特許第6211498号(P6211498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

特許6211498カードリーダおよびカードリーダの制御方法
<>
  • 特許6211498-カードリーダおよびカードリーダの制御方法 図000002
  • 特許6211498-カードリーダおよびカードリーダの制御方法 図000003
  • 特許6211498-カードリーダおよびカードリーダの制御方法 図000004
  • 特許6211498-カードリーダおよびカードリーダの制御方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211498
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】カードリーダおよびカードリーダの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/08 20060101AFI20171002BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20171002BHJP
   G11B 5/09 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   G06K7/08 040
   G06K7/08 070
   G11B5/02 U
   G11B5/09 371C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-196424(P2014-196424)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-71391(P2016-71391A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】東 賀津久
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 和寿
(72)【発明者】
【氏名】川手 浩
(72)【発明者】
【氏名】田口 禎
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/085967(WO,A1)
【文献】 特開2012−118689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00− 7/14
G11B 5/02
G11B 5/09
G06K 17/00
G06K 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知するための磁気センサと、前記磁気センサに電力を供給するとともに前記磁気センサの出力信号が入力される制御部と、前記カードが挿入されるカード挿入口が形成され前記磁気センサが配置されるカード挿入部とを備え、
前記磁気センサは、前記制御部から電力が供給されると出力信号を出力し、
前記カード挿入口から挿入された前記カードの前記磁気ストライプに記録される磁気データの記録領域が前記磁気センサを通過し始めてから通過し終わるまでの時間をカード通過時間とすると、
前記制御部は、前記カード通過時間よりも短い第1供給時間、前記磁気センサに電力を供給することを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記制御部は、間欠的に前記第1供給時間、前記磁気センサに電力を供給することを特徴とする請求項1記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記カード挿入口に前記カードが挿入されたことを検知するためのカード挿入センサを備え、
前記制御部は、前記カード挿入センサでの検知結果に基づいて前記カード挿入口に前記カードが挿入されたことが検知されると、間欠的に前記第1供給時間、前記磁気センサに電力を供給することを特徴とする請求項2記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記制御部は、前記制御部が前記磁気センサに電力を供給していないときに、前記磁気センサの出力信号が前記制御部に入力されると、異常処理を実行することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記磁気センサは、磁気抵抗効果を利用したMRセンサであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項6】
カードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知するための磁気センサと、前記カードが挿入されるカード挿入口が形成され前記磁気センサが配置されるカード挿入部とを備え、前記磁気センサは、電力が供給されると出力信号を出力するカードリーダの制御方法であって、
前記カード挿入口から挿入された前記カードの前記磁気ストライプに記録される磁気データの記録領域が前記磁気センサを通過し始めてから通過し終わるまでの時間をカード通過時間とすると、
前記カード通過時間よりも短い第1供給時間、前記磁気センサに電力を供給することを特徴とするカードリーダの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知するための磁気センサを備えるカードリーダに関する。また、本発明は、かかるカードリーダの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードに記録された磁気データを読み取るカードリーダが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカードリーダは、カードに記録された磁気データを読み取るための磁気ヘッドを備えている。また、このカードリーダは、カードの挿入口から挿入されたカードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知するためのプリヘッド(磁気ヘッド)を備えている。
