(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211266
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】取り外し可能なフロントパネルを有するオーディオ/ビデオ電子機器、特にマルチメディアカーラジオ
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20171002BHJP
【FI】
H05K5/02 A
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-278871(P2012-278871)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-145881(P2013-145881A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】1250116
(32)【優先日】2012年1月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515285327
【氏名又は名称】パロット オートモーティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ サンラヴィル
【審査官】
梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−114084(JP,A)
【文献】
実開昭60−184420(JP,U)
【文献】
特開2005−173200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00 − 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にマルチメディアカーラジオであるオーディオ/ビデオ電子機器であって、
特に自動車のダッシュボードに組み込むことができるケースである、ケース(100)と、
前記ケースに取り外し可能に取り付けられるフロントパネル部材(200)と、
前記ケースへの前記フロントパネル部材の可逆的な組み付け及び固定のための手段と、
を備え、
前記ケースへの前記フロントパネル部材の前記可逆的な組み付け及び固定のための手段は、
前記フロントパネル部材及び前記ケースの第1の端部における、前記ケース上及び前記フロントパネル部材上にそれぞれ互いに対して対向して相互引力状態で配置されている第1の対の磁性部材(124、224)を備える取り外し可能な磁気ヒンジと、
前記フロントパネル部材及び前記ケースの、反対側の第2の端部における、前記フロントパネル部材を前記ケースに係止する手段と、
を備え、
前記フロントパネル部材を前記ケースに係止する手段は、
ロック(212)と、
前記ケース上及び前記フロントパネル部材上にそれぞれ互いに対して対向して相互斥力状態で配置されている第2の対の磁性部材(126、226)とを備えることを特徴とし、
前記フロントパネル部材は、前記ケースに対して以下の位置、すなわち、
前記ロックの係止によって前記フロントパネル部材が前記ケースと一体となって保持される閉鎖位置と、
前記ロックが係止解除された後で、前記フロントパネル部材が、前記ロック側では前記ケースから接続解除されるが、前記磁気ヒンジ側では前記ケースに結合されたままであり、前記第1の対の磁性部材が並んで位置しており、前記第2の対の磁性部材が互いから離れている、半開位置と、
前記フロントパネル部材が前記ロック側及び前記磁気ヒンジ側の双方で前記ケースから完全に接続解除及び結合解除される、前記フロントパネル部材の取り外し位置と、
の間で可動であり、
前記第1の対の磁性部材の前記引力、前記第2の対の磁性部材の前記斥力、並びに前記フロントパネル部材の質量及び配置は、外部応力がない場合に前記半開位置が安定した静止位置になるように選択される、特にマルチメディアカーラジオであるオーディオ/ビデオ電子機器。
【請求項2】
前記ロック(212)はメカニカルロック(214、216、218)である、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記フロントパネル部材を前記ケースに係止する手段には、該ケースから該フロントパネル部材を引き離すように該フロントパネル部材に応力を加える弾性部品が存しない、請求項1に記載の機器。
【請求項4】
前記フロントパネル部材は前記機器の前記ケースに対して垂直に延在している部材であり、前記第1の端部は下端部であり、前記第2の端部は上端部である、請求項1に記載の機器。
【請求項5】
前記フロントパネル部材は、前記機器の正面の一部分を覆って延在している部材である、請求項1に記載の機器。
【請求項6】
前記ケースは第1の電子ユニット(112)を収納しており、
前記フロントパネル部材は、該フロントパネル部材上で目に見える少なくとも1つのコマンド・コントロールコンポーネント(210)に接続される第2の電子ユニットを収納しており、
前記機器は、前記第1の電子ユニット及び前記第2の電子ユニットを互いに結合するために前記ケース上及び前記フロントパネル部材上の協働部材(108、208)を含む電気コネクターを更に備えており、そのため、前記機器は、前記フロントパネル部材が前記ケースに取り付けられているときにだけ動作するようになる、請求項1に記載の機器。
