(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記拡張部は、前記拡張部を構成する前記拡張室の前記排出口を前記湾曲板に近い前記拡張室の前記排出口から順に開放することにより、前記拡張部による前記止血部位を押圧する圧力を段階的に減少させることを特徴とする請求項1に記載の止血器具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、医師や看護師などの作業者が簡単な作業で止血部位を押圧する圧力を容易に段階的に弱めることができる止血器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る止血器具は、肢体の止血部位に巻き付ける可撓性を有する帯体と、帯体を肢体に巻き付けた状態で固定する固定手段と、帯体より硬質な材料で構成され、その少なくとも一部が内周側に向かって湾曲した湾曲板と、湾曲板の内側に配置された拡張部とを備え、拡張部は、湾曲板の表面から離れる方向に順次積層され且つ拡張可能に形成された複数の拡張室を有し、複数の拡張室は、それぞれ、内部に拡張流体を注入することにより拡張部を拡張するように構成され、互いに積層されてい
る拡張室は、連通孔を介して互いに連通し、連通孔に逆止弁が配置され、複数の拡張室は、それぞれ選択的に開閉できる排出口を有し、排出口を開放することにより、拡張室に注入した拡張流体を排出して拡張部が止血器具を押圧する圧力を減少させるように構成されている。このように構成すると、選択した排出口を開放することにより、選択した排出口が形成されている拡張室の内部の拡張流体が排出されて拡張室が縮小するため、作業者が排出口を開放するという簡単な作業で止血器具の圧力を調整することができる。
【0008】
また、拡張部は、拡張部を構成する拡張室の排出口を湾曲板に近い拡張室の排出口から順に開放することにより、拡張部による止血部位を押圧する圧力を段階的に減少させるように構成することができる。これにより、作業者が止血器具の圧力を調整する際、止血部位から離れた方向にある排出口から拡張流体を開放することにより、拡張された拡張室と止血部位との間に縮小される拡張室が位置することはないため、拡張された拡張室から止血部位付近に向かう圧力を拡散させることなく、止血器具の減圧作業を行うことが可能である。さらに後述で記載するように、拡張室間の連通孔を設け、その連通孔に逆止弁が設けられている場合には、拡張室内の拡張流体が逆止弁を通して他の拡張室内に流入することを確実に防止することができる。
【0009】
ここで、拡張部は、互いに積層された複数の押圧バルーンを有し、拡張室は押圧バルーンの内部空間で形成することができる。このように構成することにより、押圧バルーンの個数や大きさを変更するだけで、作業者の減圧作業を行う間隔や毎回の減圧量に合わせることができる。
【0010】
また、拡張部は、複数の押圧バルーンが互いを接続する接続部を介して一体的に構成することができる。これにより、複数の押圧バルーンの接続部の位置を変更することで、拡張部の押圧方向を調節することができる。この際、拡張部による止血部位への圧力が、止血部位がある平面に対して垂直な方向Fに向いていた方が、拡張部の拡張による圧力が止血部位に対して伝わるため、より優れた止血効果が得られ、より確実に止血することができる。そのため、拡張体の押圧バルーンを拡張した際、拡張した拡張体が固定部の湾曲板又は帯体と当接し、その固体部の当接面と止血部位との間を結ぶ直線上に接続部が並んで配置されるように構成するのが好ましい。これにより、複数の押圧バルーンの押圧方向を拡張部を通して止血部位に差し向けることができる。ここで、固定部とは、肢体の止血すべき部位に巻き付ける可撓性を有する帯体と、帯体を肢体に巻き付けた状態で固定する固定手段と、帯体より硬質な材料で構成され、その少なくとも一部が内周側に向かって湾曲した湾曲板からなる。
【0011】
