特許第6211504号(P6211504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211504
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】気化装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 11/44 20060101AFI20171002BHJP
【FI】
   F23D11/44 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-215835(P2014-215835)
(22)【出願日】2014年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-84945(P2016-84945A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荏原 裕行
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−101220(JP,U)
【文献】 特開2001−221409(JP,A)
【文献】 特開平4−309705(JP,A)
【文献】 実開昭56−52124(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 11/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を加熱し気化ガスとする気化容器と、この気化ガスを噴出するノズル部を備え、前記ノズル部は前記気化容器を貫通して配置されるとともに気化ガスが流入する気化ガス流入口を備えた気化装置であって、前記気化容器内に多孔質部材からなる気化フィルタと、この気化フィルタを所定位置に保持する保持部材と、を備え、前記保持部材の周囲には空間部が設けられ、前記保持部材の内壁に対向する位置に前記気化ガス流入口が設けられており、気化ガス、前記空間部から前記気化フィルタを通って前記気化ガス流入口に向かうことを特徴とする気化装置。
【請求項2】
前記保持部材は開口面を備えた有底形状をなし、前記ノズル部は前記気化ガス流入口が前記保持部材底面に対向するよう保持部材を貫通して配置されることを特徴とする請求項1記載の気化装置。
【請求項3】
前記保持部材は開口面を上に向けて配置されることを特徴とする請求項2記載の気化装置。
【請求項4】
気化容器底部に配置される第一気化フィルタと、前記保持部材に保持される第二気化フィルタを備え、気化容器内に空間部を形成するよう第一気化フィルタの上方に第二気化フィルタが配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の気化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯油等の液体燃料を加熱気化して気化ガスを生成する気化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の気化装置として特許文献1に示すようなものがある。特許文献1の気化装置は、液体燃料を加熱気化する気化室と、気化室で気化した気化ガスを燃焼部に向けて噴出するノズルとを備えており、気化室内にノズルを貫通させて配置するとともに、ノズルには気化室と連通する連通口が設けられている。
【0003】
また、気化室には液体燃料の供給口が設けられていて、この供給口から気化室に供給された液体燃料は高温の気化室壁に接触することで順次気化し気化ガスとなってノズルから噴出する。このように液体燃料が気化する過程において、気化室内には未気化の液体燃料と気化ガスとが混在しており、気化ガスは比重が軽いため気化室の上部に滞留している。そのため、気化室とノズルとの連通口を気化室の上部に開口するように配置することで、気化室上部に滞留する気化ガスのみをノズル内に流入させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−74551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
