(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211596
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】トグル式人間工学的手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20171002BHJP
【FI】
A61B17/29
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-509018(P2015-509018)
(86)(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公表番号】特表2015-516224(P2015-516224A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】US2013036754
(87)【国際公開番号】WO2013162949
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】13/455,373
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595057890
【氏名又は名称】エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ハーバースティッチ・ウェルズ・ディー
【審査官】
近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0158233(US,A1)
【文献】
特開平10−151137(JP,A)
【文献】
特表平09−504963(JP,A)
【文献】
特開平10−127651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間工学的外科器具であって、
外側表面を有するシュラウドと、
前記シュラウドに旋回可能に接続された第1トリガと、
前記シュラウドに旋回可能に接続された第2トリガと、
前記シュラウド内に位置づけられたリンクと、
エンドエフェクタに運動を伝達することができる、前記リンクと連通するシャフトと、
前記シュラウドの外側表面上に、実質的に互いに対向するように配設された第1トグルスイッチ及び第2トグルスイッチであって、軸を画定する、第1トグルスイッチ及び第2トグルスイッチと、
前記第1トグルスイッチ及び前記第2トグルスイッチと機械的に連通して前記軸に沿って前記リンクの内部に摺動可能に配設されたピンであって、前記第1トリガ又は前記第2トリガと選択的に係合可能な、ピンと、
を含む、外科器具。
【請求項2】
第1のトグル位置を更に含み、この位置で、前記第1トグルスイッチは前記第2トリガと係合し、前記第2トリガを前記シュラウドに対して固定し、前記ピンを移動して前記第1トリガと係合させ、前記第1トリガが前記リンクを動かすことを可能にする、請求項1に記載の人間工学的外科器具。
【請求項3】
第2のトグル位置を更に含み、この位置で、前記第2トグルスイッチは前記第1トリガと係合し、前記第1トリガを前記シュラウドに対して固定し、前記ピンを移動して前記第2トリガと係合させ、前記第2トリガが前記リンクを動かすことを可能にする、請求項2に記載の人間工学的外科器具。
【請求項4】
前記シャフトの遠位端に配設されたエンドエフェクタを更に含み、前記第1トリガの動きにより、前記シャフトに沿った長手方向の力を生成して前記エンドエフェクタを動かす、請求項2に記載の人間工学的外科器具。
【請求項5】
前記シャフトの遠位端に配設されたエンドエフェクタを更に含み、前記第2トリガの動きにより、前記シャフトに沿った長手方向の力を生成して前記エンドエフェクタを動かす、請求項3に記載の人間工学的外科器具。
【請求項6】
前記シャフトが、プッシュロッドを備えている、請求項1に記載の人間工学的外科器具。
【請求項7】
前記シャフトが、内視鏡手術での使用のために適応される、請求項1に記載の人間工学的外科器具。
【請求項8】
前記第1トグルスイッチが、前記シュラウドに対して所定の位置に前記第1トグルスイッチを選択的に固定するために戻り止めを備えている、請求項1に記載の人間工学的外科器具。
