(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エチレンコポリマーを生成するためのオレフィン重合プロセスであって、前記プロセスは、単一気相反応器中でエチレン及び3〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルファオレフィンを、重合触媒システムと接触させるステップを含み;前記エチレンコポリマーは、0.916g/ccから0.930g/ccの密度、0.1g/10minから1.0g/10minのメルトインデックス(I2)、32から50のメルトフロー比(I21/I2)、3.6から6.5の分子量分布(Mw/Mn)、GPC−FTIRで測定された逆転コモノマー分布プロファイル、多峰性TREFプロファイル、及びTREFで測定された35wt%から70wt%の組成分布幅指数CDBI50を有し;ここで、前記重合触媒システムは、単一遷移金属触媒、支持体、触媒活性剤、及び触媒調節剤を含み;ここで、前記単一遷移金属触媒は、第4族ホスフィンイミン触媒であり、
この第4族ホスフィンイミン触媒が、式:
(1−R2−インデニル)Ti(N=P(t−Bu)3)X2
(式中、R2は、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ベンジル基であり、ここで、アルキル、アリール又はベンジル基の置換基は、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリール、アリールアルキル及びハロゲン化物置換基からなる群から選択され;ここで、Xは、活性化可能な配位子である)
を有する、上記オレフィン重合プロセス。
多峰性TREFプロファイルが、溶離温度T(低)、T(中)及びT(高)で生じる三つの強度ピークを含み;ここで、T(低)は、62℃から82℃であり、T(中)は、76℃から89℃であるが、T(低)より高く、T(高)は、90℃から100℃である、請求項1に記載のプロセス。
1milの吹込フィルムにした場合に、500g/milより大きい落錘衝撃、150MPaより大きい1%MD割線弾性率、175MPaより大きい1%TD割線弾性率、及び0.45以下のTD引裂強さに対するMD引裂強さの比を有する、請求項13に記載のエチレンコポリマー。
エチレンコポリマーを生成するためのオレフィン重合プロセスであって、前記プロセスは、単一気相反応器中でエチレン及び3〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルファオレフィンを、重合触媒システムと接触させて、0.916g/ccから0.930g/ccの密度、0.2g/10minから0.85g/10minのメルトインデックス(I2)、36から50のメルトフロー比(I21/I2)、4.0から6.0の分子量分布(Mw/Mn)、2.0から4.0のZ平均分子量分布(Mz/Mw)、GPC−FTIRで測定された逆転コモノマー分布プロファイル、溶離温度T(低)、T(中)及びT(高)で生じる三つの強度ピークを含む多峰性TREFプロファイル(ここで、T(低)は、62℃から82℃であり、T(中)、は76℃から89℃であるが、T(低)より高く、T(高)は、90℃から100℃である)、及びTREFで測定された35wt%から70wt%の組成分布幅指数CDBI50を有するエチレンコポリマーを得るステップを含み;ここで、前記重合触媒システムは、単一遷移金属触媒、支持体、及び触媒活性剤を含み;ここで、前記単一遷移金属触媒は、第4族有機遷移金属触媒であり、
この第4族有機遷移金属触媒が、式:
(1−R2−インデニル)Ti(N=P(t−Bu)3)X2
(式中、R2は、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ベンジル基であり、ここで、アルキル、アリール又はベンジル基の置換基は、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリール、アリールアルキル及びハロゲン化物置換基からなる群から選択され;ここで、Xは、活性化可能な配位子である)
を有する、上記オレフィン重合プロセス。
【背景技術】
【0002】
物理的性質及び加工性の改善されたバランスを有するポリエチレン製品の探求は、改善された生産能力及び強化されたフィルム引裂強さ又は落錘衝撃性などの日々進歩する最終用途特性を有する製品の開発をもたらした。特に有用であるのは、ポリマー特性の強化のためのポリマーブレンド方策を回避することができるポリマー構造の開発である。というのは、これらの方策は費用を増加するためである。
【0003】
米国特許出願公開第2011/0003099号は、低いメルトフロー比(MFR)の直鎖ポリエチレン及び高いメルトフロー比(MFR)の直鎖ポリエチレンを論じており、これらは、それぞれ30未満のI
21/I
2及び30より大きいI
21/I
2で区別される。
【0004】
狭い分子量分布及び低いメルトフロー比の両方を有する樹脂は、よく知られており、メタロセン触媒及びホスフィンイミン触媒で生成される樹脂を含む。このような樹脂には、例えばExxonMobilのExceed 1018A(商標)並びに米国特許第5,420,220号及びカナダ特許出願第2,734,167号に記載されたものが含まれる。これらの樹脂は、物理的性質及び光学的性質の良好なバランスを有するフィルムにすることができるが、例えば、吹込フィルムラインにおける比較的低い生産能力によって示されるように、加工助剤の非存在下で加工することは困難であり得る。
【0005】
より高いメルトフロー比を有する樹脂は、それらが、一般的に加工がより容易であるのでフィルム生産者にとって、より魅力的である。米国特許第6,255,426号及び6,476,171号及び米国特許出願公開第2011/0003099号はそれぞれ、30を越えるメルトフロー比を有し、適度に広い分子量分布を有する樹脂の生産及び使用を記載している。これらの樹脂は長鎖分岐を含有すると考えられる。米国特許第6,255,426号及び6,476,171号に開示されたポリマーは、架橋ビス−インデニルジルコノセン触媒で作製され、75%より大きい組成分布幅指数(CDBI)を有する。これらの樹脂は、特許文献(例えば、米国特許出願公開第2011/0003099号に開示された実施例のポリマーを参照されたい)においてEnable(商標)ポリマー(ExxonMobil)と呼ばれており、これらの樹脂は加工することが比較的容易であるが、それらは、吹込フィルムにした場合に強度及び剛性の良好なバランスも有する。例えば、フィルムは、それらのより良い剪断減粘性挙動にもかかわらずExceed 1018A材料に匹敵する物理的性質を有した。米国特許出願公開第2011/0003099号に開示されたポリマーは、低いメルトインデックス(I
2=0.3)、比較的高いメルトフロー比(I
21/I
2は46〜58である)及び適度に広い分子量分布(例えばM
w/M
nは3.4である)を有する新しい「Enable」グレード樹脂を含む。これらのポリマーは、4℃未満のT(75)−T(25)のTREFプロファイルにおいて単一ピークも有する。
【0006】
コモノマー分布プロファイルの操作は、物理的性質及びポリマー加工性の間のバランスを改善するための努力において新たなエチレンコポリマー構造ももたらした。
【0007】
メタロセン触媒及び他のいわゆる「シングルサイト触媒」が、アルファオレフィンとの触媒エチレン共重合に使用された場合に従来のチーグラー−ナッタ触媒に比べてより均一にコモノマーを一般的に組み込むことは、一般的に事実である。この事実は、対応するエチレンコポリマーについての組成分布幅指数(CDBI)を測定することによってしばしば実証される。組成分布幅指数(CDBI
50)の定義は、PCT公開公報WO93/03093及び米国特許第5,206,075号に見いだすことができる。CDBI
50は、それらの溶解性(及び従ってそれらのコモノマー含有量)に基づいてポリマー画分を単離する技術を使用して好都合に求められる。例えば、Wildら、J.Poly.Sci.,Poly.Phys.Ed.20巻、441ページ、1982年に記載された昇温溶離分別(TREF)を使用することができる。重量分率対組成分布曲線から、CDBI
50は、平均値の両側の平均コモノマー含有量の50%以内のコモノマー含有量を有するコポリマーサンプルの重量百分率を確立することによって求められる。一般的に、チーグラー−ナッタ触媒は、不均一に分岐したコポリマーと一致した、類似の密度におけるシングルサイト触媒のものと比べてより低いCDBI
50を有するエチレンコポリマーを生成する。一般的に、複数の顕著なピークが、TREF(昇温溶離分別)分析においてこのようなポリマーで観測される。このようなピークは、高度に分岐した画分、中程度に分岐した画分及び短鎖分岐を少ししか又は全く有さないより高い密度の画分を一般的に含む不均一に分岐した材料の存在と一致する。対照的に、メタロセン及び他のシングルサイト触媒は、ほとんどの場合、類似の密度においてチーグラー−ナッタ触媒のものと比べてより高いCDBI
50を有し、均一に分岐したコポリマーと一致した、TREF分析における単一の顕著なピークをしばしば含有するエチレンコポリマーを生成する。
【0008】
前述のものにもかかわらず、メタロセン及びシングルサイト触媒樹脂に特有である製品特性、例えば吹込フィルムの高い落錘衝撃強度を維持しながら、広がったコモノマー分布(即ち、よりチーグラー−ナッタに似た)を有するポリエチレンコポリマー組成物を入手するための方法は開発されてきた。このような樹脂は、例えば、単一の反応器においてメタロセン触媒の混合物を使用すること、異なる重合条件下の複数の重合反応器を使用することによって、又はメタロセンで生成されたエチレンコポリマーをブレンドするステップによって作製することができる。
【0009】
米国特許第5,382,630号、5,382,631号及びWO93/03093は、広い又は狭い分子量分布、及び広い又は狭いコモノマー分布を有するポリエチレンコポリマーブレンド組成物を記載している。例えば、あるブレンドは、二峰性組成分布を同時に有しながら狭い分子量分布を有し得る。或いは、あるブレンドは、単峰性組成分布を同時に有しながら広い分子量分布を有し得る。これらのブレンドは、類似の又は異なる分子量及び類似の又は異なるコモノマー含有量を有する2種のポリエチレン樹脂を溶融ブレンドすることによって作製されており、ここで、各樹脂は、気相反応器においてメタロセン触媒を使用して形成されている。
【0010】
米国特許第7,018,710号は、高いコモノマー含有量を有する高い分子量成分及び低いコモノマー含有量を有する低い分子量成分を含むブレンドを開示している。これらのエチレンコポリマーブレンドは、各反応器が異なる条件下で(例えば、カスケードスラリー相−気相反応器)運転されているカスケード複式反応器プロセスにおけるメタロセン触媒の使用から生じるが、TREFフラクトグラム(fractogram)において二つの明確な最大値を示す。これらのポリマーは、ヒートシール可能なフィルムにおけるシール層として応用された。
【0011】
「不十分なコモノマーインコーポレーター(comonomer incorporator)」及び「良好なコモノマーインコーポレーター」を含有する混合触媒システムが、米国特許第6,828,394号及び7,141,632号に開示されている。不十分なコモノマーインコーポレーター含有触媒は、少なくとも1種の縮合環シクロペンタジエニル配位子、例えば適切な置換(例えば、1位におけるアルキル置換)を有するインデニル配位子を有するメタロセンであり得る。良好なコモノマーインコーポレーター含有触媒は、数々のよく知られているメタロセンから選択され、不十分なコモノマーインコーポレーターと比較して分子の前部に向けて一般的にあまり立体的に阻害されていなかった。これらの混合触媒システムは、より高い密度の成分及びより低い密度の成分の存在と一致した、二つの溶離ピークが互いに十分に分離した二峰性TREF分布を有するポリエチレンコポリマーを生成した。これらの混合触媒は、単一メタロセン成分触媒のいずれか一つで作製されたエチレンコポリマーと比べて広がった分子量分布を有するエチレンコポリマーも生成した。
【0012】
3種の別個のメタロセン触媒を含む混合触媒システムが、米国特許第6,384,158号に開示されている。広がった分子量分布を有するエチレンコポリマーが、1−ヘキセンなどのアルファオレフィンとエチレンを重合するためにこれらの触媒システムを使用した場合に得られた。
【0013】
米国特許出願公開第2011/0212315号は、DSC、TREF又はCRYSTAF技術を使用して測定された、二峰性又は多峰性コモノマー分布プロファイルを有する直鎖エチレンコポリマーを記載している。これらのコポリマーは、単峰性コモノマー分布プロファイルを有するエチレンコポリマーと比較して、吹込フィルムにした場合に高い落錘衝撃抵抗を維持し、減少した剪断減粘性指数によって示されるように加工が比較的容易である。例示されたエチレンコポリマー組成物は、30未満のメルトフロー比を有するが、メタロセン触媒及び最新の遷移金属触媒を含む混合触媒システムを使用することによって単一の気相反応器で作製される。
【0014】
米国特許第7,534,847号は、クロムベースの遷移金属触媒の使用は、50wt%未満のCDBI(米国特許第7,534,847号の表1を参照されたい)を有する二峰性コモノマー分布(CRYSTAFによって示された)を有するエチレンコポリマーを与えることを示している。上記特許は、コポリマーは、CRYSTAF分別によって測定して1から8の分子量分布、相当量のビニル基不飽和、長鎖分岐及び特定量のメチル基を有し得ることを教示している。
【0015】
米国特許第6,932,592号は、嵩高い非架橋ビス−Cpメタロセン触媒で生成される超低密度(即ち、<0.916g/cc)エチレンコポリマーを記載している。好ましいメタロセンは、ビス(1−メチル−3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドである。これらの例は、気相において、この触媒の支持されたバージョンは、昇温溶離分別(TREF)によって測定して二峰性コモノマー分布および60及び70%の間のCDBIを有する、エチレン及び1−ヘキセンからのコポリマーを生成することを示している。
【0016】
米国特許第6,420,507号は、狭い分子量分布(即ち1.5から3.0)及び二峰性TREFプロファイルを有する低密度エチレンコポリマーを記載している。重合は、インデニル配位子を有するいわゆる「束縛構造」触媒を使用して気相で実施される。
【0017】
米国特許第6,248,845号、6,528,597号、7,381,783号及び米国特許出願公開第2008/0108768号は、ハフニウム及び少量のジルコニウムに基づく嵩高い配位子メタロセンは、二峰性TREFプロファイルを有するエチレン/1−ヘキセンコポリマーを提供するために使用することができることを開示している。嵩高いメタロセン触媒を合成するために使用される塩化ハフニウム前駆体化合物は、少量の塩化ジルコニウムで汚染されていること、又は塩化ジルコニウムが意図的に添加される場合があることが教示された。存在する塩化ジルコニウムの量は、0.1mol%から5mol%の範囲である。従って、最終ハフノセン触媒は、少量(即ち、0.1から5mol%)のそれらのジルコノセン類似体を含有する。ジルコニウムベースの触媒は、それらのハフニウム類似体と比較して優れた活性を有し得るので、作製された生成物がジルコノセン種からの相当な寄与を有することは可能である。この場合には、二峰性TREFプロファイルが結果として生ずることは、おそらく驚くに値しない。上記特許は、Exceedタイプ樹脂と比較して、ポリマーが、より低いモーター負荷、より高い押出量及び減少したヘッド圧力で、より容易に押し出されることを示しているキャストフィルム及び吹込フィルムのデータを提供している。上記樹脂は、高い引裂強さの値を有するキャストフィルム及び高い落錘衝撃値を有する吹込フィルムをもたらす。
【0018】
米国特許第6,956,088号、6,936,675号、7,179,876号、及び7,172,816号は、「実質的に単一の」嵩高い配位子ハフニウム触媒の使用は、CRYSTAFによって測定して55%未満、特には45%未満のCDBIを有するエチレンコポリマー組成物を提供することを開示している。塩化ハフニウムに由来するハフノセン触媒は、低量で存在するジルコノセン汚染物を有することが予想されることを想起されたい。米国特許第6,936,675号及び7,179,876号は、CDBIは、ハフノセン触媒を使用する場合に異なる温度条件下で変えることができることをさらに教示している。より低い温度における重合は、より高い温度において得られるポリマーと比較してより広い組成分布幅指数(CDBI)を有するエチレンコポリマーをもたらした。例えば、≦80℃におけるエチレン及び1−ヘキセンの共重合のための気相反応器における触媒のビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド又はビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムジフルオリドの使用は、85℃において得られるコポリマーの40及び50%のCDBI値と比較して、20及び35%の間のCDBIを有するコポリマーをもたらした。開示されたポリマーは、特定のドロー−ダウン比のもとで、500g/milより大きい縦方向の引裂強さの値、500g/milより大きい落錘衝撃抵抗、及び良好な剛性を有するフィルムを提供する。これらのポリマーは良好な加工性も有する。
【0019】
米国特許第5,281,679号は、シクロペンタジエニル環上に第二級又は第三級炭素置換基を有するビス−シクロペンタジエニルメタロセン触媒を記載している。これらの触媒は、気相重合中にポリエチレン材料に広がった分子量を与える。
【0020】
より容易な加工性のエチレンポリマーを与える環状の架橋した嵩高い配位子メタロセン触媒が、米国特許第6,339,134号及び6,388,115号に記載されている。
【0021】
ハフノセン触媒が、気相流動床反応器においてエチレンコポリマーを得るために米国特許第7,875,690号において使用されている。上記コポリマーは、改善された物理的性質及び低い抽出物を付与する、いわゆる「広い垂直組成分布」を有する。広い垂直組成分布は、コモノマーが、主として高分子量鎖に組み込まれているものである。上記コポリマーは少なくとも0.927g/ccの密度を有した。同様に広い垂直組成分布を有するがより低い密度を有するポリエチレンコポリマーが、米国特許第8,084,560号及び米国特許出願公開第2011/0040041A1号に開示されている。再び、ハフノセン触媒が、エチレンコポリマーを与えるために気相反応器で使用される。
【0022】
米国特許第5,525,689号も、オレフィン重合における使用のためのハフニウムベースのメタロセン触媒の使用を開示している。これらのポリマーは、8から50のI
10/I
2の比、0.85から0.92g/ccの密度、最大で4.0までのM
w/M
nを有し、気相で作製された。
【0023】
米国特許第8,114,946号は、3.36から4.29の範囲の分子量分布(M
w/M
n)、逆のコモノマー組み込みを有し、低レベルの長鎖分岐を含有するエチレンコポリマーを開示している。開示されたポリマーのメルトフロー比は、一般的に約30より小さい。不飽和側基を有する架橋したシクロペンタジエニル/フルオレニルメタロセン触媒が、エチレンコポリマーを作製するために使用される。上記特許出願は、フィルム又はフィルム特性に言及していない。
【0024】
米国特許第6,469,103号は、第一及び第二のエチレンコポリマー成分を含むエチレンコポリマー組成物を論じている。個別の成分は、コモノマー配置に関して二峰性又は多峰性構造を示すATREF−DV分析法を使用して明らかにされる。上記組成物は、長鎖分岐の存在と一致した、6.6より大きいI
10/I
2値及び比較的狭い分子量分布(即ち、M
w/M
nは、3.3以下である)を有する。上記ポリマーは、混合触媒を用いる複式溶液反応器システムを使用して作製される。
【0025】
少なくとも二つの重合反応器の使用を含むエチレンポリマー組成物を作製するプロセスが、米国特許第6,319,989号に記載されている。上記エチレンコポリマーは、4.0より大きい分子量分布を有し、結晶化分析分別(CRYSTAF)にかけた場合に二つのピークを示す。
【0026】
米国特許第6,462,161号は、単一反応器において、長鎖分岐及び最高のコモノマー含有率を有する該組成物の部分に生じる分子量の最大値(即ち、逆転コモノマー分布)を有するポリオレフィン組成物を生成するための束縛構造型触媒又は架橋ビス−Cpメタロセン触媒のいずれかの使用を記載している。束縛構造触媒を用いて作製される組成物は、多峰性TREFプロファイル、及び比較的狭い分子量分布を有する(例えば、例示された樹脂は、2.19から3.4のM
w/M
nを有し、米国特許第6,462,161号の実施例の節における表1を参照されたい)。架橋したビス−Cpメタロセン触媒を用いて作製される組成物は、複雑なTREFプロファイル及び幾分かより広い分子量分布を有する(例えば、例示された樹脂は、3.43又は6.0のM
w/M
nを有し、米国特許第6,462,161号の実施例の節における表1を参照されたい)。
【0027】
1.0から2.5のメルトインデックス、3.5から4.5のM
w/M
n、40から150Paの溶融弾性率G’(G”=500Pa)及び28から45kJ/molの範囲の流れの活性化エネルギー(Ea)を有するエチレンコポリマーが米国特許第7,968,659号に教示されている。束縛構造触媒が、気相において上記ポリマー組成物を作製するために使用される。
【0028】
米国特許第7,521,518号は、様々な交差分別クロマトグラフィー(CFC)パラメーターによって測定される逆転コモノマー分布及び2から10の分子量分布を有するエチレンコポリマー組成物を得るための束縛構造触媒の使用を記載している。
【0029】
米国特許第5,874,513号は、支持されたメタロセン触媒を生じさせる成分の混合物の使用は、気相反応器において、減少したコモノマー分布均一性を有するエチレンコポリマーを与え得ることを記載している。上記特許は、ポリマー組成物中のコモノマーの分布を代表する組成分布パラメーターCbを定義している。上記コポリマー組成物のTREF分析は、二峰性分布を示した。
【0030】
米国特許第6,441,116号は、高度に分岐した成分に起因する一つのピークを明らかにしている領域を含む四つの明確な領域を有する、TREFによって得られる組成分布曲線を有するエチレンコポリマーを含むフィルムを開示している。
【0031】
チーグラー−ナッタ触媒を用いて生成され、分析的TREF法で測定された約17重量パーセントより大きい高密度画分、及び約3.6未満の分子量分布(M
w/M
n)を有するエチレン/アルファオレフィンコポリマーが、米国特許第5,487,938号に開示されている。上記高密度画分は、わずかしか短鎖分岐を有さないが、上記コポリマー組成物の残りは、短鎖分岐を含有する画分と呼ばれる。従って、データは、上記エチレンコポリマーへのコモノマー組み込みの二峰性分布と一致する。
【0032】
米国特許第6,642,340号は、メルトフローレート及び溶融張力の間の特定の関係を有するエチレンコポリマーを記載している。上記ポリマーは、TREF分析において100℃以上で溶離する0.5及び8wt%の間の成分をさらに含む。
【0033】
気相オレフィン重合へのホスフィンイミン触媒の使用は、米国特許第5,965,677号の主題である。ホスフィンイミン触媒は、ホスフィンイミン配位子、シクロペンタジエニル型配位子及び2種の活性化可能な配位子を有する有機金属化合物であり、シリカなどの好適な粒子状支持体上に支持されている。例示された触媒は、式CpTi(N=P(tBu)
