(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内視鏡は、前記チャネルシースの前記遠位端部材が前記内視鏡に対して所定の位置関係を有して位置決めされるように前記遠位端部材を取り付け可能な位置決め部を有していることを特徴とする請求項3に記載の医療システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
図1から
図4までに示すように、本実施形態のチャンネルシース1は、近位端部材2と、中間部材6と、遠位端部材8とを有する。
【0016】
図2及び
図3に示すように、近位端部材2は、処置具60を挿通するための第一開口2aを有している。近位端部材2の第一開口2aへ挿通可能な処置具60は、例えば公知の軟性内視鏡に適用可能な軟性処置具60である。また、近位端部材2は、体表に留置可能である。本実施形態の近位端部材2は、第一開口2aを規定する筒状の本体部3と、本体部3の外周面から外側に張り出した固定部4と、中間部材6と連結するために本体部3に取り付けられた係合部5とを有している。
【0017】
本体部3は、処置具60を挿通可能な内径を有して両端が開口された筒状部である。
固定部4は、たとえば近位端部材2を患者の腹壁に取り付ける場合に腹壁の外面に接触することにより近位端部材2が腹腔内に入り込まないように支えるために、本体部3の外径よりも大きな環状をなしている。
【0018】
係合部5は、内面にネジ溝5aが形成されており、本体部3の中心線を回転中心として本体部3に対して回転自在となるように本体部3に連結されている。係合部5のネジ溝5aは、後述する中間部材6に設けられたカプラ7のネジ山7aとネジ嵌合する。係合部5を手で回すことができるようにするために、係合部5の外周面は凹凸等の滑り止め形状を有している。
【0019】
また、本実施形態の近位端部材2は、近位端部材2を体壁に固定するための穿刺を行う内針部材(不図示)をさらに備えている。内針部材は、本体部3の内径と略同径の外径を有し、鋭利な刺入端を有している。内針部材が本体部3内に挿入された状態で内針部材を体壁へ刺入することにより、本体部3を体外から体内へと差し込むことができる。
【0020】
図1及び
図3に示すように、中間部材6は、軟性処置具60を内部に挿通可能な筒状部材である。中間部材6は、可撓性を有している。中間部材6の両端のうちの第一端部6aは、近位端部材2に対して着脱可能な筒状のカプラ7を有している。中間部材6のカプラ7は、近位端部の係合部5に形成されたネジ溝5aに対してネジ嵌合可能なネジ山7aを外周面に有する。カプラ7が係合部5に取り付けられた状態では、中間部材6は第一開口2aに連通されている。この状態で、中間部材6の中心線と本体部3の中心線は略同軸である。
中間部材6の両端のうち第一端部6aと反対側の第二端部6bは、遠位端部材8に接続されて後述する第二開口8aに連通されている。
【0021】
図1及び
図4に示すように、遠位端部材8は、処置具60を突没させるための第二開口8aを有している。遠位端部材8は、上記の処置具60とは異なる医療器具(本実施形態では内視鏡10)に着脱可能である。一例として、本実施形態の遠位端部材8は、内視鏡10の挿入部11の先端構成部13の外周面を挟んで先端構成部13に遠位端部材8を連結するためのクリップ部9を有している。
【0022】
図1及び
図4に示すように、クリップ部9は、内視鏡10の挿入部11の先端構成部13の外周面よりもわずかに小径のC字状に形成され、弾性変形可能である。クリップ部9は、先端構成部13によって拡径される力を受けて弾性変形し、クリップ部9自身の復元力により先端構成部13の外面に押し付けられる。
【0023】
クリップ部9は、先端構成部13に対する第二開口8aの向きを規定する。本実施形態では、内視鏡10の撮像部の光軸と平行な方向(内視鏡10の視野方向)へと第二開口8aが向くように第二開口8aの向きを規定する。
【0024】
本実施形態のチャンネルシース1の使用方法及び作用について説明する。
図4に示すように、本実施形態では、患者の体内に内視鏡10を導入するための第一トロッカ50と、チャンネルシース1の近位端部とを、患者の体壁(たとえば腹壁)に取り付ける。
