(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記デッドタイム補償手段は、前記デッドタイム補償電圧を変更する場合に、前記キャリア信号に同期して前記デッドタイム補償電圧を段階的に変化させる請求項1に記載のPWMコンバータの制御装置。
前記デッドタイム補償手段は、前記デッドタイム補償電圧をゼロから前記第1電圧または前記第2電圧に変更する場合、前記入力電流の極性判定に用いる基準電流値に所定のオフセットを持たせ、該オフセットを持たせない場合に比べて、早期にデッドタイム補償電圧をゼロから前記第1電圧または前記第2電圧に変更する請求項1または請求項2に記載のPWMコンバータの制御装置。
前記電流検出手段は、前記キャリア信号が最大値及び最小値をとるタイミングに同期して前記入力電流の検出を行う請求項1から請求項3のいずれかに記載のPWMコンバータの制御装置。
前記デッドタイム補償手段は、前記デッドタイム補償電圧を変更する場合には、前記キャリア信号に同期して前記デッドタイム補償電圧を段階的に変化させる請求項5に記載のPWMインバータの制御装置。
前記デッドタイム補償手段は、前記デッドタイム補償電圧をゼロから前記第3電圧または前記第4電圧に変更する場合、前記出力電流の極性判定に用いる基準電流値に所定のオフセットを持たせ、該オフセットを持たせない場合に比べて、早期にデッドタイム補償電圧をゼロから前記第3電圧または前記第4電圧に変更する請求項5または請求項6に記載のPWMインバータの制御装置。
前記電流検出手段は、前記キャリア信号が最大値及び最小値をとるタイミングに同期して前記出力電流の検出を行う請求項5から請求項7のいずれかに記載のPWMインバータの制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、PWMインバータのデッドタイム補償は、PWM電圧指令に加算される一定の補償電圧(以下「デッドタイム補償電圧」という。)の極性を、インバータの出力電流のゼロクロス点に同期して切り替えることにより行われる。また、PWMコンバータのデッドタイム補償は、コンバータの入力電流のゼロクロス点に同期して、デッドタイム補償電圧の極性を切り替えることにより行われる。
しかしながら、例えば、インバータの出力電流やコンバータの入力電流にリップルが含まれている場合には、ゼロクロス点の検出誤差が大きくなり、この誤差が原因で、デッドタイム補償の精度が低下し、出力電流波形や入力電流波形の歪みを助長させるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、デッドタイム補償の精度を向上させることのできるPWMコンバータの制御装置及びそのデッドタイム補償方法並びにPWMインバータの制御装置及びそのデッドタイム補償方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、PWMコンバータが備える複数のスイッチング素子を駆動するためのPWM信号を出力するPWMコンバータの制御装置であって、前記PWMコンバータに入力される入力電流を、キャリア信号の2倍の周波数でサンプリングする電流検出手段と、前記電流検出手段によって検出された連続する2つの電流値がともに正の場合に第1電圧を、連続する2つの電流値がともに負の場合に前記第1電圧とは極性の異なる第2電圧を、連続する2つの電流値が正負の場合にゼロを、デッドタイム補償電圧として出力するデッドタイム補償手段と、前記デッドタイム補償手段から出力されたデッドタイム補償電圧をPWM電圧指令に加算し、加算後のPWM電圧指令と前記キャリア信号とを比較することによりPWM信号を生成するPWM信号生成手段とを備えるPWMコンバータの制御装置である。
【0008】
上記PWMコンバータの制御装置において、前記デッドタイム補償手段は、前記デッドタイム補償電圧を変更する場合に、前記キャリア信号に同期して前記デッドタイム補償電圧を段階的に変化させることとしてもよい。
【0009】
上記PWMコンバータの制御装置において、前記デッドタイム補償手段は、前記デッドタイム補償電圧をゼロから前記第1電圧または前記第2電圧に変更する場合、前記入力電流の極性判定に用いる基準電流値に所定のオフセットを持たせ、該オフセットを持たせない場合に比べて、早期にデッドタイム補償電圧をゼロから前記第1電圧または前記第2電圧に変更することとしてもよい。
【0010】