3)X
2(式中、Xは、Cl、Me又はCl及び−O−(2,6−iPr−C
6H
3)であった)を有した。
【0034】
同時係属カナダ特許出願第2,734,167号において、本発明者らは、適切に置換されたホスフィンイミン触媒は、フィルムにされた場合に光学的性質及び物理的性質の良好なバランスを示す狭い分子量分布のコポリマーを与えることを示した。
【0035】
いわゆる「ホスフィンイミン」触媒を含む、様々なシングルサイト触媒を使用する気相で作製されるポリマー及びフィルムが、Advances in Polyolefins II、Napa、California−10月24〜27日、1999年(「気相プロセスにおける使用のためのNOVAのシングルサイト触媒技術の開発(Development of NOVA’s Single Site Catalyst Technology for use in the Gas Phase Process)−I.Coulter;D.Jeremic;A.Kazakov;I.McKay)に開示された。
【0036】
2002 Canadian Society for Chemistry Conferenceにおいてなされた開示(「不均一オレフィン重合におけるシクロペンタジエニルホスフィンイミンチタニウム触媒−構造、活性及び生成物の関係(Cyclopentadienyl Phosphinimine Titanium Catalysts − Structure, Activity and Product Relationships in Heterogeneous Olefin Polymerization.)R.P.Spence;I.McKay;C.Carter;L.Koch;D.Jeremic;J.Muir;A. Kazakov、NOVA Research and Technology Center、CIC、2002」)において、様々に置換されたシクロペンタジエニル及びインデニル配位子を有するホスフィンイミン触媒は、支持された形態である場合にエチレンの気相重合に対して活性であることが示された。
【0037】
米国特許出願公開第2008/0045406号は、C
6F
5置換インデニル配位子を含む支持されたホスフィンイミン触媒を開示している。上記触媒は、エチレンの1−ヘキセンとの重合における使用のために、活性な陽子を有するイオン活性剤で活性化された。
【0038】
米国特許出願公開第2006/0122054号は、その一つの成分がn−ブチル置換インデニル配位子を有するホスフィンイミン触媒である、二元触媒配合物の使用を開示している。上記特許は、パイプにおける用途に適した二峰性樹脂の形成を対象としている。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[発明を実施するための最良の形態]
本発明は、比較的高いメルトフロー比及び昇温溶離分別(TREF)プロットにおける多峰性プロファイルを有するエチレンコポリマーを提供する。該コポリマーは、減少した押出機圧力下及び良好な押出量において高い落錘衝撃値及び良好な剛性を有するフィルムにすることができる。
【0052】
重合触媒システム
本発明において使用される重合触媒システムは、単一遷移金属触媒を含むが、限定はされないが、支持体(単数又は複数)、触媒活性剤(単数又は複数)、及び触媒調節剤(単数又は複数)などのさらなる成分を含むことがある。用語「単一遷移金属触媒」及び類似の用語は、重合触媒システムの調製の間に、1タイプのみの活性遷移金属触媒が含まれることを意味し、混合触媒及び二元触媒などの2種以上の異なる活性遷移金属触媒を含む重合触媒システムを排除する。
【0053】
好ましくは、遷移金属触媒は、第4族遷移金属に基づく有機金属触媒である。有機金属触媒は、触媒が、少なくとも一つの炭素−金属結合を介して金属に結合している遷移金属配位圏(coordination sphere)の内部に少なくとも一つの配位子を有することを意味する。このような触媒は、集合的に、「有機遷移金属触媒」又は第4族金属に基づく場合に「第4族有機遷移金属触媒」と呼ばれることがある。
【0054】
好ましくは、有機遷移金属触媒は、第4族金属(この数は、IUPAC命名法を用いる元素の周期表における列に相当する)に基づくシングルサイト触媒である。これには、チタニウム、ハフニウム及びジルコニウムが含まれる。最も好ましい有機遷移金属触媒は、それらの最高の酸化状態における第4族金属錯体である。
【0055】
本発明において特に有用である特定の有機遷移金属触媒は、ホスフィンイミン配位子をさらに含む第4族有機遷移金属触媒である。ホスフィンイミン配位子を有し、以下で(「エチレンコポリマー組成物」と題する節において)、さらに定義され記載されるコポリマー組成物を作製するために使用し得るいずれの有機金属触媒/化合物/錯体も、本発明における使用のために企図される。本発明において、少なくとも一つのホスフィンイミン配位子を有し、オレフィンがポリマーになる重合において活性である有機遷移金属触媒を、「ホスフィンイミン触媒」と呼ぶ。
【0056】
遷移金属触媒は、通常、ポリマーを提供するために、1種以上の共触媒又は触媒活性剤種による活性化を必要とする。従って、遷移金属重合触媒は、「前駆触媒(pre−catalyst)」とも呼ばれる。
【0057】
本発明の一つの好ましい実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、式:L(PI)MX
2(式中、Mは、Ti、Hf、Zrから選択される第4族遷移金属であり;PIは、ホスフィンイミン配位子であり;Lは、置換又は非置換シクロペンタジエニル型配位子であり;Xは、活性化可能な配位子である)によって定義される。
【0058】
本発明の一つの好ましい実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、ホスフィンイミン触媒の金属配位圏内の別の配位子、例えばシクロペンタジエニル型配位子などと架橋していない、又はそれと架橋を作らないホスフィンイミン配位子を有する。
【0059】
本発明の一つの好ましい実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、ホスフィンイミン触媒の金属配位圏内の別の配位子、例えばホスフィンイミン配位子などと架橋していない、又はそれと架橋を作らないシクロペンタジエニル型配位子を有する。
【0060】
ホスフィンイミン配位子は、式:R
13P=N−(式中、各R
1は、水素原子;ハロゲン原子;置換されていない又は一つ以上のハロゲン原子で置換されたC
1〜20ヒドロカルビルラジカル;C
1〜20アルキルラジカル;C
1〜8アルコキシラジカル;C
6〜10アリール又はアリールオキシラジラル;アミドラジカル;シリルラジカル;及びゲルマニルラジカルからなる群から独立に選択され;Pは、リンであり、Nは、窒素(これは金属Mに結合している)である)によって定義される。
【0061】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン配位子は、各R
1がヒドロカルビルラジカルであるように選択される。本発明の一つの特定の実施形態において、ホスフィンイミン配位子は、トリ−(第三級ブチル)ホスフィンイミン(即ち、ここで、各R
1は、第三級ブチル基又は略してt−Bu基である)である。
【0062】
本明細書で使用される用語「シクロペンタジエニル型」配位子は、イータ−5(又はある場合にはイータ−3)結合を介して金属に結合している少なくとも一つの五炭素環を含有する配位子を含むことを意図されている。従って、用語「シクロペンタジエニル型」には、例えば、非置換シクロペンタジエニル、一置換又は多置換シクロペンタジエニル、非置換インデニル、一置換又は多置換インデニル、非置換フルオレニル及び一置換又は多置換フルオレニルが含まれる。イータ−5(又はある場合にはイータ−3)結合を介して金属に結合している五炭素環が完全な状態である限りにおいて、インデニル及びフルオレニル配位子の水素化バージョンも、本発明における使用に企図される。シクロペンタジエニル配位子、インデニル配位子(又はその水素化バージョン)及びフルオレニル配位子(又はその水素化バージョン)の置換基の例示的なリストには、C
1〜20ヒドロカルビルラジカル(このヒドロカルビルラジカルは、置換されていなく又は、例えば、ハロゲン化物及び/又はヒドロカルビル基でさらに置換されていてよく;例えば、好適な置換C
1〜20ヒドロカルビルラジカルは、−CH
2C
6F
5などのペンタフルオロベンジル基である);ハロゲン原子;C
1〜8アルコキシラジカル;C
6〜10アリール又はアリールオキシラジカル(これらのそれぞれは、例えば、ハロゲン化物及び/又はヒドロカルビル基でさらに置換されていてよい);置換されていない又は最高2個までのC
1〜8アルキルラジカルで置換されているアミドラジカル;置換されていない又は最高2個までのC
1〜8アルキルラジカルで置換されているホスフィドラジカル;式−Si(R’)
3のシリルラジカル(ここで、各R’は、水素、C
1〜8アルキル又はアルコキシラジカル、C
6〜10アリール又はアリールオキシラジカルからなる群から独立に選択される);及び式−Ge(R’)
3のゲルマニルラジカル(ここで、R’は、真上で定義されたとおりである)からなる群が含まれる。
【0063】
用語「過フッ素化アリール基」は、当技術分野でよく理解されているように、アリール基中の炭素原子に結合している各水素原子が、フッ素原子で置き換えられていることを意味する(例えば、過フッ素化フェニル基又は置換基は、式−C
6F
5を有する)。
【0064】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、一置換又は多置換インデニル配位子、及び3個の第三級ブチル置換基で置換されているホスフィンイミン配位子を有する。
【0065】
特に指定のない限り、用語「インデニル」(又は略して「Ind」)は、完全に芳香族の二環構造を意味する。
【0066】
本発明で定義されたインデニル配位子(又は略して「Ind」)は、以下に提供された命番方式を有する骨格炭素原子を有し、従って、置換基の位置は、容易に確認することができる。
【化1】
【0067】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、一置換インデニル配位子及び3個の第三級ブチル置換基で置換されたホスフィンイミン配位子を有する。
【0068】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、一置換又は多置換インデニル配位子を有し、ここで、置換基は、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アリール基、及び置換又は非置換ベンジル(例えば、C
6H
5CH
2−)基からなる群から選択される。アルキル、アリール又はベンジル基に適した置換基は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリール基(例えば、ベンジル基)、アリールアルキル基及びハロゲン化物基からなる群から選択することができる。
【0069】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、一置換インデニル配位子、R
2−インデニルを有し、ここで、R
2置換基は、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ベンジル基である。R
2アルキル、R
2アリール又はR
2ベンジル基に適した置換基は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリール基(例えば、ベンジル基)、アリールアルキル基及びハロゲン化物基からなる群から選択することができる。
【0070】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、少なくとも一つの1位の置換基(1−R
2)を有するインデニル配位子を有し、ここで、置換基R
2は、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ベンジル基である。R
2アルキル、R
2アリール又はR
2ベンジル基に適した置換基は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリール基(例えば、ベンジル基)、アリールアルキル基及びハロゲン化物基からなる群から選択することができる。
【0071】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、一置換インデニル配位子、1−R
2−インデニルを有し、ここで、置換基R
2は、インデニル配位子の1位にあり、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ベンジル基である。R
2アルキル、R
2アリール又はR
2ベンジル基に適した置換基は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリール基(例えば、ベンジル基)、アリールアルキル基及びハロゲン化物基からなる群から選択することができる。
【0072】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、一置換インデニル配位子、1−R
2−インデニルを有し、ここで、置換基R
2は、(部分的に/完全に)ハロゲン化物で置換されたアルキル基、(部分的に/完全に)ハロゲン化物で置換されたベンジル基、又は(部分的に/完全に)ハロゲン化物で置換されたアリール基である。
【0073】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、一置換インデニル配位子、1−R
2−インデニルを有し、ここで、置換基R
2は、(部分的に/完全に)ハロゲン化物で置換されたベンジル基である。
【0074】
インデニル配位子上に存在する場合、ベンジル基は、ハロゲン化物原子、好ましくはフッ化物原子で部分的に又は完全に置換されていてよい。ベンジル基のアリール基は、それぞれ、過フッ素化アリール基、2,6(即ち、オルト)フルオロ置換フェニル基、2,4,6(即ち、オルト/パラ)フルオロ置換フェニル基、又は2,3,5,6(即ち、オルト/メタ)フルオロ置換フェニル基であってよい。ベンジル基は、本発明の一実施形態において、インデニル配位子の1位に位置する。
【0075】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、一置換インデニル配位子、1−R
2−インデニルを有し、ここで、置換基R
2は、ペンタフルオロベンジル(C
6F
5CH
2−)基である。
【0076】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、式:(1−R
2−(Ind))M(N=P(t−Bu)
3)X
2を有し、ここで、R
2は、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ベンジル基であり、ここで、アルキル、アリール又はベンジル基の置換基は、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリール、アリールアルキル及びハロゲン化物置換基からなる群から選択され;Mは、Ti、Zr又はHfであり;Xは、活性化可能な配位子である。
【0077】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、式:(1−R
2−(Ind))M(N=P(t−Bu)
3)X
2を有し、ここで、R
2は、アルキル基、アリール基又はベンジル基であり、該アルキル基、該アリール基、及び該ベンジル基のそれぞれは、置換されていなく又は少なくとも1種のフッ化物原子で置換されていてよく;Mは、Ti、Zr又はHfであり;Xは、活性化可能な配位子である。
【0078】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、式:(1−R
2−(Ind))M(N=P(t−Bu)
3)X
2を有し、ここで、R
2は、アルキル基、アリール基又はベンジル基であり、該アルキル基、該アリール基、及び該ベンジル基のそれぞれは、置換されていなく又は少なくとも1種のハロゲン化物原子で置換されていてよく;Mは、Ti、Zr又はHfであり;Xは、活性化可能な配位子である。
【0079】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、式:(1−R
2−(Ind))Ti(N=P(t−Bu)
3)X
2を有し、ここで、R
2は、アルキル基、アリール基又はベンジル基であり、該アルキル基、該アリール基、及び該ベンジル基のそれぞれは、置換されていなく又は少なくとも1種のフッ化物原子で置換されていてよく;Xは、活性化可能な配位子である。
【0080】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、式:(1−C
6F
5CH
2−Ind)M(N=P(t−Bu)
3)X
2を有し、ここで、Mは、Ti、Zr又はHfであり;Xは活性化可能な配位子である。
【0081】
本発明の一実施形態において、ホスフィンイミン触媒は、式:(1−C
6F
5CH
2−Ind)Ti(N=P(t−Bu)
3)X
2を有し、ここで、Xは、活性化可能な配位子である。
【0082】
好ましくはないが、本発明における使用に同様に企図され得る他の有機遷移金属触媒には、メタロセン触媒(これらは、二つのシクロペンタジエニル型配位子を有する)、及び束縛構造触媒(これらは、アミド型配位子及びシクロペンタジエニル型配位子を有する)が含まれる。メタロセン触媒のいくつかの限定されない例は、これらは有用である場合があり、又はそうではない場合があるが、米国特許第4,808,561号;4,701,432号;4,937,301号;5,324,800号;5,633,394号;4,935,397号;6,002,033号及び6,489,413号に見いだすことができ、これらは、参照により本明細書に組み込まれている。束縛構造触媒のいくつかの限定されない例は、これらは有用である場合があり、又はそうではない場合があるが、米国特許第5,057,475号;5,096,867号;5,064,802号;5,132,380号;5,703,187号及び6,034,021号に見いだすことができ、これらの全ては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0083】
本発明において、用語「活性化可能な」は、配位子Xが、それぞれ、プロトノリシス反応によって金属中心Mから開裂し得るか、又は、好適な酸性若しくは求電子性触媒活性剤化合物(「共触媒」化合物としても知られている)によって金属中心Mから引き離され得ることを意味し、これらの例は、以下に記載されている。活性化可能な配位子Xは、金属中心Mから開裂又は引き離される別の配位子に転換することもできる(例えば、ハロゲン化物は、アルキル基に変換し得る)。いかなる単一の理論に束縛されることを望むものではないが、プロトノリシス又は引抜反応は、オレフィンを重合し得る活性な「カチオン性」金属中心を生じる。
【0084】
本発明の実施形態において、活性化可能な配位子、Xは、水素原子;ハロゲン原子、C
1〜10ヒドロカルビルラジカル;C
1〜10アルコキシラジカル;及びC
6〜10アリール又はアリールオキシラジカルからなる群から独立に選択され、ここで、該ヒドロカルビル、アルコキシ、アリール、又はアリールオキシドラジカルのそれぞれは、置換されていなく、又は1個以上のハロゲン若しくは他の基;C
1〜8アルキル;C
1〜8アルコキシ、C
6〜10アリール若しくはアリールオキシ;アミド若しくはホスフィドラジカルでさらに置換されていてよいが、ここで、Xは、シクロペンタジエニルではない。二つのX配位子は、互いに結合し、例えば、置換若しくは非置換ジエン配位子(即ち、1,3−ブタジエン);又はアセテート若しくはアセトアミジナート基などの非局在化されたヘテロ原子含有基を形成してもよい。本発明の好都合な一実施形態において、各Xは、ハロゲン化物原子、C
1〜4アルキルラジカル及びベンジルラジカルからなる群から独立に選択される。
【0085】
特に好適な活性化可能な配位子は、ハロゲン化物(例えば、塩化物)又はヒドロカルビル(例えば、メチル、ベンジル)などのモノアニオン性である。
【0086】
遷移金属重合触媒を活性化するために使用される触媒活性剤(又は略して単に「活性剤」)は、アルキルアルミノキサン及びイオン性活性剤からなる群から選択される1種以上の活性剤を、任意選択でアルキル化剤と一緒に含む任意の好適な活性剤であってよい。
【0087】
理論に束縛されることを望むものではないが、アルキルアルミノキサンは、式:
R
32Al
1O(R
3Al
1O)
mAl
1R
32の錯体アルミニウム化合物であると考えられ、ここで、各R
3は、C
1〜20ヒドロカルビルラジカルからなる群から独立に選択され、mは、3から50である。任意選択で、ヒンダードフェノールが存在する場合に2:1から5:1のAl
1:ヒンダードフェノールのモル比を得るように、ヒンダードフェノールを、アルキルアルミノキサンに添加することができる。
【0088】
本発明の一実施形態において、アルキルアルミノキサンのR
3は、メチルラジカルであり、mは、10から40である。
【0089】
アルキルアルミノキサンは、一般的に、有機金属化合物/錯体中の第4族遷移金属の量に比較して実質的にモル過剰で使用される。Al
1:第4族遷移金属のモル比は、約10:1から約10,000:1、好ましくは約30:1から約500:1であってよい。
【0090】
本発明による一実施形態において、触媒活性剤は、メチルアルミノキサン(MAO)である。
【0091】
本発明の一実施形態において、触媒活性剤は、変性メチルアルミノキサン(MMAO)である。
【0092】
アルキルアルミノキサンは、アルキル化剤及び活性剤の両方として二元的役割を果たし得ることは、当技術分野でよく知られている。従って、アルキルアルミノキサン活性剤は、しばしば、ハロゲンなどの活性化可能な配位子と一緒に使用される。
【0093】
別法として、本発明の触媒活性剤は、アルキル化剤(これは、スカベンジャー(捕捉剤)としても役立ち得る)と、遷移金属触媒の第4族をイオン化することが可能な活性剤(即ち、イオン性活性剤)との組合せであってよい。これに関連して、アルキルアルミノキサンが、活性剤及びアルキル化剤の両方として役立ち得るので、活性剤は、1種以上のアルキルアルミノキサン及び/又はイオン性活性剤から選択することができる。
【0094】
存在する場合、アルキル化剤は、(R
4)
pMgX
22−p(式中、X
2は、ハロゲン化物であり、各R
4は、C
1〜10アルキルラジカルからなる群から独立に選択され、pは、1又は2である);R
4Li(式中、R
4は、上記に定義されたとおりである)、(R
4)
qZnX
22−q(式中、R
4は、上記に定義されたとおりであり、X
2は、ハロゲンであり、qは、1又は2である);(R
4)
SAl
2X
23−S(式中、R
4は、上記に定義されたとおりであり、X
2は、ハロゲンであり、sは、1から3の整数である)からなる群から選択することができる。好ましくは、上記化合物において、R
4は、C
1〜4アルキルラジカルであり、X
2は、塩素である。市販の化合物には、トリエチルアルミニウム(TEAL:triethyl aluminum)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、ジブチルマグネシウム((Bu)
2Mg)、及びブチルエチルマグネシウム(BuEtMg又はBuMgEt)が含まれる。
