特許第6211541号(P6211541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211541
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】循環ワイヤを備える切断具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20171002BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   A61B17/32
   A61B18/14
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-556733(P2014-556733)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公表番号】特表2015-507970(P2015-507970A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】US2013025371
(87)【国際公開番号】WO2013119970
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2015年11月19日
(31)【優先権主張番号】61/596,925
(32)【優先日】2012年2月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】スオン、ナローン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ラー
(72)【発明者】
【氏名】レイビン、サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ルート、ジョナサン
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−501646(JP,A)
【文献】 特表平08−509894(JP,A)
【文献】 特表2004−532668(JP,A)
【文献】 特表2003−511147(JP,A)
【文献】 特表2010−533036(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0112524(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0064113(US,A1)
【文献】 特公昭47−049392(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
A61B 18/04−18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を切断するための医療用装置であって、
基端部と、先端部と、前記基端部および前記先端部の間に延在する第1の内腔および第2の内腔と、を含む長尺状の管状部材と、
第3の内腔を備え、かつ、前記第1の内腔を通って延在する第1の長尺状のアームと、
第4の内腔を備え、かつ、前記第2の内腔を通って延在する第2の長尺状のアームと、
前記第1のアームの前記第3の内腔から前記第2のアームの前記第4の内腔まで延在する切断要素であって、前記第3の内腔および前記第4の内腔内において摺動可能に配置される切断要素と、
前記切断要素を摺動させて前記第3の内腔から出すとともに前記第4の内腔へ進入させるための機構と、を備える組織を切断するための医療用装置。
【請求項2】
前記医療用装置は、導入用シースをさらに備える、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項3】
前記切断要素は、前記管状部材の前記基端部から前記先端部まで延在する、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項4】
前記切断要素は、焼灼ワイヤを備える、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項5】
前記機構は、プーリを含み、前記機構は、電気エネルギー源に結合するように構成される、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項6】
前記第1のアームおよび前記第2のアームは、折り畳み形状と拡張形状との間を移行するように構成される、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項7】
前記アームは、前記長尺状の管状部材に対して移動可能である、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項8】
前記長尺状の管状部材は、第1の方向に延在し、かつ、前記アームの端部は、別々の方
向に分岐する、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項9】
医療用装置であって、
内視鏡の先端部から先端に向けて延在する複数の可撓性アームであって、前記可撓性アームのそれぞれは、自身を貫通する内腔を画定し、かつ、前記複数の可撓性アームのそれぞれは、第1の形状と第2の形状との間を移行するように構成される可撓性アームと、
前記複数の可撓性アームのうちの1つから前記複数の可撓性アームの別の1つへと延在する切断ワイヤであって、前記複数のアームの前記内腔の内部において、摺動可能に配置される切断ワイヤと、
前記切断ワイヤを摺動させて前記複数の可撓性アームのうちの1つから出すとともに前記複数の可撓性アームのうち別の1つへ進入させるための機構と、を備える医療用装置。
【請求項10】
