特許第6211284号(P6211284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6211284円筒形状物の寸法検査装置及びこれを用いた円筒形状物の寸法検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211284
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】円筒形状物の寸法検査装置及びこれを用いた円筒形状物の寸法検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 13/10 20060101AFI20171002BHJP
【FI】
   G01B13/10
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-72471(P2013-72471)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196944(P2014-196944A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022806
【氏名又は名称】日本ピストンリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】國分 喜宜
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅浩
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−117075(JP,A)
【文献】 特開平08−166227(JP,A)
【文献】 実開昭61−170014(JP,U)
【文献】 特開2013−047639(JP,A)
【文献】 特開2006−102565(JP,A)
【文献】 特開2012−058213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 13/00−13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状物の内周面の寸法を検査する寸法検査装置であって、
当該寸法検査装置は、当該円筒形状物の内周に挿入可能で、且つ当該円筒形状物の内周面と相対する外周面を有すると共に、内部に空気流路が設けられ、当該空気流路と連通した空気吹き出し口を当該外周面に設けた測定用ノズルと、
空圧源から供給された圧縮空気を整圧するレギュレーターと、
当該レギュレーターにより整圧された空気を当該空気吹き出し口から当該円筒形状物の内周面に向けて吹き出す空気の流量を検出する空気流量検出手段とを備え、
当該空気吹き出し口が当該測定用ノズルの外周の同一円周上に6個以上離間して配置し
当該測定用ノズルは、その外周の同一円周上に溝部を形成し、当該溝部の底面に当該空気吹き出し口及び当該溝部内に吹き出された空気を逃がすための空気排出口を設け、
当該空気吹き出し口に当該溝部内から突出しない大きさの、当該空気吹き出し口から吹き出される空気量のムラをなくす空気吹き出し用ノズルを取り付けたことを特徴とする円筒形状物の寸法検査装置。
【請求項2】
前記空気吹き出し口は、前記測定用ノズルの長手方向に複数段配置した請求項1に記載の円筒形状物の寸法検査装置。
【請求項3】
前記測定用ノズルは、その先端部に検査対象の円筒形状物の挿入を容易にするために、当該円筒形状物が挿入する側に向かうに従って縮径した円錐台形状のガイド部を備えた請求項1又は請求項2に記載の円筒形状物の寸法検査装置。
【請求項4】
前記ガイド部は、樹脂材料又は軟質金属からなる請求項に記載の円筒形状物の寸法検査装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれかに記載の円筒形状物の寸法検査装置を用いた円筒形状物の寸法検査方法であって、
当該円筒形状物の寸法検査方法は、当該円筒形状物の内径寸法の公差上限値に相当する内径寸法の内周面を備えた公差上限値用円筒形状マスタリングゲージを前記測定用ノズルの外周に装着配置し、前記空気吹き出し口より当該公差上限値用円筒形状マスタリングゲージの内周面に対して整圧された空気を吹き出したときの空気の流量値を前記空気流量検出手段により検出して、当該円筒形状物の内径寸法の公差上限値に対応する空気流量値を取得し、
当該円筒形状物の内径寸法の公差下限値に相当する内径寸法の内周面を備えた公差下限値用円筒形状マスタリングゲージを当該測定用ノズルの外周に装着配置し、当該空気吹き出し口より当該公差下限値用円筒形状マスタリングゲージの内周面に対して整圧された空気を吹き出したときの空気の流量値を当該空気流量検出手段により検出して、当該円筒形状物の内径寸法の公差下限値に対応する空気流量値を取得し、
