(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211192
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】建築用足場装置の足場管及び足場要素
(51)【国際特許分類】
E04G 7/30 20060101AFI20171002BHJP
E04G 7/34 20060101ALI20171002BHJP
E04G 1/14 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
E04G7/30
E04G7/34 302A
E04G1/14 302Z
【請求項の数】24
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-530433(P2016-530433)
(86)(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公表番号】特表2016-528408(P2016-528408A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】EP2014065753
(87)【国際公開番号】WO2015014676
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2016年3月11日
(31)【優先権主張番号】102013108326.9
(32)【優先日】2013年8月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502104262
【氏名又は名称】ペリー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Peri GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】イーラス フランク
(72)【発明者】
【氏名】レダー クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】スペクト ルドルフ
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第83/002637(WO,A1)
【文献】
西独国特許第00966298(DE,B)
【文献】
独国特許出願公開第102011001796(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/30
E04G 1/14
E04G 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用足場装置の足場管であって、第1の軸方向の管端(12)から反対側の第2の軸方向の管端(14)に延びる管軸線(A)と、前記第1の軸方向の管端(12)に設けられた受け部(16)と、前記第2の軸方向の管端(14)に設けられ、前記受け部(16)と比較して減少した断面を有し、挿入部(18)の方に向けられた環状の支持面(24)を形成する半径方向ショルダ(22)で終端する前記挿入部(18)とを有し、同一の挿入部(18)を有する隣接する足場管(10)が前記受け部(16)内に挿入されるように、前記受け部(16)の内径(d1,i)が前記挿入部(18)の外径(d2,a)より大きい足場管において、
前記足場管は、一体的に作られており、前記足場管(10)の管壁(34)が、前記第1の軸方向の管端(12)で、最大壁厚(smax)を有し、前記第1の軸方向の管端(12)以外では、より小さな壁厚(s)を有することを特徴とする足場管。
【請求項2】
前記第1の軸方向の管端(12)における前記最大壁厚(smax)は、1.2×s≦smax≦2×sで規定されることを特徴とする請求項1に記載の足場管。
【請求項3】
前記第1の軸方向の管端(12)における前記最大壁厚(smax)は、smax≒1.5×sで規定されることを特徴とする請求項2に記載の足場管。
【請求項4】
前記第1の軸方向の管端(12)における前記足場管(10)の外径(d1,a)は、前記受け部(16)の外径(d1,a)に一致することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の足場管。
【請求項5】