前記切断ワイヤは、エネルギーを伝導する、請求項9に記載の医療用装置。
【請求項11】
前記第1の形状は、折り畳み形状であり、かつ、前記第2の形状は、拡張形状である、請求項9に記載の医療用装置。
【請求項12】
前記アームの一部分は、放射線不透過性である、請求項に記載の医療用装置。
【請求項13】
前記ワイヤは、凸状部、凹状部および鋸歯状部のうちの1つを含む、請求項9に記載の医療用装置。
【請求項14】
前記ワイヤは、刃先を含む、請求項9に記載の医療用装置。
【請求項15】
前記機構は更に第1のスプール及び第2のスプールを含み、前記第1のスプールは、切断処置の際に、以前に使用された切断要素の一部を保持するように構成され、前記第2のスプールは、切断処置の際に、未使用の切断要素の一部を保持するように構成される、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項16】
前記機構が始動される時、前記第2のスプールからの前記切断要素の一部分が前記第3の内腔を通して先端に向けて延出し、前記4の内腔からの前記切断要素の一部分が前記第1のスプールに対して基端に向けて延出するように構成される、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項17】
前記第1の長尺状のアーム及び前記第2の長尺状のアームが前記長尺状の管状部材の先端部に対して先端に向けて延出する時、Y字形を画定するようにあらかじめ形成される、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項18】
前記第1の長尺状のアームのうち少なくとも一部分が前記長尺状の管状部材の先端部よりも先端側に設けられる第2の長尺状のアームのうち少なくとも一部分と接触する、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項19】
前記機構が更に第1のスプール及び第2のスプールを含み、前記第1のスプールは、切断処置の際に、以前に使用された切断要素の一部を保持するように構成され、前記第2のスプールは、切断処置の際に、未使用の切断要素の一部を保持するように構成され、前記機構が始動される時、前記第2のスプールからの前記切断要素の一部分が前記第3の内腔を通して先端に向けて延出し、前記4の内腔からの前記切断要素の一部分が前記第1のスプールに対して基端に向けて延出するように構成される、請求項1に記載の医療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体として、生体組織の切開に関する。具体的には、本開示は、内視鏡と協働使用して、組織の電気外科医術、電気焼灼および電気凝固を実施するための装置を含む。
【背景技術】
【0002】
臓器壁は、いくつかの層からなり、これらの層には、粘膜(表面層)、粘膜下組織、筋層(筋肉の層)および漿膜(結合組織層)が含まれ得る。胃腸の癌、結腸癌、および食道癌において、例えば、小さなポリープあるいは癌の塊は、粘膜に沿って形成され、臓器の内腔の内部へと延在する場合が多い。従来、そのような状態は、罹患臓器壁の一部分を切除して治療が行われる。しかしながら、この処置は、実施が困難であり、かつ、患者に不快感を与えるとともに、健康上の危険を及ぼす可能性がある。近年、医師らは、内視鏡的粘膜切除術(EMR:endoscopic mucosal resection)と呼ばれる低侵襲性の術式、および別の、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:endoscopic submucosal dissection)と呼ばれる低侵襲性の術式を採用しており、この低侵襲性の術式は、壁を完全な状態に保全したまま、癌性の組織または異常な組織(例えばポリープ)を除去する。
【0003】
EMRは、一般に、内視鏡を用いて実施される。内視鏡は、照明ライト、ビデオカメラおよびその他の器具を任意で備える、細長い、長尺状のガイド部材である。当業者は、本明細書において使用される用語「内視鏡」は、代表的な例示の目的でのみ使用されたものであり、本開示の原理とともに任意の適切な導入用シースを使用してもよいことを認識するだろう。EMRの際に、内視鏡は、咽喉を下降しながら通過するか、あるいは、直腸を通って罹患臓器内のポリープなどの異常に到達するように誘導されてもよい。内視鏡の先端部は、例えば、小型のワイヤループまたはバンドを搬送するキャップをさらに備え、ポリープまたは任意のその他の望ましくない組織の方へと誘導される。一旦そこで、内視鏡内の内腔を通して吸引を行って、または内視鏡から延在する何らかの他の後退器具を後退させて、望ましくない組織を内視鏡キャップの方へと引き込んでもよい。望ましくない組織がキャップの内部へと十分に引き込まれると、望ましくない組織を取り囲むようにしてワイヤループまたはバンドを閉じて、臓器壁から組織を切除または紐縛することができる。続いて、切り取られた組織は、検査、生検または廃棄処分のために、例えばバキュームによって抽出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有茎性ポリープなどの、ある種のポリープは、粘膜の層に茎が付着していることを特徴とする。他の組織を引き込まずに、そのようなポリープをキャップの内部へと引き込むことは、難なく可能である。しかしながら、無茎性ポリープなどの、別のある種のポリープは、底面が広く、粘膜表面にぴったりとついて横たわっており、茎が欠けている場合が多い。筋性の層の一部を引き込まずに、これらのポリープを把持するのは困難な場合がある。従来のEMRキャップでは、罹患区域に近接する装置または器具を導入するための軸方向チャネルが含まれる。ポリープまたは病変は臓器壁上に存在するので、軸方向に延在する装置を用いてそのような切除対象物を難なく把持するのは困難である場合が多い。
