(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体フィルムの表面に絶縁マージンを残して金属蒸着電極が形成された金属化フィルムを2枚重ね合わせて一対の金属化フィルムとし、前記一対の金属化フィルムのうち、一方の金属化フィルムの金属蒸着電極が前記誘電体フィルムを介して他方の金属化フィルムの金属蒸着電極に対向すると共に前記絶縁マージンが互いにフィルム幅方向反対側に位置するように積層または巻回してなるコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の両端面に接続された電極引出し用のメタリコン電極と、を備えた、金属化フィルムコンデンサであって、
前記一対の金属化フィルムのうち、陽極側の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極は、主成分がアルミニウムであり、かつ、その膜抵抗値が陰極側の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極の膜抵抗値よりも小さく、
前記一対の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極の各々は、前記誘電体フィルムを介して互いに対向する容量形成部と、前記メタリコン電極との接続部に設けられ、膜厚が前記容量形成部に比べて厚いヘビーエッジ部と、を有し、
前記陽極側の前記金属蒸着電極の前記容量形成部の膜厚は、前記ヘビーエッジ部側の端から前記絶縁マージン側の端部にかけて連続的に薄くなるように傾斜形状とされ、
前記一対の金属化フィルムのうち、前記陽極側の前記金属蒸着電極の前記容量形成部の前記絶縁マージン側の端が、前記誘電体フィルムを介して前記陰極側の前記金属蒸着電極の前記容量形成部のヘビーエッジ部側の端部であって前記ヘビーエッジ部から前記容量形成部にかけて電極表面が斜面となっている領域に対向し、前記陰極側の前記金属蒸着電極の前記容量形成部の絶縁マージン側の端が、前記誘電体フィルムを介して前記陽極側の前記金属蒸着電極の前記ヘビーエッジ部と前記容量形成部との境界領域に対向していることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
前記一対の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極の各々は、ヒューズ部を残して絶縁スリットにより複数の分割電極に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【背景技術】
【0002】
金属化フィルムコンデンサとしては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1(
図1)に記載された金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルム11、14の幅方向片方の端部にマージン部12a、15cを残して金属蒸着電極12、15が形成された金属化フィルム13、16が、金属蒸着電極12、15が誘電体フィルム11、14を介して対向するとともに、マージン部12a、15cが反対側に位置するように積層または巻回されてなるコンデンサ素子17と、コンデンサ素子17の両端面に接続された取出電極18、19とを備えるものである。そして、陽極側の金属蒸着電極15には、主に亜鉛、または亜鉛の合金が用いられ、陰極側の金属蒸着電極12には、主にアルミニウムが用いられている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の発明においては、コンデンサ寿命を長くするには十分なものとはいえなかった。
すなわち、特許文献1に記載の発明においては、亜鉛や亜鉛の合金を陽極材料として使用しているが、亜鉛や亜鉛の合金はアルミニウムに比べて自己回復性能に劣るため、高温雰囲気下で高電圧が負荷された場合に陽極側の金属化フィルムの保安性能が劣化するおそれがあった。