【請求項9】
前記エンドエフェクタが、はさみ型の構成で配設される、請求項4または5に記載の人間工学的外科器具。
【請求項10】
前記エンドエフェクタが、静止ジョー部材と、前記シャフトと機械的に連通する可動ジョー部材と、で構成されている、請求項4、5、9のいずれか1つに記載の人間工学的外科器具。
【請求項11】
外科器具であって、
遠位のエンドエフェクタと、
第1トリガ及び第2トリガを含み、前記トリガのそれぞれが前記エンドエフェクタに動作可能に接続可能である、近位のハンドルと、
第1位置及び第2位置を有するトグルであって、
(i)前記第1位置において、前記第1トリガは前記ハンドルに対してロックされており、前記第2トリガは前記エンドエフェクタを作動するために前記ハンドルに対して可動であり、かつ
(ii)前記第2位置において、前記第2トリガは前記ハンドルに対してロックされており、前記第1トリガは前記エンドエフェクタを作動するために前記ハンドルに対して可動である、
トグルと、
を含む、外科器具。
【請求項12】
前記エンドエフェクタと前記ハンドルとの間に延びる細長いシャフトを更に含む、請求項11に記載の外科器具。
【請求項13】
前記ハンドルとトリガとが、ピストルグリップ構成で配置されている、請求項12に記載の外科器具。
【請求項14】
前記ハンドルとトリガとが、はさみグリップ構成で配置されている、請求項12に記載の外科器具。
【請求項15】
前記ハンドルが、シュラウドを更に含む、請求項11に記載の外科器具。
【請求項16】
前記トグルが、第1トグルスイッチ及び第2トグルスイッチを含む、請求項15に記載の外科器具。
【請求項17】
前記第1トグルスイッチ及び前記第2トグルスイッチが、前記シュラウド上で互いにほぼ対向して配設され、軸を画定する、請求項16に記載の外科器具。
【請求項18】
前記第1トグルスイッチ及び前記第2トグルスイッチと機械的に連通して前記軸に沿って摺動可能に配設され、前記第1トリガ又は前記第2トリガと選択的に係合可能である、ピンを更に含む、請求項17に記載の外科器具。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、外科用装置及び手順に関する。外科手術は、広範な疾患、状態、及び傷害を処置及び治療するためにしばしば用いられる。手術ではしばしば、開放手術又は内視鏡手術によって内部組織にアクセスする必要がある。「内視鏡の」なる用語は、腹腔鏡手術、関節鏡手術、自然孔管腔内手術、及び自然孔経管腔手術などのあらゆる種類の低侵襲外科手術のことを指す。内視鏡手術には、従来の開腹外科手術と比べて多数の優位点がある。例えば、外傷が少ない、回復が速い、感染の危険性が少ない、及び傷痕が小さいなどである。内視鏡手術は、目的とする外科手術を行うのに適当な空間を与えるための、二酸化炭素又は生理食塩水などの、吹送流体が体腔内に存在する状態でしばしば行なわれる。吹送された体腔は一般に加圧された状態であり、しばしば気腹状態にあると言われる。気腹状態を維持しつつ、内部組織の外科的操作を容易にする目的で、外科用アクセス装置がしばしば用いられる。例えば、内視鏡手術器具を通過させるポートを与えるためにトロカールがしばしば用いられる。
【0002】
内視鏡外科器具は、一般に、剛性又は可撓性であり得る細長いシャフトに取り付けられたエンドエフェクタを備えており、そのシャフトは、ハンドルアセンブリに取り付けられている。内視鏡外科器具をトロカールに通し、ガス注入された空洞の外にシャフトの一部及びハンドルアセンブリを残したまま、ガス注入された空洞にエンドエフェクタ及びシャフトの一部を入れる。外科手術中、トロカールは支持ピンとしての役割を果たすことができ、その周りをシャフトが移動する。
【0003】