【請求項7】
前記第1の対の磁性部材及び/又は前記第2の対の磁性部材の高さ位置において、前記ケースに対する前記フロントパネル部材の相互ガイドのための手段(120;220;122;222)を更に備える、請求項1に記載の機器。
【請求項8】
前記相互ガイドのための手段は、前記フロントパネル部材上又は前記ケース上に形成されているボス(220;222)、及び前記ケース内又は前記フロントパネル部材内に形成されている嵌合凹形状部(120;122)を備え、該ボス(220;222)は該嵌合凹形状部(120;122)に嵌め込むことができる、請求項7に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り外し可能に取り付けられるフロントパネル等の部材が設けられているケースを備える、オーディオ/ビデオ電子機器に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、カーラジオであって、ケースが自動車のダッシュボードに取り外せないように組み込まれるとともに、特に様々な制御ボタンを担持する取り外し可能な盗難防止フロントパネルが設けられ、フロントパネルをこの機器に嵌め込むとカーラジオを動作可能にすることができる、カーラジオに関する。フロントパネルはまた、メモリーカード、コンパクトディスク等の挿入用のスロットを露出させる(cleared)ことも可能にすることができる。
【0003】
しかしながら、カーラジオへの適用が特に有利であるものの、本発明はそれに限定されず、理解されるように、本発明を非常に多くの種類の他の電子機器に適用することができる。
【背景技術】
【0004】
特許文献1(Parrot)は、完全に取り外し可能なフロントパネルを備えるカーラジオを記載している。特許文献2(Parrot)は、Parrot SA(フランス、パリ所在)によってPARROT ASTEROID(商標)という商品名で販売されているモデルに対応する、部分的に取り外し可能なフロントパネル(サイドハーフフロントパネル)を有する別の例のカーラジオを記載している。
【0005】
概して、本明細書の以下の記載において、用語「フロントパネル」は、完全に取り外し可能なフロントパネル、又は機器の正面の幾分小さな部分のみを覆って延在している取り外し可能なフロント部材だけを示すのに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2184860号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2329990号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、より詳細には、取り外し可能なフロントパネルの取り付け/取り外しに関する。
【0008】
フロントパネルの取り付けは、フロントパネルをケースの前壁に当接させてから、好適なシステム、例えばフロントパネルの正面に位置するボタンを押圧することによって解放することができる爪又はフックを有するシステムによって、フロントパネルをケースに対してラッチロック(latch-locking)することによって行われる。
【0009】
フロントパネルは概して、一方の端部にロック、概して爪又はフックシステムを制御するボタン又はタブを有するメカニカルロックを有するフラップとして作られており、このロックによってフロントパネルを接続解除及び枢動させることが可能になり、その結果フロントパネルを把持して取り外すことができる。反対側では、フロントパネルは取り外し可能なヒンジによってケースに連結され(articulated)、このヒンジは、互いに嵌まり合うことができる機械的部品のみから形成されるヒンジ、又は、或る枢動自由度でフロントパネルをケースに結合するように、フロントパネルの後壁上及びケースの前壁上に取り付けられるとともに、互いに対して対向して相互引力(mutual attraction)状態で配置されている一組の磁石を組み込んだ(implement)磁気ヒンジとすることができる。そのような取り外し可能な磁気ヒンジは、例えば上述の特許文献1に記載されている。
【0010】
しかしながら、ケースへのフロントパネルの取り付けは、ユーザーに対して何らかのスキルを求める場合がある一方で、カーラジオをダッシュボード上に位置付ける場所によっては、取り扱い条件が常に理想的なものであるとは限らない。さらに、フロントパネルをケースに正確に結合することができるように、フロントパネルを取り付ける際に正確に位置決めすることが重要である。
【0011】
最後に、そのようなシステムは、誤った操作及び不正確な取り付けを許容することができるように十分にロバストである必要がある。
【0012】
