特許第6211462号(P6211462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211462
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】牽引制御装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20171002BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20171002BHJP
   B60W 10/20 20060101ALI20171002BHJP
   B60W 30/182 20120101ALI20171002BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   A01B69/00 303F
   B60W30/10
   B60W10/20
   B60W30/182
   G05D1/02 N
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-106558(P2014-106558)
(22)【出願日】2014年5月22日
(65)【公開番号】特開2015-221010(P2015-221010A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 和寿
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−507843(JP,A)
【文献】 特開平05−316807(JP,A)
【文献】 特開2002−358122(JP,A)
【文献】 特開2006−290270(JP,A)
【文献】 特開平01−223084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/00−1/12
B60K 23/08
B60W 10/20
B60W 30/10
B60W 30/182
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星測位システムを利用して機体の位置を測位する位置算出手段、および設定した走行経路に沿うように自動的に操舵アクチュエータを作動させて走行させる制御装置を有する自律走行作業車両と、
オペレータが搭乗して遠隔操作装置により前記自律走行作業車両を操作可能とする有人走行作業車両と、
前記自律走行作業車両と前記有人走行作業車両とを連結する牽引装置と、を備え、
前記自律走行作業車両は、モード切替スイッチと2WD・4WD切換手段とを有し、
前記モード切替スイッチにて牽引モードに切り替えられると、前記2WD・4WD切換手段により前記自律走行作業車両を4WDから2WDに切り換える構成とし、
前記有人走行作業車両により前記自律走行作業車両を牽引して移動する際には、前記自律走行作業車両を4WDから2WDに切り換え、予め設定された移動経路に沿うように、前記自律走行作業車両の操舵アクチュエータを作動させる
ことを特徴とする牽引制御装置。
【請求項2】
直進路では、前記有人走行作業車両の操向操作に合わせて前記自律走行作業車両の操舵アクチュエータを作動させることを特徴とする請求項1に記載の牽引制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人の自律走行作業車両と有人走行作業車両を一度に作業地に移動するための牽引移動の技術に関し、有人走行作業車両の後部に、牽引装置を介して衛星測位システムを装備する自律走行車両を連結し、予め設定した移動経路を走行して作業地まで移動させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車と牽引されるトレーラが障害物に衝突しないように、自動車にセンサを取り付けて、トレーラの位置や運転状況を検出し、実際の障害物のない使用可能な運転空間と比較され、衝突に関して予想し、衝突の危険について警告を出す技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−530997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記技術においては、車両を取り囲む区域を検出して、障害物のない使用可能な運転空間を検出し演算しなければならず、また、警告が発せられても、実際に曲がり角を曲がる場合には、旋回半径が大きくなって、狭い道では曲がるために何回も切り返しが必要となっていた。
【0005】
