(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、
図1乃至
図3を参照して説明する。
図1乃至
図3は、本発明の一実施の形態を示す図である。なお、以下の各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。
【0014】
(成形品製造装置の構成)
まず、
図1により、本実施の形態による成形品の製造方法を実行する成形品製造装置の構成について説明する。
図1は、成形品製造装置を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、成形品製造装置10は、例えば、保管部11と、搬送装置12と、加熱装置13と、金型装置14と、射出装置15と、制御装置19と、を備えている。成形品製造装置10は、工場内等の敷設範囲16に配置されるとともに、金型装置14及び射出装置15がベース17上に配置される。成形品製造装置10は、熱可塑性プリプレグ(インサート部材、プリプレグ、強化部材、強化材)100を加熱後に金型装置14により賦形するとともに、射出装置15により射出成形することで、成形品80(後述)を製造することができるように構成されている。
【0016】
熱可塑性プリプレグ100は、シート状に形成されている。熱可塑性プリプレグ100は、
図1においてはその平面形状を方形状に形成されているが、成形品80の形状に賦形するのに適した形状に形成されている。熱可塑性プリプレグ100は、例えば、方形状、三角形状及び楕円形状等や、成形品80を形成可能な形状に形成されても良い。
【0017】
保管部11には、熱可塑性プリプレグ100が複数保管されている。保管部11は、例えば、熱可塑性プリプレグ100を縦の姿勢で保管するものであっても良い。なお、保管部11は、例えば、熱可塑性プリプレグ100を横の姿勢で保管するとともに横姿勢から縦姿勢に変更可能に構成されていてもよい。
【0018】
ここで、熱可塑性プリプレグ100の縦の姿勢(縦姿勢)とは、熱可塑性プリプレグ100の主面が略重力方向に沿った姿勢、即ち、上下方向に延設する姿勢、又は、これら姿勢と同等の姿勢である。また、熱可塑性プリプレグ100の横の姿勢(横姿勢)とは、熱可塑性プリプレグ100の主面が略水平方向に沿った姿勢、即ち、成形品製造装置10の設置面に沿った姿勢又はこれら姿勢と同等の姿勢である。
【0019】
搬送装置12は、熱可塑性プリプレグ100を縦の姿勢で、熱可塑性プリプレグ100の保管部11から加熱装置13及び金型装置14へ順次搬送可能に構成されている。具体的には、搬送装置12は、例えば、チャック装置21と、搬送機構22と、を備えている。
【0020】
チャック装置21は、例えば、搬送機構22に設けられた支持部31と、複数のチャック32と、チャック32を開閉する開閉手段33と、冷却装置34と、を備えている。チャック装置21は、複数のチャック32により、熱可塑性プリプレグ100を複数の位置で挟持する。
【0021】
支持部31は、複数のチャック32を支持している。支持部31は、搬送機構22により移動可能に構成されている。チャック32は、開閉手段33により駆動されることで、その先端を開閉可能となっている。チャック32は、少なくとも熱可塑性プリプレグ100を保持するように、先端の幅が狭くなるよう構成されても良い。
【0022】
開閉手段33は、チャック32の開閉を行わせる駆動源であって、例えば、空圧シリンダ等が用いられる。開閉手段33は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0023】
冷却装置34は、チャック32を冷却するものである。冷却装置34は、例えば、エアをチャック32に噴射することで、チャック32を冷却するように構成されている。冷却装置34は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0024】
冷却装置34は、少なくともチャック32のうち熱可塑性プリプレグ100に接触する部位及びその周辺部を冷却できるように構成されている。冷却装置34は、支持部31に支持されるか、又は、保管部11にチャック32が移動する前工程でチャック32を冷却可能な位置に配置される。なお、冷却装置34は、加熱装置13の上部に位置し、熱可塑性プリプレグ100を加熱している最中も、熱可塑性プリプレグ100に影響しない範囲で冷却する構成であってもよい。