次いで、検査対象の円筒形状物を当該測定用ノズルの外周に装着配置し、当該空気吹き出し口より当該円筒形状物の内周面に対して整圧された空気を吹き出したときの空気の流量値を当該空気流量検出手段により検出し、このときの空気流量値が当該円筒形状物の内径寸法の公差上限値及び公差下限値に対応する空気流量値の範囲内であるか否かを判定することを特徴とする円筒形状物の寸法検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、円筒形状物の寸法検査装置及びこれを用いた円筒形状物の寸法検査方法に関する。特に、本件発明は、肉厚が薄く変形しやすい円筒形状物の内周面の寸法の検査を高い精度で行うための寸法検査装置及びこれを用いた寸法検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒形状物の内周面の寸法を高精度で測定するにあたって、例えば当該円筒形状物の内周面に接触式の測定器を接触させて当該内周面の寸法を測定する、一般にシリンダゲージを用いた方法がある。しかしながら、このような接触式の測定器を用いて、自動車エンジンのシリンダブロックに挿入されるシリンダライナのような円筒形状物の肉厚が約2〜3mmと薄いものの内径を測定した場合には、測定時に当該円筒形状物の形状を変化させたり、当該円筒形状物の内周面を傷付ける恐れがある。
【0003】
そのため、従来より、肉厚が薄くて変形しやすい円筒形状物における内周面の寸法の検査を高精度且つ短時間で行うにあたっては、空気の流量で物の寸法を測定する非接触式の空気マイクロメータ等が用いられている。ここで、肉厚が薄くて変形しやすい円筒形状物として内燃機関用シリンダライナを例に挙げ、従来より採用されている内燃機関用シリンダライナの内周面の寸法を検査するための寸法検査装置及びこれを用いた寸法検査方法について以下に説明する。
【0004】
図3は、従来の一実施形態における円筒形状物の寸法検査装置及びこれを用いた円筒形状物の寸法検査方法を説明するための概略図である。図3は、特に検査対象の円筒形状物20として内燃機関用シリンダライナを用いた場合に、従来より用いられている寸法検査装置について示したものである。図3に示す寸法検査装置50は、空圧源(不図示)から供給された空気をレギュレーター(不図示)を介して測定用ノズル51に供給される構造となっており、当該レギュレーターと当該測定用ノズル51との間に設けられたフローメーター59により検出された空気流量値により、検査対象となる内燃機関用シリンダライナ20の内周面の寸法を検査することが出来る。また、図3(a)は、図3において測定用ノズル51をB−B線で切断した断面図である。図3(a)に示されるように、従来の寸法検査装置50においては、測定用ノズル51に設けられる空気吹き出し口52(図中黒点で示す)が、測定用ノズル51の軸を中心として180°円周方向に離れた位置に設けられている。
【0005】
図3に示す従来の寸法検査装置50を用いた円筒形状物の内周面の寸法検査方法は、内燃機関用シリンダライナ20の内周面の寸法を検査するにあたって、まず円柱状形状の測定用ノズル51を当該内燃機関用シリンダライナ20の内周に挿入する。この測定用ノズル51は、その両側部に空気吹き出し口52を配置したものであり、当該空気吹き出し口52を測定用ノズル51の外周の同一円周上に2個配置し且つ当該測定用ノズル51の長手方向に3段配置したものである。従来においては、図3に示すような円柱状形状の測定用ノズル51を当該内燃機関用シリンダライナ20の内周に挿入した後に、当該測定用ノズル51の両側部に配置された空気吹き出し口52からレギュレーターにより整圧された空気を吹き出して、そのときの空気流量値をフローメーター59により検出していた。ここで、空気流量検出手段としてフローメーター59を用いた場合には、当該測定用ノズル51と当該内燃機関用シリンダライナ20との間の隙間量の変化に伴う当該測定用ノズル51から吹き出す空気流量の変化が、フロートの浮き上がる高さ位置の変化により示されることで空気流量値の検出を行うことが出来る。
【0006】
そして、図3に示す従来の寸法検査装置50を用いた円筒形状物の内周面の寸法検査方法では、予め定められた当該円筒形状物の内径寸法の公差上限値に相当する内径寸法の内周面を備えた円筒形状マスタリングゲージ(不図示)に測定用ノズル51を挿入し、そのときのフローメーター59に示される空気流量値を公差上限の基準値とする。また、予め定められた当該円筒形状物の内径寸法の公差下限値に相当する内径寸法の内周面を備えた円筒形状マスタリングゲージ(不図示)に測定用ノズル51を挿入し、そのときのフローメーター59に示される空気流量値を公差下限の基準値とする。