また、有人走行作業車両に無人の自律走行作業車両を牽引して、二台同時に作業地に移動するには、自律走行作業車両の操向輪は直進位置に固定し、前輪及び後輪は回転自在のニュートラルとしておくが、急な曲り角では前輪を引きずり車輪を傷めるおそれがあり、旋回半径を小さくすることは難しかった。本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、有人走行作業車両により自律走行作業車両を牽引して移動する際には、衛星測位システムを搭載する自律走行作業車両に、予め移動経路を設定しておき、移動経路を走行するときに自律走行作業車両のステアリング装置を移動経路に合わせて操向作動させ、旋回半径を小さくしてスムースな旋回が得られるようにしようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、衛星測位システムを利用して機体の位置を測位する位置算出手段、および設定した走行経路に沿うように自動的に操舵アクチュエータを作動させて走行させる制御装置を有する自律走行作業車両と、オペレータが搭乗して遠隔操作装置により前記自律走行作業車両を操作可能とする有人走行作業車両と、前記自律走行作業車両と前記有人走行作業車両とを連結する牽引装置と、を備え、前記自律走行作業車両は、モード切替スイッチと2WD・4WD切換手段とを有し、前記モード切替スイッチにて牽引モードに切り替えられると、前記2WD・4WD切換手段により前記自律走行作業車両を4WDから2WDに切り換える構成とし、前記有人走行作業車両により前記自律走行作業車両を牽引して移動する際には、前記自律走行作業車両を4WDから2WDに切り換え、予め設定された移動経路に沿うように、前記自律走行作業車両の操舵アクチュエータを作動させる牽引制御装置である。
【0008】
請求項2においては、直進路では、前記有人走行作業車両の操向操作に合わせて前記自律走行作業車両の操舵アクチュエータを作動させるものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のような方法を用いることにより、有人走行作業車両が自律走行作業車両を牽引して移動するときに、自律走行作業車両は移動経路に沿って操向を行うので、曲がり角で牽引される自律走行作業車両が脱輪したり障害物と衝突したりすることがなく、二台を同時に容易に移動できるようになる。従って、従来、自律走行作業車両と有人走行作業車両は二人で移動、または、一台ずつ移動していたが、一人で同時に二台を移動できるようになり、移動にかかる労力や時間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】有人走行作業車両で自律走行作業車両を牽引する概略側面図。
図2】制御ブロック図。
図3】自律走行作業車両と有人走行作業車両とによる作業の状態を示す図。
図4】有人走行作業車両により自律走行作業車両を牽引して移動経路に沿って圃場への移動を示す図。
図5】有人走行作業車両により自律走行作業車両を牽引する他の実施形態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
衛星測位システムを利用して自律走行を可能とした自律走行作業車両1と、該自律走行作業車両1に随伴して走行して作業を行う有人走行作業車両100をトラクタとし、自律走行作業車両1及び有人走行作業車両100の後部には作業機としてロータリ耕耘装置24・131を装着した実施例について説明する。ただし、作業機はロータリ耕耘装置に限定するものではなく、畝立て機や草刈機やレーキや播種機や施肥機やワゴン等であってもよい。
【0012】
図1図2において、自律走行作業車両1となるトラクタの全体構成について説明する。ボンネット2内にエンジン3が内設され、該ボンネット2の後部のキャビン11内にダッシュボード14が設けられ、ダッシュボード14上に操向操作手段となるステアリングハンドル4が設けられている。該ステアリングハンドル4の回動により操舵装置を介して前輪9・9の向きが回動される。自律走行作業車両1の操舵方向は操向センサ20により検知される。操向センサ20はロータリエンコーダ等の角度センサからなり、前輪9の回動基部に配置される。ただし、操向センサ20の検知構成は限定するものではなく操舵方向が認識されるものであればよく、ステアリングハンドル4の回動を検知したり、パワーステアリングの作動量を検知してもよい。操向センサ20により得られた検出値は制御装置30に入力される。
【0013】