上記PWMコンバータの制御装置において、前記電流検出手段は、前記キャリア信号が最大値及び最小値をとるタイミングに同期して前記入力電流の検出を行うこととしてもよい。
【0011】
本発明の第2態様は、PWMインバータが備える複数のスイッチング素子を駆動するためのPWM信号を出力するPWMインバータの制御装置であって、前記PWMインバータから出力される出力電流を
、キャリア信号の2倍の周波数でサンプリングする電流検出手段と、前記電流検出手段によって検出された連続する2つの電流値がともに正の場合に第3電圧を、連続する2つの電流値がともに負の場合に前記第3電圧とは極性の異なる第4電圧を、連続する2つの電流値が正負の場合にゼロを、デッドタイム補償電圧として出力するデッドタイム補償手段と、前記デッドタイム補償手段から出力されたデッドタイム補償電圧をPWM電圧指令に加算し、加算後のPWM電圧指令と前記キャリア信号とを比較することによりPWM信号を生成するPWM信号生成手段とを備えるPWMインバータの制御装置である。
【0012】
上記PWMインバータの制御装置において、前記デッドタイム補償手段は、前記デッドタイム補償電圧を変更する場合には、前記キャリア信号に同期して前記デッドタイム補償電圧を段階的に変化させることとしてもよい。
【0013】
上記PWMインバータの制御装置において、前記デッドタイム補償手段は、前記デッドタイム補償電圧をゼロから前記第3電圧または前記第4電圧に変更する場合、前記出力電流の極性判定に用いる基準電流値に所定のオフセットを持たせ、該オフセットを持たせない場合に比べて、早期にデッドタイム補償電圧をゼロから前記第3電圧または前記第4電圧に変更することとしてもよい。
【0014】
上記PWMインバータの制御装置において、前記電流検出手段は、前記キャリア信号が最大値及び最小値をとるタイミングに同期して前記出力電流の検出を行うこととしてもよい。
【0015】
本発明の第3態様は、PWMコンバータと、上記PWMコンバータの制御装置と、PWMインバータと、上記PWMインバータの制御装置とを備える電動圧縮機モータの駆動装置である。
【0016】
本発明の第4態様は、上記電動圧縮機モータの駆動装置を備える空調装置である。
【0017】
本発明の第5態様は、PWMコンバータが備える複数のスイッチング素子を駆動するためのPWM信号を出力するPWMコンバータの制御装置に用いられるデッドタイム補償方法であって、前記PWMコンバータに入力される入力電流を、キャリア信号の2倍の周波数でサンプリングし、サンプリングした連続する2つの電流値がともに正の場合に第1電圧を、連続する2つの電流値がともに負の場合に前記第1電圧とは極性の異なる第2電圧を、連続する2つの電流値が正負の場合にゼロを、デッドタイム補償電圧として出力するデッドタイム補償方法である。
【0018】
本発明の第6態様は、PWMインバータが備える複数のスイッチング素子を駆動するためのPWM信号を出力するPWMインバータの制御装置に用いられるデッドタイム補償方法であって、前記PWMインバータの出力電流を、キャリア信号の2倍の周波数でサンプリングし、サンプリングした連続する2つの電流値がともに正の場合に第3電圧を、連続する2つの電流値がともに負の場合に前記第3電圧とは極性の異なる第4電圧を、連続する2つの電流値が正負の場合にゼロを、デッドタイム補償電圧として出力するデッドタイム補償方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、PWMコンバータの制御装置においては、入力電流波形の歪みを低減することができ、PWMインバータの制御装置においては、出力電流波形の歪みを低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明のPWMコンバータの制御装置及びPWMインバータの制御装置ならびにこれらのデッドタイム補償方法を空調装置の電動圧縮機モータの駆動装置に適用した場合の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動圧縮機モータの駆動装置(以下、単に「駆動装置」という。)の構成を概略的に示した図である。
図1に示すように、駆動装置1は、3相交流電源2からの交流電力を直流電力に変換するPWMコンバータ(以下、単に「コンバータ」という。)3と、コンバータ3を制御するコンバータ制御装置4と、コンバータ3から出力される直流電力を3相交流電力に変換して圧縮機モータ20に出力する電圧型PWMインバータ(以下、単に「インバータ」という。)5と、インバータ5を制御するインバータ制御装置6とを主な構成として備えている。