【0025】
搬送機構22は、チャック装置21のチャック32を保管部11、加熱装置13及び金型装置14へ順次搬送する機構であり、例えば、支持部31をスライド移動させるように構成されていても良い。搬送機構22は、例えばレールである。なお、搬送機構22は、多関節ロボット等であってもよい。搬送機構22は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0026】
図1に示すように、加熱装置13は、例えば、熱可塑性プリプレグ100を加熱可能な、間隔を空けて互いに対向する一対の加熱部41と、加熱部41を支持する支持部
(図示せず)と、を備えている。一対の加熱部41は、例えば、熱可塑性プリプレグ100を加熱する加熱面41aが、熱可塑性プリプレグ100の主面に沿うように配置されている。
【0027】
即ち、一対の加熱部41は、例えば、熱可塑性プリプレグ100と同様に、縦姿勢(例えば、略重力方向に沿って縦長の直方体)で配置される。一対の加熱部41は、チャック32の先端の一部及びチャック32に保持された熱可塑性プリプレグ100が通過可能な間隔を有して対向する。
【0028】
加熱部41の対向する加熱面41aには、例えば、赤外線ヒータが単数又は複数設けられている。これにより加熱部41は、加熱部41の間を通過する、又は、加熱部41の間で停止する熱可塑性プリプレグ100を所定の温度に加熱する。なお、ここで、所定の温度とは、例えば、熱可塑性プリプレグ100を、金型装置14において賦形可能な温度である。
【0029】
金型装置14は、開閉可能な金型51と、金型51を開閉する型締装置52と、を備えている。
【0030】
金型51は、例えば、固定型53(金型の他方、金型の一方)と、移動型54(金型の一方、金型の他方)と、を備えている。移動型54は、固定型53に対して移動可能に構成されている。固定型53のうち移動型54に対向する対向面には、キャビティ53aが形成され、移動型54のうちに固定型53に対向する対向面には、キャビティ54aが形成されている。金型51は、閉状態において、固定型53及び移動型54のキャビティ53a、54aによって、成形品80の形状に対応する空間が形成される。金型51は、型締装置52に取り付けられている。
【0031】
型締装置(開閉装置)52は、例えば金型51を開閉可能、且つ、型締め可能に構成されている。型締装置52は、例えば、固定盤56と、固定盤56に対して移動可能な移動盤57と、移動盤57を移動させるトグル機構58と、トグル機構58を駆動させる駆動源59と、固定盤56に対して移動盤57の移動を案内する複数のタイバー60と、を備えている。また、型締装置52は成形装置の一例である。
【0032】
固定盤56は固定型53を支持し、移動盤57は移動型54を支持している。トグル機構58は、駆動源59により駆動されることで、移動盤57を固定盤56に対して進退させる。駆動源59は、トグル機構58を駆動させるものである。駆動源59は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。複数のタイバー60は、移動盤57を固定盤56に対して直線的に進退させるように案内する。タイバー60は、例えば、固定盤56及びトグル機構58を渡すように、4箇所に設けられる。
【0033】
射出装置15は、例えば、ハウジング61と、シリンダ62と、スクリュ63と、ホッパ64と、移動手段65と、駆動装置66と、シリンダ加熱装置67と、を備えている。射出装置15は、金型装置14の金型51内に樹脂材料(成形材料、成形材)を射出することで、型締装置52とともに成形品80を成形する。また、射出装置15は、型締装置52とともに構成されることで、成形装置の一例(射出成形装置)となる。
【0034】
ハウジング61は、例えば、シリンダ62、スクリュ63及びホッパ64を支持し、且つ、内部に駆動装置66を収納している。シリンダ62は、その内部にスクリュ63を収納する。シリンダ62は、その先端に設けられた射出ノズル62aを備えている。射出ノズル62aは、金型51に形成されたゲート51a(
図3(a)〜(c)参照)に接続可能となっている。スクリュ63は、シリンダ62内で回転可能、且つ、シリンダ62に対して進退可能に構成されている。
