特許第6211261号(P6211261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211261
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20171002BHJP
   G01S 17/10 20060101ALI20171002BHJP
   G02B 13/02 20060101ALI20171002BHJP
   G02B 15/10 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   G01S7/481 A
   G01S17/10
   G02B13/02
   G02B15/10
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-258395(P2012-258395)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-106072(P2014-106072A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】303047872
【氏名又は名称】株式会社ニコン・トリンブル
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100078189
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆男
(72)【発明者】
【氏名】新井 聡
【審査官】 請園 信博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−145207(JP,A)
【文献】 特開平03−046608(JP,A)
【文献】 特開2007−155430(JP,A)
【文献】 特開平07−209422(JP,A)
【文献】 特開2005−351850(JP,A)
【文献】 米国特許第04713544(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0209090(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0158604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
G01C 1/00 − 15/14
G01S 7/48 − 7/51
17/00 − 17/95
G02B 9/00 − 17/08
21/02 − 21/04
25/00 − 25/04
27/00 − 27/64
G03B 13/00 − 13/28
17/04 − 17/17
H04N 5/222 − 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標物体へ測定光を照射する送信光学系と、
前記目標物体によって前記測定光が反射または散乱された戻り光を受光する受信光学系と、
前記目標物体の像を結像する望遠光学系と、
前記目標物体の像を結像し、前記望遠光学系よりも視野の広い広角光学系と、
を備え、
前記望遠光学系と前記広角光学系とは、前記目標物体に向けられる対物光学系を含む一部の構成部材を共有し、
前記望遠光学系と前記送信光学系前記受信光学系とは、同軸光学系として構成され
前記広角光学系は、
前記望遠光学系と共有している共有光学部材と、前記共有光学部材以外で構成される非共有光学部材とを備え、
前記共有光学部材を透過した光を反射して前記光の進行方向を変える反射部材を含み、
前記反射部材は、前記望遠光学系、前記送信光学系及び前記受信光学系の光軸外に配置される測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測距装置において、
前記共有光学部材の焦点距離をfとし、前記非共有光学部材の焦点距離をfとすると、以下の条件式(1)を満足する測距装置。
【数1】
【請求項3】
請求項1または2に記載の測距装置において、
前記反射部材と前記望遠光学系の結像面までの距離をdとし、前記望遠光学系の口径をDとし、前記望遠光学系の焦点距離をfとし、前記望遠光学系の光軸から前記非共有光学部材の第1面までの距離をyとすると、以下の条件式(2)を満足する測距装置。
【数2】
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の測距装置において、
前記望遠光学系と前記広角光学系と前記送信光学系と前記受信光学系とは、前記対物光学系を共有し、
前記反射部材は、前記送信光学系および/または前記受信光学系の光路内の位置に配置される測距装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測距装置において、