灯油等の液体燃料は、保管状態が悪く空気に長時間触れたり、紫外線の影響を受けたりすると酸化していわゆる変質灯油となり高沸点成分が増加する。この高沸点成分は、気化室内で気化しきれずにタールとして気化室内に堆積したり、また一部は気化ガスの中に混じってノズル内に流入することもある。気化ガスはノズル内では高温に保たれているが、ノズルから噴出されると一気に冷たい大気中に拡散するため温度が低下する。すると、気化ガス中に混入していた高沸点成分は、ノズルから噴出する際に凝固してノズル周辺にタールとして付着し、ノズル詰まりの原因となってしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、液体燃料に含まれる高沸点成分がノズルに流入することを防止して、タールによるノズル詰まりのない気化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体燃料を加熱し気化ガスとする気化容器と、この気化ガスを噴出するノズル部を備え、前記ノズル部は前記気化容器を貫通して配置されるとともに気化ガスが流入する気化ガス流入口を備えた気化装置であって、前記気化容器内に多孔質部材からなる気化フィルタと、この気化フィルタを所定位置に保持する保持部材と、を備え、前記保持部材の周囲には空間部が設けられ、前記保持部材の内壁に対向する位置に前記気化ガス流入口が設けられており、気化ガス、前記空間部から前記気化フィルタを通って前記気化ガス流入口に向かうことを特徴とする気化装置である。

【0008】
また、前記保持部材は開口面を備えた有底形状をなし、前記ノズル部は前記気化ガス流入口が前記保持部材底面に対向するよう保持部材を貫通して配置されることを特徴とする請求項1記載の気化装置である。
【0009】
また、前記保持部材は開口面を上に向けて配置されることを特徴とする請求項2記載の気化装置である。
【0010】
また、気化容器底部に配置される第一気化フィルタと、前記保持部材に保持される第二気化フィルタを備え、気化容器内に空間部を形成するよう第一気化フィルタの上方に第二気化フィルタが配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の気化装置である。
【発明の効果】
【0011】
上述のように構成することにより、液体燃料中に含まれる高沸点成分がノズルに流入することが防止されるので、タールによるノズル詰まりを防止して気化装置の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の気化装置の外観図である。
図2】本発明の気化装置の断面図である。
図3】本発明の実施例1における気化容器の正面断面図である。
図4】本発明の実施例2における気化容器の正面断面図である。
図5】本発明の実施例3における気化容器の正面断面図である。
図6】本発明の実施例4における気化容器の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用効果を示して簡単に説明する。
【0014】
本発明は、液体燃料を気化する気化容器と、この気化容器を貫通して配置され気化ガスが流入する気化ガス流入口が設けられたノズル部を備えた気化装置であって、気化容器内で発生した気化ガスは、空間部から気化フィルタを通って気化ガス流入口に向かう気化ガス流路を流れるようになっている。
【0015】
気化ガス中に含まれる高沸点成分は、気化ガス流路を通過する間に空間部および気化フィルタで除去されるため、高沸点成分がノズルに流入することを防止して、タールによるノズル詰まりを抑制することができる。なお、気化フィルタの上流である空間部には多くのタールを堆積させることができるので、気化フィルタに捕集されるタール量が少なくなり、気化フィルタの目詰まりが軽減されるため気化装置の長寿命化を図ることが可能となる。さらに、気化ガス流路を形成する部材を用いて気化フィルタを保持するようになっているため、気化ガス流路の形成と気化フィルタの保持の両方を一つの部品で実現することができ、気化装置を簡単に構成することができる。
【0016】
また、気化フィルタはケース状の保持部材に収容されるため、気化装置の組立が容易となり、そして、保持部材の底面に対向して気化ガス流入口を設けることで気化フィルタの全体に気化ガスを通過させることになるので、気化フィルタの全体でタールを捕集することができ、タールの捕集効率を上げることができる。
【0017】
また、気化ガスは比重が軽く気化容器の上方に滞留するため、保持部材の開口部を上に向けることで、気化容器の底部で気化した気化ガスはこの開口面に向かって空間部を均等に通過することとなる。これにより、空間部全体にタールが堆積されるので空間部の容積を有効に利用することができる。
【0018】
また、気化容器底部には第一気化フィルタを配置し、この第一気化フィルタの上方に空間部を設けて第二気化フィルタを配置することで、液体燃料は第一気化フィルタに接触して表面積が大きくなるため、効率よく液体燃料を気化させて気化ガスを発生させることができる。さらに、気化ガス中に含まれる高沸点成分は空間部にタールとして堆積するので、第二気化フィルタに捕集されるタール量を少なくし、第二気化フィルタの目詰まりを軽減させることができる。
【実施例1】
【0019】
以下本発明の一実施例としての気化装置を図面により説明する。
【0020】
図1は気化装置の外観図、図2は気化装置の断面図である。気化装置1は、液体燃料を気化して気化ガスとする気化部10と、気化部10で生成された気化ガスを噴出するノズル部20と、ノズル部20を開閉させるプランジャー部30とから構成されている。
【0021】