前記足場管(10)は、前記第1の軸方向の管端(12)に増厚部(36)を有し、当該増厚部(36)では、前記管壁(34)が前記より小さな壁厚(s)から前記最大壁厚(smax)にかけて楔状に増厚化することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の足場管。
【請求項6】
前記増厚部(36)は、s<LA<5×sである軸方向の寸法(LA)を有することを特徴とする請求項5に記載の足場管。
【請求項7】
前記増厚部(36)は、LA≒2.5×sである軸方向の寸法(LA)を有することを特徴とする請求項6に記載の足場管。
【請求項8】
前記第1の軸方向の管端(12)における前記受け部(16)は、位置決め溝(26)を1つだけ有し、当該位置決め溝(26)は、周方向に途切れているか又は連続しており、前記受け部(16)の前記内径(d1,i)を減少させると共に前記受け部(16)の最小内径(d1,i,min)を規定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の足場管。
【請求項9】
前記挿入部(18)は、前記第2の軸方向の管端(14)から前記半径方向ショルダ(22)にかけて軸方向の挿入長さ(LE)を有し、前記第1の軸方向の管端(12)からの前記位置決め溝(26)の軸方向の空間(xp)が、前記軸方向の挿入長さ(LE)の1/3より小さいことを特徴とする請求項8に記載の足場管。
【請求項10】
前記第1の軸方向の管端(12)からの前記位置決め溝(26)の軸方向の空間(xp)は、前記軸方向の挿入長さ(LE)の1/5より小さいことを特徴とする請求項9に記載の足場管。
【請求項11】
前記第1の軸方向の管端(12)からの前記位置決め溝(26)の軸方向の空間(xp)が、前記受け部(16)の前記内径(d1,i)より小さいことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の足場管。
【請求項12】
前記受け部(16)は、周方向に途切れているか又は連続している溝(28)を有し、この溝(28)は、前記第1の軸方向の管端(12)に対して、前記位置決め溝(26)より大きな軸方向の空間(xN)を有し、d1,i,min<d1,i,N<d1,iで規定される内径(d1,i,N)を有することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の足場管。
【請求項13】
前記挿入部(18)は、前記第2の軸方向の管端(14)から前記半径方向ショルダ(22)にかけて軸方向の挿入長さ(LE)を有し、前記第1の軸方向の管端(12)に対する前記溝(28)の軸方向の空間(xN)は、0.5×LE<xN<LEで規定されることを特徴とする請求項12に記載の足場管。
【請求項14】
前記第1の軸方向の管端(12)に対する前記溝(28)の軸方向の空間(xN)は、xN≒0.8×LEで規定されることを特徴とする請求項13に記載の足場管。
【請求項15】
前記足場管(10)は、前記受け部(16)と前記挿入部(18)との間に中間領域(20)を有し、当該中間領域において、前記足場管(10)は、前記受け部(16)における場合と同じ外径(d1,a)を有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の足場管。
【請求項16】
前記中間領域(20)は、前記半径方向ショルダ(22)に隣接して拡張部(40)を有し、当該拡張部において、前記足場管(10)は、前記半径方向ショルダ(22)に向かって半径方向に拡張することを特徴とする請求項15に記載の足場管。
【請求項17】
前記環状の支持面(24)は、前記受け部(16)の前記外径(d1,a)より大きな外径(d3,a)を有することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の足場管。
【請求項18】
前記半径方向ショルダ(22)に隣接する前記挿入部(18)は、周方向に延びる縮小部(38)を有し、前記環状の支持面(24)は前記挿入部(18)の前記外径(d2,a)より小さな内径(d3,i)を有することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の足場管。
【請求項19】
前記挿入部(18)は、前記第2の軸方向の管端(14)に向かってテーパ状になっていてテーパ状導入部(30)を形成することを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の足場管。
【請求項20】
