【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドープされたSiO
2スラリーの製造方法であって、SiO
2粒子を水性液体中に含む懸濁液に、少なくとも1種のドープ溶液を連続して添加して、前記ドープされたSiO
2スラリーを形成する前記方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、前記ドープされたSiO
2スラリーの使用に関する。
【0003】
DE102004006017A1には、レーザー活性石英ガラスを製造するためのドープされたSiO
2スラリーが記載されている。前記石英ガラスを希土類金属酸化物または遷移金属酸化物でドーピングするために、高純度の、均一にドープされたSiO
2顆粒を使用する「粉末法(Pulver−Route)」が提案されている。ここで、SiO
2ナノ粒子とドーパントとを含む水性懸濁液から出発される。前記ドーパントの場合の出発化合物は、水溶性の水和化合物のAlCl
3・6H
2OおよびNdCl
3・6H
2Oの形態で添加される。
【0004】
DE102007045097A1に記載の相応の方法では、ドーパントは、溶解された形態で、およびドーパント水溶液を時間で制御して滴加して、絶えず撹拌ながら、均一化されたアルカリ性のSiO
2懸濁液に供給される。
【0005】
しかし、滴下ドーピングの技術は、スラリーが動かされる場合も、局所的にしか作用しない、それというのは、前記ドープ溶液のイオンが、前記スラリーのSiO
2粒子にきわめて迅速に結合されるからである。したがって、前記スラリー中のSiO
2粒子のドーパント濃度は、局所的に異なっていることがあり、このことは、前記スラリーをさらに加工して焼結石英ガラスにした後に、この石英ガラス中の相応の不均一性により明らかである。
【0006】
したがって、本発明の基礎をなす課題は、最適なドーパント分布を保証する、ドープされたSiO
2スラリーの製造方法を提供することである。
【0007】
さらに、本発明の基礎をなす課題は、前記ドープされたSiO
2スラリーの好適な使用を提供することである。
【0008】
前記課題は、前記方法に関して、本発明によれば、生じるドープされたSiO
2スラリーが絶え間なく動かされる間、前記SiO
2懸濁液および/または前記ドープ溶液が、噴霧物(Spruehnebel)として相互に作用し、その平均液滴径が10μm〜100μmの範囲にあることにより解決される。
【0009】
本発明による方法によって、前記ドープ溶液の微細な分布が、前記ドーププロセスの間に達成される。基本成分である前記ドープ溶液または前記SiO
2懸濁液は、噴霧物装置を用いて噴霧されるため、10μm〜100μmの範囲の平均液滴径を有する小さな液滴が生成される。作業圧力および流量に関しては、噴霧ノズルの調節によって平均液滴径を調節することができる。
【0010】
水性の霧状物(Nebel)という言葉は、通常、液滴径が10μm〜40μmの範囲の場合に用いられる。それと比べて、「標準の」雨滴の大きさは、約600μmであるため、ピペットを用いる先行技術による液体の液滴をドーピングする場合、約2〜5ミリメートルの液滴径が予想されうる。
【0011】
本発明の第一の代替方法では、噴霧物として噴霧されたドープ溶液は、前記SiO
2懸濁液に向けられ、このSiO
2懸濁液は、この懸濁液側で機械的な撹拌装置を用いて強く撹拌される。したがって、きわめて小さい液滴を有する噴霧物の範囲は、前記SiO
2懸濁液の比較的大きい表面に広がり、これによって、前記スラリーにおける均一なドーパント分布が達成される。ドープ溶液の損失を最小限に抑えるために、前記ノズルは、前記SiO
2スラリー表面上を制御して動かされる必要がある。
【0012】
代替的に、基本成分の前記SiO
2懸濁液が噴霧されて噴霧物にされ、前記ドープ溶液に吹き付けられてもよい。ここで、前記ドープ溶液は絶え間なく撹拌される。
【0013】
前記両方の代替方法は、最適なドーパント分布を有するドープされたSiO
2スラリーをもたらす。
【0014】
前記課題は、上述の別形の他に、前記SiO
2懸濁液も前記ドープ溶液も噴霧物として相互に作用し、ここで、この両方の噴霧物が、10μm〜100μmの範囲の平均液滴径を有することによって解決することもできる。
【0015】
本発明による方法によって、前記SiO