第一トロッカ50の構成は特に限定されず、内視鏡10の構成に合わせて公知のトロッカを適宜選択可能である。
【0025】
チャンネルシース1の近位端部材2を患者の体壁に取り付けるためには、体壁を切開することにより、本体部3が挿通可能となるように体壁を貫通する貫通孔を形成する。本実施形態では、不図示の内針部材を本体部3内に取り付けた状態で内針部材を体壁へ穿刺することにより、体壁の切開と本体部3の挿入とを同時に行うことができる。本体部3が体壁に挿入された後、内針部材を本体部3から引き抜くことで、体壁への近位端部材2の留置が完了する。近位端部材2に形成された固定部4は、体壁に形成された貫通孔の周囲で体壁の外面に接触するので、体壁の貫通孔内には入り込まない。これにより、近位端部材2は、体壁に固定される。なお、貫通孔から本体部3が体外へ抜けるのを防止するための不図示のストッパ等が本体部3に設けられていてもよいが、固定部4を手で押さえて体内側へと押し込むことでも本体部3の抜け止めとすることができる。
【0026】
続いて、遠位端部材8及び中間部材6を、第一トロッカ50を通じて体内へと導入する。遠位端部材8は、内視鏡10の挿入部11の先端構成部13の外周に沿ったクリップ部9を有しているのでチャンネルシース1の近位端部材2の本体部3内を通過できるほど小さくはない。しかしながら、遠位端部材8は第一トロッカ50内を通過できる程度に小さいので、第一トロッカ50を通じて遠位端部材8を体内へ導入可能である。
【0027】
遠位端部材8及び中間部材6を第一トロッカ50を通じて体内へと導入すると、中間部材6のカプラ7は体内に位置する。操作者は、チャンネルシース1の近位端部材2の第一開口2aから公知の把持鉗子を挿入してカプラ7を把持し、近位端部材2の近傍まで引き寄せる。さらに、操作者は、カプラ7を本体部3内に引き込んで係合部5まで移動させる。把持鉗子によってカプラ7が保持された状態で、操作者は、本体部3に対して係合部5を回転させる。これにより、カプラ7のネジ山7aと係合部5のネジ溝5aとがネジ嵌合することにより、中間部材6が近位端部材2に接続される。すなわち、中間部材6と第一開口2aとが連通状態となる。
【0028】
続いて、第一トロッカ50を通じて内視鏡10を体内へ導入し、
図8に示すように、内視鏡10の挿入部11の先端構成部13にチャンネルシース1のクリップ部9を取り付ける。本実施形態では、クリップ部9が先端構成部13の外周面を囲むようにクリップ部9で先端構成部13を挟むことで、内視鏡10の視野方向に第二開口8aが向くように遠位端部材8が先端構成部13に接続される。
【0029】
この状態で、内視鏡10の能動湾曲部12を動作させると、先端構成部13と一体的にチャンネルシース1の遠位端部材8が移動する。すなわち、内視鏡10の視野の移動と一体に遠位端部材8の第二開口8aが移動する。
【0030】
チャンネルシース1に処置具60を取り付け、第二開口8aから処置具60の先端を突出させると、内視鏡10の視野内に処置具60の先端のエンドエフェクタ61が進入し、処置具60の先端の状態を内視鏡10を用いて観察しながら処置を行うことができる。
【0031】
本実施形態のチャンネルシース1の効果について説明する。
一般的に、体外で内視鏡に取り付けて内視鏡と共に体内に挿入される外付けチャンネルは、内視鏡と外付けチャンネルとを共にトロッカに挿通する必要があるので、内径の大きなトロッカを要し、患者への侵襲が大きい。
【0032】
これに対して、本実施形態のチャンネルシース1は、内視鏡10を体内へ挿入するための第一トロッカ50とは別にチャンネルシース1の近位端部材2が体表に固定されるので、内視鏡10を挿入するためのトロッカ(第一トロッカ50)の内径は内視鏡10の挿入部11を挿通可能な内径で構わない。本実施形態では、チャンネルシース1を体内に導入するために、トロッカにより切開される部位とは別の部位に対する切開を要するが、2つの切開がそれぞれ小さな切開で済むので、全体として患者への侵襲を低くすることができる。
また、本実施形態では、チャンネルシース1の遠位端部材8及び中間部材6を体内に導入するためにはトロッカ(第一トロッカ50)を利用する。このため、本実施形態では、近位端部材2を患者に留置するためには本体部3を体壁に挿入可能な大きさの切開で済むので、侵襲が少ない。