また、止血器具は、拡張部と帯体又は湾曲板との間に拡張部よりも小さな補助バルーンを有していてもよい。補助バルーンは、固体部の帯体の長手方向についての幅が拡張部よりも小さくされていることにより、その大きさが拡張体よりも小さくなっており、拡張部を局所的に押圧する。そのため、拡張部から止血部位への圧力の方向を止血部位がある平面に対して垂直な方向Fに調節することがより確実に行うことができる。
【0012】
また、拡張部は、拡張部を覆うように配置されて複数の押圧バルーンの位置を規制する位置規制部をさらに有するのが好ましい。なお、補助バルーンは、位置規制部の内側に配置されていてもよい。このように構成することにより、押圧バルーンを拡張した際、押圧バルーンの位置関係がずれ、拡張部の押圧方向が変化してしまうことを防止することができる。また、補助バルーンを設けた場合には、補助バルーンと拡張部の位置関係を変化しないように拡張部と補助バルーンを覆うように位置規制部材を設けても良い。
【0013】
また、拡張部は、拡張可能に形成された1つの押圧バルーンを有しており、拡張室は、前記押圧バルーン内が互いに積層された複数の空間であるように形成することもできる。こうすることで、位置規制部材を設けなくても、拡張部を拡張した際、拡張室の押圧方向がずれることはない。さらに、押圧バルーンと帯体又は湾曲板との間には拡張部よりも小さな補助バルーンを有していてもよい。補助バルーンは、固定部の帯体の長手方向についての幅が拡張部よりも小さくされていることにより、その大きさが拡張体よりも小さくなっており、拡張部を局所的に押圧する。そのため、拡張部から止血部位への圧力の方向を止血部位がある平面に対して垂直な方向Fに調節することがより確実に行うことができる。
【0014】
また、排出口は、各々の拡張室の外側からシールで封止されているように構成することができる。このように構成することにより、シールを剥がす操作のみで排出口を開放することができる。このようにすることで、作業者はシールをはがすと云う簡単な作業のみで、止血器具の減圧をすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、複数の押圧室にそれぞれ形成された排出口を開放して止血部位を押圧する圧力を段階的に減少させるので、止血部位を押圧する圧力を簡単な作業で容易に段階的に弱めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る止血器具の構成を示す。この止血器具は、拡張することにより肢体の止血部位を押圧する拡張部1と、この拡張部1を肢体に対して外側から固定する固定部2と、拡張部1を拡張させるための拡張流体を拡張部1内に注入するための注入部3とを有する。
【0018】
固定部2は、肢体の止血すべき部位に巻き付ける可撓性を有する帯体4と、帯体4を肢体に巻き付けた状態で固定する固定手段5と、帯体4より硬質な材料で構成され、その少なくとも一部が内周側に向かって湾曲した湾曲板6とを有する。
【0019】
帯体4は、可撓性を有する帯状の部材である。例えば、帯体4は、被治療者の手首の外周を一周するように巻き付けられ、その両端付近の部分をお互いに重ね合わせるようにして、手首に装着される。例えば、帯体4は、この重ね合わせ部分に一対の面ファスナーを配置することで、手首に対して固定することができる。
【0020】
帯体4は、穿刺部位を外側から確実に視認することができるように、透明性を有する材料から構成されるのが好ましい。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)から構成することができる。
【0021】
帯体4の中央部には、湾曲板6を保持する湾曲板保持部が形成されている。湾曲板保持部は、外面側又は内面側に別個の帯体部材が融着又は接着等の方法により接合されることにより、二重になっており、それらの隙間に挿入された湾曲板6を保持する。
【0022】
固定手段5は、帯体4を肢体の手首などの止血部位に巻き付けた状態で固定する手段であればよく、上述した面ファスナーに限らず、例えば、スナップ、ボタン、クリップ、帯体の端部を通す枠部材であってもよい。