前記反射部材を、前記送信光学系および/または前記受信光学系の光路内である第1の位置と当該光路外である第2の位置とに切り替え駆動する駆動手段をさらに備える測距装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の測距装置において、
前記望遠光学系と前記広角光学系と前記送信光学系と前記受信光学系とは、前記対物光学系を共有し、
前記反射部材は、前記送信光学系および前記受信光学系の光路外に配置される測距装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の測距装置において、
前記望遠光学系により結像された前記目標物体の像を撮像する第1の撮像素子と、
前記広角光学系により結像された前記目標物体の像を撮像する第2の撮像素子と、
をさらに備え、
前記第1の撮像素子および前記第2の撮像素子は、それぞれ異なる撮像素子である測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レイザーダイオードなどの光源から出力された測定光が目標物体で反射または散乱された戻り光を受光素子で受光し、測定光が出射されてから戻り光を受光するまでの時間に基づいて目標物体までの距離を測定する測距装置が知られている。このような測距装置は視野が狭いため、目標物体を測距装置の視野内に捉えにくかった。そこで、望遠光学系とは別に、視野の広い広角光学系を設けた測距装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3626141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、望遠光学系と広角光学系とが別々に設けられているため、特に測距装置に近い目標物体までの距離を測定する際には、望遠光学系と広角光学系との視差が大きくなってしまう。望遠光学系と広角光学系との視差が大きいと、広角光学系の視野内に目標物体を捉えていても、望遠光学系の視野内に目標物体を捉えられていない場合があり、この場合、目標物体を誤認識したり、視野の再調整が必要となったりと不便であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による測距装置は、目標物体へ測定光を照射する送信光学系と、前記目標物体によって前記測定光が反射または散乱された戻り光を受光する受信光学系と、前記目標物体の像を結像する望遠光学系と、前記目標物体の像を結像し、前記望遠光学系よりも視野の広い広角光学系と、を備え、前記望遠光学系と前記広角光学系とは、前記目標物体に向けられる対物光学系を含む一部の構成部材を共有し、前記望遠光学系と前記送信光学系前記受信光学系とは、同軸光学系として構成され、前記広角光学系は、前記望遠光学系と共有している共有光学部材と、前記共有光学部材以外で構成される非共有光学部材とを備え、前記共有光学部材を透過した光を反射して前記光の進行方向を変える反射部材を含み、前記反射部材は、前記望遠光学系、前記送信光学系及び前記受信光学系の光軸外に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1および第2の実施の形態による測距装置の構成を説明する図である。
図2】第1の実施の形態による測距装置の広角光学系の構成を説明する図である。
図3】広角光学系の配置条件を説明する図である。
図4】従来の測距装置によって目標物体を撮影する様子を説明する図である。
図5】望遠光学系と広角光学系の視差を説明する図である。
図6】送信光学系の測定光の強度を説明する図である。
図7】第2の実施の形態による測距装置の広角光学系の構成を説明する図である。
図8】変形例1における測距装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
図面を参照して、本発明による第1の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施の形態による測距装置1の構成を説明する図である。測距装置1は、図示しない目標物体を撮影するための望遠光学系2と、目標物体に測定光を照射するための送信光学系3と、測定光が目標物体で反射或いは散乱して戻ってきた受信光を受光するための受信光学系4と、を有する。望遠光学系2と送信光学系3と受信光学系4とは、対物光学系5を共有する同軸光学系として構成されている。なお、以下の説明において、対物光学系5の光軸方向をz軸方向とし、z軸方向に垂直な平面をxy平面とする。すなわちx軸方向およびy軸方向は、光学部材の径方向である。またxy平面において、x軸方向を左右方向とし、y軸方向を上下方向とする。
【0009】
望遠光学系2は、目標物体側から順に、対物光学系5と、ダイクロイックプリズム13と、合焦レンズ6と、撮像素子7と、を含む。対物光学系5を透過した目標物体からの光は、ダイクロイックプリズム13および合焦レンズ6を透過して、撮像素子7の撮像面に結像される。撮像素子7は、例えばCMOSなどのイメージセンサであり、撮像面に結像された目標物体の像を撮像し、得られた画像信号を制御部30(図2)へ出力する。