前記足場管(10)は、作業用足場装置の一部であり、且つ前記足場管(10)の前記壁厚(s)は最大3.2mmであるか、又は耐荷重足場装置の一部であり、且つ前記足場管(10)の前記壁厚(s)は2.7〜3.2mmであることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の足場管。
【請求項21】
前記足場管(10)は、作業用足場装置の一部であり、且つ前記足場管(10)の前記壁厚(s)は、約2.7mmであるか、又は耐荷重足場装置の一部であり、且つ前記足場管(10)の前記壁厚(s)は2.7〜3.2mmであることを特徴とする請求項20に記載の足場管。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか1項に記載の少なくとも1つの足場管(10)と、前記足場管(10)に確実に固定された横断保持具(42)とを有する足場要素。
【請求項23】
前記横断保持具(42)は、前記足場管(10)の前記受け部(16)又は中間領域(20)において、前記足場管(10)に対して垂直に配置されていることを特徴とする請求項22に記載の足場要素。
【請求項24】
請求項1乃至21のいずれか1項に記載の2つの足場管(10)からなり、2つの当該足場管(10)は、前記建築用足場装置の枠要素を形成するために、前記横断保持具(42)により互いに接続されていることを特徴とする請求項22又は23に記載の足場要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の軸方向の管端から反対側の第2の軸方向の管端に延びる管軸線と、第1の軸方向の管端に設けられた受け部と、第2の軸方向の管端に設けられ、受け部と比較して減少した断面を有し、挿入部の方に向けられた環状の支持面を形成する半径方向ショルダで終了する挿入部とを有する建築用足場装置の足場管であって、同一の挿入部を有する隣接する足場管を受け部内に挿入されるように、受け部の内径が挿入部の外径より大きい足場管に関する。また、本発明は、このような足場管を有する足場要素にも関する。
【背景技術】
【0002】
建築用足場装置は、例えば作業用足場装置又は耐荷重足場装置として架設される。足場管は、建築用足場装置、特に作業用足場装置における枠要素に従来から使用されており、且つ耐荷重足場装置を架設する場合に、又はいわゆる通路枠と共に、個々のポストとして従来から使用されている。枠足場装置では、2つの平行な足場管が、少なくとも1つの横断保持具に接続されており、具体的には溶接されている。枠要素は、足場をかなりの高さにすることができるように、一方が他方に取り付けられる。しかしながら、足場管はまた、個々のロッドとして架設される。このような建築用足場装置の原理は、実質的に常に同じである。足場管の軸方向端部では、断面が減少し、いわゆる挿入部が形成される。反対側の端部では、受け部に、隣接する足場管の挿入部を挿入することができ、又はその逆も可能である。挿入部及び受け部は、挿入し易くするために、互いに対して半径方向の遊びを有する。しかしながら、この半径方向の遊びは、上側の足場管が、下側の足場管に対して容易に傾く場合があるので、足場装置の安定性に対しては不都合である。最大傾斜角度を減少させるために、塑性変形によって形成され且つ互いに周方向に離れて配置された軸方向の縦溝を有する完全な受け部を設けることが知られている。これにより、半径方向の遊びが減少する。しかしながら、この利点は、足場管の一方の他方の内部への挿入がもはやそれ程容易にはできず、特に枠要素の足場管が枠要素の他の足場管よりかなり前に挿入される場合、足場の架設又は解体中、管が引っかかり易く、又は傾き易くなるという欠点の代償の上に成り立っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、高度な足場の安定性を有しつつ、建築用足場装置の簡単且つ迅速な架設及び解体を可能にする足場管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明により、前書きで述べられたタイプの足場管によって達成される。この足場管の管壁は、第1の軸方向の管端に、最大壁厚s
maxを有し、それ以外、即ちすべての他の領域では、より小さな壁厚sを有する。第1の軸方向の管端における半径方向に拡張した増厚化した管壁は、増厚部によって形成された足場管の前側と、挿入された他の足場管の半径方向ショルダにおける隣接する支持面との間の接触面を増加させる。この例では、接触面はまた、一方が他方の内部に挿入された管が半径方向に相対的にずれる場合、周方向に連続する幅広い環状面を形成する。したがって、増加量を最小限のみに留める材料に関する要求がある場合、第1の軸方向の管端において、圧力分布がより均一になり、面圧がより小さくなる。