【0095】
イオン性活性剤は、(i)式[R
5]
+[B(R
6)
4]
−の化合物(式中、Bは、ホウ素原子であり、R
5は、環式C
5〜7芳香族カチオン又はトリフェニルメチルカチオンであり、それぞれのR
6は、置換されていない、又は、フッ素原子、置換されていない若しくはフッ素原子で置換されたC
1〜4アルキル若しくはアルコキシラジカルからなる群から選択される3から5個の置換基で置換されたフェニルラジカル;及び式−Si−(R
7)
3のシリルラジカルからなる群から独立に選択され;ここで、それぞれのR
7は、水素原子及びC
1〜4アルキルラジカルからなる群から独立に選択される);及び(ii)式[(R
8)
tZH]
+[B(R
6)
4]
−の化合物(式中、Bは、ホウ素原子であり、Hは、水素原子であり、Zは、窒素原子又はリン原子であり、tは、2又は3であり、R
8は、C
1〜8アルキルラジカル、置換されていない又は最大で3個までのC
1〜4アルキルラジカルで置換されたフェニルラジカルからなる群から選択され、又は一つのR
8は、窒素原子と一緒になってアニリニウムラジカルを形成してよく、R
6は、上記に定義されたとおりである);及び(iii)式B(R
6)
3の化合物(式中、R
6は、上記に定義されたとおりである)からなる群から選択することができる。アルキルアルミノキサンは、アルキル化剤としても使用することができる。
【0096】
上記化合物において、好ましくは、R
6は、ペンタフルオロフェニルラジカルであり、R
5は、トリフェニルメチルカチオンであり、Zは、窒素原子であり、R
8は、C
1〜4アルキルラジカルであり、又は、R
8は、窒素原子と一緒になって2個のC
1〜4アルキルラジカルで置換されたアニリニウムラジカルを形成する。
【0097】
遷移金属触媒をイオン化することが可能な化合物の例には、以下の化合物:トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)n−ブチルホウ素、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、ジ−(イソプロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリフェニルホスホニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トロピリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキスペンタフルオロフェニルボラート、トロピリウムフェニルトリス−ペンタフルオロフェニルボラート、トリフェニルメチリウムフェニル−トリスペンタフルオロフェニルボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)フェニルトリスペンタフルオロフェニルボラート、トロピリウムテトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(1,2,2−トリフルオロエテニル)ボラート、トロフェニルメチリウムテトラキス(1,2,2−トリフルオロエテニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(1,2,2−トリフルオロエテニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラート、及びベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラートが含まれる。
【0098】
遷移金属触媒をイオン化することが可能な市販の活性剤には:
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(「[Me
2NHPh][B(C
6F
5)
4]」);トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(「[Ph
3C][B(C
6F
5)
4]」);及びトリスペンタフルオロフェニルホウ素が含まれる。
【0099】
本発明の一実施形態において、イオン性活性剤化合物は、1:1から1:6となる第4族遷移金属のホウ素に対するモル比を提供する量で使用することができる。
【0100】
任意選択で、アルキルアルミノキサン及びイオン性活性剤の混合物を、有機金属錯体のための活性剤として使用することができる。
【0101】
本発明において、重合触媒システムは、好ましくは、不活性支持体を含む(注意:用語「支持体」及び「不活性支持体」は、本発明において互換的に使用される)。本発明の一つの特定の実施形態において、重合触媒システムは、不活性支持体上に支持されたホスフィンイミン触媒を含む。
【0102】
本発明において使用される不活性支持体は、重合触媒との使用に適した当技術分野で知られている任意の支持体であってよい。例えば、支持体は、任意の多孔質又は非多孔質支持体材料、例えばタルク、無機酸化物、無機塩化物、アルミノリン酸塩(即ち、AlPO
4)及びポリマー支持体(例えば、ポリスチレンなど)であってよい。従って、支持体には、一般的に第2、第3、第4、第5、第13及び第14族金属酸化物、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、ジルコニア、チタニア、クレー(例えば、モンモリロナイト)及びそれらの混合物が含まれる。
【0103】
シリカ及びクレーの凝集物などの凝集物支持体も、本発明において支持体として使用することができる。
【0104】
支持体は、一般的にか焼された形態で使用される。例えば、無機酸化物支持体は、重合触媒と反応する酸性の表面ヒドロキシル基を含有する。使用前に、無機酸化物は、水分を除去するため、及び表面ヒドロキシル基の濃度を減少させるために脱水させることができる。支持体のか焼又は脱水は、当技術分野でよく知られている。本発明の一実施形態において、支持体は、200℃より高い温度、又は300℃より高い温度、又は400℃より高い温度、又は500℃より高い温度でか焼される。別の実施形態において、支持体は、約500℃から1000℃で、又は約600℃から約900℃でか焼される。得られる支持体は、吸着水を含まず、約0.1から5mmol/支持体の1g、又は0.5から3mmol/gの表面ヒドロキシル含有量を有し得る。シリカ支持体中のヒドロキシル基の量は、J.Phys.Chem.72巻(8号)、1968年、2926ページにおいてJ.B.Peri及びA.L.Hensley Jr.によって開示された方法に従って測定することができる。
【0105】
支持体材料、特に無機酸化物は、一般的に、約10から約700m
2/gの表面積、約0.1から約4.0cc/gの範囲の細孔容積及び約5から約500μmの平均粒径を有する。一つのより具体的な実施形態において、支持体材料は、約50から約500m
2/gの表面積、約0.5から約3.5cc/gの範囲の細孔容積及び約10から約200μmの平均粒径を有する。別のより具体的な実施形態において、支持体材料は、約100から約400m
2/gの表面積、約0.8から約3.0cc/gの範囲の細孔容積及び約5から約100μmの平均粒径を有する。
【0106】
支持材料、特に無機酸化物は、一般的に、約10から約1000オングストローム(Å)の平均細孔径(即ち、孔径)を有する。一つのより具体的な実施形態において、支持体材料は、約50から約500Åの平均細孔径を有する。別のより具体的な実施形態において、支持体材料は、約75から約350Åの平均細孔径を有する。
【0107】
支持体の表面積及び細孔容積は、B.E.T.技術に従って窒素吸着によって測定することができ、これらは、当技術分野でよく知られており、Journal of the American Chemical Society、1938年、60巻、309〜319ページに記載されている。
【0108】
本発明における使用に適するシリカ支持体は、高表面積を有し、非晶質である。ほんの一例として、有用なシリカは、W.R.Grace and Companyの一事業部であるDavison CatalystsによってSylopol(登録商標)958、955及び2408の商標下で市販されており、Ineos SilicaによってES−70Wとして市販されている。
【0109】
クレー鉱物及び無機酸化物を含む凝集物支持体は、ペレット製造、押出、乾燥又は沈降、噴霧乾燥、回転コーティングドラム中のビーズ成形などを含む当技術分野でよく知られている多数の技術を使用して調製することができる。ノズリゼーション(nodulization)技術も使用することができる。クレー鉱物及び無機酸化物を含む凝集物支持体を作製する方法には、クレー鉱物及び無機酸化物のスラリーを噴霧乾燥するステップが含まれる。クレー鉱物及び無機酸化物を含む凝集物支持体を作製する方法は、米国特許第6,686,306号;6,399,535号;6,734,131号;6,559,090号及び6,958,375号に開示されている。
【0110】
本発明において有用であるクレー鉱物及び無機酸化物を含む凝集物は、以下の性質:約20から約800m
2/g、好ましくは50から約600m
2/gの表面積;約0.15から約1g/ml、好ましくは約020から約0.75g/mlの嵩密度を有する粒子;約30から約300オングストローム(Å)、好ましくは約60から約150Åの平均孔径;約0.10から約2.0cc/g、好ましくは約0.5から約1.8cc/gの合計細孔容積;及び約4から250ミクロン(μm)、好ましくは約8から100ミクロンの平均粒径を有し得る。
【0111】
別法として、支持体、例えばシリカ支持体を、同時係属カナダ特許出願第2,716,772号に教示されたように、タイプ:Zr(SO
4)
2・4H
2O、ZrO(NO
3)
2、及びFe(NO
3)
3の1種以上の塩で処理することができる。別のやり方で化学的に処理された支持体も、本発明の触媒及びプロセスとの使用のために企図される。
【0112】
本発明は、遷移金属触媒又は触媒システム成分を支持するためのいずれの特定の手順にも限定されない。支持体上に、このような触媒(例えば、ホスフィンイミン触媒)及び触媒活性剤を堆積させるプロセスは、当技術分野においてよく知られている(触媒支持方法のいくつかの限定されない例について、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology Copyright (C) 2001 by John Wiley & Sons,Inc.において2002年11月15日インターネット上に公開されたJames H.Clark及びDuncan J.Macquarrieによる「支持された触媒(Supported Catalysts)」を参照されたく;有機遷移金属触媒を支持するためのいくつかの限定されない方法について、米国特許第5,965,677号を参照されたい)。例えば、遷移金属触媒(例えば、ホスフィンイミン触媒)は、支持材料との共沈殿によって支持体に添加することができる。活性剤は、遷移金属触媒の前及び/若しくは後に、又は遷移金属触媒と一緒に支持体に添加することができる。任意選択で、活性剤は、支持された遷移金属触媒にその場で添加することができ、又は遷移金属触媒は、支持体にその場で添加することができ、又は遷移金属触媒は、支持された活性剤にその場で添加することができる。遷移金属触媒は、好適な希釈剤若しくは溶媒にスラリーにし、又は溶解し、次いで支持体に添加することができる。好適な溶媒又は希釈剤には、限定はされないが、炭化水素及び鉱油が含まれる。遷移金属触媒を、例えば、固体、溶液又はスラリーの形態で固体支持体に添加し、次いで、固体形態で又は溶液若しくはスラリーとして、活性剤を添加することができる。遷移金属触媒(例えば、ホスフィンイミン触媒)、触媒活性剤、及び支持体を、溶媒の存在下又は非存在下で一緒に混合することができる。
【0113】
重合プロセス
本発明のコポリマー組成物は、好ましくは、単一反応器、好ましくは単一気相又はスラリー相反応器を使用して作製される。単一気相反応器における単一遷移金属触媒を含む重合触媒システムの使用は、特に好ましい。
【0114】
スラリー重合プロセスの詳細な記載は、特許文献に広く報告されている。例えば、温度が、ポリマーが溶液に溶ける温度未満に維持される粒子重合(particle form polymerization)、又はスラリープロセスが、米国特許第3,248,179号に記載されている。他のスラリープロセスには、ループ反応器を使用するもの、及び、直列の、並列の、又はそれらの組合せの複数の撹拌反応器を利用するものが含まれる。スラリープロセスの限定されない例には、連続ループプロセス又は撹拌槽プロセスが含まれる。スラリープロセスのさらなる例は、米国特許第4,613,484号に記載されている。
【0115】
スラリープロセスは、アルカン(イソアルカンを含む)、芳香族又はシクロアルカンなどの炭化水素希釈剤の存在下で行われる。上記希釈剤は、共重合において使用されるアルファオレフィンコモノマーであってもよい。アルカン希釈剤には、プロパン、ブタン、(即ち、ノルマルブタン及び/又はイソブタン)、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタンが含まれる。モノマーは、希釈剤に可溶性(又は混和性)であってよいが、ポリマーは、(重合条件下で)そうではない。重合温度は、好ましくは、約5℃から約200℃、最も好ましくは、約120℃未満、典型的には、約10℃から100℃である。反応温度は、エチレンコポリマーが、固体粒子の形態で生成されるように選択される。反応圧力は、希釈剤及び反応温度の選択によって影響される。例えば、圧力は、イソブタンが希釈剤として使用される場合(例えば、米国特許第4,325,849号を参照されたい)、15から45気圧(約220から660psi又は約1500から約4600kPa)の範囲であってよく、プロパンが使用される場合(米国特許第5,684,097号を参照されたい)、そのおよそ2倍(即ち、30から90気圧−約440から1300psi又は約3000〜9100kPa)に及び得る。スラリープロセスにおける圧力は、エチレンモノマーの少なくとも一部を液相に維持するために十分高く維持されなければならない。反応は、一般的に、内部撹拌機(例えば、羽根車)及び少なくとも一つの沈殿脚(settling leg)を有するジャケット付きの閉ループ反応器で行われる。触媒、モノマー及び希釈剤は、液体又は懸濁液として反応器に送り込まれる。スラリーは、反応器中を循環し、ジャケットは、反応器の温度を制御するために使用される。一連の降下バルブを通って、スラリーは、沈殿脚に入り、次いで、圧力降下して希釈剤及び未反応モノマーを気化(フラッシュ)し、サイクロンでポリマーをおおまかに回収する。希釈剤及び未反応モノマーは回収され、反応器に再循環される。
【0116】
気相重合プロセスは、一般的に、流動床反応器で実施される。このような気相プロセスは、文献に広く記載されている(例えば、米国特許第4,543,399号、4,588,790号、5,028,670号、5,317,036号、5,352,749号、5,405,922号、5,436,304号、5,453,471号、5,462,999号、5,616,661及び5,668,228号を参照されたい)。一般的に、流動床気相重合反応器は、モノマー、コモノマー及び少なくとも部分的に気体である他の任意選択の成分の流れによって流動化されたポリマー及び触媒の「床」を使用する。床を流れるモノマー(及びコモノマー)の重合のエンタルピーによって、熱が生じる。未反応モノマー、コモノマー及び他の任意選択の気体成分は、流動床を出て、この熱を除去するための冷却システムと接触する。次いで、モノマー、コモノマー、及び他の任意選択の成分(凝縮性液体など)を含む冷却されたガス流は、先の通過で重合したものを置き換えるための「補給」モノマー(及びコモノマー)と一緒に、重合ゾーンを通して再循環される。同時に、ポリマー生成物は、反応器から抜き取られる。当業者なら理解されるように、重合床の「流動」性は、反応器の熱を均一に分配/混合することにより、局在化した温度勾配の形成を最小化するのに寄与する。
【0117】
気相プロセスにおける反応器圧力は、ほぼ大気圧から、約600psigまで変わり得る。一つのより具体的な実施形態において、該圧力は、約100psig(690kPa)から約500psig(3448kPa)までの範囲に及び得る。別のより具体的な実施形態において、該圧力は、約200psig(1379kPa)から約400psig(2759kPa)までの範囲に及び得る。さらに別のより具体的な実施形態において、該圧力は、約250psig(1724kPa)から約350psig(2414kPa)までの範囲に及び得る。
【0118】
気相プロセスにおける反応器温度は、上記された重合の熱によって変化し得る。一つの特定の実施形態において、反応器温度は、約30℃から約130℃であり得る。別の特定の実施形態において、反応器温度は、約60℃から約120℃であり得る。さらに別の特定の実施形態において、反応器温度は、約70℃から約110℃であり得る。一層さらに別の特定の実施形態において、気相プロセスの温度は、約70℃から約100℃であり得る。
【0119】
上述の流動床プロセスは、ポリエチレンの調製に十分に適合されているが、他のモノマー(即ち、コモノマー)も使用することができる。モノマー及びコモノマーには、それぞれ、エチレン及びC
3〜12アルファオレフィン(ここで、C
3〜12アルファオレフィンは、置換されていない又は最高で2個までのC
1〜6アルキルラジカルで置換されている)、置換されていない若しくはC
1〜4アルキルラジカルからなる群から選択される最高で2個までの置換基で置換されたC
8〜12ビニル芳香族モノマー、置換されていない若しくはC
1〜4アルキルラジカルで置換されたC
4〜12直鎖若しくは環式ジオレフィンが含まれる。このようなアルファ−オレフィンの例示的な限定されない例は、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセン、スチレン、アルファメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、及びシクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、アルキル置換ノルボルネン、アルケニル置換ノルボルネンなどの束縛環の環状オレフィン(例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン及び5−エチリデン−2−ノルボルネン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン)の一つ以上である。
【0120】
一実施形態において、本発明は、3から30個の炭素原子、好ましくは3〜12個の炭素原子、より好ましくは3から8個の炭素原子を有する直鎖又は分枝コモノマー(単数又は複数)を含むコモノマー(単数又は複数)の一つ以上とエチレンとの重合を含む重合プロセスを対象としている。
【0121】
上記プロセスは、コモノマー、例えばアルファ−オレフィンコモノマー、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1,4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、スチレン並びに環式及び多環式オレフィン、例えばシクロペンテン、ノルボルネン及びシクロヘキセン又はそれらの組合せの一つ以上と組み合わせたエチレンの重合を含む共重合反応に特に好適である。エチレンとの使用のための他のコモノマーは、極性ビニルモノマー、ジオレフィン、例えば1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、ノルボルナジエン、並びにアセチレン及びアルデヒドモノマーを含む他の不飽和モノマーを含むことができる。より高級なアルファ−オレフィン及びポリエン又はマクロマー(macromer)も使用することができる。
【0122】
好ましくは、コモノマーは、3から15個の炭素原子、好ましくは4から12個の炭素原子、最も好ましくは4から10個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンである。
【0123】
本発明の一実施形態において、エチレンは、重合反応器に送り込まれるモノマー(即ちエチレン)及びコモノマー(即ちアルファオレフィン)の合計重量の少なくとも75wt%を構成する。
【0124】
本発明の一実施形態において、エチレンは、重合反応器に送り込まれるモノマー(即ちエチレン)及びコモノマー(即ちアルファオレフィン)の合計重量の少なくとも85wt%を構成する。
【0125】
本発明の一実施形態において、エチレンを少なくとも2種の異なるコモノマーと重合させてターポリマーなどを形成し、好ましいコモノマーは、3から10個の炭素原子、より好ましくは3から8個の炭素原子を有するモノマー、アルファ−オレフィンモノマーと、任意選択で少なくとも1種のジエンモノマーとの組合せである。好ましいターポリマーには、エチレン/ブテン−1/ヘキセン−1、エチレン/プロピレン/ブテン−1、エチレン/プロピレン/ヘキセン−1、エチレン/プロピレン/ノルボルナジエン、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエンなどの組合せが含まれる。
【0126】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一反応器中で単一第4族有機遷移金属触媒を含む重合触媒システムの存在下で作製される。
【0127】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一気相反応器中で単一第4族有機遷移金属触媒を含む重合触媒システムの存在下で作製される。
【0128】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一反応器中で単一第4族有機遷移金属触媒;触媒活性剤;及び支持体を含む重合触媒システムの存在下で作製される。
【0129】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一気相反応器中で単一第4族有機遷移金属触媒;触媒活性剤;及び支持体を含む重合触媒システムの存在下で作製される。
【0130】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一気相反応器中で単一遷移金属触媒を含む重合触媒システムの存在下で作製され、ここで、該単一遷移金属触媒は、第4族ホスフィンイミン触媒である。
【0131】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一気相反応器中で単一遷移金属触媒を含む重合触媒システムの存在下で作製され、ここで、該単一遷移金属触媒は、
式:
(1−R
2−インデニル)Ti(N=P(t−Bu)
3)X
2
を有する第4族ホスフィンイミン触媒であり;式中、R
2は、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ベンジル基であり、ここで、該アルキル、アリール若しくはベンジル基の置換基は、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリール、アリールアルキル及びハロゲン化物置換基からなる群から選択され;ここで、Xは、活性化可能な配位子である。
【0132】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一気相反応器中でホスフィンイミン触媒;アルキルアルミノキサン共触媒;及び支持体を含む重合触媒システムを用いて作製される。