前記ステアリングハンドル4の後方に運転席5が配設され、運転席5下方にミッションケース6が配置される。ミッションケース6の左右両側にリアアクスルケース8・8が連設され、該リアアクスルケース8・8には車軸を介して後輪10・10が支承される。エンジン3からの動力はミッションケース6内の変速装置(主変速装置や副変速装置)により変速されて、後輪10・10を駆動可能としている。変速装置は例えば油圧式無段変速装置で構成して、可変容量型の油圧ポンプの可動斜板をモータ等の変速手段44により作動させて変速可能としている。変速手段44は制御装置30と接続されている。後輪10の回転数は車速センサ27により検知され、走行速度として制御装置30に入力される。ただし、車速の検知方法や車速センサ27の配置位置は限定するものではない。
【0014】
ミッションケース6内にはPTOクラッチやPTO変速装置や制動装置46が収納され、PTOクラッチはPTO入切手段45により入り切りされ、PTO入切手段45は制御装置30と接続され、PTO軸への動力の断接を制御可能としている。制動装置46は制御装置30と接続され、オペレータの操作や自動走行時に制動可能としている。制御装置30はCPU(中央演算処理装置)やRAMやROM等の記憶装置30mやインターフェース等を備え、記憶装置30mには自律走行作業車両1を動作させるためのプログラムやデータが記憶される。
【0015】
前記エンジン3を支持するフロントフレーム13にはフロントアクスルケース7が支持され、該フロントアクスルケース7の両側に前輪9・9が支承され、前記ミッションケース6からの動力が前輪9・9に伝達可能に構成している。前記前輪9・9は操舵輪となっており、ステアリングハンドル4の回動操作により回動可能とするとともに、操舵駆動手段となるパワステシリンダからなる操舵アクチュエータ40により前輪9・9が左右操舵回動可能となっている。操舵アクチュエータ40は制御装置30と接続され、自動走行制御により駆動される。
【0016】
制御装置30にはエンジン回転制御手段となるエンジンコントローラ60が接続され、エンジンコントローラ60にはエンジン回転数センサ61や水温センサや油圧センサ等が接続され、エンジンの状態を検知できるようにしている。エンジンコントローラ60では設定回転数と実回転数から負荷を検出し、過負荷とならないように制御するとともに、後述する遠隔操作装置112にエンジン3の状態を送信してディスプレイ113で表示できるようにしている。
【0017】
また、ステップ下方に配置した燃料タンク15には燃料の液面を検知するレベルセンサ29が配置されて制御装置30と接続され、自律走行作業車両1のダッシュボードに設ける表示手段49には燃料の残量を表示する燃料計が設けられ制御装置30と接続されている。そして、制御装置30から遠隔操作装置112に燃料残量に関する情報が送信されて、遠隔操作装置112のディスプレイ113に燃料残量と作業可能時間が表示される。
【0018】
前記ダッシュボード14上にはエンジンの回転計や燃料計や油圧等や異常を示すモニタや設定値等を表示する表示手段49が配置されている。
【0019】
また、トラクタ機体後方に作業機装着装置23を介して作業機としてロータリ耕耘装置24が昇降自在に装設させて耕耘作業を行うように構成している。前記ミッションケース6上に昇降シリンダ26が設けられ、該昇降シリンダ26を伸縮させることにより、作業機装着装置23を構成する昇降アームを回動させてロータリ耕耘装置24を昇降できるようにしている。昇降シリンダ26は昇降アクチュエータ25の作動により伸縮され、昇降アクチュエータ25は制御装置30と接続されている。
【0020】
制御装置30には衛星測位システムを構成する移動通信機33が接続されている。移動通信機33には移動GPSアンテナ34が接続され、移動GPSアンテナ34は前記キャビン11上に設けられる。該移動通信機33には、位置算出手段を備えて緯度と経度を制御装置30に送信し、現在位置を把握できるようにしている。なお、GPS(米国)に加えて準天頂衛星(日本) やグロナス衛星(ロシア)等の衛星測位システム(GNSS)を利用することで精度の高い測位ができるが、本実施形態ではGPSを用いて説明する。
【0021】
自律走行作業車両1は、機体の姿勢変化情報を得るためにジャイロセンサ31、および進行方向を検知するために方位センサ32を具備し制御装置30と接続されている。ただし、GPSの位置計測から進行方向を算出できるので、方位センサ32を省くことができる。ジャイロセンサ31は自律走行作業車両1の機体前後方向の傾斜(ピッチ)の角速度、機体左右方向の傾斜(ロール)の角速度、および旋回(ヨー)の角速度、を検出するものである。該三つの角速度を積分計算することにより、自律走行作業車両1の機体の前後方向および左右方向への傾斜角度、および旋回角度を求めることが可能である。ジャイロセンサ31の具体例としては、機械式ジャイロセンサ、光学式ジャイロセンサ、流体式ジャイロセンサ、振動式ジャイロセンサ等が挙げられる。ジャイロセンサ31は制御装置30に接続され、当該三つの角速度に係る情報を制御装置30に入力する。
