【実施例1】
【0010】
空気調和機は、施工後、実際の運用を始める前に、施工が正しく行われたか、また、空気調和機は期待通りの能力で稼動をしているかを、試運転によって確認する必要がある。そのためには、サービスマンは現地に赴き、空気調和機を稼動させ、試運転中の稼働状況を見守らなくてはならない。ビルやホテル、テナント向けの空気調和機は、1つの室外機に対し複数の室内機が存在する構成であり、それぞれの稼働状況を調べていくのは、サービスマンにとって非常に負担が大きい。そのため、サービスマンをサポートする専用装置が必要となる。
【0011】
この専用装置はたとえば、空気調和機の通信線に接続する専用アダプタと、空調機の圧力・温度センサの値を表示するパソコンで構成される。しかし専用装置は高価であり、設置の手間もかかり、試運転のために導入するにはコストが大きい。そのため、小規模な業者の場合、専用装置を用いることなく、経験に基づいて空調機の試運転と稼動状況の判断を行ってきた。試運転状況をサービスマンが自身で判断するためには、冷凍サイクルや空調機の動作原理を理解する必要があり、多くの教育時間や現場経験を必要とする。
【0012】
そのため、本発明においては、導入、運用に大きなコストがかからず、作業者が試運転状況を判断するのに必要な情報を的確にわかりやすく表示することができる試運転システムの運転情報表示装置とプログラムを提供する。本実施例において、その試運転システムの構成を
図1に示す例を使って掘り下げる。
【0013】
図1に示す空気調和機試運転システムは、室外機1(1a、1b)、室内機2(2a−1〜2a−3、2b−1〜2b−3)、集中制御機器3、無線アダプタ4、モバイル端末5、空調機通信用伝送線6、広域無線基地局7、インターネット8、管理サーバ9、情報端末10、プリンタ11から構成される。
【0014】
室外機1と室内機2は、冷媒配管により接続され、冷凍サイクルを形成する。
図1では室外機1が2台、室内機2が6台となっているが、各々1台以上存在すれば良い。室内機2にはリモコンが接続されるが、
図1では省略している。
【0015】
集中制御機器3は、空調機通信用伝送線6を介して室外機1、室内機2と接続され、接続された機器の監視及び制御を行う。例えば、単一または複数機器に対して、運転/停止、運転モード切り替え、設定温度変更、風向きや風量の変更、リモコン操作の禁止設定、スケジュール設定等を行うことができる。また、接続された機器の状態表示やアラーム表示を行うことができる。
【0016】
無線アダプタ4は、空調機通信用伝送線6を介して室外機1、室内機2と接続される。また、無線アダプタ4は、無線通信によりモバイル端末5とデータ交換を行う。無線通信方式は、例えば、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)である。なお、無線アダプタ4とモバイル端末5との間に無線アクセスポイント(無線基地局)を介する構成でも良い。無線アダプタ4は、モバイル端末5の指示に応じて、室外機1、室内機2の現在状態情報をモバイル端末5に送信したり、室外機1、室内機2に対する制御を行う。
【0017】
モバイル端末5は、さらに、広域無線基地局7を介して、インターネット8との接続が可能である。無線通信方式は、例えば、3G(3rd Generation)、LTE(登録商標)、WiMAX(登録商標)である。
【0018】
管理サーバ9は、インターネット8と接続され、モバイル端末5とデータ交換を行う。管理サーバ9は、モバイル端末5から送信された空気調和機の接続情報等を保持する。また、管理サーバ9は、空気調和機の機種毎のデータベースを保持し、モバイル端末5の指示に応じて、モバイル端末5に送信する。
【0019】
情報端末10は、インターネット8と接続され、管理サーバ9と通信可能である。情報端末10を使用して、管理サーバ9に保持された空気調和機の接続情報や、空気調和機の機種毎のデータベースを参照したり、管理サーバ9に保持された空気調和機の機種毎のデータベースを更新したりできる。
【0020】
プリンタ11は、インターネット8と接続され、モバイル端末5や情報端末10と通信可能である。モバイル端末5の指示に応じて、モバイル端末5に表示した内容をプリンタ11に出力することが可能である。なお、空気調和機試運転システムには、換気機器を含んでも良い。
【0021】
図2は、上記試運転システムのうち、運転情報の表示装置として利用するモバイル端末5の構成を示す図である。モバイル端末5が備えるモバイル端末制御部201は、第一無線通信部202、第二無線通信部203、表示部204、操作部205、記憶部206を制御する。第一無線通信部202は、無線アダプタ4と無線通信を行う。無線通信方式は、例えば、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)である。第二無線通信部203は、広域無線基地局7を介して、インターネット8に接続する。無線通信方式は、例えば、3G(3rd Generation)、LTE(登録商標)、WiMAX(登録商標)である。