気化部10は、図示しないバーナで形成される火炎の燃焼熱を回収する熱回収部11と、通電することで発熱するヒータ12と、ヒータ12と密着するヒータ設置面131が形成されてヒータ12が発する熱を受けるヒータ受熱部13と、液体燃料が供給される気化容器14を備えている。
【0022】
このように気化装置1が熱回収部11を備えることにより、燃焼開始時にはヒータ12が発する熱により気化装置1を加熱し、燃焼が開始してバーナで火炎が形成された後は熱回収部11が回収した燃焼熱により気化装置1が加熱される。気化装置1が加熱されることで気化容器14が高温となり、気化容器14に供給された液体燃料は加熱されて気化し気化ガスとなる。
【0023】
そして、熱回収部11と、ヒータ受熱部13は押出加工により一体に成形されて気化ヘッド16を構成しており、気化ヘッド16の幅方向を押出方向として金型から押し出すことで気化ヘッド16が成形される。このように構成することで、溶接の手間を低減し、また押し出す長さを変えることによって気化能力を変更することができるため、1つの押出金型で気化能力の異なる気化装置1の気化ヘッド16を製造することが可能である。
【0024】
ヒータ12は、アルミナや窒化ケイ素などの材料からなる平板状のセラミックヒータを用い、ヒータ押さえ金具121によりヒータ設置面131に密着固定されている。セラミックヒータは、ワット密度が高く熱容量が小さいため熱効率がよく、また形状を平板状とすることでヒータ設置面131との接触面積が増えるので、気化装置1を素早く昇温させることができる。
【0025】
気化容器14は上面が開口した略箱型形状の容器であり、この開口端面を気化ヘッド16のヒータ受熱部13の底部に接合して気化部10が構成される。その際、気化ヘッド16の底面に形成された張出部161が気化容器14に嵌合するため、位置ズレをおこすことがなく接合作業を容易に行うことができる。
【0026】
また気化容器14には、送油パイプ4が接続されていて、この送油パイプ4は電磁ポンプ3を介して油受皿2に繋がっており、電磁ポンプ3を駆動することで送油パイプ4を通して油受皿2に貯められた液体燃料が気化容器14に供給される。そして、気化容器14の前面と背面にはノズル部20が貫通する貫通孔141、142が形成されている。
【0027】
ノズル部20は、後端がプランジャー部30に接続されるとともに先端に噴出口22が形成された筒状のノズルパイプ21から構成され、気化容器14に設けられた貫通孔141、142を貫通して配置されている。
【0028】
図3は気化容器14の正面断面図であって、気化容器14内には、多孔質部材からなる気化フィルタ143と、この気化フィルタ143を収容する保持部材であるフィルタケース144が設けられており、ノズルパイプ21はこのフィルタケース144を貫通して配置されている。また、気化容器14の壁面には、気化容器14の温度を検知するサーミスタ17、送油パイプ4と接続され燃料を気化容器14内に供給する燃料吐出口18が取り付けられている。
【0029】
気化フィルタ143は、気化ガス中に含まれる高沸点成分を捕集する捕集フィルタとしての役割を持つものである。そしてフィルタケース144は、両端が開放した筒状の容器であり、内部に気化フィルタ143を収容して気化フィルタ143を気化容器14内の所定位置に保持している。
【0030】
フィルタケース144の周囲には空間部146が形成されていて、この空間部146で液体燃料に含まれる気化しきれない高沸点成分をタールとして堆積させる。液体燃料中には少なからず高沸点成分が含まれており、この高沸点成分によって気化フィルタ143が目詰まりを起こすと、ノズル部20から噴出される気化ガス量が減少し、気化フィルタが完全に詰まってしまうと燃焼を継続することができなくなってしまうが、空間部146にタールを堆積させることで気化フィルタ143に捕集されるタール量が少なくなるため、気化フィルタ143の目詰まりが軽減される。
【0031】
そして、このフィルタケース144を貫通するノズルパイプ21には、フィルタケース144の内壁に対向する位置に気化ガス流入口23が形成されており、気化ガスは気化ガス流入口23からノズルパイプ21内に流入し、噴出口22より図示しないバーナに向けて噴出される。なお、図では気化ガス流入口23は下向きに設けられているが、上向きに設けてもよい。
【0032】
つまり、気化容器14に供給された液体燃料が気化ガスとなって噴出口22から噴出するまでには、まず気化容器14の内面に接触して気化し、その後空間部146を通って筒状のフィルタケース144の両端面からフィルタケース144内に流入し、気化フィルタ143を通過する間に高沸点成分が除去され、気化ガス流入口23からノズルパイプ21内に流入するという流路を通過するようになっている。そして、この流路は気化容器14内に設けられたフィルタケース144によって形成されている。
【0033】