一部の内視鏡器具のハンドルアセンブリは器具のシャフトに横方向に向けられており、これは、ときとして、ピストルグリップと呼ばれる。一部の内視鏡器具は、シャフトと同じ平面に配置されたハンドルアセンブリを有するものであり、これは、ときとして、はさみグリップと呼ばれる。ピストルグリップ及びはさみグリップの外科器具は、多くの場合、同一平面上で作動のために構成されている2つのトリガを含む。この構成で、多くの場合、一方のハンドルを静止させた状態でもう一方のハンドルを動かして、エンドエフェクタを動かす。内視鏡外科器具は周知であるが、本発明による外科装置及び方法はこれまでに作製されておらず、使用もされていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、外科器具は、遠位のエンドエフェクタと近位のハンドルとを備えている。ハンドルは、第1及び第2のトリガを備えることができ、それぞれのトリガはエンドエフェクタに動作可能に接続することができる。トグルは第1位置と第2位置とを有する。第1位置において、第1トリガはハンドルに対してロックされており、第2トリガはエンドエフェクタを作動するためにハンドルに対して移動可能である。第2位置において、第2トリガはハンドルに対してロックされており、第1トリガはエンドエフェクタを作動するためにハンドルに対して移動可能である。外科器具は、エンドエフェクタとハンドルとの間に延びる細長いシャフトを更に備えることができる。ハンドルとトリガはピストルグリップ構成で配置することができる。ハンドルとトリガはまた、はさみグリップ構成でも配置することができる。
【0005】
ハンドルは、シュラウドを更に備えることができる。トグルは第1トグルスイッチ及び第2トグルスイッチを備えることができる。第1及び第2のトグルスイッチは、軸を画定するシュラウド上で互いにほぼ対向するように配置することができる。ピンは、その軸に沿って第1及び第2のトグルスイッチと機械的に連通して摺動可能に配置することができ、第1トリガ又は第2トリガと選択的に係合することができる。
【0006】
別の実施形態において、人間工学的外科器具は、シュラウドと、シュラウドに旋回可能に接続された第1トリガと、シュラウドに旋回可能に接続された第2トリガとを備える。エンドエフェクタに運動を伝達することができるリンクと連通するシャフトとともに、リンクをシュラウドの内部に位置づけることができる。第1トグルスイッチ及び第2トグルスイッチは、シュラウドの外側表面上で互いにほぼ対向して配置され、軸を画定する。ピンは、その軸に沿って第1及び第2のトグルスイッチと機械的に連通して、そのリンクの内部に摺動可能に配置することができ、第1トリガ又は第2トリガと選択的に係合することができる。
【0007】
この器具は、第1のトグル位置を更に含むことができ、この位置で、第1トグルスイッチは第2トリガと係合し、第2トリガをシュラウドに対して固定し、第1トリガがリンクを動かすことができるようにピンを移動して第1トリガと係合させる。この器具は、第2のトグル位置を更に含むことができ、この位置で、第2トグルスイッチは第1トリガと係合し、第1トリガをシュラウドに対して固定し、第2トリガがリンクを動かすことができるようにピンを移動して第2トリガと係合させる。
【0008】
この器具は、シャフトの遠位端に配置されたエンドエフェクタを備えることができる。第1トリガの動きにより、シャフトに沿って長手方向の力を生成してエンドエフェクタを動かすことができる。第2トリガの動きにより、シャフトに沿って長手方向の力を生成してエンドエフェクタを動かすことができる。第1トリガスイッチは、シュラウドに対して第1トグルスイッチを所定の位置に選択的に固定するために戻り止めを備えることができる。シャフトはプッシュロッドを備えることができる。シャフトは内視鏡手術に使用するように適応され得る。
【0009】
また別の実施形態において、人間工学的外科器具は、シュラウドと、シュラウドに旋回可能に接続された第1トリガと、シュラウドに旋回可能に接続された第2トリガとを備える。シュラウドの内部にリンクを位置づけることができる。シャフトは、リンクと連通するエンドエフェクタに運動を伝達することができる。第1又は第2のトリガのどちらかでシャフトと交互に係合するための手段が提供される。シャフトはプッシュロッドを備えることができる。エンドエフェクタははさみ型の構成で配設され得る。エンドエフェクタは、静止ジョー部材と、シャフトと機械的に連通する可動ジョー部材とで構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書は、本発明を詳細に指摘し、かつ明確に主張する「特許請求の範囲」をもって結論となすものであるが、以下の説明文を、本発明の幾つかの非限定的な例を示した添付の図面と併せ読むことで本発明のより深い理解がなされると考えられる。特に断らないかぎり、各図面は必ずしも正しい縮尺ではなく、発明の原理を説明することを目的として描かれたものである。