【0022】
表示部204は、LCD(Liquid Crystal Display)やLED(Light Emitting Diode)等から構成され、各種情報を表示する。操作部205は、ボタン、スイッチ、タッチパネル等から構成され、ユーザからの入力を受け付ける。記憶部206は、モバイル端末5の制御プログラムや各種設定値、無線アダプタ4から取得した室外機1及び室内機2の現在状態情報、管理サーバ9から取得したデータを記憶する。モバイル端末5の制御プログラムには、無線アダプタ4と通信して空調機の管理を行う空調管理アプリケーションが含まれる。空調管理アプリケーションは、モバイル端末5にプリインストールされていても良いし、管理サーバ9からダウンロードしても良い。
【0023】
なお、表示部204、操作部205、記憶部206が別装置となる構成でも良い。タッチパネルのように、表示部204が操作部205と一体化していても良い。また、本実施例における表示装置は、なんらかの手段で空気調和機の運転情報を取得できればよい。そのため、サーバとの通信は必須でなく、第2の無線通信部203はなくてもかまわない。また、本実施例では無線アダプタ4から第1の無線通信部202を介して空気調和機の運転情報を取得しているが、空気調和機から運転情報を得られる手段が別途存在する場合、無線通信部202は別の情報通信手段に置き換えられても良い。
【0024】
上記の構成の試運転システムを想定する場合、たとえば運転情報表示装置として利用するモバイル端末5は、無線アダプタ4から無線通信によって無線通信部202で運転情報を受け取り、記憶部206に格納するとともに、表示部204に出す情報を定期的に更新するようモバイル端末制御部201によって制御される。
【0025】
上記により、サービスマンはモバイル端末上で常時現在の試運転状況を把握可能になる。スマートフォン等の、広く普及している汎用モバイル端末を運転情報表示装置に利用することによって、試運転システム利用のためにかかるコストを減らすことができる。また、通信範囲内にさえいれば、一箇所で監視し続ける必要がなくなり、サービスマンの負担が減る。
【0026】
しかしながら、スマートフォンのようなモバイル端末は、画面の大きさに限りがあり、PCのような画面が大きい端末と同じ内容の画面を表示することは難しい。よって必要な情報のみを、小さい画面でも見やすく配置して表示する必要がある。そこで以下においては、この問題を解決する本実施例の試運転情報の表示装置について、一般的に普及しているタッチパネル搭載のスマートフォンを一例として説明する。
【0027】
図3は、試運転システムの運転情報を表示する画面を説明する図である。ユーザが操作部205に対して所定の操作をすることで、この信号をモバイル端末制御部201が受け付け、空調機試運転プログラムが起動される。空調機試運転プログラムはモバイル端末制御部201によって実行されるアプリケーションプログラムである。空調機試運転プログラムの起動後、ユーザが操作部205に対して所定の操作をすることで、モバイル端末制御部201は、表示部204(運転情報表示画面300)を運転情報表示領域301が少なくとも縦に2つ並んだ状態で表示する。
【0028】
すなわち、モバイル端末5(表示装置)のモバイル端末制御部201は、横方向に時間情報を表示させるとともに、該時間情報に対応する第1の運転情報(たとえば高圧側の圧力情報)を表示する第1の運転情報表示領域と第2の運転情報(たとえば室内機吸込側の空気温度)を表示する第2の運転情報表示領域とを縦方向又は横方向に並んで表示するように表示部204(運転情報表示画面300)を制御する。
【0029】
ここでは画面の上部に配置される運転情報表示領域を第1の運転情報表示領域、その下に表示される運転情報表示領域を第2の運転情報表示領域と呼ぶ。また、モバイル端末制御部201は、表示部204(運転情報表示画面300)をそれぞれの運転情報表示領域301が、運転時間を表す横軸と、運転情報を表す縦軸から成るグラフで表現されるように制御する。ここではグラフの形で表現される運転情報を302と呼んでいる。
【0030】
スマートフォン等のモバイル端末は縦長の画面を持つことが多いため、上記したように縦方向に運転情報表示領域を配置することで、複数の運転情報表示領域を同一画面に無理なく表示でき、異なる運転情報表示領域間の運転情報の比較を容易に行うことができる。なお、縦長のモバイル端末を横にして使う場合も考えられるため、この場合には上記した第1の運転情報表示領域と第2の運転情報表示領域とを横方向に並んで表示するように表示部204が制御されることが望ましい。以下の実施例においては、これらの表示領域が縦方向に並んだものとして説明するが、横方向に並ぶようにした場合についても同様に適用可能である。