【0023】
湾曲板6は、帯体2の二重に構成された湾曲板保持部の間に挿入されることにより、帯体4に保持されている。なお、湾曲板6を帯体に配置する方法は、図示の構成に限らず、例えば、帯体4の内面側又は外面側に融着又は接着等の方法により接合されていてもよい。また、帯体4は、例えば手首等を一周するものでなくてもよく、湾曲板6の両端部にそれぞれ連結されており、湾曲板6と重なる部分に帯体が存在しなくてもよい。また、湾曲板6は少なくとも一部が内面側に向かって湾曲した形状をなしている。
【0024】
湾曲板6は、穿刺部位を外側から確実に視認することができるように、透過性を有する材料から構成されるのが好ましい。例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等から構成することができる。
【0025】
湾曲板6の内側には、拡張性を有する材料で形成された拡張部1が設置されている。拡張部1は、拡張流体(空気等の気体もしくは液体)を注入することにより拡張し、肢体の止血部位を圧迫する。
【0026】
拡張部1は、拡張可能に形成された押圧バルーン8と、押圧バルーン8を覆うように配置された位置規制部9を有している。また、拡張部1は湾曲板6の長手方向の一端側に片寄って位置している。
図2では、拡張部1は、湾曲板6のほぼ右半分側と重なるように位置している。
ここで、位置規制部9と帯体4は連結部10で連結されている。そして、連結部10は、拡張部1を拡張した際、拡張部1が湾曲板に支持されて帯体4と当接し、その当接面7と肢体の止血部位との間に配置されるように長さが調整されている。
【0027】
拡張部1の押圧バルーン8の材料としては、特に限定されず、例えば、前述した帯体4の構成材料と同様のものを用いることができる。また、押圧バルーン8は、帯体4と同質または同種の材料で構成されるのが好ましい。これにより、融着による帯体4との接合を容易に行うことができ、容易に製造することができる。
【0028】
このような拡張部1は、可撓性を有する連結部10を介して、帯体2に連結されている。本形態では、湾曲板6に対して片寄った側、すなわち、
図2中の右側のみが連結部10を介して帯体4に連結されている。また、本形態では拡張部1の位置規制部9が連結部10を介して帯体4に連結されているが、これに限定されず、例えば、拡張部1の押圧バルーン8の1つが連結部10を介して帯体4に連結されていてもよい。この連結部10は、その実質的な長さは比較的短くされ、これにより、拡張部1が湾曲板6に対し片寄った位置に繋留される。なお、融着による接合を容易にするため、位置規制部又は押圧バルーンと同材料で構成されているのが好ましい。
【0029】
位置規制部9の材料は、特に限定されず、例えば、前述した帯体4の構成材料と同様のものを用いることができる。位置規制部9は、複数の押圧バルーン8の移動を規制する構成されていればよく、
図2のような複数の押圧バルーンを覆うような構成に限られない。
【0030】
注入部3は、押圧バルーン8の内部に連通するチューブ11と、チューブ11に接続されたコネクタ部12とを有する。コネクタ部12は、チューブ11内に連通する開口部13を有し、この開口部13にシリンジ等を接続して拡張流体を注入することにより、チューブ11を介して押圧バルーン8内に拡張流体を供給することができる。また、コネクタ部12には逆止弁が内蔵されており、コネクタ部12の開口部13からシリンジが抜去されると同時に逆止弁が閉じるため、押圧バルーン8内に供給された拡張流体が逆流して開口部13から漏れ出すのを防止することができる。
なお、拡張流体としては、容易に扱えるものが好ましく、例えば、空気などの気体や液体を用いることができる。
【0031】