【
図1】デュアルアクションハンドルアセンブリを有する外科器具の等角図を示す。
【
図2】デュアルアクションハンドルアセンブリを有する外科器具の分解図を示す。
【
図3】ハンドルシャフトリンクアセンブリの半体の等角図である。
【
図7】ハンドルシャフトリンクアセンブリが半分取り除かれてプッシュロッドボールが見えている、親指トリガリンケージを示すハンドルアセンブリの部分断面図である。
【
図8】完全なハンドルシャフトリンクアセンブリ及び親指トリガリンケージを有するハンドルアセンブリの部分断面図である。
【
図9】ハンドルシャフトリンクアセンブリと係合しているフィンガートリガリンケージを示すハンドルアセンブリの部分断面図である。
【
図10】親指トリガがロックされており、フィンガートリガが第1位置にある、トグルリンケージアセンブリの断面図である。
【
図11】フィンガートリガが第2位置に移動されている
図10の断面図である。
【
図12】フィンガートリガがロックされており、親指トリガが第1位置にある、トグルリンケージアセンブリの断面図である。
【
図13】親指トリガが第2位置に移動されている
図12の断面図を示す。
【
図14】デュアルアクションハンドルアセンブリを有する外科器具の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示される装置及び方法は、外科器具に関するものであって、より具体的には、ハンドルを有する人間工学的な外科器具に関する。内視鏡手術中、通常、腹腔への進入を可能にするように腹壁にトロカールが挿入される。外科手術を行うために長いシャフトの器具をトロカールに通す場合がある。それらの長いシャフトの器具は、一般に、ピストルグリップかはさみグリップの形態のハンドルを有する。当該技術分野で周知でありかつ理解されているように、それらの器具は、把持器及び解剖器などの手動器具である場合があり、エンドエフェクタで電気又は機械的エネルギーを使用する場合がある。図を参照して人間工学的外科器具グリップの表現を詳細に説明するが、図中、同様の参照番号はいくつかの図のそれぞれにおいて同一の又は対応する要素を指す。
【0012】
限定ではなく説明及び例示を目的として、人間工学的外科器具ハンドルアセンブリの一表現の等角図が
図1に示されており、参照番号100によって指定されている。人間工学的外科器具の他の表現は、
図2〜14に示されており、本明細書で完全に説明される。
【0013】
図1を参照すると、人間工学的器具は、ハンドルシュラウド150に旋回可能に取り付けられた親指トリガ110を備えている。器具100には、更に、シュラウド150に旋回可能に取り付けられたフィンガートリガ120が提供されている。
図1に示すように、器具100は、細長い剛性のシャフト140を備えている。あるいは、可撓性の内視鏡(図示せず)での使用のための可撓性シャフトを器具100に提供してもよい。シャフト140は、切開外科手術に使用するように適応され得る。一表現において、器具100は、親指トリガロックトグルスイッチ130及びフィンガートリガロックスイッチ135を備えるトグル機構を含み、両方のスイッチはシュラウド150の外側表面に移動可能に取り付けられている。
【0014】
図1に示す器具100には、把持器エンドエフェクタ160が提供されている。器具100には、はさみ、把持器、解剖器が含まれる任意のジョー型式のエンドエフェクタを提供する場合があり、更に、器具100は、超音波エネルギー及びRFエネルギーを使用する場合があるものと企図される。エンドエフェクタ160は1つの静止ジョーと1つの可動ジョーとを有し得るものと企図される。
【0015】
ここで
図2を参照すると、器具100の代表的な実施形態が分解図に示されている。シャフト140は、外管140Aと、管140Aの内側に配置された内管140Bとを含む。プッシュロッド210は、管140Bの内側に配置され、一表現においては、剛性の構成体である。プッシュロッド210は、金属、プラスチック、又は、外科用途に適した任意の他の材料で構成され得る。外管140Aは、金属、プラスチック、又は外傷を与えない任意の他の材料で構成され得る。