【0031】
試運転状況の判断に重要な試運転時間を横軸として固定することで、縦に並んだ複数の運転情報表示領域301の同時刻での運転情報がすぐに把握でき、より容易に比較ができるようになる。
【0032】
モバイル端末5は、運転時間経過に伴い、新しい運転情報を一定時間間隔で無線アダプタ4から無線通信部202で受信し、取得した運転情報を記憶部206に格納するとともに、表示部204に表示される運転情報グラフ302を更新するようモバイル端末制御部201によって制御される。
【0033】
具体的に説明すると運転情報表示領域301において、横軸に対応して表示される時間は、それぞれの時刻表示領域に一方の側が新しい時間で他方の側が古い時間となるように、所定の時間間隔で表示され、これに対応した運転情報が表示されるようにモバイル端末制御部201によって表示部204が制御される。たとえば第1の時刻表示領域に10時00分00秒、その右側の第2の時刻表示領域に10時00分20秒、さらにその右側の第3の時刻表示領域に10時00分40秒が表示され、この第3の時刻表示領域が最新の時刻を表示するものとする。そうすると、20秒に1度、時刻表示の更新がなされ、第3の時刻表示領域には最新の時刻(10時01分00秒)が表示され、第2の時刻表示領域に10時00分40秒、その左側の第1の時刻表示領域に10時00分20秒と表示される。
【0034】
つまり、所定のタイミングで横軸に対応して表示される時刻は最新のものに更新され、これに対応して運転情報も更新される。そして最も古い時刻表示領域に表示された後、その時刻は表示部には表示されなくなるようにモバイル端末制御部201によって表示部204が制御されるものである。これにより、サービスマンは、常に最新の運転時間を把握できるとともに、運転時間に対する運転情報の経過を把握できる。
【0035】
なお、横方向について操作部205に対して古い時間方向にスクロール操作をすれば、これがモバイル端末制御部201に受け付けられ、スクロール操作の大小に応じて横軸の時刻表示領域の時刻表示を古いものに変更するとともに、これに対応する運転情報を表示するように表示部204を制御する。逆にこの状態から操作部205に対して新しい時間方向にスクロール操作をすれば、これがモバイル端末制御部201に受け付けられ、スクロール操作の大小に応じて横軸の時刻表示領域の時刻表示を新しいものに変更するとともに、これに対応する運転情報を表示するように表示部204を制御する。これによりサービスマンは過去の運転情報についても容易に把握することが可能となる。
【0036】
また、運転情報表示領域301のいずれかの位置には、その運転情報表示領域301内に表示される運転情報を持つ運転機の名称が表示されるように、表示部204(運転情報表示画面300)は制御される。本実施例では、図のように運転情報表示領域301の上部に運転機名が表示される。なお、本実施例では、1つの室外機に複数の室内機が連なる構成を考え、室外機の運転機名を室外機、室内機の運転機名を、室内機1、室内機2のように表記している。
【0037】
スクロールバー303は、第1、第2以外の運転情報表示領域を、スクロールにより表示部204に表示するよう制御するために使用する。すなわちユーザによりスクロールバー303(スクロール手段)に対して縦方向(横画面の場合には横方向)にスクロール操作があった場合に、モバイル端末制御部201は、第1の運転情報(
図3では高圧側の圧力情報)及び第2の運転情報(
図3では室内機吸込側の空気情報)の運転情報を表示部204に表示させるものである。ただし、このスクロールバー303は必須の構成要件ではなく、たとえばタッチパネルで構成される表示部204への上下スライド動作により表示部の表示内容を動かすようモバイル端末制御部201が制御できる場合は、スクロールバー303はなくても構わない。
【0038】
上記のように表示部204に表示する運転情報表示領域を絞り、スクロールによって表示されていなかった運転情報表示領域を表示部204に表示できるようにすることで、小さい画面での運転情報の確認がしやすくなる。
【0039】
ここで、モバイル端末5(表示装置)のユーザにより操作部205に対して時間情報のうち所定の時間を選択する選択操作があった場合に、モバイル端末5(表示装置)のモバイル端末制御部201は、選択された所定の時間に対応する第1の運転情報(たとえば高圧側の圧力情報)又は第2の運転情報(たとえば室内機吸込側の空気情報)の位置を示す指標情報304を表示するように表示部204を制御する。
【0040】