【0005】
反対に、受け部の前面は、従来技術では、接触面が減少するように半径方向ショルダの支持面に対してずらされる場合がある。これにより、前側において管は、より大きな荷重を受け易くなって耐荷重性が小さくなり、且つより容易に塑性変形する可能性がある。
【0006】
好ましい方法では、第1の軸方向の管端における管壁の増厚化が、半径方向への管壁の塑性拡張をもたらす足場管の据込み変形によって実行される。
【0007】
好ましくは、第1の軸方向の管端における最大壁厚s
maxは、1.2×s≦s
max≦2×s、特にs
max≒1.5×sで規定される。ここで、sは、第1の軸方向の管端で増厚化する管壁の外側での足場管の実質的に一定な壁厚を表す。
【0008】
特に好ましい方法では、第1の軸方向端部における足場管の外径は、受け部の外径と実質的に一致する。言い換えれば、このことは、第1の軸方向の管端は、半径方向内側に拡張するが、第1の軸方向の管端の領域における足場管の半径方向の外側が実質的に筒状、特に円筒状のままであることを意味する。したがって、増厚化した管壁は、大きな前面を提供するばかりでなく、この前面と挿入された足場管の支持面との間の可能な限り拡張した接触をさらにまた確実にする。
【0009】
足場管における第1の軸方向の管端には、管壁がより小さな壁厚sから最大壁厚s
maxにかけて実質的に楔状に増厚化している増厚部が設けられるのが好ましい。
【0010】
増厚部は、特に、s<L
A<5×s、特にL
A≒2.5×sを満たす軸方向の寸法L
Aを有してもよい。ここで、sはまた、第1の軸方向の管端における管壁増厚部の外側での足場管の実質的に一定の壁厚を表す。
【0011】
上述の目的はまた、本発明により、前書きで述べられたタイプの足場管によって達成される。この足場管では、第1の軸方向の管端における受け部は、精密な1つの位置決め溝を有し、この位置決め溝は、周方向に途切れているか又は連続しており、受け部の内径d
1,iを低減し、受け部の最小内径d
1,i,minを規定する。
【0012】
本発明は、小さな半径方向の遊びと、一方が他方の内部に入る隣接する足場管の簡単な挿入との間の優れた折衷案を提供する。形成された位置決め溝により、受け部は、第1の軸方向の管端で最小内径を有し、これにより、従来の成形されていない足場管に対して半径方向の遊びがかなり減少する。しかしながら、受け部はまた、半径方向ショルダに向かう位置決め溝の軸方向下流に、最小内径に対して増加した内径を有し、このため、挿入されるべき足場管は、挿入部の先端が位置決め溝の領域をちょうど過ぎた後、依然としてかなりの程度傾くことができる。挿入作業の始まりに一方が他方に挿入されることが意図された足場管が、非常に簡単にかなりの程度、互いに対して傾くことができるため、足場管の望ましくない引っかかり又は傾きは、実質的にあり得ない。しかしながら、挿入部の先端、即ち第2の軸方向の管端が、受け部内により深く貫通すればするほど、生じた2つの当接面間の空間も大きくなる。生じた2つの当接面は、即ち、一方では、挿入部の先端と受け部の内側との間の当接面であり、他方では、位置決め溝と挿入部の隣接する領域との間の当接面である。当接面間の軸方向の空間が大きくなるにつれて、挿入部の先端において半径方向の遊びにより可能になる最大傾斜角度が、次第に小さくなる。
【0013】
挿入される足場管の半径方向の位置決めが、単に単一の位置決め溝によって実行されるため、半径方向の遊び、即ち位置決め溝によって規定される挿入部の外径と受け部の最小内径との間の間隙を、建築用足場装置の組み立て又は解体に関する複雑性をそれ程増すことなく、従来の建築用足場装置に対して減少させることができる。精密な1つの位置決め溝により、2つの足場管が、一方が他方の内部に挿入された場合、最初はかなりの程度傾くことが可能であり、このため、半径方向の遊びがほとんどなくても、建築用足場装置における組み立ての楽な架設及び解体が確実になるからである。足場管が組み立てられた状態では、その後、小さな半径方向の遊びが建築用足場装置の安定性及び耐荷重性に有効に作用する。
【0014】
足場管の実施の形態では、挿入部が、第2の軸方向の管端から半径方向ショルダにかけて、軸方向の挿入長さを有する。第1の軸方向の管端からの位置決め溝の軸方向の空間は、軸方向の挿入長さの1/3、特に1/5より小さい。