【0133】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一気相反応器中でホスフィンイミン触媒;アルキルアルミノキサン共触媒;支持体;及び触媒調節剤(これは、以下でさらに記載される)を含む重合触媒システムを用いて作製される。
【0134】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一気相反応器中で式(1−R
2−Ind)Ti(N=P(t−Bu)
3)X
2(式中、R
2は、アルキル基、アリール基又はベンジル基であり、ここで、該アルキル基、該アリール基、又は該ベンジル基のそれぞれは、置換されていなく又は少なくとも一つのハロゲン化物原子で置換されていてよく、ここで、Xは、活性化可能な配位子である)を有するホスフィンイミン触媒;及び活性剤を含む重合触媒システムを用いて作製される。
【0135】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一気相反応器中で式(1−R
2−Ind)Ti(N=P(t−Bu)
3)X
2(式中、R
2は、アルキル基、アリール基又はベンジル基であり、ここで、該アルキル基、該アリール基、又は該ベンジル基のそれぞれは、置換されていなく又は少なくとも一つのハロゲン化物原子で置換されていてよく、ここで、Xは、活性化可能な配位子である)を有するホスフィンイミン触媒;活性剤;及び不活性支持体を含む重合触媒システムを用いて作製される。
【0136】
本発明の一実施形態において、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーは、単一気相反応器中で式(1−R
2−Ind)Ti(N=P(t−Bu)
3)X
2(式中、R
2は、アルキル基、アリール基又はベンジル基であり、ここで、該アルキル基、該アリール基、又は該ベンジル基のそれぞれは、置換されていない又は少なくとも一つのハロゲン化物原子で置換されていてよく、ここで、Xは、活性化可能な配位子である)を有するホスフィンイミン触媒;活性剤;不活性支持体;及び触媒調節剤を含む重合触媒システムを用いて作製される。
【0137】
本発明の一実施形態において、コポリマーは、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーであり、単一気相反応器中で式(1−C
6F
5CH
2−Ind)Ti(N=P(t−Bu)
3)X
2(式中、Xは、活性化可能な配位子である)を有するホスフィンイミン触媒;活性剤;及び不活性支持体を含む重合触媒システムを用いて作製される。
【0138】
本発明の一実施形態において、コポリマーは、エチレン及び3〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンのコポリマーであり、単一気相反応器中で式(1−C
6F
5CH
2−Ind)Ti(N=P(t−Bu)
3)X
2(式中、Xは、活性化可能な配位子である)を有するホスフィンイミン触媒;活性剤;不活性支持体;及び触媒調節剤を含む重合触媒システムを用いて作製される。
【0139】
重合触媒システムは、多数の方法で反応器システムに送り込むことができる。遷移金属触媒が、好適な支持体上に支持されている場合、遷移金属触媒は、乾式触媒供給装置を使用して乾式で反応器に送り込むことができ、この乾式触媒供給装置の例は、当技術分野でよく知られている。別法として、支持された遷移金属触媒を、好適な希釈剤中のスラリーとして反応器に送り込むことができる。遷移金属触媒が支持されていない場合、触媒を、好適な溶媒又は希釈剤中の溶液として、又はスラリーとして反応器に送り込むことができる。重合触媒システム成分は、遷移金属触媒、活性剤、スカベンジャー、不活性支持体、及び触媒調節剤を含んでよく、重合ゾーンへのそれらの添加前に合わせることができ、又は、それらは、重合ゾーンへの途中で合わせることができる。重合ゾーンへの途中で重合触媒システム成分を合わせるために、それらを、反応器に達する前に重なり合うようになり得る様々なフィードライン構成体を使用して、(好適な溶媒又は希釈剤中の)溶液又はスラリーとして送り込むことができる。このような構成体は、触媒システム成分の溶液又はスラリー流速を変えることによって調節し得る様々な「停滞」時間にわたって、反応器に流れている触媒システム成分が、混合し互いに反応し得る領域を提供するために設計することができる。
【0140】
触媒調節剤
「触媒調節剤」は、十分な量で重合触媒システムに添加され又は重合触媒システムの存在下で使用された場合、重合反応器中の材料の汚損、シーティング(sheeting)、温度逸脱、及び静水位の少なくとも一つを低減、防止又は軽減することができ;触媒速度を変えることができ;且つ/又は重合プロセスで得られるコポリマー生成物の性質を変えることができる化合物である。
【0141】
長鎖アミン型触媒調節剤は、重合触媒システムの一部として重合触媒システムと別々に、又は同時係属カナダ特許出願第2,742,461号に記載されたとおり両方とも、反応器ゾーン(又は関連したプロセス設備)に添加することができる。長鎖アミンは、本明細書に完全に組み込まれている同時係属カナダ特許出願第2,742,461号に記載された、長鎖置換モノアルカノールアミン、又は長鎖置換ジアルカノールアミンであってよい。
【0142】
本発明の一実施形態において、使用される触媒調節剤は、式:R
9R
10xN((CH
2)
nOH)
y(式中、R
9は、5から30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R
10は、水素又は1から30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、xは、1又は0であり、yは、xが1である場合に1であり、yは、xが0である場合、2であり、それぞれのnは、yが2である場合に独立に1から30の整数であり、nは、yが1である場合に、1から30の整数である)によって示される少なくとも1種の長鎖アミン化合物を含む。
【0143】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式R
9R
10xN((CH
2)
nOH)(ここで、R
9は、5から30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R
10は、水素又は1から30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、nは、1〜20の整数である)によって示される少なくとも1種の長鎖置換モノアルカノールアミンを含む。
【0144】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式:R
9N((CH
2)
nOH)((CH
2)
mOH)(式中、R
9は、5から30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、n及びmは、1〜20の整数である)によって示される少なくとも1種の長鎖置換ジアルカノールアミンを含む。
【0145】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式:R
9N((CH
2)
XOH)
2(式中、R
9は、6から30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、xは、1〜20の整数である)によって示される少なくとも1種の長鎖置換ジアルカノールアミンを含む。
【0146】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式:R
9N((CH
2)
XOH)
2(ここで、R
9は、6から30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、xは、2又は3である)によって示される少なくとも1種の長鎖置換ジアルカノールアミンを含む。
【0147】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式:R
9N((CH
2)
XOH)
2(式中、R
9は、6から30個の炭素原子を有する直鎖ヒドロカルビル基であり、xは、2又は3である)によって示される少なくとも1種の長鎖置換ジアルカノールアミンを含む。
【0148】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式:R
9N(CH
2CH
2OH)
2(式中、R
9は、6から30個の炭素原子を有する直鎖ヒドロカルビル基である)によって示される少なくとも1種の長鎖置換ジアルカノールアミンを含む。
【0149】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式:R
9N(CH
2CH
2OH)
2(式中、R
9は、6から30個の炭素原子を有する直鎖、飽和アルキル基である)によって示される少なくとも1種の長鎖置換ジアルカノールアミンを含む。
【0150】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式:R
9N(CH
2CH
2OH)
2(式中、R
9は、8から22個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)によって示される少なくとも1種の長鎖置換ジアルカノールアミンを含む。
【0151】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式:C
18H
37N(CH
2CH
2OH)
2によって示される長鎖置換ジアルカノールアミンを含む。
【0152】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式:C
13H
27N(CH
2CH
2OH)
2及びC
15H
31N(CH
2CH
2OH)
2によって示される長鎖置換ジアルカノールアミンを含む。
【0153】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤は、式:R
9N(CH
2CH
2OH)
2(式中、R
9は、8から18個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)によって示される長鎖置換ジアルカノールアミンの混合物を含む。
【0154】
本発明において使用し得る触媒調節剤の限定されない例は、Kemamine AS−990(商標)、Kemamine AS−650(商標)、Armostat−1800(商標)、ビス−ヒドロキシ−ココアミン、2,2’−オクタデシル−アミノ−ビスエタノール及びAtmer−163(商標)である。
【0155】
反応器(又は他の関連したプロセス設備)に添加される触媒調節剤の量は、生成されるコポリマーの重量に対する触媒調節剤の百万分率(ppm)として本明細書で好都合に表される。
【0156】
重合触媒システム中に含まれる触媒調節剤の量は、重合触媒システムの合計重量(例えば、遷移金属触媒、不活性支持体、共触媒及び触媒調節剤の合わせた重量)に対する触媒調節剤の重量パーセント(wt%)として本明細書で好都合に表される。
【0157】
触媒調節剤は、多数の方法で重合反応器に添加することができる。触媒調節剤は、重合触媒システムと別々に反応器システムに添加することができ、又は、それを、反応器システムにその組合せを送り込む前に、重合触媒システムと組み合わせることができる。
【0158】
触媒調節剤が、その反応器への添加前に重合触媒システムに添加される場合、触媒調節剤は、重合触媒システムの調製の間のいかなる時点においても添加することができる。従って、1種の遷移金属触媒、少なくとも1種の活性剤、少なくとも1種の不活性支持体及び少なくとも1種の触媒調節剤を、任意の順序で合わせて、本発明における使用に適した重合触媒システムを形成することができる。本発明の特定の実施形態において:触媒調節剤は、遷移金属触媒及び共触媒の両方が添加された後に、支持体に添加することができ;触媒調節剤は、遷移金属触媒又は共触媒のいずれかが添加される前に、支持体に添加することができ;触媒調節剤は、遷移金属触媒の後で共触媒の前に支持体に添加することができ;触媒調節剤は、共触媒の後で遷移金属触媒の前に支持体に添加することができる。同様に、触媒調節剤は、重合触媒システムの調製のいずれの段階においても少しずつ添加することができる。
【0159】
触媒調節剤を、任意の好適な方法で重合触媒システムに含む(又は、適切な場合、重合触媒システム成分若しくは1種の遷移金属触媒、不活性支持体及び共触媒を含み得る成分に添加する)ことができる。限定されない例として、触媒調節剤は、重合触媒システム(若しくは重合触媒システム成分)とドライブレンド(それが固体である場合)することができ、又は、そのまま添加することができ(触媒調節剤が液体である場合)、又は、それぞれ、好適な炭化水素溶媒若しくは希釈剤中の溶液若しくはスラリーとして添加することができる。重合触媒システム(又は重合触媒システム成分)は、同様に、それぞれ、好適な溶媒又は希釈剤を使用して溶液に溶かすか又はスラリーとし、次いで触媒調節剤(そのまま固体若しくは液体として、又は好適な溶媒若しくは希釈剤中の溶液若しくはスラリーとして)を添加することができ、逆もまた同様である。別法として、触媒調節剤は、別々の支持体上に堆積し、得られる支持された触媒調節剤を、重合触媒システム(又は重合触媒システム成分)とドライブレンド又はスラリーでブレンドすることができる。
【0160】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤を、単一遷移金属触媒、不活性支持体及び共触媒を既に含む重合触媒システムに添加する。触媒調節剤は、重合触媒システムにオフラインで重合触媒システムの重合ゾーンへの添加前に添加することができ、又は触媒調節剤は、重合反応器への途中で重合触媒システム、又は成分に添加することができる。
【0161】
触媒調節剤は、当業者に知られているいずれの適切な方法を使用しても反応器システムに送り込むことができる。例えば、触媒調節剤は、それぞれ、好適な溶媒又は希釈剤中の溶液又はスラリーとして反応器システムに送り込むことができる。好適な溶媒又は希釈剤は、当業者によく知られている不活性炭化水素であり、一般的に、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、燃料油、イソブタン、鉱油、灯油などの芳香族、パラフィン、及びシクロパラフィンを含む。さらなる特定の例には、限定はされないが、ヘキサン、ヘプタン、イソペンタン及びそれらの混合物が含まれる。別法として、触媒調節剤を、不活性支持体材料に添加し、次いでドライフィード又はスラリーフィードとして重合反応器に送り込むことができる。触媒調節剤を、反応器システムの様々な場所に送り込むことができる。例えば流動床プロセスを考える場合、触媒調節剤は、反応ゾーンの任意の領域に直接(例えば、溶液として添加される場合)、又はエントレインメントゾーンの任意の領域に送り込むことができ、又は、それは、再循環ループ内の任意の領域に送り込むことができ、ここで、このような領域は、触媒調節剤を送り込むことが有効な場所であることが見いだされている。
【0162】
当業者は、さらなる、おそらくより広い範囲も、使用することができ、従って本発明は、この点で限定されるべきではないことを理解するであろうが、溶液又はそれぞれ溶媒若しくは希釈剤との混合物として添加される場合、触媒調節剤は、例えば、溶液又は混合物の0.1から30wt%、又は0.1から20wt%、又は0.1から10wt%、又は0.1から5wt%、又は0.1から2.5wt%、又は0.2から2.0wt%を構成してよい。
【0163】
触媒調節剤は、モノマー又は循環ガスの一つ以上の全て又は一部と一緒に反応器に添加することができる。
【0164】
触媒調節剤は、専用のフィードラインを通して反応器に添加することができ、又はエチレンフィードストリーム、コモノマーフィードストリーム、触媒フィードライン若しくは再循環ラインを含む任意の好都合なフィードストリームに添加することができる。
【0165】
触媒調節剤は、連続的方法で又は間欠的方法で流動床システムにおける一つの場所に送り込むことができる。
【0166】
本発明の一実施形態において、反応器への触媒調節剤の添加の速度は、重合反応器において一定又は所定の静水位(又は、例えば、温度)を維持するために、プログラミングインプットとして、測定された反応器の静水位(又は反応器温度などの他の先行指標)を使用してプログラミングする。
【0167】
触媒調節剤は、重合反応の開始の前、その後又はその間に反応器に添加することができる。
【0168】
触媒調節剤は、反応ゾーンへの途中で重合触媒システムに又は一つ以上の重合触媒システム成分(例えば、ホスフィンイミン触媒、不活性支持体、又は共触媒)に添加することができる。
【0169】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤を、重合触媒システムと別々に、反応ゾーンに直接添加する。最も一般的には、それを、直接反応ゾーンに触媒調節剤の溶液又は混合物を噴霧することによって添加する。
【0170】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤を、その組合せを直接反応ゾーンに添加する前に、重合触媒システムに含ませる(組み合わせる)。
【0171】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤を、触媒の導入によって重合反応を開始する前に、反応器中に存在するポリマーシード床に添加する。
【0172】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤を、重合触媒システムと別々に、直接反応ゾーンに添加し、触媒調節剤を、不活性炭化水素との混合物として添加する。
【0173】
本発明の一実施形態において、触媒調節剤を、重合触媒システムと別々に、直接反応ゾーンに添加し、触媒調節剤を、不活性炭化水素との混合物として添加し、重合反応の間に添加する。
【0174】
反応器に送り込む、且つ/又は重合触媒システムに含むことができる触媒調節剤の合計量は、本質的に限定されないが、それは、有機遷移金属ベースの重合触媒システムの活性を、商業的に許容されるものより低く低下させる量を超過すべきではない。
【0175】
この点で、反応器に送り込まれる触媒調節剤の量は、一般的に、約150ppm、又は100ppm、又は75ppm、又は50ppm、又は25ppm(生成される(コ)ポリマーの重量に対する百万分率)を超過せず、一方、重合触媒システム中に含まれる触媒調節剤の量は、一般的に、約10重量パーセント(触媒調節剤を含む重合触媒システムの合計重量に基づき)を超過しない。
【0176】
本発明の実施形態において、反応器に送り込まれる触媒調節剤は、150から0ppmであり、この範囲内のより狭い範囲、例えば限定はされないが、150から1ppm、又は150から5ppm、又は100から0ppm、又は100から1ppm、又は100から5ppm、又は75から0ppm、又は75から1ppm、又は75から5ppm、又は50から0ppm、又は50から1ppm、又は50から5ppm、又は25から0ppm、又は25から1ppm、又は25から5ppm(生成されるポリマーに対する重量百万分率)を含む。
【0177】
本発明の実施形態において、重合触媒システムに含まれる触媒調節剤の量は、0から10重量パーセントであり、この範囲のより狭い範囲、例えば限定はされないが、0から6.0重量パーセント、又は0.25から6.0重量パーセント、又は0から5.0重量パーセント、又は0.25から5.0重量パーセント、又は0から4.5重量パーセント、又は0.5から4.5重量パーセント、又は1.0から4.5重量パーセント、又は0.75から4.0重量パーセント、又は0から4.0重量パーセント、又は0.5から4.0重量パーセント、又は1.0から4.0重量パーセント、又は0から3.75重量パーセント、又は0.25から3.75重量パーセント、又は0.5から3.5重量パーセント、又は1.25から3.75重量パーセント、又は1.0から3.5重量パーセント、又は1.5から3.5重量パーセント、又は0.75から3.75重量パーセント、又は1.0から3.75重量パーセント(wt%は、重合触媒システムの合計重量;例えば、有機遷移金属触媒、不活性支持体、触媒活性剤及び触媒調節剤の合わせた重量に対する触媒調節剤の重量パーセントである)を含む。
【0178】
他の触媒調節剤は、本発明において使用することができ、金属カルボン酸塩(例えば、米国特許第7,354,880号;6,300,436号;6,306,984号;6,391,819号;6,472,342号及び6,608,153号を参照されたい)、ポリスルホン、ポリマーポリアミン及びスルホン酸(例えば、米国特許第6,562,924号;6,022,935号及び5,283,278号を参照されたい)などの化合物を含む。ポリオキシエチレンアルキルアミンは、例えば欧州特許出願第107,127号に記載されており、同様に使用することができる。さらなる触媒調節剤には、ステアリン酸アルミニウム及びオレイン酸アルミニウムが含まれる。触媒調節剤は、OCTASTAT(商標)及びSTADIS(商標)の商標下で市販されている。触媒調節剤STADISは、米国特許第7,476,715号;6,562,924号及び5,026,795号に記載されており、Octel Starreonから入手できる。STADISは、一般的に、ポリスルホンコポリマー、ポリマーアミン及び油溶性スルホン酸を含む。
【0179】
市販の触媒調節剤は、時には、重合触媒との使用のためには許容されない量の水を含有する。従って、触媒調節剤は、水を除去する物質(例えば、不活性生成物を形成するそれとの反応、又は吸着若しくは吸収法によって)、例えば金属アルキルスカベンジャー又はモレキュラーシーブによって処理することができる。金属カルボン酸塩の帯電防止剤から水を除去するためのスカベンジャー化合物の使用について、例えば、米国特許出願第2011/0184124号を参照されたい。別法として、好ましくは、触媒調節剤を、減圧及び高温下で乾燥して存在する水の量を減少させることができる(以下の実施例の節を参照されたい)。例えば、触媒調節剤は、動的真空ポンプを使用することによって達成することができる減圧下(例えば、大気圧より低い)で、高温(例えば、室温又は周囲温度より少なくとも10℃高い)で処理して、水分を蒸留することができる。
【0180】
スカベンジャー
任意選択で、スカベンジャーを、重合プロセスに添加する。本発明は、いずれの好適なスカベンジャー(単数又は複数)の存在下でも実施することができる。スカベンジャーは、当技術分野でよく知られている。
【0181】
本発明の一実施形態において、スカベンジャーは、式:Al
3(X
3)
n(X
4)
3−nを有する有機アルミニウム化合物(ここで、(X
3)は、1から約20個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり;(X
4)は、アルコキシド若しくはアリールオキシド(これらのいずれの一つも1から約20個の炭素原子を有する);ハロゲン化物;若しくは水素化物から選択され;nは、1から3までの数である);又は式:R
32Al
1O(R
3Al
1O)
mAl
1R
32(ここで、それぞれのR
3は、C
1〜20ヒドロカルビルラジカルからなる群から独立に選択され、mは3から50である)を有するアルキルアルミノキサンである。本発明において有用ないくつかの限定されない好ましいスカベンジャーには、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム又は他のトリアルキルアルミニウム化合物が含まれる。