【0035】
ホッパ64には、射出成形を行う、溶融される樹脂材料(材料)が収容される。ホッパ64は、その内部に収容された樹脂材料をシリンダ62内に供給するように構成されている。
【0036】
移動手段65は、例えば、ベース17上に配置され、固定型53及び固定盤56に向って延設された複数のレール71と、ハウジング61の下部に設けられ、レール71をスライド移動可能な複数のガイド72と、を備えている。移動手段65は、ガイド72がレール71によって案内されることにより、ハウジング61及びハウジング61に支持された各構成要素を、レール71に沿って金型装置14に対して進退させる。
【0037】
駆動装置66は、例えば、スクリュ63を回転させる第1駆動装置74と、スクリュ63をシリンダ62に対して進退させる第2駆動装置75と、ハウジング61をレール71に沿って金型装置14に対して進退させる第3駆動装置76と、を備えている。
【0038】
第1駆動装置74は、スクリュ63を回転させることにより、ホッパ64から供給された樹脂材料を定量供給するように構成されている。第1駆動装置74、第2駆動装置75及び第3駆動装置76は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0039】
シリンダ加熱装置67は、シリンダ62を加熱するものである。シリンダ加熱装置67は、シリンダ62に装着されている。シリンダ加熱装置67は、シリンダ62を加熱することにより、ホッパ64から供給された樹脂材料を溶融する。シリンダ加熱装置67は、制御装置19に信号線Sを介して電気的に接続されている。
【0040】
制御装置19は、搬送装置12、金型装置14及び射出装置15を制御する。具体的には、制御装置19は、搬送機構22を制御することにより、チャック32(支持部31)の移動動作を制御する。また、制御装置19は、搬送装置12の支持部31の位置を検出する。
【0041】
制御装置19は、開閉手段33を制御することにより、チャック32の開閉動作を制御する。制御装置19は、冷却装置34を制御することにより、チャック32の冷却を制御する。
【0042】
制御装置19は、駆動源59を制御することにより、トグル機構58を駆動し、移動型54(移動盤57)の進退動作を制御する。制御装置19は、第1駆動装置74、第2駆動装置75及び第3駆動装置76を制御することにより、スクリュ63の回転動作及び進退動作、並びに、ハウジング61の進退動作(射出装置15の進退動作)を制御する。制御装置19は、シリンダ加熱装置67を制御することにより、シリンダ62の加熱動作を制御する。
【0043】
次に、
図2により、上述した成形品製造装置10によって製造される成形品80の構成について説明する。
【0044】
図2に示すように、成形品80は、例えば炭素繊維強化樹脂(CFRP)又はガラス繊維強化樹脂(GFRP)等の繊維強化樹脂が用いられた部材であり、樹脂材料(素材)を含む樹脂部(素材部)90と、樹脂部90に一体化された熱可塑性プリプレグ(インサート部材、プリプレグ、強化部材、強化材)100とを有している。熱可塑性プリプレグ100は、曲げられた状態で樹脂部90に対して密着して一体化されている。
【0045】
なお、樹脂部90を構成する樹脂材料(材料、成形材料、成形材)としては、例えばエポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、熱可塑性プリプレグ100としては、炭素繊維、ガラス繊維、又はアラミド繊維等の連続繊維または長繊維を熱可塑性の樹脂材料に含浸させたシートを挙げることができる。
【0046】
成形品80は、熱可塑性プリプレグ100がインサートされていることにより、樹脂単体で作製した成形品以上の機械的強度を得ることができる。このような成形品80は、例えば、自動車部品、航空機部品、建築部品、産業機材部品等として用いられても良い。
【0047】
(成形品の製造方法)
次に、
図1に示す成形品製造装置10を用いて、
図2に示す成形品80を製造する方法(本実施の形態による成形品の製造方法)について説明する。
【0048】
先ず、制御装置19は、チャック32を保管部11に移動させるとともに、チャック32を開状態とする。なお、本サイクル前に、熱可塑性プリプレグ100を加熱装置13に搬送した場合には、冷却装置34によりチャック32を冷却しても良い。