【0003】
カードリーダが利用される業界において、従来、犯罪者がプリヘッドから出力される信号を不正に取得して、カードに記録された磁気情報を不正に取得するいわゆるタッピングが大きな問題となっている。特許文献1に記載のカードリーダでは、プリヘッドの内部に、カードに記録された磁気データに応じた信号と異なる信号を出力する偽信号出力回路が設けられており、犯罪者がプリヘッドから出力される信号を取得しても、カードに記録された磁気データに応じた信号を取得することができない。そのため、このカードリーダでは、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−205187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1に記載のカードリーダでは、プリヘッドの内部に偽信号出力回路が設けられているため、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能となっている。しかしながら、このカードリーダでは、プリヘッドの内部に偽信号出力回路が設けられているため、プリヘッドが高価になり、その結果、カードリーダのコストが高くなる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、カード挿入口から挿入されるカードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知することが可能であっても、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能で、かつ、コストを低減することが可能なカードリーダを提供することにある。また、本発明の課題は、カード挿入口から挿入されるカードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知することが可能であっても、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能で、かつ、コストを低減することが可能となるカードリーダの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、カードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知するための磁気センサと、磁気センサに電力を供給するとともに磁気センサの出力信号が入力される制御部と、カードが挿入されるカード挿入口が形成され磁気センサが配置されるカード挿入部とを備え、磁気センサは、制御部から電力が供給されると出力信号を出力し、カード挿入口から挿入されたカードの磁気ストライプに記録される磁気データの記録領域が磁気センサを通過し始めてから通過し終わるまでの時間をカード通過時間とすると、制御部は、カード通過時間よりも短い第1供給時間、磁気センサに電力を供給することを特徴とする。
【0008】
本発明のカードリーダでは、カードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知するための磁気センサは、電力が供給されると出力信号を出力する。また、本発明では、制御部は、カード挿入口から挿入されたカードの磁気ストライプに記録される磁気データの記録領域が磁気センサを通過し始めてから通過し終わるまでの時間であるカード通過時間よりも短い第1供給時間、磁気センサに電力を供給している。そのため、本発明では、磁気ストライプに磁気データが記録されたカードが磁気センサを通過したときに、カードに記録された磁気データに応じた信号の一部を出力信号として磁気センサから出力させることは可能になるが、カードに記録された磁気データに応じた信号の全部を磁気センサが出力信号として出力することはなく、カードに記録された磁気データに応じた信号の全部を犯罪者が磁気センサから取得することはできない。したがって、本発明では、磁気センサの出力信号に基づいて、カード挿入口から挿入されるカードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知することが可能であっても、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能になる。また、本発明では、一般的な磁気センサを利用して、カードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知しつつ、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能になるため、カードリーダのコストを低減することが可能になる。
【0009】
本発明において、制御部は、間欠的に第1供給時間、磁気センサに電力を供給することが好ましい。このように構成すると、簡易な制御で、カードの磁気ストライプが磁気センサを通過するときに磁気センサに電力を供給することが可能になる。したがって、カードリーダの制御が容易になる。
【0010】
本発明において、カードリーダは、カード挿入口にカードが挿入されたことを検知するためのカード挿入センサを備え、制御部は、カード挿入センサでの検知結果に基づいてカード挿入口にカードが挿入されたことが検知されると、間欠的に第1供給時間、磁気センサに電力を供給することが好ましい。このように構成すると、カード挿入口にカードが挿入される前の待機時においても、磁気センサに、間欠的に第1供給時間、電力が供給されている場合と比較して、カードリーダの省電力化を図ることが可能になる。