あるいは、モバイル端末5(表示装置)のユーザにより操作部205に対して、第1の運転情報表示領域301内(
図3では高圧側圧力情報表示領域)における時間情報を表す横軸の上下領域の任意の箇所を選択する選択操作があった場合に、モバイル端末5(表示装置)のモバイル端末制御部201は第1の運転情報表示領域301において、選択された箇所に対応する時間情報又は運転情報の位置を示す指標情報304を表示するように表示部204を制御しても良い。なお、この指標情報304は、同一の運転時間における運転情報の位置を示すものであれば、
図3で示したような線でも、何らかの形をしたマーカーでも良い。また、この指標情報304の表示対応を操作部205により操作することで任意に設定できることが望ましい。
【0041】
指標情報304が示す運転時間と、その時間に対応する運転情報の値は、モバイル端末制御部201によって、運転情報表示領域301のいずれかの地点に、指標位置運転情報305として表示される。指標位置運転情報305は運転情報表示領域301内のどこに配置するように制御されても良く、たとえば運転情報表示領域301の右端や、指標の位置の近くに配置しても良い。運転時間の値と運転情報の値を同一の位置に表示する必要もなく、各軸上にそれぞれの値を示すように端末制御部201によって制御されても良い。なお、指標位置運転情報305は、指標情報304が存在するすべての運転情報表示領域301で表示するように制御される。
【0042】
サービスマンは、表示部204に表示される指標情報304と指標位置運転情報305により、グラフの細かい目盛りを読むことなく、瞬時に所定の運転時間に対する運転情報の正確な値を知ることができる。
【0043】
第1および第2の運転情報表示領域301のいずれかで、操作部205によって指標情報304を表示する操作がなされた場合には、操作がなされていない運転情報表示領域301においても、同じ運転時間の位置に指標情報304が表示されるように、モバイル端末制御部201は制御を行うようにすることが望ましい。画面上の運転情報表示領域301に指標情報304が表示されている限りは、スクロールによって新たに表示部204に現れる運転情報表示領域にも、同様の指標情報304が表示されるように制御される。
【0044】
より具体的に説明すると、モバイル端末5(表示装置)の操作部205に対して第1の運転情報表示領域301内(
図3では高圧側圧力情報表示領域)の所定の箇所を選択する選択操作があった場合に、モバイル端末制御部201は、第1の運転情報表示領域301内において、選択された所定の箇所に対応する時間情報又は前記第1の運転情報(
図3では高圧側圧力情報)の位置を示す第1の指標情報304を表示するように表示部204を制御する。そしてこの状態でモバイル端末制御部201は、第2の運転情報表示領域内(
図3では室内機吸込側空気温度情報表示領域)においても、選択された所定の箇所に対応する時間情報又は前記第2の運転情報(
図3では室内機吸込側空気温度)の位置を示す第2の指標情報304を合わせて表示するように前記表示部を制御するものである。なお、詳細な説明は省略するが、第2の運転情報表示領域301内(
図3では室内機吸込側空気温度)の所定の箇所を選択すると同様に第1の運転情報表示領域301内(
図3では高圧側圧力情報表示領域)に指標情報304が表示されるものである。
【0045】
すべての運転情報表示領域301で同一の運転時間に対する指標情報304が表示されることで、運転情報の正確な比較と異常判断が行いやすくなる。たとえば、サービスマンがある運転情報表示領域301で異常値の発生時間に指標情報304を合わせると、すべての運転情報表示領域で同一時間に対する指標情報304が現れるようモバイル端末制御部201は制御を行う。そのため、サービスマンは、異常が起こったのと同一時間に別の運転機はどのような運転情報を示していたか、比較を簡単に行うことができる。
【0046】
ユーザが操作部205の操作により指標情報304の表示位置を動かした場合、指標が示す運転時間と運転情報は、指標情報304の表示位置に対応した値となるよう、モバイル端末制御部201により制御される。指標情報304は、たとえば操作部205がタッチパネルであれば、指標情報304をタッチすることによって選択できる。選択した状態で指標情報304を運転情報グラフ302の任意の位置に引っ張ることで指標を動かすことができ、指標の動きに連動して、指標位置運転情報305には、指標情報304が示す運転時間と運転情報の値が表示されるようにモバイル端末制御部201によって制御される。
【0047】
つまり、ユーザによって、モバイル端末5(表示装置)の操作部205に対して第1の運転情報表示領域内(
図3では高圧側圧力情報表示領域)の選択箇所を時間軸方向に変更する時間変更操作があった場合に、モバイル端末制御部201は第1の運転情報表示領域内において、変更後の選択箇所に対応する時間情報又は第1の運転情報(
