特許第6211654号(P6211654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6211654
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】インパルスシール装置、及びシール方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/10 20060101AFI20171002BHJP
【FI】
   B65B51/10 114
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-134143(P2016-134143)
(22)【出願日】2016年7月6日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】516203472
【氏名又は名称】門馬 啓介
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】門馬 啓介
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−084612(JP,U)
【文献】 特開2010−105669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱線を備えたシールバーと、このシールバーに対して平行関係を維持しながら接離動作し得る加圧バーとを備えたインパルスシール装置であって、
前記加圧バーが前記シールバーから離れた後に前記熱線を前記加圧バーの移動方向と略直交する方向に移動させる熱線スライド機構を設けているインパルスシール装置。
【請求項2】
前記シールバーが、シールバー本体とこのシールバー本体に設けられた前記熱線とを備えたものであり、
前記熱線、前記シールバー本体、及び、前記加圧バーが長尺状のものであり、
前記熱線スライド機構が、前記熱線を当該熱線の長手方向に沿って移動させ得るものである請求項1記載のインパルスシール装置。
【請求項3】
前記シールバーが、シールバー本体とこのシールバー本体に設けられた前記熱線とを備えたものであり、
前記熱線スライド機構が、前記熱線を前記シールバー本体とともに移動させるものである請求項1又は2記載のインパルスシール装置。
【請求項4】
前記シールバーの前後に、被溶着物を押さえて当該被溶着物の位置が前記シールバーの移動に伴って移動することを規制する押さえ機構が設けられている請求項1、2又は3記載のインパルスシール装置。
【請求項5】
前記熱線スライド機構による前記シールバーの移動方向が、被溶着物の移動方向と略直交する方向に設定されている請求項1、2、3又は4記載のインパルスシール装置。
【請求項6】
前記熱線が、外部に剥き出しとなっている請求項1、2、3、4又は5記載のインパルスシール装置。
【請求項7】
単数又は複数のシート状又はフィルム状の合成樹脂製品同士をシールするシール方法であって、
シールバーとこのシールバーに対して接離動作する加圧バーとによって前記合成樹脂製品同士を挟持する挟持工程と、
前記挟持工程の後に前記シールバーに設けた熱線を加熱させて前記合成樹脂製品同士をシールするシール工程と、
前記シール工程の後に前記加圧バーを前記合成樹脂製品から離間させるとともに前記熱線を前記加圧バーの離間方向と略直交する方向に移動させて前記熱線と前記合成樹脂製品とを強制的に剥離する剥離工程とを備えたシール方法。
【請求項8】
前記合成樹脂製品の少なくとも一部が受け部上に載置されるものであって、
前記合成樹脂製品を前記受け部に対して押さえ付ける押さえ工程を備えている請求項7記載のシール方法。
【請求項9】
前記剥離工程を経た前記合成樹脂製品が搬送されるとともにシールされるべき新たな合成樹脂製品が搬送される搬送工程を備えている請求項7又は8記載のシール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製品等の被溶着物同士をシールするためのインパルスシール装置、及び、シール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂製品等の被溶着物同士を熱溶着すなわちシールさせるインパルスシール装置が既知である(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、従来のインパルスシール装置では、被溶着物同士をシールした後にシールバーに設けられた熱線と被溶着物とが円滑に剥離し得るようにするため、シールを行うときに耐熱性や滑り性に優れたテープ(以下、「剥離用テープ」)を熱線と被溶着物との間に介在させていた。
【0004】
