン、アミノ、任意に置換されたアルキルアミノ(例えばジメチルアミノなどのアルキルアミノ)、および任意に置換されたピリジルからなる群から選択される。ある実施形態では、R
2は、
【0076】
からなる群から選択され、
式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択される。ある実施形態では、nは、ゼロまたは任意の正の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。本明細書に開示される脂質は、一般的に、式Iにおいてxで表される、切断可能なリンカー基を含む。
【0077】
本明細書で使用される、用語「アルキル」は、直鎖および分枝鎖両方のC
1−C
40炭化水素(例えばC
6−C
20炭化水素)を指し、飽和および不飽和両方の炭化水素を含む。ある実施形態では、アルキルは、1つ以上の環式アルキルおよび/または酸素、窒素、もしくは硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含み得、置換基(例えばアルキル、ハロ、アルコキシル、ヒドロキシ、アミノ、アリール、エーテル、エステル、またはアミドのうちの1つ以上)で任意に置換され得る。ある実施形態では、想定されるアルキルは、(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエンを含む。例えば「C
6−C
20」などの指定の使用は、列挙される範囲の炭素原子を有するアルキル(例えば直鎖または分枝鎖、ならびにアルケンおよびアルキルを含む)を指すことが意図される。本明細書で使用される、用語「アリール」は、環部分に6〜10個の炭素を含有する芳香族基(例えば単環式、二環式、および三環式構造)を指す。アリール基は、利用可能な炭素原子を通して任意に置換され得、ある実施形態では、酸素、窒素、または硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含み得る。
【0078】
本明細書で使用される、句「リンカー基」は、親水性(極性)ヘッド基および親油性(非極性)テール基に共有結合される有機官能部分を指す。本発明のある実施形態によると、リンカー基は、1つ以上の薬剤と接触さたとき、切断され得(例えば加水分解、還元により、または酵素的に)、それによって、ヘッド基を残りのテール基から解離させる。本発明の脂質、特にそのような脂質を含む官能基を説明するために本明細書で使用される、用語「ヘッド基」および「テール基」は、他の官能基に対する1つ以上の官能基の配向を説明するために容易に参照できるように使用されることに留意するべきである。例えば、ある実施形態では、親水性ヘッド基(例えばグアニジウム)は、(水素結合、ファンデルワールスの力、イオン相互作用、および共有結合のうちの1つ以上によって)切断可能なリンカー基(例えばジスルフィド基)に結合され、これは、同時に、疎水性テール基(例えばコレステロール)に結合される。
【0079】
ある実施形態では、本明細書に開示される脂質を含む官能基または部分うちの少なくとも1つは、性質が疎水性(例えばコレステロールなどの天然に生じる脂質を含む疎水性テール基)である。本明細書で使用される、用語「疎水性」は、官能基が水を避けることを性質上の用語で示すために使用され、そのような官能基は水可溶性ではない。例えば、1つ以上の疎水基に結合される切断可能な官能基(例えばジスルフィド(S−S)基)を含む化合物が、本明細書において開示され、そのような疎水基は、コレステロールなどの1つ以上の天然に生じる脂質、ならびに/または任意に置換された可変的に飽和もしくは不飽和のC
6−C
20アルキル、および/もしくは任意に置換された可変的に飽和もしくは不飽和のC
6−C
20アシルを含む。
【0080】
ある実施形態では、本明細書に開示される脂質を含む官能基または部分のうちの少なくとも1つは、性質上親水性(例えばカチオン性イミダゾール部分を含む親水性ヘッド基)である。本明細書で使用される、用語「親水性」は、官能基が水を好むことを性質上の用語で示すために使用され、そのような官能基は水可溶性である。例えば、1つ以上の親水性基(例えば親水性ヘッド基)に結合される切断可能なジスルフィド(S−S)官能基を含む化合物が、本明細書において開示され、そのような親水性基は、イミダゾール、グアニジウム、アミノ、イミン、エナミン、任意に置換されたアルキルアミノ(例えばジメチルアミノなどのアルキルアミノ)、およびピリジルを含むか、またはそれらからなる群から選択される。ある実施形態では、脂質の親水性ヘッド基(例えばカチオン性イミダゾールヘッド基)は、荷電される。本発明の教示による脂質からそのような荷電されたリンカー基を切断したとき、それに結合された親水性ヘッド基は、脂質から遊離し、残りの脂質(またはそのような残りの脂質が成分であるリポソーム組成物)の性質は、それによって修飾される(例えば中和される)。
【0081】
一実施形態では、本発明は、そのような組成物の表面電荷が修飾されるように、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)を中和する、ないしは別の方法で修飾する方法に関する。一般的に、そのようなリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、リンカー基に結合された(例えば共有結合された)ヘッド基(例えばカチオン性ヘッド基)を有する少なくとも1つの脂質を含む。いくつかの実施形態では、リンカー基は、切断(例えば化学的または酵素的切断)を受けやすい官能基である(またはそれを含む)。そのような切断は、1つ以上の薬剤、または環境、もしくは条件(例えば還元、加水分解、または当業者に公知の任意の数の好適な機構によって)に曝露されたときに触媒され得る。脂質からの極性ヘッド基の解離(例えばリンカー基の切断時に観察され得る)は、そのような脂質(またはそのような脂質が成分であるリポソーム組成物)の電荷の修飾をもたらす。ある実施形態では、リンカー基は、エステル官能基を含む。
【0082】
ある実施形態では、本明細書に開示される脂質化合物は、一般的に、1つ以上の切断可能なリンカー基を含む。例えば、そのようなリンカー基は、下の式IV
【0084】
に示されるように、1つ以上のジスルフィド(S−S)官能基を含むか、またはそれらかなり得、式中、R
1は、親水性(極性)ヘッド基を表し、R
2は、親油性(非極性)テール基を表す。ある実施形態では、R
1は、イミダゾール、グアニジウム、イミン、エナミン、アミノ、任意に置換されたアルキルアミノ(例えばジメチルアミノなどのアルキルアミノ)、および任意に置換されたピリジルからなる群から選択され得る。ある実施形態では、R
2は、
【0086】
からなる群から選択され得、
式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択される。ある実施形態では、nは、1(アルキルがエチルであるように)、2(アルキルがメチルであるように)、3(アルキルが、例えばプロピルまたはイソ−プロピルであるように)、4(アルキルが、例えばブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、またはter−ブチルであるように)、5(アルキルが、例えばペンタンであるように)、6(アルキルが、例えばヘキサンであるように)、7(アルキルが、例えばヘプタンであるように)、8(アルキルが、例えばオクタンであるように)、9(アルキルが、例えばノナンであるように)、または10(アルキルが、例えばデカンであるように)である。
【0087】
脂質またはリンカー基を指すように本明細書で使用される、用語「切断」および「切断可能」は、一般的に、対象の官能基(例えばジスルフィドリンカー基)の、またはそれに隣接する原子間の1つ以上の化学結合(例えば共有結合、水素結合、ファンデルワールスの力、および/またはイオン相互作用のうちの1つ以上)が破壊されるか(例えば加水分解される、還元される、または酸化される)、または選択された薬剤または条件に曝露されたときに破壊されることが可能であることを意味する。例えば、酸不安定リンカー基は、酸性条件に曝露されたときに(例えば約7.0未満のpH)切断可能であり得る。ある実施形態では、切断可能な基はジスルフィド官能基であり、特定の実施形態では、選択された生物学的条件(例えば細胞内条件)に曝されたときに切断可能であるジスルフィド基である。ある実施形態では、切断可能な基は、選択された生物学的条件に曝されたときに切断可能であるエステル官能基である。例えば、ジスルフィド官能基は、酵素的に、もしくは加水分解により、または代替として還元条件に曝露されるときに切断され得る。そのようなジスルフィド官能基の切断時に、結合される1つ以上の官能部分または官能基(例えば頭部基)が遊離され得る。例示的な切断可能な基としては、ジスルフィド基、エステル基、エーテル基、およびそれらの誘導体(例えば、アルキルおよびアリールエステル)が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、切断可能な基は、エステル基またはエーテル基でない。
【0088】
酵素切断可能基は、多くの薬物送達系に採用され、そのような系の大部分は、プロドラッグの文脈においてであった(Sherwood,R.F.Adv.Drug Del.Rev.1996,22,269−288)。ある実施形態では、そのような酵素は、本明細書に開示される組成物の1つ以上の官能基を切断するためにも採用され得る。プロドラッグの文脈内で利用され、1つ以上の官能基を切断するためにも採用され得る例示的な酵素としては、アルカリホスファターゼ、カルボキシペプチダーゼG2、シトシンデアミナーゼ、ニトロ還元酵素、β−グルクロニダーゼ、α−ガラクトシターゼ、チオレドキシン、およびガンマ−インターフェロン誘導性リソソームチオール還元酵素(GILT)を挙げることができるが、これらに限定されない。さらに、多くの酵素切断可能基は、ペプチド配列の特異的認識に関する。本発明により想定される例示的な酵素切断可能配列(およびそれらの対応する酵素)は、Val−Citジペプチド(カテプシンB)(Toki,et al.J.Org.Chem.2002,67:1866−1872、Yoneda,et al.Bioorg.Med.Chem.Lett.2008,18:1632−1636)、GFLG(カテプシンB)(Nori,et al.Bioconj.Chem.2003,14:44−50、Veronese,et al.Bioconj.Chem,2005,16:775−784)、GGGF(カテプシンB)(DeNardo,et al.Clin.Canc.Res.2003,9:3665s−3972s)、PVGLIG(MMP)(Chau,et al.J.Pharm.Sci.2006,95:542−551)、AAN(legumain)(Stern et al.Bioconj.Chem.2009,20:500−510)を含むが、これらに限定されない。
【0089】
ある実施形態では、切断可能な基は、酸不安定官能基であり得る。例えば、プロドラッグ複合体、ポリマー複合体、ナノ粒子、および脂質に基づく系などの薬物送達系の宿主からの強化された薬物放出に採用される酸不安定官能基は、本明細書に開示される組成物および方法に採用され得る。想定される酸不安定官能基または連結は、例えばヒドラゾン部分、イミン連結、アセタール部分、ケタール部分、シス−アコニチル系、オルトエステル、チオプロピオン酸塩、マレイン酸無水物、エナミン、およびビニルエーテルを含み得る。
【0090】
ある実施形態では、切断可能基は、本明細書に開示される組成物から1つ以上の薬剤を遊離させるために採用され得る。例えばジスルフィド官能基の切断時、例えば、1つ以上の薬剤またはカーゴ(例えば小分子、タンパク質、または核酸)の採用が想定される。
【0091】
本明細書に記載される切断可能な基は、一般に、1つ以上の官能部分または官能基(例えば、少なくとも1つの頭部基および少なくとも1つのテール基)に結合される(例えば、水素結合、ファンデルワールスの力、イオン相互作用、および共有結合のうちの1つ以上により結合される)。ある実施形態では、官能部分または官能基のうちの少なくとも1つは、親水性(例えば、イミダゾール、グアニジウム、アミノ、イミン、エナミン、任意に置換されたアルキルアミノ、およびピリジルのうちの1つ以上を含む親水性ヘッド基)である。本発明のそれらの脂質組成物がリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)に組み込まれるある実施形態では、リンカー基の切断は、親水性ヘッド基を脂質から解離させる一方で、親油性テール基は、リポソーム組成物の固定された成分として残る。例えば、
図1に図示されるように、切断可能なジスルフィド(S−S)カチオン性脂質を還元剤と接触させたとき、ジスルフィド結合(S−S)は切断され、切断可能な脂質のカチオン性アミノヘッド基は脂質ナノ粒子から解離される一方で、親油性テール基はリポソームビヒクルの成分として残る。示される実施形態では、得られた脂質ナノ粒子の表面は、ジスルフィドリンカー基の切断の結果として、中和された状態にされる。
【0092】
本発明は、そのようなリンカー基を1つ以上の好適な薬剤と接触させることによるリンカー基の切断を想定する。本明細書で使用される、用語「薬剤」は、本発明の脂質が1つ以上のリンカー基の切断を触媒する、ないしは別の方法で誘発するように接触される、および/または相互作用することができる1つ以上の試薬、化合物、または条件を指すように意味される。ある実施形態では、薬剤は、酸化−還元反応において電子を供与することができる還元剤である。想定される薬剤には、還元剤、例えばトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、およびジチオエリスリトールのうちの1つ以上を含む水性溶液が含まれる。代替として、他の実施形態では、薬剤は、酸化−還元反応において電子を受け取ることができる酸化剤であり得る。他の実施形態では、薬剤は、酵素的にリンカー基を切断することができる1つ以上の酵素を含み得る。好ましくは、好適な薬剤(例えば還元剤)の選択は、脂質を含む切断可能なリンカー基の性質に基づき、当業者の範囲内である。例えば、酵素消化を受けやすいリンカー基を含む脂質は、リンカー基の切断、および脂質からの極性ヘッド基の遊離を容易にするために、適切な酵素と接触されるか、ないしは別の方法で曝露され得る。代替として、他の実施形態では、切断可能なリンカー基は、エステル官能基を含み得、対応する薬剤は、そのようなエステル官能基を容易に加水分解することができる化合物または薬剤を含み得る。また他の実施形態では、切断可能なリンカー基は、酸性条件に曝露されたときに切断され得る酸不安定基を含み得る。
【0093】
ある実施形態では、リンカー基は、脂質を適切な薬剤(例えば還元剤β−メルカプトエタノール(β−ME)を含む水性溶液)と接触させたとき、生体外で切断可能であり得る。例えば、本発明の切断可能な脂質のうちの1つ以上を含む脂質ナノ粒子は、1つ以上の治療薬(例えば機能タンパク質または酵素をコードするポリヌクレオチド)で充填された後、還元剤と接触され、それによって、脂質ナノ粒子を中和する。代替として、1つ以上の切断可能な脂質を含む脂質ナノ粒子を、対象への投与直前に還元剤と接触させることができる。高表面電荷(例えば約+30mV超または約−30mV未満のZ
平均)を保有する脂質ナノ粒子は、粒子の表面電荷が同様に荷電された粒子をはね返し、それによって、同様に荷電された粒子が一緒に凝集する可能性を減少させるのに役立つため、より安定していると考えられることが多い。表面の中和が対象への脂質ナノ粒子の投与直前(例えば6週間、4週間、3週間、2週間、1週間未満、または72時間、48時間、24時間、18時間、12時間、9時間、6時間、3時間、2時間、1時間、30分、15分、10分、5分未満、1分以下)に生じるように、脂質ナノ粒子の中和を遅延させることにより、脂質ナノ粒子の安定性は、保存される、ないしは別の方法で延長され得る。同様に、ある実施形態では、リンカー基の切断は、例えば体循環に存在する循環酵素または条件に曝露されたときに生体内で誘発され得、それによって、脂質組成物の表面電荷が修飾される、または中和される。例えば、本明細書に開示される脂質のうちの1つ以上を使用して調製された脂質ナノ粒子(例えばカチオン性脂質HGT4002)が調製され、有効量の治療薬で充填され、正の表面電荷で対象に投与され、これは、対象に投与された後、生体内で中和される(例えば感受性リンカー基の酵素切断により)。ある実施形態では、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の性質(例えば表面電荷)が修飾される程度は、リポソーム組成物が曝露される選択された還元剤、および/またはそのような曝露期間の関数であることに留意するべきである。
【0094】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、用語「修飾された」および「調節された」は、それらがリポソーム組成物の表面電荷に関連するとき、リポソーム組成物の中和を指す(例えば、それが約−2.5mV〜+2.5mVであるように、Z
平均を調節する)が、本発明は中和に限定される必要はない。むしろ、用語「修飾されたおよび「調節された」は、リポソーム組成物の表面電荷に関して使用されるとき、そのようなリポソーム組成物の物理的または化学的性質における任意の変化を広く指すことが意図される(例えば、正味表面電荷が負であるように、リポソーム組成物の正味正表面電荷を調節する)。選択された薬剤、およびそのような薬剤へのリポソーム組成物の曝露期間は、リポソーム組成物の表面電荷が、所望の程度(例えば約−5mV未満のZ
平均)に修飾される、または調節され得るように、当業者によって操作することができる2つの重要な変動要因を表す。したがって、ある実施形態では、脂質ナノ粒子を、所望の結果(例えば少なくとも約1〜99%の表面電荷の還元)を達成するのに十分な選択された期間の間、選択された還元剤と接触させる。ある実施形態では、1つ以上の所望の成果または結果を達成するために、リポソーム組成物を、約5分〜約72時間以上(例えば少なくとも約15分、30分、45分、1時間、3時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、24時間、48時間、72時間以上)の間、選択された薬剤と接触させることができる。