【0022】
方位センサ32は自律走行作業車両1の向き(進行方向)を検出するものである。方位センサ32の具体例としては磁気方位センサ等が挙げられる。方位センサ32は制御装置30に接続され、機体の向きに係る情報を制御装置30に入力する。
【0023】
こうして制御装置30は、上記ジャイロセンサ31、方位センサ32から取得した信号を姿勢・方位演算手段により演算し、自律走行作業車両1の姿勢(向き、機体前後方向及び機体左右方向の傾斜、旋回方向)を求める。
【0024】
自律走行作業車両1の位置情報はGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を用いて取得している。GPSを用いた測位方法としては、単独測位、相対測位、DGPS(ディファレンシャルGPS)測位、RTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位など種々の方法が挙げられ、これらいずれの方法を用いることも可能であるが、本実施形態では単独測位としている。
【0025】
こうして、この自律走行作業車両1における制御装置30は、衛星測位システムを利用して機体の位置を測位する位置算出手段及び自動走行させる自動走行手段を備えて、自動走行手段はGPS衛星37・37・・・から送信される電波を受信して移動通信機33において設定時間間隔で機体の位置情報を求め、ジャイロセンサ31及び方位センサ32から機体の変位情報および方位情報を求め、これら位置情報と変位情報と方位情報と制御装置30の記憶装置30mに記録された地図情報に基づいて、機体が予め設定した設定経路Rまたは移動経路Mに沿って走行するように、操舵アクチュエータ40、変速手段44、昇降アクチュエータ25、PTO入切手段45、エンジンコントローラ60等を制御して自動走行し自動で作業できるようにしている。なお、作業範囲となる圃場Hの外周の位置情報も周知の方法によって予め設定され、記憶装置30mに記憶されている。
【0026】
また、自律走行作業車両1には障害物検知手段として障害物センサ41やカメラ42が配置されて制御装置30と接続され、障害物に当接しないようにしている。例えば、障害物センサ41は赤外線センサや超音波センサで構成して機体の前部や側部や後部に配置して制御装置30と接続し、機体の前方や側方や後方に障害物があるかどうかを検出し、障害物を検出すると、警報を発し、走行速度を低下させたり停止させたりするように制御する。
【0027】
また、自律走行作業車両1には前方や作業機を撮影するカメラ42が搭載され制御装置30と接続されている。カメラ42で撮影された映像は有人走行作業車両100に備えられた遠隔操作装置112のディスプレイ113に表示されるようにしている。
【0028】
遠隔操作装置112は前記自律走行作業車両1の設定走行経路Rや移動経路Mを設定したり、自律走行作業車両1を遠隔操作したり、自律走行作業車両1の走行状態や作業機の作動状態を監視したり、作業データを記憶したりするものである。
【0029】
本実施形態では、オペレータが有人走行作業車両100に乗車して運転操作するとともに、有人走行作業車両100に遠隔操作装置112を搭載して自律走行作業車両1を操作可能としている。圃場H内での作業時においては、有人走行作業車両100は図3に示すように自律走行作業車両1の斜め後方を作業しながら走行し、自律走行作業車両1を監視・操作する。ただし、作業形態によっては、自律走行作業車両1の後方を有人走行作業車両100が走行して作業をする場合もあり限定するものではない。
【0030】
有人走行作業車両100の基本構成は自律走行作業車両1と略同じ構成であるので詳細な説明は省略する。なお、有人走行作業車両100にはGPS用の移動通信機33や移動GPSアンテナ34を備える構成とすることも可能である。
【0031】
遠隔操作装置112は、有人走行作業車両100及び自律走行作業車両1のダッシュボード等の操作部に着脱可能としている。遠隔操作装置112は有人走行作業車両100のダッシュボードに取り付けたまま操作することも、有人走行作業車両100の外に持ち出して携帯して操作することも、自律走行作業車両1のダッシュボードに取り付けて操作可能としている。遠隔操作装置112は例えばノート型やタブレット型のパーソナルコンピュータで構成することができる。本実施形態ではタブレット型のコンピュータで構成している。
【0032】
さらに、遠隔操作装置112と自律走行作業車両1は無線で相互に通信可能に構成しており、自律走行作業車両1と遠隔操作装置112には通信装置として送受信機110・111がそれぞれ設けられている。送受信機111は遠隔操作装置112に一体的に構成されている。通信手段は例えばWiFi等の無線LANで相互に通信可能に構成されている。遠隔操作装置112は画面に触れることで操作可能なタッチパネル式の操作画面としたディスプレイ113を筐体表面に設け、筐体内に送受信機111やCPUや記憶装置やバッテリ等を収納している。