図3では高圧側圧力情報)の位置を示す指標情報304を表示するように表示部204を制御するものである。
【0048】
このときモバイル端末制御部201は、合わせて第2の運転情報表示領域内(
図3では室内機吸込側空気温度)において、変更後の選択箇所に対応する時間情報又は第2の運転情報(
図3では室内機吸込側空気温度)の位置を示す指標情報304を表示するように表示部204を制御することが望ましい。第2の運転情報表示領域において選択箇所の時間変更操作が行われた際の第1の運転情報表示領域の指標情報304の動作も同様とする。つまり、選択した指標情報304を動かした場合に、すべての運転情報表示領域中の指標情報304が連動して動き、指標位置運転情報305の内容も指標位置にあわせて変化するよう、モバイル端末制御部201によって制御する。
【0049】
このことで、サービスマンは同一の運転情報表示領域に表示されていない運転情報どうしを同一時間で比較しやすくなる。たとえば、異常な値が出ている位置に指標を持っていくと、すべての運転情報表示領域で同じ位置に指標が動くよう制御されるので、すべての運転情報表示領域で指標位置を手動で合わせる手間をなくし、同一時間の運転情報を正確に読み取り比較することができる。
【0050】
本実施例では、1つの室外機1に複数の室内機2がある構成の試運転を考えており、サービスマンは、所定の運転時間に対する室外機の運転情報と各室内機の運転情報を見比べることで、試運転の状態を判断する。
【0051】
そのため、モバイル端末制御部201は、表示部204に表示される運転情報のうち、室外機1の運転情報を室内機2の運転情報より上方に表示するように表示部204を制御するものである。また操作部には図示していないが、第1の運転情報表示領域に所定の運転情報を固定して表示させる固定表示手段を有しており、室外機のある運転情報(たとえば吐出側圧力)を固定表示させる操作があった場合には、モバイル端末制御部201は、運転情報表示画面300の第1の運転情報表示領域に常に室外機の運転情報(たとえば吐出側圧力)を表示するように表示部204を制御する。
【0052】
このことにより、サービスマンは閲覧機会の多い室外機の運転情報をスクロールで探す必要がなく、表示部204上で室外機の運転情報と各室内機の運転情報の対比が行いやすくなる。
【0053】
また、各運転機は多くの運転情報を持つが、モバイル端末5で試運転システム用のアプリケーションを起動後の初期状態では、表示部204には、たとえば室外機は圧力に関する運転情報、室内機は温度に関する運転情報のみ表示するようにモバイル端末制御部201は制御する。表示部204上に表示される運転情報は、ユーザの操作部205への操作によって変更できるようモバイル端末制御部201で制御する。
【0054】
図4は室外機で表示する運転情報を選択する画面の例である。本実施例では
図4に示すように第1の運転情報表示領域又は第2の運転情報表示領域に運転状態のうちの何れの運転状態を表示するか選択する運転状態表示選択手段を備えている。ユーザが操作部205に対して所定の操作を行うことで、モバイル端末制御部201はこの運転情報選択画面400を表示するように表示部204を制御する。ユーザの操作の例として、操作部205がタッチパネルなら、たとえば運転情報表示領域中の運転機名部分の長押しといった方法がある。図では暗く表示された運転情報表示画面300の上に運転情報選択画面400を表示しているが、その表示方法に限る必要はなく、たとえば画面全体に400を表示するような構成になるようモバイル端末制御部201で制御されても良い。
【0055】
401は運転情報の選択状態を示すチェックボックスであり、402は各運転機が持つ運転情報名となる。401は選択状態がわかるものであればチェックボックスの形である必要は無く、選択の有無によって色が変わるボタンのようなものであっても良い。また、401は必須項目ではなく、どの402が選択されているかがわかるのであれば、402の色を変えることで運転情報の選択状態を示しても良い。
【0056】
運転情報選択画面400はスクロール対応とし、表示部204からはみ出た運転情報名を表示部204に表示するよう制御する際に利用する。本実施例のようにスマートフォンを想定する場合は、ユーザはタッチパネルへのスライド動作でスクロール可能とする。操作部205がタッチパネルではない場合は、運転情報選択画面400にスクロールバーを表示させるようモバイル端末制御部201は制御する。運転情報を選択後、モバイル端末5のユーザの操作部205への操作により運転情報選択画面400が消されると、モバイル端末制御部201は、表示部204に運転情報表示画面300を再び表示する。そこで表示される運転情報表示画面300には、モバイル端末制御部201により、選択された運転情報を持つ運転情報表示領域301が表示される。運転情報選択画面400を消す方法としては、運転情報選択画面400中に画面を消すボタンを設ける方法がある。操作部205がタッチパネルであれば、運転情報選択画面400をタッチしながら右へスライドさせるか、運転情報選択画面400の任意の箇所の長押しによって画面を切り替える方法でも良い。