剥離用テープは、いわゆる消耗品であり、使用を重ねることによって、摩耗したり圧力及び熱によって損傷したりして劣化が進行し、徐々に滑り性が損なわれる。そして、剥離用テープの劣化が、シール状態の不良の一因となっている。例えば、剥離用テープの劣化が進行した結果、当該剥離用テープの一部分で欠損してしまうような場合には、その欠損部分を介して熱線と被溶着物とが直接的に接触してしまい、当該熱線に被溶着物がこびり付いてしまうことになる。
【0005】
従来は、熱線と被溶着物とのこびり付きを防止するために、剥離用テープが一定以上に劣化してしまう前に当該剥離用テープを取り替える作業が行われていた。ところが、剥離用テープにおける滑り性等の初期性能や想定寿命の見極めは、当該剥離用テープを熱線の上に設置する作業者の熟練度に依存する部分が大きい。しかも、剥離用テープの劣化は、被溶着物の種類や加圧温度等の種々のシール条件にも依存するため、多種類の被溶着物に対応するインパルスシール装置では、当該剥離用テープの交換タイミングを計ることは熟練した作業者であっても極めて困難である。
【0006】
また、剥離用テープは、テフロン(登録商標)テープやガラステープ等、それ自体が比較的高価な消耗品であることから、このような剥離用テープを一切使用すること無く好適にシールが行える装置の登場が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−162723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、熱線と被溶着物との剥離が好適に行われる構成を有したインパルスシール装置、及び、シール方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0010】
請求項1に係る発明は、熱線を備えたシールバーと、このシールバーに対して平行関係を維持しながら接離動作し得る加圧バーとを備えたインパルスシール装置であって、前記加圧バーが前記シールバーから離れた後に前記熱線を前記加圧バーの移動方向と略直交する方向に移動させる熱線スライド機構を設けているインパルスシール装置である。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記シールバーが、シールバー本体とこのシールバー本体に設けられた前記熱線とを備えたものであり、前記熱線、前記シールバー本体、及び、前記加圧バーが長尺状のものであり、前記熱線スライド機構が、前記熱線を当該熱線の長手方向に沿って移動させ得るものである請求項1記載のインパルスシール装置である。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記シールバーが、シールバー本体とこのシールバー本体に設けられた前記熱線とを備えたものであり、前記熱線スライド機構が、前記熱線を前記シールバー本体とともに移動させるものである請求項1又は2記載のインパルスシール装置である。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記シールバーの前後に、被溶着物を押さえて当該被溶着物の位置が前記シールバーの移動に伴って移動することを規制する押さえ機構が設けられている請求項1、2又は3記載のインパルスシール装置である。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記熱線スライド機構による前記シールバーの移動方向が、被溶着物の移動方向と略直交する方向に設定されている請求項1、2、3又は4記載のインパルスシール装置である。
【0015】
請求項6に係る発明は、前記熱線が、外部に剥き出しとなっている請求項1、2、3、4又は5記載のインパルスシール装置である。
【0016】
請求項7に係る発明は、単数又は複数のシート状又はフィルム状の合成樹脂製品同士をシールするシール方法であって、シールバーとこのシールバーに対して接離動作する加圧バーとによって前記合成樹脂製品同士を挟持する挟持工程と、前記挟持工程の後に前記シールバーに設けた熱線を加熱させて前記合成樹脂製品同士をシールするシール工程と、前記シール工程の後に前記加圧バーを前記合成樹脂製品から離間させるとともに前記熱線を前記加圧バーの離間方向と略直交する方向に移動させて前記熱線と前記合成樹脂製品とを強制的に剥離する剥離工程とを備えたシール方法である。
【0017】
請求項8に係る発明は、前記合成樹脂製品の少なくとも一部が受け部上に載置されるものであって、前記合成樹脂製品を前記受け部に対して押さえ付ける押さえ工程を備えている請求項7記載のシール方法である。
【0018】
請求項9に係る発明は、前記剥離工程を経た前記合成樹脂製品が搬送されるとともにシールされるべき新たな合成樹脂製品が搬送される搬送工程を備えている請求項7又は8記載のシール方法である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、熱線と被溶着物との剥離が好適に行われる構成を有したインパルスシール装置、及び、シール方法を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態を模式的に示す斜視図。