【0023】
図1において、コンバータ3は、3相交流電源2のR相、S相、T相のそれぞれに対した3つのアームを有するブリッジ回路として構成されているが、コンバータ3の構成は特に限定されず、例えば、特開平9−154280号公報に示されるような1対のアームにより構成されていてもよい。
【0024】
インバータ5は、コンバータ3と同様、各相に対応して設けられた上側アームのスイッチング素子と下側アームのスイッチング素子とを備えており、これらのスイッチング素子がインバータ制御装置6によって生成されたPWM信号に基づいて駆動されることにより、圧縮機モータ20に供給される3相交流電圧が生成される。
【0025】
コンバータ制御装置4及びインバータ制御装置
6は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)であり、後述する各部の処理を実現するためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有している。CPUがこの記録媒体に記録されたプログラムをRAM等の主記憶装置に読み出して実行することにより、以下のような各部における処理が実現される。コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。
【0026】
コンバータ制御装置4は、例えば、出力電圧(平滑コンデンサ15の両端電圧)を所定の目標電圧に一致させるためのPWM信号を相毎に生成し、コンバータ3に与える。
インバータ制御装置6は、例えば、圧縮機モータ20の回転数を上位の制御装置(図示略)から与えられる回転数指令ωに一致させるようなPWM信号を相毎に生成し、インバータ5に与える。
【0027】
次に、コンバータ制御装置4について
図2を参照して説明する。
図2は、コンバータ制御装置4の機能ブロック図である。
図2に示すように、コンバータ制御装置4は、電流検出部21、3相電圧指令決定部22、デッドタイム補償部23、及びPWM信号生成部24を主な構成として備えている。
【0028】
電流検出部21は、コンバータ3に入力される入力電流Ir,Is,Itを、キャリア信号の2倍の周波数でサンプリングする。本実施形態では、キャリア信号が最大値及び最小値をとるタイミングに同期して、入力電流Ir,Is,Itの検出を行う。
【0029】
3相電圧指令決定部22は、例えば、R相の電圧位相θと、所定の電圧指令値kとを用いて各相に対応する相電圧指令を決定する。例えば、以下の(1)から(3)式を用いてR相、S相、T相のそれぞれの相電圧指令Vr
*,Vs
*,Vt
*を決定する。
【0030】
Vr
*=ksin(θ) (1)
Vs
*=ksin(θ−2π/3) (2)
Vt
*=ksin(θ−4π/3) (3)
【0031】
ここで、電圧指令値kは、例えば、コンバータ3の起動時においては初期値に設定され、コンバータ3の起動後においては、予め設定されている所定のコンバータ電圧(平滑コンデンサ15の両端電圧)の目標電圧Vdc
*とコンバータ電圧Vdcの計測値との差分ΔVdcに対して比例積分制御した値を用いることとしてもよい。
なお、上記3相電圧指令決定部22による相電圧指令の決定手法は上記手法に限定されず、適宜公知の技術を採用することが可能である。
【0032】
デッドタイム補償部23は、電流検出部21によって検出された電流値に基づいて、各相のデッドタイム補償電圧ΔVr,ΔVs,ΔVtを出力する。ここで、デッドタイム補償電圧ΔVr,ΔVs,ΔVtはいずれも同一手法により設定されるため、以下、R相を例に挙げ、デッドタイム補償電圧ΔVrについて
図3を参照して説明する。
【0033】
図3において、(a)はゼロクロス点付近におけるコンバータ3の入力電流Irの拡大波形、(b)はゼロクロス点(時刻t2)でデッドタイム補償電圧ΔVrの極性を反転されるデッドタイム補償を行った場合の理想的な補償電圧波形、(c)はデッドタイム補償部23によって出力される補償電圧波形をそれぞれ示している。
図3(a)に示されるように、入力電流Irにはリップルが含まれていることから電流値が上下に振れている。実線で示された緩やか曲線は、リップルの振幅の中心点を結んで表されたリプル成分を除いた入力電流Ir_aveを示している。また、入力電流Irに示されている○(丸)と□(四角)は、電流検出部21によって電流検出が行われるタイミングを示している。