【0010】
また、送信光学系3は、測定光が出射される光源12側から順に、光源12と、コリメータレンズ11と、反射鏡10と、対物光学系5と、を含む。反射鏡10は、対物光学系5と合焦レンズ6との間の光路中に配置されている。コリメータレンズ11と光源12とは、反射鏡10の反射光路上に配置されている。また、光源12としては、LEDやレイザーダイオード等が使用される。なお、光源12から射出される測定光は、赤外光が望ましいが、これに限らなくてもよく、例えば、波長650(nm)前後の赤色光であってもよい。
【0011】
さらに、受信光学系4は、対物光学系5と、ダイクロイックプリズム13と、受光素子14と、を含む。ダイクロイックプリズム13は、反射鏡10と合焦レンズ6との間の光路中に光分割素子として配置されている。受光素子14は、対物光学系5の焦点位置付近に配置されている。
【0012】
以上の構成の下、光源12から射出された測定光は、コリメータレンズ11を経た後、反射鏡10によって反射され、対物光学系5を介して略平行光束として目標物体に照射される。これにより、目標物体で散乱した、或いは、目標物体付近に配置されたコーナーキューブで反射した測定光が再び対物光学系5を介して反射鏡10の周辺部を受信光として通過する。そしてこの受信光は、ダイクロイックプリズム13内の反射コート部15で反射され、さらにダイクロイックプリズム13内部を進行して射出され、受光素子14へ入射する。
【0013】
測距装置1の制御部30(図2)は、光源12から測定光を射出したタイミングと受信光が受光素子14により受光されたタイミングとの時間差に基づき、本測距装置1から目標物体までの距離を演算する。このようにして使用者は、本測距装置1を用いて目標物体までの距離を測定することができる。なお、光源12からの測定光が赤色光である場合に、測定光の光束を細くして目標物体に照射すれば、目標物体における測定位置を赤色のスポット像として観察することが可能となる。
【0014】
測距装置の望遠光学系が、接眼光学系を含む眼視光学系(アフォーカル光学系)を構成している場合、アイレリーフ、望遠鏡倍率、光学性能等を鑑みて、測距装置の口径は、30〜60mmと大きなものになる。しかしながら、本実施形態では、眼視光学系の時に使用していた対物光学系5を望遠光学系2として流用することで、安価な測距装置1を提供することを想定している。
【0015】
また本実施形態の測距装置1は、目標物体を測距装置1の視野内に捉えやすくするために、望遠光学系2よりも視野の広い広角光学系20を有している。図2は、この広角光学系20の構成を説明する図である。なお、本実施形態では、望遠光学系2の画角をwとすると、以下の式(1)で表される画角wを許容する光学系を広角光学系と定義する。しかしながら、広角光学系の定義は必ずしもこれに限らなくてもよい。
【数1】
【0016】
広角光学系20は、目標物体側から順に、対物光学系5と、反射鏡21と、ワイドコンバータ光学系22と、撮像素子23と、を含む。望遠光学系2と広角光学系20とは、対物光学系5を共有している。反射鏡21は、対物光学系5とダイクロイックプリズム13との間(すなわち望遠光学系2、送信光学系3および受信光学系4の光路内)であって、望遠光学系2および送信光学系3および受信光学系4の光軸外の位置に配置されている。対物光学系5を透過した目標物体からの光は、反射鏡21により反射され、ワイドコンバータ光学系22を透過して、撮像素子23の撮像面に結像される。撮像素子23は、例えばCMOSなどのイメージセンサであり、撮像面に結像された目標物体の像を撮像し、得られた画像信号を制御部30へ出力する。
【0017】
制御部30は、望遠光学系2の撮像素子7からの画像信号と広角光学系20の撮像素子23からの画像信号とを切り替えて表示部31に表示する。なお、この切り替えは、不図示のボタンを操作することで、使用者が自由に行うことができるようになっている。
【0018】
本実施形態の広角光学系20において、望遠光学系2と共有している光学部材(共有光学部材)の焦点距離をfとし、望遠光学系2と非共有である光学部材(非共有光学部材)の焦点距離をfとすると、これらの条件は、以下の式(2)で表される。なお、本実施形態の場合、共有光学部材は対物光学系5であり、非共有光学部材はワイドコンバータ光学系22である。
【数2】
【0019】
式(2)の下限は、非共有光学部材の焦点距離fが長くなり過ぎないための制限を表している。非共有光学部材の焦点距離fが長くなり過ぎると、望遠光学系2の光軸から広角光学系20の撮像素子23までのy軸方向の距離が長くなるため、測距装置1がy軸方向(径方向)に大きくなり過ぎてしまう。したがって式(2)の下限は、測距装置1が大きくなり過ぎないために設けられている。なお、測距装置1をより小型化できるように、式(2)の下限値(すなわち|f/f|の下限値)を5としてもよい。