次いで、従来の円筒形状物の寸法検査方法では、検査対象となる内燃機関用シリンダライナ20の内周に測定用ノズル51を挿入し、そのときのフローメーター59に示される空気流量値を円筒形状マスタリングゲージにより設定された基準値と比較して基準値範囲内に入っていれば合格、外れていれば不合格と判定していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、内燃機関用シリンダライナ20の内周面の寸法検査には高い精度が要求されるため、従来の寸法検査装置50及びこれを用いた寸法検査方法では、内燃機関用シリンダライナ20の内周面の全周について寸法が公差範囲内であることを確認する際に、検査対象である内燃機関用シリンダライナ20を測定用ノズル51の外周に装着した状態で回転させながら空気流量の変化を確認する必要が生じていた。特に、従来の寸法検査装置50のように、空気吹き出し口52が測定用ノズル51の両側部に配置されたものを用いて寸法検査を行う場合には、内燃機関用シリンダライナ20の断面が楕円形状に変形して長径と短径が存在する場合等を想定し、可能な限り内燃機関用シリンダライナ20の内周面の全周の空気流量値を取得して、得られた空気流量値の平均値を算出して合否判定しなければならなかった。
【0008】
このように、肉厚が薄く変形しやすい円筒形状物(内燃機関用シリンダライナ等)20の内周面の寸法の検査を高い精度で行うにあたって、従来の寸法検査装置50及びこれを用いた寸法検査方法を用いた場合には、当該筒状形状物20を測定用ノズル51の外周に装着した状態で所定の角度毎に回転させなければならず、検査工数の増大を招いていた。また、当該筒状形状物20を測定用ノズル51の外周に装着した状態で回転させる際に、一定の角度で回転させながら測定することは困難であるため、当該筒状形状物20内周面の寸法検査を高い精度で行えないという問題が生じていた。また、当該筒状形状物20を測定用ノズル51の外周に装着した後に回転させる際に、当該筒状形状物20の内周面が傷付く等の問題が生じていた。
【0009】
本件発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、肉厚が薄く変形しやすい円筒形状物の内周面の寸法を、短時間で且つ高精度に検査することが可能な寸法検査装置及びこれを用いた寸法検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究を行った結果、寸法検査装置に空気マイクロメータを用い、また、寸法検査装置に備わる測定用ノズルに設ける空気吹き出し口を当該測定用ノズルの外周の同一円周上に所定の個数離間して配置することで、上述した問題を解決するに到った。以下、本件発明に関して説明する。
【0011】
本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置: 本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置は、円筒形状物の内周面の寸法を検査する寸法検査装置であって、当該寸法検査装置は、当該円筒形状物の内周に挿入可能で、且つ当該円筒形状物の内周面と相対する外周面を有すると共に、内部に空気流路が設けられ、当該空気流路と連通した空気吹き出し口を当該外周面に設けた測定用ノズルと、空圧源から供給された圧縮空気を整圧するレギュレーターと、当該レギュレーターにより整圧された空気を当該空気吹き出し口から当該円筒形状物の内周面に向けて吹き出す空気の流量を検出する空気流量検出手段とを備え、当該空気吹き出し口が当該測定用ノズルの外周の同一円周上に6個以上離間して配置し、当該測定用ノズルは、その外周の同一円周上に溝部を形成し、当該溝部の底面に当該空気吹き出し口及び当該溝部内に吹き出された空気を逃がすための空気排出口を設け、当該空気吹き出し口に当該溝部内から突出しない大きさの、当該空気吹き出し口から吹き出される空気量のムラをなくす空気吹き出し用ノズルを取り付けたことを特徴とする。
【0012】
また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置において、前記空気吹き出し口は、前記測定用ノズルの長手方向に複数段配置したことが好ましい。
【0013】
また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置において、前記測定用ノズルは、その先端部に検査対象の円筒形状物の挿入を容易にするために、当該円筒形状物が挿入する側に向かうに従って縮径した円錐台形状のガイド部を備えたことが好ましい。
【0014】
また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置において、前記ガイド部は、樹脂材料又は軟質金属からなることが好ましい。
【0015】