【0034】
デッドタイム補償部23は、
図3(c)に示すように、電流検出部21により、キャリア周波数の2倍の周波数でサンプリングされた電流値、すなわち、
図3(a)において○と□とで示された電流値のうち、連続する2つの電流値が共に正の状態から、一方が正、他方が負の状態に変化したときに(
図3の時刻t1)、ゼロクロス点を通過すると判断して、デッドタイム補償電圧ΔVrを正の補償値+Vrc(第1電圧)からゼロに変更する。そして、入力電流Irが低下し、連続する2つの電流値のうち一方が正、他方が負の状態から、共に負の状態に変化したときに(
図3の時刻t3)、ゼロクロス点を通過したと判断して、デットタイム補償電圧ΔVrをゼロから負の補償値−Vrc(第2電圧)に変更する。
【0035】
また、図示は省略するが、入力電流Irが負から正に切り替わる場合も同様である。すなわち、連続する2つの電流値が共に負の状態から、一方が負、他方が正の状態に変化したときに、ゼロクロス点を通過すると判断して、デッドタイム補償電圧ΔVrを負の補償値−Vrcからゼロに変更する。そして、入力電流Irが増加し、連続する2つの電流値のうち一方が正、他方が負の状態から、共に正の状態に変化したときに、ゼロクロス点付近を通過したと判断して、デッドタイム補償電圧ΔVrをゼロから正の補償値+Vrcに変更する。なお、連続する2つの電流値が共に正の状態にある場合には、デッドタイム補償電圧ΔVrとして正の補償値+Vrcが出力され、連続する2つの電流値が共に負の状態にある場合には、デッドタイム補償電圧ΔVrとして負の補償値−Vrcが出力される。
【0036】
上記手法により、各相のデッドタイム補償電圧ΔVr,ΔVs,ΔVtが設定され、PWM信号生成部24に出力される。
なお、R相とS相との位相差は120度であり、R相とT相との位相差は240度であるため、デッドタイム補償電圧ΔVrにそれぞれの相に対応する位相差を考慮することで、演算によりR相、T相のデッドタイム補償電圧ΔVs、ΔVtをそれぞれ得ることとしてもよい。
【0037】
PWM信号生成部24は、3相電圧指令決定部22から出力される相電圧指令Vr
*,Vs
*,Vt
*に、デッドタイム補償部23から出力されたデッドタイム補償電圧ΔVr,ΔVs,ΔVtをそれぞれ加算し、加算後の相電圧指令とキャリア信号とを比較することにより各相に対応するPWM信号を生成する。
このようにして生成されたPWM信号はコンバータ3に出力され、このPWM信号に基づいてコンバータ3を構成する各スイッチング素子が駆動される。
【0038】
次に、上記コンバータ制御装置4について
図4を参照して説明する。
図4は、インバータ制御装置6の機能ブロック図である。
図4に示すように、インバータ制御装置6は、電流検出部31、3相電圧指令決定部32、デッドタイム補償部33、及びPWM信号生成部34を主な構成として備えている。
【0039】
電流検出部31は、インバータ出力電流(モータ電流)Iu,Iv,Iwをキャリア信号の2倍の周波数で検出する。例えば、上記コンバータ制御装置4と同様に、キャリア信号が最大値及び最小値をとるタイミングに同期して、モータ電流Iu,Iv,Iwの検出を行う。
【0040】
3相電圧指令決定部32は、圧縮機モータ20の回転数を上位の制御装置(図示略)から与えられる回転数指令ωに一致させるような3相電圧指令Vu
*,Vv
*,Vw
*を生成する。なお、3相電圧指令の生成手法については様々な手法が公知技術として存在し、これらを適宜採用すればよく、ここでの詳細な説明は省略する。
【0041】
デッドタイム補償部33は、電流検出部31によって検出されるモータ電流Iu,Iv,Iwに基づいて、各相のデッドタイム補償電圧ΔVu,ΔVv,ΔVwを出力する。デッドタイム補償部33におけるデッドタイム補償電圧ΔVu,ΔVv,ΔVwの設定手法は、上述したコンバータ制御装置4におけるデッドタイム補償部23と同様である。すなわち、例えば、モータ電流Iuを例に挙げると、電流検出部31により、キャリア信号の2倍の周波数でサンプリングされた電流値のうち、連続する2つの電流値が共に正の状態から、一方が正、他方が負の状態に変化したときに、ゼロクロス点を通過すると判断して、デッドタイム補償電圧ΔVuを正の補償値+Vuc(第3電圧)からゼロに変更する。そして、モータ電流Iuが低下し、連続する2つの電流値のうち一方が正、他方が負の状態から、共に負の状態に変化したときに、ゼロクロス点を通過したと判断して、デットタイム補償電圧ΔVuをゼロから負の補償値−Vuc(第4電圧)に変更する。