【0095】
ある実施形態では、リポソーム組成物の選択された薬剤への曝露期間と、リポソーム組成物の表面電荷において得られた変化との間には直接的な関係が存在する。例えば、正味正表面電荷を有する脂質ナノ粒子を1つ以上の薬剤(例えば還元剤)に曝露する期間を延長することにより、そのような脂質ナノ粒子の得られる表面電荷は、中和されるか、または大きく還元され得る(例えば平均ゼータ電位を約−0.5mV、−1.0mV、−2.5mV、−5.0mV、−7.0mV、−10.0mV、−12.5mV、−15.0mV、−17.5mV、−20mV、−25mV、−30mV、−40mV、−50mV未満、またはそれ以下に還元させる)。いくつかの実施形態では、リポソーム組成物の正味表面電荷が本明細書に開示される方法によって調節され得る程度は、そのようなリポソーム組成物を含む脂質成分(例えば1つ以上のヘルパー脂質またはPEG誘導体化された脂質)の性質の関数でもあり得る。したがって、本発明は、1つ以上の所望の物理的性質または標的臓器もしくは組織に基づき、リポソーム組成物(特に1つ以上の治療薬を被包するリポソーム組成物)の表面電荷を制御する手段を提供する。前述は、特定の細胞、組織、または臓器へのリポソーム組成物の標的を容易にするだけではなく、ある実施形態では、あるリポソーム組成物、特にカチオン性リポソーム組成物に関連する毒性を緩和するのに役立ち得るため、特に有用である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるリポソーム組成物の表面電荷の還元は、免疫原性を最小にすることにより、または補体活性化に関連する事象を最小にすることにより、そのようなリポソーム組成物に関連する毒性を減少する。
【0096】
脂質を1つ以上の薬剤(例えば少なくとも1つの薬剤を含む水性溶液)と接触させたとき、リンカー基は、脂質から切断され、親水性ヘッド基が遊離し、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の成分として親油性(非極性)テール基を残す。切断可能な脂質がジスルフィド(S−S)リンカー基を含む実施形態では、還元剤(例えばトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)および/またはβ−メルカプトエタノール(β−ME)の水性溶液)に曝露されたとき、次の構造
【0098】
により表される親水性ヘッド基は遊離し、式中、R
1は、親水性ヘッド基(例えばイミダゾール、グアニジウム、イミン、エナミン、アミノ、任意に置換されたアルキルアミノ、およびピリジル)を表す。同様に、脂質、特に脂質を含む切断可能なジスルフィドリンカー基の1つ以上の還元剤への曝露後、次の構造
【0100】
により表されるように、チオール基は、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の固定された成分として残り、式中、R
2は、テール基を表し、任意に置換されたピリジル(例えばピリジンまたはニトロピリジル)、または次の構造
【0102】
のうちの1つからなる群から選択され、式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択され、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の成分として残る。
図2に示されるように、リポソーム組成物の還元剤への曝露後、修飾された、または中和された組成物の表面をコーティングする残りのチオール官能基は、さらに操作され得る。
図2に示される実施形態では、チオール基は、リポソーム組成物の表面をさらに修飾するために、他の有機化合物、ポリマー、ペプチド、またはリガンドと反応することができる基材を表す。
【0103】
したがって、追加の官能基または化学的性質を導入するために、本発明の脂質およびリポソーム組成物をさらに修飾する組成物および方法も、本明細書において開示される。したがって、ある実施形態では、中和された脂質を特徴付けるために使用される、用語「修飾された」は、そのような中性脂質のさらなる修飾または個別化も指し得る。そのような実施形態では、用語「修飾された」は、その修飾された脂質が調製された中性脂質に対して修飾された脂質を特徴付けるために使用され得る。例えば、ある実施形態では、前述は、最初の極性ヘッド基が脂質から除去され(例えばリンカー基の切断により中和された脂質を生成する)、その後、第2の関心の官能基で置換され、それによって、修飾された脂質を得るように、本明細書に開示される脂質の修飾を想定する。追加の官能基を導入するため、および/または追加の官能性を付与するための脂質の修飾は、脂質ナノ粒子が関心の組織をさらに標的とする手段として使用され得る。したがって、本発明に従い前に修飾された、または中和された1つ以上の脂質の物理的もしくは化学的性質をさらに修飾する追加の手段も、本明細書において提供される。例えば、ある実施形態では、その教示に従い還元的に中和された脂質の残りのチオール基を含むスルフヒドリル基は、脂質、および/またはそのような脂質が成分であるリポソーム組成物の物理的および/または化学的性質をさらに修飾するために、1つ以上の追加の官能基または化合物とさらに反応することができる。
図2に示されるように、リポソーム組成物の表面電荷を中和した、または修飾した後、修飾された、または中和された脂質の外表面をコーティングする残りのスルフヒドリル基は、追加の化学的性質または官能基を導入するために、さらに反応することができる。例えば、修飾された、または中性脂質の残りのチオール基を、次の構造
【0105】
により表される二次薬剤、構造、または化合物と接触させる、ないしは別の方法で反応させ、式中、R
5は、第2の官能基または化学的性質を表し、nは、ゼロまたは正の整数である。ある実施形態では、第2の官能基は、脂質ナノ粒子の標的細胞、組織、もしくは臓器への分布を媒介するために、またはある標的細胞もしくは標的組織でのそのような脂質ナノ粒子の顕在化を促進するために使用され得る標的リガンドである。
【0106】
標的組織による標的リガンドの認識は、標的細胞および組織への組織分布、標的細胞および組織による脂質ナノ粒子ならびに/またはそれらの内容物の細胞取り込みを積極的に促進する。例えば、ある実施形態では、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、例えば肝細胞によって発現されるそのような組成物の内因性低密度リポタンパク質受容体の認識および結合を容易にする、または促進するために、アポリポタンパク質E標的リガンドを含む標的リガンドがそのような組成物の表面に結合されるように二次修飾を受けることができる。本明細書に提供されるように、組成物は、1つ以上の標的細胞に対する組成物の親和性を強化することができる標的リガンドを含み得る。好適な標的リガンドは、標的細胞の独特の特徴が利用され、よって、リポソーム組成物が標的細胞と非標的細胞を区別できるように選択される。例えば、本発明の組成物は、肝細胞の認識、またはそれに対する親和性を選択的に強化する表面マーカー(例えばアポリポタンパク質Bまたはアポリポタンパク質E)を保有することができる(例えばそのような表面マーカーの受容体媒介認識、およびそれへの結合により)。加えて、標的リガンドとしてのガラクトースの使用は、本発明の組成物を実質肝細胞に指向すると予想されるか、代替として、標的リガンドとして糖残基を含有するマンノースの使用は、本発明の組成物を肝臓内皮細胞に指向すると予想されるだろう(例えば肝細胞に存在するアシアロ糖タンパク質受容体に優先的に結合することができる糖残基を含有するマンノース)。(Hillery AM,et al.“Drug Delivery and Targeting:For Pharmacists and Pharmaceutical Scientists” (2002)Taylor&Francis,Inc.を参照。)したがって、本発明のリポソーム組成物の表面に抱合されたそのような標的リガンドの提示は、1つ以上の標的細胞および組織によるそのようなリポソーム組成物の認識および取り込みを容易にする。好適な標的リガンドの例としては、1つ以上のペプチド、タンパク質、アプタマー、ビタミン、およびオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0107】
ある実施形態では、ジスルフィド結合(例えば酸化条件)および中性脂質の形成を容易にし、それによって、さらに修飾される条件下で、還元された脂質を、二次薬剤、化合物、または官能基と接触させる。さらに修飾された脂質は、次の構造
【0109】
により表すことができ、式中、R
5は、新しく導入された第2の官能基または化学的性質を表し、R
2は、親油性テール基を表し、nは、ゼロまたは正の整数である。新しく導入された第2の官能基(R
5)は、ポリマー(例えばポリエチレングリコール)、ペプチド、標的リガンド(例えばアポリポタンパク質B、アポリポタンパク質E、グルコース、ガラクトース、および/またはマンノース)、アルキル(例えば任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
1−C
20アルキル)、およびキャップ構造からなる群から選択され得る。ある実施形態では、親油性テール基(R
2)は、任意に置換されたピリジル(例えばピリジンまたはニトロピリジル)、または次の構造
【0111】
のうちの1つからなる群から選択され、式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択される。したがって、前述は、中性チオールコーティングされたナノ粒子を作製するために、例えば切断可能なジスルフィドカチオン性脂質を使用する方法を提供する。そのようなチオール官能基は、次に、そのまま使用することができる基材として作用するか、または他の部分(ポリマー(PEG)、標的薬剤、またはキャップ構造)でさらに修飾され得る。
【0112】
例えば、ある実施形態では、修飾された脂質は、次の構造
【0114】
のうちの1つにより表すことができ、
式中、R
5は、ポリマー(例えばポリエチレングリコール)、ペプチド、標的リガンド(例えばアポリポタンパク質B、アポリポタンパク質E、グルコース、ガラクトース、および/またはマンノース)、アルキル(例えば任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
1−C
20アルキル)、およびキャップ構造からなる群から選択され、nは、ゼロまたは任意の正の整数である。他の実施形態では、修飾された、または中性脂質のチオール基を、好適な条件下で(例えば酸化条件)、上記の構造(IX)および/または(X)のうちの1つ以上により表される二次薬剤、構造、または化合物と接触させるか、ないしは別の方法で反応させることができる。
【0115】
本明細書に開示される方法は、高被包効率を示す中性または僅かに荷電された脂質を調製する手段を提供する。本明細書で使用される、句「被包効率」は、脂質相に存在する治療薬の初期割合に対してリポソームに基づくビヒクル内に効率的に被包される治療薬の割合を指す。ある実施形態では、高被包効率は、リポソーム組成物(例えば正の表面電荷を示す脂質ナノ粒子)を、そのような組成物を薬剤(例えば還元剤)と接触させる前に充填したときに達成される。その荷電された状態でリポソームビヒクルを充填することにより、逆に荷電された治療薬の被包を容易にする。したがって、好ましい実施形態では、脂質化合物およびそれから調製されたリポソームビヒクルは、薬剤(例えば還元剤)と接触させる前に、1つ以上の治療薬で充填される。ある実施形態では、脂質組成物およびそれから調製された脂質ナノ粒子は、少なくとも50%(例えば55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、99%以上)の被包効率を呈する。
【0116】
本明細書に開示される方法に従い調製されたリポソーム組成物は、そのような組成物に被包された1つ以上の治療薬の平均濃度に関して特徴付けされ得る。例えば、ある実施形態では、本発明に従い調製されたリポソーム組成物に被包された治療薬の平均濃度は、約0.025μg/mL〜約250μg/mL(例えば少なくとも約0.05μg/mL、0.1μg/mL、0.25μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、75μg/mL、100μg/mL、150μg/mL、200μg/mL以上)である。
【0117】
ある実施形態では、脂質およびそのような脂質を使用して調製されたリポソーム組成物は、安定している。リポソーム組成物を特徴付けるために本明細書で使用される、用語「安定した」は、そのような組成物の物理的安定性を指し、一般的に、組成物が所定の期間および/または貯蔵条件の完了時(例えば、標準的な室温および湿度で少なくとも2年間貯蔵後)、対象への投与に好適であることを意味する。ある実施形態では、組成物における沈殿、混濁、および/または他の粒子状物質の実質的な不在(例えば45℃で少なくとも2ヶ月間貯蔵後)は、その安定性を示し得る。他の実施形態では、粒子の凝集または融合の実質的な不在は、本明細書に開示されるリポソーム組成物の安定性を示し得る。
【0118】
ある実施形態では、本明細書に記載される脂質化合物、特にイミダゾールに基づく化合物(例えば、HGT4001およびHGT4004)はまた、特に従来の脂質およびカチオン性脂質に対するその減少した毒性を特徴とする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物は、そのような薬学的またはリポソーム組成物中の他のより毒性のカチオン性脂質の相対的濃度が低下されるか、ないしは別の方法で排除され得るように、1つ以上のイミダゾールに基づくカチオン性脂質化合物を含む。イミダゾールに基づく化合物または脂質(例えば、HGT4001および/またはHGT4004)は、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上において唯一のカチオン性脂質として使用されるか、または別の方法としては従来のカチオン性脂質(例えば、LIPOFECTINまたはLIPOFECTAMINE)、非カチオン性脂質、PEG修飾された脂質および/またはヘルパー脂質と組み合わせることができる。ある実施形態では、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、そのような薬学的またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)に存在する総脂質の約1%〜約90%、約2%〜約70%、約5%〜約50%、約10%〜約40%、または好ましくはそのような薬学的またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)に存在する総脂質の約20%〜約70%のモル比を含み得る。
【0119】
本明細書に記載される切断可能な脂質、特にジスルフィド切断可能な脂質は、共同所有米国出願第61/494,745号(代理人整理番号SHIR−022−001)に開示される脂質化合物のうちの1つ以上からなり得、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、ある実施形態では、本発明は、式XIの構造を有する化合物5−(((10,13−ジメチル−17−(6−メチルヘプタン−2−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イル)ジスルファニル)メチル)−1H−イミダゾール(本明細書において「HGT4001」と称される)に関する。
【0121】
ある実施形態では、本発明は、式XIIの構造を有する化合物1−(2−(((3S,10R,13R)−10,13−ジメチル−17−((R)−6−メチルヘプタン−2−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イル)ジスルファニル)エチル)グアニジン(本明細書において「HGT4002」と称される)に関する。
【0123】
また他の実施形態では、本発明は、式XIIIの構造を有する化合物2−((2,3−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)プロピル)ジスルファニル)−N,N−ジメチルエタンアミン(本明細書において「HGT4003」と称される)に関する。
【0125】
他の実施形態では、本発明は、式XIVの構造を有する化合物5−(((2,3−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)プロピル)ジスルファニル)メチル)−1H−イミダゾール(本明細書において「HGT4004」と称される)に関する。
【0127】
さらに他の実施形態では、本発明は、式XVの構造を有する化合物1−(((2,3−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)プロピル)ジスルファニル)メチル)グアニジン(本明細書において「HGT4005」と称される)に関する。
【0129】
本明細書に記載される脂質化合物は、被包された材料(例えば、1つ以上の治療用ポリヌクレオチド)の、1つ以上の標的細胞への送達および放出(例えば、そのような標的細胞の脂質膜を透過する、またはそれと融合することにより)を容易にする、または強化するリポソーム組成物を構築するために使用され得る。ある実施形態では、本明細書に記載される化合物は、そのような化合物に、他の同様に分類される脂質に対する利点を提供する1つ以上の性質を有することを特徴とする。例えば、ある実施形態では、本明細書に開示される脂質は、それらが成分であるリポソーム組成物の物理的性質の制御および調整を可能にする。特に、本明細書に開示される脂質化合物を含むリポソーム組成物の表面電荷は、本明細書に提供される教示に基づき容易に個別化され得る。例えば、リポソーム組成物の表面電荷は、適切な薬剤(例えばTCEPなどの還元剤)に曝露されたとき中性化され得る。そのような修飾は、リポソーム組成物の薬物動態性質を調節する手段として(例えば循環半減期を強化することにより、またはそのような組成物の1つ以上の標的細胞、臓器、または組織への分布を容易にすることにより)採用され得る。ある実施形態では、本明細書に開示される脂質化合物および中和された、または修飾されたリポソーム組成物は、1つ以上の標的細胞に形質移入する強化された(例えば増加した)能力を呈する。本明細書で使用される、用語「形質移入する」または「形質移入」は、1つ以上の被包された材料(例えば核酸および/またはポリヌクレオチド)の細胞、または好ましくは標的細胞への細胞内導入を指す。