概して、バネ及び押し出しブレード(ejection blades)等の使用を避けながら最も単純な機械的手段を用いて、可能な限り最も人間工学的な方法で、取り外し可能なフロントパネルの取り外し及び取り付けを行うことができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのような問題を解決するために、本発明は、上述の特許文献1によって開示されているタイプの機器、すなわち、ケース、特に自動車のダッシュボードに組み込むことができるケースと、ケースに取り外し可能に取り付けられるフロントパネル部材と、ケースへのフロントパネル部材の可逆的な組み付け及び固定のための機械的手段とを備える機器を提案する。そのような手段は、フロントパネル部材及びケースの第1の端部における、ケース上及びフロントパネル部材上にそれぞれ互いに対して対向して相互引力状態で配置されている第1の対の磁性部材を含む取り外し可能な磁気ヒンジと、フロントパネル部材及びケースの、反対側の第2の端部における、フロントパネル部材をケースに係止する手段とを備える。
【0014】
本発明の特徴としては、フロントパネル部材をケースに係止する手段は、ロックと、ケース上及びフロントパネル部材上にそれぞれ互いに対して対向して相互斥力(mutual repulsion)状態で配置されている第2の対の磁性部材とを備える。
【0015】
特に、フロントパネル部材は、ケースに対して以下の位置、すなわち、ロックの係止によってフロントパネル部材がケースと一体となって保持される閉鎖位置と、ロックが係止解除された後で、フロントパネル部材は、ロック側ではケースから接続解除されるが、磁気ヒンジ側ではケースに結合されたままであり、第1の対の磁性部材は並んで位置しており、第2の対の磁性部材は互いから離れている、半開位置と、フロントパネル部材がロック側及び磁気ヒンジ側の双方でケースから完全に接続解除及び結合解除される、フロントパネル部材の取り外し位置との間で可動である。
【0016】
次いで、第1の対の磁性部材の引力、第2の対の磁性部材の斥力、並びにフロントパネル部材の質量及び配置は、外部応力がない場合に半開位置が安定した静止位置になるように選択される。
【0017】
種々の有利な付随する特徴によると、
前記ロックはメカニカルロックである;
前記フロントパネル部材を前記ケースに係止する手段には、該ケースから該フロントパネル部材を引き離すように該フロントパネル部材に応力を加える弾性部品が存しない;
前記フロントパネル部材は前記機器の前記ケースに対して垂直に延在している部材であり、前記第1の端部は下端部であり、前記第2の端部は上端部である;
前記フロントパネル部材は、前記機器の正面の一部分を覆って延在している部材である;
前記ケースは第1の電子ユニットを収納しており、前記フロントパネル部材は、該フロントパネル部材上で目に見える少なくとも1つのコマンド・コントロールコンポーネントに接続される第2の電子ユニットを収納しており、前記機器は、前記第1の電子ユニット及び前記第2の電子ユニットを互いに結合するために前記ケース上及び前記フロントパネル部材上の協働部材を含む電気コネクターを更に備えており、そのため、前記機器は、前記フロントパネル部材が前記ケースに取り付けられているときにだけ動作するようになる;
前記機器は、前記第1の対の磁性部材及び/又は前記第2の対の磁性部材の高さ位置において、前記ケースに対する前記フロントパネル部材の相互ガイドのための手段を更に備え、特に、前記相互ガイドのための手段は、前記フロントパネル部材上に形成されているとともに、前記ケース内に形成されている嵌合凹形状部に嵌め込むことができるボス(又は、この逆)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】取り外し可能なフロントパネルがケースに取り付けられている状態である、本発明による機器の全体斜視図である。
【
図2】取り外し可能なフロントパネルが取り外された状態である、同機器の斜視図である。
【
図3】
図2のIIIによって示される細部の拡大図である。
【
図4】
図2のIVによって示される細部の拡大図である。
【
図5】機器のケースから分離された、取り外し可能なフロントパネルの正面斜視図である。
【
図6】
図5の取り外し可能なフロントパネルの後面斜視図である。
【
図7】
図5のVIIによって示される細部の拡大図である。
【
図8】
図6のVIIIによって示される細部の拡大図である。
【
図9a】取り外し可能なフロントパネルを機器のケースに取り付ける連続的なステップの1つを示す図である。
【
図9b】取り外し可能なフロントパネルを機器のケースに取り付ける連続的なステップの1つを示す図である。
【
図9c】取り外し可能なフロントパネルを機器のケースに取り付ける連続的なステップの1つを示す図である。
【
図10a】取り外し可能なフロントパネルを機器から取り外す連続的なステップの1つを示す図である。
【
図10b】取り外し可能なフロントパネルを機器から取り外す連続的なステップの1つを示す図である。
【
図10c】取り外し可能なフロントパネルを機器から取り外す連続的なステップの1つを示す図である。
【
図11】取り外し可能なフロントパネルの中心面において見た、機器のケースに取り付けられているこの取り外し可能なフロントパネルの断面立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、本発明の装置の例示的な実施形態を添付の図面を参照して説明するが、図面中、図全体を通して同じ参照符号は同一の部材又は機能的に同様の部材を指す。
【0020】
本発明によるカーラジオは、例えば、図に示されているように自動車のダッシュボードに組み込むことができる標準化されたサイズのブロックの形態をしている。このカーラジオは、例えば、180mm×100mmのダッシュボード収納部(accommodation)の開口部のサイズに対応する、標準化された「ダブルDIN」ブロック(標準規格DIN75490/ISO7736を参照のこと)である。