【0011】
本発明において、制御部は、制御部が磁気センサに電力を供給していないときに、磁気センサの出力信号が制御部に入力されると、異常処理を実行することが好ましい。このように構成すると、カードに記録された磁気データに応じた信号の全部を出力信号として磁気センサが出力するように、犯罪者が所定の細工を行って磁気センサに電力を供給したとしても、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能になる。
【0012】
本発明において、磁気センサは、たとえば、磁気抵抗効果を利用したMRセンサである。
【0013】
また、上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダの制御方法は、カードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知するための磁気センサと、カードが挿入されるカード挿入口が形成され磁気センサが配置されるカード挿入部とを備え、磁気センサは、電力が供給されると出力信号を出力するカードリーダの制御方法であって、カード挿入口から挿入されたカードの磁気ストライプに記録される磁気データの記録領域が磁気センサを通過し始めてから通過し終わるまでの時間をカード通過時間とすると、カード通過時間よりも短い第1供給時間、磁気センサに電力を供給することを特徴とする。
【0014】
本発明では、カードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知するための磁気センサは、電力が供給されると出力信号を出力する。また、本発明では、カード挿入口から挿入されたカードの磁気ストライプに記録される磁気データの記録領域が磁気センサを通過し始めてから通過し終わるまでの時間であるカード通過時間よりも短い第1供給時間、磁気センサに電力を供給する。そのため、本発明では、磁気ストライプに磁気データが記録されたカードが磁気センサを通過したときに、カードに記録された磁気データに応じた信号の一部を出力信号として磁気センサから出力させることは可能になるが、カードに記録された磁気データに応じた信号の全部を磁気センサが出力信号として出力することはなく、カードに記録された磁気データに応じた信号の全部を犯罪者が取得することはできない。したがって、本発明では、磁気センサの出力信号に基づいて、カード挿入口から挿入されるカードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知することが可能であっても、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能になる。また、本発明では、一般的な磁気センサを利用して、カードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知しつつ、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能になるため、カードリーダのコストを低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明では、カード挿入口から挿入されるカードの磁気ストライプに磁気データが記録されているのか否かを検知することが可能であっても、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能になるとともに、カードリーダのコストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態にかかるカードリーダの概略図である。
図2図1に示す磁気センサが接続される制御部のブロック図である。
図3図1に示す磁気センサのオンオフタイミングを説明するための図である。
図4図1に示すカードリーダの、カードの取込動作時の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(カードリーダの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の概略図である。図2は、図1に示す磁気センサ8が接続される制御部14のブロック図である。図3は、図1に示す磁気センサ8のオンオフタイミングを説明するための図である。
【0019】
本形態のカードリーダ1は、カード2に記録された磁気データの読取やカード2への磁気データの記録を行うための装置であり、たとえば、ATM等の所定の上位装置に搭載されて使用される。このカードリーダ1は、カード2が挿入されるカード挿入口3が形成されるカード挿入部4と、本体部5とを備えている。カードリーダ1の内部には、カード挿入口3から挿入されたカード2が通過するカード通過路が形成されている。本形態では、図1に示すX方向でカード2が通過する。
【0020】
また、カードリーダ1は、カード2の磁気ストライプ2aに記録された磁気データの読取や磁気ストライプ2aへの磁気データの記録を行うための磁気ヘッド7と、カード2の磁気ストライプ2aに磁気データが記録されているのか否かを検知するための磁気センサ8と、カード挿入口3にカード2が挿入されたことを検知するためのカード挿入センサ9と、カード通過路を開閉するシャッタ部材10とを備えている。磁気ヘッド7は、本体部5に配置されている。磁気センサ8、カード挿入センサ9およびシャッタ部材10は、カード挿入部4に配置されている。また、カードリーダ1は、カード通過路においてカード2を搬送するカード搬送機構(図示省略)を備えている。
【0021】
カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度の略長方形状の塩化ビニール製のカードである。カード2には、磁気データが記録される磁気ストライプ2aが形成されている。磁気ストライプ2aは、略長方形状に形成されるカード2の長手方向に沿って帯状に形成されている。カード2では、磁気ストライプ2aの長手方向の所定の範囲に磁気データが記録可能となっている。すなわち、カード2では、磁気ストライプ2aに記録される磁気データの記録領域が規定されている。カード2は、カード2の長手方向がX方向(カード2の通過方向)と略一致した状態で、カードリーダ1に挿入されて、カードリーダ1内で搬送される。なお、カード2には、ICチップや通信用のアンテナが内蔵されても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0022】
カード挿入センサ9は、たとえば、カード2の通過方向とカード2の厚さ方向とに直交するカード2の幅を検知するためのカード幅センサである。このカード挿入センサ9は、たとえば、カード2の幅方向(図1のY方向)におけるカード2の両端部に接触可能な2個のセンサレバー(図示省略)と、2個のセンサレバーのそれぞれの動きを検知する接点スイッチまたはフォトインタラプタ(図示省略)とを備えており、カード挿入口3に挿入されたカード2の端部がセンサレバーに接触して、センサレバーの動きが検知されると、カード挿入口3にカード2が挿入されたことが検出される。
【0023】
シャッタ部材10は、カード2の通過方向において、カード挿入センサ9よりも奥側に配置されている。このシャッタ部材10は、図示を省略するシャッタ駆動機構に連結されており、シャッタ部材10がカード通過路を閉鎖する位置と、シャッタ部材10がカード通過路を開放する位置との間で移動可能となっている。
【0024】
磁気センサ8は、磁気抵抗効果を利用したMRセンサである。この磁気センサ8は、カード2の通過方向において、カード挿入センサ9よりも奥側に、かつ、シャッタ部材10よりも手前側に配置されている。すなわち、磁気センサ8は、カード2の通過方向において、カード挿入センサ9とシャッタ部材10との間に配置されている。また、磁気センサ8は、カード挿入口3から挿入されたカード2の磁気ストライプ2aが通過する位置に配置されている。
【0025】
磁気センサ8は、制御部14に接続されている。制御部14は、電源回路15を備えており、磁気センサ8に電力を供給する。電源回路15は、スイッチ17を介して磁気センサ8に接続されている。また、制御部14は、磁気センサ8の出力信号が入力される検知回路16を備えており、制御部14には、磁気センサ8の出力信号が入力される。検知回路16は、磁気センサ8の出力信号に基づいて、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されているのか否かを判別する。なお、制御部14には、カード挿入センサ9も接続されている。
【0026】
図3(A)に示すように、スイッチ17がオンになると、磁気センサ8に電力が供給されて磁気センサ8がオンになり、スイッチ17がオフになると、磁気センサ8への電力の供給が停止されて、磁気センサ8がオフになる。また、磁気センサ8は、オンになると、出力信号を出力する。すなわち、磁気センサ8は、制御部14から電力が供給されると、検知回路16に向かって出力信号を出力する。
【0027】
カード挿入口3から挿入されたカード2の磁気ストライプ2aに記録される磁気データの記録領域が磁気センサ8を通過し始めてから通過し終わるまでの時間をカード通過時間Tとすると、制御部14は、カード通過時間Tよりも短い第1供給時間ΔT(図3参照)、磁気センサ8に電力を供給する。すなわち、制御部14は、1回の電力供給時に、カード通過時間Tよりも短い第1供給時間ΔT、磁気センサ8に連続的に電力を供給する。
【0028】
具体的には、制御部14は、間欠的に第1供給時間ΔT、磁気センサ8に電力を供給する。すなわち、磁気センサ8は、間欠的に第1供給時間ΔTの間、オンとなって出力信号を出力する。すなわち、磁気センサ8は、オンとなって出力信号を出力している状態と、オフとなって出力信号の出力を停止している状態とを所定時間ごとに繰り返す。本形態では、カード挿入センサ9での検知結果に基づいてカード挿入口3にカード2が挿入されたことが検知されると、制御部14は、間欠的に第1供給時間ΔTの間、磁気センサ8に電力を供給し、磁気センサ8は、間欠的に第1供給時間ΔTの間、出力信号を出力する。
【0029】
なお、本形態では、後述のように、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていることが検知されると、以後、制御部14は、磁気センサ8への電力の供給を停止する。また、カード通過時間Tは、ユーザによるカードリーダ1へのカード2の挿入速度と、カード搬送機構によるカード2の搬送速度とから規定される。ユーザによるカード2の挿入速度のばらつきは大きいため、第1供給時間ΔTがカード通過時間Tよりも長くならないように、第1供給時間ΔTは、想定されるカード通過時間Tよりも十分に短い時間に設定されている。たとえば、第1供給時間ΔTは、10msec(ミリ秒)〜数10msecとなっている。また、磁気センサ8がオフとなって出力信号の出力を停止しているときに、カード2の磁気データの記録領域が磁気センサ8を通過してしまうことがないように、間欠的に磁気センサ8への電力の供給が停止される電力停止時間ΔT1(図3参照)も、想定されるカード通過時間Tよりも十分に短い時間に設定されている。
【0030】
また、制御部14は、図3(B)のE部に示すように、スイッチ17がオフになっており、制御部14が磁気センサ8に電力を供給していないときに、磁気センサ8がオンとなって磁気センサ8の出力信号が制御部14に入力されると、所定の異常処理を実行する。たとえば、制御部14は、カードリーダ1の動作を停止させる、あるいは、カードリーダ1が搭載される上位装置にアラームを上げる等の異常処理を実行する。