【0033】
また、一般的に、公知の外付けチャンネルが内視鏡の能動湾曲部に取り付けられる場合、外付けチャンネルが内視鏡に取り付けられていない状態と比較して、内視鏡の能動湾曲部にかかる負荷が高い。このため、従来、外付けチャンネルが内視鏡に取り付けられた状態では、外付けチャンネルが内視鏡に取り付けられていない状態と比較して、内視鏡の能動湾曲部を動作させた際の湾曲精度が下がることが考えられる。
【0034】
本実施形態のチャンネルシース1は、内視鏡10の能動湾曲部12よりも遠位側である先端構成部13にチャンネルシース1の遠位端部材8が取り付けられ、能動湾曲部12及びこの近位側の領域にはチャンネルシース1が連結されないので、能動湾曲部12を湾曲動作させる際に能動湾曲部12にかかる負荷が低い。その結果、本実施形態のチャンネルシース1が内視鏡10に取り付けられた状態であっても内視鏡10の能動湾曲部12の湾曲精度を高く維持することができる。
【0035】
また、本実施形態のチャンネルシース1の近位端部材2に設けられた固定部4は、近位端部材2が体内に入り込まないように近位端部材2を体壁に固定可能であるとともに、近位端部材2に接続された中間部材6の近位端が体壁に対して移動しないように中間部材6の近位端(第一端部6a)の位置を体壁近傍に固定可能である。このため、チャンネルシース1内で処置具60を進退させたときに体壁に対して中間部材6が移動するように処置具60と中間部材6とが一体に動いてしまうのを防ぐことができる。その結果、チャンネルシース1に対する処置具60の進退量と、第二開口8aからの処置具60の突没量との間にずれが少なくなり、直観的な操作が可能となる。
【0036】
(変形例)
上記第1実施形態の変形例について説明する。
図5に示すように、本変形例では、係合部5及びカプラ7の構成が上記の第1実施形態と異なっている。本変形例の係合部5は、ネジ溝5aに代えて、カプラ7の最大外径より小さな貫通孔を有する弾性変形可能な環状部5bを有している。また、本変形例の係合部5は、本体部3に固定されている。
【0037】
本変形例のカプラ7は、ネジ山7aに代えて、小径部7bと大径部7cとを中心線方向に交互に並べて有している。カプラ7の小径部7bの外径は環状部5bの内径と略同径である。カプラ7の大径部7cの外径は、環状部5bを弾性変形させることで環状部5bを通過可能な程度に、環状部5bの貫通孔の内径よりも大きい。
【0038】
本変形例では、例えば公知の把持鉗子を用いてカプラ7を本体部3内へ引き込み、カプラ7を環状部に係止させることで、中間部材6を近位端部材2に接続することができる。本変形例では、本体部3の中心線方向へカプラ7を直線移動させるだけで容易に中間部材6を近位端部材2に接続することができるので、接続作業が容易である。
【0039】
(変形例)
上記第1実施形態の他の変形例について説明する。
図6に示すように、本変形例では、カプラ7の構成が上記の第1実施形態と異なる。
本変形例のカプラ7は、磁石に付着可能な金属からなる。カプラ7は、上記の第1実施形態と同様に、ネジ山7aを有する。
【0040】
本変形例では、カプラ7を本体部3内に引き込む公知の把持鉗子に代えて、磁力によりカプラ7と連結可能なピックアップ鉗子70を使用する。ピックアップ鉗子70は、本体部3内に挿入可能な挿入体71と、挿入体の先端に固定された磁石部72とを有する。磁石部72は、カプラ7に挿入可能な棒状部73を有している。磁石部72の棒状部73は、ピックアップ鉗子70の挿入体71の中心線と同軸をなす円柱状である。磁石部72の棒状部73がカプラ7に挿入されることで、ピックアップ鉗子70の挿入体71の中心線と中間部材6の中心線とが同軸となるように、ピックアップ鉗子70と中間部材6とが磁力により連結される。
本変形例では、ピックアップ鉗子70と中間部材6とを磁力により連結させて近位端部材2側(
図3参照)へと中間部材6を引き寄せることができる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態のチャンネルシース1について説明する。なお、以下の各実施形態及びその変形例において、上記の第1実施形態と同様の構成には第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0042】