図2】同実施形態における概略断面図。
図3】同実施形態における概略断面図。
図4】同実施形態における概略断面図。
図5】同実施形態における概略断面図。
図6】同実施形態における概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜6を参照して説明する。
【0022】
この実施形態は、本発明を、被溶着物すなわち複数のシート状の合成樹脂製品である第一、第二のシートs1、s2同士をシールするインパルスシール装置Aに適用したものである。
【0023】
インパルスシール装置Aは、熱線12を備えたシールバー1と、このシールバー1に対して平行関係を維持しながら接離動作し得る加圧バー2とを備えている。このインパルスシール装置Aは、熱線12を、加圧バー2の移動方向である上下方向と略直交する方向である左右方向に移動させる熱線スライド機構3を設けている。また、このインパルスシール装置Aは、シールバー1の前後に第一、第二のシートs1、s2が動かないように当該第一、第二のシートs1、s2を押さえて当該第一、第二のシートs1、s2の位置がシールバー1の移動に伴って移動することを規制する押さえ機構4を設けている。なお、図1は、インパルス装置Aの模式的な斜視図であるが、押さえ機構4を省略して示している。
【0024】
以下、インパルスシール装置Aについて詳述する。
【0025】
シールバー1は、左右方向に延びた柱状をなす土台部たるシールバー本体11と、このシールバー本体11の上面に設けられた熱線12とを備えている。熱線12は、シールバー本体11に固定されている。つまり、熱線12は、シールバー本体11に一体的に設けられている。熱線12は、シールバー本体11の長手方向に沿って配設されている。すなわち、熱線12は、左右方向に延びた線状のものである。熱線12は、外部に露出する態様でシールバー本体11の上部に取り付けられたものであり、外部に剥き出しとなっている。
【0026】
なお、熱線12は、線状又はリボン状をなすヒータを主体に構成されたものであり、瞬間的に一定量の電流を流すことにより被溶着物たる第一、第二のシートs1、s2が溶融し得る温度に発熱し得るものとなっている。熱線12は既知の構成のものであるため詳細な説明を省略する。
【0027】
加圧バー2は、シールすなわち熱溶着されるべき被溶着物たる第一、第二のシートs1、s2をシールバー1と協働して一定の圧力で挟むためのものである。加圧バー2は、左右方向に延びたものであり、シールバー1の直上に配設されている。この加圧バー2は、往復動作機構たる昇降機構5により上下方向に昇降し得るようになっている。加圧バー2は、シールバー1に対して平行関係を維持しながら接離動作し得るものである。加圧バー2は、シールバー1に対して対向する位置に設置されている。なお、この実施形態では、加圧バー2を昇降動作させるための昇降機構5はエアシリンダーを主体に構成されている。なお、昇降機構5は、種々のものを適用することができるものであり、例えば、ギアや油圧シリンダーを主体に構成したもの等を適用することができる。
【0028】
熱線スライド機構3は、熱線12を、当該熱線12の長手方向である左右方向に移動させるためのものである。この実施形態では、熱線スライド機構3は、熱線12をシールバー本体11とともに水平方向たる左右方向にスライド移動させ得るようになっている。熱線スライド機構3によるシールバー1の移動方向は、被溶着物たる第一、第二のシートs1、s2の移動方向すなわち搬送方向と略直交する方向である左右方向に設定されている。なお、シールバー1を左右方向にスライド移動させるための駆動機構(図示せず)は、エアシリンダーを主体に構成したものや、油圧シリンダーを主体に構成したものやギアを主体に構成したもの等、種々のものを適用することができる。駆動機構による駆動力が伝達されたシールバー1は、当該シールバー1に関連させて設けられたガイドレール6に案内されて、所定の方向すなわち左右方向に往復動作し得るようになっている。
【0029】
この実施形態における熱線スライド機構3は、シールバー本体11を左右方向に進退動作させることにより熱線12を左右方向に進退動作させ得るものとなっている。熱線スライド機構3によるシールバー1の進退動作は、第一、第二のシートs1、s2同士が、シールバー1及び加圧バー2によりシールされた後に行われる。換言すれば、熱線スライド機構3によるシールバー1の進退動作は、シール工程k2を経て第一のシートs1と第二のシートs2とが熱溶着された後に行われる。より具体的に言えば、熱線スライド機構3によるシールバー1の進退動作は、熱線12に瞬間的な電流を流して行われるシール工程k2を経て、加圧バー2が昇降機構5により上昇することにより、当該加圧バー2がシールバー1から離れた後から開始されるとともにシールされた第一、第二のシートs1、s2が前方に向かって移送されるまでに終了するように設定されている。なお、このインパルスシール装置Aは、図示しない搬送機構を備えている。この搬送機構は、搬送工程k5の主体をなすものであり、シール工程k2を経てシールされた第一、第二のシートs1、s2を前方に移送するとともに、その後方において、新たにシールされるべき他の第一、第二のシートs3、s4を、シールバー1と加圧バー2の間に位置するように前方に移送するようになっている。