なお、止血器具は、拡張部を拡張した際、拡張部が止血部位を適切な押圧方向Fで圧迫するように、肢体に固定する際に拡張部の位置合わせを行いやすいようにマーカを設けてもよい。マーカは、肢体に止血器具を装着する際、外部から視認できるように設ければよく、例えば、拡張部、帯体又は湾曲板に設けることができる。このように構成することにより、肢体に止血器具を装着する際、マーカと止血部位の位置を合わせるだけで、適切な押圧方向で止血部位を押圧することができる。なお、マーカの形状は特に限定されず、例えば、円形、三角形、四角形等が挙げられる。
【0032】
次に、拡張部1の構成について詳細に説明する。
図2に、止血器具を肢体Sに取り付けて、拡張部1の押圧バルーン8を拡張することにより肢体Sの止血部位Pを押圧する様子を示す。
押圧バルーン8は、5つの押圧バルーン8a〜8eが固定部2と止血部位Pとの間に互いに積層されて構成されている。押圧バルーン8a〜8eは、それぞれ拡張可能に形成され、押圧バルーン8a〜8e内に拡張流体を注入することにより、止血部位Pに対して直交する方向に拡張する。押圧バルーン8a〜8eの拡張により拡張部1が拡張し、拡張部1は固定部2の湾曲板6に支持されつつ固定部2の帯体4に当接する。そして、その固定部2の当接面7に支持されつつ止血部位Pを押圧する。
【0033】
また、押圧バルーン8a〜8eには、内部に注入された拡張流体を排出するための排出口14a〜14eが形成されると共に、この排出口14a〜14eを封止するためのシール15a〜15eが排出口14a〜14eの外側を覆うように配置されている。
【0034】
排出口14a〜14eを封止するシール15a〜15eは、拡張流体を押圧バルーンに注入した状態でも剥れず、かつ、着脱自在に排出口に固定されていればよく、例えば、合成樹脂のフィルムなどにより構成することができる。なお、シールは、押圧バルーンが拡張前及び拡張後ともに排出口を覆っている必要があるため、押圧バルーンの形状が変化してもはがれない程度の柔軟性をもっていてもよい。
【0035】
位置規制部9は、押圧バルーン8a〜8eを覆って束ねるようなベルト状のものから構成され、押圧バルーン8a〜8eの位置を一体に規制している。
【0036】
図3に示すように、押圧バルーン8a〜8eは、内部に拡張可能に形成された拡張室16a〜16eを有し、この拡張室16a〜16eに拡張流体が注入されることにより、押圧バルーン8a〜8eが拡張される。また、押圧バルーン8a〜8eは、接続部17a〜17dを介して互いに接続されて一体に構成されている。この接続部17a〜17dは、固定部2の当接面7と肢体Sの止血部位Pとの間を結ぶ直線L上に並んで配置されており、これにより押圧バルーン8a〜8eの押圧方向を止血部位に差し向けることができる。すなわち、押圧バルーン8a〜8eの押圧方向は、接続部17a〜17dの配列方向によって規定され、この接続部17a〜17dを止血部位Pに対して直交する方向に配列することにより、止血部位Pを正面から押圧することができる。
【0037】
また、接続部17a〜17dには、拡張室16a〜16eを互いに連通する連通孔18a〜18dが形成されると共にその連通孔18a〜18dには逆止弁19a〜19dが設けられている。逆止弁19a〜19dは、拡張室16a〜16e内に連通孔18a〜18dを介して拡張流体が一方向にのみ注入されるように設けられている。これにより、
図4に示すように、注入部3のチューブ11に連通された押圧バルーン8aの注入口20から拡張流体が注入されることで、連通孔18a〜18dを介して拡張流体が拡張室16a〜16e内に一度に供給され、拡張室16a〜16e内への拡張流体の注入が停止されると同時に逆止弁18a〜18dが連通孔18a〜18dを閉じて、拡張室16a〜16e内に注入された拡張流体が逆流するのを抑制することができる。
【0038】
次に、この実施の形態1の動作について説明する。
まず、
図1に示す止血器具が、手術等において生じた止血部位Pに配置され、拡張部1が止血部位Pに当接される。例えば、止血部位Pは、カテーテルを用いた手術において穿刺で生じた穿刺部位である。
【0039】
次に、止血部位Pに拡張部1が当接された状態で、拡張部1の両側に延びる固定部2の帯体4を肢体Sの周囲に巻き付けるように変形させて、固定手段5を用いて肢体Sの周囲に固定する。ここで、