【0015】
さらに、第1の軸方向の管端からの位置決め溝の軸方向の空間はまた、受け部の内径より小さい場合がある。第1の軸方向の管端に非常に近い位置決め溝の軸方向の配置により、挿入作業の始まりにおいて、足場管の傾きが、簡単な組み立て又は解体のために容易に可能になる。同時に、結合した状態では、足場管は、位置決め溝が第1の軸方向の管端に対して、したがって足場管の支持面に対して近接している結果として、半径方向の遊びがほとんどない状態で互いに固定されている。支持面に近くに遊びがほとんどない状態でこのように固定することは、足場管の接続における高い軸方向の耐荷重性及び安定性をもたらす。
【0016】
足場管の別の実施形態では、受け部は、周方向に途切れているか又は連続している溝を有する。この溝は、第1の軸方向の管端に対して、位置決め溝より大きな軸方向の空間を有し、d
1,i,min<d
1,i,N<d
1,iで規定される内径d
1,i,Nを有する。位置決め溝に加えて設けられたこの溝により、2つの足場管の挿入作業の終わりに、詳細には1つの足場管における挿入部の先端が他の足場管の受け部における溝に到達した場合に、互いに対する2つの足場管の生じ得る傾斜角度が減少する。これにより、組み立てられた建築用足場装置の安定性及び耐荷重性が増すが、傾斜角度の減少が挿入作業の終わり及び挿入状態において明白になるので、建築用足場装置の架設又は解体中の組み立て易さには、いかなる影響もほとんど及ぼさない。位置決め溝の領域における挿入された足場管の挿入部は、任意の追加的に設けられた溝よりも小さな半径方向の遊びを有することが強調されるべきである。
【0017】
足場管の挿入部は、この例では、第2の軸方向の管端から半径方向ショルダにかけて、軸方向の挿入長さL
Eを有し、第1の軸方向の管端に対する溝の軸方向の空間x
Nは、0.5×L
E<x
N<L
E、特にx
N≒0.8×L
Eで規定されるのが好ましい。これにより、傾斜角度の減少が挿入作業の終わりにのみ実行され、このため、建築用足場装置の組み立て易さには、ほとんど影響が出ない。また、位置決め溝と他の溝との間の最大の生じ得る軸方向の空間は、最大の生じ得る傾斜角度を特に有効に減少させる。
【0018】
別の実施形態では、足場管は、受け部と挿入部との間に中間領域を有し、中間領域では、足場管が、受け部における場合と同じ外径d
1,a及び同じ形状を有することが好ましい。この中間領域は、足場管の長手方向の架設用に使用される。受け部は挿入部と同じ軸方向長さを有するが、足場管の必要な軸方向長さは、中間領域を介して達成され得る。
【0019】
中間領域は、半径方向ショルダに隣接して、特に拡張部を有してもよく、拡張部では、足場管が半径方向ショルダに向かって半径方向に拡張する。これにより、増大した支持面が足場管の半径方向ショルダに生じ、このため、取り付けられた足場管における第1の軸方向の管端の前面が、常に全体が確実に荷重に耐えることができる。
【0020】
特に、足場管の環状の支持面は、受け部の外径d
1,aより大きい外径d
3,aを有してもよい。
【0021】
足場管の別の実施の形態では、半径方向ショルダに隣接する挿入部が周方向に延びる縮小部を有し、このため、環状の支持面が、挿入部の外径d
2,aより小さな内径d
3,iを有する。
【0022】
挿入部は、足場管の第2の軸方向端部に向かってテーパ状になってテーパ状導入部を形成することが好ましい。このテーパ状導入部は、例えば塑性管変形によって作り出され、導入されるべき挿入部の領域、即ち第2の軸方向の管端が、ある種の先端を形成するので、他の足場管の受け部への挿入部の挿入が容易になる。
【0023】
足場管の壁厚は、作業用足場装置では、最大3.2mm、特に2.7mmであるのが好ましい。これは、足場管としては特に小さな壁厚であり、したがって、足場管の重量に有効な効果を有する。この小さな壁厚は、足場管又は建築用足場装置の安定性が、足場管の第1の軸方向の管端における位置決め溝及び/又は増厚化した管壁によって確実なものとなるので、実現することができる。足場管のより小さな壁厚により、重量が減少し、したがって、建築用足場装置の架設及び解体が容易になる。同じことが、少なくとも3.2mmという従来の壁厚を有する耐荷重足場装置にも当てはまる。この壁厚は、特に約2.9mmまで減少させてもよく、又は変更なしでもよい。これにより、足場の耐荷重性がかなり増す。
【0024】
