(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211056
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦から選択される材料に基づくココア代替物を提供する方法
(51)【国際特許分類】
A23G 1/00 20060101AFI20171002BHJP
A23G 1/30 20060101ALI20171002BHJP
A23L 27/28 20160101ALI20171002BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20171002BHJP
【FI】
A23G1/00
A23L27/28
A23L7/10 Z
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-503879(P2015-503879)
(86)(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公表番号】特表2015-515271(P2015-515271A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】EP2013057109
(87)【国際公開番号】WO2013150101
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2016年4月4日
(31)【優先権主張番号】1206035.6
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ファン オメーレン,エスター
(72)【発明者】
【氏名】コルダ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】バッカー,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ダハン,カロリーネ
【審査官】
西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−020172(JP,A)
【文献】
特開2009−072082(JP,A)
【文献】
特開昭55−054857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−7/02
A23L 7/00−7/25
A23L 27/28
A21D 2/00−13/80
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/AGRICOLA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦から選択される材料に基づいたココア代替物を提供する方法であって、
(a) 蒸発容器において、少なくとも65℃の初期温度の水へ焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦を添加すること;
(b) 少なくとも30分間、初期温度を維持すること;
(c) 冷水を添加すること;および
(d) ココア代替物を得るために、溶液を速やかに噴霧乾燥すること;
を含み、工程(a)における焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦が、焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦ならびに水の合計重量の12〜22%を含み、工程(c)における水が、工程(a)における水の25〜40%を含む、前記方法。
【請求項2】
工程(a)における焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦の量が、焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦ならびに水の合計重量の14〜18重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)における水の量が、工程(a)の水の25〜35重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
蒸発容器が、開放容器である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
蒸発容器が、真空密閉容器である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(d)において、少なくとも1つのさらなるフレーバー成分が添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法により製造されたココア代替物。
【請求項8】
焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦から選択される材料に基づいたココア代替物を提供する方法であって、
(a) 蒸発容器において、1300gの少なくとも65℃の初期温度の水へ250gの焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦を添加すること;
(b) 少なくとも30分間、初期温度を維持すること;
(c) 冷水を添加すること;および
(d) ココア代替物を得るために、溶液を速やかに噴霧乾燥すること;
を含み、工程(c)における水が、工程(a)における水の25〜40%を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ココア代替物に、およびかかる代替物の製造方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
ココアは、多くの食品において望ましいフレーバーである。しかしながら、ココア豆はその値段がかなり変化する商品であり、保存の時間の観点から、比較的高価になり得、この価格は消費者に転嫁されなければならない。したがって、少なくとも部分的に本物のココアを置き換えることのできるフレーバー材料が見出されることが望ましい。かかる材料は、すでに周知である。少なくとも部分的にココアを置き換えることのできる好適な材料の例は、焙煎した小麦、麦芽にしたおよび/または焙煎した大麦、イナゴマメ粉末を含む。これらは、広範囲にわたってかなり成功して商業的に用いられてきているが、これらはいくらかの欠点を有する。その1つは、ふさわしい暗色を達成することが困難であることである。より大きな問題は、これらの材料の多くに関連した後味である。例えば、より人気のあるココア代替物である、黒大麦麦芽は、(「スモーキー」および「灰っぽい」とさまざまに表現される)特徴的な強いオフテイストを示し、加えて、良好なココアフレーバーにとって望ましい苦味および渋みに欠いている。