2懸濁液の液滴と前記ドープ溶液の液滴とが特に強く相互に作用する、それというのは、前記噴霧物中の前記両方の成分の表面積が最大になるからである。前記噴霧物中では、前記両方の成分は最適に混ざり合っており、ここで、最小液滴は集合して比較的大きな液滴になり、ドープされたSiO
2スラリーとして受容器の下部に集まる。
【0016】
言及された、前記液滴同士の相互作用は、液滴の大きさが小さければ小さいほど強くなる。このことから、前記噴霧物の平均液滴径が、10μm〜40μmの範囲にある場合が特に適していることが分かった。
【0017】
前記SiO
2懸濁液の噴霧物と前記少なくとも1種のドープ溶液の噴霧物との混合は、まだ霧状物の段階で、つまり、前記噴霧物の液滴が、生じるドープされたSiO
2スラリーの表面と合する前に行われるのが好ましい。
【0018】
本発明のさらなる有利な実施態様は、前記SiO
2懸濁液および/または前記ドープ溶液が、複数の噴霧ノズルを使用して噴霧されて噴霧物にされることにある。
【0019】
使用する噴霧ノズルが1つだけではないことによって、効率的な作業方法が保証される。さらに、複数の噴霧ノズルは、流量、作業圧力、および空間方向に関して異なる方法で調節されてよく、これによって、前記噴霧物の液滴同士およびそれぞれ噴霧されない成分との接触および相互作用が最適化される。
【0020】
さらに、前記噴霧物の生成において、0.5bar〜10barの範囲、好ましくは5bar未満の範囲の作業圧力で実施される場合が適していることが分かった。さらに、前記噴霧物の生成において、0.2l/h〜4.0l/hの範囲の流量で、好ましくは0.5l/h未満の流量で実施するのが有利である。
【0021】
作業圧力および流量の両方のパラメーターは、主として、液滴の大きさのスペクトルおよび前記方法全体の効率を決定づけるものである。
【0022】
さらに、均一なドーパント分布に関して、前記SiO
2懸濁液または前記ドープ溶液または前記少なくとも部分的にドープされたSiO
2スラリーが、1つまたは複数のプロペラ撹拌機を使用することによって動かされる場合が有利であることが分かった。
【0023】
前記措置によって、さらに均一化され、および場合によって、ドープされたSiO
2粒子のSiO
2スラリー中での沈殿が阻止される。
【0024】
前記SiO
2懸濁液からの最適な噴霧物生成を保証するため、前記SiO
2懸濁液および/または前記ドープ溶液を、前記噴霧物を生成する前にろ過するのが好ましい。
【0025】
ろ過することによって、噴霧物生成において妨害または別の不均一性をもたらしうる、場合によっては起こり得る比較的粗いSiO
2粒子が分離される。例えば、前記噴霧ノズルは、粒子が過度に大きい場合、詰まることがあるか、または所望の液滴径を調節することができない。前記ドープ溶液中にも、製造に伴って、ろ過により除去される比較的粗い不純物が存在することがある。
【0026】
特に均一のSiO
2懸濁液をベース材料として導入するためのさらなる好ましい措置は、前記SiO
2懸濁液のpH値を12より大きくなるように調節することにある。これは、例えば、濃縮アンモニア溶液を添加することにより達成される。それにより、前記SiO
2粒子の周りの電位が強まり、これによって、前記粒子が互いに反発して、沈降傾向が弱まる。
【0027】
本発明による方法による、ドープされたSiO
2スラリーの主要適用分野は、ドープされた石英ガラス、特にレーザー活性石英ガラスの製造である。これには、ホスト材料の石英ガラス中で、レーザー照射の強化をもたらすドーパントが含まれている。これは、一般に、希土類カチオン(ランタノイド)および/またはいわゆる遷移金属のカチオンである。多くの場合、さらなるドーパント(例えば、アルミニウム、リン、およびホウ素の酸化物)が、石英ガラスの粘度および屈折率を調節するために導入される。ここで、失透および小こぶ形成(Knoetchenbildung)を回避して、それと同時に現れる、強化されるレーザー照射の可能な限り高い強化能力(Verstaerkungsleistung)および少ない減衰(Daempfung)を達成するために、ドーパント分布の均一性は特に高く要求される。レーザー活性石英ガラスは、いわゆるレーザーロッド、ファイバーレーザー、またはディスクレーザーで使用することができる。
【0028】
さらに、前記ドープされたSiO