【0020】
式(2)の上限は、共有光学部材の焦点距離fが長くなり過ぎないための制限を表している。共有光学部材の焦点距離fが長くなり過ぎると、望遠光学系2の焦点距離が長くなり、望遠光学系2のFナンバーが暗く画角が小さい光学系となってしまう。したがって式(2)の上限は、望遠光学系2の画角をできるだけ広くし且つFナンバーをできるだけ明るくするために設けられている。なお、さらに、望遠光学系2の画角を広くし且つFナンバーを明るくできるように、式(2)の上限値(すなわち|f/f|の上限値)を20としてもよい。
【0021】
図3は、本実施形態の広角光学系20の配置条件を説明する図である。望遠光学系2の光軸から非共有光学部材(ワイドコンバータ光学系22)の第1面までの距離をyとし、広角光学系20の反射鏡21と望遠光学系2の撮像素子7の撮像面との間の距離をdとし、望遠光学系2の口径をDとし、望遠光学系2の焦点距離をfとすると、上記距離yの条件は、以下の式(3)で表される。
【数3】
【0022】
式(3)の下限は、広角光学系20と望遠光学系2に光軸平行で入射してきた光線とが互いに干渉しないように、広角光学系20を配置するための制限を表している。図3の中段に示すように、上記距離yが式(3)の下限を下回ると、上記干渉が起こってしまい、目標物体の像を表示部31に表示する際に、例えば、フレア光によりノイズが生じてしまったり、特定の範囲から来る光線だけ遮蔽され光量が極端に少なくなってしまったりするといった弊害が生じる。
【0023】
式(3)の上限は、測距装置1が大きくなり過ぎないための制限を表している。図3の下段に示すように、上記距離yが式(3)の上限を上回ると、広角光学系200の位置が望遠光学系2の光軸からy軸方向に離れ過ぎてしまい、測距装置1がy軸方向(径方向)に大きくなり過ぎるという弊害が生じる。
【0024】
図4は、従来の測距装置によって縞模様の目標物体を撮影する様子を説明する図である。従来の測距装置では、望遠光学系と広角光学系とで視差が生じてしまうため、図4に示すように、望遠光学系による表示画面と広角光学系による表示画面とでそれぞれの表示中心位置がずれてしまう。したがって、広角光学系の視野内に目標物体を捉えていても、望遠光学系の視野内に目標物体を捉えられていない場合がある。この場合、目標物体を誤認識してしまう可能性がある。また、望遠光学系の視野内に目標物体を捉えるための再調整が必要であり、手間がかかってしまう。これを改善するためには、望遠光学系の光軸と広角光学系の光軸との距離を近づけ、視差を表す角度θ(図5)を小さくする必要がある。
【0025】
図5は、この視差を表す角度θを説明する図であり、図5上段は従来の測距装置の場合を示し、図5下段は本実施形態の測距装置1の場合を示す。角度θは、測距装置から目標物体までの距離をLとし、広角光学系と望遠光学系の光軸間距離をHとすると、以下の式(4)で定義される。
【数4】
【0026】
従来の測距装置のように望遠光学系と広角光学系とが別々に配置されている場合、望遠光学系の口径をDとし、広角光学系の口径をDとすると、望遠光学系と広角光学系との光軸間距離Hは、以下の式(5)で表される距離よりも長くなってしまう。したがって角度θを以下の式(6)で表される角度より小さくすることは物理的に不可能である。
【数5】
【数6】
【0027】
これに対して、本実施形態の測距装置1は、上述したように、望遠光学系2と広角光学系20とで対物光学系5を共有する構成となっている。これにより、図5下段に示すように、望遠光学系2と広角光学系20との光軸間距離Hを、従来よりも短くすることができる。具体的には、望遠光学系2と広角光学系20の光軸間距離Hを、以下の式(7)で表される距離よりも短くすることができる。したがって本実施形態の測距装置1では、角度θを以下の式(8)で表される角度より小さくすることができるので、従来の測距装置と比べて、望遠光学系2と広角光学系20との視差を小さくすることができる。
【数7】
【数8】
【0028】
例えば、D=D=40mm、L=10000mmである場合について考える。これらの値を上記式(5)〜(8)に代入して従来と本実施形態とでそれぞれ角度θを算出すると、従来の測距装置の角度θ=0.23°に対して、本実施形態の測距装置の角度θ=0.11°となり、2倍以上の改善が見込める。
【0029】
図6は、送信光学系3の測定光の強度を説明する図である。図6の左側において、横軸は測定光の強度を示し、縦軸はy軸方向(径方向)の位置を示す。図6の右側は、送信光学系3を直線上に展開して表した図である。図6の上段に示すように、光源12で照射されコリメータレンズ11と対物光学系5を通過した測定光の強度は、望遠光学系2および送信光学系3の光軸付近の強度が最も高く、周辺に行くにしたがって減衰する。したがって図6の下段に示すように、望遠光学系2および送信光学系3の光軸付近に、広角光学系20の反射鏡21を配置してしまうと、測定光の強度を著しく減衰させてしまい、測定不良の原因となってしまう。同様のことが、受信光及び受信光学系4にも言える。