【0030】
押さえ機構4は、シールされるべき第一、第二のシートs1、s2を押さえて所定の位置に留め置くためのものである。押さえ機構4は、シールバー1の前後にそれぞれ設けられている。すなわち、押さえ機構4は、シールバー1の上流及び下流側に位置する第一、第二のシートs1、s2を押さえることにより当該第一、第二のシートs1、s2が水平方向に移動することを規制している。この実施形態では、押さえ機構4は、上面側に載置面t1を有しシールバー1の前後に配設された受け部である載置台Tと、この載置台Tに対して接離動作し得る押さえ部材41とを主体に構成されている。押さえ部材41は、第一、第二のシートs1、s2を上側から押さえるものであり、下面側に押さえ面41aを有している。押さえ部材41は、図示しない往復動作手段たる昇降手段により上下方向に昇降動作し得るものとなっている。押さえ機構4は、被溶着物たる第一、第二のシートs1、s2を、押さえ部材41と載置台Tとの協働によって、載置台Tから動かないようにしている。このようにすることで、第一、第二のシートs1、s2の位置が、熱線スライド機構3によるシールバー1の左右方向への移動に伴って移動してしまうことが好適に抑制され得るものとなっている。
【0031】
以上に述べたインパルスシール装置Aを用いて第一、第二のシートs1、s2同士をシール(熱溶着)するシール方法は次の通りである。
【0032】
このインパルスシール装置Aを用いた第一、第二のシートs1、s2のシール方法は、熱線12を有したシールバー1と、このシールバー1に対して接離動作する加圧バー2とによって第一、第二のシートs1、s2同士を挟持する挟持工程k1(図3を参照)と、挟持工程k1の後にシールバー1に設けた熱線12を加熱させて第一、第二のシートs1、s2同士をシールすなわち熱溶着するシール工程k2(図4を参照)と、シール工程k2の後に加圧バー2を第一、第二のシートs1、s2から離間させるとともに熱線12を加圧バー2の離間方向と略直交する方向すなわち左右方向に移動させて熱線12と第一、第二のシートs1、s2とを強制的に剥離する剥離工程k3(図1、及び、図5を参照)とを備えている。図5に示すシールバー1は、熱線スライド機構3によって第一、第二のシートs1、s2に対して相対移動する。つまり、熱線12が、静止状態にある第一、第二のシートs1、s2に対して擦り動くことになる。この熱線12が第一、第二のシートs1、s2に対して擦り動く過程において、第一、第二のシートs1、s2の溶融部分が熱線12からが積極的に剥がれることになる。なお、熱線スライド機構3によってシールバー1が第一、第二のシートs1、s2に対して相対移動している間に、図示しない冷却手段を用いてシールバー1の熱線12を冷却するようにしてもよい。
【0033】
さらに、この実施形態におけるシール方法は、第一、第二のシートs1、s2の少なくとも一部は載置台T上に載置されるものであって、第一、第二のシートs1、s2を載置台Tに対して押さえ付ける押さえ工程k4(図3〜5を参照)を備えている。また、この実施形態におけるシール方法は、剥離工程k3を経た第一、第二のシートs1、s2が搬送されるとともにシールされるべき新たな第一、第二のシートs3、s4が搬送される搬送工程k5(図6を参照)を備えている。搬送工程k5は、少なくともシール工程k2の前後においてシールされるべき第一、第二のシートs1、s2(s3、s4)が、図示しない搬送機構により水平方向に移送されるものである。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係るインパルスシール装置Aは、熱線12を備えたシールバー1と、このシールバー1に対して平行関係を維持しながら接離動作し得る加圧バー2とを備えている。そして、このインパルスシール装置Aは、熱線12を加圧バー2の移動方向と略直交する方向に移動させる熱線スライド機構3を設けている。このため、剥離用テープを使用すること無く熱線12と被溶着物たる第一、第二のシートs1、s2との剥離が好適に行われる構成を有したインパルスシール装置Aを提供することができるものとなる。つまり、熱線スライド機構3を備えているため、熱線12のスライド動作に伴って、熱線12が被溶着物たる第一、第二のシートs1、s2に対して好適に剥離し得るものとなっている。
【0035】
熱線スライド機構3により、熱線12が第一、第二のシートs1、s2に対して相対移動し得るため、熱線12と第一、第二のシートs1、s2とが強制的に剥離され得るものとなる。このため、熱線12と第一、第二のシートs1、s2とがシール工程k2を経て接着してしまうという不具合を好適に抑制し得るものとなっている。