【0016】
プッシュロッド210は、エンドエフェクタ160のはさみ動作を可能にするように、当該技術分野で周知でありかつ理解されているようにピン160Cを介してジョー部材160A及び160Bに旋回可能に接続される。シャフトアセンブリ140は、シャフト連結器の半体220Aと220Bとして示されているシャフト連結器220を介してシュラウド150に回転可能に接続される。シャフト連結器は、シュラウド150A及び150Bに回転可能に取り付けられており、シャフト140の回転を可能にするように回転ノブ270に固定取り付けされている。プッシュロッド210の近位端はピン250を介してスロット付きボール240に固定取り付けされる。
【0017】
スロット付きボール240は、リンク230と回転可能に接触している。
図2に示すように、リンク230は、ボール240を部分的に囲む2つの半体230Aと230Bを含み、ハンドル110又は120からプッシュロッド210への長手方向の力の伝達を可能にし、それによりエンドエフェクタ160を作動する。ピン250は、一表現においてリンク230とボール240を摺動可能に係合する。トグルスイッチ130及び135はピン250と係合して、ハンドルの動きの選択を可能にする。
【0018】
図3を参照すると、ハンドル−シャフトリンクアセンブリの半体230Aの等角図が示されている。図のように、リンク230Aは単体構造であるが、複数の構成要素でリンク230Aを構成することも企図される。リンク230Aは、輪320を介してリンク230Bと結合して、ボール240と長手方向の締まりばめを形成する。リンク230A及びリンク230Bは、ボール240を部分的に囲むように設計された内側の窪み315(リンク230Bは図示せず)を有する。窪み315は、リンク230Aと230Bとの間で囲まれているときにボール240が回転することを可能にするが、ボール240がリンク230A及び230Bに対して長手方向に動くことを防止するような大きさである。リンク230A及び230B(図示せず)は、遠位端に環状開口部310を有し、それを通じてピン250は横方向に動かすことができる。
【0019】
一表現において、
図4に示すスロット410をボール240に提供することができる。スロット410は、プッシュロッド210の遠位端が少なくとも部分的にボール240の中に入ることが可能な大きさであると企図される。ピン(図示せず)がボール240を通じて少なくとも部分的に入り、ボール240とプッシュロッド210との間に締まりばめを生成するようにプッシュロッド210の近位端に入ることを可能にする環状の開口部420がボール240に提供される。当該技術分野で周知のように、ボール240はプッシュロッド210の近位端上に成形されてもよく、あるいは、プッシュロッド210の一部として形成されてもよいものと企図される。ボール240は、リンク230内に嵌合し、エンドエフェクタ160の回転を可能にするようにリンク230内で回転する大きさである。
【0020】
ここで
図5を参照すると、フィンガートリガ120の等角図が示されている。図のように、フィンガートリガ120は、外科医の複数の指に対応するように適応された閉じたフィンガーリング510を備えている。別の表現において、フィンガートリガ120は、当該技術分野で周知のようなシェファーズフックである場合がある。フィンガーリング510の外側で外科医の指に対応するようにフィンガートリガ120にフィンガーフック520を提供することができる。一表現において、トリガ120は、トグルスイッチ130及びピン250と係合するように適応されたシュラウド係合輪530及び輪540を有するリンケージ525を含む。一表現において、輪530及び540は、L形に向けられるが、フィンガートリガ120を選択的に作動することができるように複数の幾何形状を採用することができるものと企図される。
【0021】