【0042】
また、図示は省略するが、モータ電流Iuが負から正に切り替わる場合も同様である。なお、連続する2つの電流値が共に正の状態にある場合には、デッドタイム補償電圧ΔVuとして正の補償値+Vucが出力され、連続する2つの電流値が共に負の状態にある場合には、デッドタイム補償電圧ΔVuとして負の補償値−Vucが出力される。
【0043】
なお、U相とV相との位相差は120度であり、U相とW相との位相差は240度であるため、デッドタイム補償電圧ΔVuにそれぞれの相に対応する位相差を考慮することで、演算によりV相、W相のデッドタイム補償電圧ΔVv、ΔVwをそれぞれ得ることとしてもよい。
【0044】
PWM信号生成部34は、3相電圧指令決定部32から出力される相電圧指令Vu
*,Vv
*,Vw
*に、デッドタイム補償部33から出力されたデッドタイム補償電圧ΔVu,ΔVv,ΔVwをそれぞれ加算し、加算後の相電圧指令とキャリア信号とを比較することにより、各相に対応するPWM信号を生成する。
このようにして生成されたPWM信号はインバータ5に出力され、このPWM信号に基づいてインバータ5を構成する各スイッチング素子が駆動される。
【0045】
このような電動圧縮機モータの駆動装置1によれば、コンバータ制御装置4においては、
図2及び
図3に示すように、電流検出部21によって、コンバータ3に入力される入力電流Ir,Is,Itが、キャリア信号の2倍の周波数でサンプリングされ、デッドタイム補償部23に出力される。デッドタイム補償部23では、電流検出部21から入力された電流値Irにおいて、連続する2つの電流値の極性が共に正の場合には正の補償値+Vrcが、連続する2つの電流値の極性が異なる場合にはゼロの補償値が、連続する2つの電流値の極性が共に負の場合には負の補償値−Vrcがデッドタイム補償電圧ΔVrとして出力される。また、同様に、デッドタイム補償電圧ΔVr,ΔVtについても決定され、PWM信号生成部24に出力される。PWM信号生成部24では、3相電圧指令決定部22によって生成された3相電圧指令Vr
*,Vs
*,Vt
*に、それぞれ対応するデッドタイム補償電圧ΔVr,ΔVs,ΔVtが加算され、加算後の各相電圧指令とキャリア信号とが比較されることにより、各相に対応するPWM信号が生成される。これらPWM信号は、コンバータ3に出力され、これに基づき各スイッチング素子が駆動される。
【0046】
また、インバータ制御装置6においては、
図4に示すように、電流検出部31によって、インバータ5から出力されるモータ電流Iu,Iv,Iwが、キャリア信号の2倍の周波数でサンプリングされ、デッドタイム補償部33に出力される。デッドタイム補償部33では、電流検出部31から入力された電流値Iuにおいて、連続する2つの電流値の極性が共に正の場合には正の補償値+Vucが、連続する2つの電流値の極性が異なる場合にはゼロの補償値が、連続する2つの電流値の極性が共に負の場合には負の補償値−Vucがデッドタイム補償電圧ΔVuとして出力される。また、同様に、デッドタイム補償電圧ΔVv,ΔVwについても決定され、PWM信号生成部34に出力される。PWM信号生成部34では、3相電圧指令決定部32によって生成された3相電圧指令Vu
*,Vv
*,Vw
*に、それぞれ対応するデッドタイム補償電圧ΔVu,ΔVv,ΔVwが加算され、加算後の相電圧指令とキャリア信号とがそれぞれ比較されることにより、各相に対応するPWM信号が生成される。これらPWM信号は、インバータ5に出力され、これに基づき各スイッチング素子が駆動される。
【0047】
そして、上記のようにPWM信号に基づいてコンバータ3及びインバータ5のスイッチング素子が駆動されることにより、圧縮機モータ20には、安定した3相交流電力が供給され、圧縮機モータ20の回転速度が上位装置から入力される回転数指令ωに制御される。
【0048】
以上のように、本実施形態に係るコンバータ制御装置4及びそのデッドタイム補償方法によれば、コンバータ3に入力される入力電流が、キャリア信号の2倍の周波数でサンプリングされるので、入力電流に含まれるリップルの大きさを概ね把握することができ、ゼロクロス点付近の検知精度を向上させることが可能となる。更に、ゼロクロス点を点としてではなく期間として捉え、ゼロクロス点を通過する期間(