【0033】
前記自律走行作業車両1は遠隔操作装置112により遠隔操作可能としている。例えば、自律走行作業車両1の緊急停止や一時停止や再発進や車速の変更やエンジン回転数の変更や作業機の昇降やPTOクラッチの入り切り等を操作できるようにしている。つまり、遠隔操作装置112から送受信機111、送受信機110、制御装置30を介してアクセルアクチュエータや変速手段44や制動装置46やPTO入切手段45等を制御し作業者が容易に自律走行作業車両1を遠隔操作できるのである。
【0034】
前記ディスプレイ113には、前記カメラ42で撮影した周囲の画像や自律走行作業車両1の状態や作業の状態やGPSに関する情報や操作画面等を表示できるようにし、オペレータが監視できるようにしている。
【0035】
前記自律走行作業車両1の状態としては、走行状態やエンジンの状態や作業機の状態等であり、走行状態としては変速位置や車速や燃料残量やバッテリの電圧等であり、エンジンの状態としてはエンジンの回転数や負荷率等であり、作業機の状態としては作業機の種類やPTO回転数や作業機高さ等であり、それぞれディスプレイ113に数字やレベルメータ等で表示される。
【0036】
前記作業の状態としては、作業経路(目標経路または設定走行経路R)、作業行程、現在位置、行程から計算される枕地までの距離、残りの経路、行程数、今までの作業時間、残りの作業時間等である。残りの経路は、全体の作業経路から既作業経路を塗りつぶすことで容易に認識できるようにしている。また、現在位置から次の行程を矢印で表示することで、現在から旋回方向等次の行程を容易に認識することができるようにしている。GPSに関する情報は、自律走行作業車両1の実位置となる経度や緯度、衛星の補足数や電波受信強度や測位システムの異常等である。
【0037】
次に、有人走行作業車両100により自律走行作業車両1を牽引して移動する方法及び制御について説明する。図1に示すように、有人走行作業車両100のミッションケース136の後下部左右中央には、ドローバヒッチ137が設けられている。自律走行作業車両1のフロントフレーム13の前部に形成されるバンパー13aにはヒッチブラケット155が取り付けられ、該ヒッチブラケット155と前記ドローバヒッチ137との間に牽引ロッド156が左右回動自在に連結される。こうして牽引装置150が構成される。ただし、牽引ロッド156の代わりにロープやワイヤー等を用いてもよく限定するものではない。
【0038】
牽引する場合、遠隔操作装置112、または、自律走行作業車両1の運転席5近傍のダッシュボード14等に設けるモード切替スイッチ52により通常モードから牽引モードに切り替える。牽引モードでは、予め設定した移動経路Mに沿って走行するように、操舵アクチュエータ40が制御装置30により制御されて作動される。
【0039】
つまり、自律走行作業車両1の制御装置30は、衛星測位システムを利用して機体の位置を測位し、例えば、図4に示す交差点201に至り、その交差点201で右折するために、操舵アクチュエータ40を作動させて、前輪9・9を右方へ回動するのである。
【0040】
こうして、有人走行作業車両100が自律走行作業車両1を牽引して曲がるときに、従来では、有人走行作業車両100が交差点に位置していると、連結される後側の自律走行作業車両1は交差点よりも前の位置となっており、有人走行作業車両100が曲がると、自律走行作業車両1は引っ張られて同時に右側へ曲がろうとし、脱輪するおそれがあったが、本実施形態では、自律走行作業車両1は移動経路Mに沿って移動するように操舵アクチュエータ40を作動させるため、有人走行作業車両100が交差点内で曲がっていても自律走行作業車両1は直進するように制御され、自律走行作業車両1が交差点に至ってから操舵アクチュエータ40を作動させ曲がる。従って、脱輪したり障害物と衝突したりすることなく、正確に曲がることができる。
【0041】
また、有人走行作業車両100には操向センサ120が設けられて制御装置130と接続され、制御装置130から通信装置133を介して自律走行作業車両1の制御装置30と通信可能されており、操向センサ120により有人走行作業車両100が曲がる操作がされると、通信装置133を介して自律走行作業車両1の制御装置30にその信号が送信されるようにしている。そして、直進路では、有人走行作業車両100の操向操作に合わせて自律走行作業車両1の操舵アクチュエータ40が作動されて、同方向に進行するようにしている。つまり、直進走行路では自律走行作業車両1は有人走行作業車両100に合わせて平行に左右移動するように制御される。