【0130】
本発明の方法、脂質、およびリポソーム組成物は、広範囲の材料および治療薬の標的細胞、臓器、および組織への送達を容易にするために使用され得る。したがって、本明細書に記載される脂質およびリポソーム組成物は、細胞内送達に好適な任意の数の材料を被包するために使用され得る。ある実施形態では、そのような被包された材料は、そのような材料が送達される細胞に対して、治療または診断利益を付与することができ、任意の薬物、生物製剤、および/または診断薬を含み得る。材料は有機または無機であり得る。有機分子は、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、ステロール、核酸(ペプチド核酸を含む)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。ある実施形態では、本明細書に開示される薬学的およびリポソーム組成物は、2種類以上の材料、例えば、タンパク質、酵素、および/またはステロイドをコードする2つ以上の異なるポリヌクレオチド配列を含む、ないしは別の方法で被包することができる。ある実施形態では、被包された材料は1つ以上のポリヌクレオチドおよび核酸である。
【0131】
本明細書で使用される、用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」とは、遺伝的材料(例えばDNAまたはRNA)を指すように互換的に使用され、そのような用語が本明細書に記載される脂質化合物およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)に関して使用されるとき、一般に、そのような化合物および組成物(例えば脂質ナノ粒子)によって被包される遺伝的材料を指す。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはRNAである。好適なRNAは、mRNA、siRNA、miRNA、snRNA、およびsnoRNAを含む。想定されるポリヌクレオチドは、一般にタンパク質をコードしないが、むしろ例えば免疫シグナル伝達、幹細胞生物学、および疾患の発達において機能する大きな遺伝子間非コードRNA(lincRNA)も含む。(例えば、Guttman,et al.,458:223−227(2009)、およびNg,et al.,Nature Genetics42:1035−1036(2010)を参照のこと、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。ある実施形態では、本発明の化合物または薬学的およびリポソーム組成物によって被包されるポリヌクレオチドは、RNAまたはタンパク質もしくは酵素をコードする安定化されたRNA(例えば、αガラクトシターゼAまたは低密度リポタンパク質受容体をコードするmRNA)を含む。本発明は、標的細胞による発現が可能であり、それによって国際出願第PCT/US2010/058457号および米国仮出願第61/494,881号(弁理士整理番号SHIR−025−001)(2011年6月8日出願)等に開示される(その両方の教示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)そのような標的細胞による機能酵素またはタンパク質の生成(およびある場合では、分泌)を容易にする治療薬としてのそのようなポリヌクレオチド(および特にRNAまたは安定化されたRNA)の使用を想定する。例えば、ある実施形態では、標的細胞による1つ以上のポリヌクレオチドが発現されるとき、対象が欠乏する機能または生物学的に活性な酵素あるいはタンパク質(例えば尿素回路酵素またはリソソーム貯蔵障害に関連する酵素)の生成が観察され得る。
【0132】
ポリヌクレオチドまたは核酸の修飾も、本発明により想定される。本明細書に記載される1つ以上のポリヌクレオチドまたは核酸(例えばmRNA)を説明するために本明細書で使用される、用語「修飾」および「修飾された」は、そのような用語が本明細書に開示されるポリヌクレオチドまたは核酸に関するとき、例えばタンパク質翻訳の開始において機能する配列(例えばコザックコンセンサス配列)の包含を含む、そのようなポリヌクレオチドまたは核酸(例えばmRNA)の安定性および/または発現(例えば翻訳)を改善する、または強化する1つ以上の変化、変更、または置換を指す。(Kozak,M.,Nucleic Acids Res 15(20):8125−48(1987))。いくつかの実施形態では、本発明の核酸は、それらをより安定させるための化学的または生物学的修飾を受ける。核酸に対する例示的な修飾は、塩基の欠失(例えば欠失により、または別のものを1つのヌクレオチドに置換することにより)、または塩基の修飾、例えば塩基の化学修飾を含む。本発明の核酸またはポリヌクレオチドを説明するために本明細書に使用される、句「化学修飾」は、天然に生じる核酸に見られるものとは異なる化学的性質を導入する修飾、例えば修飾されたヌクレオチドの導入などの共有結合による修飾(例えばヌクレオチド類似体、またはそのような核酸分子に天然に見られないペンダント基の包含)を指す。例えば、ある実施形態では、本明細書に開示されるポリヌクレオチド(例えばmRNAポリヌクレオチド)は、5−メチルシトシン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5−ブロモウラシル、5−プロピニルウラシル、6−アミノプリン、2−アミノプリン、イノシン、プソイドウリジン、2−チオウリジン、ジアミノプリン、および2−クロロ−6−アミノプリンシトシンからなる群から独立して選択される少なくとも1つの修飾された、または化学的に修飾されたヌクレオチドを含み得る。
【0133】
加えて、好適なポリヌクレオチド修飾は、コドンが同一のアミノ酸をコードするが、核酸の野生型において見られるコドンよりも安定しているように、コドンの1つ以上のヌクレオチドにおける変更を含む。例えば、RNAの安定性と高い数のシチジン(C’s)および/またはウリジン(U’s)残基との間の逆相関が示され、CおよびU残基を欠くRNAは、大半のRNasesに安定であることが分かった。(Heidenreich,et al.J Biol Chem 269,2131−8(1994))。いくつかの実施形態では、mRNA配列におけるCおよび/またはU残基の数は減少される。別の実施形態では、Cおよび/またはU残基の数は、同一または関連するアミノ酸をコードする別のコドンを、特定のアミノ酸をコードする1つのコドンに置換することにより減少される。本発明のmRNA核酸に対する想定される修飾は、プソイドウリジンの組み込みも含む。プソイドウリジンの、本発明のmRNA核酸への組み込みは、安定性および翻訳能力を強化し、生体内の免疫原性を減少させることができる。(例えば、Karikoe,K.,et al.,Molecular Therapy 16(11):1833−1840(2008)を参照)。本発明の核酸に対する置換および修飾は、当業者に容易に理解される方法によって行うことができる。
【0134】
配列におけるCおよびU残基の数を減少させることに対する制約は、非翻訳領域と比較して、mRNAのコード領域内において大きい可能性がある(すなわち、メッセージが所望のアミノ酸配列をコードする能力を維持しながら、メッセージに存在するCおよびU残基の全てを排除することは不可能である可能性がある)。しかしながら、遺伝コードの縮退は、配列に存在するCおよび/またはU残基の数を減少させる機会を提示し、同時に同一のコード能を保持する(すなわち、どのアミノ酸がコドンによってコードされるかにより、RNA配列の修飾に関していくつかの異なる可能性が可能であり得る)。例えば、Glyのコドンは、GGUまたはGGCの代わりに、GGAまたはGGGに変更することができる。
【0135】
用語「修飾」は、例えば、非ヌクレオチド連結または修飾されたヌクレオチドの本発明の核酸配列への組み込み(例えば機能タンパク質または酵素をコードするmRNA分子の3’および5’端のうちの1つまたは両方に対する修飾)も含む。そのような修飾は、塩基の核酸配列への付加(例えばポリAテールまたはより長いポリAテールの包含)、3’UTRまたは5’UTRの変更、薬剤による核酸の複合体形成(例えばタンパク質または相補的核酸分子)、および核酸分子の構造を変更する要素の包含(例えば二次構造を形成する)を含む。
【0136】
ポリAテールは、天然のメッセンジャーおよび合成センスRNAを安定させると考えられる。したがって、一実施形態では、長いポリAテールは、mRNA分子に付加され得、よって、RNAをより安定にする。ポリAテールは、様々な技術分野に認識される技術を使用して付加され得る。例えば、長いポリAテールは、ポリAポリメラーゼを使用して、合成または生体外転写されたRNAに付加され得る(Yokoe,et al.Nature Biotechnology.1996;14:1252−1256)。転写ベクターも、長いポリAテールをコードすることができる。加えて、ポリAテールは、PCR生成物からの直接転写によって付加され得る。ポリAは、RNAリガーゼにより センスRNAの3’端にも連結され得る(例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1991 edition)を参照)。一実施形態では、ポリAテールの長さは、少なくとも約20、30、40、50、60、75、80、90、100、200、300、400、または少なくとも約500ヌクレオチドである。一実施形態では、ポリAテールは、本発明の修飾されたセンスmRNA分子の安定性、よって、タンパク質の転写を制御するために調節される。例えば、ポリAテールの長さはセンスmRNA分子の半減期に影響を及ぼすため、ポリAテールの長さは、mRNAのヌクレアーゼに対する耐性のレベルを修飾し、それによって、細胞におけるタンパク質発現の時間経過を制御するために調節され得る。一実施形態では、安定化された核酸分子は、それらが輸送ビヒクルなしで標的細胞に送達され得るように、生体内分解(例えばヌクレアーゼ)に十分に耐性である。
【0137】
一実施形態では、タンパク質をコードする核酸は、野生型核酸に天然に見られない3’および/または5’非翻訳(UTR)配列の組み込みによって修飾され得る。一実施形態では、mRNAに天然に隣接し、第2の非関連タンパク質をコードする3’および/または5’隣接配列は、それを修飾するために、治療用または機能タンパク質をコードするmRNA分子のヌクレオチド配列に組み込まれ得る。例えば、安定しているmRNA分子(例えばグロビン、アクチン、GAPDH、チューブリン、ヒストン、またはクエン酸サイクル酵素)からの3’または5’配列は、センスmRNA分子の安定性を増加するために、センスmRNA核酸分子の3’および/または5’領域に組み込まれ得る。
【0138】
核酸の3’および5’端のうちの1つまたはそれらの両方に行われる核酸配列に対する他の修飾も、本発明によって想定される。例えば、本発明は、ヌクレアーゼ耐性を改善するため、および/または核酸の半減期を改善するために、CMV最初期1(IE1)遺伝子の少なくとも部分配列、またはその断片を含むように、核酸(例えばmRNA)の3’および5’端のうちの1つまたはそれらの両方に対する修飾を想定する。mRNA核酸配列の安定性を増加させることに加え、5’端でのCMV最初期1(IE1)遺伝子の部分配列の包含がmRNAの翻訳、および機能タンパク質または酵素の発現を強化することを意外にも発見された。核酸をさらに安定化させるために、核酸(例えばmRNA)の3’および5’端のうちの1つまたはそれらの両方に、ヒト成長ホルモン(hGH)をコードする配列、またはその断片を含むことも想定される。一般的に、好ましい修飾は、それらの未修飾の対応物に対する核酸の安定性および/または薬物動態の性質(例えば半減期)を改善し、例えばそのような核酸の生体内ヌクレアーゼ消化に対する耐性を改善するために行われる修飾を含む。
【0139】
ある実施形態では、想定されるポリヌクレオチド修飾は、2’−置換基を有する、または増加したヌクレアーゼ耐性を提供することができる架橋された、もしくはロックド核酸(LNA)を組み込む糖部分を組み込むためのヌクレオチドに対する変更を含む。いくつかの実施形態では、好ましい修飾は、オキシ−LNA(ベータ−D−オキシ−LNA、およびアルファ−L−オキシ−LNAなど)、および/またはアミノ−LNA(ベータ−D−アミノ−LNAおよびアルファ−L−アミノ−LNAなど)、および/またはチオLNA(ベータ−D−チオLNAおよびアルファ−L−チオLNAなど)、および/またはENA(ベータ−D−ENAおよびアルファ−L−ENAなど)などの1つ以上のLNAの包含を含む。最も好ましいのは、ベータ−D−オキシ−LNAである。
【0140】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド修飾は独立して、例えば、2’−O−アルキル−RNA単位、2’−アミノ−DNA単位、2’−フルオロ−DNA単位、LNA単位、アラビノ核酸(ANA)単位、2’−フルオロ−ANA単位、HNA単位、INA(Christensen,et al.,Nucl.Acids.Res.(2002)30:4918−4925により論じられる核酸単位を挿入する)、および2’MOE単位から選択される。いくつかの実施形態では、上記の修飾の種類のうちの1つのみが本発明のオリゴヌクレオチドに存在する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、任意にホスホロチオエートなどの1つ以上の修飾されたヌクレオチド間連結を伴うLNAヌクレオチドおよび天然に生じるヌクレオチド(RNAなど)のみを含む。
【0141】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドのヌクレオチドモノマー(例えばmRNA)は、連結基を介して一緒に結合される。適切に、各ヌクレオチドモノマーは、連結基を介して3’隣接モノマーに連結される。当業者は、本発明の文脈において、オリゴヌクレオチドの端部の5’モノマーは5’連結基を含まないが、それは5’終端基を含んでも、含まなくてもよいことを理解する。
【0142】
本明細書で使用される、句「連結基」および「ヌクレオチド間連結」は、2つのヌクレオチドを一緒に共有結合することができる基を意味することが意図される。特定の、および好ましい例としては、リン酸基およびホスホロチオエート基が挙げられる。ある実施形態では、本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、各ヌクレオチド間連結でホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有する。本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチドモノマーまたはその近接するヌクレオチド配列は、連結基を介して一緒に結合される。適切に、各ヌクレオチドは、連結基を介して3’隣接ヌクレオチドに連結される。好適なヌクレオチド間連結は、国際出願第WO2007/031091号内に列挙されるもの、例えば国際出願第WO2007/031091号の34頁の第1段落に列挙されるヌクレオチド間連結を含む。
【0143】
ある実施形態では、本明細書に記載される脂質化合物およびリポソーム組成物は、混合製剤または組成物として製剤化される。例えば、一実施形態では、リポソーム組成物は、HGT4003を含む第1の脂質ナノ粒子と、HGT4001を含む第2の脂質ナノ粒子を3:1の割合で含む混合製剤を含む。したがって、例えば、2011年6月8日に出願された米国仮出願第61/494,714号(代理人整理番号SHIR−021−001)(その教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、1つ以上の標的細胞および組織においてポリヌクレオチドの発現を調節するための混合リポソーム組成物および関連する方法も、本明細書において提供される。米国仮出願第61/494,714号(代理人整理番号SHIR−021−001)にも開示されるように、例えば、1つ以上の標的細胞による、そのような混合リポソーム組成物に被包される1つ以上のポリヌクレオチド(例えばmRNA)によりコードされる1つ以上の機能ポリペプチド、タンパク質、もしくは酵素の生成および/または分泌を調節する(例えば増加させる、または相乗的に増加させる)方法も想定される。
【0144】
ある実施形態では、本明細書に提供される脂質およびリポソーム組成物は、1つ以上の標的細胞および組織において異常に発現した核酸およびポリヌクレオチドを調節することができる。したがって、本明細書において、本明細書に記載される有効量の脂質化合物および/またはリポソーム組成物を対象に投与することにより、対象の疾患を治療する方法も提供される。ある実施形態では、そのような方法は、1つ以上の標的細胞および組織(例えば肝細胞)において、ポリヌクレオチドの発現を強化(例えば増加)する、および/または機能性ポリペプチド生成物の生成および分泌を増加することができる。いくつかの実施形態では、標的細胞または組織は、本明細書に記載される脂質化合物またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上によって被包されたポリヌクレオチドを異常に発現する。本明細書において、1つ以上の標的細胞、組織、および器官において、1つ以上のポリヌクレオチド(例えばmRNA)の発現を増加させる方法も提供される。一般に、そのような方法は、標的細胞を、1つ以上のポリヌクレオチドを含む、ないしは別の方法で被包する1つ以上の脂質化合物および/またはリポソーム組成物と接触させることを含む。