本件発明に係る円筒形状物の寸法検査方法: 本件発明に係る円筒形状物の寸法検査方法は、上述した円筒形状物の寸法検査装置を用いた円筒形状物の寸法検査方法であって、当該円筒形状物の寸法検査方法は、当該円筒形状物の内径寸法の公差上限値に相当する内径寸法の内周面を備えた公差上限値用円筒形状マスタリングゲージを前記測定用ノズルの外周に装着配置し、前記空気吹き出し口より当該公差上限値用円筒形状マスタリングゲージの内周面に対して整圧された空気を吹き出したときの空気の流量値を前記空気流量検出手段により検出して、当該円筒形状物の内径寸法の公差上限値に対応する空気流量値を取得し、当該円筒形状物の内径寸法の公差下限値に相当する内径寸法の内周面を備えた公差下限値用円筒形状マスタリングゲージを当該測定用ノズルの外周に装着配置し、当該空気吹き出し口より当該公差下限値用円筒形状マスタリングゲージの内周面に対して整圧された空気を吹き出したときの空気の流量値を前記空気流量検出手段により検出して、当該円筒形状物の内径寸法の公差下限値に対応する空気流量値を取得し、次いで、検査対象の円筒形状物を当該測定用ノズルの外周に装着配置し、当該空気吹き出し口より当該円筒形状物の内周面に対して整圧された空気を吹き出したときの空気の流量値を当該空気流量検出手段により検出し、このときの空気流量値が当該円筒形状物の内径寸法の公差上限値及び公差下限値に対応する空気流量値の範囲内であるか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本件発明に係る寸法検査装置及びこれを用いた寸法検査方法によれば、検査対象の円筒形状物を測定用ノズルの外周に装着した状態で回転させなくとも、当該円筒形状物の内周面の寸法を高精度で且つ高い再現性を持って検査することが出来る。また、本件発明に係る寸法検査装置及びこれを用いた寸法検査方法によれば、検査対象である円筒形状物の内周面の寸法の検査を短時間で且つ当該円筒形状物を傷付けることなく行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本件発明の一実施形態における円筒形状物の寸法検査装置及びこれを用いた円筒形状物の寸法検査方法を説明するための概略図である。
図2図1に示す測定用ノズルについて説明するための図である。
図3】従来の一実施形態における円筒形状物の寸法検査装置及びこれを用いた円筒形状物の寸法検査方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置及びこれを用いた円筒形状物の寸法検査方法の好ましい実施の形態について、図を用いて示しながらより詳細に説明する。
【0019】
図1は、本件発明の一実施形態における円筒形状物の寸法検査装置及びこれを用いた円筒形状物の寸法検査方法を説明するための概略図である。また、図2は、図1に示す測定用ノズルについて説明するための図である。
【0020】
本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置: 本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、円筒形状物20の内周面の寸法を検査するものである。また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、当該円筒形状物20の内周に挿入可能で、且つ当該円筒形状物20の内周面と相対する外周面を有すると共に、内部に空気流路が設けられ、当該空気流路と連通した空気吹き出し口3を当該外周面に設けた測定用ノズル2と、空圧源(不図示)から供給された圧縮空気を整圧するレギュレーター(不図示)と、当該レギュレーターにより整圧された空気を当該空気吹き出し口3から当該円筒形状物20の内周面に向けて吹き出す空気の流量を検出する空気流量検出手段12とを備えたものである。そして、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、当該空気吹き出し口3が当該測定用ノズル2の外周の同一円周上に6個以上離間して配置したことを特徴とするものである。
【0021】
このように、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、測定用ノズル2と、レギュレーターと、空気流量検出手段とから構成されることで、円筒形状物20の内周面の寸法を検査することが出来る。ここで、図1及び図2に示すように、当該測定用ノズル2は、台座8に略垂直に起立して固定された支柱9の一端側に、長手方向が当該台座8底面と平行となるように固定される。また、当該測定用ノズル2の当該支柱9と固定される側の端部には、検査対象となる円筒形状物20の位置決め用のストッパー7が設けられる。本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、当該測定用ノズル2の外周に検査対象の円筒形状物20を当該ストッパー7に接するまで挿入させることで、当該円筒形状物20における内周面の寸法検査を常に同じ位置で行うことが出来、これにより高い再現性を持った検査を行うことが可能となる。