また、亜鉛はアルミニウムと比較して、水分による酸化劣化が進みやすく、陽極側の蒸着金属膜が亜鉛であるフィルムコンデンサにおいて、高温高湿雰囲気下で電圧印加する耐湿負荷試験を実施した場合、陽極酸化反応により陽極側の蒸着金属膜の酸化劣化が発生するおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、自己回復性能に優れ、高温雰囲気下で高電圧が印加された場合に陽極側の金属化フィルムの保安性能劣化を防ぐとともに、耐湿性改善を図り、コンデンサ寿命を長くした金属化フィルムコンデンサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルムの表面に絶縁マージンを残して金属蒸着電極が形成された金属化フィルムを2枚重ね合わせて一対の金属化フィルムとし、前記一対の金属化フィルムのうち、一方の金属化フィルムの金属蒸着電極が前記誘電体フィルムを介して他方の金属化フィルムの金属蒸着電極に対向すると共に前記絶縁マージンが互いにフィルム幅方向反対側に位置するように積層または巻回してなるコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の両端面に接続された電極引出し用のメタリコン電極と、を備えた、金属化フィルムコンデンサであって、前記一対の金属化フィルムのうち、陽極側の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極は、主成分がアルミニウムであり、かつ、その膜抵抗値が陰極側の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極の膜抵抗値よりも小さく、前記一対の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極の各々は、
前記誘電体フィルムを介して互いに対向する容量形成部と、前記メタリコン電極との接続部に設けられ、膜厚が前記容量形成部に比べて厚いヘビーエッジ部と、を有し、
前記陽極側の前記金属蒸着電極の前記容量形成部の膜厚は、前記ヘビーエッジ部側の端から前記絶縁マージン側の端部にかけて連続的に薄くなるように傾斜形状とされ、前記一対の金属化フィルムのうち、前記
陽極側の前記金属蒸着電極の前記容量形成部の
前記絶縁マージン側の端が、前記誘電体フィルムを介して前記
陰極側の前記金属蒸着電極の
前記容量形成部のヘビーエッジ部側の端部であって前記ヘビーエッジ部から前記容量形成部にかけて電極表面が斜面となっている領域に対向し、前記
陰極側の前記金属蒸着電極の前記容量形成部の絶縁マージン側
の端が、前記誘電体フィルムを介して前記
陽極側の前記金属蒸着電極の前記ヘビーエッジ部
と前記容量形成部との境界領域に対向していることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【0007】
第1の発明によれば、誘電体フィルムの表面に絶縁マージンを残して金属蒸着電極が形成された一対の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極のうち、陽極側の金属蒸着電極の主成分がアルミニウムであり、かつ、その膜抵抗値が陰極側の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極の膜抵抗値よりも小さいため、陽極側の金属蒸着電極の一部が陽極酸化反応により絶縁体化しても陽極側の金属蒸着電極の静電容量を十分確保でき、また陽極側の金属蒸着電極の大部分が絶縁体化するまでの時間を延ばすことができる。
また、tanδ増加も抑えることができる。
【0008】
また、陽極側の金属蒸着電極材料の主成分をアルミニウムとしたため、金属化フィルムの保安性能を維持しつつコンデンサ寿命を向上させた金属化フィルムコンデンサとすることができる。
【0009】
第2の発明に係る金属化フィルムコンデンサは、前記一対の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極の各々が、ヒューズ部を残して絶縁スリットにより複数の分割電極に分割されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明によれば、陽極側の金属蒸着電極は、ヒューズ部を残して絶縁スリットにより複数の分割電極に分割されているため、高温高湿雰囲気下での電圧印加により誘電体が劣化し絶縁破壊が生じた場合でも、分割電極を切り離すことで絶縁回復し、耐電圧性能の向上およびコンデンサ寿命の長期化を図ることができる。
【0011】
さらに、陽極側、陰極側ともに金属蒸着電極は、ヒューズ部を残して絶縁スリットにより複数の分割電極に分割されているため、高電圧が印加された場合に絶縁回復する確率が増大し、保安性能が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一対の金属蒸着電極のうち、陽極側の金属蒸着電極の主成分がアルミニウムであり、かつ、その膜抵抗値が陰極側の金属蒸着電極の膜抵抗値よりも小さいため、陽極側の金属蒸着電極の一部が陽極酸化反応により絶縁体化しても陽極側の金属蒸着電極の静電容量を十分確保でき、また、陽極側の金属蒸着電極の大部分が絶縁体化するまでの時間を延ばすことができる。