【0057】
以上のように、初期状態で重要な運転情報のみ表示するよう制御し、必要に応じて表示する運転情報を取捨選択できるようにすることで、表示部204が小さい場合においても、サービスマンに見やすく必要なデータだけ提供することを可能にする。
【0058】
室外機と室内機では保有する運転情報の項目が変わるため、室外機と室内機のどちらを選択するかで、モバイル端末制御部201は、運転情報選択画面400に表示する運転情報名402を変更する必要がある。
【0059】
ここで各運転機が持つ運転情報とは、室外機の場合には、高圧側圧力、低圧側圧力、外気温度、圧縮機の運転周波数、複数の圧縮機があった場合の合計周波数、インバータ一次電流、インバータ二次電流、圧縮機吐出ガス配管温度、FAN運転状態、膨張弁開度、熱交換機配管温度を含む空気調和機の運転状態を示す情報となる。同様に、室内機の場合には、吸込空気温度、吹出空気温度、吸込空気温度と吹出空気温度との温度差、設定温度、運転モード、設定風量、冷媒液配管温度、冷媒ガス配管温度、アラームコード、リモートサーミスタ、膨張弁開度を含む空気調和機の運転状態を示す情報となる。
【0060】
なお、運転情報名402は、上記で特に重要とした運転情報が運転情報選択画面400の上部に配置されるよう、モバイル端末制御部201によって制御される。そのことで、サービスマンはよく利用する運転情報をスクロールなしですぐに選択できる。
【0061】
なお、運転モード、アラームコード等のいくつかの運転情報の項目は、横軸に対する縦軸の値で表現することが難しい場合がある。そういった項目については、モバイル端末制御部201は、縦軸の内容を工夫してグラフとして表示するよう制御しても良いし、運転時間に対するグラフの背景領域の色の変化でモード設定等を表現するよう制御しても良い。現在の状態を示すための小さな領域を運転情報表示領域中に別途用意するように制御しても良い。現在の状態を示すための小さな領域とは、たとえば現在の運転モードがわかるような小さなアイコンやラベルを指す。ただし、運転途中で運転モード変更やアラームが発生した場合には、どの運転時間でその現象が発生したかがわかるようにしておく必要がある。よって、現在の状態を示すための小さな領域を使って運転情報を表示する場合、対象の運転情報に変化が生じた運転時間位置に対し、運転時間軸上などに変化があったことを示すマーカーを表示するようモバイル端末制御部201で制御する。
【0062】
図5は複数の運転情報を1つの運転情報表示領域301中に表示した例である。(a)は運転情報表示領域中に2つの縦軸を表示した例、(b)は1つの縦軸のみ表示した例である。
図5(a)各運転情報は、1つの運転情報表示領域301に1つずつ表示するようにモバイル端末201で制御されても良いし、同一の運転機(室外機1又は室内機2)の運転情報であれば、複数の運転情報が同一の運転情報表示領域301に表示するように制御されても良い。つまり、第1の運転情報501a(
図5(a)では高圧側の圧力情報)が所定の室外機又は室内機(
図5(a)では室外機)に関する運転情報である場合で、操作部205に対して所定の操作があった場合にこの操作信号を受けたモバイル端末制御部201は、当該室外機又は室内機(
図5(a)では室外機)に関する他の運転情報502a(
図5(a)では外気温度)を第1の運転情報501aとともに運転情報表示領域301に表示するように表示部204を制御する。
【0063】
このように同一の運転機(室外機又は室内機)の運転情報を1つの運転情報表示領域内に表示することで、同一運転機の運転情報をスクロールなしで確認することができ、サービスマンは対象の運転機の運転状態を瞬時に把握することができる。また、運転機ごとに運転情報表示領域を用いることで、表示する運転情報が増減しても、たとえば第1の運転情報表示領域に室外機、第2の運転情報表示領域に室内機の運転情報を表示することが可能となり、画面上での室外機と室内機の運転情報の比較が行いやすくなる。
【0064】
また、モバイル端末制御部201はそれぞれの運転情報(501a、502a)のグラフの色や線の種類(点線、実線、太さ等)を予め異なるものとして表示するように表示部204を制御することが望ましい。これによりサービスマンが見易くなるように運転情報の表示を行うことが可能となる。また、これらのグラフの色や線の種類(点線、実線、太さ等)をユーザの任意で変更できることが望ましい。つまりユーザが操作部205に対してグラフ様式変更操作を行うことにより、この操作信号がモバイル端末制御部201に受け付けられ、設定された色や線の種類にてグラフが表示されるように表示部204を制御する。