プランジャー部30は、円筒部311と小径部312が深絞り加工により一体に形成された筒体31と、ソレノイドコイル32を備え、ソレノイドコイル32の内部に筒体31を貫通して構成される。また、この筒体31の円筒部311には、後端に固定された固定片34と、内部を摺動自在な可動片33と、固定片34と可動片33の間に介在するスプリング35が設けられていて、ソレノイドコイル32は通電されることで磁気力を発生し、この磁気力により可動片33を吸引する。
【0034】
固定片34には小空間であるニゲ部36が形成され、このニゲ部36を通じて気化容器14やノズルパイプ21内に残留した気化ガスを油受皿2に戻すためのニゲパイプ5が接続されている。
【0035】
可動片33は、内部に固定片34のニゲ部36を閉塞するプランジャー弁37が挿入固定されるとともに、ノズルパイプ21側に向けてバルブロッド38が取り付けられており、このバルブロッド38は先細り形状をなしていてその先端にはノズルパイプ21の噴出口22を開閉する弁針381が形成されている。また、可動片33はスプリング35の付勢力により常時ノズルパイプ21側に押圧されていて、これにより弁針381が噴出口22を閉塞した状態となっている。
【0036】
次に、上述の構成における気化装置の動作について説明する。
【0037】
燃焼開始が指示されると、ヒータ12への通電が行われ、ヒータ12の発する熱はヒータ受熱部13を介して伝熱され、気化容器14の温度を上昇させる。気化容器14の温度はサーミスタ17により検知されており、気化容器14が液体燃料を気化することのできる温度まで上昇すると電磁ポンプ3が始動して油受皿2内の液体燃料を汲み上げ、液体燃料は送油パイプ4を通過して燃料吐出口18から気化容器14内に供給される。
【0038】
気化容器14に供給された液体燃料は気化容器14の内面に接触することで気化し、気化ガスとなる。気化容器14の温度が液体燃料の沸点よりも高いと、供給された液体燃料はライデンフロスト現象により球状となって転がり、蒸発速度が遅くなってしまうが、気化容器14の内面に筋状の凹凸を設けることで球状化と転がりが緩和され、効率よく液体燃料を気化させて気化ガスを発生させることができる。
【0039】
気化容器14内には、フィルタケース144によって気化ガスの流路が形成されているので、気化ガスはこの流路を通ってノズルパイプ21に流入し、噴出口22からバーナに向かって噴出される。具体的には、気化ガスは空間部146を通過して筒状のフィルタケース144の両端面からフィルタケース144内に流入し、そしてフィルタケース144内で気化フィルタ143を通過した後、気化ガス流入口23からノズルパイプ21内に流入するようになっている。
【0040】
気化ガス中には少なからず高沸点成分が含まれているが、この高沸点成分の多くはまず空間部146に堆積し、その後気化フィルタ143を通過する際にフィルタの細孔に細かいタールも捕集されるので、ノズルパイプ21に流入するまでの間に高沸点成分は殆ど除去されることになる。また、高沸点成分の多くは空間部146に堆積するので、気化フィルタ143に捕集されるタール量が少なくなり、気化フィルタの目詰まりが軽減されるため気化装置の寿命を長くすることができる。
【0041】
また、ノズルパイプ21は気化容器14の熱により高温に維持されるので、ノズルパイプ21に流入した気化ガスの温度を低下させないため、燃焼状態を良好に維持することができる。
【0042】
そして、電磁ポンプ3の始動に相前後してソレノイドコイル32に通電が行われ、ソレノイドコイル32の磁気力により可動片33が吸引されて固定片34側に摺動する。可動片33が摺動することでバルブロッド38も固定片34側に移動するため、バルブロッド38の先端に設けられた弁針381が噴出口22から離脱し、さらにプランジャー弁37が固定片34のニゲ部36を閉塞するため、ノズルパイプ21内に流入した気化ガスは噴出口22よりバーナに向けて噴出される。
【0043】
バーナで火炎が形成されると、熱回収部11は火炎に晒されて燃焼熱を回収するので、熱回収部11が火炎から回収した燃焼熱は、ヒータ受熱部13を介して気化容器14へ伝熱し、気化容器14を加熱するようになる。
【0044】
気化容器14の温度は常時サーミスタ17により検知されており、気化容器14の温度が液体燃料の気化に適した温度となるようヒータ12への通電が制御され、熱回収部11が回収した熱により気化容器14が十分に加熱される状態であれば、ヒータ12への通電を停止する。これにより、燃焼中の消費電力を低減させることができる。
【0045】
そして、燃焼停止の指示があると、ヒータ12及び電磁ポンプ3への通電を停止させると同時にソレノイドコイル32への通電を停止する。ソレノイドコイル32への通電が停止されると、可動片33はスプリング35の付勢力によってノズルパイプ21側に摺動して押圧されるので、バルブロッド38も噴出口22側へ移動して先端の弁針381が噴出口22を閉塞するため、気化容器14に残った気化ガスが噴出口22から漏れ出すことが防止される。また同時に、プランジャー弁37によって閉塞されていたニゲ部36が開放されるので、気化容器14やノズルパイプ21内に残留する気化ガスはニゲ部36からニゲパイプ5を通って油受皿2に戻される。