【0145】
ある実施形態では、本明細書に開示される脂質は、リポソームとして、またはリポソームの成分として使用され得る。具体的には、ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の脂質(例えばカチオン性脂質)成分として使用され得る。そのようなリポソームは、材料を被包し、そのような材料の、1つ以上の標的細胞、組織、および器官への送達を容易にするために使用され得る。本明細書で使用される、用語「リポソーム」とは、一般に、1つ以上の球状2重層または2重層に配置された脂質(例えば両親媒性脂質)から構成される小胞を指す。ある実施形態では、リポソームは、脂質ナノ粒子(例えば、本明細書に開示されるカチオン性脂質化合物のうちの1つ以上を含む脂質ナノ粒子)である。そのようなリポソームは、親油性材料から形成された膜、および1つ以上の標的細胞、組織、および器官に送達される被包された材料(例えばポリヌクレオチド)を含む水性内部を有する単層または多層の小胞であり得る。ある実施形態では、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物は、1つ以上の脂質ナノ粒子を含む。想定されるリポソームは、脂質ナノ粒子を含む。本明細書において想定されるリポソームおよび脂質ナノ粒子を形成するために使用され得る好適な脂質(例えばカチオン性脂質)の例としては、本明細書に開示される化合物(例えば、HGT4001、HGT4002、HGT4003、HGT4004、および/またはHGT4005)のうちの1つ以上が挙げられる。そのようなリポソームおよび脂質ナノ粒子は、C12−200、DLin−KC2−DMA、DOPE、DMG−PEG−2000、非カチオン性脂質、脂質に基づくコレステロール、ヘルパー脂質、PEG修飾された脂質等の追加のカチオン性脂質、ならびにホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシド)、および前述の組み合わせまたは混合物も含み得る。
【0146】
いくつかのカチオン性脂質が文献に記載されており、その多くは商業的に入手可能である。ある実施形態では、そのようなカチオン性脂質は、本明細書に開示される化合物または脂質(例えばHGT4003)のうちの1つ以上に加え、本明細書に記載される薬学的またはリポソーム組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウムまたは「DOTMA」が使用される(Felgner et al.(Proc.Nat’l Acad.Sci.84,7413(1987)、米国特許第4,897,355)。DOTMAは単独で製剤化されるか、またはジオレオイルホスファチジルエタノールアミンもしくは「DOPE」、または他のカチオン性もしくは非カチオン性脂質を用いて脂質ナノ粒子内に組み合わされ得る。他の好適なカチオン性脂質は、例えばC12−200、5−カルボキシスペルミルグリシンジオクタデシルアミドもしくは「DOGS」、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミン−カルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムもしくは「DOSPA」(Behr et al.Proc.Nat.’l Acad.Sci.86,6982(1989)、米国特許第5,171,678号、米国特許第5,334,761号)、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパンもしくは「DODAP」、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパンもしくは「DOTAP」を含む。想定されるカチオン性脂質には、1,2−ジステアロイルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパンもしくは「DSDMA」、1,2−ジオレイルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパンもしくは「DODMA」、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパンもしくは「DLinDMA」、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパンもしくは「DLenDMA」、N−ジオレイル−N,N−塩化ジメチルアンモニウムもしくは「DODAC」、N,N−ジステアリル−N,N−臭化ジメチルアンモニウムもしくは「DDAB」、N−(1,2−ジミリスチルオキシプロプ−3−イル)−N,N−ジメチル−N‐ヒドロキシエチル臭化アンモニウムもしくは「DMRIE」、3−ジメチルアミノ−2−(コレスト−5−エン−3−ベータ−オキシブタン−4−オキシ)−1−(シス,シス−9,12−オクタデカジエンオキシ)プロパンもしくは「CLinDMA」、2−[5′−(コレスト−5−エン−3−ベータ−オキシ)−3′−オキサペントキシ)−3−ジメチル−1−(シス,シス−9′, 1−2′−オクタデカジエンオキシ)プロパンもしくは「CpLinDMA」、N,N−ジメチル−3,4−ジオレイルオキシベンジルアミンもしくは「DMOBA」、1,2−N,N′−ジオレイルカルバミル−3−ジメチルアミノプロパンもしくは「DOcarbDAP」、2,3−ジリノレオイルオキシ−N,N−ジメチルプロピルアミンもしくは「DLinDAP」、1,2−N,N′−ジリノレオイルカルバミル−3−ジメチルアミノプロパンもしくは「DLincarbDAP」、1,2−ジリノレオイルカルバミル−3−ジメチルアミノプロパンもしくは「DLinCDAP」、2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノメチル−[1,3]−ジオキソランもしくは「DLin−K−DMA」、2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソランもしくは「DLin−K−XTC2−DMA」、またはそれらの混合物も含む。(Heyes,J.,et al.,J Controlled Release 107:276−287(2005)、Morrissey,DV.,et al.,Nat.Biotechnol.23(8):1003−1007(2005)、PCT公開第WO2005/121348A1号)。組成物(例えば脂質ナノ粒子)を製剤化するためのコレステロールに基づくカチオン性脂質の使用も、本発明により想定される。そのようなコレステロールに基づくカチオン性脂質は、単独で、または他のカチオン性もしくは非カチオン性脂質と組み合わせて使用することができる。好適なコレステロールに基づくカチオン性脂質は、例えば、DC−Chol(N,N−ジメチル−N−エチルカルボキサミドコレステロール)、1,4−ビス(3−N−オレイルアミノ−プロピル)ピペラジンを含む(Gao,et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.179,280(1991)、Wolf et al.BioTechniques 23,139(1997)、米国特許第5,744,335号)。
【0147】
加えて、形質移入の有効性を強化するためのいくつかの試薬が市販されている。好適な例としては、LIPOFECTIN(DOTMA:DOPE)(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)、LIPOFECTAMINE(DOSPA:DOPE)(Invitrogen)、LIPOFECTAMINE2000(Invitrogen)、FUGENE、TRANSFECTAM(DOGS)、およびEFFECTENEが挙げられる。ジアルキルアミノに基づく、イミダゾールに基づく、およびグアニジウムに基づく脂質等のカチオン性脂質も想定される。例えば、国際出願第PCT/US2010/058457号(その教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、カチオン性脂質(3S,10R,13R,17R)−10,13−ジメチル−17−((R)−6−メチルヘプタン−2−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イル3−(1H−イミダゾール−4−イル)プロパン酸、または「ICE」の使用も想定される。
【0148】
好ましくは本明細書に開示される化合物および脂質のうちの1つ以上との組み合わせで、本明細書に記載されるリポソーム組成物にN−オクタノイル−スフィンゴシン−1−[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)−2000](C8 PEG−2000セラミド)を含む、誘導体化されたセラミド(PEG−CER)等のポリエチレングリコール(PEG)修飾されたリン脂質および誘導化された脂質の使用および包含も想定される。想定されるPEG修飾された脂質は、長さがC
6−C
20のアルキル鎖(複数可)で脂質に共有結合される、長さが最大5kDaのポリエチレングリコール鎖を含むが、これに限定されない。そのような成分の追加は、複合体の凝集を防止し得、また脂質−ポリヌクレオチド組成物の循環生存時間を増加し、その標的組織への送達を増加するための手段も提供するか(Klibanov et al.(1990)FEBS Letters,268(1):235−237)、またはそれらは生体内で製剤から迅速に交換されるように選択され得る(例えば米国特許第5,885,613号を参照)。特に有用な交換可能脂質は、短いアシル鎖(例えばC14またはC18)を有するPEG−セラミドである。本発明のPEG修飾されたリン脂質および誘導化された脂質は、リポソーム脂質ナノ粒子に存在する総脂質の約0%〜約20%、約0.5%〜約20%、約1%〜約15%、約4%〜約10%、または約2%のモル比を含み得る。
【0149】
本発明は、薬学的またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上における非カチオン性脂質の使用も想定する。そのような非カチオン性脂質は、好ましくは、本明細書に開示される化合物および脂質のうちの1つ以上と組み合わせて使用される。本明細書で使用される、句「非カチオン性脂質」とは、任意の中性、双極性イオン、またはアニオン性の脂質を指す。本明細書で使用される、句「アニオン性脂質」とは、生理学的pH等の選択されたpHで、正味負電荷を持つ多くの脂質種のいずれかを指す。非カチオン性脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(DOPE−mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−ホスファチジル−エタノールアミン(DSPE)、DLPE(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DPPS(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン)、16−O−モノメチルPE、16−O−ジメチルPE、18−1−トランスPE、1−ステアロイル−2−オレオイル−ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、セラミド、スフィンゴミエリン、コレステロール、またはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。そのような非カチオン性脂質は単独で使用することができるが、好ましくは、他の賦形剤、例えば本明細書に開示されるカチオン性脂質物(例えばHGT4001、HGT4002、HGT4003、HGT4004、および/またはHGT4005)のうちの1つと組み合わせて使用される。カチオン性脂質と組み合わせて使用されるとき、非カチオン性脂質は、脂質ナノ粒子に存在する総脂質の5%〜約90%、または好ましくは約10%〜約70%のモル比を含み得る。
【0150】
本明細書に記載される薬学的またはリポソーム組成物を含む脂質ナノ粒子にポリマーを含むことも想定される。好適なポリマーは、例えば、ポリアクリレート、ポリアルキシアノアクリレート、ポリアクチド、ポリアクチド−ポリグリコシドコポリマー、ポリカプロラクトン、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルギン酸塩、コラーゲン、キトサン、シクロデキストリン、およびポリエチレンイミンを含み得る。そのようなポリマーは単独で使用することができるが、好ましくは、他の賦形剤、例えば本明細書に開示されるカチオン性脂質(例えばHGT4001、HGT4002、HGT4003、HGT4004、および/またはHGT4005)のうちの1つと組み合わせて使用される。
【0151】
ある実施形態では、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、標的細胞への(例えばポリヌクレオチドの)形質移入を容易にするように製剤化され、修飾される。別の実施形態では、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、ポリヌクレオチドの標的細胞、組織、または臓器への送達を最適化するように選択され、調製され、修飾され得る(例えば中和される)。例えば、標的細胞が肝細胞である場合、薬学的および/またはリポソーム組成物の性質(例えば大きさ、表面電荷、および/またはpH)は、そのような組成物(例えば脂質ナノ粒子)を標的細胞もしくは臓器に効率的に送達する、免疫クリアランスを減少させる、および/またはその標的臓器における維持を促進するように最適化され得る。代替として、標的組織が中枢神経系である場合、薬学的およびリポソーム組成物の選択および調製は、血液脳関門への浸透およびその内への維持、ならびに/またはそのような組成物(例えば脂質ナノ粒子)をそのような標的組織に直接送達する代替手段の使用(例えば脳血管内またはくも膜下腔内投与を介して)を考慮しなければならない。ある実施形態では、本明細書に記載されるリポソーム組成物は、被包された材料の移動を容易にする複合体(例えば血液脳関門への浸透を妨害する、または改善し、それによって、そのような被包されたポリヌクレオチドの標的細胞への移動を強化する複合体)と組み合わせることができる。本明細書に記載されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、1つ以上のポリヌクレオチドなどの被包された材料の標的細胞への導入を容易にすることができるが、ポリカチオン(例えばポリL−リジンおよびプロタミン)の、例えばコポリマーとしてリポソーム組成物を含むリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上への付加も容易にし、いくつかの場合では、生体外および生体内両方のいくつかの細胞系において、数種類のカチオン性脂質の形質移入効率を2〜28倍大幅に強化する。(N.J.Caplen,et al.,Gene Ther.1995;2:603、S.Li,et al.,Gene Ther.1997;4,891を参照。)
本発明のある実施形態では、薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、1つ以上の材料または治療薬(例えばポリヌクレオチド)を被包するように調製される。所望の治療薬(例えばmRNA)をリポソームまたは脂質ナノ粒子中に組み込むプロセスは、本明細書において、「充填」または「被包」と称される(Lasic,et al,FEBS Lett.,312:255−258,1992)。脂質ナノ粒子充填または被包された材料(例えばポリヌクレオチド)は、脂質ナノ粒子の内部空間、脂質ナノ粒子の2重層膜内に完全に、または部分的に位置するか、または脂質ナノ粒子の外表面に会合し得る。
【0152】
例えばポリヌクレオチドを脂質ナノ粒子中に充填または被包することにより、そのようなポリヌクレオチドを迅速に排出させる、そのようなポリヌクレオチドおよび/または系もしくは受容体を分解する酵素もしくは化学物質(例えば血清)を含み得る環境からポリヌクレオチドを保護する働きをする可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、特にそのようなポリヌクレオチドが曝される環境に関して、それによって被包されたポリヌクレオチド(複数可)の安定性を強化することができる。例えばポリヌクレオチド等の材料を、本明細書に記載されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上の中に被包することにより、そのようなポリヌクレオチドの標的細胞および組織内への送達も容易にする。ある実施形態では、本明細書に記載されるリポソーム組成物は、修飾される、または中和される前に、1つ以上の治療薬で充填される。
【0153】
ある実施形態では、本明細書に記載されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、複数の脂質成分(例えば、本明細書に開示される脂質化合物のうちの1つ以上)を1つ以上のポリマー成分と組み合わせることにより調製される。例えば、脂質ナノ粒子は、HGT4003、DOPE、CHOL、およびDMG−PEG2000を用いて調製され得る。脂質ナノ粒子は、例えばHGT4001、DOPE、およびDMG−PEG2000を含む、様々な割合の追加の脂質の組み合わせから構成され得る。脂質ナノ粒子を含むカチオン性脂質、非カチオン性脂質、および/またはPEG修飾された脂質の選択、ならびにそのような脂質の相互に対する相対的モル比は、選択された脂質(複数可)の特性、意図される標的細胞または組織の性質、および脂質ナノ粒子によって送達される材料またはポリヌクレオチドの特性に基づく。さらなる考慮事項は、例えば、アルキル鎖の飽和、ならびに選択された脂質(複数可)の大きさ、表面電荷、pH、pKa、膜融合性、および毒性を含む。
【0154】