【0049】
次に、チャック32をさらに移動させて、熱可塑性プリプレグ100の周縁(縁部、端部)にチャック32の先端を位置させる。次に、チャック32を閉状態とし、熱可塑性プリプレグ100をチャック32により保持する。
【0050】
次に、チャック32を移動させて、熱可塑性プリプレグ100を一対の加熱部41の間に移動させ、熱可塑性プリプレグ100を所定の温度に加熱する。次に、チャック32を移動させて、熱可塑性プリプレグ100を金型51(金型51が取り付けられた型締装置52)に搬送し、熱可塑性プリプレグ100を金型51(型締装置52)内に配置する(インサートする)。このとき、例えば、固定型53又は移動型54に設けられた図示しない位置決めピンに熱可塑性プリプレグ100を固定することで、熱可塑性プリプレグ100の位置決めを行っても良い。なお、熱可塑性プリプレグ100は、加熱装置13の一対の加熱部41の間を通過、又は、加熱装置13の一対の加熱部41の間に停止することにより、軟化状態にされている。
【0051】
次に、制御装置19が駆動源59を制御することにより、トグル機構58が駆動され、これにより移動型54が固定型53に向って移動して型締めが行われる。その後、金型51内に樹脂材料(成形材料、成形材、材料)91を射出することにより、熱可塑性プリプレグ100を含む成形品80を
成形する。
【0052】
この間、まず
図3(a)に示すように、移動型54を固定型53に向って移動し、移動型54を金型51の閉じ限からわずかに手前で停止させる。具体的には、移動型54と固定型53との間の距離dが、例えば0.5mm〜3mm程度となる位置で移動型54を停止する。この場合、加熱された熱可塑性プリプレグ100は、金型51(金型51が取り付けられた型締装置52)によって金型51の内部でプレスされ、キャビティ53a、54aの形状に沿って賦形される。
【0053】
次に、
図3(b)に示すように、ハウジング61(
図1参照)を移動させ、固定型53に形成されたゲート51aに射出ノズル62aを接続させる。次いで、シリンダ62内にホッパ64から供給され溶融された樹脂材料91を、金型51のゲート51aを介して射出する。これにより、キャビティ53a、54a内に樹脂材料91が射出され、キャビティ53a、54aの形状に沿って、溶融した樹脂材料91が充填される。
【0054】
この際、キャビティ53a、54aの内部に予め存在した空気は、樹脂材料91によって押し出されることにより、移動型54と固定型53との間の隙間から外方に逃がされる。このように、移動型54と固定型53との隙間から空気が逃がされることにより、溶融した樹脂材料91は概ね一定の方向に向かって流動し、樹脂材料91がキャビティ53a、54a内で複雑に流動することがない。これにより、溶融した樹脂材料91の動きによって熱可塑性プリプレグ100が乱され、熱可塑性プリプレグ100によれ、ずれ、剥離などが生じることが防止される。
【0055】
続いて、樹脂材料91がキャビティ53a、54a内に行き渡った後、または樹脂材料91がキャビティ53a、54a内に完全に行き渡る前に、駆動源59を制御して、トグル機構58を駆動し、移動型54を固定型53側に再前進させる。これにより、
図3(c)に示すように、移動型54が金型51の閉じ限まで達し、移動型54と固定型53とが互いに密着する。このとき、移動型54および固定型53によって樹脂材料91および熱可塑性プリプレグ100がプレスされる。これにより、樹脂材料91と熱可塑性プリプレグ100とがキャビティ53a、54aの形状に賦形されるとともに、樹脂材料91と熱可塑性プリプレグ100とが一体化される。
【0056】
次に、賦形された熱可塑性プリプレグ100と樹脂材料91とを金型51内で冷却することにより、樹脂材料91に対応する樹脂部90と、樹脂部90に一体化された熱可塑性プリプレグ100とを有する成形品80が成形される。また、射出装置15では、樹脂材料91の計量を行う計量動作が行われる。次に、移動型54を移動させ、金型51を開状態とし、固定型53又は移動型54に設けられた図示しない突き出しピンにより成形品80を金型51から取り出す。
【0057】