【0030】
このことをふまえ、本実施形態の測距装置1では、広角光学系20の反射鏡21を望遠光学系2および送信光学系3および受信光学系4の光軸外の位置に配置したので、測定光および受信光の強度の著しい減衰を防止でき、測定不良を防止することができる。
【0031】
(第1の実施の形態における実施例)
次に本実施形態における一実施例を説明する。表1および表2は、望遠光学系2の構成を説明する表である。なお、望遠光学系2の撮像素子7については、イメージサークル(センサーサイズに相当)(対角及びΦ)4.6mmを想定している。
【表1】
【表2】
【0032】
また、表3および表4は、広角光学系20の構成を説明する表である。なお、広角光学系20の撮像素子23については、イメージサークル(センサーサイズに相当)(対角及びΦ)4.6mmを想定している。また、表3において、y,zは、広角光学系20の光軸と各構成部材の各面との交点座標(y,z)を表す。yはy軸方向(径方向)の位置、zはz軸方向(光軸方向)の座標を示す。原点(0,0)は望遠光学系2の光軸と面番号1である構成部材との交点とする。
【表3】
【表4】
【0033】
本実施例の広角光学系20は、光軸偏心光学系のため光軸に対して回転対象ではない。したがって表4に示すように、光軸のより外側か内側かで半画角値が変わる。
【0034】
また本実施例において、広角光学系20における非共有光学部材の第1面は絞り(面番号7)となっている。したがって本実施例では、距離yは、望遠光学系2の光軸から当該絞り(面番号7)までの距離である。本実施例では、表3に示すように距離y=25.35(mm)である。また表4に示すように、上記式(3)の上限値が37.5(mm)であり、上記式(3)の下限値が9.5(mm)である。ゆえに本実施例における距離yは上記式(3)を満たす。
【0035】
また、本実施例では、表4に示すようにf/f=6.3であるため、上記式(2)を満たす。
【0036】
以上説明した第1の実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)測距装置1は、目標物体へ測定光を照射する送信光学系3と、目標物体によって測定光が反射または散乱された戻り光を受光する受信光学系4と、目標物体の像を結像する望遠光学系2と、目標物体の像を結像し、望遠光学系2よりも視野の広い広角光学系3と、を備え、望遠光学系2と広角光学系20とは、目標物体に向けられる対物光学系5を共有するようにした。これにより、望遠光学系2の光軸と広角光学系20の光軸とを従来の測距装置よりも近づけることができるので、望遠光学系2と広角光学系20との視差を従来の測距装置よりも減らすことができる。
【0037】
(2)上記(1)の測距装置1において、広角光学系20は、望遠光学系2と共有している共有光学部材(対物光学系5)を透過した光を反射して前記光の進行方向を変える反射鏡21を含むように構成した。これにより、簡易な構成で、望遠光学系2と広角光学系20とで対物光学系5を共有できる。
【0038】
(3)上記(2)の測距装置1において、共有光学部材(対物光学系5)の焦点距離をfとし、広角光学系20の共有光学部材以外で構成される非共有光学部材(ワイドコンバータ光学系22)の焦点距離をfとすると、上記式(2)を満足するように構成した。これにより、測距装置1の大型化を防ぐとともに、望遠光学系2の画角をできるだけ広くし、且つ望遠光学系2のFナンバーを明るくすることができる。
【0039】
(4)上記(2)の測距装置1において、反射鏡21と望遠光学系2の結像面(撮像素子7の撮像面)までの距離をdとし、望遠光学系2の口径をDとし、望遠光学系2の焦点距離をfとし、望遠光学系2の光軸から非共有光学部材(ワイドコンバータ光学系22)の第1面までの距離をyとすると、上記式(3)を満足するように構成した。これにより、広角光学系20と望遠光学系2に光軸平行で入射してきた光線との干渉を防ぐとともに、測距装置1の大型化を防ぐことができる。
【0040】
(5)上記(2)〜(4)の測距装置1において、望遠光学系2と広角光学系20と送信光学系3と受信光学系4とは、対物光学系5を共有し、反射鏡21は、送信光学系3および受信光学系4の光路内の位置に配置されるように構成した。これにより、対物光学系5からワイドコンバータ光学系22までの光路長を短くすることができるので、広角光学系20の画角を広くすることができる。
【0041】
(6)上記(5)の測距装置1において、反射鏡21は、送信光学系3および受信光学系4の光軸外の位置に配置されるように構成した。これにより、測定光および受信光の強度が著しく減衰するのを防ぐことができる。