本明細書で使用するための薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、現在当該技術分野において既知である様々な技法により調製され得る。多層小胞(MLV)は、例えば、脂質を適切な溶剤に溶解し、次いで溶剤を蒸発させ、器の内部上に薄いフィルムを残すことにより、または噴霧乾燥により、選択された脂質を好適な容器もしくは器の内壁上に堆積させることによる従来の技法により調製され得る。次いで、MLVの形成をもたらす渦動運動している器に水相が添加され得る。次いで、単層小胞(ULV)は、均質化、音波処理、または多層小胞の押出により形成され得る。加えて、単層小胞は洗剤除去法により形成され得る。
【0155】
ある実施形態では、本発明の薬学的およびリポソーム組成物は、被包されたポリヌクレオチド(例えばmRNA)が脂質ナノ粒子の両表面上に会合され、同じ脂質ナノ粒子内に被包される、脂質ナノ粒子を含む。例えば、本発明の組成物の調製中、本明細書に記載され、リポソーム組成物の成分である脂質のうちの1つ以上は、そのようなポリヌクレオチドとの静電作用を通してポリヌクレオチド(例えばmRNA)と会合し得る。
【0156】
本明細書に記載されるリポソーム組成物の調製中、水溶性の担体薬剤も、水和溶液にそれらを含むことにより水性内部に被包され得、親油性分子は、脂質製剤に含まれることにより脂質2重層中に組み込まれ得る。ある分子(例えば、カチオン性またはアニオン性の親油性ポリヌクレオチド)の場合において、ポリヌクレオチドの予め形成された脂質ナノ粒子またはリポソーム内への充填は、例えば、米国特許第4,946,683号に記載される方法(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)により達成され得る。ポリヌクレオチドの被包後、脂質ナノ粒子は、ゲルクロマトグラフィー、膜分離精製法、または限外濾過等のプロセスを通して被包されていないmRNAを除去するために処理され得る。例えば、本明細書に記載されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の表面から外部的に結合されたポリヌクレオチドを除去することが望ましい場合、そのような脂質ナノ粒子は、ジエチルアミノエチルSEPHACELカラムに曝すことができる。
【0157】
本明細書に開示されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の大きさを減少させる、または「寸法決定」するための方法がいくつかあり、寸法決定が本発明の一部として使用されるとき、一般に、それらの方法のいずれかを採用することができる。押出方法は、リポソーム寸法決定の一方法である。(Hope,M J et al.Reduction of Liposome Size and Preparation of Unilamellar Vesicles by Extrusion Techniques.In:Liposome Technology(G.Gregoriadis,Ed.)Vol.1.p123(1993))。本方法は、リポソームの大きさを比較的明確に定義された大きさ分布に減少させるために、小さい細孔のポリカーボネート膜または非対称セラミック膜を通してリポソームを押出すことからなる。典型的に、所望のリポソームの大きさ分布が達成されるまで、膜を通して1回以上懸濁液が巡回される。リポソームは、リポソームの大きさの漸進的な減少を達成するように、連続的により小さい細孔膜を通して押出され得る。
【0158】
脂質ナノ粒子の集団を寸法決定するために、当該技術分野において既知の様々な代替え方法が利用可能である。そのような寸法決定の一方法は、米国特許第4,737,323号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。槽またはプローブ超音波処理のいずれかによるリポソームまたは脂質ナノ粒子懸濁液を超音波処理することにより、直径が約0.05ミクロン未満の小さいULVに漸進的に大きさの減少をもたらす。均質化は、大きいリポソームをより小さいものに細分化するための、せん断エネルギーに依存する別の方法である。典型的な均質化手順において、MLVは、典型的に約0.1〜0.5ミクロンの選択されたリポソームの大きさが観察されるまで、標準的なエマルジョンホモジナイザーを通して再循環される。脂質ナノ粒子の大きさは、Bloomfield,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,10:421−450(1981)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される擬電場光散乱(QELS)により決定され得る。平均脂質ナノ粒子直径は、形成された脂質ナノ粒子の音波処理により減少させることができる。間欠超音波処理周期は、十分なリポソーム合成を誘導するためにQELS評価と交互に行われてもよい。
【0159】
本明細書に記載されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の適切な大きさの選択は、標的細胞または組織の部位、およびある程度脂質ナノ粒子が作製される用途を考慮しなければならない。本明細書で使用される、句「標的細胞」とは、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物のうちの1つ以上が誘導される、または標的とされる細胞を指す。いくつかの実施形態では、標的細胞は、特定の組織または器官を含む。いくつかの実施形態では、標的細胞は、関心のタンパク質または酵素が欠乏している。例えば、ポリヌクレオチドを肝細胞に送達することが所望される場合、肝細胞は標的細胞を表す。いくつかの実施形態では、本発明の薬学的またはリポソーム組成物(および例えばその中に被包されたポリヌクレオチド材料)は、非差別的に標的細胞に形質移入される(すなわち、非標的細胞に形質移入されない)。本発明の組成物および方法は、肝細胞、造血細胞、上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、骨細胞、幹細胞、間葉細胞、神経細胞(例えば、髄膜、星状膠細胞、運動神経、後根神経節および前角運動神経の細胞)、光受容細胞(例えば、杆体錐体)、網膜色素上皮細胞、分泌細胞、心細胞、脂肪細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、β細胞、下垂体細胞、滑液系統細胞、卵巣細胞、精巣細胞、線維芽細胞、B細胞、T細胞、網状赤血球、白血球、顆粒球、および腫瘍細胞を含むがこれらに限定されない、様々な標的細胞を優先的に標的とするように調製され得る。
【0160】
例えば本明細書に開示される1つ以上のリポソーム組成物に被包されるポリヌクレオチドによる1つ以上の標的細胞への形質移入後、そのようなポリヌクレオチドによってコードされた生成物(例えばポリペプチドまたはタンパク質)の生成は、好ましくは、刺激され得、そのような標的細胞がポリヌクレオチドを発現し、例えば関心のポリペプチドまたはタンパク質を生成する能力は、強化される。例えば、mRNAを被包する1つ以上のリポソーム組成物による標的細胞への形質移入は、そのようなmRNAによってコードされるタンパク質または酵素の生成を強化(すなわち増加)する。
【0161】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドのある細胞または組織への形質移入を制限することが望ましい場合がある。例えば、肝臓は、一部、代謝およびタンパク質の生成におけるその中心的な役割のため、本発明の組成物に重要な標的器官を表し、したがって肝臓特異的遺伝子生成物(例えば尿素回路障害)における異常により生じる疾患は、細胞(例えば肝細胞)の特異的標的によって利益を得る場合がある。したがって、本発明のある実施形態では、標的組織の構造的特性は、本発明の薬学的およびリポソーム組成物(例えばHGT4001に基づく脂質ナノ粒子)をそのような標的組織に直接分布されるのを誘導するために利用され得る。例えば、肝細胞を標的とするために、本明細書に記載される薬学的またはリポソーム組成物を含む脂質ナノ粒子のうちの1つ以上は、それらが標的肝細胞に達するために、そのような内皮開窓を容易に浸透することができるように寸法決定されるか、またはそれらの表面電荷が修飾され得る。代替として、脂質ナノ粒子は、リポソームの寸法がある細胞または組織への分布を制限するか、または明確に回避するのに十分な寸法のものであるように寸法決定されるか、またはその表面電荷が修飾され得る。例えば、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物を含む脂質ナノ粒子は、その直径が内皮層系統肝類洞の開窓より大きく、それによってリポソーム脂質ナノ粒子の幹細胞への分布を制限するように寸法決定され得る。そのような実施形態では、大きいリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、内皮開窓を容易に透過せず、代わりに、肝臓の類洞を覆うマクロファージクッパー細胞により除去されるだろう。
したがって、例えばリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の寸法決定は、被包されたポリヌクレオチドの発現が1つ以上の標的細胞において強化され得る程度をさらに操作し、正確に制御する機会を提供する。一般に、本発明の薬学的およびリポソーム組成物を含む脂質ナノ粒子のうちの少なくとも1つの大きさは、約25〜250nmの範囲内、好ましくは約250nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、50nm、25nm、または10nm未満である。
【0162】
同様に、本発明の組成物は、心臓、肺、腎臓、脾臓等の他の標的組織、細胞、または器官に優先的に分布されるように調製され得る。例えば、本発明の脂質ナノ粒子は、標的細胞および組織への送達の強化を達成するように調製され得る。したがって、本発明の組成物は、組織または細胞をさらに標的とするために、追加のカチオン性、非カチオン性、およびPEG修飾された脂質で富化され得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される脂質化合物ならびに薬学的およびリポソーム組成物(例えばHGT4002に基づく脂質ナノ粒子)は、その中に被包されたポリヌクレオチド(例えばmRNA)の送達、形質移入、および後の肝臓(例えば肝細胞)の細胞および組織による発現、ならびにそのようなポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドまたはタンパク質の対応する生成を強化するために、肝臓の細胞および組織に分布される。そのような組成物は肝臓の細胞および組織内に優先的に分布されるが、発現したポリヌクレオチドの治療効果およびそれによってコードされたタンパク質の後の生成は、標的細胞および組織に制限される必要はない。例えば、標的とされる肝細胞は、例えば、国際出願第PCT/US2010/058457号(代理人整理番号SHIR−004−WO1)および米国仮出願第61/494,881号(代理人整理番号SHIR−025−001)(それらの教示は両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、機能タンパク質または酵素を発現または生成し、それらを全身的または抹消的に排出することができる「リザーバ」または「デポ」として機能することができる。本明細書に開示される脂質組成物、リポソームビヒクル、および関連する方法は、それらの標的とされる細胞および/または組織が機能酵素もしくはタンパク質を発現、生成、ないしは別の方法で分泌することができるリザーバまたはデポとして機能するような任意の細胞および/または組織を標的とするために使用され得ることを理解するべきである。例えば、本明細書に開示される組成物は、それらの細胞が本明細書に開示されるリポソームビヒクル(例えば脂質ナノ粒子)に被包されるポリヌクレオチド(例えばmRNAポリヌクレオチド)によりコードされる機能タンパク質または酵素を発現する(例えば翻訳する)ことができる状態にするように、肺、心臓、腎臓、肝臓、および/または脾臓の細胞および組織を優先的に標的とし、それらに分布され得る。したがって、本発明のある実施形態では、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物を含む脂質ナノ粒子(例えばHGT4005に基づく脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上は、肝細胞を標的とし、かつ/または送達時に肝臓の細胞および組織に優先的に分布され得る。そのような脂質ナノ粒子のうちの1つ以上に被包されたポリヌクレオチドによる標的幹細胞への形質移入後、そのような機能生成物が所望の治療効果を及ぼすことが可能である場所に、そのようなポリヌクレオチドが発現し(例えば翻される)、機能生成物(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が分泌され、全身的に分布される。
【0164】
本明細書に記載される脂質化合物またはリポソーム組成物のうちの1つ以上に被包されたポリヌクレオチドは、標的細胞または組織に送達および/または形質移入され得る。いくつかの実施形態では、被包されたポリヌクレオチドは発現することができ、機能ポリペプチド生成物が標的細胞によって生成され(いくつかの場合では分泌される)、それによって例えば標的細胞または組織に有益な性質を付与する。そのような被包されたポリヌクレオチドは、例えば、ホルモン、酵素、受容体、ポリペプチド、ペプチド、または関心の他のタンパク質をコードすることができる。ある実施形態では、そのような被包されたポリヌクレオチドは、内因性核酸または遺伝子の発現を調節する、ないしは別の方法で減少させる、または排除する目的のために、低干渉RNA(siRNA)またはアンチセンスRNAをコードすることもできる。ある実施形態では、そのような被包されたポリヌクレオチドは本来天然であるか、または組み換えであってもよく、センスまたはアンチセンスのいずれかの機構の作用を用いて(例えば標的遺伝子または核酸の発現を調節することにより)、治療活性を及ぼすことができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、被包されたポリヌクレオチド(例えば、欠乏タンパク質をコードするmRNA)は、任意に、例えばそのようなポリヌクレオチドの安定性および/もしくは半減期を改善する、またはそのようなポリヌクレオチドの翻訳を改善する、ないしは別の方法で容易にする化学修飾または生物学的修飾を含む。
【0166】
例えば2つの独特の治療薬またはポリヌクレオチドを単一脂質ナノ粒子に組み合わせることによって、本発明に記載される脂質またはリポソーム組成物により、1つ以上の独特のポリヌクレオチドを標的細胞に共送達することも本明細書により想定される。単一の障害または欠乏を治療するために、1つ以上の被包されたポリヌクレオチドを1つ以上の標的細胞に送達することも想定され、それぞれのそのようなポリヌクレオチドは異なる機構の作用によって機能する。例えば、本発明の薬学的またはリポソーム組成物は、例えば脂質ナノ粒子に被包され、内因性タンパク質または酵素欠乏を補正することが意図される第1のポリヌクレオチドと、機能不全の内因性ポリヌクレオチドおよびそのタンパク質もしくは酵素生成物を不活性化または「ノックダオウン」することが意図される第2のポリヌクレオチドとを含み得る。そのような被包されたポリヌクレオチドは、例えばmRNAおよびsiRNAをコードすることができる。
【0167】
生体外転写されたポリヌクレオチド(例えばmRNA)は標的細胞内に形質移入され得るが、そのようなポリヌクレオチドは、生体内で細胞により容易にかつ効率的に分解され得、よってそのようなポリヌクレオチドを無効にする。さらに、いくつかのポリヌクレオチドは、体液において(特にヒトの血清)不安定であり、標的細胞に到達しないうちに分解または消化され得る。加えて、細胞内で、天然のmRNAは、30分〜数日の半減期で減衰し得る。したがって、ある実施形態では、本明細書に提供される被包されたポリヌクレオチド、特に本明細書に提供されるmRNAポリヌクレオチドは、好ましくは、1つ以上の標的細胞内で発現するか、または翻訳され、それによって機能タンパク質または酵素を生成する少なくともいくつかの能力を保持する。
【0168】
本明細書で使用される、用語「対象」とは、本発明の脂質、化合物またはリポソーム組成物および方法が投与され得る、ヒト、ヒト以外の霊長類、げっ歯類等を含むが、これらに限定されない任意の動物(例えば哺乳類)を指す。典型的に、用語「対象」および「患者」は、本明細書において、ヒト対象に関して互換的に使用される。
【0169】
本明細書に記載される脂質、化合物および/またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)が被包されたポリヌクレオチドの発現およびポリペプチドもしくはタンパク質の生成を調節または強化する能力は、疾患または病的状態の宿主の治療のために、ポリペプチドおよびタンパク質の生体内生成をもたらす新しい、より効率的な手段を提供する。そのような脂質ナノ粒子組成物は、タンパク質または酵素をコードする核酸の異常発現に関連する疾患または病的状態の治療に特に適している。例えば、mRNA等のポリヌクレオチドの、肝臓、特に幹細胞等の標的器官への成功裏の送達は、肝臓に局在化する代謝の先天性異常の治療および補正に使用され得る。したがって、本明細書に記載される脂質、化合物、リポソーム組成物、および関連する方法は、広範囲の疾患および病的状態、特にタンパク質または酵素欠乏によるそれらの疾患を治療するために採用され得る。本明細書に記載される脂質またはリポソーム組成物によって被包されたポリヌクレオチド(例えばHGT4004に基づく脂質ナノ粒子)は、機能生成物(例えば、タンパク質、酵素、ポリペプチド、ペプチド、機能RNA、および/またはアンチセンス分子)をコードし得、好ましくは生体内生成が望まれる生成物をコードする。
【0170】