【0022】
また、図1には、空気流量検出手段12としてフローメーターが示されている。本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、空圧源から供給された空気を一定圧力に調整するレギュレーターを介して測定用ノズル2に供給する構造を備え、整圧された空気を測定用ノズル2の内部を通して外部へ吹き出す。このときに、当該測定用ノズル2と、当該測定用ノズル2の外周に装着された検査対象の円筒形状物20との間の隙間量によって変動する空気流量を、当該レギュレーターと当該測定用ノズル2との間に設けられたフローメーター12により検出し、この検出された空気流量値に基づき検査対象となる円筒形状物20の内周面の寸法を検査することが出来る。なお、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1を用いた円筒形状物の寸法検査方法に関しては、後で詳述する。
【0023】
図1において、フローメーター12と支柱9の間には空気供給路11が示されている。この空気供給路11は、例えば図2に示すコネクタ10と接続することで当該測定用ノズル2に設けられる各空気吹き出し口3に通じる空気流路それぞれと接続される。ここで、空圧源からレギュレーターを介して当該測定用ノズル2に供給される整圧された空気は、各空気吹き出し口3それぞれに対応したフローメーター12を介して当該測定用ノズル2に送られることで、検査対象となる円筒形状物20の内周面の寸法不良の原因となる位置を特定することが出来る。
【0024】
図1(a)は、図1において測定用ノズル2をA−A線で切断した断面図である。図1(a)には、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1において、測定用ノズル2に設けられる空気吹き出し口3(図中黒点で示す)が、当該測定用ノズルの外周の同一円周上に6個離間して配置しているのが示されている。このように、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、測定用ノズル2が、円柱状に形成され、当該測定用ノズル2の外周の同一円周上に空気吹き出し口3を6個以上離間して設けることで、検査対象の円筒形状物20を当該測定用ノズルに装着した状態で回転させながら検査しなくとも、当該円筒形状物20の内周面の寸法を短時間で且つ高精度に検査することが出来る。
【0025】
ここで、本件発明の測定用ノズル2に設ける空気吹き出し口3は、当該測定用ノズル2の外周の同一円周上に6個以上等間隔に並んで配置したことが好ましい。図1(a)には、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1において、測定用ノズル2に設ける空気吹き出し口3が、当該測定用ノズル2の軸を中心として60°円周方向に離れた位置に設けられているのが示されている。このように、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、測定用ノズル2に設けられる空気吹き出し口3が当該測定用ノズル2の外周の同一円周上に6個以上等間隔に並んで配置することで、検査対象の円筒形状物20を当該測定用ノズル2に装着した状態で回転させながら検査しなくとも、当該円筒形状物20の内周面の寸法を短時間でより高精度に検査することが出来る。
【0026】
また、本件発明の測定用ノズル2に設けられる空気吹き出し口3は、当該測定用ノズル2の外周の同一円周上において、当該測定用ノズル2の軸を中心として点対称となる位置に配置することが好ましい。図1(a)には、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1において、測定用ノズル2に設けられる空気吹き出し口3が、当該測定用ノズル2の外周の同一円周上で且つ当該測定用ノズル2の軸を通る同一直線上に2個一対として配置されているのが示されている。本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、当該測定用ノズル2の外周の同一円周上において、当該空気吹き出し口3を当該測定用ノズル2の軸を中心として点対称となる位置に配置して合計で6個又は8個設けることが、当該空気吹き出し口3に通じる空気流路の形成を容易とし、製造性の観点からみて好ましい。また、本件発明の測定用ノズル2に設ける空気吹き出し口3は、定められた空気供給量に対して当該空気吹き出し口3の数が増加した場合における孔径の微小化に伴う加工形状の高精度化及び加工コストの増大化を鑑みれば、当該測定用ノズル2の外周の同一円周上において6個設けることがより好ましい。