【0042】
(7)上記(1)〜(6)の測距装置1において、望遠光学系2により結像された目標物体の像を撮像する撮像素子7と、広角光学系20により結像された目標物体の像を撮像する撮像素子23と、をさらに備え、撮像素子7および撮像素子23は、それぞれ異なる撮像素子であるように構成した。これにより、簡易に、望遠光学系2による撮像画像と広角光学系20による撮像画像とを表示部32に切り替え表示することができる。
【0043】
−第2の実施の形態−
次に、図7を用いて本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態による測距装置100では、第1の実施の形態と広角光学系200の配置が異なっているため、この点を中心に説明する。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成である箇所については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0044】
図7に示すように、第2の実施の形態による測距装置100の広角光学系200は、目標物体側から順に、対物光学系5と、ダイクロイックプリズム13と、合焦レンズ6と、反射鏡201と、ワイドコンバータ光学系202と、撮像素子203と、を含む。望遠光学系2と広角光学系20とは、対物光学系5と、ダイクロイックプリズム13と、合焦レンズ6とを共有している。また望遠光学系2と広角光学系200とは、同軸光学系として構成されている。反射鏡201は、合焦レンズ6と望遠光学系2の撮像素子7との間であって、望遠光学系2の光軸上の位置に配置されている。対物光学系5、ダイクロイックプリズム13、および合焦レンズ6を透過した目標物体からの光は、反射鏡201により反射され、ワイドコンバータ光学系202を透過して、撮像素子203の撮像面に結像される。撮像素子203は、例えばCMOSなどのイメージセンサであり、撮像面に結像された目標物体の像を撮像し、得られた画像信号を制御部30へ出力する。
【0045】
このような構成により、第2の実施の形態による測距装置100では、第1の実施の形態と比較して視野は狭くなるものの、望遠光学系2と広角光学系200とを同軸で構成できるため、これらの視差をなくすことができる。また第2の実施の形態による測距装置100では、広角光学系200の反射鏡201が送信光学系3および受信光学系4の光路外に配置されているため、測定光および受信光の減衰を防止でき、測定不良を防止することができる。
【0046】
また第2の実施の形態の測距装置100における広角光学系200の配置条件は、上述した第1の実施の形態と同様である。すなわち、望遠光学系2の光軸からワイドコンバータ光学系202の第1面までの距離をyとし、広角光学系200の反射鏡201と望遠光学系2の撮像素子7との間の距離をdとし、望遠光学系2の口径をDとし、望遠光学系2の焦点距離をfとすると、上記距離yの条件は、上記式(2)で表される。
【0047】
さらに、広角光学系200において、望遠光学系2と共有している光学部材(共有光学部材)の焦点距離をfとし、望遠光学系2と非共有である光学部材(非共有光学部材)の焦点距離をfとすると、これらの条件は、上述した第1の実施の形態と同様に、上記式(3)で表される。なお、本実施形態において、共有光学部材は対物光学系5および合焦レンズ6であり、非共有光学部材は、ワイドコンバータ光学系202である。
【0048】
(第2の実施の形態における実施例)
次に本実施形態における一実施例を説明する。なお、本実施例において望遠光学系2の構成は、上述した第1の実施の形態における実施例と同様の構成(表1および表2)であるとする。
【0049】
表5および表6は、本実施例における広角光学系200の構成を説明する表である。なお、広角光学系200の撮像素子203については、イメージサークル(センサーサイズに相当)(対角及びΦ)4.6mmを想定している。また、表5において、y,zは、広角光学系200の光軸と各構成部材の各面との交点座標(y,z)を表す。yはy軸方向(径方向)の位置、zはz軸方向(光軸方向)の座標を示す。原点(0,0)は望遠光学系2の光軸と面番号1である構成部材との交点とする。
【表5】
【表6】
【0050】
本実施例において、広角光学系200における非共有光学部材の第1面は絞り(面番号12)となっている。したがって本実施例では、距離yは、望遠光学系2の光軸から当該絞り(面番号12)までの距離である。本実施例では、表5に示すように距離y=5(mm)である。また表6に示すように、上記式(3)の上限値が37.5(mm)であり、上記式(3)の下限値が3.2(mm)である。ゆえに本実施例における距離yは上記式(3)を満たす。
【0051】
また、本実施例では、表6に示すようにf/f=18.4であるため、上記式(2)を満たす。
【0052】