【0031】
(カードの取込動作時のカードリーダの制御)
図4は、図1に示すカードリーダ1の、カード2の取込動作時の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【0032】
カードリーダ1は、以下のように、カード2を内部に取り込む。すなわち、カードリーダ1にカード2が挿入される前の待機時に、制御部14は、磁気センサ8の出力信号が制御部14(具体的には、検知回路16)に入力されているのか否かを判断する(ステップS1)。上述のように、制御部14は、カード挿入センサ9での検知結果に基づいてカード挿入口3にカード2が挿入されたことが検知されると、磁気センサ8に電力を供給し、磁気センサ8は、制御部14から電力が供給されると、出力信号を出力する。したがって、ステップS1において、待機時に磁気センサ8の出力信号が制御部14に入力されている場合には、制御部14が磁気センサ8に電力を供給していないにもかかわらず、磁気センサ8から出力信号が出力されており、何からの不正行為が行われていると推定されるため、制御部14は、上述のように、異常処理を実行する(ステップS2)。なお、待機時には、シャッタ部材10は、カード通過路を閉鎖している。
【0033】
一方、ステップS1において、待機時に磁気センサ8の出力信号が制御部14に入力されていなければ、制御部14は、カード挿入センサ9での検知結果に基づいてカード挿入口3にカード2が挿入されたのか否かを判断し(ステップS3)、カード2の挿入が検知されると(ステップS3で“Yes”になると)、制御部14は、磁気センサ8への電力の供給を開始し、磁気センサ8は、オンになる(ステップS4)。また、ステップS4では、制御部14は、磁気センサ8の出力信号の初期のレベルを記憶する。
【0034】
その後、制御部14は、所定の周期でサンプリングされる磁気センサ8の出力信号のレベルとステップS4で記憶された磁気センサ8の出力信号の初期レベルとの差(すなわち、磁気センサ8の出力信号の変化)が所定値以上であるのか否かを判断する(ステップS5)。ステップS5において、磁気センサ8の出力信号の変化が所定値以上である場合には、制御部14は、挿入されたカード2の磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていると判断して、磁気センサ8への電力の供給を停止して磁気センサ8をオフにし(ステップS6)、その後、カード2の取込動作を行う(ステップS7)。ステップS7では、カード通過路を閉鎖しているシャッタ部材10を移動させてカード通過路を開放するとともに、カード搬送機構を起動して、カード2を本体部5の中へ取り込む。
【0035】
また、ステップS5において、磁気センサ8の出力信号の変化が所定値未満である場合には、制御部14は、挿入されたカード2の磁気ストライプ2aに記録される磁気データの記録領域が磁気センサ8の配置位置まで到達していないと判断し、ステップS4で磁気センサ8への電力の供給を開始してから第1供給時間ΔTが経過したのか否かを判断する(ステップS8)。ステップS8において、第1供給時間ΔTが経過していない場合には、ステップS5に戻り、ステップS8において、第1供給時間ΔTが経過した場合には、制御部14は、磁気センサ8への電力の供給を停止して磁気センサ8をオフにする(ステップS9)。
【0036】
その後、制御部14は、ステップS9で磁気センサ8がオフになってから電力停止時間ΔT1が経過したのか否かを判断し(ステップS10)、所定時間が経過すると(ステップS10で“Yes”になると)、制御部14は、再び、磁気センサ8への電力の供給を開始して、磁気センサ8は、オンになり(ステップS11)、その後、ステップS5へ戻る。
【0037】
なお、ステップS4で磁気センサ8がオンとなってからステップS6で磁気センサ8がオフとなるまでの時間、および、ステップS11で磁気センサ8がオンとなってからステップS6で磁気センサ8がオフとなるまでの時間は、第1供給時間ΔT以下である。また、ステップS3でカード2の挿入が検知されてから所定時間経過しても、ステップS5で磁気センサ8の出力信号の変化が所定値以上とならない場合には、制御部14は、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていないカード2等がカード挿入口3に挿入された、あるいは、カード2が間違った向きでカード挿入口3に挿入されたと判断して、異常処理を実行する。さらに、ステップS7でのカード2の取込動作中に、磁気センサ8の出力信号が制御部14に入力された場合には、制御部14が磁気センサ8に電力を供給していないにもかかわらず、磁気センサ8から出力信号が出力されており、何からの不正行為が行われていると推定されるため、制御部14は、カード2の取込動作を停止して、カード2の排出動作を行う等の異常処理を実行する。
【0038】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、磁気センサ8は、制御部14から電力が供給されると出力信号を出力する。また、本形態では、制御部14は、カード挿入口3から挿入されたカード2の磁気ストライプ2aに記録される磁気データの記録領域が磁気センサ8を通過し始めてから通過し終わるまでのカード通過時間Tよりも短い第1供給時間ΔT、磁気センサ8に電力を供給している。そのため、本形態では、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されたカード2が磁気センサ8を通過したときに、磁気センサ8は、カード2に記録された磁気データに応じた信号の一部を出力信号として出力するが、カード2に記録された磁気データに応じた信号の全部を出力信号として出力することはなく、カード2に記録された磁気データに応じた信号の全部を犯罪者が磁気センサ8から取得することはできない。したがって、本形態では、磁気センサ8の出力信号に基づいて、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されているのか否かを検知することが可能であっても、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能になる。また、本形態では、一般的な磁気センサ8を利用して、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されているのか否かを検知しつつ、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能になるため、カードリーダ1のコストを低減することが可能になる。