【0021】
本発明は、有利には、ハンズフリーフォン機能と、携帯型音楽装置、オーディオファイルを記憶するメモリーカード、及び無線遠隔装置と結合するBluetooth(登録商標)ステレオ等の結合用のマルチメディア接続部材と、GPS衛星測位機能とを組み込む、カーラジオタイプのマルチメディア機器に適用される。
【0022】
図に示されているように、この装置はケース100を備え、ケース100は、種々の電子部材を封入するとともに自動車のダッシュボードに通常組み込まれるボックス102を備え、前側には、固定したフロントパネル部材104、例えば、種々の機能の容易な制御、並びにリストの表示及びGPSカードの表示等のための大きなサイズのタッチディスプレイスクリーン/パネルを有する。
【0023】
このケース100は取り外し可能なフロントパネル200を受け入れ、このフロントパネルは、示されている例では、ケース100の固定したディスプレイスクリーン104の側部に側面にそって配置される、垂直の細長い部材として延在する小さなサイズの取り外し可能なフロントパネルである。
【0024】
ケース100が取り外し可能なフロントパネル200を取り外された状態で示されている
図2〜
図4に示されるように、ケースは、フロントパネルの取り外しによって露出したキャビティ106内で、例えばケースの前壁110を通り抜けているとともにケースの内部にある電子回路112(
図11)に接続されている電気コネクター108等の種々の機能部材が目に見えるようにされている。
【0025】
キャビティ106はまた、例えば、音楽ファイル又はデータファイル、特にGPSナビゲーションソフトウェア製品とともに用いることができる地図データ用の記憶媒体としての役割を果たすSDカードタイプのメモリーカード用の挿入スロット114を備える。キャビティ106の壁110はまた、機器の内部ソフトウェアを必要な場合にリセットするリセットボタン116を担持する。
【0026】
この機能部材の一覧は当然ながら限定的なものではなく、例えば、(幾つかの機能を設定するための)まれに使用される制御ボタン、コンパクトディスクドライブの挿入スロット、及び携帯型音楽装置、携帯電話又はスマートフォンを収納するトラップ(trap)等の他の部材を想定することもできる。
【0027】
ケースはまた、その上部において、以下で明らかにされる方法でフロントパネルを係止する固定フック118を担持しており、キャビティ106は、その下部及び上部において2つの凹形状部120及び122を有するように構成されており、これらの2つの凹形状部は、同様に以下で明らかにされる方法でフロントパネルが取り付けられるときに、そのフロントパネルをガイドする役割を果たす。
【0028】
図5〜
図8において単独で、また
図11において断面が示されている取り外し可能なフロントパネル200は、機器の下縁から上縁まで高さ方向に延在するように、ケースの固定されたフロントディスプレイスクリーン104と同じ高さのほぼ平行6面体形状の細長い棒(bar)の形態をしている。フロントパネル200は、前面204及び後面206を有するケース202として作られている。後面は、フロントパネルがケース100に取り付けられるときにケースのコネクター部材108と協働するように意図されるコネクター部材208を担持する。このコネクター部材208は、特に、前面204上に存在する「オン/オフ」ボタン210を有するフロントパネル200の内部回路に接続されており、フロントパネルがケースに取り付けられた後でこのボタンを押圧することによって機器を始動させることを可能にする。フロントパネルはまた、ケースによって印加される電圧及び信号によって、コネクター部材108及び208を介して駆動されるインジケーターライト等のような他の部材を備えることもできる。
【0029】
取り外し可能なフロントパネル200は二重の役割を果たす。フロントパネル200は、一方でカードスロット114及びシステムリセットボタン116へのアクセスをブロックし、他方で、取り外されると、機器を動作不能にする。実際に、スイッチ210を押圧することでしかケースの電子回路をアクティブ化することはできず、このアクティブ化は、取り外し可能なフロントパネル200がケース100の収納部106に嵌め込まれることを前提とする(盗難防止機能)。
【0030】
取り外し可能なフロントパネル200は、その上部において、タブ214を備えるメカニカルロック212を備えており、このタブは、ばね216(
図11)の力に逆らって可動式フック218を下方に移動させるように可動であり、可動式フック218はケースの固定フック118と協働するようになっており、これらの2つの部材が合わせられると、フロントパネルとケースとの間で確実なメカニカルロックがもたらされる。
【0031】
変形形態として、2つの協働するフック118、218を用いる完全に機械的な閉鎖システムを、機能的に等価なシステム、例えば電気的に解放可能な電磁石閉鎖システムに置き換えることができる。
【0032】
取り外し可能なフロントパネル200は、その下部及び上部それぞれにおいて、ケースの嵌合凹形状部120及び122に嵌め込むことができるボス220及び222を更に備えており、取り外し可能なフロントパネルがケースに固定されるように近づくと、フロントパネルの自然なガイドが確実になるようにする。