以後、同様の工程を繰り返す。これらの工程の繰り返しにより、複数の成形品80が連続的に製造される。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態によれば、加熱装置13で加熱された熱可塑性プリプレグ100を、搬送装置12により金型51内に搬送し、金型51内で熱可塑性プリプレグ100を賦形する。その後、金型51内に樹脂材料91を射出
し、微小距離だけ開いた状態の金型51を閉じつつプレスすることにより、熱可塑性プリプレグ100を含む成形品80
を成形する。具体的には、型締めを行う際、移動型54を金型51の閉じ限からわずかに(例えば0.5mm〜3mm)手前で停止させ、射出成形を行う。射出成形を行った後、または射出成形の途中から、移動型54を再前進させることでプレスを行う。このように、金型51が微小距離だけ開いた状態で、金型51内に溶融した樹脂材料91を流すことにより、樹脂材料91を流す樹脂圧を低くすることができる。これにより、溶融した樹脂材料91が流動する際、溶融した樹脂材料91が熱可塑性プリプレグ100を押し付ける力が弱くなるので、熱可塑性プリプレグ100のよれ、ずれ、剥離などによる成形品80の強度低下や外観不良を抑制することができる。とりわけ樹脂材料91として透明な樹脂を用いた場合、上述したように熱可塑性プリプレグ100のよれ、ずれ、剥離が存在しないので、光沢のある綺麗な外観を得ることができ、付加価値の高い製品を得ることができる。
【0059】
また本実施の形態によれば、金型51の内部に充填された溶融した樹脂材料91は、充填後に金型51によってプレスされるので、薄くて均一な層状の樹脂部90を形成することが可能となる。
【0060】
さらに本実施の形態によれば、熱可塑性プリプレグ100の賦形を金型51の内部で行うので、予め賦形された予備成形体を金型51の内部にインサートする場合と比較して、成形品80の生産性の向上を図ることができる。
【0061】
なお、比較例として、
図5(a)に示すように、移動型54と固定型53とを完全に密着させた状態で金型51内に樹脂材料91を射出した場合、溶融した樹脂材料91を流すための樹脂圧により、熱可塑性プリプレグ100によれ、ずれ、剥離等が生じるおそれがある(
図5(b)参照)。
【0062】
(変形例)
次に、
図4(a)〜(c)により、本実施の形態による成形品の製造方法の変形例について説明する。
図4(a)〜(c)において、
図1乃至
図3に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。なお、以下に説明する成形品の製造方法は、
図1に示す成形品製造装置10を用いることにより行われる。
【0063】
すなわち
図3(a)〜(c)において、金型51内に樹脂材料91を射出
し、微小距離だけ開いた状態の金型51を閉じつつプレスすることにより、熱可塑性プリプレグ100を含む成形品80
を成
形する場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。例えば、
図4(a)〜(c)に示すように
、コアバック成形を用いても良い。
【0064】
この場合、まず上記と同様にして、加熱装置13で加熱された熱可塑性プリプレグ100を、搬送装置12により金型51内に搬送する。
【0065】
次に、
図4(a)に示すように、移動型54を、固定型53に向って金型51の閉じ限まで移動し、これにより移動型54と固定型53とを互いに密着させる。この際、加熱された熱可塑性プリプレグ100は、金型51(金型51が取り付けられた型締装置52)によって金型51の内部でプレスされ、キャビティ53a、54aの形状に沿って賦形される。
【0066】
次に、
図4(b)に示すように、ハウジング61(
図1参照)を移動させ、固定型53に形成されたゲート51aに射出ノズル62aを接続させる。
【0067】
続いて、
図4(c)に示すように、金型51を微小に型開きさせる。すなわち、駆動源59を制御して、トグル機構58を駆動し、移動型54を固定型53から離れる方向に向って移動させ、移動型54を金型51の閉じ限からわずかに離れた位置で停止させる。具体的には、移動型54と固定型53との間の距離dが、例えば0.5mm〜3mm程度となる位置で移動型54を停止させる。
【0068】