【0065】
1つの運転情報表示領域301に1つずつの運転情報を表示する場合には、モバイル端末制御部201は、運転情報表示画面300への運転情報表示領域301の配置順を運転情報選択画面400の運転情報名402の配置順に従って表示するように表示部204を制御する。
【0066】
複数の運転情報を同一の運転情報表示領域301に表示する場合、モバイル端末制御部201は、縦軸を各運転情報に対してそれぞれ記載するよう制御しても良いし、高圧圧力と低圧圧力のように縦軸が同じ単位で表示できる運転情報の場合は、同一の縦軸を使って表記するように制御しても良い。また、縦軸を常に1つだけ表示するように制御しても良い。
【0067】
複数の運転情報が同一の運転情報表示領域301に表示される場合、モバイル端末制御部201は、表示領域中にあるいずれか1つの運転情報のグラフを、ユーザからの操作部205への操作で選択状態にするよう、制御する。本実施例では、いずれかの運転情報のグラフが選択された状態をアクティブな状態と呼んでいる。
【0068】
アクティブになった運転情報は、501bのように太線や色の変化によって強調して表示するようモバイル端末制御部201により制御される。また、アクティブでないその他の運転情報は、502bのように点線、あるいは灰色や薄い色を使い、アクティブな運転情報とは区別して表示するように制御される。
【0069】
図5(b)のように縦軸を1つのみ表示する場合には、アクティブな運転情報に対する縦軸のみを表示するよう、モバイル端末制御部201によって制御される。アクティブとする運転情報は、操作部205がタッチパネルの場合には、各運転情報のグラフの線へのタッチによって変更を可能とする。
【0070】
ユーザの操作によりアクティブな運転情報が切り替えられるたび、
図5(b)の縦軸はアクティブな運転情報に対する縦軸に切り替わるようモバイル端末制御部201によって制御される。つまり、第1の運転情報501a(
図5(a)では高圧側の圧力情報)又は他の運転情報502a(
図5(a)では外気温度)の何れかのモバイル端末5の操作部205に対して行われた場合に、モバイル端末制御部201は、選択された運転情報501b(
図5(b)では高圧側の圧力情報)に対応する縦軸の大きさ情報が強調されて第1の運転情報表示領域に表示されるように表示部204を制御するものである。
図5(b)では圧力情報の大きさ情報を示す縦軸のみを表示させ、温度情報の大きさ情報を示す縦軸を表示しないようにすることで、圧力情報の大きさ情報を強調して表示するものである。
【0071】
複数の運転情報を表示しても縦軸を1つだけとできることで、軸の表示で無駄なスペースをとることが無くなり、限られた大きさの表示部204でも運転情報を広いスペースを使って見やすく表示することが可能となる。また、複数の軸が表示される場合、どの軸とどの運転情報が対応するかを瞬時に把握することは難しいが、アクティブな運転情報の軸を強調して表示することで、軸と運転情報の対応が瞬時に把握できる。
【0072】
指標位置運転情報503a、503bには、指標情報304が示す運転時間と、その時間に対する同一の運転情報表示領域中のすべての運転情報の値が表示されるようモバイル端末制御部201で制御される。これら運転情報はすべて同一の位置に表示される必要はなく、それぞれの運転情報のグラフのそばに表示するよう制御されても良いし、軸付近に表示するよう制御されても良い。また、503aのように同一の運転情報表示領域中のすべての運転情報の値を示すよう制御されても良いし、503bのようにアクティブになっている運転情報の値のみを表示するよう制御されても良い。
【0073】
503aのように運転情報表示領域中のすべての運転情報の値を表示する場合、各々の運転情報グラフを見ずとも指標位置の運転時間とすべての運転情報がわかるため、便利である。また、表示すべき運転情報が多すぎて指標位置運転情報の表示が煩雑になってしまう場合には、503bのようにアクティブになっている運転情報に対する値だけ表示すると見やすい。どちらの表示形式にするかはユーザが操作部205への操作で選択できるものとする。
【0074】
室内機が複数ある場合、室外機と各室内機の運転情報を見比べるのは難しい。すべての運転情報表示領域で連動する指標情報304によって、各運転情報表示領域において同時刻の運転情報の値を知ることができる。しかし所定の時間に対する値ではなく全体の傾向を比較する際は、指標だけでは不便である。よって、次の機能を備えるようにする。
【0075】