図1では、固定手段5として、帯体4の両端部に一対の面ファスナー5が設けられており、帯体4の両端部の面ファスナーを互い接合することにより、固定できる。
続いて、注入部3の開口部13にシリンジが接続されて、拡張部1を拡張させるための拡張流体として空気がシリンジから注入される。シリンジから注入された空気は、
図4に示すように、チューブ11を介して注入口20から押圧バルーン8aの押圧室16a内に供給される。ここで、拡張室16a〜16eは、連通孔18a〜18dを介して互いに連通されており、拡張室16a内に供給された空気は、それぞれの連通孔18a〜18dを介して一度に拡張室16a〜16e内に注入される。
【0040】
拡張室16a〜16e内への空気の注入に伴って、押圧バルーン8a〜8eが帯体4と肢体Sの間で拡張されていく。この時、例えば、穿刺部位が橈骨動脈などの場合には、止血部位Pが
図2のように腕の中心軸からずれた位置になるため、押圧バルーン8a〜8eの拡張に伴って拡張部1の位置が止血部位Pからずれてしまう虞がある。しかし、拡張部1の位置が連結部10で規制されており拡張部1を止血部位Pの正面に位置させたまま拡張させることができる。このようにして、
図2に示すように、押圧バルーン8a〜8eが、固定部2の当接面7で支持されつつ止血部位Pを所定の圧力Fで押圧する。そして、止血部位Pが所定の圧力Fで押圧された時点で、押圧バルーン8a〜8e内への空気の注入が停止される。
【0041】
ここで、押圧バルーン8a〜8eは、
図3に示すように、固定部2の当接面7と肢体Sの止血部位Pとの間を結ぶ直線L上に位置する接続部17a〜17dを介して互いに接続されている。このため、それぞれの押圧バルーン8a〜8eの押圧方向が直線L上に沿うように規制され、押圧バルーン8a〜8e全体の押圧方向を止血部位に差し向けることができる。また、拡張室16a〜16e内に供給された空気が開口部13から漏れないように、コネクタ部12に内蔵された逆止弁が拡張室16a〜16e内への空気の注入が停止されると同時に開口部13を封鎖するため、押圧バルーン8a〜8eが止血部位Pを押圧する圧力Fを一定に保つことができる。さらに、拡張室16a〜16eを互いに連通する連通孔18a〜18dは、空気の注入が停止されると同時に逆止弁19a〜19dで封鎖されるため、それぞれの拡張室16a〜16e内に供給された空気が他の拡張室16a〜16e内に移動するのを防ぐことができる。
【0042】
このようにして、押圧バルーン8a〜8eにより止血部位Pを所定の圧力Fで押圧することにより、手術の際に生じた穿刺部位を止血することができる。この時、止血時間を通して所定の強い圧力Fで止血部位Pを押圧すると、血管が閉塞されて血液が流れにくくなり、止血器具を装着した患者の肢体にしびれや痛みが生じる虞がある。そのため、拡張部1の押圧バルーンに注入した拡張流体を減らすことで、止血部位Pを押圧する圧力Fを徐々に弱めていく必要がある。そこで、本発明では、押圧バルーン8a〜8eを所定の時間毎に収縮させることにより、止血部位Pを押圧する圧力Fを段階的に減少させる。
【0043】
具体的には、押圧バルーン8a〜8eの全てを拡張させた状態で、例えば1時間だけ止血部位Pを押圧した後、止血器具を装着した患者の肢体にしびれや痛みが生じないように、
図5に示すように、押圧バルーン8aの排出口14aを外側から封止するシール15aを剥がして、拡張室16a内に注入されている空気を排出口14aから排出する。この時、拡張室16a〜16eを連通する連通孔18a〜18dには逆止弁18a〜18dが設けられているため、拡張室16b〜16e内に注入された空気は、拡張室16a内に移動することはなく、拡張室16a内に注入された空気のみを排出口14aから排出することができる。このようにして、
図6に示すように、押圧バルーン8aのみが収縮され、止血部位Pを押圧す圧力Fが1段階だけ弱められる。止血部位Pを押圧する圧力Fを弱めることにより、血管や神経が圧迫されてしびれや痛みを引き起こしたり、圧迫で血管が閉塞されて血行不良を引き起こしたり、等の症状が起こるのを抑制できる。