移動型54を停止させると同時に、又は移動型54を停止させた後、金型51の内部に樹脂材料91を射出する。すなわち、シリンダ62内にホッパ64から供給され溶融された樹脂材料91を、金型51のゲート51aを介して射出する。これにより、キャビティ53a、54a内(すなわち固定型53と、移動型54に取り付けられた熱可塑性プリプレグ100との間)に樹脂材料91が射出され、キャビティ53a、54aの形状に沿って、溶融した樹脂材料91が供給される。
【0069】
この際、キャビティ53a、54aの内部に予め存在した空気は、樹脂材料91によって押し出されることにより、移動型54と固定型53との間の隙間から外方に逃がされる。このように、移動型54と固定型53との隙間から空気が逃がされることにより、溶融した樹脂材料91は概ね一定の方向に向かって流動し、樹脂材料91がキャビティ53a、54a内で複雑に流動することがない。これにより、溶融した樹脂材料91の動きによって熱可塑性プリプレグ100が乱され、熱可塑性プリプレグ100によれ、ずれ、剥離などが生じることが防止される。
【0070】
このようにして、樹脂材料91が、固定型53と熱可塑性プリプレグ100との間に形成された空間に沿って略均一に行き渡る。これにより、キャビティ53a、54aの形状に賦形された熱可塑性プリプレグ100と、樹脂材料91とが一体化される。
【0071】
次に、賦形された熱可塑性プリプレグ100と樹脂材料91とを金型51内で冷却することにより、樹脂材料91に対応する樹脂部90と、樹脂部90に一体化された熱可塑性プリプレグ100とを有する成形品80が成形される。次に、移動型54を移動させ、金型51を開状態とし、固定型53又は移動型54に設けられた図示しない突き出しピンにより成形品80を金型51から取り出す。
【0072】
以後、同様の工程を繰り返す。これらの工程の繰り返しにより、複数の成形品80が連続的に製造される。
【0073】
以上説明したように、本変形例によれば、加熱装置13で加熱された熱可塑性プリプレグ100を、搬送装置12により金型51内に搬送し、金型51内で熱可塑性プリプレグ100を賦形する。その後、金型51を微小に型開きさせるとともに、金型51内に樹脂材料91を射出することにより、熱可塑性プリプレグ100を含む成形品80を成形する。このように、金型51が微小距離だけ開いた状態で、金型51内に溶融した樹脂材料91を流すことにより、樹脂材料91を流す樹脂圧を低くすることができる。これにより、熱可塑性プリプレグ100のよれ、ずれ、剥離などによる成形品80の強度低下や外観不良を抑制することができる。このほか、
図3(a)〜(c)に示す実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、本変形例によれば、加熱された熱可塑性プリプレグ100は、金型51によってプレスされ、熱可塑性プリプレグ100は目的の形状に賦形される。また、その後の金型51のコアバック動作により、樹脂材料91を流す流路が確保される。このため、樹脂材料91の流れを安定させることができる。また、金型51によって熱可塑性プリプレグ100をプレスすることにより、熱可塑性プリプレグ100の表面層はわずかに冷やされ、この表面層の粘度が高くなる。このため、樹脂材料91を流すための樹脂圧力が加わったときに、よれ、ずれ、剥離等の不具合をより生じにくくすることができる。
【0075】
なお、上記実施の形態及び上記変形例において、駆動源59及びトグル機構58は、型締装置52に取り付けられた移動型54を移動させることで、熱可塑性プリプレグ100を金型51内で賦形させる第1駆動部の一例である。また、上記実施の形態及び上記変形例において、駆動源59及びトグル機構58は、移動型54を微小距離だけ移動させる第2駆動部の一例である。また、第1駆動部の構成部材と第2駆動部の構成部材が同じであってもよい。すなわち、第1駆動部と第2駆動部が同一であってもよい。
【0076】
なお、上記実施の形態および上記変形例における成形品の製造方法としては、射出成形方法に限られるものではない。例えば、トランスファー成形方法(成形品の製造方法、成形方法)等の他のプラスチック成形方法(成形品の製造方法、成形方法)であってもよい。
【0077】
上記実施の形態および上記変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組み合わせることも可能である。あるいは、上記実施の形態および上記変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。