【0036】
しかも、シールバー1と第一、第二のシートs1、s2との剥離性を向上させるために、従来の手法、すなわち、消耗品である剥離用テープを介在させる必要がなくなる。それにより、剥離用テープの使用に関し、不可避的に存在していた作業者の熟練度合いに依存する要素が一挙に解消されるものとなる。
【0037】
つまり、本実施形態におけるインパルスシール装置Aであれば、剥離用テープを使用することなく、熱線と被溶着物とのこびりつき等を回避して、所望のシールを完了させることができるものとなる。よって、従来のような剥離用テープの貼着技能差によって剥離性の初期性能に差が生じるような問題も生じることがない。
【0038】
また、作業者に求められていた従前の剥離用テープに関する判断、例えば、剥離用テープにおける摩耗等の劣化状況の判断、剥離用テープにおける交換時期の予測判断等が一切不要になる。
【0039】
さらに言えば、従来は、作業者において剥離用テープの貼着技能が未熟な場合には、熱線12と剥離用テープとの間に空気を巻き込み、それにより熱伝達が損なわれるという問題が発生していたが、本実施形態に示すものであればこのような問題が生ずることが皆無となる。
【0040】
シールバー1と加圧バー2との協働によって第一、第二のシートs1、s2同士を熱溶着するシール工程k2において、熱線12が直接的に被溶着物たる第一、第二のシートs1、s2に接触するものとなっている。このため、従来のような剥離用テープを介したシール工程k2のものと比較して、第一、第二のシートs1、s2に対する熱伝達性が向上し得るものとなり、いわゆる省エネに寄与し得るだけでなく生産性の向上にも寄与し得るものとなる。
【0041】
シールバー1が、シールバー本体11とこのシールバー本体11に設けられた熱線12とを備えたものである。そして、熱線スライド機構3が、熱線12をシールバー本体11とともに移動させるものである。このため、熱線12がシールバー本体11に好適に支持され得るものとなり、スライド移動によって熱線12が損なわれることが好適に抑制され得るものとなる。
【0042】
シールバー1の前後に、被溶着物たる第一、第二のシートs1、s2を押さえて当該第一、第二のシートs1、s2の位置がシールバー1の移動に伴って移動することを規制する押さえ機構4が設けられている。このため、熱線スライド機構3によるシールバー1の左右方向への移動に対して、第一、第二のシートs1、s2が連動しにくいものとなり、熱線12と第一、第二のシートs1、s2との剥離が好適に行われるものとなる。
【0043】
熱線スライド機構3によるシールバー1の移動方向が、第一、第二のシートs1、s2の移動方向たる前後方向と略直交する方向たる左右方向に設定されている。このため、順次搬送される第一、第二のシートs1、s2と干渉しにくい箇所にシールバー1、加圧バー2、及び、熱線スライド機構3を配設しやすいものとなる。このため、第一、第二のシートs1、s2同士を好適にシールすることができるとともに当該第一、第二のシートs1、s2とシールバー1の熱線12との剥離が円滑に行えるものとなっている。
【0044】
熱線12が、外部に剥き出しとなっている。このため、熱線12の冷却が好適に行われるだけでなく、熱線12及びその周囲のメンテナンス性が向上し得るものとなる。
【0045】
また、この実施形態におけるインパルスシール装置Aを使用して行われる第一、第二のシートs1、s2同士をシールするシール方法は、シールバー1とこのシールバー1に対して接離動作する加圧バー2とによって第一、第二のシートs1、s2同士を挟持する挟持工程k1と、挟持工程k1の後にシールバー1に設けた熱線12を加熱させて第一、第二のシートs1、s2同士をシールするシール工程k2と、シール工程k2の後に加圧バー2を第一、第二のシートs1、s2から離間させるとともに熱線12を加圧バー2の離間方向と略直交する方向に移動させて熱線12と第一、第二のシートs1、s2とを強制的に剥離する剥離工程k3とを備えている。このため、剥離工程k3により、このため、熱線12と合成樹脂製品たる第一、第二のシートs1、s2との剥離が好適に行われ、しかも、従来の剥離用テープ等の対応が不要になるシール方法を提供することができるものとなっている。
【0046】
この実施形態におけるシール方法は、第一、第二のシートs1、s2の少なくとも一部が載置台T上に載置されるものであり、第一、第二のシートs1、s2を載置台Tに対して押さえ付ける押さえ工程k4を備えている。このため熱線スライド機構3によるシールバー1のスライド動作に第一、第二のシートs1、s2が連動して動くことが好適に抑制されるものとなり、剥離工程k3が円滑に実施され得るものとなる。
【0047】