図3(c)の時刻t1からt3の期間)において、デッドタイム補償電圧をゼロに設定するので、後述のように、ゼロクロス点の検出誤差により、デッドタイム補償電圧の極性を誤ったタイミングで反転させてしまう場合に比べて、デッドタイムに起因する電圧誤差を低減させることが可能となる。
【0049】
すなわち、
図5(b)に示すように、キャリア信号が最小値をとるタイミングに同期して入力電流Irの検出を行う場合を想定すると、ゼロクロス点を通過する前に、デッドタイム補償電圧の極性が反転されることとなる。また例えば、
図5(c)に示すように、キャリア信号が最大値をとるタイミングに同期して入力電流の検出を行う場合を想定すると、ゼロクロス点を通過した後に、デッドタイム補償電圧の極性が反転されることとなる。このように、キャリア周波数に同期して入力電流をサンプリングし、ゼロクロス点であると判断した時点でデッドタイム補償電圧の極性を反転させるような補償を行うと、本来与えるべきデッドタイム補償電圧とは逆極性のデッドタイム補償電圧が出力される期間が生じ(
図5(b)、(c)における期間a)、デッドタイムに起因する誤差電圧を有効に低減することができない。
【0050】
これに対し、本実施形態に係るコンバータ制御装置4によれば、上述のように、キャリア信号の2倍の周波数で電流検出を行うとともに、ゼロクロス点を一点としてではなく期間として捉え、この期間においてはデッドタイム補償電圧をゼロに設定することから、ゼロクロス点の検出誤差に起因するデッドタイム補償電圧の誤差を低減することが可能となる。これにより、入力電流の歪みを低減させることができ、高調波抑制効果を向上させることができる。
【0051】
また、同様に、本実施形態に係るインバータ制御装置6によれば、キャリア信号の2倍の周波数でモータ電流の検出を行うとともに、ゼロクロス点を点としてではなく期間として捉え、この期間においてはデッドタイム補償電圧をゼロに設定することから、ゼロクロス点の検出誤差に起因するデッドタイム補償電圧の誤差を低減することが可能となる。これにより、モータ電流の歪みを低減させることができ、電動圧縮機モータの効率を向上させることが可能となる。
【0052】
〔変形例1〕
コンバータ制御装置4において、デッドタイム補償電圧を切り換える場合に、
図6(b)に示すように、段階的にデッドタイム補償電圧を変更させることとしてもよい。このように、デッドタイム補償電圧を段階的に変更することにより、高調波抑制効果を更に向上させることが可能となる。
図7は、
図3(c)に示すように、デッドタイム補償電圧を、正の補償値+Vrcからゼロ、ゼロから負の補償値−Vrcとステップ的に変化させた場合の入力電流波形(
図7(a))と、
図6(b)に示すように、デッドタイム補償電圧を段階的に変更した場合の入力電流波形(
図7(b))とを比較して示した図である。
図7に示すように、デッドタイム補償電圧を段階的に変更する方が、高調波抑制効果が高いことがわかる。
なお、この方法は、インバータ制御装置6におけるデッドタイム補償においても同様に適用することが可能である。
【0053】
〔変形例2〕
図3(c)や
図6(b)に示すようなデッドタイム補償を行った場合、
図8(b)に示すように、デッドタイム補償電圧をゼロに変更する時点(時刻t1)からゼロクロス点(時刻t2)までの期間Aと、ゼロクロス点(時刻t2)からデッドタイム補償電圧を負の補償値−Vrcに変更(時刻t3)するまでの期間Bとを比較すると、期間Bの方が長いことがわかった。期間A,Bの差は、入力電流波形の歪みの原因になるおそれがある。したがって、
図8(b)に示すように、ゼロクロス点を挟んで後半の期間Bにおいては、入力電流の極性判定に用いる基準電流値に所定のオフセットを持たせ、オフセットを持たせない場合に比べて、早期にデッドタイム補償電圧をゼロから所定の値に切り替えることとした(時刻t3´)。なお、オフセットの量については、入力電流Ir等に含まれるリップルの幅などを事前試験やシミュレーションなどにより把握し、ゼロクロス点を挟んで前半の期間Aと後半の期間Bとが略同じ長さになるような値に設定するとよい。なお、この方法は、インバータ制御装置6におけるデッドタイム補償においても同様に適用することが可能である。
【0054】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、例えば、上述した各実施形態を部分的または全体的に組み合わせる等して、種々変形実施が可能である。