また、tanδ増加も抑えることができる。
【0015】
そして、陽極側の金属蒸着電極材料の主成分をアルミニウムとしたため、金属化フィルムの保安性能を維持しつつコンデンサ寿命を向上させた金属化フィルムコンデンサとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1〜
図5を参照しつつ本発明の実施形態に係る金属化フィルムコンデンサ1について説明する。
【0018】
(金属化フィルムコンデンサの構成)
図1に示すように、金属化フィルムコンデンサ1は、コンデンサ素子2と、このコンデンサ素子2を収納するプラスチックケース3と、プラスチックケース3内のコンデンサ素子2を封止するエポキシ樹脂4とを有している。
【0019】
コンデンサ素子2は、
図2および
図3に示すように、巻回された2枚(一対)の金属化フィルム5、6と、金属化フィルム5、6の各端面に金属溶射されて形成されたメタリコン電極7、8と、メタリコン電極7、8に各々接続されたリード線9、10とを有している。
【0020】
金属化フィルム5は、
図3に示すように、誘電体フィルム11と、絶縁マージン13が残るように誘電体フィルム11の上面に形成された金属蒸着電極12とを有している。また、金属化フィルム6は、誘電体フィルム21と、絶縁マージン23が残るように誘電体フィルム21の上面に形成された金属蒸着電極22とを有している。
各々の絶縁マージン13、23は、各々の誘電体フィルム11、21の幅方向の一方端部において、誘電体フィルム11、21の長さ方向に延在するものである。
【0021】
ここで、誘電体フィルム11、21のフィルム幅方向(以下、単に幅方向と称する)とは、メタリコン電極7、8の対向方向である。また、誘電体フィルム11、21の長さ方向(以下、単に長さ方向と称する)とは、誘電体フィルム11、21の巻回方向である。
【0022】
そして、コンデンサ素子2は、2枚の金属化フィルム5、6の金属蒸着電極12、22が誘電体フィルム11、21を介して対向するように、かつ、金属化フィルム5、6各々の絶縁マージン13、23が互いに幅方向反対側に位置するように重ね合わされた状態で巻回されている。
【0023】
次に、金属化フィルム5、6を構成する誘電体フィルム11、21および金属蒸着電極12、22について詳しく説明する。
【0024】
誘電体フィルム11は、
図3に示すように、メタリコン電極7と接続されるフィルムであり、例えばポリプロピレン製である。誘電体フィルム11の厚さは、例えば2.8μmとされる。
一方、誘電体フィルム21は、メタリコン電極8と接続されるフィルムであり、例えばポリプロピレン製である。誘電体フィルム21の厚さは、誘電体フィルム11と同様、例えば2.8μmとされる。
なお、誘電体フィルム11、21の材質や厚さはこれに限られるものではない。
【0025】
金属蒸着電極12は、容量形成部14(電極対向部分)とヘビーエッジ部15とを有している。容量形成部14は、その膜厚t1が均一であり、容量形成部14における膜抵抗値はおよそ12Ω/□とされる。
この容量形成部14の材料には、アルミニウムが用いられている。なお、容量形成部14の膜厚t1は均一でなくてもよく、容量形成部14は例えば幅方向に連続的に減少する構成であってもよい。
【0026】
ヘビーエッジ部15は、金属蒸着電極12のうちメタリコン電極7側端部(即ち、メタリコン電極7との接続部)に設けられ、容量形成部14に比べて厚膜とされる(即ち、膜抵抗値が低い)。
ヘビーエッジ部15には、アルミニウムと亜鉛の合金が用いられる。また、ヘビーエッジ部15における膜抵抗値はおよそ5Ω/□とされる。
なお、
図3では、ヘビーエッジ部15から容量形成部14にかけて、なだらかな斜面となっているが、ヘビーエッジ部をマスキングすることで、切り立った直立部とすることも可能である。
【0027】
金属蒸着電極12は、ヘビーエッジ部15に亜鉛が含まれているものの、全体としては略アルミニウムで構成されている。即ち、金属蒸着電極12の主成分はアルミニウムということができる。金属蒸着電極12の金属全体におけるアルミニウムの割合は、特に限定されるものではないが、例えば60%以上である。
【0028】
上記のように構成された金属蒸着電極12は、メタリコン電極7およびリード線9を介して陽極側電極と接続される。即ち、金属蒸着電極12(金属化フィルム5)は、陽極側電極とされる。
【0029】
一方、金属蒸着電極22は、容量形成部24とヘビーエッジ部25とを有している。容量形成部24は、その膜厚t2が均一であり、容量形成部24における膜抵抗値はおよそ20Ω/□とされる。この容量形成部24の材料には、アルミニウムが用いられている。