【0005】
したがって、臓器周辺の組織または筋肉層を損傷せずに、有茎性ポリープでも無茎性ポリープでも、その把持および/または切除を補助する、改良された内視鏡的粘膜切除具が必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態は、低侵襲性の外科的方法および用具を使用して、患者の身体から望ましくない塊を切除するための医療用装置に関する。
本開示の一態様によれば、医療用装置は、基端部と、先端部と、基端部および先端部の間に延在する第1の内腔および第2の内腔と、を有する、長尺状の管状部材を含んでもよい。第1の長尺状のアームは、第3の内腔を含んでもよいし、第1の内腔から先端に向けて延在してもよい。第2の長尺状のアームは、第4の内腔を含んでもよいし、第2の内腔から先端に向けて延在してもよい。切断要素は、第1のアームの第3の内腔から、第2のアームの第4の内腔まで延在してもよいし、第3の内腔および第4の内腔のうちの少なくとも1つにおいて、摺動可能に配置されてもよい。
【0007】
様々な実施形態においては、医療用装置は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含んでもよい。すなわち、医療用装置は、導入用シースをさらに備えてもよい。切断要素は、管状部材の基端部から先端部まで延在してもよい。切断要素は、焼灼ワイヤであってもよい。第1のアームおよび第2のアームの内腔のうちの少なくとも1つに対して切断ワイヤを移動させるための機構。機構は、第1の長尺状のアームおよび第2の長尺状のアームの間に配置された部分が、第1のアームおよび第2のアームのうちの1つの内部へと前進するように、切断ワイヤを移動させるように構成されてもよい。機構は、プーリを含んでもよい。機構は、エネルギー源に結合するように構成されてもよい。エネルギー源は、電気エネルギー源であってもよい。第1のアームおよび第2のアームは、折り畳み形状と拡張形状との間を移行するように構成されてもよい。アームは、長尺状の部材に対して移動可能であってもよい。長尺状の管状部材は、第1の平面内に延在してもよいし、アームの端部は、第1の平面から間隔を置いて配置された第2の平面内に配置されてもよい。第1の長尺状アームおよび第2の長尺状のアームのうちの少なくとも1つは、折り畳み形状から拡張形状まで移行するように構成されてもよい。
【0008】
本発明の別の態様によれば、医療用装置は、基端部と、先端部と、を有する、長尺状の管状部材を含んでもよい。複数の可撓性アームが、先端部から先端に向けて延在しており、可撓性アームのそれぞれは、自身を貫通する内腔を画定し、複数の可撓性アームのそれぞれは、第1の形状と第2の形状との間を移行するように構成される。医療用装置は、複数の可撓性アームのうちの1つから複数の可撓性アームのうちの別の1つまで延在する切断ワイヤさらに含んでもよいし、切断ワイヤは、可撓性アームのうちの少なくとも1つの内腔内部において、摺動可能に配置されてもよい。
【0009】
様々な実施形態においては、医療用装置は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含んでもよい。すなわち、切断ワイヤは、焼灼ワイヤであってもよい。第1の形状は、折り畳み形状であってもよいし、第2の形状は、拡張形状であってもよい。可撓性アームのうちの少なくとも1つに対して切断ワイヤを摺動させるための機構。アームの一部分は、放射線不透過性のマーカを含んでもよい。ワイヤは、凸状部、凹状部および鋸歯状部のうちの1つを含んでもよい。ワイヤは、刃先を含んでもよい。
【0010】
本開示の代替の態様によれば、組織操作のための方法は、身体内腔の内部に医療用装置を挿入するステップを含んでもよい。医療用装置は、基端部と、先端部と、基端部および先端部の間に延在する第1の内腔および第2の内腔と、を有する、長尺状の管状部材を含んでもよい。第1の長尺状のアームは、第3の内腔を含んでもよいし、第1の内腔から先端部に向けて延在してもよい。第2の長尺状のアームは、第4の内腔を含んでもよいし、第2の内腔から先端部に向けて延在してもよい。切断要素は、第1のアームの第3の内腔から、第2のアームの第4の内腔まで延在してもよいし、第3の内腔および第4の内腔のうちの少なくとも1つにおいて、摺動可能に配置されてもよい。方法は、切断要素の一部分が標的組織と接触するように、長尺状の部材を標的組織に向けて前進させるステップと、標的組織を切除するステップと、切断要素の第2の部分が組織と接触する位置にあるように、第3の内腔および第4の内腔のうちの1つの内部へと切断要素の一部分を移動させるステップと、をさらに含んでもよい。
【0011】
様々な実施形態においては、第1のアームおよび第2のアームは、折り畳み形状と拡張形状との間を移行するように構成されてもよい。
特許請求の範囲に記載した本開示のさらなる目的および利点は、以下の説明に部分的に記載され、説明から部分的に明白となるか、または本開示を実践することにより習得することができる。本開示の目的および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘された要素および組み合わせにより実現、かつ達成することができる。
【0012】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、両方とも単に例示的および説明的なものであり、特許請求の範囲に記載した本開示を制限するものではないことを理解されたい。