【0044】
同様にして、1時間毎に押圧バルーン8b〜8dの排出口14b〜14dを外側から封止するシール15b〜15dを剥がして、拡張室16b〜16d内に注入されている空気を排出口14b〜14dから順に排出していく。この時も、逆止弁18b〜18dにより空気が他の拡張室16b〜16eに移動することはなく、拡張室16b〜16e内にそれぞれ注入された空気のみを対応する排出口14b〜14dから排出することができる。これにより、各段階毎に押圧バルーン8b〜8dをそれぞれ収縮させることができる。
このようにして、押圧バルーン8a〜8dが段階的に収縮されると共に止血部位Pを押圧する圧力Fが段階的に弱められ、
図7に示すように、最後に押圧バルーン8eのみで止血部位Pを押圧して止血部位Pの止血が終了される。このように、押圧バルーン8a〜8eは、それぞれの止血段階において、拡張部1の止血部位Pに対する圧力を調節するもので、それぞれの止血段階に応じた大きさで形成されている。
【0045】
本実施の形態によれば、シール15a〜15eを順に剥がすだけで、対応する押圧バルーン8a〜8eを収縮させることができるため、止血部位Pを押圧する圧力Fを容易に減少させることができる。また、それぞれの拡張室16a〜16eには予め設定された量の空気が注入されており、それぞれの押圧バルーン8a〜8eを収縮させることで止血部位Pを押圧する圧力が各止血段階で設定された圧力まで低下されるため、作業者は、押圧バルーン8a〜8eから排出させる空気の量を意識する必要がなく、作業者の負担を軽減することができる。
【0046】
なお、止血器具は、拡張部1よりも小さな補助バルーン21をさらに有することができる。補助バルーン21は、
図8に示すように、拡張部1の位置規制部9の内側において固定部2に最も近い押圧バルーンと位置規制部9との間に設けてもよいが、これに限定されず、
図9に示すように、拡張部1の位置規制部9の外側と固定部2との間に設けてもよい。補助バルーン21は固定部2の帯体4の長手方向についての幅が拡張部1よりも小さくされているため、拡張部1を局所的に押圧できる。そのため、例えば、
図8の場合、補助バルーン21を固定部2の当接面7と止血部位を結ぶ直線L上に配置することで、拡張部1に対して止血部位Pに向かう押圧方向に更に外側から圧力を加えることができるため、止血部位Pをより集中的に押圧することができる。また、
図9に示すように、拡張部1の位置規制部の外側に補助バルーン21を設けた場合には、補助バルーン21により拡張部1を外部から局所的に押圧するため、拡張部1から止血部位Pへの押圧力Fの方向をより適切な方向に制御することもできる。なお、補助バルーン21は、拡張部1の押圧バルーン8の拡張に伴って拡張するように、例えば、拡張部1の押圧バルーン8aと連通されており、その連通部には逆止弁等を設けてもよい。
【0047】
また、上記の実施の形態では、位置規制部9は、押圧バルーン8a〜8eを束ねるようなベルト状のものから構成されたが、押圧バルーン8a〜8eの位置を規制するように束ねることができればよく、これに限られるものではない。例えば、押圧バルーン8a〜8eの全体を袋状のもので覆うように構成することもできる。また、位置規制部9がなくても押圧バルーン8a〜8eがある程度一体にまとまるのであれば、位置規制部9を除くこともできる。
また、止血部位Pを押圧する圧力を段階的に減少させることができれば、押圧室16a〜16eから空気を排出する順番は上記の例に限られるものではない。
【0048】
実施の形態2
実施の形態1では、拡張部1の押圧バルーン8a〜8eがそれぞれ拡張することにより止血部位Pを押圧したが、拡張可能に形成された複数の拡張室を有する拡張部が止血部位Pを押圧できればよく、これに限られるものではない。
例えば、