図6は、運転情報表示領域301とそれを折りたたんだ状態の601を、モバイル端末制御部201によって表示部204に表示した場合の、運転情報表示画面の例である。すなわち本実施例では表示部204に表示される運転情報を表示しないようにする運転情報非表示手段を備えており、モバイル端末5のユーザにより運転情報非表示手段に対して所定の運転情報の非表示操作があった場合に、モバイル端末制御部201は、第1の運転情報表示領域又は第2の運転情報表示領域に非表示操作の対象の運転情報以外の運転状態を表示するように表示部204を制御するものである。
【0076】
運転情報非表示手段としては、たとえば、運転情報表示領域301中の右上あるいは右下等の所定位置に602のような上を向いた三角あるいは矢印といったマークを表示するようにしておく。そのマークをモバイル端末5のユーザが操作部205を介して選択することで、この操作信号を受けたモバイル端末制御部201は、運転情報表示領域301中の運転情報グラフを表示しないようにするとともに、601のように運転機名のみ表示するように表示部204を制御する。これを運転情報表示領域が折りたたまれた状態と呼ぶ。
【0077】
折りたたんだ表示領域601には603のように下を向いた三角あるいは矢印などのマークを表示させ、それをユーザが操作部205によって選択することで、この操作信号を受けたモバイル端末制御部201は、再び、運転情報表示領域301が運転情報表示画面300上に現れるように表示部204を制御する。折りたたむ方法と復帰の方法はこれに限る必要はなく、たとえば運転情報表示領域中の運転機名を、ユーザの操作部205を介した操作により選択することで、折りたたみ動作、復帰動作を行うのでも良い。その場合、表示領域の折りたたみと復帰のボタンと目印として表示している602、603は無くてかまわない。これにより、必要の無い運転情報を表示部204から消し、必要な運転機の運転情報のみを表示部204上で比較することが可能となる。
【0078】
さらにこの表示装置は、運転情報表示領域301の並び順を変える手段を備える。運転情報表示領域301あるいは折りたたまれた状態の601を、たとえば操作部205がタッチパネルである場合、指でタッチしながら画面の右側へ払うかスライドさせる操作をすることで、この操作信号を受け付けたモバイル端末制御部201は、対象の301あるいは601を表示列から消す、あるいは列の一番下へ移動するよう表示部204を制御する。
【0079】
これを繰り返すことで、表示列の下位にあった室内機の運転情報を上位の並び順に持ってくることが可能となる。もともと下位にあった室内機を表示部204上に室外機と同時に表示できるようになり、サービスマンは、運転情報の比較を同一の画面で容易に行うことができる。
【0080】
また、運転情報の並び順や表示状態を初期状態に戻す方法も備えるものとする。
【0081】
これまでは第1と第2の運転情報表示領域を持つ画面の例を示してきた。しかし、画面上に第1、第2、第3の運転情報表示領域を表示できると、運転情報の比較がさらにスムーズになる。
【0082】
たとえば、初期状態で第1の運転情報表示領域に室外機の高圧圧力と低圧圧力、第2の運転情報表示領域に室外機の外気温度を表示し、第3の運転情報表示領域には室内機の温度に関する運転情報を表示するようにモバイル端末制御部201で制御する。室内機では温度が最も重要な要素なのに対し、室外機では圧力と温度のどちらも試運転状況判断に重要であるため、初期状態でこのように表示するようと、室外機の状態を瞬時に把握でき、第3の運転情報表示領域の室内機の運転情報と比較がしやすくなる。
【0083】
また、第1、第2、第3の運転情報表示領域に室外機、室内機1、室内機2の運転情報を表示するようにモバイル端末制御部201により制御しても良い。このことで、より多くの運転機の運転情報を瞬時に把握し比較することが可能となる。
【0084】
ここまで述べた試運転情報の表示装置およびこの表示装置により実行されるアプリケーションプログラムは、スマートフォンに限らず、PDAやタブレット、携帯電話、PCであっても同様に利用可能とする。画面がタッチパネルではない場合は、画面への操作はマウス等を介してのクリック操作、あるいはボタンやキーボードからの操作で代替が可能とする。
【0085】
また、図で示したグラフの軸では、目盛りに対応する数値の記載は省力しているが、実際の画面として利用する場合には、軸の適当な位置に目盛りに対する数値が記載されるものとする。この数値はすべての目盛りに対し書く必要はないが、軸の目盛りの最小位置と最大位置の値、あるいは1目盛りがどの程度の大きさの値を示すかが、理解できるように記載されている必要がある。また、モバイル端末の運転情報取得手段として無線通信を使用しているが、有線通信に置き換えることも可能とする。