本発明の脂質、リポソーム組成物、および関連する方法は、多くの障害を治療するための、ポリヌクレオチド等の治療薬、特にmRNAの送達に広く適用可能である。特に、本発明のそのような化合物、組成物、および関連する方法は、タンパク質および/または酵素の欠乏に関連する疾患または障害の治療に適している。ある実施形態では、脂質ナノ粒子−被包されたポリヌクレオチドは、1つ以上の標的細胞によって、周囲の細胞外流体(例えばホルモンおよび神経伝達物質をコードするmRNA)内に排出または分泌される機能タンパク質または酵素をコードする。別の方法として、別の実施形態では、本発明の脂質および/またはリポソーム組成物によって被包されるポリヌクレオチドは、1つ以上の標的細胞(例えば尿素回路またはリソソーム貯蔵代謝障害に関連する酵素をコードするmRNA)の細胞質ゾルに残存する機能タンパク質または酵素をコードする。本発明の脂質、化合物、リポソーム組成物、および関連する方法が有用である他の障害は、SMN1関連脊髄性筋萎縮症(SMA);筋萎縮性側索硬化症(ALS);GALT関連ガラクトース血症;嚢胞性線維症(CF);シスチン尿症を含むSLC3A1関連障害;アルポート症候群を含むCOL4A5関連障害;ガラクトセレブロシダーゼ欠損症;X連鎖副腎白質ジストロフィーおよび副腎脊髄神経障害;フリードライヒ運動失調症;ペリツェウス・メルツバッヘル病;TSC1およびTSC2関連結節性硬化症;サンフィリポB症候群(MPS IIIB);CTNS関連シスチン症;脆弱X症候群、脆弱X関連振戦/運動失調症候群および脆弱X早期閉経症候群を含むFMR1関連障害;プラダー−ウィリー症候群;ファブリー病;遺伝性出血性末梢血管拡張症(AT);ニーマン−ピック病C1型;若年型神経セロイドリポフスチン症(JNCL)、若年型バッテン病、サンタオブオリ−ハルティア病(Santavuori−Haltia disease)、ヤンスキー−ビールショースキー病、ならびにPTT−1およびTPP1欠損症を含む神経セロイドリポフスチン関連疾患;中枢神経系エミリン形成不全/白質消失を伴うEIF2B1、EIF2B2、EIF2B3、EIF2B4、およびEIF2B5関連小児期運動失調症;CACNA1AおよびCACNB4関連発作性運動失調症2型;典型的レット症候群、MECP2関連重度新生児脳症、およびPPM−X症候群を含むMECP2関連障害;CDKL5関連非定形レット症候群;ケネディ病(SBMA);皮質下梗塞および白質脳症を伴うノッチ−3関連常染色体優性脳動脈症(CADASIL);SCN1AおよびSCN1B関連痙攣障害;アルパース−ヒュッテンロッチャー(Huttenlocher)症候群、POLG関連感覚運動失調神経障害、構音障害、および眼麻痺、ならびにミトコンドリアDNA欠失を伴う常染色体優性および劣性進行性外眼筋麻痺を含むポリメラーゼG関連障害;X連鎖型副腎発育不全;X連鎖型無ガンマグロブリン血症;ならびにウィルソン病などの障害を含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、本発明のポリヌクレオチド、特にmRNAは、機能タンパク質または酵素をコードすることができる。例えば、本発明の組成物は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、またはアルギナーゼ1(ARG1)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、酸アルファグルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、アルファガラクトシターゼA、エリスロポエチン、α1−抗トリプシン、カルボキシペプチダーゼN、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン 6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、ヒト成長ホルモン、生存運動ニューロン、第VIII因子、第IX因子、または低密度リポタンパク質受容体をコードするmRNAを含み得る。
【0171】
一実施形態では、mRNAは、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、α1−抗トリプシン、酸性アルファグルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、カルボキシペプチダーゼN、α−ガラクトシターゼA、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン 6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、アルギナーゼ1(ARG1)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、生存運動ニューロン(SMN)、第VIII因子、第IX因子、および低密度リポタンパク質受容体(LDLR)からなる群から選択されるタンパク質または酵素をコードする。
【0172】
本明細書に記載される脂質、化合物およびリポソーム組成物は、対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の追加のポリヌクレオチド、担体、標的リガンド、もしくは安定化試薬、または他の好適な賦形剤と組み合わせて製剤化される。薬物の製剤化および投与の技法は、”Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,Pa.の最新版に見出すことができる。
【0173】
本発明の脂質およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、対象の臨床状態、被包された材料の性質、投与の部位および方法、投与予定、対象の年齢、性別、体重、ならびに当該技術分野の臨床医に関する他の要因を考慮して、現在の医行為に従い投与および投薬され得る。本明細書の目的において、「有効量」は、実験臨床研究、薬理学、および医療分野の当業者に既知である、そのような関連する考慮事項によって決定され得る。いくつかの実施形態では、投与される量は、疾患の進行、後退、または改善の適切な処置として当業者により選択される、少なくともある程度の症状の安定化、改善または排除、および他の指標を達成するのに十分である。例えば、好適な量および投与レジメンは、標的細胞における1つ以上のポリヌクレオチドの少なくとも一過性の発現をもたらすものである。
【0174】
本明細書に開示される脂質、化合物、およびリポソーム組成物の好適な投与経路は、例えば、経口、直腸、膣、経粘膜、または腸投与、筋肉内、皮下、髄内注射、ならびにくも膜下腔内、側脳室内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻孔内、または眼内注射もしくは注入を含む非経口投与を含む。ある実施形態では、対象に本明細書に記載される脂質、化合物またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)を投与することにより、そのような化合物または組成物を1つ以上の標的細胞、組織、または器官に接触させることを容易にする。
【0175】
代替的に、本発明の脂質、化合物およびリポソーム組成物は、標的細胞の構成要素である脂質ナノ粒子への接触をさらに容易にすることができるように、例えば、リポソーム組成物の標的組織への直接注射または注入を介して、好ましくはデポ製剤または持続放出製剤で、全身よりもむしろ局所様式で投与され得る。局所送達は、標的とされる組織により、様々な方法で影響を受ける場合がある。例えば、本発明の組成物を含むエアロゾルは吸引され得る(鼻、気管、または気管支送達用)、本発明の組成物は例えば外傷、疾患徴候、または痛みの部位内に注射され得る、組成物は経口、気管、もしくは食道用途用にロゼンジ剤で提供され得る、胃もしくは腸に投与するために液体、錠剤、もしくはカプセルの形態で供給され得る、直腸もしくは膣用途用に坐剤形態で供給され得る、またはクリーム、滴剤、またはさらには注射の使用により眼にも送達され得る。治療用分子またはリガンドと複合される本発明の脂質化合物を含む製剤は、例えば、組成物を移植の部位から周囲細胞に拡散させることができるポリマーまたは他の構造もしくは物質と関連して外科的にも投与され得る。別の方法としては、そのような組成物は、ポリマーまたは支持体を使用することなく外科的に適用され得る。
【0176】
本発明の脂質およびリポソーム組成物(例えば、本明細書に提供される教示に従い中和された、ないしは別の方法で修飾された脂質ナノ粒子)は、好ましくは、安定している(例えば少なくとも1年間冷蔵条件下で保管されたとき)。ある実施形態では、本明細書に提供される脂質およびリポソーム組成物の安定性は、そのような組成物を凍結乾燥することにより延長することができる。したがって、例えば2011年6月8日に出願された米国仮出願第61/494,882号(代理人整理番号SHIR−023−001)(その教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、本明細書に開示される脂質化合物のうちの1つ以上を含む凍結乾燥されたリポソーム組成物、およびそのような凍結乾燥された組成物を使用するための関連する方法も、本明細書において想定される。
【0177】
ある実施形態では、本発明の組成物は、それらが例えばその中に被包されたポリヌクレオチドまたは核酸の持続放出に適するように製剤化される。そのような持続放出組成物は、延長された投与間隔で、適宜対象に投与され得る。例えば、ある実施形態では、本発明の組成物は、1日2回、1日1回、または2日に1回、対象に投与される。ある実施形態では、本発明の組成物は、1週間に2回、1週間に1回、10日に1回、2週間に1回、3週間に1回、または好ましくは4週間に1回、1ヶ月に1回、6週間に1回、8週間に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、6ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、または1年に1回、対象に投与される。長期間にわたりポリヌクレオチド(例えばmRNA)の送達または放出のいずれかを行うために、デポ投与(例えば、筋肉内に、皮下に、硝子体内に)用に製剤化される組成物および脂質ナノ粒子も想定される。好ましくは、採用される持続放出手段は、安定性を強化するために、ポリヌクレオチド内に導入される修飾(例えば化学修飾)と組み合わされる。
【0178】
本発明のある化合物、組成物、および方法がある実施形態に従い具体的に記載されてきたが、以下の実施例は、単に本発明の化合物を図示するのに役立ち、それを限定することは意図されない。本発明の背景を説明し、その実践に関する追加の詳細を提供するために参照される刊行物、参考資料等のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0179】
本明細書および特許請求の範囲において、本明細書で使用される、冠詞「a」および「an」は、特に逆が明確に記載されない限り、複数対象を含むように理解されるべきである。群の1つ以上のメンバー間に「or」を含む特許請求の範囲または説明は、逆が記載されない、ないしは別の方法で内容から明らかでない限り、1つ、2つ以上、または全ての群のメンバーが所与の生成物またはプロセスに存在する、採用される、ないしは別の方法で関係する場合満たされたと考えられる。本発明は、正確に群のうちの1つのメンバーが所与の生成物またはプロセスに存在する、採用される、ないしは別の方法で関係する実施形態を含む。本発明は、2つ以上または全群のメンバーが所与の生成物またはプロセスに存在する、採用される、ないしは別の方法で関係する実施形態も含む。さらに、本発明は、特に記載されない限り、または矛盾または不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、列挙される特許請求の範囲のうちの1つ以上からの1つ以上の制限、要素、条項、記述用語等が同じ基本特許請求に依存する(または関連する任意の他の特許請求として)別の特許請求に導入される全ての変形、組み合わせ、および置換を包含することを理解する。要素がリスト(例えばマルクーシュ群または同様の形式で)として提示される場合、要素のそれぞれの小群も開示され、任意の要素(複数可)は群から取り除かれ得ることを理解する。一般に、本発明または本発明の態様は、特定の要素、特徴等を含むものと見なされ、本発明のある実施形態または本発明の態様は、そのような要素、特徴等からなるか、または本質的にそれらからなることも理解するべきである。簡潔化する目的のため、これらの実施形態は、全ての場合において、本明細書において明確に、具体的に記述されない。本発明の任意の実施形態または態様は、特定の除外が本明細書に列挙されるか否かに関わらず、特許請求の範囲から明示的に除外され得ることも理解するべきである。本発明の背景を説明し、その実践に関する追加の詳細を提供するために参照される刊行物および他の参考資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0180】
実施例1
本実施例は、HGT4002に基づく脂質ナノ粒子がmRNAポリヌクレオチド構築物で充填された後に還元的に中和され得ることを図示する。HGT4002に基づく脂質ナノ粒子は、以下に記載される標準的なエタノール注入法を介して形成された。(Ponsa,et al.,Int.J.Pharm.(1993)95:51−56.)。脂質のエタノール性原液は、50mg/mLの濃度で事前に調製され、−20℃で保管された。
【0181】
コドン最適化されたホタルルシフェラーゼ(CO−FFL)mRNAは、プラスミドDNAテンプレートから生体外転写され、これに続いて、5’キャップ構造(Cap1)(Fechter,P.et al.,J.Gen.Virology(2005)86:1239−1249)およびゲル電気泳動により決定された長さが約200ヌクレオチドの3’ポリ(A)テールを付加することにより合成された。各mRNA生成物に存在する5’および3’非翻訳領域は、下に示されるように、配列番号1においてそれぞれ、XおよびYとして表される。
コドン最適化ホタルルシフェラーゼ(FFL)mRNA:配列番号1
XAUGGAAGAUGCCAAAAACAUUAAGAAGGGCCCAGCGCCAUUCUACCCACUCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCUGCACAAAGCCAUGAAGCGCUACGCCCUGGUGCCCGGCACCAUCGCCUUUACCGACGCACAUAUCGAGGUGGACAUUACCUACGCCGAGUACUUCGAGAUGAGCGUUCGGCUGGCAGAAGCUAUGAAGCGCUAUGGGCUGAAUACAAACCAUCGGAUCGUGGUGUGCAGCGAGAAUAGCUUGCAGUUCUUCAUGCCCGUGUUGGGUGCCCUGUUCAUCGGUGUGGCUGUGGCCCCAGCUAACGACAUCUACAACGAGCGCGAGCUGCUGAACAGCAUGGGCAUCAGCCAGCCCACCGUCGUAUUCGUGAGCAAGAAAGGGCUGCAAAAGAUCCUCAACGUGCAAAAGAAGCUACCGAUCAUACAAAAGAUCAUCAUCAUGGAUAGCAAGACCGACUACCAGGGCUUCCAAAGCAUGUACACCUUCGUGACUUCCCAUUUGCCACCCGGCUUCAACGAGUACGACUUCGUGCCCGAGAGCUUCGACCGGGACAAAACCAUCGCCCUGAUCAUGAACAGUAGUGGCAGUACCGGAUUGCCCAAGGGCGUAGCCCUACCGCACCGCACCGCUUGUGUCCGAUUCAGUCAUGCCCGCGACCCCAUCUUCGGCAACCAGAUCAUCCCCGACACCGCUAUCCUCAGCGUGGUGCCAUUUCACCACGGCUUCGGCAUGUUCACCACGCUGGGCUACUUGAUCUGCGGCUUUCGGGUCGUGCUCAUGUACCGCUUCGAGGAGGAGCUAUUCUUGCGCAGCUUGCAAGACUAUAAGAUUCAAUCUGCCCUGCUGGUGCCCACACUAUUUAGCUUCUUCGCUAAGAGCACUCUCAUCGACAAGUACGACCUAAGCAACUUGCACGAGAUCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCUCAGCAAGGAGGUAGGUGAGGCCGUGGCCAAACGCUUCCACCUACCAGGCAUCCGCCAGGGCUACGGCCUGACAGAAACAACCAGCGCCAUUCUGAUCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCUGGCGCAGUAGGCAAGGUGGUGCCCUUCUUCGAGGCUAAGGUGGUGGACUUGGACACCGGUAAGACACUGGGUGUGAACCAGCGCGGCGAGCUGUGCGUCCGUGGCCCCAUGAUCAUGAGCGGCUACGUUAACAACCCCGAGGCUACAAACGCUCUCAUCGACAAGGACGGCUGGCUGCACAGCGGCGACAUCGCCUACUGGGACGAGGACGAGCACUUCUUCAUCGUGGACCGGCUGAAGAGCCUGAUCAAAUACAAGGGCUACCAGGUAGCCCCAGCCGAACUGGAGAGCAUCCUGCUGCAACACCCCAACAUCUUCGACGCCGGGGUCGCCGGCCUGCCCGACGACGAUGCCGGCGAGCUGCCCGCCGCAGUCGUCGUGCUGGAACACGGUAAAACCAUGACCGAGAAGGAGAUCGUGGACUAUGUGGCCAGCCAGGUUACAACCGCCAAGAAGCUGCGCGGUGGUGUUGUGUUCGUGGACGAGGUGCCUAAAGGACUGACCGGCAAGUUGGACGCCCGCAAGAUCCGCGAGAUUCUCAUUAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGAUCGCCGUGUAY
X=GGGAUCCUACC(配列番号2)
Y=UUUGAAUU(配列番号3) 。
【0182】