【0182】
スカベンジャーは、任意の好適な量で使用することができるが、ほんの限定されない例として、約20から約2000、又は約50から約1000、又は約100から約500のAl:Mのモル比(ここで、Mは、有機金属化合物の金属である)を提供する量で存在してよい。一般的に、スカベンジャーは、触媒の前に、追加の触媒毒の非存在下で反応器に添加し、時間と共に0になり、又は連続的に添加する。
【0183】
任意選択で、スカベンジャーは、独立に支持することができる。例えば、有機アルミニウム化合物又はアルキルアルミノキサンで処理された無機酸化物を、重合反応器に添加することができる。有機アルミニウム又はアルキルアルミノキサン化合物の支持体への添加の方法は、特に定義されておらず、当技術分野でよく知られている手順で実施される。
【0184】
エチレンコポリマー組成物
本発明において、用語「エチレンコポリマー」は、用語「コポリマー」、又は「ポリエチレンコポリマー」と互換的に使用され、全て、重合したエチレン単位及び少なくとも1タイプの重合したアルファオレフィンからなるポリマーを意味する。
【0185】
本発明において、エチレンコポリマー組成物は、好ましくは、ポリマーブレンドではないが、任意選択で、それらは、ポリマーブレンドにおける成分として使用することができる。用語ポリマー「ブレンド」は、二つの類似した又は異なるポリマーのドライブレンド、単一反応ゾーンにおける多元若しくは混合触媒システムの使用から生じる反応器中ブレンド、及び異なる重合条件下で稼働している少なくとも二つの反応器における一つの触媒の使用に由来するブレンド、又は同一若しくは異なる条件下の一つ以上の反応器における少なくとも二つの異なる触媒の使用を含むブレンド(例えば、異なる条件下で若しくは異なる触媒を用いてそれぞれ稼働している直列の反応器に由来するブレンド)を意味することを本明細書で意図されている。
【0186】
好ましくは、エチレンコポリマー組成物は、エチレン並びに1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンから選択されるアルファオレフィンのコポリマーである。
【0187】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマー組成物は、エチレンコポリマー組成物の重量に対して、少なくとも75重量%のエチレン単位、又は少なくとも80wt%のエチレン単位、又は少なくとも85wt%のエチレン単位を含み、残りは、アルファ−オレフィン単位である。
【0188】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、0.01から3.0g/10min、又は0.1から2.0g/10min、又は0.25から2.0g/10min、又は0.01から1.0g/10min、又は0.1から1.0g/10min、又は1.0g/10min未満、又は0.1から1.0g/10min未満、又は0.25から1.0g/10min、又は0.25から0.9g/10min、又は0.25から0.80g/10min、又は0.2から0.9g/10min、又は0.20から0.85g/10min、又は0.25から0.85g/10minのメルトインデックス(I
2)を有する。
【0189】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、この範囲内のより狭い範囲を含む0.916g/ccから0.932g/ccの密度、例えば0.917g/ccから0.932g/cc、又は0.916g/ccから0.930g/cc、又は0.917g/ccから0.930g/cc、又は0.916g/ccから0.925g/cc、又は0.917g/ccから0.927g/cc、又は0.917g/ccから0.926g/cc、又は0.917g/ccから0.925g/cc、又は0.917g/ccから0.923g/cc、又は0.918g/ccから0.932g/cc、又は0.918g/ccから0.930g/cc、又は0.918から0.930g/cc、又は0.918gから0.928g/ccの密度を有する(注意:「g」は、グラムを表し;「cc」は、立方センチメートル、cm
3を表す)。
【0190】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、0.916g/ccから0.930g/ccの密度を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、0.916g/ccより大きく0.930g/cc未満の密度を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、0.917g/ccから0.927g/ccの密度を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、0.918g/ccから0.927g/ccの密度を有する。
【0191】
本発明のエチレンコポリマーは、ASTM D6474−99の方法に従って作成したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)曲線において単峰性、広い単峰性、二峰性、又は多峰性プロファイルを有し得る。用語「単峰性」は、本明細書で、GPC曲線において明らかな一つだけの有意なピーク又は最大値が存在することを意味すると定義される。単峰性プロファイルには、広い単峰性プロファイルが含まれる。用語「二峰性」は、第一のピークに加えて、より高い又はより低い分子量成分を表す第二のピーク又はショルダーが存在することを意味する(即ち、分子量分布が、分子量分布曲線において二つの最大値を有すると言うことができる)。別法として、用語「二峰性」は、ASTM D6474−99の方法に従って作成した分子量分布曲線における二つの最大値の存在を意味する。用語「多峰性」は、ASTM D6474−99の方法に従って作成した分子量分布曲線における二つ以上、一般的には三つ以上の最大値の存在を意味する。
【0192】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、ASTM D6474−99の方法に従って作成したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)曲線における単峰性プロファイルを有する。用語「単峰性」は、本明細書で、GPC曲線において明らかな一つだけの有意なピーク又は最大値が存在することを意味すると定義される。単峰性プロファイルには、広い単峰性分布曲線又はプロファイルが含まれる。
【0193】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、この範囲のより狭い範囲を含む30,000から250,000、例えば、50,000から200,000、又は50,000から175,000、又は75,000から150,000、又は80,000から125,000のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定された重量平均分子量(M
W)を示す。
【0194】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、この範囲内のより狭い範囲を含む5,000から100,000、例えば、7,500から100,000、又は7,500から75,000、又は7,500から50,000、又は10,000から100,000、又は10,000から75,000、又は10,000から50,000のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定された数平均分子量(M
n)を示す。
【0195】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、この範囲内のより狭い範囲を含む50,000から1,000,000、例えば75,000から750,000、又は100,000から500,000、又は100,000から400,000、又は125,000から375,000、又は150,000から350,000、又は175,000から325,000のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたZ平均分子量(M
Z)を示す。
【0196】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、この範囲内のより狭い範囲を含む3.5から7.0、例えば3.5から6.5、又は3.6から6.5、又は3.6から6.0、又は3.5から5.5、又は3.6から5.5、又は3.5から5.0、又は4.0から6.0、又は4.0から5.5のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定された分子量分布(M
w/M
n)を有する。
【0197】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、この範囲内のより狭い範囲を含む2.0から5.5、例えば、2.0から5.0、又は2.0から4.5、又は2.0から4.0、又は2.0から2.5、又は2.0から3.0のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたZ平均分子量分布(M
z/M
w)を有する。
【0198】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、フーリエ変換赤外線検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−FTIR)を使用して測定されたフラットなコモノマー組み込みプロファイルを有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、GPC−FTIRを使用して測定された負の(即ち「正常な」)コモノマー組み込みプロファイルを有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、GPC−FTIRを使用して測定された反対の(即ち「逆転の」)又は部分的に反対のコモノマー組み込みプロファイルを有する。コモノマー組み込みが、GPC−FTIRを使用して測定して、分子量と共に減少する場合、分布は、「正常な」又は「負の」と記載される。コモノマー組み込みが、GPC−FTIRを使用して測定して、分子量とほぼ一致する場合、コモノマー分布は、「平らな」または「均一な」と記載される。用語「逆転のコモノマー分布」及び「部分的に逆転のコモノマー分布」は、コポリマーについて得られたGPC−FTIRデータにおいて、一つ以上のより低い分子量セグメントに比べて、より高いコモノマー組み込みを有する一つ以上のより高い分子量成分が存在することを意味する。用語「逆転の(逆転した)」コモノマー分布」は、エチレンコポリマーの分子量範囲を通して、様々なポリマー画分のコモノマー含有量は、実質的に均一ではなく、そのより高い分子量画分は、比例的により高いコモノマー含有量を有することを意味するために本明細書で使用される(即ち、コモノマー組み込みが、分子量と共に増加する場合、分布は、「逆転の」又は「逆転した」と記載される)。コモノマー組み込みが、増加する分子量と共に増加し、次いで減少する場合、コモノマー分布は、依然として「逆転の」と考えられるが、「部分的に逆転の」と記載してもよい。
【0199】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、GPC−FTIRを使用して測定された逆転のコモノマー組み込みプロファイルを有する。
【0200】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、以下の条件:
200,000のMWにおけるSCB/1000C−50,000のMWにおけるSCB/1000Cが、正の数であり、又は1.0より大きい;
を満足するGPC−FTIRによって測定されたコモノマー組み込みプロファイルを有し、ここで、SCB/1000Cは、GPC又はGPC−FTIRクロマトグラフにおける千個の炭素当たりの短鎖分岐の数として測定されたコモノマー含有量であり、MWは、対応する分子量(即ち、絶対分子量)である。
【0201】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、以下の条件:
200,000のMWにおけるSCB/1000C−50,000のMWにおけるSCB/1000C>2.0;
を満足するGPC−FTIRによって測定されたコモノマー組み込みプロファイルを有し、ここで、SCB/1000Cは、GPC又はGPC−FTIRクロマトグラフにおける千個の炭素当たりの短鎖分岐の数として測定されたコモノマー含有量であり、MWは、対応する分子量(即ち、絶対分子量)である。
【0202】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、以下の条件:
200,000のMWにおけるSCB/1000C−50,000のMWにおけるSCB/1000C>5.0;
を満足するGPC−FTIRによって測定されたコモノマー組み込みプロファイルを有し、ここで、SCB/1000Cは、GPC又はGPC−FTIRクロマトグラフにおける千個の炭素当たりの短鎖分岐の数として測定されたコモノマー含有量であり、MWは、対応する分子量(即ち、絶対分子量)である。
【0203】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、以下の条件:
200,000のMWにおけるSCB/1000C−50,000のMWにおけるSCB/1000C>6.0;
を満足するGPC−FTIRによって測定されたコモノマー組み込みプロファイルを有し、ここで、SCB/1000Cは、GPC又はGPC−FTIRクロマトグラフにおける千個の炭素当たりの短鎖分岐の数として測定されたコモノマー含有量であり、MWは、対応する分子量(即ち、絶対分子量)である。
【0204】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、以下の条件:
200,000のMWにおけるSCB/1000C−50,000のMWにおけるSCB/1000C>7.0;
を満足するGPC−FTIRによって測定されたコモノマー組み込みプロファイルを有し、ここで、SCB/1000Cは、GPC又はGPC−FTIRクロマトグラフにおける千個の炭素当たりの短鎖分岐の数として測定されたコモノマー含有量であり、MWは、対応する分子量(即ち、絶対分子量)である。
【0205】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、30から60のメルトフロー比(MFR=I
21/I
2)を有する。本発明のさらなる実施形態において、エチレンコポリマーは、30から55、又は30から50、又は30から45、又は32から50若しくは35から55、又は36から50、又は36から48、又は36から46、又は35から50、又は35より大きく50未満、又は35より大きく50までのI
21/I
2を有する。
【0206】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、30から50のメルトフロー比(I
21/I
2)を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、30より大きく50までのメルトフロー比(I
21/I
2)を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、32から50のメルトフロー比(I
21/I
2)を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、35から50のメルトフロー比(I
21/I
2)を有する。本発明の一実施形態において、ポリエチレンコポリマーは、36から50のメルトフロー比(I
21/I
2)を有する。本発明の一実施形態において、ポリエチレンコポリマーは、32から55のメルトフロー比(I
21/I
2)を有する。本発明の一実施形態において、ポリエチレンコポリマーは、36から55のメルトフロー比(I
21/I
2)を有する。
【0207】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、35重量%から75重量%、又は35から70wt%、又は40重量%から75重量%の昇温溶離分別(TREF)で測定された組成分布幅指数CDBI
50を有する。本発明の実施形態において、コポリマーは、40%から70%、又は45%から70%、又は45%から65%、又は45から60%、又は45%から69%、又は50%から69%、又は50%から70%、又は50%から66%、又は50%から65%、又は50%から60%、又は55%から70%、又は55から65%、又は60%から70%、又は60%から65%(重量による)のCDBI
50を有する。
【0208】
本発明の一実施形態において、ポリエチレンコポリマーは、35wt%から70wt%のCDBI
50を有する。本発明の一実施形態において、ポリエチレンコポリマーは、45wt%から69wt%のCDBI
50を有する。
【0209】
エチレンコポリマーの組成分布は、T(75)−T(25)値によっても特徴付けることができ、ここで、TREF実験においてT(25)は、溶離されたコポリマーの25wt%が得られる温度であり、T(75)は、溶離されたコポリマーの75wt%が得られる温度である。
【0210】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、TREFで測定された10から30℃のT(75)−T(25)を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、TREFで測定された10から25℃のT(75)−T(25)を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、TREFで測定された10から22.5℃のT(75)−T(25)を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、TREFで測定された12.5から25℃のT(75)−T(25)を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、TREFで測定された12.5から22.5℃のT(75)−T(25)を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、TREFで測定された12.5から20.0℃のT(75)−T(25)を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、TREFで測定された10.0から20.0℃のT(75)−T(25)を有する。
【0211】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、0.01から0.4、又は0.05から0.4、又は0.05から0.3、又は0.01から0.3、又は0.01から0.25、又は0.05から0.25のCY a−パラメーター(Carreau−Yasuda剪断指数とも呼ばれる)を有する。
【0212】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、0.001から0.90、又は0.001から0.8、又は0.001から0.5、又は0.9未満、又は0.8未満、又は0.5未満、又は0.35未満の正規化剪断減粘性指数(shear thinning index)、0.1rad/sにおけるSHI(即ち、η
*0.1/η
0)を有する。
【0213】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、少なくとも二つの溶離強度最大値又はピークを含む、多峰性である、昇温溶離分別で測定されたTREFプロファイルを有する。
【0214】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、昇温溶離分別(TREF)で測定された5wt%未満の、40℃以下の温度で溶離するコポリマーの量を有する。
【0215】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、昇温溶離分別(TREF)で測定された5から45wt%の、90℃から105℃の温度で溶離するコポリマーの量を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、昇温溶離分別(TREF)で測定された5から40wt%の、90℃から105℃の温度で溶離するコポリマーの量を有する。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、昇温溶離分別(TREF)で測定された5から35wt%の、90℃から105℃の温度で溶離するコポリマーの量を有する。本発明の一実施形態において、5から30wt%のエチレンコポリマーが、TREFプロファイルにおいて90℃から105℃の温度範囲内で示される。本発明の一実施形態において、10から30wt%のエチレンコポリマーが、TREFプロファイルにおいて90℃から105℃の温度範囲内で示される。本発明の一実施形態において、5から25wt%のエチレンコポリマーが、TREFプロファイルにおいて90℃から105℃の温度範囲内で示される。本発明の一実施形態において、10から25wt%のエチレンコポリマーが、TREFプロファイルにおいて90℃から105℃の温度範囲内で示される。本発明の別の実施形態において、12から25wt%のエチレンコポリマーが、TREFプロファイルにおいて90℃から105℃の温度範囲内で示される。本発明の別の実施形態において、10から22.5wt%のエチレンコポリマーが、TREFプロファイルにおいて90℃から105℃の温度範囲内で示される。
【0216】
本発明の実施形態において、1wt%未満、又は0.5wt%未満、又は0.05wt%未満、又は0wt%のエチレンコポリマーが、TREF分析において100℃より高い温度で溶離する。
【0217】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、i)少なくとも二つの溶離強度最大値(又はピーク)を含む多峰性TREFプロファイル;ii)40℃以下の温度で示される5wt%未満のコポリマー;及びiii)90℃から105℃の温度で示される5から40wt%のコポリマーを含む、昇温溶離分別で測定されたTREFプロファイルを有する。
【0218】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、三つの溶離強度最大値(又はピーク)を含む三峰性TREFプロファイルを有する。
【0219】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、60℃から82℃であり、T(中)は、75℃から90℃であるが、T(低)より高く、T(高)は、90℃から100℃であるが、T(低)より高い。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、62℃から82℃であり、T(中)は、76℃から89℃であるが、T(低)より高く、T(高)は、90℃から100℃である。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中)及びT(高)で生じる三つの溶離強度ピークによって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、64℃から82℃であり、T(中)は、78℃から89℃であるが、T(低)より高く、T(高)は、90℃から100℃である。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中)及びT(高)で生じる三つの溶離強度ピークによって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、64℃から82℃であり、T(中)は、78℃から87℃であるが、T(低)より高く、T(高)は、90℃から96℃であるが、T(中)より高い。