図6に示すように、親指トリガ110にはリンケージ260が提供される。一表現において、リンケージ260及び親指トリガ110は非一体構成である。親指トリガ110とリンケージ260とを単一片として形成することができると企図される。リンケージ260には、親指トリガ110との摩擦嵌合を生成するように適応され得る結合表面620が提供される。リンケージ260には、更に、円筒形突起630を介してシュラウド150Aと、及びレバーアームの輪640を介してピン250と回転可能に係合するように適応された遠位の突出したアーム610が提供される。一表現において、トリガ110は、シュラウド150Bと旋回可能に係合するように適応された第2のレバーアーム650を含む。
図6の表現において、第2のレバーアーム650には、シュラウド150Bの内側表面(図示せず)から突出しているピン又はボスと回転可能に係合するように適応された輪660が提供されている。
【0022】
ここで
図7を参照すると、ハンドルアセンブリの部分断面図は、ハンドル−シャフトリンク230Bアセンブリの半分が取り除かれてその内部に配置されているプッシュロッドボール240を示すように親指トリガリンケージ610が描かれている。遠位方向に移動されたプッシュロッド210が描かれている。この図で、輪640及び310は、それらをピン250が通過することができるように整列している。
図8は、リンク230Bがリンク230Aと係合してボール240を部分的に囲んでいる
図7の断面図を示す。この図で、窪み315は、リンク230がプッシュロッド110の長手方向の軸に対して垂直方向に平行移動するのを可能にするやり方でボールを囲っている。
【0023】
ここで
図9を参照すると、ハンドルシャフトリンク230アセンブリと係合しているフィンガートリガリンケージ525を示す、ハンドルアセンブリの部分断面図が図示されている。この図で、ピン250は、リンク230の輪310と輪540の整列を示すように取り除かれている。
【0024】
図10は、親指トリガ110がロックされており、フィンガートリガ120が第1位置にある、トグルリンケージアセンブリの断面図である。トグル130及び135とピン250とが軸1020を画定する。図では、トグルフランジ130Aは、シュラウド150Aと接触する位置に移動されている。一表現において、トグルスタッド130Bには、内側及び外側へのトグル130の予測可能な移動を可能にすることができる戻り止め130Cが提供される。スタッド130Bはピン250と係合し、ピン250を軸1020に沿って横方向に移動して、フィンガートリガの輪540とリンク230を係合させる。この構成で、フィンガートリガ120はリンク230を長手方向に動かすことができる。トグル130が内側に押圧されると、ピン250は軸1020に沿って内側に移動し、トグル135を横方向に移動し、トグル135を輪540から離脱させて、フィンガートリガ120がリンク230を長手方向に動かすことを可能にする。トグルスタッド130Bは輪640と係合して、親指トリガをシュラウド150Aに対して固定位置にロックする。
【0025】
図11に示すように、フィンガートリガ120が第2位置に動かすと、輪530はボス1010の周りで回転し、リンケージ525はボス1010の周りを旋回して、リンク230の長手方向及び垂直方向の動きを生成する。ボール240の周りでのリンク230の垂直方向及び長手方向の平行移動は、プッシュロッド210に沿って長手方向の力を生成する。この構成で、長手方向の力はプッシュロッド210に沿ってエンドエフェクタ160まで平行移動する。
【0026】
フィンガートリガ120をロックし、親指トリガ110を使用して器具100を作動するためには、
図12に示すようにトグル135を内側に押圧する。トグルスタッド135Bがピン250と係合して、ピン250を軸1210に沿って内側に移動し、その結果、第1位置をもたらす。内側へのピン250の移動はトグル130を外側に移動して、トグルスタッド130Bを輪640から離脱させる。ピン250は輪640と係合して、親指トリガ110がピン250を介してリンク230を動かすことを可能にする。トグル135が完全に押圧されると、トグルスタッド135Bがフィンガートリガリンケージ525の輪540に入り、フィンガートリガ120をシュラウド150Bに対して固定された位置にロックする。親指トリガ120は、輪660及び突起630によって画定される軸の周りを旋回することができ、それにより、リンク230を長手方向に動かし、ボール240を介してプッシュロッド210を長手方向に平行移動させる。