次に、0.25mgのFFL mRNAを、加熱ブロックを使用して、70℃で5分間加熱することにより変性した。3mL容量の水性緩衝溶液(10mMクエン酸塩/150mM NaCl、pH4.5)を調製し、15mLのRNaseを含まない三角管中で、管を加熱した水浴中に設置することにより加熱し、続いて、FFL mRNAを加熱した水性緩衝溶液中に添加し、0.25mg/3mLの最終FFL mRNA濃度を達成した。
【0183】
全てのmRNA濃度は、Ribogreenアッセイ(Invitrogen)を介して決定された。mRNAの被包は、0.1%のトリトン−X100の存在下、および不在下で、Ribogreenアッセイを行うことにより計算された。粒径(動的光散乱(DLS))およびゼータ電位は、それぞれ、1×PBSおよび1mM KCl溶液において、Malvern Zetasizer機器を使用して決定された。
【0184】
脂質ナノ粒子を調製するために、50mg/mLのHGT4002、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2000のエタノール性溶液のアリコートを、下の表に示されるように混合し、溶解を確実にするために加熱し、エタノールで希釈した。得られた脂質溶液は、N/P比4の0.25mg mRNAに適している。
【0185】
【表1】
【0186】
0.5mLのエタノール性脂質溶液を、加熱した(70℃)水性mRNA/緩衝溶液に素早く注入し、振盪し、得られた懸濁液を70℃の水浴に直ぐに戻した。得られたナノ粒子懸濁液を濃縮し、ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に再懸濁し、MUSTANG Q膜(Pall Life Sciences)を通し、濾過し、1×PBS(pH7.4)で透析し、さらに濃縮した。得られた脂質ナノ粒子のZ
平均は、159.4nm(Dv
(50)=147nm、Dv
(90)=299nm)であり、平均ゼータ電位は28.0mVであった。脂質ナノ粒子は、約82%の被包効率を示した。
【0187】
次に、脂質ナノ粒子は、還元剤β−メルカプトエタノール(β−ME)を含む水性溶液に曝露され、脂質ナノ粒子のゼータ電位が評価された。脂質ナノ粒子を250μL(100X)のβ−ME溶液に1時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が15.8mVに還元された。脂質ナノ粒子を250μL(100X)のβ−ME溶液に3時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が−0.26mVに還元された。脂質ナノ粒子を25μL(10X)のβ−ME溶液に22時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が1.59mVに還元された。
【0188】
前述は、還元剤に曝露されたとき、HGT4002に基づく脂質ナノ粒子の電荷(すなわち、ゼータ電位)が調節され、ある場合では中和され得るという結論を支持する。
【0189】
実施例2
本実施例は、HGT4002に基づく脂質ナノ粒子がmRNAポリヌクレオチド構築物で充填された後に還元的に中和され得ることを図示する。HGT4002に基づく脂質ナノ粒子は、以下に記載される標準的なエタノール注入法を介して形成された。(Ponsa,et al.,Int.J.Pharm.(1993)95:51−56.)。脂質のエタノール性原液は、50mg/mLの濃度で事前に調製され、−20℃で保管された。
【0190】
コドン最適化されたホタルルシフェラーゼ(CO−FFL)mRNAは、プラスミドDNAテンプレートから生体外転写され、これに続いて、5’キャップ構造(Cap1)(Fechter,P.et al.,J.Gen.Virology(2005)86:1239−1249)およびゲル電気泳動により決定された長さが約200ヌクレオチドの3’ポリ(A)テールを付加することにより合成された。各mRNA生成物に存在する5’および3’非翻訳領域は、下に示されるように、配列番号1においてそれぞれ、XおよびYとして表される。
コドン最適化ホタルルシフェラーゼ(FFL)mRNA:配列番号1
XAUGGAAGAUGCCAAAAACAUUAAGAAGGGCCCAGCGCCAUUCUACCCACUCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCUGCACAAAGCCAUGAAGCGCUACGCCCUGGUGCCCGGCACCAUCGCCUUUACCGACGCACAUAUCGAGGUGGACAUUACCUACGCCGAGUACUUCGAGAUGAGCGUUCGGCUGGCAGAAGCUAUGAAGCGCUAUGGGCUGAAUACAAACCAUCGGAUCGUGGUGUGCAGCGAGAAUAGCUUGCAGUUCUUCAUGCCCGUGUUGGGUGCCCUGUUCAUCGGUGUGGCUGUGGCCCCAGCUAACGACAUCUACAACGAGCGCGAGCUGCUGAACAGCAUGGGCAUCAGCCAGCCCACCGUCGUAUUCGUGAGCAAGAAAGGGCUGCAAAAGAUCCUCAACGUGCAAAAGAAGCUACCGAUCAUACAAAAGAUCAUCAUCAUGGAUAGCAAGACCGACUACCAGGGCUUCCAAAGCAUGUACACCUUCGUGACUUCCCAUUUGCCACCCGGCUUCAACGAGUACGACUUCGUGCCCGAGAGCUUCGACCGGGACAAAACCAUCGCCCUGAUCAUGAACAGUAGUGGCAGUACCGGAUUGCCCAAGGGCGUAGCCCUACCGCACCGCACCGCUUGUGUCCGAUUCAGUCAUGCCCGCGACCCCAUCUUCGGCAACCAGAUCAUCCCCGACACCGCUAUCCUCAGCGUGGUGCCAUUUCACCACGGCUUCGGCAUGUUCACCACGCUGGGCUACUUGAUCUGCGGCUUUCGGGUCGUGCUCAUGUACCGCUUCGAGGAGGAGCUAUUCUUGCGCAGCUUGCAAGACUAUAAGAUUCAAUCUGCCCUGCUGGUGCCCACACUAUUUAGCUUCUUCGCUAAGAGCACUCUCAUCGACAAGUACGACCUAAGCAACUUGCACGAGAUCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCUCAGCAAGGAGGUAGGUGAGGCCGUGGCCAAACGCUUCCACCUACCAGGCAUCCGCCAGGGCUACGGCCUGACAGAAACAACCAGCGCCAUUCUGAUCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCUGGCGCAGUAGGCAAGGUGGUGCCCUUCUUCGAGGCUAAGGUGGUGGACUUGGACACCGGUAAGACACUGGGUGUGAACCAGCGCGGCGAGCUGUGCGUCCGUGGCCCCAUGAUCAUGAGCGGCUACGUUAACAACCCCGAGGCUACAAACGCUCUCAUCGACAAGGACGGCUGGCUGCACAGCGGCGACAUCGCCUACUGGGACGAGGACGAGCACUUCUUCAUCGUGGACCGGCUGAAGAGCCUGAUCAAAUACAAGGGCUACCAGGUAGCCCCAGCCGAACUGGAGAGCAUCCUGCUGCAACACCCCAACAUCUUCGACGCCGGGGUCGCCGGCCUGCCCGACGACGAUGCCGGCGAGCUGCCCGCCGCAGUCGUCGUGCUGGAACACGGUAAAACCAUGACCGAGAAGGAGAUCGUGGACUAUGUGGCCAGCCAGGUUACAACCGCCAAGAAGCUGCGCGGUGGUGUUGUGUUCGUGGACGAGGUGCCUAAAGGACUGACCGGCAAGUUGGACGCCCGCAAGAUCCGCGAGAUUCUCAUUAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGAUCGCCGUGUAY
X=GGGAUCCUACC(配列番号2)
Y=UUUGAAUU(配列番号3) 。
【0191】
次に、0.25mgのFFL mRNAを、加熱ブロックを使用して、70℃で5分間加熱することにより変性した。2mL容量の水性緩衝溶液(10mMクエン酸塩/150mM NaCl、pH4.5)を調製し、RNaseを含まない三角管中で、管を加熱した水浴中に設置することにより加熱し、続いて、FFL mRNAを加熱した水性緩衝溶液中に添加し、0.25mg/2mLの最終FFL mRNA濃度を達成した。
【0192】
全てのmRNA濃度は、Ribogreenアッセイ(Invitrogen)を介して決定された。mRNAの被包は、0.1%のトリトン−X100の存在下、および不在下で、Ribogreenアッセイを行うことにより計算された。粒径(動的光散乱(DLS))およびゼータ電位は、それぞれ、1×PBSおよび1mM KCl溶液において、Malvern Zetasizer機器を使用して決定された。
【0193】
脂質ナノ粒子を調製するために、50mg/mLのHGT4002、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2000のエタノール性溶液のアリコートを、下の表2に示されるように混合し、溶解を確実にするために加熱し、エタノールで希釈した。得られた脂質溶液は、N/P比4の0.25mg mRNAに適している。
【0194】
【表2】
【0195】
0.5mLのエタノール性脂質溶液を、加熱した(70℃)水性mRNA/緩衝溶液に素早く注入し、振盪し、得られた懸濁液を70℃の水浴に直ぐに戻した。得られたナノ粒子懸濁液を濃縮し、ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に再懸濁し、MUSTANG Q膜(Pall Life Sciences)を通し、濾過し、1×PBS(pH7.4)で透析し、さらに濃縮した。得られた脂質ナノ粒子のZ
平均は、115.5nm(Dv
(50)=92.1nm、Dv
(90)=162nm)であり、平均ゼータ電位は29.1mVであった。脂質ナノ粒子は、約80%の被包効率を示した。
【0196】
次に、脂質ナノ粒子は、還元剤β−メルカプトエタノール(β−ME)を含む水性溶液に曝露され、脂質ナノ粒子のゼータ電位が評価された。脂質ナノ粒子を25μL(10X)のβ−ME溶液に18時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が−3.50mVに還元された。脂質ナノ粒子を250μL(100X)のβ−ME溶液に1時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が14.8mVに還元された。脂質ナノ粒子を250μL(100X)のβ−ME溶液に2時間30分曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が2.85mVに還元された。脂質ナノ粒子を250μL(100X)のβ−ME溶液に3時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が−3.40mVに還元された。前述は、荷電された脂質ナノ粒子を還元剤に曝露することにより、脂質ナノ粒子の電荷(すなわち、ゼータ電位)が調節され、ある場合では中和され得るという結論を支持する。
【0197】
実施例3
本実施例は、HGT4002に基づく脂質ナノ粒子がmRNAポリヌクレオチド構築物で充填された後に還元的に中和され得ることをさらに図示する。HGT4002に基づく脂質ナノ粒子は、以下に記載される標準的なエタノール注入法を介して形成された。(Ponsa,et al.,Int.J.Pharm.(1993)95:51−56.)。脂質のエタノール性原液は、50mg/mLの濃度で事前に調製され、−20℃で保管された。
【0198】
コドン最適化されたホタルルシフェラーゼ(CO−FFL)mRNAは、プラスミドDNAテンプレートから生体外転写され、これに続いて、5’キャップ構造(Cap1)(Fechter,P.et al.,J.Gen.Virology(2005)86:1239−1249)およびゲル電気泳動により決定された長さが約200ヌクレオチドの3’ポリ(A)テールを付加することにより合成された。各mRNA生成物に存在する5’および3’非翻訳領域は、下に示されるように、配列番号1においてそれぞれ、XおよびYとして表される。
コドン最適化ホタルルシフェラーゼ(FFL)mRNA:配列番号1
XAUGGAAGAUGCCAAAAACAUUAAGAAGGGCCCAGCGCCAUUCUACCCACUCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCUGCACAAAGCCAUGAAGCGCUACGCCCUGGUGCCCGGCACCAUCGCCUUUACCGACGCACAUAUCGAGGUGGACAUUACCUACGCCGAGUACUUCGAGAUGAGCGUUCGGCUGGCAGAAGCUAUGAAGCGCUAUGGGCUGAAUACAAACCAUCGGAUCGUGGUGUGCAGCGAGAAUAGCUUGCAGUUCUUCAUGCCCGUGUUGGGUGCCCUGUUCAUCGGUGUGGCUGUGGCCCCAGCUAACGACAUCUACAACGAGCGCGAGCUGCUGAACAGCAUGGGCAUCAGCCAGCCCACCGUCGUAUUCGUGAGCAAGAAAGGGCUGCAAAAGAUCCUCAACGUGCAAAAGAAGCUACCGAUCAUACAAAAGAUCAUCAUCAUGGAUAGCAAGACCGACUACCAGGGCUUCCAAAGCAUGUACACCUUCGUGACUUCCCAUUUGCCACCCGGCUUCAACGAGUACGACUUCGUGCCCGAGAGCUUCGACCGGGACAAAACCAUCGCCCUGAUCAUGAACAGUAGUGGCAGUACCGGAUUGCCCAAGGGCGUAGCCCUACCGCACCGCACCGCUUGUGUCCGAUUCAGUCAUGCCCGCGACCCCAUCUUCGGCAACCAGAUCAUCCCCGACACCGCUAUCCUCAGCGUGGUGCCAUUUCACCACGGCUUCGGCAUGUUCACCACGCUGGGCUACUUGAUCUGCGGCUUUCGGGUCGUGCUCAUGUACCGCUUCGAGGAGGAGCUAUUCUUGCGCAGCUUGCAAGACUAUAAGAUUCAAUCUGCCCUGCUGGUGCCCACACUAUUUAGCUUCUUCGCUAAGAGCACUCUCAUCGACAAGUACGACCUAAGCAACUUGCACGAGAUCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCUCAGCAAGGAGGUAGGUGAGGCCGUGGCCAAACGCUUCCACCUACCAGGCAUCCGCCAGGGCUACGGCCUGACAGAAACAACCAGCGCCAUUCUGAUCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCUGGCGCAGUAGGCAAGGUGGUGCCCUUCUUCGAGGCUAAGGUGGUGGACUUGGACACCGGUAAGACACUGGGUGUGAACCAGCGCGGCGAGCUGUGCGUCCGUGGCCCCAUGAUCAUGAGCGGCUACGUUAACAACCCCGAGGCUACAAACGCUCUCAUCGACAAGGACGGCUGGCUGCACAGCGGCGACAUCGCCUACUGGGACGAGGACGAGCACUUCUUCAUCGUGGACCGGCUGAAGAGCCUGAUCAAAUACAAGGGCUACCAGGUAGCCCCAGCCGAACUGGAGAGCAUCCUGCUGCAACACCCCAACAUCUUCGACGCCGGGGUCGCCGGCCUGCCCGACGACGAUGCCGGCGAGCUGCCCGCCGCAGUCGUCGUGCUGGAACACGGUAAAACCAUGACCGAGAAGGAGAUCGUGGACUAUGUGGCCAGCCAGGUUACAACCGCCAAGAAGCUGCGCGGUGGUGUUGUGUUCGUGGACGAGGUGCCUAAAGGACUGACCGGCAAGUUGGACGCCCGCAAGAUCCGCGAGAUUCUCAUUAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGAUCGCCGUGUAY
X=GGGAUCCUACC(配列番号2)
Y=UUUGAAUU(配列番号3) 。
【0199】
次に、0.25mgのFFL mRNAを、加熱ブロックを使用して、70℃で5分間加熱することにより変性した。3mL容量の水性緩衝溶液(10mMクエン酸塩/150mM NaCl、pH4.5)を調製し、RNaseを含まない三角管中で、管を加熱した水浴中に設置することにより加熱し、続いて、FFL mRNAを加熱した水性緩衝溶液中に添加し、0.25mg/3mLの最終FFL mRNA濃度を達成した。
【0200】
全てのmRNA濃度は、Ribogreenアッセイ(Invitrogen)を介して決定された。mRNAの被包は、0.1%のトリトン−X100の存在下、および不在下で、Ribogreenアッセイを行うことにより計算された。粒径(動的光散乱(DLS))およびゼータ電位は、それぞれ、1×PBSおよび1mM KCl溶液において、Malvern Zetasizer機器を使用して決定された。
【0201】
脂質ナノ粒子を調製するために、50mg/mLのHGT4002、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2000のエタノール性溶液のアリコートを、下の表3に示されるように混合し、溶解を確実にするために加熱し、エタノールで希釈した。得られた脂質溶液は、N/P比4の0.25mg mRNAに適している。
【0202】
【表3】
【0203】