なお、容量形成部24の膜厚t2は均一でなくてもよく、容量形成部24は例えば幅方向に連続的に減少する構成であってもよい。
【0030】
ヘビーエッジ部25は、金属蒸着電極22のうちメタリコン電極8側端部(即ち、メタリコン電極8との接続部)に設けられ、容量形成部24に比べて厚膜とされる(即ち、膜抵抗値が低い)。ヘビーエッジ部25には、ヘビーエッジ部15と同様、アルミニウムと亜鉛の合金が用いられる。また、ヘビーエッジ部25における膜抵抗値はおよそ5Ω/□とされる。
【0031】
上記のように構成された金属蒸着電極22はメタリコン電極8およびリード線10を介して陰極側電極と接続される。即ち、金属蒸着電極22(金属化フィルム6)は、陰極側電極とされる。
【0032】
なお、本実施形態においては、ヘビーエッジ部15、25の材料をアルミニウムと亜鉛の合金としたが、その材料はアルミニウムのみであってもよい。また、ヘビーエッジ部15、25は、そのいずれか一方、または双方ともに設けられていなくてもよい。
【0033】
ここで、金属蒸着電極12(陽極側の金属蒸着電極)の膜厚(平均膜厚)は、金属蒸着電極22(陰極側の金属蒸着電極)の膜厚(平均膜厚)よりも厚く形成されており、金属蒸着電極12(陽極側の金属蒸着電極)の膜抵抗値が、金属蒸着電極22(陰極側の金属蒸着電極)の膜抵抗値よりも小さくされている。
本願でいう金属蒸着電極12の膜厚とは、容量形成部14の膜厚t1を意味し、金属蒸着電極22の膜厚とは、容量形成部24の膜厚t2を意味する。
なお、平均膜厚とは、金属蒸着電極12、22の容量形成部14、24の複数点の膜厚を計測して求めた平均値である。膜厚(膜抵抗)の測定は、四探針法で行い、膜厚が均一な場合はフィルム幅方向の2点以上を測定し、膜厚が不均一な場合はフィルム幅方向に向かってフィルム両端近傍の3点以上を測定する。
【0034】
次に、
図4を参照しつつ金属蒸着電極12、22に形成された金属蒸着の態様について説明する。
なお、金属蒸着の態様は金属蒸着電極12、22共に同じであるため、以下、金属蒸着電極12に形成された金属蒸着の態様についてのみ説明し、金属蒸着電極22に形成された金属蒸着の態様については、その説明を割愛する。
【0035】
金属蒸着電極12には、
図4に示すように、金属蒸着電極12を複数に分割する絶縁スリット31が形成されている。
絶縁スリット31は、金属蒸着の行われていない部分であり、具体的には、Y字またはY字を互いに逆向きに2つ組み合わせた形状をしたスリットである(形状はこれに限られるものではない)。そして、当該形状の絶縁スリット31を複数組み合わせることにより金属蒸着電極12は複数に分割され分割電極32とされる。
【0036】
隣接する分割電極32は、ヒューズ部33で接続されている。即ち、絶縁スリット31は、ヒューズ部33を残して金属蒸着電極12を複数に分割している。
ヒューズ部33は、絶縁破壊が生じた際、自己回復性能により絶縁回復できない場合に、ヒューズとして機能する部分である。
【0037】
なお、金属蒸着電極12と金属蒸着電極22の金属蒸着の態様は同じとしたが、異なっていてもよい。例えば、金属蒸着電極12と金属蒸着電極22とでは異なる形状の絶縁スリットが形成されていてもよい。
【0038】
(金属化フィルムの変形例)
次に、
図5を参照しつつ金属化フィルム5の変形例について説明する。
図5に示す金属化フィルム50(陽極側の金属化フィルム)は、
図3に示す金属化フィルム5(陽極側の金属化フィルム)と比べて、金属蒸着電極の形状が異なる金属化フィルムである。なお、
図5のうち
図3に示した構成と同一の部分については、同じ符号を付している。
【0039】
金属化フィルム50は、
図5に示すように、金属蒸着電極52に形成された容量形成部54(電極対向部分)の膜厚が、ヘビーエッジ部15側の端部54aから絶縁マージン13側の端部54bにかけて連続的に薄くなるように滑らかな傾斜形状とされている。
そして、ヘビーエッジ部15側の端部54aでの膜厚は、ヘビーエッジ部15の膜厚と同じとされ、絶縁マージン13側の端部54bでの膜厚は、例えば容量形成部24の膜厚t2(
図3参照)と同じとされる。
【0040】
なお、ヘビーエッジ部15側の端部54aとは、容量形成部54のうちヘビーエッジ部15側の端を含む部分を意味し、絶縁マージン13側の端部54bとは、容量形成部54のうち絶縁マージン13側の端を含む部分を意味する。
したがって、容量形成部54の膜厚は、ヘビーエッジ部15側の端から絶縁マージン13側の端まで連続的に薄くされている必要はなく、両端部のうちの少なくとも一方に膜厚が減少しない直線部分が設けられていてもよい。例えば、本変形例では、