【0220】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、64℃から82℃であり、T(中)は、75℃から90℃であるが、T(低)より高く、T(高)は、90℃から100℃であるが、T(中)より高い。本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、65℃から75℃であり、T(中)は、76℃から89℃であり、T(高)は、90℃から100℃である。
【0221】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)、及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、65℃から75℃であり、T(中)は、76℃から87℃であり、T(高)は、90℃から100℃である。
【0222】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、65℃から75℃であり、T(中)は、75℃から85℃であるが、T(中)より高く、T(高)は、90℃から100℃である。
【0223】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)及びT(高)におけるピークの強度は、T(中)におけるピークの強度より大きい。
【0224】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(中)−T(低)は、3℃から25℃、又は5℃から20℃;又は5℃から15℃、又は7℃から15℃である。
【0225】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(高)−T(中)は、3℃から20℃、又は3℃から17℃、又は3℃から15℃、又は5℃から20℃、又は5℃から17℃、又は5℃から15℃、又は7℃から17℃、又は7℃から15℃又は10℃から17℃、又は10℃から15℃である。
【0226】
本発明の実施形態において、コポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(高)−T(低)は、15℃から35℃、又は15℃から30℃、又は17℃から30℃、又は15℃から27℃、又は17℃から27℃、又は20℃から30℃又は20℃から27℃である。
【0227】
本発明の一実施形態において、コポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)及びT(高)におけるピークの強度は、T(中)におけるピークの強度より大きく;ここで、T(中)−T(低)は、3℃から25℃であり;ここで、T(高)−T(中)は、5℃から15℃であり;ここで、T(高)−T(低)は、15℃から35℃である。
【0228】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中程度又は略して「中」)及びT(高)で生じる三つの溶離強度最大値(又はピーク)によって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)及びT(高)におけるピークの強度は、T(中)におけるピークの強度より大きく;ここで、T(中)−T(低)は、3℃から15℃であり;ここで、T(高)−T(中)は、5℃から15℃であり;ここで、T(高)−T(低)は、15℃から30℃である。
【0229】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中)及びT(高)で生じる三つの強度ピークによって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、64℃から82℃であり、T(中)は、76℃から89℃であるが、T(低)より高く、T(高)は、90℃から100℃であり、ここで、T(低)及びT(高)におけるピークの強度は、T(中)におけるピークの強度より大きく;ここで、T(中)−T(低)は、3℃から25℃、又は5℃から20℃;又は5℃から15℃、又は7℃から15℃である。
【0230】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中)及びT(高)で生じる三つの強度ピークによって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、64℃から75℃であり、T(中)は、76℃から86℃であり、T(高)は、90℃から100℃であり、ここで、T(低)及びT(高)におけるピークの強度は、T(中)におけるピークの強度より大きく;ここで、T(中)−T(低)は、3℃から25℃、又は5℃から20℃;又は5℃から15℃、又は7℃から15℃である。
【0231】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中)及びT(高)で生じる三つの強度ピークによって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、64℃から82℃であり、T(中)は、76℃から89℃であるが、T(低)より高く、T(高)は、90℃から100℃であり、ここで、T(低)及びT(高)におけるピークの強度は、T(中)におけるピークの強度より大きく;ここで、T(高)−T(中)は、3℃から20℃、又は3℃から17℃、又は3℃から15℃、又は5℃から20℃、又は5℃から17℃、又は5℃から15℃、又は7℃から17℃、又は7℃から15℃又は10℃から17℃、又は10℃から15℃である。
【0232】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中)及びT(高)で生じる三つの強度ピークによって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、64℃から75℃であり、T(中)は、76℃から86℃であり、T(高)は、90℃から100℃であり、ここで、T(低)及びT(高)におけるピークの強度は、T(中)におけるピークの強度より大きく;ここで、T(高)−T(中)は、3℃から20℃、又は3℃から17℃、又は3℃から15℃、又は5℃から20℃、又は5℃から17℃、又は5℃から15℃、又は7℃から17℃、又は7℃から15℃又は10℃から17℃、又は10℃から15℃である。
【0233】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中)及びT(高)で生じる三つの強度ピークによって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、64℃から82℃であり、T(中)は、76℃から89℃であるが、T(低)より高く、T(高)は、90℃から100℃であり、ここで、T(低)及びT(高)におけるピークの強度は、T(中)におけるピークの強度より大きく;ここで、T(高)−T(低)は、15℃から35℃、又は15℃から30℃、又は17℃から30℃、又は15℃から27℃、又は17℃から27℃、又は20℃から30℃又は20℃から27℃である。
【0234】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、溶離温度T(低)、T(中)及びT(高)で生じる三つの強度ピークによって定義される多峰性TREFプロファイルを有し、ここで、T(低)は、65℃から75℃であり、T(中)は、76℃から86℃であり、T(高)は、90℃から100℃であり、ここで、T(低)及びT(高)におけるピークの強度は、T(中)におけるピークの強度より大きく;ここで、T(高)−T(低)は、15℃から35℃、又は15℃から30℃、又は17℃から30℃、又は15℃から27℃、又は17℃から27℃、又は20℃から30℃又は20℃から27℃である。
【0235】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、示差走査熱量測定(DSC)で測定して、二つの溶融ピークを有する。
【0236】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、条件:
(CDBI
50−3)≦[15/(a+0.12)]
を満足し;ここで、CDBI
50は、TREF分析で測定されたwt%で示された組成分布幅指数であり、「a」は、動的機械分析(DMA)で測定されたCarreau−Yasuda剪断指数である。
【0237】
本発明の実施形態において、エチレンコポリマーは、≦3.0wt%、又は≦2.0wt%、又は≦1.5wt%又は≦1.0wt%のヘキサン抽出物濃度を有する。本発明の一実施形態において、コポリマーは、0.2から3.0wt%、又は0.2から2.5wt%、又は0.2から2.0wt%のヘキサン抽出物濃度を有する。
【0238】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、少なくとも1.0の加工性改善指数(processability enhancement index)(χ)を有し、ここで、加工性改善指数(χ)は、
χ=96−2.14[(MFR
0.5)+1×10
−4(M
w−M
n)]/δ
XO
によって定義され、ここで、δ
XOは、動的機械分析(DMA)で測定されたvan Gurp−Palmen(VGP)プロットからのクロスオーバー位相角であり、MFRは、メルトフロー比I
21/I
2であり、M
wは、重量平均分子量であり、M
nは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定された数平均分子量である。
【0239】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、1.0より大きく1.50未満の加工性改善指数(χ)を有する。
【0240】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、1.0より大きく1.30未満の加工性改善指数(χ)を有する。
【0241】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、1.0より大きく1.20未満の加工性改善指数(χ)を有する。
【0242】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、条件:
δ
XO≦96−2.14[(MFR
0.5)+1×10
−4(M
w−M
n)]
を満足し、ここで、δ
XOは、動的機械分析(DMA)で測定されたVGPプロットにおける1.0rad/sの振動数におけるクロスオーバー位相角であり、MFRは、メルトフロー比I
21/I
2であり、M
wは、重量平均分子量であり、M
nは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定された数平均分子量である。
【0243】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、次の関係:(M
w/M
n)≧68[(I
21/I
2)
−1+10
−6(M
n)]を満足する。
【0244】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、次の関係:δ
XO≦[80−1.22(CDBI
50)/(M
w/M
n)]を満足し、ここで、δ
XOは、動的機械分析(DMA)で測定されたvan Gurp−Palmen(VGP)プロットからのクロスオーバー位相角であり、CDBI
50は、TREF分析で測定されたコモノマー分布幅指数である。
【0245】
本発明の一実施形態において、エチレンコポリマーは、次の関係:(M
w/M
n)≧68[(I
21/I
2)
−1+10
−6(M
n)]及びδ
XO≦[80−1.22(CDBI
50)/(M
w/M
n)]の両方とも満足する。
【0246】
フィルム生成
押出−吹込フィルムプロセスは、プラスチックフィルムの調製のためのよく知られているプロセスである。該プロセスは、加熱、溶融し、溶融プラスチックを運び、それを環状ダイに押し通す押出機を使用する。一般的な押出温度は、330から500°F、特に350から460°Fである。
【0247】
ポリエチレンコポリマーフィルムを、ダイから引き出し、チューブ形状にし、最終的に一対の延伸ローラ又はニップローラを通す。次いで、内部圧縮空気を、マンドレルから導入し、チューブの直径を増加させ、所望のサイズの「バブル」を形成する。従って、吹込フィルムは、2方向、即ち、バブルの軸方向(バブルの直径を「膨張させる」強制空気の使用による)及び縦方向(機械を通してバブルを引く巻き取り装置の作用によって)に引き延ばされる。それがダイを出るときに、溶融物を冷却するために、外側の空気も、バブルの周囲に導入される。フィルム幅は、より多く又はより少ない内部空気をバブルに導入してバブルサイズを増加させる又は減少させることによって変える。フィルム厚は、主として延伸ロール又はニップロールの速度を増加させ又は減少させて引落速度を制御することによって制御する。
【0248】
次いで、バブルを、延伸ロール又はニップロールを通過直後につぶす。次いで、冷却したフィルムを、様々な消費者製品を生産するために裁断又はシーリングによってさらに加工することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、完成フィルムの物理的性質は、エチレンコポリマーの分子構造及び加工条件の両方によって影響を受けると、吹込フィルム製造の当業者は一般的に考えている。例えば、加工条件は、分子配向(縦方向及び軸方向又は横方向の両方における)の程度に影響を与えると考えられる。
【0249】
「縦方向」(「MD」)及び「横方向」(「TD」−これはMDに垂直である)の分子配向のバランスは、一般的に、本発明に関係するフィルムに望ましいと考えられる(例えば、落錘衝撃強度、縦方向及び横方向の引裂特性が影響を受けることがある)。
【0250】
従って、「バブル」に対するこれらの引き延ばす力は、完成フィルムの物理特性に影響を与え得ることが認められている。特に、「ブローアップ比」(即ち、環状ダイの直径に対する吹込バブルの直径の比)は、完成フィルムの落錘衝撃強度及び引裂強さに相当な影響を有し得ることが知られている。
【0251】
上記の説明は、単層フィルムの調製に関する。多層フィルムは、1)溶融ポリマーの二つ以上の流れを環状ダイに導入して多層薄膜をもたらす「共押出」プロセス又は2)フィルム層が貼り合わされるラミネーションプロセスによって調製することができる。
【0252】
本発明の一実施形態において、本発明のフィルムを、上述された吹込フィルムプロセスを使用して調製する。
【0253】
代わりのプロセスは、いわゆるキャストフィルムプロセスであり、ここで、ポリエチレンを、押出機で溶融し、次いで直線スリットダイに押し通し、それにより薄いフラットフィルムを「キャストする」。キャストフィルムの押出温度は、(一般的に、450から550°Fの操作温度を用いる)吹込フィルムプロセスに使用されるものより幾分かより熱い。一般的に、キャストフィルムは、吹込フィルムに比べてより急速に冷却(クエンチ)される。
【0254】
本発明の一実施形態において、本発明のフィルムを、キャストフィルムプロセスを使用して調製する。
【0255】
添加剤
フィルムを作るために本発明において使用されるエチレンコポリマー組成物は、添加剤、例えば、一次酸化防止剤(ビタミンEを含むヒンダードフェノールなどの);二次酸化防止剤(特に亜リン酸塩及び亜ホスホン酸塩);核生成剤、可塑剤又はポリマー加工助剤PPA(例えば、フルオロエラストマー及び/又はポリエチレングリコール結合加工助剤)、酸スカベンジャー、安定剤、防錆剤、発泡剤、連鎖破壊酸化防止剤などの他の紫外線吸収剤、失活剤、帯電防止剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料及び充填剤及び過酸化物などの硬化剤も含有することがある。
【0256】
ポリオレフィン産業におけるこれら及び他の一般的な添加剤は、一実施形態において0.01から50wt%まで、別の実施形態において0.1から20wt%まで、さらに別の実施形態において1から5wt%までコポリマー組成物中に存在してよく、ここで、望ましい範囲は、任意の上限wt%と任意の下限wt%との任意の組合せを含んでよい。
【0257】
本発明の一実施形態において、有機亜リン酸塩及びフェノール酸化防止剤などの酸化防止剤及び安定剤が、一実施形態において0.001から5wt%まで、別の実施形態において0.01から0.8wt%まで、さらに別の実施形態において0.02から0.5wt%までコポリマー組成物中に存在してよい。好適である有機亜リン酸塩の限定されない例は、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)亜リン酸塩(IRGAFOS 168)及びトリス(ノニルフェニル)亜リン酸塩(WESTON 399)である。フェノール酸化防止剤の限定されない例には、オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート(IRGANOX 1076)及びペンタエリトリチルテトラキス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(IRGANOX 1010);及び1,3,5−トリ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−イソシアヌラート(IRGANOX 3114)が含まれる。
【0258】
充填剤は、一実施形態において0.1から50wt%まで、別の実施形態において組成物の0.1から25wt%まで、さらに別の実施形態において0.2から10wt%までエチレンコポリマー組成物中に存在してよい。充填剤には、限定はされないが、二酸化チタン、炭化ケイ素、シリカ(及び他の沈降又は非沈降シリカ酸化物)、酸化アンチモン、炭酸鉛、亜鉛華、リトポン、ジルコン、コランダム、スピネル、アパタイト、バライト粉、硫酸バリウム、マグネサイト、カーボンブラック、ドロマイト、炭酸カルシウム、タルク及びAl、Cr又はFe及びCO
3及び/又はHPO
4とイオンのMg、Ca、又はZnの水和又は非水和ヒドロタルサイト化合物;石英粉、塩酸炭酸マグネシウム、ガラス繊維、クレー、アルミナ、及び他の金属酸化物及び金属炭酸塩、金属水酸化物、クロム、リン及び臭素化難燃剤、三酸化アンチモン、シリカ、シリコーン、及びそれらのブレンドが含まれる。これらの充填剤は、当技術分野で知られている任意の他の充填剤及び多孔質充填剤及び支持体を含んでよい。
【0259】
脂肪酸塩もコポリマー組成物中に存在してよい。このような塩は、一実施形態において、コポリマー組成物の0.001から2wt%まで、別の実施形態において、0.01から1wt%まで存在してよい。脂肪酸金属塩の例には、ラウリン酸、ステアリン酸、コハク酸、ステアリル乳酸、乳酸、フタル酸、安息香酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、ナフテン酸、オレイン酸、パルミチン酸、及びエルカ酸、Li、Na、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Al、Sn、Pbなどを含む好適な金属が含まれる。望ましい脂肪酸塩は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、及びオレイン酸マグネシウムから選択される。
【0260】
エチレンコポリマー及び1種以上の添加剤のブレンドを生成する物理的プロセスに関して、均一なブレンドが完成製品への変換前に生成されることを確実にするために十分な混合が行われるべきである。コポリマーは、1種以上の添加剤とブレンドするために使用される場合、いずれの物理的形態であってもよい。一実施形態において、重合反応器から単離されるポリマーの顆粒として定義される反応器顆粒が、添加剤とブレンドするために使用される。反応器顆粒は、10μmから5mmの平均直径を有し、別の実施形態において50μmから10mmの平均直径を有する。別法として、エチレンコポリマーは、反応器顆粒の溶融押出から形成される、例えば、1mmから6mmの平均直径を有するペレットの形態をしている。
【0261】
添加剤をエチレンコポリマーとブレンドする一つの方法は、タンブラー又は他の物理的ブレンド手段で成分を接触させることであり、コポリマーは反応器顆粒の形態をしている。次いで、必要に応じて、押出機における溶融ブレンドを行うことができる。成分をブレンドする別の方法は、コポリマーのペレットを、添加剤と直接押出機で、又は任意の他の溶融ブレンド手段で溶融ブレンドすることである。
【0262】
フィルム特性
本発明のフィルム、又はフィルム層は、上記に定義されたエチレンコポリマーから作られる。一般的に、上述された添加剤は、フィルム生成の前にエチレンコポリマーと混合される。エチレンコポリマー及びフィルムは、加工及び機械的性質のバランスを有する。従って、本発明のフィルムは、良好なフィルム加工押出量と相まって、≧500g/milの落錘衝撃強度、150MPaより大きい1%MD割線弾性率、及び170MPaより大きい1%TD割線弾性率を有する。
【0263】
本発明の実施形態において、フィルムは、≧500g/mil、又は≧550g/mil、又は≧600g/milの落錘衝撃を有する。本発明の別の実施形態において、フィルムは、500g/milから750g/milの落錘衝撃を有する。本発明の一つのさらなる実施形態において、フィルムは、500g/milから700g/milの落錘衝撃を有する。本発明のさらに別の実施形態において、フィルムは、550g/milから750g/milの落錘衝撃を有する。本発明の一層さらに別の実施形態において、フィルムは、600g/milから750g/milの落錘衝撃を有する。本発明の一つのさらなる実施形態において、フィルムは、600g/milから700g/milの落錘衝撃を有する。本発明の一つのさらなる実施形態において、フィルムは、550g/milから700g/milの落錘衝撃を有する。
【0264】
本発明に実施形態において、フィルムは、0.75未満、又は≦0.70、又は≦0.60、又は≦0.50、又は≦0.40、又は≦0.45;又は≦0.35の、MD引裂強さのTD引裂強さに対する比(MD引裂強さ/TD引裂強さ)を有する。本発明の別の実施形態において、フィルムは、0.10から0.75までのMD引裂強さのTD引裂強さに対する比を有する。本発明のさらに別の実施形態において、フィルムは、0.1から0.6までのMD引裂強さのTD引裂強さに対する比を有する。本発明のさらに別の実施形態において、フィルムは、0.2から0.55までのMD引裂強さのTD引裂強さに対する比を有する。本発明の一層さらなる実施形態において、フィルムは、0.2から0.50までのMD引裂強さのTD引裂強さに対する比を有する。
【0265】