【0033】
取り外し可能なフロントパネル及びケースは、それらの下部におけるボス220及び凹形状部120において、
図11に示されるように、互いに対して対向して相互引力状態で、すなわち互いに向かい合う反対の極を有して配置されている2つのそれぞれの磁石224、124を含む磁気ヒンジによって結合されている。用いられる磁石は、数ミリメートル離れている場合であっても十分な引力を提供するタイプのものであり、例えば非常に小さなサイズのわりには非常に強い力の引力を提供するネオジム磁石である。
【0034】
1組の磁石124、224は、いかなる機械的リンク部品も追加する必要なく、ケース100及びフロントパネル200のための2箇所の連結部(articulation)の役割を果たし、この場所での(フロントパネルの下側領域における)ケースへのフロントパネルの結合は、一対の対向する磁石の相互引力のみに起因する。
【0035】
変形形態として、一対の磁石124、224を、フロントパネル内及びケース内にそれぞれ設けられているパッシブ(passive)強磁性部材に関連付けられる、ケース内又はフロントパネル内に設けられている単一の磁石に置き換えることができ、例えば柔らかい鋼板が磁石のうちの一方と置き換わる。
【0036】
また本発明の特徴として、フロントパネルの上部及びケースの上部において、ケース100上及びフロントパネル200上にそれぞれ、互いに対して対向して配置されている一対の磁石126、226も設けられているが、このとき、これらの磁石は相互反発の関係にあり、すなわち、これらの磁石は互いに向き合う同じ種類(name)の極である。
【0037】
磁石126、226は、磁石124、224のように、小さなサイズのわりには高い斥力を提供するネオジム磁石とすることができる。
【0038】
ここで、
図9(フロントパネルの取り付け)及び
図10(フロントパネルの取り外し)を参照して本発明の操作の原理を説明する。
【0039】
2つの磁石124、224が互いに引き付けあっており、2つの磁石126、226が互いに反発している状態である上述の特定の構成が、ガイド又は正確な位置決めを伴わずにフロントパネルの取り外し及び取り付けを行なうことを可能にし、そのような構成はまた、フロントパネルが取り付け段階又は取り外し段階中に安定した中間位置を有することを可能にする。
【0040】
より詳細には、
図9に示されるように、取り外し可能なフロントパネル200をケース100に取り付けるには、2つのボス220、222がケースの嵌合凹形状部120及び122を向いており、かつ嵌合凹形状部120及び122に向かって概ね方向付けられている状態で、フロントパネルを嵌め込みエリアに近づける(矢印300、
図9a)。
【0041】
取り外し可能なフロントパネルが嵌め込みエリアに対し十分に近くなると、2つの以下の動作が同時に起こる:
フロントパネルが、下側磁力エリア(下部310における磁気ヒンジの磁石124、224の引力)によって所定の位置に自動的に収まり、かつ
フロントパネルが、上部320における2つの磁石126、226の斥力に起因して、ケースの前面104の平面に対して僅かに傾斜したままとなる。種々の磁石の引力/斥力は、このように達成された中間位置(
図9b)が、外部応力がない場合に安定した静止位置となるように、取り外し可能なフロントパネル200の質量に応じて選択される。
【0042】
以下のステップは、取り外し可能なフロントパネル200の上部320に対して圧力を加えること(矢印330)からなり、これによりフロントパネルをケースの下側収納部内へ枢動させて、機器のケースに係止する。
【0043】
最終的な構成が
図9cに示されている構成である。これにより、オン/オフボタン210を押圧することによって、機器を始動させることが可能である。フロントパネルの取り外しは、
図10に示されているように、逆順の操作によって行われる。
【0044】
第1の操作は、フロントパネルの可動式フック218をケースの固定フック118から解放するように摺動タブ214を下げること(矢印340、
図10a)からなる。
【0045】
次いでフロントパネルが、上部320における磁石126、226の斥力に起因して自動的に外される。フロントパネルはその場合、
図10bに示されている位置、すなわちユーザーに向かって僅かに傾斜した位置をとり、そのような位置は安定した位置である。次いで、フロントパネルをその突出部によってユーザーが容易に把持して抜き出して(矢印360、
図10c)、ケースの収納部から取り外すことができ、したがって、これにより機器を動作不能にする(又はカード挿入スロットへのアクセス部を露出させる)。
【0046】
したがって、本発明のシステムは、取り外し可能なフロントパネルを、1本の指だけを用いた、ユーザーの非常に単純な動作によって、また押し出しバネ又は押し出しブレードのような機械系を用いることなく、取り外すことを可能にする。取り外し可能なフロントパネルの安定した中間位置によって、フロントパネルを非常に簡単な方法で取り付けること、又は元に戻すことができ、この中間位置において、フロントパネルは部分的に外れてユーザー側に向いたままであり、これによりフロントパネルが把持しやすくなる。