本発明は、少なくとも1つの上述の足場管と、足場管に確実に取り付けられた横断保持具とを備える足場要素をさらに含み、横断保持具は、足場管の受け部又は中間領域において、足場管に対して垂直に配置され且つ固定されるのが好ましい。少なくとも1つの耐荷横断保持具は、受け部又は中間領域に配置されるのが好ましい。これは、受け部又は中間領域が、本発明による足場管における安定領域であるからである。このような足場要素は、例えば、足場又は枠要素の架設中に作業面を拡張するために使用される角ばった要素であってもよい。
【0025】
特に、足場要素は、建築用足場装置の枠要素を形成するために、少なくとも1つの横断保持具により互いに接続される上述の足場管を2つ備えてもよい。このように架設される枠要素は、H要素又はT要素として通常は知られており、足場の架設中、迅速且つ効率的に建築用足場装置の側壁を形成するために使用される。
【0026】
本発明の他の特徴及び利点は、好ましい実施の形態の以下の説明と図面の参照とによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実の施形態に係る一方が他方の内部に挿入された2つの足場管の縦断面図である。
【
図2】第1の軸方向の管端の領域における
図1の詳細な部分断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態に係る一方が他方の内部に挿入された2つの足場管の縦断面図である。
【
図4】第1の軸方向の管端の領域における
図3の詳細な部分断面図である。
【
図5】本発明に係る2つの足場管を有する本発明の足場要素の斜視図である。
【
図6】モジュール式の足場装置の一例における本発明の足場管の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1〜
図4は、建築用足場装置用の足場管10を示す。これらの管は、例えば、後述する枠要素のような足場要素のロッド又は部材として架設され得る。足場管10の各々は、第1の軸方向の管端12から反対側の第2の軸方向の管端14に延びる管軸線Aと、第1の軸方向の管端12に設けられた受け部16と、第2の軸方向の管端14に設けられ、足場管10の残りの部分より外側断面が小さい挿入部18とを有する。
【0029】
受け部16の内径d
1,iは、挿入部18の外径d
2,aより大きい。このため、同一の挿入部18を有する隣接する足場管10を受け部16内に挿入することができる。
【0030】
受け部16は中間領域20を介して挿入部18に接続される。中間領域20は、段差がないように同じ幾何学的形状及び同じ寸法で受け部16内に没入するがが好ましい。
【0031】
中間領域20は、半径方向ショルダ22により挿入部18に一体的に接続されている。半径方向ショルダ22は、挿入部18の方に向けられ且つ2つの足場管10が、一方が他方の内部に挿入された場合にストッパとして作用する支持面24を有する。
【0032】
足場管10の全体は、金属管から一体的に生産されることが好ましく、様々な部分が、足場管10の塑性変形により簡単に形成される。
【0033】
図1及び
図3によれば、受け部16は、周方向に途切れているか又は連続しており、且つ受け部16の内径d
1,iを減少させる精密な1つの位置決め溝26を第1の軸方向の管端12に有する。受け部16の最小内径d
1,i,minは、この例では、精密な1つの位置決め溝26によってのみ定められる。
【0034】
位置決め溝26によって規定された受け部16の最小内径d
1,i,minは、挿入部18の外径d
2,aよりほんのわずかに大きく、このため、位置決め溝26の領域で結合した2つの足場管10は、ほとんど遊びがないように半径方向に接続されている。半径方向の遊びがほとんどない状態で一方が他方の内部に挿入される足場管10のこのような接続は、建築用足場装置の高度な安定性及び耐荷重性をもたらす。
【0035】
受け部16が、最小内径d
1,i,minを規定する位置決め溝26を1つしか有さないため、2つの足場管10における挿入作業の始まりには、足場管10の非常に大きな程度の傾きが依然として可能であり、このため、位置決め溝26の領域では半径方向の遊びが少ないにもかかわらず、建築用足場装置の簡単に組み立て及び解体がなされる。
【0036】
2つの足場管10の挿入作業の始まりにおいて、非常に大きな傾斜角度を可能にし、且つ一方が他方の内部に挿入された足場管10を、第1の軸方向の管端12の領域で、可能な限り最も半径方向に遊びがないように互いに対して固定するためには、位置決め溝26が、第1の軸方向の管端12の可能な限り近くに配置されることが有効である。しかしながら、位置決め溝26は、第1の軸方向の管端12からかなり離れて配置されているので、受け部16の半径方向の外径d