図5に示すように、端部54bに直線部分Lが設けられている。
【0041】
また、容量形成部54には、アルミニウムを主成分とする電極材料、例えば、アルミニウム単体、または、アルミニウムと亜鉛の合金が用いられている。
【0042】
上記のように形成された金属化フィルム50は、容量形成部54の膜厚が連続的に薄くされているので、金属化フィルム50の金属蒸着電極52の上面と、当該上面の上方にある陰極側の金属化フィルム(不図示)の誘電体フィルムとの隙間(ヘビーエッジ部により生じる隙間)を小さくでき、コンデンサ寿命を向上できる。
【0043】
(実施例)
下記表1のように、一対の金属蒸着電極のうち、陽極側の金属蒸着電極の主成分をアルミニウムとし、膜抵抗を下記のとおりとし、陽極側、陰極側ともに分割電極(
図4)とした下記試料、
・実施例1(
図3) 陽極側(膜厚均一):10Ω/□、陰極側:20Ω/□
・実施例2(
図5) 陽極側(膜厚傾斜):7〜15Ω/□、陰極側:20Ω/□
・比較例 陽極側(膜厚均一):20Ω/□、陰極側:20Ω/□
について、定格600V−200μFの金属化フィルムコンデンサを作製し、85℃85%RHで、2000時間の耐湿負荷試験を行った。その結果を表1に示す(試料数n=10の平均値)。
【0045】
上記表1から明らかなように、一対の金属蒸着電極の陽極側を低膜抵抗(膜厚大)とした、実施例1、2は、陽極側、陰極側をともに高膜抵抗(膜厚同)とした比較例1と比べて、陽極側の金属蒸着電極の静電容量減少を抑えることができ、tanδ増加も抑えることができた。
【0046】
また、陽極側の金属蒸着電極は、容量形成部と、メタリコン電極との接続部に設けられ、容量形成部に比べて厚膜とされたヘビーエッジ部とを有している。
そして、容量形成部の膜厚は、ヘビーエッジ部側の端部が最も厚く、ヘビーエッジ部側の端部から絶縁マージン側の端部に向かって連続的に薄くなるように滑らかな傾斜形状とした実施例2の場合は、フィルム層間の隙間を減少させることができ、寿命特性をより改善することができる。
【0047】
(効果)
本発明に係る金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルムの表面に絶縁マージンを残して金属蒸着電極が形成された一対の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極のうち、陽極側の金属蒸着電極の主成分がアルミニウムであり、かつ、その膜抵抗値が陰極側の金属化フィルムに形成された金属蒸着電極の膜抵抗値よりも小さいため、陽極側の金属蒸着電極の一部が陽極酸化反応により絶縁体化しても陽極側の金属蒸着電極の静電容量を十分確保でき、また陽極側の金属蒸着電極の大部分が絶縁体化するまでの時間を延ばすことができる。
【0048】
また、陽極側の金属蒸着電極材料の主成分をアルミニウムとしたため、金属化フィルムの保安性能を維持しつつコンデンサ寿命を向上させた金属化フィルムコンデンサとすることができる。
【0049】
また、陽極側の金属蒸着電極は、陽極側の金属蒸着電極は、ヒューズ部を残して絶縁スリットにより複数の分割電極に分割されているため、高温高湿雰囲気下での電圧印加により誘電体が劣化し絶縁破壊が生じた場合でも、分割電極を切り離すことで絶縁回復し、耐電圧性能の向上およびコンデンサ寿命の長期化を図ることができる。
【0050】
さらに、陽極側、陰極側ともに金属蒸着電極は、ヒューズ部を残して絶縁スリットにより複数の分割電極に分割されているため、高電圧が印加された場合に絶縁回復する確率が増大し、保安性能が向上する。
【0051】
また、容量形成部の膜厚は、前記ヘビーエッジ部側の端部が最も厚く、ヘビーエッジ部側の端部から前記絶縁マージン側の端部に向かって連続的に薄くなるように滑らかな傾斜形状とすることで、フィルム層間の隙間を減少させることができ、寿命特性を改善することができる。
【0052】
また、一対の金属蒸着電極の双方には、金属蒸着電極をヒューズ部を残して複数に分割する絶縁スリットが形成されている。よって、自己回復性能により絶縁回復できない場合には、ヒューズ部が蒸発・飛散する。その結果、絶縁欠陥部を含む領域が絶縁され、金属化フィルムの保安性能をより向上できる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【0054】
本実施形態においては、2枚の金属化フィルムを巻回してコンデンサ素子を形成したが、複数枚の金属化フィルムを積層してコンデンサ素子を形成してもよい。