【0013】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本開示の実施形態を図示しており、記述とともに、開示された実施形態の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態による切断具の斜視図である。
図1A】本開示の一実施形態による切断具の斜視図である。
図2図1の切断具とともに使用する、導入用シースの基端部分の斜視図である。
図3図1に示される切断具のシースの斜視図である。
図4A図1に示される代表的な切断具のアームの斜視図である。
図4B図1に示される代表的な切断具のアームの斜視図である。
図5図1に示される代表的な切断具の切断ワイヤの斜視図である。
図6図5の切断ワイヤを前進または後退させるための機構の斜視図である。
図7図6の機構の補足図である。
図8図1の実施形態に対して実施される代表的な処置を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで本開示の実施形態を詳細に参照し、それらの例を添付図面に図示する。同一または同様の部分を指すのに、可能な限り全図面を通じて同一の参照符号を用いるものとする。
【0016】
概要
本開示は、組織切開方法、特に、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)または内視鏡的粘膜切除術(EMR)を改良するための装置に関する。この装置は、シャフトおよびシャフトの先端部から外側に向けて延在する2つのアームを有するY字形の構造を含んでもよい。2つのアームは、Y字形を画定するようにあらかじめ形成されてもよい。例えば、アームは、それらの長さに沿った任意の地点において任意の適切な角度で配置されてもよいが、特にアームの先端部分において配置される。ワイヤを、シャフトを通ってあらかじめ形成されたアームのうちの1つの先端部まで、2つのアームの先端部の間の空隙を横切って、もう1つのアームを降下してシャフトの中へ戻るように走らせてもよい。いくつかの実施形態においては、ワイヤを、電気メス切除用に適合させてもよい。また、アームは、アーム同士が電気接触しないように取り付けられる。焼灼ワイヤを使用しない実施形態においては、ワイヤは、組織を切断するように構成されてもよい。ワイヤ移動機構、例えば、プーリを内視鏡の基端部分に配置させて、追加のワイヤ切断面を露出させながら、ワイヤの使用された部分を引き出してシャフトの中へ戻すようにしてもよい。いくつかの実施形態においては、ワイヤの移動は、組織切除の補助となり得る。
【0017】
用語「ESD」が示唆するように、本開示の実施形態は、内視鏡とともに使用される場合が多い。本明細書においては、用語「内視鏡」は、外科手術、治療または診断のために、いくつかの医療用装置のうちの任意のものを患者の身体内部の場所へ搬送することができる長尺状の部材を有する、装置の一群のうちの任意のものを意味するために使用される。そのような装置の例としては、結腸内視鏡、上部内視鏡、気管支鏡、胸腔鏡、腹腔鏡、尿管鏡、胆道鏡、十二指腸鏡、子宮鏡または現在既知のまたは今後開発される同様の装置がある。そのような装置は、任意の適切な導入用シースまたは同様の装置を含んでもまたよい。また、本明細書において使用されている用語「先端」は、装置の端または装置の操作者から最も遠隔の方向を意味する。これに対して、用語「基端」は、操作者に最も近傍の端を意味する。
【0018】
本開示の実施形態は、病変、腫瘍またはそれ以外の望ましくない組織の切除、あるいは結腸内視鏡、上部内視鏡または気管支鏡などの処置中の生検用組織採取を含む、様々な診断処置または治療処置において使用することができる。本開示の代表的な実施形態は、内視鏡に関して記述しているが、本開示の態様は、幅広い用途を有してもよいことが認識されるだろう。このため、本開示の切除装置は、組織の切除または切開が望まれる場合には、他の医療用装置とともに使用することが適切な場合もある。したがって、以下の説明および図面は、事実上具体例を示すものであり、特許請求の範囲に記載した本開示の範囲を限定しないと考えるべきである。
【0019】
代表的な実施形態
図1は、切除システム100の1つの実施形態の斜視図を提供する。システム100は、切開部または身体に自然に存在する開口部を通して腔内および/または経管手術を実施するための、内視鏡またはガイド装置102などの低侵襲性外科システムを通じて配置されてもよい。システム100は、カテーテル108の先端部110から延在する、複数のアーム104A、104Bを有する、フレーム104を含む。図示された実施形態は、2つのアーム104A、104Bを示しているが、通常の当業者であれば、任意の適切な数のアームが提供されてもよいことを認識するだろう。
【0020】
アーム104A、104Bは、相対的に直線形のベース部分105A、105Bおよびあらかじめ定められた角度をもつ部分107A、107Bを含む。部分107A、107Bは、例えば、Y字形フレーム104などの形をもつフレームを形成するように角度をもって分岐してもよい。図示されるように、部分107A、107Bは、ほぼ同じ角度で部分105Aおよび105Bから分岐してもよい。いくつかの実施形態においては、部分107A、107Bは、非対称形のY字形フレーム104を形成するように、異なる角度で分岐してもよい。示されるように、それぞれのアーム104A、104Bは、複数の湾曲部から形成されてもよい。いくつかの実施形態においては、先端部分111A、111Bは、フレーム104の残部に対して略垂直な平面に位置してもよい。全体として、先端部111A、111Bは、部分107A、107Bおよび105A、105Bの残りの部分に対して角度をもって湾曲している。それぞれの屈曲の角度および方向は、使用目的および用途に基づいて選択的に変更されることを理解されたい。例えば、標的組織が小さい場合には、分岐角度αが鋭角となるように、アーム104A、104Bの先端部は、カテーテル108から部分的に延出させてもよい。あるいは、この代わりに、標的区域が大きい場合には、アームは鈍角αを形成してもよい。上述のニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、タンタルなどの超弾性材料は、この要件に特に適している。超弾性材料は、個々の用途の所望に応じて単線および編組線いずれの形式でも、当技術分野で利用可能である。