図10に示すように、実施の形態1の止血器具において、位置規制部9を除くと共に押圧バルーン8a〜8eに換えて拡張可能に形成された1つの押圧バルーン31を備え、さらに押圧バルーン31と固定部2の当接面7との間に押圧バルーン31よりも小さな補助バルーン32を配置することができる。実施の形態2では、拡張部1は1つの押圧バルーン31のみから構成されている。ここで、固定部2の当接面7とは、補助バルーン32がないと仮定した場合、押圧バルーン31が拡張した際、固定部2の湾曲板6に支持されて押圧バルーン31と固定部2の帯体4が当接する付近の領域をいう。
押圧バルーン31は、内部を互いに積層された5つの拡張室33a〜33eに分割する分割部34を有する。分割部34には、拡張室33a〜33eを互いに連通する連通孔35が形成されると共にその連通孔35には逆止弁36が設けられている。逆止弁36は、拡張室33a〜33e内に連通孔35を介して拡張流体が一方向のみに注入されるように設けられている。これにより、注入部3のチューブ11に連通された注入口20から拡張室33aに拡張流体が注入されることで、連通孔35を介して拡張流体が拡張室33a〜33e内に一度に供給され、拡張室33a〜33e内への拡張流体の注入が停止されると同時に逆止弁36が連通孔35を閉じて、拡張室33a〜33e内に注入された拡張流体が逆流するのを防ぐことができる。
このようにして、それぞれの拡張室33a〜33eに拡張流体が注入されることにより、押圧バルーン31が帯体4と肢体Sの間で拡張されて、肢体Sの止血部位Pを押圧する。
【0049】
補助バルーン32は、固定部2の当接面7と止血部位Pの間を結ぶ直線L上に配置され、固定部2の当接面7に支持されつつ拡張された押圧バルーン31を止血部位Pに向かって押圧する。これにより、押圧バルーン31に対して、止血部位Pに向かう押圧方向を外側から与えることができ、押圧バルーン31から止血部位への圧力の方向をより確実に傾斜させることにより、止血部位Pに対して適切な押圧方向で圧力Fを加えることができる。
このようにして、押圧バルーン31で止血部位Pを所定の圧力Fで押圧することにより、穿刺部位を止血することができる。
【0050】
なお、補助バルーン32は押圧バルーン31と連通されており、その連通部には逆止弁が設けられていてもよい。またこれに限られず、注入部3から延びるチューブと連通していてもよい。このように構成することで、押圧バルーン31と同時に補助バルーン32を拡張することができる。
【0051】
また、押圧バルーン31には、それぞれの拡張室33a〜33e内に注入された拡張流体を排出するための排出口37が形成されると共に、この排出口37を封止するためのシール38がそれぞれの排出口37を外側から覆うように配置されている。
このシール38を所定の時間毎に剥がすことで排出口37を開放し、それぞれの拡張室33a〜33eから拡張流体を排出する。これにより、それぞれの拡張室33a〜33eと共に押圧バルーン31が収縮され、止血部位Pを押圧する圧力Fを段階的に減少させることができる。
【0052】
本実施の形態によれば、シール38を順に剥がすだけで、対応する拡張室33a〜33eを収縮させることができるため、止血部位Pを押圧する圧力Fを容易に減少させることができる。また、作業者は、押圧バルーン31から排出させる拡張流体の量を意識する必要がないため、作業者の負担を軽減することができる。
【0053】
なお、上記実施の形態1及び実施の形態2では、拡張室の積層を5個として説明しているが、これに限定されるものではなく、必要に応じて拡張室の個数、大きさを変更してもよい。
【0054】
なお、上記の実施の形態2では、押圧室33a〜33eは積層して構成されていたが、拡張室33a〜33eを段階的に収縮させることができればよく、これに限るものではない。
また、上記の実施の形態1および2では、拡張流体を排出するための排出口は、外側からシールで覆うことで封止されていたが、排出口を封止できればよく、これに限るものではない。例えば、押圧バルーンの厚さを部分的に薄く形成して、その部分を引き裂くことで拡張室を開放するように構成することもできる。