【0039】
本形態では、制御部14は、間欠的に第1供給時間ΔT、磁気センサ8に電力を供給している。また、本形態では、第1供給時間ΔTおよび電力停止時間ΔT1は、想定されるカード通過時間Tよりも十分に短い時間に設定されている。そのため、本形態では、簡易な制御で、カード2の磁気ストライプ2aが磁気センサ8を通過するときに磁気センサ8に電力を供給することが可能になる。したがって、本形態では、カードリーダ1の制御が容易になる。
【0040】
本形態では、カード挿入センサ9での検知結果に基づいてカード挿入口3にカード2が挿入されたことが検知されると、制御部14は、間欠的に第1供給時間ΔTの間、磁気センサ8に電力を供給している。そのため、本形態では、カード挿入口3にカード2が挿入される前の待機時においても、磁気センサ8に、間欠的に第1供給時間ΔT、電力が供給されている場合と比較して、カードリーダ1の省電力化を図ることが可能になる。
【0041】
本形態では、制御部14は、制御部14が磁気センサ8に電力を供給していないにもかかわらず、磁気センサ8がオンとなって磁気センサ8の出力信号が制御部14に入力されると、所定の異常処理を実行する。そのため、本形態では、カード2に記録された磁気データに応じた信号の全部を出力信号として磁気センサ8が出力するように、犯罪者が所定の細工を行って磁気センサ8に電力を供給したとしても、犯罪者による磁気情報の不正取得を阻止することが可能になる。
【0042】
なお、本形態の磁気センサ8は、MRセンサであるため、本形態では、カード2が停止していても、磁気センサ8によって、カード2の磁気ストライプ2aに磁気データが記録されているのか否かを検知することが可能である。
【0043】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0044】
上述した形態では、ステップS5において、制御部14は、所定の周期でサンプリングされる磁気センサ8の出力信号のレベルとステップS4で記憶された磁気センサ8の出力信号の初期レベルとの差(磁気センサ8の出力信号の変化)が所定値以上であるのか否かを判断することで、挿入されたカード2の磁気ストライプ2aに磁気データが記録されているのか否かを検知している。この他にもたとえば、制御部14は、所定の周期でサンプリングされる磁気センサ8の出力信号のレベルが所定値以上であるのか否かを判断することで、挿入されたカード2の磁気ストライプ2aに磁気データが記録されているのか否かを検知しても良い。この場合には、制御部14は、ステップS4において、磁気センサ8の出力信号の初期レベルを記憶しなくても良い。なお、上述した形態のように、磁気センサ8の出力信号の変化に基づいて、挿入されたカード2の磁気ストライプ2aに磁気データが記録されているのか否かを検知する場合には、温度変動等による磁気センサ8の出力信号の経時的な変動を取り除いた正確な検知を行うことが可能になる。
【0045】
上述した形態では、制御部14は、間欠的に第1供給時間ΔT、磁気センサ8に電力を供給している。この他にもたとえば、磁気ストライプ2aに記録された磁気データの記録領域が磁気センサ8を通過するときに磁気センサ8に電力を供給することができるのであれば、制御部14は、カード挿入センサ9での検知結果に基づいてカード挿入口3にカード2が挿入されたことが検知された後の所定のタイミングで1回、第1供給時間ΔT、磁気センサ8に電力を供給しても良い。
【0046】
上述した形態では、カード挿入センサ9での検知結果に基づいてカード挿入口3にカード2が挿入されたことが検知されると、制御部14は、間欠的に第1供給時間ΔTの間、磁気センサ8に電力を供給している。この他にもたとえば、制御部14は、カード挿入口3にカード2が挿入される前の待機時から、間欠的に第1供給時間ΔTの間、磁気センサ8に電力を供給しても良い。この場合には、カードリーダ1は、カード挿入センサ9を備えていなくても良い。
【0047】
上述した形態では、磁気センサ8は、磁気抵抗効果を利用したMRセンサである。この他にもたとえば、磁気センサ8は、励磁コイルと、検出コイルと、励磁コイルおよび検出コイルが巻回されるコアとをフラックスゲートセンサであっても良い。また、磁気センサ8は、磁気インピーダンスを利用したMIセンサであっても良いし、ホール効果を利用したホールセンサであっても良い。すなわち、磁気センサ8は、制御部14から電力が供給されたときに出力信号を出力するセンサであれば良い。また、上述した形態では、カードリーダ1は、カード搬送機構を有するカード搬送式のカードリーダであるが、カードリーダ1は、ユーザが手動で操作を行う手動式のカードリーダであっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 カードリーダ
2 カード
2a 磁気ストライプ
3 カード挿入口
4 カード挿入部
8 磁気センサ(MRセンサ)
9 カード挿入センサ
14 制御部
ΔT 第1供給時間
図1
図2
図3
図4