図7及び
図8に示すように、本実施形態のチャンネルシース1は、遠位端部材8が、クリップ部9に代えて、内視鏡10の挿入部11の先端構成部13に接続可能な線状部材80を有している点で構成が異なっている。さらに、本実施形態のチャンネルシース1の近位端部材2は、内視鏡10の挿入部11の先端構成部13が線状部材80により緊縛された状態と線状部材80が弛緩した状態とを切り替える操作部85を有している。
【0043】
遠位端部材8に設けられた線状部材80は、弛緩した状態では、内視鏡10の挿入部11の外径よりも大きな環状であり、線状部材80により構成された環に内視鏡10の挿入部11の先端構成部13を挿入可能である(
図9参照)。
【0044】
線状部材80は、中間部材6の中心線に沿って中間部材6と並行して近位端部材2までのびている。線状部材80は、近位端部材2に設けられた爪部(第二爪部82)に係合する爪部(第一爪部81)を、近位端部材2の近傍に有している。
【0045】
第一爪部81と第二爪部82は、線状部材80を近位端部材2のさらに近位側へ向かって移動させる際には線状部材80の移動を規制せず、線状部材80が近位端部材2の遠位側へ向かって移動するのを規制する。本実施形態では、第一爪部81と第二爪部82とが係合した状態となることにより、線状部材80が先端構成部13の外周面を緊縛した状態を維持可能である。
【0046】
操作部85は、近位端部材2に設けられた第二爪部82と、第一爪部81との係合状態を切り替える。操作部85は、特に操作されていない状態では第一爪部81と第二爪部82との係合状態を維持する。操作者が操作部85を操作することにより、線状部材80が先端構成部13の外周面を緊縛した状態を解除して線状部材80を弛緩させることができる。
【0047】
本実施形態のチャンネルシース1の作用効果について説明する。
本実施形態のチャンネルシース1は、上記の第1実施形態と同様に体内に導入される。さらに、線状部材80が弛緩した状態となるように第一爪部81を第二爪部82に係合させておく。
チャンネルシース1を内視鏡10に接続するためには、まず、弛緩状態となっている線状部材80により構成される環に内視鏡10の挿入部11の先端構成部13を挿入する。続いて、第一爪部81を第二爪部82の近位側へと移動させることにより、線状部材80により構成される環が縮径し、線状部材80が先端構成部13の外周面に接する。さらに第一爪部81を第二爪部82の近位側へと移動させると、線状部材80は先端構成部13を緊縛した状態となる。これにより、内視鏡10の先端構成部13にチャンネルシース1の遠位端部材8が接続される。
【0048】
本実施形態でも上記の第1実施形態と同様に、内視鏡10の能動湾曲部12の動作と一体的にチャンネルシース1の遠位端部材8が動作する。
さらに、本実施形態では、弛緩した状態の線状部材80の環に内視鏡10の先端構成部13を挿入してから線状部材80を縮径させることで内視鏡10の先端構成部13にチャンネルシース1の遠位端部材8を接続することができるので、先端構成部13に対して遠位端部材8を取り付ける作業が容易である。
【0049】
(変形例)
上記第2実施形態の変形例について説明する。
図10に示すように、本変形例では、内視鏡10の先端構成部13が、線状部材80を挿入可能な周溝13aを有している。すなわち、本変形例では、上記第2実施形態に開示されたチャンネルシース1と、先端構成部13に周溝13aを有する内視鏡10とによって、医療システム100が構成されている。
周溝13aに線状部材80が入り込んだ状態で線状部材80が先端構成部13を緊縛することにより、内視鏡10の挿入部11の中心線方向への遠位端部材8の位置ずれを防ぐことができる。
【0050】
(変形例)
上記第2実施形態の他の変形例について説明する。
図11に示すように、本変形例では、内視鏡10の先端構成部13が、遠位端部材8の一部を所定の位置に保持する位置決め部13bを有している。すなわち、本変形例では、上記第2実施形態に開示されたチャンネルシース1と、先端構成部13に位置決め部13bを有する内視鏡10とによって、医療システム100が構成されている。