【0042】
このように制御することによって、有人走行作業車両100と自律走行作業車両1が、一本道を直進しているときには、車線変更をするごとく、道路幅内で左右に平行移動する。従って、凹凸を避けたい場合や対向車等がある場合には、後側の自律走行作業車両1が有人走行作業車両100に付いて左右に平行移動しながら直進走行ができるため、前輪9・9に無理な力がかかることなく、自律走行作業車両1が左右一方にはみ出ることなく素早く追随して走行することができる。
【0043】
また、モード切替スイッチ52により牽引モードに切り替えられると、自律走行作業車両1の方向指示器64およびブレーキランプ65は、有人走行作業車両100の方向指示器とブレーキランプに連動されるようにしている。つまり、有人走行作業車両100の方向指示器164及びブレーキ操作検知手段は制御装置130と接続され、方向指示器164の操作が行われると、制御装置130、通信装置133、制御装置30を介して方向指示器64が作動され、自律走行作業車両1が曲がる方向のランプを点滅させるのである。また、有人走行作業車両100のブレークペダルを踏むと、前記同様に通信装置等を介して自律走行作業車両1のブレーキランプ65を点灯させるのである。
【0044】
また、自律走行作業車両1の制御装置30には2WD・4WD切換手段66が接続され、モード切替スイッチ52により牽引モードに切り替えられると、制御装置30は2WDに切り替える。このように構成することにより、牽引時に自律走行作業車両1の前輪9・9に無理な力がかからず、前輪9や操向装置を傷めることがなくなるのである。
【0045】
自律走行作業車両1の牽引装置150を取り付ける前記ヒッチブラケット155には、牽引装置150の取付の有無を検知する牽引装置検知手段157が設けられ、牽引装置検知手段157が牽引装置150を検知すると、変速手段44をニュートラルにする。つまり、ヒッチブラケット155の牽引ロッド156の取付部には牽引ロッド156の取付を検知するスイッチ等の牽引装置検知手段157が設けられ、牽引装置検知手段157は制御装置30と接続されて、牽引装置検知手段157が牽引装置150を検知すると、制御装置30は変速手段44をニュートラルにして前輪9・9及び後輪10・10を回転自在として牽引時に追随できるようにし、自律走行作業車両1が変速されて有人走行作業車両100と速度差が生じることも防止できるようにしている。なお、さらに、牽引装置検知手段157が牽引装置150を検知したときに、2WD・4WD切換手段166により2WDに切り換えたり、ブレーキを解除するようにブレーキアクチュエータを作動させる構成にすることもできる。
【0046】
また、有人走行作業車両100と自律走行作業車両1は、図5に示すように、互いに前後反対向きに牽引装置150を介して連結してもよい。つまり、有人走行作業車両100のドローバヒッチ137と自律走行作業車両1のドローバヒッチを牽引ロッド156で連結する構成とすることも可能である。ドローバヒッチはトラクタに元々備えられているので、新たに、牽引用のヒッチブラケットを設ける必要がない。この場合、自律走行作業車両1の牽引時の操向作動は左右逆となる。
【0047】
以上のように、衛星測位システムを利用して機体の位置を測位する位置算出手段と、設定した走行経路Rに沿うように自動的に操舵アクチュエータ40を作動させて走行させる制御装置30とを備えた自律走行作業車両1と、オペレータが搭乗し遠隔操作装置112を備えて、該遠隔操作装置112により自律走行作業車両1を操作可能とする有人走行作業車両100と、有人走行作業車両100と自律走行作業車両1とを連結する牽引装置150とを備え、有人走行作業車両100により自律走行作業車両1を牽引して移動する際には、制御装置30は予め設定した移動経路Mに沿うように自律走行作業車両1の操舵アクチュエータ40を作動させるので、有人走行作業車両100が自律走行作業車両1を牽引して移動するときに、自律走行作業車両1は移動経路Mに沿って操向を行うので、曲がり角で牽引される自律走行作業車両1が脱輪したり障害物と衝突したりすることがなく、二台を同時に容易に移動できるようになる。従って、従来、自律走行作業車両1と有人走行作業車両100は二人で移動、または、一台ずつ移動していたが、一人で同時に二台を移動できるようになり、移動にかかる労力や時間を軽減することができるようになった。
【符号の説明】
【0048】
1 自律走行作業車両
30 制御装置
44 変速手段
100 有人走行作業車両
112 遠隔操作装置
120 操向センサ
130 制御装置
150 牽引装置
156 牽引ロッド
図1
図2
図3
図4
図5