【0003】
これらのココア代替物をこれらの望まれない特徴をかなり減少することのできる方法で処置することが可能であることが今見出された。したがって、焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦から選択される材料に基づいたココア代替物を提供する方法であって、
(a) 蒸発容器において、少なくとも65℃の初期温度の水へ焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦を添加すること;
(b) 少なくとも30分間、初期温度を維持すること;
(c) 冷水を添加すること;および
(d) ココア代替物を得るために、溶液を速やかに噴霧乾燥すること;
を含み、工程(a)における
焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦が、焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦ならびに水の合計重量の12〜22%を含み、工程(c)における水が、工程(a)における水の25〜40%を含む、前記方法を提供する。
【0004】
上述の方法により製造可能な、オフテイストが低減されたココア代替物も提供される。
焙煎した小麦、麦芽にしたおよび/または焙煎した大麦およびイナゴマメ粉末に基づくココア代替物(以下、「原材料」という)は、周知であり、容易に入手可能な商業品であり、かかる材料を当該プロセスに用いることができる。
最初の水中での混合を蒸発容器において行うこと、すなわち容器が蒸発を可能とすることが重要である。これは典型的には開放容器または真空密閉容器である。両方とも当該技術分野において周知である。用いられる水は普通の水道水である。用いられる
焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦の量は、焙煎した小麦、焙煎したおよび/または麦芽にした大麦ならびに水の合計重量の12〜22%である。特定の態様において、14〜18%、より具体的に15〜17%である。
【0005】
当該プロセスにおいて、水は最初少なくとも65℃まで加熱される。温度は95℃まで、特定の態様においては、90℃の領域とすることができる。原材料の添加の間および後、この温度を維持する。原材料を添加するとき、初期の加熱温度よりも低くなることが自然であるが、温度を少なくとも初期温度まで可能な限り早く戻す限りは、これは重要ではない。この温度は、20〜70分間、特に30分間維持される。次にさらに水を加えるが、この水の量は、工程(a)における水の量の25〜40%、特に25〜35%、より具体的に28〜32%である。次に、従来の方法および機器を用いて、この完全な混合物を噴霧乾燥する。
【0006】
この最後に言及した水の添加(工程(d))を行うとき、ココアフレーバーに加えて、所望のフレーバーを与えるために、この時点で、さらなるフレーバー成分を加えることも可能である。所望のフレーバーは、チョコレート、ココア、バニラ、ナッツおよび旨味を含む。熟練したフレーバリストは、かかる成分の性質および割合を調整して、追加のフレーバーの性格および程度を作り出すことができる。かかるフレーバーは周知であり、当該技術分野において広く用いられており、典型的な特定の(非限定)例は、ピラジン、フェニルエチルエステル、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルアルデヒド、ペンタナール、イソペンタナールおよびバニリンを含む。
【0007】
得られるココア代替物は、心地よい暗色を有し、本物のココアを70重量%まで、しかし特に5〜50重量%、より具体的に15〜50重量%の割合で置き換えるために用いることができる。これらの範囲外で実施することは可能であり、ある状況下ではそれがより適切であるが、一般的には、かかる割合の利益はかなり減少する。
結果として得られる改変されたココアは、そのままの濃度のココア粉末と同じ味がする。これは望ましい渋みおよび苦味を有し、市販のココア代替物の望ましくないオフテイストが実質的にほとんどない。これはココアを通常用いるあらゆる用途、例えば、飲料、焼成品、乳製品、および菓子において用いることができる。
本開示は、以下の非限定例に言及してさらに説明する。
【0008】
例1
ココア代替物の調製
− 1300gの水道水を開放したジャケット付容器において90℃まで加熱する。
− 250gの焙煎し、麦芽にした大麦を撹拌しながら添加する。
− 撹拌を30分間継続し、温度は90℃に維持する。
− 30分経過後、フレーバーおよび味成分を含む追加の水を加え、焙煎し、麦芽にした大麦ならびにフレーバーおよび味成分の水中の分散物を噴霧乾燥し、焦げ茶色の粉末を得る。乾燥空気の温度は220℃である。噴霧乾燥機を出る空気の温度は85℃である。
【0009】
例2
チョコレートミルクドリンクを以下のように作った:
レシピ − 2%ブラウンココアパウダーと対比
【表1】
【0010】
ココアパウダーを、同じ割合のココアパウダーと例1の生成物のブレンド(例1の生成物が混合物の30%の範囲で存在する)で置き換えたこと以外は、同じチョコレートミルクドリンクを作った。
10名の専門試験者の試験パネル、さらに、60名のパネリストによる官能評価試験によってドリンクが試飲された。試験者は色に違いは見出さず、全員が、2つのドリンクの味は、実質的に同一であると判断した。
【0011】
例3
以下のレシピにしたがって、チョコレートクッキーを焼いた:
レシピ − 5%ブラックココアパウダーと比較
【表2】
【0012】
ココアパウダーを、同じ割合のココアパウダーと例1の生成物とのブレンド(例1の生成物が混合物の30%の範囲で存在する)で置き換えたこと以外は、同じクッキーを作った。
クッキーが10名の専門試験者の試験パネルによって試食された。試験者は色に違いは見出さず、全員が2つのバッチのクッキーの味が実質的に同一であると判断した。
【0013】
例4
以下のレシピにしたがって、朝食シリアルを作った。
シリアルのレシピ − 5%ブラウンココアパウダーと比較
【表3】
【0014】
ココアパウダーを、同じ割合のココアパウダーと例1の生成物とのブレンド(例1の生成物が混合物の50%の範囲で存在する)で置き換えたこと以外は、同じシリアルを作った。
シリアルが10名の専門試験者の試験パネルによって試食された。試験者は色の違いを見出さず、2つのバッチのシリアルの味は実質的に同一であると判断した。