2スラリーは、さらにまた、特別な石英ガラスるつぼ、フィルターガラス、シンチレーション材料、蛍光石英ガラス、粘度または屈折率を調節された石英ガラス、偏波保持の光ファイバー(光伝送路)のための応力ロッド(Stressstaebe)の製造、ならびに、ドーパントそれぞれの作用に基づく、特別な磁気的または電気的な特性を有する石英ガラス材料の製造に好適である石英ガラス顆粒の製造で使用される。
【0029】
実施例
以下において、本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。
【0030】
例1
Yb
2O
3およびAl
2O
3でドープされた石英ガラスを製造するため、超純水中にSiO
2アグリゲートの形態として散在しているSiO
2粒子の懸濁液を製造する。このSiO
2アグリゲートは、平均粒径が10μmであり、5nm〜100nmの範囲の粒径を有するSiO
2一次粒子からなっている。濃縮アンモニア溶液を添加することによって、pH値を14に調節する。このアルカリ性懸濁液の固体含有量は、16質量%である。
【0031】
前記均一化されたアルカリ性懸濁液に、ドーパントを、溶解された形態で、およびAlCl
3およびYbCl
3(モル比6:1)のドープ水溶液の噴霧物を添加することにより供給した。前記SiO
2懸濁液は、その間、プロペラ撹拌機で強く撹拌する。噴霧物を生成するため、前記ドーパント溶液を、噴霧ノズルを用いて噴霧し、ここで、作業圧力2barおよび流量0.8l/hを調節する。このようにして生成された噴霧物は、10μm〜40μmの平均径を有する液滴を含んでいる。この方法により、最適に均一にドープされたSiO
2スラリーが得られることが保証される。
【0032】
前記懸濁液のpH値が高いため、前記両方のドーパントの水酸化物がAl(OH)
3およびYb(OH)
3の形態で直ちに混合沈殿する。このようにして、前記懸濁液中で(この懸濁液のSiO
2含有量に対して)Al
2O
3 1モル%およびYb
2O
3 0.25モル%のドーパント濃度が調節される。
【0033】
このようにしてドープされたSiO
2スラリーをさらに加工して顆粒にし、この顆粒は、さらにまた、焼結させて石英ガラス材料にして、レーザー活性石英ガラスとして使用される。本発明による噴霧ドーピングに基づく、ドープされたSiO
2スラリーを用いて製造されたドープされた石英ガラスは、先行技術による滴下ドーピングによる場合の不均一性よりもはるかに低い不均一性を示している。したがって、例えば、噴霧ドープされたSiO
2スラリーを出発材料として有する、厚さ10cmの希土類ドープされた石英ガラス試料を通して、通常の大きさの文字はなおも判読可能である。そうでなければ、ドーパントの不均一な分布に起因する条痕による拡散のため判読は不可能である。
【0034】
例2
例1に記載の固体含有量16質量%のアルカリ性SiO
2懸濁液から、例1のドープ溶液からと同じく噴霧物を生成する。噴霧する前に、このSiO
2懸濁液および前記ドープ溶液から、15μmより大きい粗粒子または別の不純物を分離するために、成分をそれぞれ相応のメッシュ幅のプラスチックふるいに流し込んでろ過する。必要であれば、特に前記SiO
2懸濁液をろ過する場合、プラスチックヘラを用いてふるいの通過が補助されてよい。次に、前記SiO
2懸濁液を、作業圧力4〜5bar、および装入量約2.4l/hで噴霧する。ドープ溶液の場合、それに反して作業圧力を2barおよび流量を0.8l/hに調節する。複数の噴霧器ノズルを、前記ドープされたSiO
2スラリーの受容器の上で斜め下向きにして、互いに約5〜10cmの間隔で位置調節する。このようにして生成された噴霧物は、10μm〜40μmの平均径を有する液滴を含んでいる。
【0035】
前記噴霧器ノズルは、ドープ工程の間、その角度を互いに調節されてよい。さらに、前記ノズルを、あらかじめ決められたパターンにしがたって動かすことも可能であり、それによって、噴霧物のより強い相互作用が可能である。SiO
2懸濁液およびドープ溶液からの噴霧物の液滴は、前記受容器の上部範囲では互いに相互作用をして、最終的に受容器の底に沈む。前記受容器には、さらに、そこで集められたドープされたSiO
2スラリーを動かす撹拌機が取り付けられている。このようにしてドープされたスラリーを、例1と同じようにさらに加工して、ドープされたSiO
2顆粒にし、この顆粒は、続いて様々な方法で、ドープされた石英ガラス材料の製造に適用される。