【0027】
なお、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1において、測定用ノズル2の外周の同一円周上に設ける空気吹き出し口3が6個未満である場合には、検査対象の円筒形状物20を当該測定用ノズルに装着した状態で回転させながら検査しなければ、当該円筒形状物20の内周面の寸法を高精度に検査することが出来なくなる。従って、この場合、検査対象となる円筒形状物20の内周面の寸法検査を短時間で行うことが出来なくなると共に、検査作業中に当該円筒形状物20の内周面を傷付けるリスクを高めてしまうため好ましくない。ちなみに、本件発明でいう高精度な寸法検査とは、内径が80mm〜200mm程度、板厚が0.3mm〜25mm程度、要求される寸法の精度(公差)が10μm〜50μm程度の内燃機関用シリンダライナについての検査精度を基準としたものである。
【0028】
また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1において、空気吹き出し口3は、測定用ノズル2の長手方向に複数段配置したことが好ましい。
【0029】
図1及び図2には、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1において、空気吹き出し口3が、測定用ノズル2の長手方向に3段(両端部付近及び中間部付近)配置されているのが示されている。本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、測定用ノズル2にこのような配置で空気吹き出し口3を備えることで、検査対象である円筒形状物20を当該測定用ノズル2に装着した後に当該測定用ノズル2の長手方向に移動させなくとも、当該円筒形状物20の内周面ほぼ全域の寸法を短時間で且つ高精度に検査することが出来る。なお、本件発明の測定用ノズル2に設ける空気吹き出し口3は、定められた空気供給量に対して当該空気吹き出し口3の数が増加した場合における、孔径の微小化に伴う加工形状の高精度化及び加工コストの増大化を鑑みれば、当該測定用ノズル2の長手方向に2〜5段配置することがより好ましい。
【0030】
また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1において、測定用ノズル2は、その外周の同一円周上に溝部5を形成し、当該溝部5の底面に空気吹き出し口3及び当該溝部内に吹き出された空気を逃がすための空気排出口4を設け、当該空気吹き出し口3には当該溝部内から突出しない大きさの空気吹き出し用ノズル(不図示)を取り付けたものである
【0031】
図1及び図2に示すように、本件発明の測定用ノズル2には、空気吹き出し口3の配置位置を含めた外周の同一円周上に溝部5が形成されている。本件発明の測定用ノズル2は、このような形状を呈することで、空気吹き出し口3から吹き出した空気が溝部5全域に行き渡り、検査対象となる円筒形状物20の内周面の一部に僅かな変形があったとしても正確に検出し、当該円筒形状物20の内周面の寸法をより高精度に検査することが可能となる。
【0032】
また、本件発明の測定用ノズル2は、その外周の同一円周上に形成される溝部5の底面に当該溝部内に吹き出された空気を逃がすための空気排出口4を設けることで、空気吹き出し口3から吹き出された空気が当該溝部5内に溜まり、当該溝部5内の圧力が過度に上昇することによる空気流量検出精度の低下を防ぐことが出来る。また、当該空気排出口4は、空気吹き出し口3からの空気吹き出し量等を考慮して設ける数や内径を適宜設定することが出来、当該測定用ノズル2の外周の同一円周上に等間隔に並んで設けることで、検査対象となる円筒形状物20の内周面の寸法検査を高精度且つ高い再現性を持って行うことが可能となる。
【0033】
また、本件発明の測定用ノズル2は、溝部5の底面に設けた空気吹き出し口3に当該溝部5内から突出しない大きさの空気吹き出し用ノズルを取り付けることで、各空気吹き出し口3から吹き出される空気量のムラをなくすと共に、当該空気吹き出し口3付近の気流の乱れを効果的に抑制することが出来る。すなわち、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、測定用ノズル2の空気吹き出し口3に空気吹き出し用ノズルを取り付けることで、検査対象となる円筒形状物20の内周面の寸法検査をより高精度且つ高い再現性を持って行うことが可能となる。
【0034】
ちなみに、本件発明の測定用ノズル2は、図2に示すように、測定用ノズル2の溝部5と溝部5との間の一部領域を凹ませて、軽量化を図ることも出来る。例えば、本件発明の測定用ノズル2は、図2に示すような形状とすることで、人力による持ち運びが容易となり取り扱い性に優れたものとなる。
【0035】