【0021】
さらに、アーム104A、104Bのそれぞれは、ワイヤまたは同様の切断装置の通過を可能にする中空構造を含んでもよい。ワイヤ106は、アーム104Aおよび104Bの先端側の開口部を貫通する2つの端部を有し、かつ、アームの長さに沿って内視鏡102まで延在する、切断具の機能を果たしてもよい。あるいは、この代わりに、ワイヤは、電気メスワイヤであってもよいし、エネルギーを伝導してもよい。
【0022】
切除システム100は、内視鏡102内部に配置されてもよい。見て取れるように、また一般に当技術分野において知られているように、内視鏡は、いくつかの作業チャネル112を含む場合が多い。ここで、カテーテル108を、フレーム104が作業チャネル112の外側に残るように、作業チャネル112内に配置してもよい。以下の段落は、システム100の様々な構成部品について詳細に説明する。
【0023】
いくつかの実施形態においては、フレーム104は、拡張可能であってもよい。フレームは、カテーテル108の内部に配置されてもよい。カテーテル108は、チャネル112の内部にさらに配置される。適切に配置されると、カテーテル108は、チャネル112から先端に向けて進出してもよい。また、フレーム104は、カテーテル108の内腔から進出して、あらかじめ形成された形に拡張してもよい。フレーム104は、既知の拡張機構を使用して拡張してもよい。フレーム104は、ニチノールなどの弾性材料から作られてもよい。あるいは、フレーム104は、拡張機構を始動させることにより拡張してもよい。適切な拡張機構には、例えば、スプリング、膨張バルーン、引き紐などが含まれ得る。
【0024】
フレーム104の個々の形状によって、カテーテル108の先端チップと切断ワイヤ106との間の間隔の距離、方向および特性が決まることが容易に認められる。切断ワイヤ106の有効長さは、角度をもつ部分104A、104Bが形成する角度によって、相対的に長くも短くもできる。システム100は、チップ部111A、111Bの長さおよび角度によって、内視鏡の軸から横方向に遠隔または近接した距離で動作を実施することができる。また、カテーテル108の先端チップからの有効作動距離は、フレーム104の端から端までの長さに左右される。当業者は、開示された医療用装置を、個々の解剖学的環境、作業内容およびシナリオに適応させるために、これらのおよびその他の選択を実践することができる。
【0025】
いくつかの実施形態においては、アーム104A、104Bは、カテーテル108のない内視鏡またはガイド装置102の先端部から延在してもよい。例えば、図1Aに示されるように、アーム104A、104Bは、単一のチャネル112から延在してもよいし、あるいは、複数の別個のチャネル112から延在してもよい。これらの実施形態およびその他の実施形態においては、アーム104A、104Bは、それらが別々に始動可能であり、かつ、互いに対して長手方向に移動可能なように、1つまたは複数のチャネルを通って延在する別個の要素であってもよい。そのような実施形態においては、アーム104A、104Bは、互いに接触してもよいし、接触しなくてもよい。あるいは、この代わりに、アーム104A、104Bは、あらかじめ定められた角度をもつ部分107A、107Bに対して基端側のすべての部分または一部分に沿って互いに接続されてもよいし、あるいは、内視鏡またはガイド装置102の先端部に対して基端側の位置において、例えば単一の内腔に合流してもよい。そのような実施形態においては、アーム104A、104Bは、一緒に同時に押し出され、一体に長手方向に移動してもよい。
【0026】
図2は、内視鏡102の先端部分の斜視図を提供する。長尺状の部材202の先端部206は、旋回運動してもよい。旋回運動によって先端部206は、全方向に操縦可能となる。さらに、先端部206は、長手方向軸のまわりを回転可能であってもよい。また、チャネル112は、洗浄、吸引または注入のために使用されてもよい。先端部206は、拡張可能な部材(例えばバルーン)などの保持部材(図示せず)、所望位置で先端部を保持するための、尖叉または棘を有してもよい。いくつかの実施形態においては、保持部材は、選択的に始動させてもよい。
【0027】
長尺状の部材202の外表面は、任意の適切な塗膜および/または被覆を含んでもよい。例えば、長尺状の部材202の外表面は、身体内腔を通して長尺状の部材202の挿入または外科的挿入を容易にするために、潤滑性材料からなる層を含んでもよい。上述のように、長尺状の部材202は、少なくとも1つの長尺状の用具またはビューイング装置などを手術部位に誘導するように適合させた、1つまたは複数のチャネル112を画定してもよい。長尺状の部材202の内部のチャネルの表面は、任意の適切な塗膜または被覆を含んでもまたよい。さらに、長尺状の部材202の内部のチャネルの一部分は、体液および/または材料が、長尺状の部材202を通って流れるのを阻止または防止するために、1つまたは複数の適切なシール機構(図示せず)を含んでもよい。同様に、シール機構を、長尺状の部材202を通して不必要な材料が挿入されるのを防止するのに役立ててもよい。1つの実施形態においては、適切なシール機構は、拡張可能な開口部を有する弾性バリアを含んでもよい。
【0028】