一例として、位置決め部13bは、遠位端部材8の一部が入り込むように遠位端部材8の形状に倣った内面形状を有して窪んでいる。
【0051】
位置決め部13bは、遠位端部材8を所定の位置に位置決めして保持するので、先端構成部13に遠位端部材8を接続することにより、先端構成部13に対する遠位端部材8の位置関係が一意に定まる。このため、本変形例では、内視鏡10の視野に対するチャンネルシース1の第二開口8aの位置を一意に定めることができる。その結果、チャンネルシース1に取り付けた処置具60が内視鏡10視野に対してどの位置から視野内進入するかを予め操作者が知ることができる。
【0052】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。
図12に示すように、本実施形態のチャンネルシース1は、遠位端部材8が、第二開口8aの向きを変化させる首振り機構86を有している。
首振り機構86は、遠位端部材8の第二開口8a近傍に一端が固定された操作ワイヤ87を有している。操作ワイヤ87は、中間部材6と並行して近位端部材2まで延びており、近位端部材2の近傍で体外から操作可能である。操作ワイヤ87を牽引することで、第二開口8aの向きが変化する。
本実施形態では、内視鏡10の視野内で処置具の位置及び姿勢を首振り機構86を用いて変化させることができるので、処置具を移動させる自由度が高い。
【0053】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。
図13に示すように、本実施形態は、上記の第2実施形態の変形例に開示されたチャンネルシース1及び内視鏡10と、表示部40とを備えた医療システム100である。
【0054】
表示部40は、モニタ41及び画像処理部42を有する。
画像処理部42は、内視鏡10から画像を取得してモニタ41に表示させる。さらに、画像処理部42は、内視鏡10から取得した画像に、第二開口8a(
図1参照)から突出する処置具60の突出方向を示すアプローチラインL1を重ねてモニタ41に表示させる。
【0055】
本実施形態では、第二開口8aから処置具60と突出させたときに内視鏡10画像におけるどこに処置具60が到達するのかを容易に操作者に把握させることができる。このため、処置対象部位がアプローチラインL1上に位置するように内視鏡10を動作させることにより、処置対象部位に処置具60を容易に到達させて処置を行うことができる。
【0056】
(変形例)
上記第4実施形態の変形例について説明する。
本変形例では、モニタ41がタッチパネル入力機能(不図示)を有している。モニタ41に内視鏡画像が表示されている状態でモニタ上の任意の位置を指等でポイントすると、ポイントした位置が視野中心となるように、能動湾曲部12が自動的に動作する。本変形例では、画像上の地点を直接指定して視野中心の位置を決めることができるので、誤差が少なく、操作も容易である。
【0057】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。
図14に示すように、本実施形態は、上記の第2実施形態の変形例に開示されたチャンネルシース1と、内視鏡10と、センシングトロッカ51とを備えている。
内視鏡10は、細長の挿入部11と、操作部20と、駆動部30と、表示部40とを備えている。
【0058】
挿入部11は、先端部に湾曲可能な能動湾曲部12を有している。能動湾曲部12の具体的構造には特に制限はない。したがって、回転軸を有する関節を一つ以上有する公知の関節構造や、複数の節輪や湾曲コマ(以下、「節輪等」と称する。)を有する公知の湾曲管構造等を適宜選択して採用することができる。能動湾曲部12には図示しないエンコーダ等が取り付けられ、関節構造における各関節の回転量や各節輪等の回動量を検出可能に構成されている。
【0059】
能動湾曲部12よりもさらに先端側には、撮像素子や照明機構等を有する観察部(先端構成部)13が設けられている。本実施形態では、チャンネルシース1の遠位端部材8を観察部13に接続することできる。
観察部13は、視野内に捉えた対象物までの距離を測定する測距機能を有する。測距機能を実現するための機構としては、ステレオ計測等の公知の機構を適宜選択して採用することができる。