本発明の実施形態において、1milのフィルムは、≧150MPa、又は≧160MPa、又は≧175MPa、又は≧180MPa、又は≧190MPaの1%歪みにおける縦方向(MD)割線弾性率を有する。本発明の一実施形態において、1milのフィルムは、150MPaから250MPaまでの1%歪みにおける縦方向(MD)割線弾性率を有する。本発明の一実施形態において、1milのフィルムは、160MPaから240MPaまでの1%歪みにおける縦方向(MD)割線弾性率を有する。本発明の別の実施形態において、1milのフィルムは、170MPaから230MPaまでの1%歪みにおける縦方向(MD)割線弾性率を有する。本発明のさらに別の実施形態において、1milのフィルムは、180MPaから220MPaまでの1%歪みにおける縦方向(MD)割線弾性率を有する。
【0266】
本発明の一実施形態において、1milのフィルムは、≧170MPa、又は≧175MPa、又は≧180MPa、又は≧190MPa、又は≧200MPaの1%歪みにおける横方向(TD)割線弾性率を有する。本発明の一実施形態において、1milのフィルムは、170MPaから270MPaまでの1%歪みにおける横方向(TD)割線弾性率を有する。本発明の別の実施形態において、1milのフィルムは、180MPaから260MPaまでの1%歪みにおける横方向(TD)割線弾性率を有する。本発明のさらに別の実施形態において、1milのフィルムは、190MPaから250MPaまでの1%歪みにおける横方向(TD)割線弾性率を有する。本発明の別の実施形態において、1milのフィルムは、200MPaから240MPaまでの1%歪みにおける横方向(TD)割線弾性率を有する。
【0267】
フィルム又はフィルム層は、例として、0.5milから4mil(注意:1mil=0.0254mm)の範囲に及ぶ合計厚みを有してよく、これは、例えば、フィルムキャスト又はフィルム吹込中に使用されるダイギャップによって決まる。
【0268】
上記の説明は、単層フィルムに当てはまる。しかし、本発明のフィルムは、多層フィルムに使用することができる。多層フィルムは、共押出プロセス又はラミネーションプロセスを使用して作ることができる。共押出において、複数の溶融ポリマーの流れを、環状ダイ(又はフラットキャスト)に送り込み、冷却して多層フィルムを得る。ラミネーションにおいて、複数のフィルムを、例えば、接着剤を使用し、熱及び圧力などと一緒になって接着する。多層フィルム構造は、例えば、つなぎ層及び/又はシーラント層を含有してよい。
【0269】
本発明のフィルムは、表皮層又はコア層であってよく、多層フィルムにおいて少なくとも一つ又は複数の層に使用することができる。用語「コア」又は語句「コア層」は、多層フィルムにおける任意の内部フィルム層を意味する。語句「表皮層」は、多層フィルム(例えば、製品包装の製造に使用される)の最外層を意味する。語句「シーラント層」は、フィルムのそれ自体への又は多層フィルム中の別の層へのシーリングに関与するフィルムを意味する。「つなぎ層」は、二つの層に互いに接着する任意の内部層を意味する。
【0270】
ほんの一例として、多層フィルムの厚みは、約0.5milから約10milの合計厚みであり得る。
【実施例】
【0271】
全般
空気及び/又は水分に敏感な化合物を含む全ての反応は、標準のシュレンク及びカニューレ技術を使用して又はグローブボックスにおいて窒素下で行った。反応溶媒は、Organometallics 1996、v15巻、1518ページにおいてPangbornらによって記載されたシステムを使用して精製し、又は活性化された4Åモレキュラーシーブを用いて貯蔵した後に直接使用した。使用したメチルアルミノキサンは、Albemarleによって供給されたトルエン中の10%MAO溶液であり、受け取ったままで使用した。使用した支持体は、W.R.Grace.& Co.から入手したシリカSylopol 2408であった。支持体を、200℃で2時間、空気で流動化し、次いで600℃で6時間、窒素で流動化することによってか焼し、窒素下で貯蔵した。
【0272】
g/10minで表したメルトインデックス、I
2を、2.16キログラムの錘を用いて190℃においてASTM D1238手順A(手動操作)に従ってTinius Olsen Plastomer(Model MP993)で測定した。メルトインデックスI
10を、10キログラムの錘を用いて190℃においてASTM D1238手順Aに従って測定した。高負荷メルトインデックス、g/10minで表したI
21を、21.6キログラムの錘を用いて190℃においてASTM D1238手順Aに従って測定した。メルトフロー比(メルトインデックス比とも呼ばれる)は、I
21/I
2である。
【0273】
ポリマー密度を、ASTM D1928に従って立方センチメートル当たりのグラム(g/cc)で測定した。
【0274】
分子量の情報(g/molで表したM
w、M
n及びM
z)及び分子量分布(M
w/M
n)、及びZ平均分子量分布(M
z/M
w)を、140℃において移動相として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いて、「Waters 150c」の商品名で販売されている装置を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した。サンプルを、この溶媒にポリマーを溶解することによって調製し、濾過することなく操作した。分子量を、数平均分子量(「M
n」)について2.9%及び重量平均分子量(「M
w」)について5.0%の相対標準偏差とのポリエチレン当量として表す。ポリマーサンプル溶液(1から2mg/mL)を、オーブン中において150℃で4時間、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中でポリマーを加熱し、回転盤上で回転させることによって調製した。酸化防止剤2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル(BHT)を、酸化的分解反応に対してポリマーを安定化するために、混合物に添加した。BHT濃度は250ppmであった。サンプル溶液を、濃度検出器として示差屈折率(DRI)を用い、1.0mL/minの流速で移動相としてTCBを使用して、四つのShodexカラム(HT803、HT804、HT805及びHT806)を備えたPL 220高温クロマトグラフィー装置で140℃においてクロマトグラフィーにかけた。BHTを、カラムを酸化的分解から保護するために、250ppmの濃度で移動相に添加した。サンプル注入量は200mLであった。生データを、Cirrus GPCソフトウェアで処理した。カラムを、狭い分布のポリスチレン標準で較正した。ポリスチレン分子量を、ASTM標準試験法D6474に記載されたように、Mark−Houwink方程式を使用してポリエチレン分子量に変換した。
【0275】
コポリマーサンプルの分岐頻度(即ち、1000個の炭素当たりの短鎖分岐SCB)及びC
6コモノマー含有率(wt%で表した)を、ASTM D6645−01法のとおりにフーリエ変換赤外分光(FTIR)によって測定した。OMNICバージョン7.2aソフトウェアを備えたThermo−Nicolet 750 Magna−IR分光光度計を測定に使用した。
【0276】
分子量の関数としての分岐頻度(及び、従ってコモノマー分布)の測定を、溶離液の高温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及びFT−IRを使用して実施した。既知の分岐含有量を有するポリエチレン標準、既知の分子量を有するポリスチレン及び炭化水素を較正に使用した。
【0277】
圧縮成形プラークを使用するヘキサン抽出物を、ASTM D5227に従って測定した。
【0278】
組成分布幅指数CDBI
50(これは、CDBI
50及びCDBI(50)が互換的に使用されるように本発明においてCDBI(50)とも呼ばれる)を測定するために、溶解度分布曲線を、コポリマーについて最初に作成する。TREF技術(下記を参照されたい)から得られるデータを使用して、これは達成される。この溶解度分布曲線は、温度の関数としての溶解されたコポリマーの重量分率のプロットである。これを、重量分率対コモノマー含有率の累積分布曲線に変換し、これから、CDBI
50を、平均の両側の平均コモノマー含有率の50%以内のコモノマー含有率を有するコポリマーサンプルの重量百分率を確立することによって求める(CDBI
50の定義についてWO 93/03093を参照されたい)。90〜105℃で溶離するコポリマーの重量百分率を、90から105℃の溶離温度におけるTREF曲線下の面積を計算することによって求める。40℃以下及び100℃超で溶離するコポリマーの重量百分率を同様に求めた。溶離温度と組成物の相互関係を簡単にするために、全ての画分は、M
n≧15,000を有するものと仮定し、ここで、M
nは、画分の数平均分子量である。存在するいずれの低重量画分も一般的に、ポリマーの些細な部分を表している。本明細書の残り及び添付の特許請求の範囲は、CDBI
50測定において全ての画分は、M
n≧15,000を有するものと仮定するこの約束ごとを維持する。
【0279】
本明細書で使用される特定の昇温溶離分別(TREF)は、次のとおりであった。均一なポリマーサンプル(50から150mgにペレット化された)を、結晶化−TREF装置(Polymer ChAR(商標))の反応器に導入した。反応器を、20から40mLの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)で満たし、1から3時間、所望の溶解温度(例えば150℃)に加熱した。次いで、溶液(0.5から1.5mL)を、ステンレス鋼ビーズを充填したTREFカラムに装入した。30から45分間の所与の安定化温度(例えば110℃)における平衡化の後、ポリマー溶液を、安定化温度から30℃への温度降下(0.1又は0.2℃/min)で結晶化させた。30分間の30℃での平衡化の後、結晶化したサンプルを、30℃から安定化温度への温度傾斜(0.25又は1.0℃/min)で、TCB(0.5又は0.75mL/min)で溶離した。TREFカラムを、溶解温度で30分間、操作の終わりに清掃した。Polymer ChARソフトウェア、Excelスプレッドシート及び社内開発したTREFソフトウェアを使用してデータを処理した。
【0280】
上述されたTREF手順は、当業者によく知られており、TREFプロファイルの様相、CDBI
50、40℃以下で溶離するコポリマーwt%、100℃超で溶離するコポリマーwt%、90℃から105℃で溶離するコポリマーwt%、T(75)−T(25)値、及び溶離強度最大値(溶離ピーク)が発生する温度又は温度範囲を求めるために使用することができる。
【0281】
コポリマーのピーク融点(T
m)を含む融点及び結晶化度パーセントは、10℃/minでTA Instrument DSC Q1000 Thermal Analyzerを使用することによって測定する。DSC測定において、室温から200℃の加熱−冷却−加熱サイクル又はその逆を、それらの関連する熱−機械的履歴を最小化するために、ポリマーに適用する。融点及び結晶化度のパーセントを、第二加熱データからのそれぞれ一次ピーク温度及びDSC曲線下の合計面積によって求める。二つのピークが二峰性DSCプロファイルに存在する場合、ピーク溶融温度T
mは、より高い温度ピークである(一般的に最大ピーク高さも有する)。
【0282】
ポリマーの溶融強度は、2mm直径のフラットダイ、190℃におけるL/D比 10:1、圧力変換器:10,000psi(68.95MPa)、ピストン速度:5.33mm/min、引取角度:52°、引取増分速度:50〜80m/min
2又は65±15m/min
2のRosand RH−7細管レオメーター(バレル直径=15mm)で測定する。ポリマー溶融物を、一定の速度下で細管ダイを通して押し出し、ポリマーストランドを、それが破断するまで次第に増える引取速度で引く。力対時間曲線の平坦域における力の最大定常値を、ポリマーの溶融強度と定義する。
【0283】
動的機械分析(DMA)、流動学的測定(例えば、微小歪み(10%)振動剪断測定)を、完全な窒素ブランケッティング下で、振動数掃引モードで25mm径の平行プレートを用いてdynamic Rheometrics SR5 Stress回転式レオメータで実施した。ポリマーサンプルを、酸化防止添加剤で適切に安定化し、次いで、少なくとも1分間、試験装置に挿入し、法線力がゼロに減少して戻るのを確実にするために予備加熱する。全てのDMA実験は、10%歪み、0.05から100rad/s及び190℃で行う。Orchestrator Softwareを、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、位相角(δ)、複素弾性率(G
*)及び複素粘性率(η
*)を含む粘弾性パラメーターを求めるために使用する。
【0284】
次いで、複素粘性率|η
*(ω)|対振動数(ω)データを、ゼロ剪断粘度η
0、特徴的粘性緩和時間Τη、及びレオロジーパラメーター−aの幅を得るために修正3パラメーターCarreau−Yasuda(CY)経験的モデルを使用して曲線適合した。使用される簡易Carreau−Yasuda(CY)経験的モデルは、次の:
|η
*(ω)|=η
0/[1+(Τηω)
a]
(1−n)/a
のとおりであり、式中:|η
*(ω)|=複素剪断粘度の大きさであり;η
0=ゼロ剪断粘度であり;Τη=特徴的粘性緩和時間であり;a=レオロジーパラメーターの「幅」(これは、本発明において「Carreau−Yasuda剪断指数」又は「CY a−パラメーター」又は単に「a−パラメーター」とも呼ばれる)であり;nは、2/11に固定された最終べき法則勾配を固定し;ω=振動剪断変形の角振動数である。CYモデル及び派生パラメーターの有意性及び解釈の詳細は、C.A.Hieber及びH.H.Chiang、Rheol.Acta、28巻、321ページ(1989年);C.A.Hieber及びH.H.Chiang、Polym.Eng.Sci.、32巻、931ページ(1992年);並びにR.B.Bird、R.C.Armstrong及びO.Hasseger、ポリマー液体のダイナミクス(Dynamics of Polymeric Liquids)、1巻、Fluid Mechanics、第2版、John Wiley & Sons(1987年)に見いだすことができ、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0285】
剪断減粘性指数(SHI)を、米国特許出願公開第2011/0212315号に提供された方法に従って求めた。SHIは、動的粘度測定について任意の所与の振動数(ω)についてSHI(ω)=η
*(ω)/η0として定義され、ここで、η0は、経験的Cox−Merz−ruleによって求めた190℃におけるゼロ剪断粘度である。η
*は、平行プレート配置を使用するRheometrics SR5 Stress回転式レオメータで測定される、コポリマーの動的(シヌソイドの)剪断又は変形で測定可能な190℃における複素粘度である。Cox−Merz−Ruleによれば、振動数(ω)がラジアン単位で表される場合、低剪断速度で、η
*の数値は、低剪断細管測定に基づく通常の、固有粘度のものと等しい。レオロジーの分野の技術者は、このようにη0を求めることに精通している。
【0286】
本実施例のフィルムは、4インチのダイ径、及び35又は100milのダイギャップを使用する、Battenfeld Gloucester Engineering Company of Gloucester,Massによって製造された吹込フィルムラインで作った(注意:フィルム生成のために本発明の樹脂1にフルオロエラストマータイプのPPAを添加しており;比較の樹脂2の分析は、約250〜300ppmのフルオロエラストマーPPAが存在することを示し;比較の樹脂3の分析は、カーボワックス及びフルオロエラストマーPPAの合計で約600ppmが存在することを示差している)。この吹込フィルムラインは、1時間当たり100ポンドより大きい標準押出量を有し、50馬力モーターを備えている。スクリュー速度は、35から50RPMであった。押出機スクリューは、2.5milの直径、及び24/1の長さ/直径(L/D)比を有する。溶融温度及びフロストラインの高さ(FLH)は、それぞれ420から430°F及び16インチである。吹込フィルムバブルは空気冷却される。このラインで調製される吹込フィルムの一般的なブローアップ比(BUR)は、1.5/1から4/1までである。85milのギャップを有する環状ダイを、これらの実験に使用した。本実施例のフィルムは、2.5:1のBUR照準点及び1.0milのフィルム厚み照準点を使用して調製した。
【0287】
ヘーズ(%)を、BYK−Gardner Haze Meter(モデル Haze−gard plus)を使用して、ASTM D 1003−07に記載された手順に従って測定した。
【0288】
落錘衝撃強度を、ASTM D−1709−04(方法A)に従って、Kayeness Inc.によって作製された落錘衝撃試験機(モデルD2085AB/P)で測定した。
【0289】
縦(MD)及び横(TD)方向のエルメンドルフ引裂強さを、ASTM D−1922に従ってThwing−Albert Instrument Co.によって作製されたProTear(商標)Tear Testerで測定した。
【0290】
穿刺抵抗を、ASTM D−5748に従ってMTS Systems Universal Tester(モデルSMT(HIGH)−500N−192)で測定した。
【0291】
MD又はTD割線弾性率を、ASTM D−882−10に従って、最大で10%の歪みまで0.2in/minのクロスヘッド速度で、Instrument 5−Head Universal Tester(モデルTTC−102)で測定した。MD又はTD割線弾性率を、基点から1%歪みまでの応力−歪み曲線の初期勾配によって求めた。
【0292】
フィルム引張試験を、ASTM D−882−10に従って、Instrument 5−Head Universal Tester(モデルTTC−102)で行った。
【0293】
光沢度を、ASTM D2457−03に従ってBYK−Gardner 45°Micro−Gloss装置で測定した。
【0294】
シールの開始から溶融までの範囲におけるそれぞれの温度で40psiのシールバー圧締め圧力で、0.5秒間、Lako Toolによって作製されたSL−5 Sealerの加熱された上部及び下部シールバーの間で、二枚の2.0milのフィルムストリップを圧締めすることによって、シールを調製した。シール強度又はシール性パラメーターを、ASTM F88−09に従って、Instrument 5−Head Universal Tester(モデルTTC−102)でシール温度に応じて測定した。
【0295】
発明例1
触媒システムの調製
(1−C6F5CH2−インデニル)((t−Bu)3P=N)TiCl2の合成
ヘプタン(200mL)中の蒸留したインデン(15.0g、129mmol)に、室温でBuLi(82mL、131mmol、ヘキサン中の1.6M)を添加した。得られた反応混合物を終夜撹拌した。混合物を濾過し、濾過ケークをヘプタン(3×30mL)で洗浄してインデニルリチウム(15.62g、収率99%)を得た。インデニルリチウム(6.387g、52.4mmol)を、固体として室温でトルエン(100mL)中のC
6F
5CH
2−Br(13.65g、52.3mmol)の撹拌した溶液に5分間かけて添加した。反応混合物を、50℃に加熱し、4時間撹拌した。生成物混合物を濾過し、トルエン(3×20mL)で洗浄した。合わせた濾液を蒸発乾燥して1−C
6F
5CH
2−インデン(13.58g、88%)を得た。トルエン(15mL)中のTiCl
4.2THF(1.72g、5.15mmol)の撹拌したスラリーに、室温で固体の(t−Bu)
3P=N−Li(1.12g、5mmol)を添加した。得られる反応混合物を100℃で30分間加熱し、次いで室温に冷却した。((t−Bu)
3P=N)TiCl
3(1.85g、5mmol)を含有するこの混合物を、次の反応に使用した。−78℃に冷却した1−C
6F
5CH
2−インデン(1.48g、5mmol)のTHF溶液(10mL)に、n−ブチルリチウム(3.28mL、5mmol、ヘキサン中の1.6M)を10分かけて添加した。得られた濃い橙色の溶液を20分間撹拌し、次いで両頭針で((t−Bu)
3P=N)TiCl
3(1.85g、5mmol)のトルエンスラリーに移した。反応混合物から冷却を取り外し、さらに30分間撹拌した。溶媒を蒸発して黄色いペースト状の残渣を得た。この固体を、80℃でトルエン(70mL)に再溶解し、熱濾過した。トルエンを蒸発して純粋な(1−C
6F
5CH
2−インデニル)((t−Bu)
3P=N)TiCl
2(2.35g、74%)を得た。
【0296】
触媒調節剤の乾燥
950gの市販のArmostat(登録商標)1800(mp 50℃、bp>300℃)(これは触媒調節剤として使用した)を、2L丸底フラスコに装入し、80℃の油浴で融かした。次いで、油浴の温度を110℃に上げ、撹拌を維持しながら高真空を適用した。最初、ガス及び水蒸気の放出によって沢山の泡が視られた。約2時間後、ガス発生は弱まり、加熱/排気を、さらに1時間続けた。次いで、Armostat 1800材料を、室温に冷却し、使用まで窒素雰囲気下で貯蔵した。
【0297】
Armostat 1800中の水分の濃度を測定するために、予備乾燥したトルエン中の15wt%のArmostat溶液を調製し、溶液の水分をカール−フィッシャー滴定法によって測定した。商業供給者から受け取ったままのArmostat 1800中の水分濃度、並びに、従来方法(即ち、溶液をモレキュラーシーブに通して乾燥すること)及び低圧の水蒸留の使用で乾燥されたものの水分濃度を測定した。精製していない触媒調節剤は、138ppmのH
2Oを有する15wt%トルエン溶液になることを見いだした。モレキュラーシーブを通して乾燥した触媒調節剤は、15〜20ppmのH
2Oを有する15wt%トルエン溶液になることを見いだした。水の真空蒸留によって乾燥した触媒調節剤は、14〜16ppmのH
2Oを有する15wt%トルエン溶液になることを見いだした。従って、水を除去するための簡単な真空蒸留は、モレキュラーシーブを使用する乾燥方法と同じくらい有効であることが示された。実際、真空蒸留は、それは格段に時間がかからず(モレキュラーシーブは、触媒調節剤を十分に乾燥するのに2日余りを必要とし、複数バッチのシーブが必要であった)、費用効率が高いという点において、乾燥剤としてのモレキュラーシーブの使用より有利である(シーブの使用は、シーブ中への触媒調節剤の吸収によるトルエン溶液中の触媒調節剤の濃度の減少をもたらし、シーブと有効に接触させるために触媒調節剤を十分に可溶化するために大量の溶媒を必要とした)。
【0298】
支持された触媒の調製
Grace Davisonから購入したSylopol 2408シリカを、2時間200℃の空気及びその後6時間600℃の窒素で流動化することによってか焼した。114.273グラムのか焼焼成シリカを、620mLのトルエンに添加した。Albemarleから購入した4.5重量%のAlを含有する312.993gのMAO溶液を、定量的にシリカスラリーに添加した。混合物を周囲温度で2時間撹拌した。撹拌速度は、シリカ粒子を壊さないようなものであるべきである。2.742グラムの(1−C
6F
5CH
2−インデニル)((t−Bu)
3P=N)TiCl
2(例1で上記のとおり調製された)を、500mLのPyrex(登録商標)ボトルに量り入れ、300mLのトルエンを添加した。金属錯体溶液をシリカスラリーに定量的に添加した。得られたスラリーを、周囲温度で2時間撹拌した。Armostat(登録商標)1800の18.55wt%トルエン溶液の21.958gを、小さな容器に量り入れ、シリカスラリーに定量的に移した。得られた混合物を、さらに30分間撹拌し、この後、スラリーを濾過して、透明な濾液を得た。固体成分をトルエン(2×150mL)で洗浄し、次いでペンタン(2×150mL)で洗浄した。最終生成物を450及び200mtorrの間の真空中で乾燥し、使用されるまで窒素下で貯蔵した。完成した触媒は、淡い黄色から淡い橙色を有した。この触媒は、2.7wt%のArmostatを存在させた。