0.5mLのエタノール性脂質溶液を、加熱した(70℃)水性mRNA/緩衝溶液に素早く注入し、振盪し、得られた懸濁液を70℃の水浴に直ぐに戻した。得られたナノ粒子懸濁液を濃縮し、ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に再懸濁し、MUSTANG Q膜(Pall Life Sciences)を通し、濾過し、1×PBS(pH7.4)で透析し、さらに濃縮した。得られた脂質ナノ粒子の平均ゼータ電位は、25.7mVであった。
【0204】
還元剤トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む0.1M原液は、1mLの水に28.7mgのTCEPを溶解することにより調製された。次に、脂質ナノ粒子は、TCEPを含む水性溶液に曝露され、脂質ナノ粒子のゼータ電位が評価された。脂質ナノ粒子を19.5μL(5X)のTCEP溶液に5分間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が26.1mVに増加した。脂質ナノ粒子を19.5μL(5X)のTCEP溶液に2時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が14.5mVに還元された。脂質ナノ粒子を19.5μL(5X)のTCEP溶液に4時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が5.65mVに還元された。ゼータ電位において観察された変化の一因であったTCEP溶液の濃度および曝露期間は、比較的短い時間期間で観察された可能性がある。
【0205】
前述は、還元剤に曝露されたとき、HGT4002に基づく脂質ナノ粒子の電荷(すなわち、ゼータ電位)が調節され、ある場合では中和され得るという結論を支持する。
【0206】
実施例4
本実施例は、HGT4002に基づく脂質ナノ粒子がmRNAポリヌクレオチド構築物で充填された後に還元的に中和され得ることを図示する。HGT4002に基づく脂質ナノ粒子は、以下に記載される標準的なエタノール注入法を介して形成された。(Ponsa,et al.,Int.J.Pharm.(1993)95:51−56.)。 脂質のエタノール性原液は、50mg/mLの濃度で事前に調製され、−20℃で保管された。
【0207】
コドン最適化されたホタルルシフェラーゼ(CO−FFL)mRNAは、遺伝子をコードするプラスミドDNAテンプレートから生体外で転写され、これに続いて、5’キャップ構造(Cap1)(Fechter,P.et al.,J.Gen.Virology(2005)86:1239−1249)およびゲル電気泳動により決定された長さが約200ヌクレオチドの3’ポリ(A)テールを付加することにより合成された。それぞれのFFL mRNA生成物に存在する5’および3’非翻訳領域は、以下に示される配列番号1において、それぞれ、XおよびYとして表される。
コドン最適化ホタルルシフェラーゼ(FFL)mRNA:配列番号1
XAUGGAAGAUGCCAAAAACAUUAAGAAGGGCCCAGCGCCAUUCUACCCACUCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCUGCACAAAGCCAUGAAGCGCUACGCCCUGGUGCCCGGCACCAUCGCCUUUACCGACGCACAUAUCGAGGUGGACAUUACCUACGCCGAGUACUUCGAGAUGAGCGUUCGGCUGGCAGAAGCUAUGAAGCGCUAUGGGCUGAAUACAAACCAUCGGAUCGUGGUGUGCAGCGAGAAUAGCUUGCAGUUCUUCAUGCCCGUGUUGGGUGCCCUGUUCAUCGGUGUGGCUGUGGCCCCAGCUAACGACAUCUACAACGAGCGCGAGCUGCUGAACAGCAUGGGCAUCAGCCAGCCCACCGUCGUAUUCGUGAGCAAGAAAGGGCUGCAAAAGAUCCUCAACGUGCAAAAGAAGCUACCGAUCAUACAAAAGAUCAUCAUCAUGGAUAGCAAGACCGACUACCAGGGCUUCCAAAGCAUGUACACCUUCGUGACUUCCCAUUUGCCACCCGGCUUCAACGAGUACGACUUCGUGCCCGAGAGCUUCGACCGGGACAAAACCAUCGCCCUGAUCAUGAACAGUAGUGGCAGUACCGGAUUGCCCAAGGGCGUAGCCCUACCGCACCGCACCGCUUGUGUCCGAUUCAGUCAUGCCCGCGACCCCAUCUUCGGCAACCAGAUCAUCCCCGACACCGCUAUCCUCAGCGUGGUGCCAUUUCACCACGGCUUCGGCAUGUUCACCACGCUGGGCUACUUGAUCUGCGGCUUUCGGGUCGUGCUCAUGUACCGCUUCGAGGAGGAGCUAUUCUUGCGCAGCUUGCAAGACUAUAAGAUUCAAUCUGCCCUGCUGGUGCCCACACUAUUUAGCUUCUUCGCUAAGAGCACUCUCAUCGACAAGUACGACCUAAGCAACUUGCACGAGAUCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCUCAGCAAGGAGGUAGGUGAGGCCGUGGCCAAACGCUUCCACCUACCAGGCAUCCGCCAGGGCUACGGCCUGACAGAAACAACCAGCGCCAUUCUGAUCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCUGGCGCAGUAGGCAAGGUGGUGCCCUUCUUCGAGGCUAAGGUGGUGGACUUGGACACCGGUAAGACACUGGGUGUGAACCAGCGCGGCGAGCUGUGCGUCCGUGGCCCCAUGAUCAUGAGCGGCUACGUUAACAACCCCGAGGCUACAAACGCUCUCAUCGACAAGGACGGCUGGCUGCACAGCGGCGACAUCGCCUACUGGGACGAGGACGAGCACUUCUUCAUCGUGGACCGGCUGAAGAGCCUGAUCAAAUACAAGGGCUACCAGGUAGCCCCAGCCGAACUGGAGAGCAUCCUGCUGCAACACCCCAACAUCUUCGACGCCGGGGUCGCCGGCCUGCCCGACGACGAUGCCGGCGAGCUGCCCGCCGCAGUCGUCGUGCUGGAACACGGUAAAACCAUGACCGAGAAGGAGAUCGUGGACUAUGUGGCCAGCCAGGUUACAACCGCCAAGAAGCUGCGCGGUGGUGUUGUGUUCGUGGACGAGGUGCCUAAAGGACUGACCGGCAAGUUGGACGCCCGCAAGAUCCGCGAGAUUCUCAUUAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGAUCGCCGUGUAY
X=GGGAUCCUACC(配列番号2)
Y=UUUGAAUU(配列番号3) 。
【0208】
次に、0.25mgのFFL mRNAを、加熱ブロックを使用して、70℃で5分間加熱することにより変性した。11mL容量の水性緩衝溶液(10mMクエン酸塩/150mM NaCl、pH4.5)を調製し、50mLのRNaseを含まない三角管中で、管を加熱した水浴中に設置することにより加熱し、続いて、変性したCO−FFL mRNAを加熱した水性緩衝溶液中に添加し、1mg/11mLの最終FFL mRNA濃度を達成した。
【0209】
全てのmRNA濃度は、Ribogreenアッセイ(Invitrogen)を介して決定された。mRNAの被包は、0.1%のトリトン−X100の存在および不在下でRibogreenアッセイを実施することにより計算された。粒径(動的光散乱(DLS))およびゼータ電位は、Malvern Zetasizer機器を用いて、それぞれ、1×PBSおよび1mM KClの溶液中で決定された。
【0210】
脂質ナノ粒子を調製するために、50mg/mLのHGT4002、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2000のエタノール性溶液のアリコートを、下の表4に示されるように混合し、溶解を確実にするために加熱し、エタノールで希釈した。得られた脂質溶液は、N/P比4の0.25mg mRNAに適している。
【0211】
【表4】
【0212】
3.0mLのエタノール性脂質溶液を、加熱した(70℃)水性mRNA/緩衝溶液に素早く注入し、振盪し、得られた懸濁液を70℃の水浴に直ぐに戻した。得られたナノ粒子懸濁液を濃縮し、ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に再懸濁し、MUSTANG Q膜(Pall Life Sciences)を通し、濾過し、1×PBS(pH7.4)で透析し、さらに濃縮した。得られた脂質ナノ粒子のZ
平均は、58.40nm(Dv
(50)=44.7nm、Dv
(90)=65.1nm)であり、平均ゼータ電位は+78mVであった。mRNAの被包は、0.1%のトリトン−X100の存在下、および不在下でRibogreenアッセイを行うことにより計算され、88.56%であると決定された。
【0213】
還元剤トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む0.1M原液は、1mLの水に28.7mgのTCEPを溶解することにより調製された。次に、脂質ナノ粒子は、TCEPを含む水性溶液に曝露され、脂質ナノ粒子のゼータ電位が評価された。脂質ナノ粒子を39μL(10X)のTCEP溶液に3時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が−17.1mVに還元された。脂質ナノ粒子を19.5μL(5X)のTCEP溶液に1時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が−4.15mVに還元された。前述は、還元剤に曝露されたとき、HGT4002に基づく脂質ナノ粒子の電荷(すなわち、ゼータ電位)が調節され、ある場合では中和され得るという結論を支持する。
【0214】
実施例5
本実施例は、HGT4002に基づく脂質ナノ粒子がmRNAポリヌクレオチド構築物で充填された後に還元的に中和され得ることを図示する。HGT4002に基づく脂質ナノ粒子は、以下に記載される標準的なエタノール注入法を介して形成された。(Ponsa,et al.,Int.J.Pharm.(1993)95:51−56.)。脂質のエタノール性原液は、50mg/mLの濃度で事前に調製され、−20℃で保管された。
【0215】
コドン最適化されたホタルルシフェラーゼ(CO−FFL)mRNAは、遺伝子をコードするプラスミドDNAテンプレートから生体外転写され、これに続いて、5’キャップ構造(Cap1)(Fechter,P.et al.,J.Gen.Virology(2005)86:1239−1249)およびゲル電気泳動により決定された長さが約200ヌクレオチドの3’ポリ(A)テールを付加することにより合成された。各mRNA生成物に存在する5’および3’非翻訳領域は、下に列挙されるように、配列番号1においてそれぞれ、XおよびYとして表される。
【0216】
コドン最適化ホタルルシフェラーゼ(FFL)mRNA:配列番号1
XAUGGAAGAUGCCAAAAACAUUAAGAAGGGCCCAGCGCCAUUCUACCCACUCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCUGCACAAAGCCAUGAAGCGCUACGCCCUGGUGCCCGGCACCAUCGCCUUUACCGACGCACAUAUCGAGGUGGACAUUACCUACGCCGAGUACUUCGAGAUGAGCGUUCGGCUGGCAGAAGCUAUGAAGCGCUAUGGGCUGAAUACAAACCAUCGGAUCGUGGUGUGCAGCGAGAAUAGCUUGCAGUUCUUCAUGCCCGUGUUGGGUGCCCUGUUCAUCGGUGUGGCUGUGGCCCCAGCUAACGACAUCUACAACGAGCGCGAGCUGCUGAACAGCAUGGGCAUCAGCCAGCCCACCGUCGUAUUCGUGAGCAAGAAAGGGCUGCAAAAGAUCCUCAACGUGCAAAAGAAGCUACCGAUCAUACAAAAGAUCAUCAUCAUGGAUAGCAAGACCGACUACCAGGGCUUCCAAAGCAUGUACACCUUCGUGACUUCCCAUUUGCCACCCGGCUUCAACGAGUACGACUUCGUGCCCGAGAGCUUCGACCGGGACAAAACCAUCGCCCUGAUCAUGAACAGUAGUGGCAGUACCGGAUUGCCCAAGGGCGUAGCCCUACCGCACCGCACCGCUUGUGUCCGAUUCAGUCAUGCCCGCGACCCCAUCUUCGGCAACCAGAUCAUCCCCGACACCGCUAUCCUCAGCGUGGUGCCAUUUCACCACGGCUUCGGCAUGUUCACCACGCUGGGCUACUUGAUCUGCGGCUUUCGGGUCGUGCUCAUGUACCGCUUCGAGGAGGAGCUAUUCUUGCGCAGCUUGCAAGACUAUAAGAUUCAAUCUGCCCUGCUGGUGCCCACACUAUUUAGCUUCUUCGCUAAGAGCACUCUCAUCGACAAGUACGACCUAAGCAACUUGCACGAGAUCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCUCAGCAAGGAGGUAGGUGAGGCCGUGGCCAAACGCUUCCACCUACCAGGCAUCCGCCAGGGCUACGGCCUGACAGAAACAACCAGCGCCAUUCUGAUCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCUGGCGCAGUAGGCAAGGUGGUGCCCUUCUUCGAGGCUAAGGUGGUGGACUUGGACACCGGUAAGACACUGGGUGUGAACCAGCGCGGCGAGCUGUGCGUCCGUGGCCCCAUGAUCAUGAGCGGCUACGUUAACAACCCCGAGGCUACAAACGCUCUCAUCGACAAGGACGGCUGGCUGCACAGCGGCGACAUCGCCUACUGGGACGAGGACGAGCACUUCUUCAUCGUGGACCGGCUGAAGAGCCUGAUCAAAUACAAGGGCUACCAGGUAGCCCCAGCCGAACUGGAGAGCAUCCUGCUGCAACACCCCAACAUCUUCGACGCCGGGGUCGCCGGCCUGCCCGACGACGAUGCCGGCGAGCUGCCCGCCGCAGUCGUCGUGCUGGAACACGGUAAAACCAUGACCGAGAAGGAGAUCGUGGACUAUGUGGCCAGCCAGGUUACAACCGCCAAGAAGCUGCGCGGUGGUGUUGUGUUCGUGGACGAGGUGCCUAAAGGACUGACCGGCAAGUUGGACGCCCGCAAGAUCCGCGAGAUUCUCAUUAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGAUCGCCGUGUAY
X=GGGAUCCUACC(配列番号2)
Y=UUUGAAUU(配列番号3) 。
【0217】
次に、0.25mgのFFL mRNAを、加熱ブロックを使用して、70℃で5分間加熱することにより変性した。11mL容量の水性緩衝溶液(10mMクエン酸塩/150mM NaCl、pH4.5)を調製し、50mLのRNaseを含まない三角管中で、管を加熱した水浴中に設置することにより加熱し、続いて、変性したCO−FFL mRNAを加熱した水性緩衝溶液中に添加し、1mg/11mLの最終FFL mRNA濃度を達成した。
【0218】
全てのmRNA濃度は、Ribogreenアッセイ(Invitrogen)を介して決定された。mRNAの被包は、0.1%のトリトン−X100の存在および不在下でRibogreenアッセイを実施することにより計算された。粒径(動的光散乱(DLS))およびゼータ電位は、Malvern Zetasizer機器を用いて、それぞれ、1×PBSおよび1mM KClの溶液中で決定された。
【0219】
脂質ナノ粒子を調製するために、50mg/mLのHGT4002、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2000のエタノール性溶液のアリコートを、下の表5に示されるように混合し、溶解を確実にするために加熱し、エタノールで希釈した。得られた脂質溶液は、N/P比4の0.25mg mRNAに適している。
【0220】
【表5】
【0221】
3.0mLのエタノール性脂質溶液を、加熱した(70℃)水性mRNA/緩衝溶液に素早く注入し、振盪し、得られた懸濁液を70℃の水浴に直ぐに戻した。得られたナノ粒子懸濁液を濃縮し、ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に再懸濁し、MUSTANG Q膜(Pall Life Sciences)を通し、濾過し、1×PBS(pH7.4)で透析し、さらに濃縮した。得られた脂質ナノ粒子のZ
平均は、66.43nm(Dv
(50)=38.7nm、Dv
(90)=67.9nm)であり、平均 ゼータ電位は約25.0mVであった。mRNAの被包は、0.1%のトリトン−X100の存在下、および不在下でRibogreenアッセイを行うことにより計算され、70.79%であると決定された。
【0222】
還元剤トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む0.1M原液は、1mLの水に28.7mgのTCEPを溶解することにより調製された。次に、脂質ナノ粒子は、TCEPを含む水性溶液に曝露され、脂質ナノ粒子のゼータ電位が評価された。脂質ナノ粒子を19.5μL(5X)のTCEP溶液に1時間曝露することにより、脂質ナノ粒子のゼータ電位が14.9mVに還元された。前述は、還元剤に曝露されたとき、HGT4002に基づく脂質ナノ粒子の電荷(すなわち、ゼータ電位)が調節され、ある場合では中和され得るという結論を支持する。