また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1において、測定用ノズル2は、その先端部に検査対象の円筒形状物20の挿入を容易にするために、当該円筒形状物20が挿入する側に向かうに従って縮径した円錐台形状のガイド部6を備えたことが好ましい。
【0036】
本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、測定用ノズル2が、その先端部に検査対象の円筒形状物20が挿入される側に向かうに従って縮径した円錐台形状のガイド部6を備えることで、当該円筒形状物20に対する当該測定用ノズル2の挿入が容易となる。従って、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1は、測定用ノズル2の先端部に当該ガイド部6を備えることで、検査対象である円筒形状物20の当該測定用ノズル2への装着が迅速に行えるようになり、検査工数を効果的に削減することが出来る。
【0037】
また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1において、ガイド部6は、樹脂材料又は軟質金属からなることが好ましい。
【0038】
本件発明の測定用ノズル2は、その先端部に検査対象の円筒形状物20が挿入する側に向かうに従って縮径した円錐台形状のガイド部6を備えた場合において、当該ガイド部6を樹脂製又は軟質金属製とすることで、検査対象の円筒形状物20を装着する際に当該円筒形状物20が傷付くのを効果的に抑制することが出来る。特に、当該円筒形状物20が当該測定用ノズル2よりも軟質の材料からなる場合には、当該円筒形状物20を当該測定用ノズル2に装着する際に当該円筒形状物20側に傷が付きやすいため、当該測定用ノズル2の先端部に樹脂製又は軟質金属製からなるガイド部6を備えることが好ましい。なお、当該ガイド部6に用いられる樹脂は、特に限定されないが、例えばナイロン、エポキシガラス樹脂、MCナイロン(登録商標)、POM(ジュラコン(登録商標)等のポリアセタール)、HDポリエチレン、フッ素樹脂、PEEK樹脂、PPS樹脂、ABS樹脂、PBT樹脂等を用いることが出来る。また、当該ガイド部6に用いられる軟質金属としては、銅、銅合金、鉛、鉛合金、錫、錫合金、アルミ、アルミ合金等を用いることが出来る。
【0039】
ちなみに、本件発明のガイド部6は、測定用ノズル2の先端部にボルト等によって着脱自在に取り付ける構成とすることも可能であり、仮に当該ガイド部6に摩耗が生じた場合には新品と交換することが出来る。従って、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1を用いることで、長期間安定して高精度の検査を行うことが可能となる。
【0040】
本件発明に係る円筒形状物の寸法検査方法: 本件発明に係る円筒形状物の寸法検査方法は、上述の円筒形状物の寸法検査装置1を用いた円筒形状物の寸法検査方法である。そして、当該円筒形状物の寸法検査方法は、当該円筒形状物の寸法の公差上限値に相当する内径寸法の内周面を備えた公差上限値用円筒形状マスタリングゲージ(不図示)を測定用ノズル2の外周に装着配置し、空気吹き出し口3より当該公差上限値用円筒形状マスタリングゲージの内周面に対して整圧された空気を吹き出したときの空気の流量値を空気流量検出手段12により検出して、当該円筒形状物の内径寸法の公差上限値に対応する空気流量値を取得する。また、当該円筒形状物の内径寸法の公差下限値に相当する内径寸法の内周面を備えた公差下限値用円筒形状マスタリングゲージ(不図示)を当該測定用ノズルの外周に装着配置し、当該空気吹き出し口3より当該公差下限値用円筒形状マスタリングゲージの内周面に対して整圧された空気を吹き出したときの空気の流量値を空気流量検出手段12により検出して、当該円筒形状物の内径寸法の公差下限値に対応する空気流量値を取得する。次いで、当該円筒形状物の寸法検査方法は、検査対象の円筒形状物20を当該測定用ノズル2の外周に装着配置し、当該空気吹き出し口3より当該円筒形状物20の内周面に対して整圧された空気を吹き出したときの空気の流量値を当該空気流量検出手段12により検出し、このときの空気流量値が当該円筒形状物の内径寸法の公差上限値及び公差下限値に対応する空気流量値の範囲内であるか否かを判定することを特徴とする。
【0041】
図1及び図2を用いて本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1を用いて検査対象である円筒形状物20の内周面の寸法を検査する方法について説明する。図1及び図2は、特に検査対象の円筒形状物として内燃機関用シリンダライナ20を用いた場合に用いる寸法検査装置について示したものである。図1に示す円筒形状物の寸法検査装置1は、空圧源(不図示)から供給された空気をレギュレーター(不図示)を介して測定用ノズル2に供給される構造となっており、当該レギュレーターと当該測定用ノズル2との間に設けられた空気流量検出手段12が検出した空気流量値により、検査対象となる内燃機関用シリンダライナ20の内周面の寸法を検査することが出来る。