【0299】
重合
連続エチレン/1−ヘキセン気相共重合実験を、連続気相運転中の56.4Lの技術的規模反応器(TSR:Technical Scale Reactor)で行った(TSR反応器設定の一例について、欧州特許出願第659,773A1号を参照のこと)。エチレン重合を、300ポンド/平方インチゲージ(psig)の合計運転圧力で75℃〜90℃で行った。エチレン及び1−ヘキセンの気相組成を、それぞれ65.0及び0.5〜2.0mol%の値に閉ループプロセス制御によって制御した。重合の間、エチレンフィードに対して0.0008〜0.0015のモルフィード比で、水素を反応器に量り入れた。窒素が、気相混合物の残りを構成した(約38mol%)。これらの条件の一般的な生成速度は、1時間当たり2.0から3.0kgのポリエチレンである。種床を使用し、重合開始の前に、少量のトリエチルアルミニウム、TEALで洗浄して不純物を清掃した。触媒の導入の前に、TEALを反応器からフラッシした。触媒を、始動期間の間、少量の希薄TEAL溶液(0.25wt%)と一緒に反応器に送り込んだ。所望のポリマー生成速度に到達次第、TEALの添加を中止した。別法として、重合始動期間の間、触媒フィードラインだけで、反応器を開始させることができる(即ち、最初にTEAL溶液を送り込むことなく)。重合反応を、低いコモノマー濃度の条件下で開始し、次いで、目標のポリマー密度を提供するためのコモノマー対エチレン比率の漸進的な調節を行った。定常状態の重合条件が表1に提供されている。得られた発明の樹脂1のポリマーデータが、表2に提供されている(C2=エチレン;C6=1−ヘキセン;C6/C2は、反応器への各成分のモルフィード比である)。発明の樹脂1から作られた発明のフィルム1のフィルムデータが、表3に提供されている。
【0300】
比較例1
触媒システムの調製
ホスフィンイミン触媒化合物(1,2−(n−プロピル)(C
6F
5)Cp)Ti(N=P(t−Bu)
3)Cl
2を、米国特許第7,531,602号に示された手順と同様に作製した(例2を参照されたい)。
【0301】
支持された触媒の調製
トルエン(490mL)中の脱水シリカ(122.42g)のスラリーに、10wt%のMAO溶液(トルエン中の4.5wt%のAlの233.84g)を10分かけて添加した。MAOを入れている容器を、トルエン(2×10mL)ですすぎ、反応混合物に添加した。得られたスラリーを、周囲温度で1時間、高架撹拌装置(200rpm)で撹拌した。このスラリーに、(1,2−(n−プロピル)(C
6F
5)Cp)Ti(N=P(t−Bu)
3)Cl
2(2.28g)のトルエン(46mL)溶液を10分かけて添加した。この溶液は、分子を完全に溶解するために短時間(5分)、45℃に穏やかに加熱する必要がある場合がある。分子を入れている容器を、トルエン(2×10mL)ですすぎ、反応混合物に添加した。周囲温度における2時間の撹拌(200rpm)の後、8.85wt%におけるArmostat−1800(これは、「触媒調節剤を乾燥すること」についての上記の方法に従って予め乾燥した)のトルエン(22mL)溶液を、スラリーに添加し、30分間さらに撹拌した。スラリーを濾過し、トルエン(2×100mL)で、次いでペンタン(2×100mL)ですすいだ。1.5wt%未満の残余揮発物まで触媒を真空中で乾燥した。固体の触媒を単離し、さらなる使用まで窒素下で貯蔵した。触媒は、2.7wt%のArmostatを存在させた。
【0302】
重合
連続式エチレン/1−ヘキセン気相共重合実験を、連続気相運転中の56.4Lの技術的規模反応器(TSR)で行った。エチレン重合を、300ポンド/平方インチゲージ(psig)の合計運転圧力で75℃〜90℃で行った。エチレン及び1−ヘキセンの気相組成を、それぞれ65.0及び0.5〜2.0mol%の値に閉ループプロセス制御によって制御した。重合の間、エチレンフィードに対して0.0008〜0.0015のモルフィード比で、水素を反応器に量り入れた。窒素が、気相混合物の残りを構成した(約38mol%)。これらの条件の一般的な生成速度は、1時間当たり2.0から3.0kgのポリエチレンである。関連の重合データが、表1に提供されている。得られた比較の樹脂1のポリマーデータが、表2に提供されている。比較の樹脂1から作った比較のフィルム1のフィルムデータが、表3に提供されている。
【表1】
【0303】
同様に表2に含まれるのは、比較の樹脂2〜7である。比較の樹脂2〜4の対応するフィルムの性質が、表3に与えられている。比較の樹脂2は、Exceed 1018(商標)1−ヘキセンのエチレンコポリマーであり、これは、ExxonMobilから市販されている。比較の樹脂3は、Enable 20−05(商標)を代表する樹脂であると考えられ、これは、ExxonMobilから市販されている。比較の樹脂4は、FP−019C及びLF−Y819−Aの溶融ブレンドである。LF−Y819は、5重量%の溶融ブレンドを意味する。Y819−Aは、NOVA Chemicalsから入手できる、0.75g/10minのメルトインデックス及び0.919g/ccの密度を有する高圧低密度材料である。FPs−019−Cは、同様にNOVA Chemicalsから入手できる、チーグラー−ナッタ触媒を使用して作製される、0.8g/10minのメルトインデックス及び0.918g/ccの密度を有する直鎖低密度材料である。比較の樹脂5及び6は、混合触媒システムを用いる複式反応器溶液プロセスを使用して作製される、Dow Chemical Companyから市販されている、それぞれELITE 5100G(商標)及びELITE 5400G(商標)である。比較の樹脂7は、DOWLEX 2045G(商標)であり、これは、溶液反応器でチーグラー−ナッタ触媒で作製され、同様にDow Chemical Companyから市販されている。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表3-1】
【表3-2】
【表4-1】
【表4-2】
【0304】
表2に示されたとおり、本発明のエチレンコポリマー組成物(発明1)は、(1,2−(n−プロピル)(C
6F
5)Cp)Ti(N=P(t−Bu)
3)Cl
2で調製された樹脂(比較1)及び市販のEXCEED 1018CA(商標)(比較2)と異なるメルトフロー比を有する。本発明の樹脂(発明1のみならず以下に論じられる発明2〜8も参照されたい)は、30より大きいMFRを有し、一方、比較の樹脂1及び2はそれぞれ、30未満のメルトフロー比を有する。さらに、本発明のコポリマー組成物は、類似のメルトフロー比(41.2のMFR)を有するが、非常に異なるTREFプロファイルを有するEnable20〜05樹脂(比較3)と明瞭に区別されうる。本発明の樹脂のTREFプロファイルは、多峰性(5℃以上隔たる三つの顕著なピークの三峰性)であるが、比較の樹脂3は、TREF分析で明らかな単一ピークを有する。本発明の樹脂1、及び発明の樹脂2〜8は、70wt%未満の組成分布幅指数CDBI
50を有し、一方、比較の樹脂3は、85%より大きいCDBI
50を有する。本発明の樹脂1のELITE樹脂(比較例5及び6)の比較は、それぞれが、多峰性のTREFプロファイルを有し得るが(Elite樹脂は、エチレン及び1−オクテンのコポリマーであり、本発明の樹脂は、エチレン及び1−ヘキセンのコポリマーであることに注意されたい)、本発明の樹脂1は、より広い分子量分布(3.5より大きいMw/Mn)及びより高いMFR(I
21/I
2は、32より大きい)を有することを示している。比較の樹脂7は、DOWLEX 2045Gであり、チーグラー−ナッタ触媒を使用して作製されているが、二峰性のTREFプロファイル及び30未満のMFRを有する。
【0305】
吹込フィルムにした場合、発明の樹脂1は、良好な落錘衝撃値、良好な剛性を有し、低い剪断減粘性指数(SHI)及び高い比押出速度によって示されたように加工が容易である。
【0306】
表3に示されたとおり、本発明の樹脂1の落錘衝撃は、600g/mil超できわめて高く、比較の樹脂2とほとんど同じくらい良好であり、格段により低いメルトフロー比(I
21/I
2)を有する。本発明の樹脂1は、類似したメルトインデックス及び/又はメルトフロー比の比較の樹脂と比べてもより高い落錘衝撃値を有する。例えば、それぞれ473g/mil及び317g/milの落錘衝撃値を有する比較の樹脂3(Enableタイプの樹脂)及び比較の樹脂4(LLDPE及びHPLDPEの溶融ブレンド)を、本発明の樹脂1と比較されたく、この本発明の樹脂1は、638g/milの落錘衝撃値を有する。
【0307】
本発明の樹脂1の剛性は、1%TD及びMD割線弾性率によって示されたとおり、比較の樹脂2、3又は4と比べてより高い。表3に示されたとおり、本発明の樹脂1は、1milの吹込フィルムにした場合、190MPaより大きい1%MD割線弾性率を有する。比較の樹脂2、3及び4は、1milの吹込フィルムにした場合、それぞれ137、187、及び167MPaの1%MD割線弾性率を有する。発明の樹脂1は、1milの吹込フィルムにした場合、210MPaより大きい1%TD割線弾性率を有する。比較の樹脂2、3及び4は、1milの吹込フィルムにした場合、それぞれ166、208及び208MPaの1%TD割線弾性率を有する。
【0308】
加工性に関して、本発明の樹脂1は、より低いメルトフロー比を有するブレンドされていない比較の樹脂2に比べて、より低いヘッド圧においてより高い比押出速度で押し出される(表3を参照されたい)。発明の樹脂1は、比較の樹脂3と比べて類似の比押出速度を有するが、より低い押出機ヘッド圧を有する。比較の樹脂4は、直鎖低密度樹脂LLDPE及び、長鎖分岐の存在のためにLLDPEに改善された加工性を付与することが知られている5wt%の高圧低密度ポリエチレン(HPLDPE)樹脂を含む溶融ブレンドである。それにもかかわらず、発明の樹脂1は、比較の樹脂4に比べてより低い押出機ヘッド圧においてさえより高い比押出量を示す(表3を参照されたい)。
【0309】
発明例2〜8
一連のさらなる実験において:i)触媒システムに存在するArmostat−1800の量(重合触媒システムの合計重量に対する重量%で表した);ii)シリカ支持体に担持されている有機遷移金属触媒(Tiのmmol/重合触媒システムの1グラムで表した);及びiii)触媒活性剤、メチルアルミノキサンMAOの量(重合触媒システムの合計重量に対する重量%Alで表した)を変化させて、触媒システムが、その配合の変化にどのように呼応するかを確かめた。発明例2〜8に使用された触媒システムは、Armostat−1800、有機遷移金属(Ti担持量)又は触媒活性剤(Al担持量)の濃度を変えたことを除いて(表4Aを参照されたい)、発明例1に記載された触媒システムと実質的に同じ方法で、同じホスフィンイミン触媒を使用して調製した。合計7種のさらなる触媒システム配合物(表4A)を調製し、1−ヘキセンのエチレンコポリマーを、発明例1について上述されたものと同様に調製した(重合プロセス条件について表4Bを参照されたい)。
【0310】
触媒システム配合データ及び重合データが、それぞれ表4A及び表4Bに与えられており、発明例2〜8に対応する(C2=エチレン;C6=1−ヘキセン;N2=窒素;H2=水素;C6/C2は、反応器へのこれらの成分のモルフィード比である)。得られたエチレンコポリマー(発明のエチレンコポリマー2〜8)の選択した生成物パラメーターが、表5に提供されている。
【表5】
【表6】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【0311】
表2及び5で分かるように、全ての本発明の樹脂1〜8は、逆転のコモノマー分布、多峰性(例えば、三峰性)TREFプロファイル、40から70wt%の範囲内のCDBI
50、32から50の範囲内のMFR、3.5から6.0の範囲内のM
w/M
n及びわずかなメルトインデックス(1.0未満のI
2)を有する。表2及び5に示された本発明の樹脂1〜8のそれぞれは、広い単峰性の分子量分布も有する(本発明のエチレンコポリマーの代表として
図2を参照されたい)。
【0312】
発明の樹脂1についての代表的なTREF曲線が、
図1に示されている。発明の樹脂1についての代表的なGPC曲線が、
図2に示されている。発明の樹脂1についての代表的なGPC−FTIR曲線が、
図3に示されている。
【0313】
本発明のコポリマーの良好な加工性は、動的機械分析(DMA)によって測定されたvan Gurp−Palmen (VGP)溶融レオロジー挙動、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)屈折率(RI)データ及びメルトフロー比(I
21/I
2)情報に基づくポリマー構造のモデルにおいても明らかである。上記モデルは、ポリマー加工性モデルであり、比較的低い加工性及び比較的高い加工性を有する樹脂を見分けるために有益に適用し得る「加工性改善指数」(χ)をポリマーに提供する。
【0314】
van Gurp−Palmen分析は、ポリマー溶融物形態によって反映されたポリマー構造(例えば、分子量分布、直線性など)を研究するための手段である。VGP曲線は、単に、位相角(δ)対複素弾性率(G
*)のプロットであり、ここで、二つのレオロジーパラメーターは、動的機械分析(DMA)において振動数掃引試験を使用して得られる。加工性モデルは、複素弾性率(G
*)及び位相角(δ)などのVGPパラメーターへの樹脂構造の影響を説明する。基本曲線からのVGP曲線のシフト又は複素弾性率のミッドレンジにおける位相角の減少は、ポリマー溶融物形態における変化を示すことがある。
【0315】
本加工性モデルは、位相角(δ)対複素弾性率(G
*)プロット、及び位相角(δ)対複素粘度(η
*)プロットの間で得られる交点として定義されるVGPクロスオーバーレオロジーパラメーターの測定をさらに必要とする。線形粘弾性理論に基づき、VGPクロスオーバーレオロジーパラメーター(δ
XO)は、1に等しい振動数(ω)において生ずる。それは、G
*及びη
*が等価である位相角である。従って、VGPクロスオーバーレオロジーパラメーターは、単一のDMA試験で求めることができる。
【0316】
Exceed 1018(比較2)及びEnable(比較3)の商品名で販売されている樹脂のVGPクロスオーバープロットが、それぞれ
図4A及び4Bに含まれている。発明の樹脂1のVGPクロスオーバープロットが、
図4Bに示されている。比較例1に従って作られた比較の樹脂1のVGPクロスオーバープロットが、
図4Aに含まれている。最後に、Elite 5400G(比較6)の商品名で販売されている樹脂が、
図4Bに含まれている。VGPクロスオーバーポイントは、コポリマー構造によって決まる。一般的に、発明のコポリマー1及び比較の樹脂3などの加工がより容易な樹脂について、δ
XOとして定義されるクロスオーバーが起こるVGP位相角は、比較のコポリマー1及び2などの加工がより難しい樹脂と比べてより低い(
図4A及び4Bを比較されたい)。加工がより容易な樹脂について、位相角−複素粘度曲線の形状、及び位相角−複素弾性率曲線の形状は、加工がより難しい樹脂について得られる曲線と比べて、幾分はずれており、互いによりよく似た鏡像である(
図4Aにおける曲線を
図4Bにおける曲線と比較されたい)。
【0317】
クロスオーバー複素弾性率(G
*XO)(又は代わりに、クロスオーバー複素弾性率η
*XO)は、次のようにメルトインデックス、I
2と関係があることが見いだされた。
(1) G
*XO=6798.3(I
2)
−0.9250
従って、より高い分子量のポリマーは、より大きいクロスオーバー複素弾性率を有する。方程式1における関係は、ポリマー密度又は分子量分布に関係なく適用できることが見いだされた。
【0318】
VGPクロスオーバー位相角δ
XOは、いくつかの樹脂パラメーターの関数である。ポリマー密度は、他のポリマー構造の(又は微細構造の)効果から独立して、クロスオーバー位相角に対して限定された効果を有することが見いだされた。分子量分布(M
w/M
n)は、VGPクロスオーバー位相角への効果を有することが見いだされた。
【0319】
クロスオーバー位相角及びクロスオーバー複素弾性率プロットは、良好な加工性を有する樹脂及び不十分な加工性を有する樹脂は、二つのVGPクロスオーバーパラメーターに制限を課すことによって、かなり良く区別することができることを示している。従って、加工が比較的容易な樹脂は、不等式(2)を満足する。
(2) δ
XO≦76.6−9×10
4(G
*XO)。
【0320】
δ
XOに対する分子量分布(M
w/M
n)及び重量平均分子量(M
w)の効果を取り除くために、従って加工性に対するポリマー構造の(又は微細構造の)効果を求めるために、これらの効果は、δ
XOの測定から切り離し、半定性的尺度で異なるM
w/M
n及びM
wの樹脂の順位付けを可能にしなければならない。ポリマー構造の(又は微細構造の)効果の半定量的測定のために、溶融レオロジーパラメーターに対する分子量及び分子量分布の効果を切り離す実験を設計しなければならない。
【0321】
δ
XOの複合構造的拘束は、それらの溶融レオロジー挙動に応じて樹脂を二つの群に分けるために導かれる。メルトフロー比(I
21/I
2)の関数としてδ
XO、及び不等式(3)に従って数平均分子量(M
n)及び重量平均分子量(M
w)を表すことによって、発明の樹脂及び比較の樹脂を、異なる相対的な加工性を有する二つの群に再び分ける。
(3) δ
XO≦96−2.14[(MFR
0.5)+1×10
−4(M
w−M
n)]。
図5は、発明の樹脂1〜5並びに比較の樹脂1〜3及び5〜7について、方程式:δ
XO=96−2.14[(MFR
0.5)+1×10
−4(M
w−M
n)]の線のプロット並びにVGPクロスオーバー位相角(δ
XO)及び96−2.14[(MFR
0.5)+1×10
−4(M
w−M
n)]の値に一致するプロットデータを示している。
【0322】
不等式(3)は、溶融流れデータ及びGPCデータを含むことによって、δ
XOに対する分子量及び分子量分布の効果の切り離しを可能にする。結果として、互いに異なる分子量及び分子量分布の樹脂を、溶融流れ、DMA及びGPCデータのみを使用して、互いに順位付けすることができる。
【0323】
クロスオーバー位相角δ
XOは、一般的に、直鎖エチレン−α−オレフィンコポリマーのメルトフロー比及び分子量の合成関数と線形関係に従う。従って、理論に束縛されることを望むものではないが、DMAによって測定されたVGPクロスオーバー位相角へのあらゆる変化の原因は、溶融レオロジーに影響を与えるポリマー構造の他の態様にある。δ
XO値に対する構造(又は微細構造)のこのような態様の相対的効果は、不等式(3)によって定義される基準値からのより大きい負の偏差において明らかである。従って、不等式(3)は、クロスオーバー位相角に対する未定義の構造又は微細構造の効果に従ってエチレンコポリマーを順位付けすることを可能にし、ここで、それらの構造の/微細構造の効果は、分子量又は分子量分布を含まない。
【0324】
加工が容易である樹脂についてのVGP位相角δ
XOが異なる程度は、加工性改善指数(χ)を使用することによって評価することができる。本モデルによれば、加工性改善指数は、次の方程式4で半定量的に定義される。
(4) χ=96−2.14[(MFR
0.5)+1×10
−4(M
w−M
n)]/δ
XO。χ値は、ポリマー構造/微細構造効果から著しい加工性改善を示しているポリマーについて1に近く又はより大きく、ポリマー構造/微細構造効果からまったく又はほとんど加工性改善を示していない(例えば、約0.97未満)ポリマーについて1に満たない。表2及び5におけるデータが示すとおり、発明の樹脂1〜8、並びに比較の樹脂3及び6は、それぞれ、1.0より大きい加工性改善指数χを有し、一方、比較の樹脂1、2、5及び7は、1.0未満の加工性改善指数χを有する。これは、比較の樹脂1及び2と比較した、発明の樹脂1及び比較の樹脂3からの吹込フィルムに関係する、より高い押出速度及びより低い電流及び圧力と完全に一致する(表3を参照されたい)。従って、加工性に関して、発明の樹脂1、及び比較の樹脂3は類似しており、比較の樹脂1及び2に比べてより良い。
【0325】
上記に加えて、表2及び5に示されたとおり、本発明のエチレンコポリマー1〜8は、次の関係を満足するという事実がある。
(i)(M
w/M
n)≧68[(I
21/I
2)
−1+10
−6(M
n)];及び
(ii)δ
XO≦[80−1.22(CDBI
50)/(M
w/M
n)];
ここで、δ
XOは、クロスオーバー位相角であり、M
w、M
n、I
21、I
2及びCDBI
50は、全て上記に定義されたとおりである。表2に提供されたデータは、比較の樹脂1〜7のいずれも、条件:(i)(M
w/M
n)≧68[(I
21/I
2)
−1+10
−6(M
n)]又は(ii)δ
XO≦[80−1.22(CDBI
50)/(M
w/M
n)]のいずれも満足しないことをさらに示している。
【0326】
さらなる比較のために、発明のエチレンコポリマー1〜8が、
図6において、いくつかの知られている市販の樹脂に対してプロットされている。
図6は、発明の樹脂1〜8及びいくつかの知られている市販の樹脂について、方程式:(M
w/M
n)=68[(I
21/I
2)
−1+10
−6(M
n)]のプロット、及びM
w/M
n対68[(I
21/I
2)
−1+10
−6(M
n)]値のプロットを示している。比較のための
図6に含まれる市販の樹脂は、全て1.5以下のMI並びに0.916及び0.930g/cm
3の間の密度を有し、Elite(商標)、Exceed(商標)、Marflex(商標)、Starflex(商標)、Dowlex(商標)、SURPASS(商標)、SCLAIR(商標)、NOVAPOL(商標)、及びEnable(商標)などの商品名で販売されている樹脂である。
図6から分かるように、これらの市販グレードのいずれも、条件:(M
w/M
n)≧68[(I
21/I
2)
−1+10
−6(M
n)]を満足しない。対照的に、本発明の樹脂1〜8の全てが、条件:(M
w/M
n)≧68[(I
21/I
2)
−1+10
−6(M
n)]を満足する。本研究は、本発明のエチレンコポリマーの独特な構造を明らかにしている。
【0327】
さらなる比較のために、発明のエチレンコポリマー1〜8が、
図7において、いくつかの知られている市販の樹脂に対してプロットされている。
図7は、発明の樹脂1〜8及びいくつかの知られている市販の樹脂について、方程式:δ
XO=[80−1.22(CDBI
50)/(M
w/M
n)]のプロット、及びδ
XO対[80−1.22(CDBI
50)/(M
w/M
n)]値のプロットを示している。比較のための
図7に含まれる市販の樹脂は、全て1.5以下のMI並びに0.916及び0.930g/cm
3の間の密度を有し、Elite(商標)、Exceed(商標)、Marflex(商標)、Starflex(商標)、Dowlex(商標)、SURPASS(商標)、SCLAIR(商標)、NOVAPOL(商標)及びEnable(商標)などの商品名で販売されている樹脂である。図から分かるように、これらの市販グレードのいずれも、条件:δ
XO≦[80−1.22(CDBI
50)/(M
w/M
n)]を満足しない。対照的に、本発明の樹脂1〜8の全てが、条件:δ
XO≦[80−1.22(CDBI
50)/(M
w/M
n)]を満足する。本研究は、本発明のエチレンコポリマーの独特な構造をさらに明らかにしている。