剥離工程k3を経た第一、第二のシートs1、s2が前方に搬送されるとともにシールされるべき新たな合成樹脂製品が後方から前方に向かって搬送される搬送工程k5を備えている。このため、シール作業が順次円滑に実施され得るシール方法を提供することができるものとなっている。
【0048】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0049】
シールバーと熱線とは必ずしも一体的に構成されている必要はない。すなわち、熱線スライド機構により、熱線のみが移動し得るようなものであってもよい。また、熱線がシールバーに対してスライド移動するようなものであってもよい。
【0050】
熱線スライド機構による剥離動作の方向すなわち熱線又は熱線を有したシールバーの移動方向は種々設定することができるものであり、上述した実施形態に示すものには限定されない。なお、シールバーの移動方向は、被溶着物が水平方向に移動するならばその移動方向と直交する方向に動作することが被溶着物の剥離性の観点から好ましい。
【0051】
熱線がシールバーを伴って剥離動作をする場合は、動作後すなわち剥離工程を経た後に定位置に戻るように設定されていることが好ましい。
【0052】
上述した実施形態では、押さえ機構が剥離工程だけでなく挟持工程やシール工程の段階においても作動しているものであったが、このようなものには限られない。押さえ機構は、剥離工程の段階のみ作動するものであってもよい。
【0053】
インパルスシール装置は、被溶着物が少なくともシール工程の前後において水平方向に移動するものであり、シールバーと加圧バーは垂直方向に並び、加圧バーが垂直方向に昇降し得るものとなっているが、このようなものに限定されるものではない。例えば、被溶着物が垂直方向に移動するものであってもよいし、その他、水平方向以外の方向に移動するものであってもよい。
【0054】
シールバー、及び、加圧バーは、被溶着物を挟んで、被溶着物が形成する面と直交する関係を有していることが好ましいが、このようなものに限定されるものではない。つまり、インパルスシール装置は、シールバー、及び、加圧バーが、被溶着物が形成する面と直交する関係に設定されていないものであってもよい。
【0055】
シール工程後における熱線スライド機構による剥離動作は、熱線を水平方向に移動させるものには限定されない。つまり、シール工程後の被溶着物を熱線から離間させるための熱線のスライド方向は水平方向に限定されるものではない。
【0056】
上述した実施形態に示されたシールバー、及び、加圧バー、及び、熱線は、被溶着物の流れ方向と直交する直線状であるが、このようなものには限定されるものではない。例えば、シールバー、加圧バー、及び、熱線が、90°以外の角度を有する直線状のものでもよいし、線状に延びないスポットシール状のシール部分を形成し得る構造のものであってもよいし、二次元描線のシール部分を形成し得る構造のものであってもよく、また、面的なシール部分を形成し得る構造のものであってもよい。
【0057】
押さえ機構は、上述した実施形態に示されるものに限定されるものではない。換言すれば、押さえ工程を担う押さえ部材や受け部は、上述した実施形態に示されたものに限定されるものではない。例えば、押さえ機構を、間欠運転可能な一対のニップロールを主体に構成したものであってもよい。
【0058】
受け部は、上述したような載置台に限定されるものではなく、押さえ部材と協働して合成樹脂製品を押さえることができるものであればどのようなものであってもよい。他の受け部としては、ロール状のものや、間欠的に配されたフレーム状のもの等が考えられる。
【0059】
熱線の態様は種々設定することが可能であり、上述した実施形態に示されたものに限定されるものではない。熱線の断面形状は、長方形状のもの(図2〜6を参照)には限定されるものではなく、例えば、円形の断面形状や凸状の断面形状をなすものであってもよい。また、熱線が、長手方向に凸凹した形状をなしたものであってもよいし、長手方向に山型形状が連続的に設けられたいわゆるギザギザ形状をなしたものであってもよい。
【0060】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
A…インパルスシール装置
1…シールバー
12…熱線
2…加圧バー
3…熱線スライド機構
4…押さえ機構
s1…第一のシート(被溶着物)
s2…第二のシート(被溶着物)
【要約】
【課題】熱線と被溶着物との剥離が好適に行われる構成を有したインパルスシール装置、及び、シール方法を提供する。
【解決手段】インパルスシール装置を、熱線を備えたシールバーと、このシールバーに対して平行関係を維持しながら接離動作し得る加圧バーとを備えたインパルスシール装置であって、前記熱線を前記加圧バーの移動方向と略直交する方向に移動させる熱線スライド機構を設けたものとした。このようなものであれば、熱線と被溶着物との剥離が好適に行われるものとなる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6