【0027】
図13は、親指トリガ110の移動後の第2位置にあるピン250及びリンク230を示す。親指トリガ110が第2位置に移動すると、輪660及び突起630は軸670の周りを回転し、トリガ110は軸670に対して旋回して、リンク230の長手方向及び垂直方向の動きを生み出す。ボール240の周りでのリンク230の垂直方向及び長手方向の平行移動は、プッシュロッド210に沿って長手方向の力を生成する。この構成で、長手方向の力がプッシュロッド210に沿ってエンドエフェクタ160まで平行移動される。
【0028】
図14は、デュアルアクションハンドルアセンブリを有する外科器具の断面図を示す。この図中、リンケージ525はシュラウド150Bの内側表面上のボス1410と係合している。ボス1410は、ピン250が輪540と係合しているときにトリガ120のための旋回軸として機能する。突起630はシュラウド150A(図示せず)の凹部と係合して、トリガ110がピン250を介してリンク230と係合したときにトリガ110が旋回するのを可能にする。図で、トリガ110は近位位置にあり、リンクを遠位方向に動かしており、それがプッシュロッド210を遠位に動かすことで、エンドエフェクタ160を開く。プッシュロッド210に沿った長手方向の動きによって、エンドエフェクタ160の開又は閉ができて、これはエンドエフェクタ160の構成に依存する。
【0029】
手術で器具100を使用するとき、外科医は器具100を入手し、腹腔鏡手術においては、エンドエフェクタ160を手術部位まで動かして、シャフト140をトロカールの中に導入する。外科医の利便性と器具100の向きに依存して、外科医はトグル130を押圧して親指トリガ110をシュラウド150に対して固定された位置にロックすることができ、すると、外科医はフィンガートリガ120を使用してエンドエフェクタ160を作動することができるようになる。外科医が、エンドエフェクタ160を作動するために親指トリガ110を使用したい場合、上述のように、外科医はトグル135を押圧し、シュラウド150に対して固定された位置にフィンガートリガ120をロックする一方で同時に、リンクしているピン250を動かして親指トリガ110と係合させる。次いで、外科医は親指トリガ110を動かしてエンドエフェクタ160を作動することができる。
【0030】
このトグル機構は、様々な利点の中でもとりわけ外科医にとって改善された人間工学的なハンドルを提供する。例えば、トグルを作動することによって、外科医は外科医の好みに応じてどのトリガを稼動又はロックするかを選択することができる。親指を使ってエンドエフェクタを作動するのを好む外科医もいれば、親指以外の指を使うことを好む外科医もいてよい。別の例として、外科手術中、装置を複数回作動する場合があり、外科医の手を疲労させる可能性がある。トグルを作動することにより、外科医は稼働中のレバーを容易に切り替えて、疲労した手を休ませることができる。
【0031】
以上、本発明の様々な実施形態及び実施例を図示及び説明したが、本発明の範囲から逸脱しない当業者による適切な改変がなされることにより本明細書に述べられる方法及び装置の更なる適合を実現することができる。そのような可能な改変の幾つかについて述べたが、その他の改変も当業者には明らかであろう。例えば、具体的な材料、寸法、及び図面の縮尺は、非限定的な例として理解されるべきである。したがって本発明の範囲は、以下の「特許請求の範囲」の観点から考慮されるべきであり、明細書及び図面に図示、説明した構造、材料、又は機能の細部に限定されるべきではない点は理解される。
【0032】
〔実施の態様〕
(1) 人間工学的外科器具であって、
外側表面を有するシュラウドと、
前記シュラウドに旋回可能に接続された第1トリガと、
前記シュラウドに旋回可能に接続された第2トリガと、
前記シュラウド内に位置づけられたリンクと、
エンドエフェクタに運動を伝達することができる、前記リンクと連通するシャフトと、
前記シュラウドの外側表面上に、実質的に互いに対向するように配設された第1トグルスイッチ及び第2トグルスイッチであって、軸を画定する、第1トグルスイッチ及び第2トグルスイッチと、