1,aは、位置決め溝26によってはもはや減少しない。したがって、第1の軸方向の管端12で支持面を形成する環状の前面の直径は、位置決め溝26によっては減少せず、このことは、建築用足場装置の安定性及び耐荷重性にプラスの影響を及ぼす。
【0037】
挿入部18は、第2の軸方向の管端14から半径方向ショルダ22にかけて、軸方向の挿入長さL
Eを有する。第1の軸方向の管端12からの位置決め溝26の軸方向の空間x
Pは、軸方向の挿入長さL
Eの1/3、特に1/5より小さいことが特に有効であると分かっている。挿入長さL
Eは、約150から250mmまでの範囲にあることが好ましい。
【0038】
受け部16の内径d
1,iに関しては、第1の軸方向の管端12からの位置決め溝26の軸方向の空間x
Pは、受け部16の内径d
1,iより小さいことが特に有効であると分かっている。
【0039】
図1及び
図3に示されるように、受け部16は、周方向に途切れているか又は連続している別の溝28を有し、この溝28は、第1の軸方向の管端12に対して、位置決め溝26より大きな軸方向の空間x
Nを有し、内径d
1,i,Nをd
1,i,min<d
1,i,N<d
1,iでさらに規定される。このことは、言い換えれば、任意の溝28が、挿入された足場管10の挿入部18に対して、位置決め溝26より大きな半径方向の遊びを有することを意味する。溝28は、挿入作業の終わり及び2つの足場管10が結合した状態において、傾斜角度を減少させることにのみ役立つ。このことは、建築用足場装置の安定性及び耐荷重性に有効な効果を及ぼすが、建築用足場装置の組み立て易さにはいかなる不都合な影響もほとんど及ぼさない。
【0040】
特に大きな傾斜角度の減少は、溝28が、軸方向において位置決め溝26から可能な限り最も離れて配置された場合に生じ得る。挿入部18の軸方向の挿入長さL
Eに関しては、第1の軸方向の管端12からの溝28の軸方向の空間x
Nが0.5×L
E<x
N<L
E、特に、x
N≒0.8×L
Eを満たす場合に、特に有効であることが分かっている。
【0041】
挿入部18は、テーパ状の自由端を有する。挿入部18の断面積は、挿入部18の外径d
2,aが位置決め溝26の領域における受け部16の内径d
1,i,minより小さくなるような程度にまで減少する。したがって、第1の足場管10の挿入部18を、同一の第2の足場管10の受け部16内に確実に挿入できる。
【0042】
図1及び
図3によれば、足場管10の挿入部18は、第2の軸方向の管端14に向かう方向にテーパ状になっており、テーパ状導入部30を形成する。テーパ状導入部30は、実質的に一定の円筒状の断面を有する円筒状導入部32と軸方向に隣接する。
【0043】
このようなテーパ状導入部30を有する足場管10の製造に関する変形例では、2つの足場管10が結合した状態での任意の溝28を、テーパ状導入部30ではなく円筒状導入部32に、半径方向に確実に隣接させるべきである。理由は、そうでなければ溝28による傾斜角度の減少が生じないためである。
【0044】
また、足場管10は、挿入部18に開口33(
図1及び
図3参照)を有する。開口33は、2つの足場管10が結合された後で、接続部を追加的に固定する固定ピン用に提供される。受け部16は、開口33と整列した対応する開口35を有し、このため固定ピンを2つの開口33、開口35を介して挿入することができる。
【0045】
特に、
図2及び
図4で断面の詳細を参照すると、第1の軸方向の管端12における足場管10の管壁34が、最大壁厚s
maxを有し、且つ実質的に一定のより小さな壁厚sをさらに有することが、明らかに見て取れる。
【0046】
図示された実施の形態では、第1の軸方向の管端12における管壁34の増厚部は、半径方向内側への足場管10の据込み変形によって得られている。このため、第1の軸方向の管端12における足場管10の外径d
1,aは、受け部16の外径d
1,aと実質的に一致する。したがって、位置決め溝26と任意に設けられた溝28を除いて、受け部16は、一定の実質的に円筒状の外側断面を保持する。
【0047】
図2及び
図4によれば、足場管10は、第1の軸方向の管端12に増厚部36を有し、増厚部36では、管壁34が、より小さな壁厚sから最大壁厚s
maxにかけて、実質的に楔状に増厚化しており、ここでは、増厚部36の軸方向の寸法L