図2にさらに示されるように、長尺状の部材202は、1つまたは複数のチャネル112を含んでもよい。チャネルは、任意の適切な用具、あるいは用具の組み合わせまたは用具一式を収容するようにサイズが決められ、かつ、構成されてもよい。例えば、照明装置およびカメラを収容するために提供される相対的に小型のチャネルとともに、鉗子またはスネア装置などの器具用に、相対的に大型のチャネルが提供されることもあり得る。当業者であれば、この点に関する様々な可能性を認識している。さらに、長尺状の部材202は、患者の身体内部における照明および/または画像化に適した部品などの構成部品であらかじめ組み立てられてもよい。
【0029】
図1に示される実施形態では、長尺状の部材202は、チャネル112を通って延在するカテーテル108を収容する。カテーテル108の実施形態は、図3に示される。カテーテルは、個々の作業を遂行するように設計された、いくつかの形状に形成され、カテーテル108は、特に、本明細書に開示される切断具を搬送することができるようになっている。具体的には、開示される切断具は、電気を伝導してもよいので、カテーテルは、電気的な短絡が確実に生じないようにするために、別々に形成された内腔を提供するように構成されてもよい。さらに、カテーテル材料は、内視鏡をあらゆる漏電電流から保護する絶縁体であってもよい。代表的なカテーテル物質には、ポリエチレンまたはナイロンなどのポリマーが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、カテーテル108は、全体として、端から端まで延在する1つまたは複数の内腔、例えば2つの内腔304A、304Bなどを有する長尺状のチューブ302として形成されてもよい。カテーテル108は、体内通路を通って容易に進行するように適合された、可撓性材料から形成されてもよい。カテーテル108は、任意の部分に沿って編組またはコイリングなどによる補強をさらに備えてもよい。カテーテル108は、例えば、より可撓性の高い材料を備える、1つまたは複数の、可撓性の異なる部分を含んでもよい。カテーテル108の先端部110は、旋回運動してもよい。旋回運動によって先端部110は、全方向に操縦可能となる。さらに、先端部110は、長手方向軸のまわりを回転可能であってもよい。
【0030】
ここで、内腔304A、304Bは、アーム104A、104Bに対する精密な公差の嵌合を提供するようにサイズを決定することができる。あるいは、この代わりに、アーム104A、104Bを、内腔304A、304Bに対する良好な嵌合または精密な交差の嵌合を提供するように設計することができる。そのようにサイズ決定することで、用具が堅固に保持されるだけでなく、体液および材料のあらゆる進入を防ぐシールも得られる。いくつかの実施形態においては、内腔のサイズ決定は、選択的に制御されてもよい。例えば、拡張してアーム104A、104Bのまわりにシールを生成する拡張可能な部材(図示せず)が、内腔304A、304Bの開口部に配置されてもよい。
【0031】
さらに、カテーテル108の外表面は、任意の適切な塗膜、被覆および/または表面構造を含んでもよい。例えば、カテーテル108の外表面は、長尺状の部材202または身体内腔を通してカテーテル108の挿入を容易にするために、潤滑性材料からなる層を含んでもよい。カテーテル108の外表面は、内視鏡の内腔内または身体内腔内での移動を容易にするために、畝または溝などの表面構造をさらに備えてもよい。
【0032】
図4Aおよび図4Bは、アーム104A、104Bの斜視図である。これらのアームは、それぞれ基端部402A、402Bおよび先端部404A、404Bを有する。図1に示されるように、動作時は、アーム104Aおよび104Bは、カテーテル108の先端部内から延在し、それらは上述のように、カテーテルに取り付けられる。アーム104A、104Bは、任意の適切な材料から作られてもよい。任意の適切な材料には、ニチノール、ePTFE、ファブリック、および適切な形状記憶材料または超弾性材料が含まれるが、これらに限定されない。選択された材料は、生体組織または生体系と適合性がなければならない。有毒でも有害でもなく、かつ、免疫反応も拒絶反応も引き起こしてはならない。アーム104A、104Bは、前述した角度をもつ形状にあらかじめ形成されてもよい。
【0033】
アーム104A、104Bは、圧縮形状と展開形状との間を移行するように構成される。例えば、内視鏡を患者の身体内腔または体腔に挿入する動作の一部を行う際に、カテーテル108は、内視鏡102の先端部の中に引き入れられ、その形状においてアーム104A、104Bは、カテーテル108の内部に嵌合するように圧縮される。したがって、アーム104A、104Bは、長時間にわたる屈曲に耐え、その後、カテーテル108から進出すると、あらかじめ形成された角度をもつ形状に回復するのに十分な程度に弾性的でなければならない。アーム104A、104Bが、一部分のみシースから拡張する場合には、それらは一部分が屈曲した状態になってもよい。そのような状態は、特定の作業または解剖には望ましい場合がある。
【0034】
いくつかの実施形態においては、アーム104A、104Bを選択的に拡張させて、所望の形状を形成してもよい。アーム104Aまたは104Bが、それぞれカテーテル108から分岐する角度は、所望に応じて変更することができる。上述のニチノールなどの超弾性材料または弾性材料は、この要件に特に適している。超弾性材料または弾性材料は、個々の用途の所望に応じて単線および編組線いずれの形式でも、当技術分野で利用可能である。
【0035】
さらに、患者の身体内で正確に位置決めをするために、放射線不透過性または超音波反射性の目印(図示せず)を、アーム104A、104Bの外面に追加して、位置アームの先端チップ111A、111Bを検知および追跡し易くしてもよい。