【0042】
図1に示す本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置1を用いた寸法検査方法は、内燃機関用シリンダライナ20の内周面の寸法を検査するにあたって、まず円柱状形状の測定用ノズル2を当該内燃機関用シリンダライナ20の内周に挿入する。このときに、当該測定用ノズル2に挿入される当該内燃機関用シリンダライナ20は、装着した際にストッパー7により位置決めされる。そして、当該測定用ノズル2の外周面には、当該測定用ノズル2の軸を中心に対象となる位置に空気吹き出し口3が配置されており、測定用ノズル2の外周面に備えられた合計18個の空気吹き出し口3からレギュレーターにより整圧された空気を吹き出して、そのときの空気流量値をフローメーター12により検出する。
【0043】
ここで、空気流量検出手段としてフローメーター12を用いた場合には、当該測定用ノズル2と当該内燃機関用シリンダライナ20との間の隙間量の変化に伴う当該測定用ノズル2から吹き出す空気流量の変化が、フロートの浮き上がる高さ位置の変化により示されることで空気流量値の検出を行うことが出来る。ちなみに、当該測定用ノズル2の外周面と当該内燃機関用シリンダライナ20の内周面との間の隙間量が大きくなるほど、空気流量検出手段12により検出される空気流量も大きくなる。
【0044】
そして、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査方法は、当該円筒形状物の内径寸法の公差上限値に相当する内径寸法の内周面を備えた公差上限値用円筒形状マスタリングゲージに測定用ノズル2を挿入し、そのときのフローメーター12により検出される空気流量値を公差上限の基準値とする。また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査方法は、当該円筒形状物の内径寸法の公差下限値に相当する内径寸法の内周面を備えた公差下限値用円筒形状マスタリングゲージに測定用ノズル2を挿入し、そのときのフローメーター12により検出される空気流量値を公差下限の基準値とする。
【0045】
次いで、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査方法は、検査対象となる内燃機関用シリンダライナ20の内周に測定用ノズル2を挿入し、そのときのフローメーター12に示される空気流量値を上述した円筒形状マスタリングゲージにより設定された基準値と比較して基準値範囲内に入っていれば合格、外れていれば不合格と判定する。
【0046】
このように、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査方法は、測定用ノズル2に圧縮空気を供給し、当該圧縮空気が当該測定用ノズル2の外周面と検査対象である円筒形状物20の内周面との間の隙間の大きさにより変化する空気流量に基づき合否を判定する。従って、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査方法によれば、例え習熟した者でなくとも高精度で且つ高い再現性を持って検査を行うことが出来、また、従来よりも短時間で正確な合否判定を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置によれば、測定用ノズルの外周の同一円周上に6個以上離間させて空気吹き出し口を配置することにより、検査対象である円筒形状物の内周面全周における空気流量を一度に検出することが出来るため、当該円筒形状物の内周面の寸法検査を高精度且つ短時間に行うことが出来る。また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置を用いた円筒形状物の寸法検査方法によれば、習熟した者でなくとも短時間で正確な合否判定を行うことが可能であるため、円筒形状物の内周面の寸法検査を製造ライン上での全数検査という形で行うことが可能となる。また、本件発明に係る円筒形状物の寸法検査装置及びこれを用いた円筒形状物の寸法検査方法によれば、高精度な寸法検査が求められると共に、肉厚が薄く変形しやすい内燃機関用シリンダライナの内周面の寸法検査に好適に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0048】
1 円筒形状物の寸法検査装置
2 測定用ノズル
3 空気吹き出し口
4 空気排出口
5 溝部
6 ガイド部
7 ストッパー
8 台座
9 支持柱
10 コネクタ
図1
図2
図3