【実施例2】
【0046】
図4は本発明の実施例2における気化容器14の正面断面図を示す。本実施例では、フィルタケース144が一面に開口面145を備えた略箱型形状の容器である点で実施例1と異なる。
【0047】
フィルタケース144を貫通するノズルパイプ21には、フィルタケース144の底面に対向する位置に気化ガス流入口23が形成されている。これにより、気化フィルタ143の全体に気化ガスを通過させることになるので、気化フィルタ143の全体でタールを捕集することができ、タールの捕集効率を上げることができる。なお図では、気化フィルタ143はフィルタケース144内の一部のみに配置しており、気化ガス流入口23は覆われていないが、気化ガス流入口23を覆うようにフィルタケース144の全体に配置するようにしても構わない。
【0048】
上述の構成において、気化容器14に供給された液体燃料が気化ガスとなって噴出口22から噴出するまでには、まず気化容器14の内面に接触して気化し、その後空間部146を通ってフィルタケース144の開口面145からフィルタケース144内に流入し、気化フィルタ143を通過する間に高沸点成分が除去され、気化ガス流入口23からノズルパイプ21内に流入するという流路を通過するようになっている。
【実施例3】
【0049】
図5は本発明の実施例3における気化容器14の正面断面図を示す。本実施例では、フィルタケース144が上面に開口面145を備えた略箱型形状の容器である点で実施例2と異なる。
【0050】
気化ガスは比重が軽いため、気化容器14の上部に滞留する。フィルタケース144は上方に開口面145を備えているので、気化容器14の内面に接触して発生した気化ガスはこの開口面145に向かって空間部146を均等に通過することとなり、空間部146の一部にだけタールが堆積してしまうことがない。よって、空間部146全体にタールを堆積させることができるので空間部146の容積を有効に利用することができる。
【実施例4】
【0051】
図6は本発明の実施例4における気化容器14の正面断面図を示す。なお、ここでは実施例1から3と異なる点について説明する。
【0052】
気化容器14内には、多孔質部材からなる第一気化フィルタ147および第二気化フィルタ148と、第二気化フィルタ148を収容するフィルタケース144が設けられていて、ノズルパイプ21はこのフィルタケース144を貫通して配置されている。
【0053】
第一気化フィルタ147は、気化容器14の底部に配置されており、気化容器14に供給された液体燃料の気化を促進するための気化促進素子としての役割を持つものである。一方、第二気化フィルタ148は、この第一気化フィルタ147の上方にフィルタケース144に収容された状態で配置され、主として第一気化フィルタ147で気化した気化ガス中に含まれる高沸点成分を捕集する捕集フィルタとしての役割を持つものである。そのため、第二気化フィルタ148は第一気化フィルタ147よりも孔径が小さく目の細かいものを用いることが望ましい。
【0054】
フィルタケース144は、上方に開口面145を備えた略箱型形状の容器であり、内部に第二気化フィルタ148を収容して、第一気化フィルタ147との間に空間部146が形成されるように第二気化フィルタ148を保持している。
【0055】
空間部146は、気化ガス中に含まれる高沸点成分を第二気化フィルタ148の手前でタールとして堆積させるために設けたものである。タールによって第二気化フィルタ148が目詰まりを起こすと、ノズル部20から噴出される気化ガス量が減少し、第二気化フィルタが完全に詰まってしまうと燃焼を継続することができなくなってしまうが、空間部146にタールを堆積させることで第二気化フィルタ148に捕集されるタール量が少なくなるため、第二気化フィルタ148の目詰まりが軽減される。また、空間部146の容積は第二気化フィルタ148の孔の容積よりも大きく、多くのタールを堆積させることができる。
【0056】
このように構成される気化装置では、気化容器14に供給された液体燃料が気化ガスとなって噴出口22から噴出するまでには、まず第一気化フィルタ147で気化され、その後空間部146を通ってフィルタケース144の開口面145からフィルタケース144内に流入し、第二気化フィルタ148を通過する間に高沸点成分が除去され、気化ガス流入口23からノズルパイプ21内に流入するという流路を通過するようになっている。そして、この流路は気化容器14内に設けられたフィルタケース144によって形成されている。
【符号の説明】
【0057】
14 気化容器
20 ノズル部
23 気化ガス流入口
143 気化フィルタ
144 フィルタケース(保持部材)
145 開口面
146 空間部
147 第一気化フィルタ
148 第二気化フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6