前記第1トグルスイッチ及び前記第2トグルスイッチと機械的に連通して前記軸に沿って前記リンクの内部に摺動可能に配設されたピンであって、前記第1トリガ又は前記第2トリガと選択的に係合可能な、ピンと、
を含む、外科器具。
(2) 第1のトグル位置を更に含み、この位置で、前記第1トグルスイッチは前記第2トリガと係合し、前記第2トリガを前記シュラウドに対して固定し、前記ピンを移動して前記第1トリガと係合させ、前記第1トリガが前記リンクを動かすことを可能にする、実施態様1に記載の人間工学的外科器具。
(3) 第2のトグル位置を更に含み、この位置で、前記第2トグルスイッチは前記第1トリガと係合し、前記第1トリガを前記シュラウドに対して固定し、前記ピンを移動して前記第2トリガと係合させ、前記第2トリガが前記リンクを動かすことを可能にする、実施態様2に記載の人間工学的外科器具。
(4) 前記シャフトの遠位端に配設されたエンドエフェクタを更に含み、前記第1トリガの動きにより、前記シャフトに沿った長手方向の力を生成して前記エンドエフェクタを動かす、実施態様2に記載の人間工学的外科器具。
(5) 前記シャフトの遠位端に配設されたエンドエフェクタを更に含み、前記第2トリガの動きにより、前記シャフトに沿った長手方向の力を生成して前記エンドエフェクタを動かす、実施態様3に記載の人間工学的外科器具。
【0033】
(6) 前記シャフトが、プッシュロッドを備えている、実施態様1に記載の人間工学的外科器具。
(7) 前記シャフトが、内視鏡手術での使用のために適応される、実施態様1に記載の人間工学的外科器具。
(8) 前記第1トグルスイッチが、前記シュラウドに対して所定の位置に前記第1トグルスイッチを選択的に固定するために戻り止めを備えている、実施態様1に記載の人間工学的外科器具。
(9) 人間工学的外科器具であって、
シュラウドと、
前記シュラウドに旋回可能に接続された第1トリガと、
前記シュラウドに旋回可能に接続された第2トリガと、
前記シュラウド内に位置づけられたリンクと、
前記リンクと連通する、エンドエフェクタに運動を伝達することができるシャフトと、
前記第1トリガ又は前記第2トリガのいずれかによって、前記シャフトと交互に係合するための手段と、
を含む、外科器具。
(10) 前記シャフトが、プッシュロッドを含む、実施態様9に記載の人間工学的外科器具。
【0034】
(11) 前記エンドエフェクタが、はさみ型の構成で配設される、実施態様9に記載の人間工学的外科器具。
(12) 前記エンドエフェクタが、静止ジョー部材と、前記シャフトと機械的に連通する可動ジョー部材と、で構成されている、実施態様9に記載の人間工学的外科器具。
(13) 外科器具であって、
遠位のエンドエフェクタと、
第1トリガ及び第2トリガを含み、前記トリガのそれぞれが前記エンドエフェクタに動作可能に接続可能である、近位のハンドルと、
第1位置及び第2位置を有するトグルであって、
(i)前記第1位置において、前記第1トリガは前記ハンドルに対してロックされており、前記第2トリガは前記エンドエフェクタを作動するために前記ハンドルに対して可動であり、かつ
(ii)前記第2位置において、前記第2トリガは前記ハンドルに対してロックされており、前記第1トリガは前記エンドエフェクタを作動するために前記ハンドルに対して可動である、
トグルと、
を含む、外科器具。
(14) 前記エンドエフェクタと前記ハンドルとの間に延びる細長いシャフトを更に含む、実施態様13に記載の外科器具。
(15) 前記ハンドルとトリガとが、ピストルグリップ構成で配置されている、実施態様14に記載の外科器具。
【0035】
(16) 前記ハンドルとトリガとが、はさみグリップ構成で配置されている、実施態様14に記載の外科器具。
(17) 前記ハンドルが、シュラウドを更に含む、実施態様13に記載の外科器具。
(18) 前記トグルが、第1トグルスイッチ及び第2トグルスイッチを含む、実施態様17に記載の外科器具。
(19) 前記第1トグルスイッチ及び前記第2トグルスイッチが、前記シュラウド上で互いにほぼ対向して配設され、軸を画定する、実施態様18に記載の外科器具。
(20) 前記第1トグルスイッチ及び前記第2トグルスイッチと機械的に連通して前記軸に沿って摺動可能に配設され、前記第1トリガ又は前記第2トリガと選択的に係合可能である、ピンを更に含む、実施態様19に記載の外科器具。