【0036】
さらに、一実施形態においては、アーム104A、104Bは、互いに移動可能に連結された別個の区分からなってもよい。それぞれの区分は、アーム104A、104Bに可撓性をもたせながら、隣接する区分に対して移動してもよい。アーム104A、104Bは、例えば、可撓性の異なる材料を利用することによって、あるいは、所望の区分の壁厚および/または断面形状を変化させることによって左右される、アーム自身の長さに沿って変わり得る剛性をさらに備えてもよい。
【0037】
図5は、切断ワイヤ106の斜視図である。1つの実施形態においては、切断ワイヤ106は、組織を切断することが可能な、任意の適切なワイヤ形式であってもよい。例えば、切断ワイヤ106は、鋭く研いだ外縁を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、切断ワイヤ106は、任意の断面形状を有してもよい。任意の断面形状には、正方形、平形、矩形、円形、半円形、三角形などが含まれるが、これらに限定されない。さらに、切断ワイヤ106の断面形状は、ワイヤ自身の長さに沿って変化させてもよい。別の実施形態においては、切断ワイヤ106は、電気焼灼処置用に構成されてもよい。すなわち、電気を伝導してもよい。電気焼灼は、金属製プローブまたはワイヤを通して通電することによって生じた熱を使用して、組織を破壊するプロセスである。その処置は、小血管からの出血の止血、あるいは、軟繊維の切断のために使用してもよい。ここでは、切断ワイヤ106は、電気メスに必要な熱を生成するのに十分な電流を流すようになっている。さらに、ワイヤは、「熱スポット」を発生せず、かつ、破損せずに、熱サイクルの繰り返しに耐え得るものでなければならない。いくつかの実施形態においては、切断ワイヤ106は、任意の一部分あるいは任意の複数の部分に沿って絶縁体を含んでもよい。あるいは、この代わりに、切断ワイヤ106は、焦点が当てられた区域にエネルギーを伝送するための突起などの、構造的特徴を有してもよい。切断ワイヤ106は、単線の材料または編組線の材料として形成された、単撚ワイヤであってもよい。切断ワイヤおよびその実施形態は、電気エネルギーを用いて実演されたが、その他のエネルギー源を利用してもよいことは、当業者には明らかであろう。例えば、無線周波数、レーザまたは超音波などである。さらに、切断ワイヤ106は、伝送されたエネルギーを集中させるための構造的特徴を含んでもよい。これらの構造的特徴には、例えば、突起や焦点などがある。
【0038】
別の実施形態においては、ワイヤ106は、実質的には、その表面に1つまたは複数の穴(図示せず)が配置された、中空ワイヤであってもよい。この構成によって、切断プロセスの際の洗浄、投薬、潤滑などの追加機能が促進されてもよい。ワイヤは、棘、鋸歯または刃などの、研磨性塗膜または研磨性突出部を備えてもまたよい。ただし、そのような凸状部は、ワイヤが用具を通って移動できるように、サイズを決定しなければならない。いくつかの実施形態においては、切断ワイヤ106の端部は、刃のように鋭く研いでもよい。あるいは、この代わりに、切断ワイヤ106は、鋸歯状部、突起またはV字形の刻み目を含んでもよい。適切な切断材料の一般的な特徴は、当技術分野において知られている。当業者の知識であれば、切断ワイヤ106に適した材料を選択するのに十分であろう。1つの実施形態においては、ワイヤは、例えば、ステンレス鋼から作られてもよい。
【0039】
当技術分野において知られている切断ワイヤ装置は、一般に、切断ワイヤの定期的な交換が必要である。未使用の切断面を用いるのが望ましい場合が多いことに加え、切断ワイヤが、切り取られた組織の残存物で汚れる可能性もあるからである。あるいは、この代わりに、電気焼灼が可能な切断ワイヤの場合には、切断ワイヤは、焦げた組織で汚染される可能性があり、それが切断処置の妨げとなる可能性がある。本開示は、切断ワイヤ106の切断部分が、迅速、かつ、好都合に補給され得る構造を提示する。
【0040】
図6に見られるように、切断ワイヤ106には、プーリ602または巻き取りリールなどの回転手段が係合してもよい。プーリ602は、カテーテル108または内視鏡に沿った任意の有用な地点に配置されてもよいが、通常、基端部に配置される。プーリ機構602は、1つまたは複数の切断ワイヤ106の巻き付けを受けるように適合させた、凹み部分604をさらに含んでもよい。例えば、プーリ機構は、切断ワイヤの2つのスプールを含んでもよい。1つは未使用のスプールであり、1つは使用されたスプールである。取り付け金具は同様に、当技術分野において知られている、プーリ602のような装置を回転可能に、かつ、安定的に搬送するための材料および部品の中から選択することができる。同様に、プーリ602は、所望の強度および摩擦性を兼ね備えた、多種多様な適切な材料のうちの任意の材料から作られてもよい。明らかなはずだが、プーリ602の部分は、プーリ602の組成中、または塗膜としてのいずれかにおいて電気絶縁性材料を含んでもよい。あるいは、この代りに、切断ワイヤ106に接触しているプーリ602の部分は、それが焼灼切断のための経路の役割を果たす場合には、導電性であってもよい。例えば、図6では、プーリ602は、バナナプラグに接続される。始動ノブは、絶縁性であってもよい。
【0041】