Aは、s<L
A<5×s、特にL
A≒2×sで規定される。ここで、sは、(増厚部36を除いて)足場管10の実質的に一定な壁厚を表す。
【0048】
足場管10の壁厚に関して、第1の軸方向の管端12における最大壁厚s
maxは、1.2×s≦s
max≦2×s、特にs
max≒1.5×sによって規定される。
【0049】
図1及び
図2は、第1の実施形態による足場管10を示している。半径方向ショルダ22に隣接する挿入部18は、周方向に延びる縮小部38を有しており、環状の支持面24は、内径d
3,iが挿入部18の外径d
2,aより小さい。
【0050】
反対に、
図3及び
図4は、第2の実施の形態による足場管10を示している。しかしながら、この足場管10は、第1の実施の形態と構造及び機能の面で非常に似ている。このため、相違点のみを以下に説明する。
【0051】
第1の実施の形態の修正形態において、
図3及び
図4の足場管10は、半径方向ショルダ22の隣に、周方向に延びる縮小部38を有さない。このため、支持面24の内径d
3,iは、挿入部18の外径d
2,aと実質的に一致する。
【0052】
それに代えて、
図3及び
図4による足場管10の環状の支持面24は、第1の実施の形態とは対照的に、外径d
3,aが受け部16の外径d
1,aより大きい。
【0053】
これは、円錐形の拡張部40を有する半径方向ショルダ22に隣接した足場管10の中間領域20によって達成される。拡張部40では、足場管10が半径方向ショルダ22に向かって半径方向に拡張する。
【0054】
壁厚sに関して、拡張部40の拡張部rは、0.2×s≦r≦s、特にr≒0.5×sによって規定される。足場管10が結合した場合、中間領域20における半径方向の拡張部rにより、第1の軸方向の管端12における任意に拡張した前面が、表面領域全体にわたって支持面24と常に確実に当接することができる。これにより、度の面圧及び不均一な圧力分布が実質的に防止される。
【0055】
図1〜
図4による足場管10はまた、足場要素を備えてもよい。これらの足場要素は、例えば枠要素(
図5参照)又は角のある要素であり、これらの要素は、足場管10に加えて、別の方法で架設される横断保持具42又は保持具を有する。これらの保持具は、足場管(単数及び複数)10、特に足場管の受け部16又は中間部20に溶接される。
【0056】
図5による実施の形態では、長さが異なる2つの足場管10が、横断保持具42により互いに接続されている。横断保持具42は、それぞれの場合に溶接され、足場要素が形成される。この場合、両方の足場管10は、挿入部18を有し、挿入部18は、同じ側に配置されており、対応する受け部16が、挿入部18の反対側の端部に配置されている。中間の管をより短い足場管10に任意に取り付けてもよい。
【0057】
代案としては、足場管10また、本発明に係る角ばった要素用に使用され得る。
【0058】
増厚部36は別として、作業用足場装置用の変形していない足場管10における壁厚sは、最大3.2mm、特に約2.7mmであり、この値は、従来の足場管の壁厚より小さい。したがって、本発明に係る足場管10は、より軽量であり、したがって取り扱いの面で利点を有する。
【0059】
図5は、作業用足場装置の一部を示している。作業用足場装置は、建設現場のそばに配置されており、作業者が上を歩く。
【0060】
変形例として、足場管10はまた、
図6に示されるような、モジュール式の足場装置の一部であってもよい。
図6は、保持具管として架設され、例えば天井用の型枠を保持する足場管10を特に示している。この足場管10はまた、
図1〜
図4を参照して上述され且つ示されたように架設される。増厚部36は別として、耐荷重足場装置用のこのような足場管10における壁厚sは、限定的であると理解されることを意図するものではないが、2.7から3.2mmの間にあることが好ましく、したがって耐荷重足場装置用の従来の管における壁厚より小さい。
【0061】
足場管10に任意に設けられ、且つ取り付けられる円形固定プレート44は、隣接する足場部品を固定する役割を果たす。
【符号の説明】
【0062】
10 足場管
12 第1の軸方向の管端
14 第2の軸方向の管端
16 受け部
18 挿入部
20 中間領域
22 ショルダ
24 支持面
26 位置決め溝
28 溝
30 テーパ状導入部
32 円筒状導入部
33 開口
34 管壁
35 開口
36 拡張部
38 縮小部
40 拡張部
42 横断保持具
44 円形固定プレート