【0060】
操作部20は、ジョイスティック21と、ボタン22とを備えている。使用者がジョイスティック21を操作すると、操作出力が駆動部30に伝達され、能動湾曲部12が駆動する。その結果、観察部13を所望の方向に向けることができる。ボタン22は、内視鏡10の駆動モード切替に用いる。駆動モードの詳細については後述する。
【0061】
駆動部30は、能動湾曲部12を駆動するための駆動力を発生する駆動機構31と、駆動機構31の動作を制御する制御部32とを備えている。駆動機構31としては、公知の各種モータ等を用いることができる。駆動機構31と能動湾曲部12とは、図示しないワイヤ等の伝達部材で接続されており、駆動機構31で発生した駆動力が伝達部材を介して能動湾曲部12に伝達されることで能動湾曲部12が駆動される。
【0062】
制御部32は、操作部20および駆動機構31と電気的に接続されており、駆動機構31を駆動するための駆動信号を生成して駆動機構31に送信する。駆動信号の生成態様は、駆動モードにより異なるが、詳細は後述する。
【0063】
表示部40は、モニタ41と、画像処理部42とを備えている。観察部13で取得された映像信号は、画像処理部42に送られて処理された後、モニタ41に表示される。表示部40としては、公知の内視鏡システムの表示機構を適宜選択して用いることができる。
制御部32と画像処理部42とは電気的に接続されている。したがって、操作部20は、モニタ41に表示されるカーソル等を操作するインターフェースとしても機能する。
【0064】
センシングトロッカ51は、筒状の本体部52と、本体部52に取り付けられたセンサ53とを備えている。
本体部52の基本構造は公知のトロッカと同様であり、内視鏡10の挿入部11を挿通可能である。本体部52は、必要に応じて、気腹状態を保持するための弁や体壁に穴を開けるための内針等を有してもよい。
センサ53は、センシングトロッカ51に挿通された挿入部11の進退量および挿入部11の軸線まわりの回転量、さらに本体部52の姿勢(センシングトロッカ51に挿通された挿入部11の軸線の向きとほぼ同一)を検出することが可能である。センサ53は、公知のエンコーダ等を用いて構成することができる。必要に応じて、センサ53による挿入部11の各種動作量の検出を可能にするまたは検出を容易にするための補助構造を挿入部11に設けてもよい。
センサ53は、たとえば不図示の配線によって制御部32に接続されている。センサ53は、制御部32と情報の送受信が可能に構成されており、センサ53の検出値が制御部32に送られる。
【0065】
医療システム100は、マニュアルモード(ノーマルモード)とロックオンモードとの2つの動作モードを有している。
マニュアルモードでは、使用者によるジョイスティック21の操作に基づいて制御部32が駆動信号を生成し、駆動機構31に送信する。その結果、能動湾曲部12は、ジョイスティック21の操作に対応して湾曲する。
【0066】
ロックオンモードでは、使用者により設定された座標(関心位置)に観察部13が常に向くように制御部32が駆動信号を自動生成し、駆動機構31に送信する。したがって、例えば使用者が内視鏡10を動かすと、動かした後も観察部13が関心位置Tsに向くように能動湾曲部12が駆動される。すなわち、ロックオンモード中は、使用者が内視鏡10をどのように動かしても、観察部13が関心位置Tsに向くように能動湾曲部12が制御部32により自動的に駆動される。ロックオンモード中、関心位置Tsは、モニタ41に表示される視野画像の所定位置(例えば中心)に常に位置するように制御される。
【0067】
関心位置Tsの初期設定は、例えば以下のように行われる。