以上説明した第2の実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)測距装置100は、目標物体へ測定光を照射する送信光学系3と、目標物体によって測定光が反射または散乱された戻り光を受光する受信光学系4と、目標物体の像を結像する望遠光学系2と、目標物体の像を結像し、望遠光学系2よりも視野の広い広角光学系200と、を備え、望遠光学系2と広角光学系200とは、対物光学系5および合焦レンズ6を共有するように構成した。そして、望遠光学系2と広角光学系20と送信光学系3と受信光学系4とは、対物光学系5を共有し、反射鏡201は、送信光学系3および受信光学系4の光路外に配置されるように構成した。これにより、測定光および受信光の減衰を防止することができる。また、望遠光学系2の光軸と広角光学系200の光軸を同軸とすることができ、望遠光学系2と広角光学系200との視差をなくすことができる。
【0053】
(変形例1)
上述した第1の実施の形態において、送信光学系3および受信光学系4による測距中には、広角光学系20の反射鏡21をシフトやチルトさせることで、測距の妨げにならないようにしてもよい。この場合、図8に示すように、反射鏡21を駆動する駆動部40を設ける。駆動部40は、反射鏡21を、送信光学系3および/または受信光学系4の光路内である第1の位置と、送信光学系3および受信光学系4の光路外である第2の位置とに切り替え駆動する。制御部30は、測距を開始する際には、駆動部40を制御して、反射鏡21を第2の位置へと駆動させる。
【0054】
なお、変形例1の場合、反射鏡21は、上述した第1の実施の形態と同様に送信光学系3および受信光学系4の光軸外の位置に配置されていてもよいし、送信光学系3および受信光学系4の光軸上の位置に配置されていてもよい。反射鏡21が送信光学系3および受信光学系4の光軸外の位置に配置されている場合は、当該光軸上の位置に配置されている場合と比較して、反射鏡21を上記第2の位置に退避するまでの時間を短縮することができる。
【0055】
また上述した第1および第2の実施の形態において、望遠光学系2による望遠撮影中に、広角光学系20,200の反射鏡21,201をシフトやチルトさせることで、望遠撮影の妨げにならないようにしてもよい。この場合も反射鏡21,201を駆動する駆動部40を設ける。望遠撮影を開始する際には、駆動部40は、制御部30の制御のもと、反射鏡21,201を、望遠光学系2の光路内の位置から望遠光学系2の光路外の位置へと退避させる。
【0056】
(変形例2)
上述した第1および第2の実施の形態では、望遠光学系2により結像された目標物体の像を撮像する撮像素子7と、広角光学系2,200により結像された目標物体の像を撮像する撮像素子23,203とを設ける例について説明した。しかしながら、これらの撮像素子を設けず、望遠光学系2および広角光学系2,200により結像された目標物体の像を観察可能な接眼光学系を設けるようにしてもよい。
【0057】
(変形例3)
上述した第2の実施の形態では、合焦レンズ6と撮像素子7との間に広角光学系200の反射鏡201が配置されている例について説明した。しかしながら、ダイクロイックプリズム13と合焦レンズ6との間に広角光学系200の反射鏡201が配置されるようにしてもよい。
【0058】
(変形例4)
上述した第1の実施の形態では、広角光学系20の反射鏡21を送信光学系3および受信光学系4の光路内に配置する例について説明した。しかしながら、広角光学系20の反射鏡21を送信光学系3または受信光学系4のいずれか一方の光路内に配置するようにしてもよい。例えば、広角光学系20の反射鏡21を送信光学系3の反射鏡10よりも撮像素子7側に配置するようにして、広角光学系20の反射鏡21を送信光学系3の光路内から外すようにしてもよい。また送信光学系3と受信光学系4との配置を逆にして、受信光学系を送信光学系よりも目標物体側に配置した場合、例えば、広角光学系の反射鏡を受信光学系よりも撮像素子側に配置するようにして、広角光学系の反射鏡を受信光学系の光路内から外すようにしてもよい。
【0059】
(変形例5)
上述した第1および第2の実施の形態では、測距装置1,100は、上記式(2)および式(3)を満足する例について説明したが、必ずしもこれに限らなくてもよい。
【0060】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。また、上記実施形態に各変形例の構成を適宜組み合わせてもかまわない。
【符号の説明】
【0061】
1,100…測距装置、2…望遠光学系、3…送信光学系、4…受信光学系、5…対物光学系、6…合焦レンズ、7,23,203…撮像素子、10,21,201…反射鏡、13…ダイクロイックプリズム、20,200…広角光学系、22,202…ワイドコンバータ光学系、30…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8