図6は、切断ワイヤ106を循環させるための回転手段の斜視図を示す。プーリ602などの回転可能な要素600は、一方のワイヤ架設アーム104Aからもう一方のワイヤ架設アーム104Bの方へ切断ワイヤ106を張り渡してもよい。切断ワイヤ106が、組織を切断または焼灼するのにともなって、例えば焦げた組織などの組織残存物が、切断ワイヤ106に付着することで、その後の切断または焼灼に支障をきたす可能性がある。これを防ぐために、プーリ602を使用して、切断ワイヤ106の未使用の部分を、後で切断処置の際に使用できるように、切断ワイヤ106を循環させてもよい。これにより、切断ワイヤ106を、交換したり、清浄にしたりするために切断具を引き出す必要がなくなる。あるいは、この代わりに、切断ワイヤ106のスプールを、カテーテル108および/または内視鏡の基端部において存在させることで、外科手術処置のための未使用の切断ワイヤ106を提供してもよい。いくつかの実施形態においては、プーリ機構602は、切断ワイヤの2つのスプールを含んでもよい。例えば、第1のスプールは、組織を切断するためにすでに使用されたワイヤを回収したり、保持したりするために使用されてもよい。また、第2のスプールは、使用されないワイヤを保持してもよい。いくつかの実施形態においては、切断ワイヤ106が焼灼具である場合には、プーリ602の下端部は、電気的な接続を容易にするためのプラグを含んでもよい。代替の実施形態においては、電気コネクタまたはアダプタは、カテーテル106の基端部に取り付けられてもよい。また、導線は、アダプタをプーリ602に接続してもよい。
【0042】
図7は、循環する切断ワイヤ106を形成するためにプーリ602の使用を図示する。図に見られるように、ワイヤは、スプールまたはその他の適切な出所(図示せず)から、カテーテル108のチャネル304A、304Bのうちの1つを通って、アーム104の中のワイヤ通路の中へと延在する。アーム104A、104Bの先端チップ間を横断して、ワイヤは、反対側のワイヤ通路に入り、カテーテル108を通って戻る。内視鏡102の基端部では、プーリ602は、切断ワイヤ106を係合するのに好都合な場所に取り付けられてもよい。切断ワイヤ106は、プーリのまわりを1回または複数回巻き付けられる。内視鏡102それ自体は、わかりやすくするために、この図から省略されている。ノブ704は、操作者が操作するのに好都合な場所で、プーリ602に固定される。ノブが回ると、プーリが回転して、切断ワイヤ106は、スプールから装置を通ってプーリ上へと引き出される。このようにして、まったく新たなワイヤ区分が露出され、後で使用してもよい。いくつかの実施形態においては、使用されないワイヤの第2のスプールは、プーリ602と一体化されていない。第2のスプールは、カテーテル108に沿った任意の有用な位置に配置されてもよいが、通常、基端部に配置される。いくつかの実施形態においては、プーリ602は、切断ワイヤ106の両端部を含んでもよい。動作の際に、ノブ704の回転によって、ワイヤの新たな部分が前進するとともに、ワイヤの使用済みの部分が組織相互作用部位において後退する。
【0043】
カテーテル108およびアーム104A、104Bは、一体化されていてもよい。すなわち実質的にアーム104A、104Bは、カテーテル108を形成し、別個のカテーテル108は必要ではない。この実施形態においては、医療用装置は、アームおよびそれらの内腔だけを含む。
【0044】
切断ワイヤを循環するように適合させた、いくつかの代替の構造は、当業者には明白であろう。プーリを手動で回転させるための手段は、例えば、ノブ704によって提供されるが、モータおよびコントローラに置き換えることもできよう。あるいは、切断ワイヤ106が一度にどのくらい前進するのかを、正確に測定するモニタ装置も、同様に追加することができよう。これらの変形形態および他の変形形態は、本開示の範囲内において作成することができる。
【0045】
図8は、例えば病変802のような、望ましくない組織に作用するシステムの斜視図を示す。ここでも、内視鏡102は、わかりやすくするために省略される。図示されたシナリオでは、臨床医は、内視鏡102を、患者の身体、例えば胃腸管などを通して、組織の除去が必要な部位へ到達させる。ここでは、病変802が描かれているが、開示された装置を、ポリープ切除または生検などの組織除去を含む、切断動作のために使用できることは当業者には理解されよう。この切断動作では、組織が切り取られ、次いで分析のために回収される。それぞれの処置では、内視鏡102の先端部を病変802に近接させ、次いで、カテーテル108を、病変付近まで先端に向けて延出させる。最後に、アーム104A、104Bを延出させて、切断ワイヤ106が病変802と接触するようにする。切断ワイヤ106は、焼灼処置を実施するように構成されてもよい。
【0046】
一旦接触すると、切断プロセスは、従来の手法を使用して進行することができる。切断後、臨床医は、追加処置の実施を望む場合がある。例えば、焼灼が必要となる多数のポリープあるいは出血している血管が存在する可能性がある。その場合、操作者は、回転ノブ704を使用して所望の量だけ切断ワイヤ106をアーム104A、104Bの内部で前進させてもよい。ワイヤの移動により、焦げた組織によって汚れていない、未使用のワイヤが供給されるので、臨床医は、さらなる処置を進行することができる。
【0047】
本開示は、幅広い実施形態に適しており、また同様に、幅広い用途に適していることは、当業者には明白であろう。組織切除に対する制約は、切断器具から組織の残存物を取り除くことができない点、すなわちここで取り組んだ問題であった。したがって、本開示の実施形態は、従来の組織切除から、より複雑化された処置に至るまで、いくつかの分野において使用され得ることは合理的に予測可能であろう。
【0048】
本開示のその他の実施形態は、本明細書に開示される仕様および実施方法を考慮すれば、当業者には明白であろう。仕様および実施例は、単なる例示と見なされることを意図するものであり、本開示の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図1A
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8