使用者がモニタ41に表示された視野映像の一点を関心位置に設定すると、制御部32は、センサ53から受け取った挿入部11とセンシングトロッカ51との位置関係および本体部52の姿勢、能動湾曲部12から受け取った能動湾曲部12の湾曲状態、および観察部13と関心位置Tsとの距離等に基づいて関心位置Tsの座標を設定する(ステップS1)。その後挿入部11がセンシングトロッカ51に対し進退されたり回転されたりするたびにセンサ53が検出した挿入部11のセンシングトロッカ51に対する動作量および本体部52の姿勢が制御部32に送信される。制御部32は、センサ53から受け取った挿入部11の動作量および本体部52の姿勢と、現在の能動湾曲部12の湾曲状態とに基づいて、観察部13を再び関心位置Tsに向けるために必要な能動湾曲部12の動作量を計算し、駆動機構31を動作させるための指令値を算出する(ステップS2)。さらに、制御部32は、必要な動作量だけ能動湾曲部12が駆動されるように指令値に基づく駆動信号を生成して駆動部30の駆動機構31に送る(ステップS3)。上記のステップS1からステップS3までの各ステップの実行の結果、駆動機構31により能動湾曲部12が自動駆動されて観察部13が関心位置に向く。
【0068】
マニュアルモードとロックオンモードとの間の遷移は、ボタン22により行われる。すなわち、ボタン22を押すと、マニュアルモードからロックオンモードに、またはロックオンモードからマニュアルモードに切り替わる。ロックオンモード中、能動湾曲部12は制御部32により自動的に駆動されるため、使用者の操作に基づくジョイスティック21からの出力は、後述する所定の場合を除き制御部32ですべてキャンセルされ、能動湾曲部12の駆動には用いられない。
また、医療システム100においては、ロックオンモード中に関心位置の再設定を行うことができる。
【0069】
本実施形態では、チャンネルシース1の遠位端部材8を観察部13に取り付けることができる。ロックオンモードにおいて観察部13が関心位置に向くと、遠位端部材8の第二開口8aも観察部13と一体的に関心位置へ向く。上記のステップS1からステップS3までの各ステップにより関心位置が設定されると、観察部13と共に、チャンネルシース1の第二開口8aから突出する処置具60も関心位置に向くようになる。その結果、内視鏡10がロックオンモードで自動的に動作した際に観察部13と処置具60との位置関係が変化せず、所望の視野を捉え続けながらその視野内で処置を行うことができる。
【0070】
(変形例)
上記5実施形態の変形例について説明する。
図15に示すように、本変形例は、上記のチャンネルシース1、内視鏡10、表示部40、及び電動処置具65を備えた医療システム100である。
【0071】
電動処置具65は、チャンネルシース1の第一開口2aから挿入され、中間部材6の内部を通じてチャンネルシース1の第二開口8aから突出する。また、電動処置具65は、エンドエフェクタ61と、エンドエフェクタ61を動作させる駆動制御部62とを備えている。
【0072】
本変形例では、2つのチャンネルシース1が1つの内視鏡10に接続され、2つのチャンネルシース1に電動処置具65が取り付けられて使用される。本変形例では、2つの電動処置具65は、1つの入力デバイス66に接続され、この入力デバイス66に対する入力操作に従って動作する。
【0073】
このような構成であっても、上記の各実施形態と同様に、内視鏡10の能動湾曲動作と一体的に電動処置具65を移動させることができる。また、本変形例では、2つの電動処置具65を内視鏡10の能動湾曲動作により同時に移動させることができる。
なお、本変形例の医療システム100は、上記の内視鏡10システムに対して、内視鏡10を保持する電動アーム90をさらに備えていてもよい。
【0074】
電動アーム90は、上記の電動処置具65とともに1つの入力デバイス66に接続され、この入力デバイス66に対する入力操作に従って動作する。
このような構成であっても、上記の各実施形態と同様に、内視鏡10の能動湾曲動作と一体的に電動処置具65を移動させることができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
また、上述の各実施形態及び各変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
チャンネルシース(1)は、処置具を挿通するための第一開口(2a)を有し体表に留置可能な近位端部材(2)と、前記近位端部材(2)に接続され可撓性を有し前記処置具を挿通可能な筒状の中間部材(6)と、前記処置具を突没させるための第二開口(8a)を有し前記処置具とは異なる医療器具に着脱可能であり前記中間部材(6)に接続された遠位端部材(8)と、を備える。