【文献】
SIGEL,H et al,Stability and Structure of Metal Ion Complexes Formed in Solution with Acetyl Phosphate and Acetonylphosphonate; Quantification of Isomeric Equilibria,Journal of the American Chemical Society,米国,1999年 6月19日,121,26,6248-6257
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
MはNH4+である場合、ステップ(1)において錯化剤は、水酸化アンモニウムと、炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウム及びリン酸と、R基を含有する一塩基有機酸又は多塩基有機酸の酸性塩とをモル比で混合し反応させ、そして反応液を100〜300°Cの条件で0.5〜10時間ワンステップ重合させて錯化剤製品を得て、或いは、前記反応液を乾燥させてから、100〜300°Cの条件で0.5〜10時間重合させて錯化剤製品を得るとの操作によって、製造されることを特徴とする請求項1または2に記載の無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法。
【背景技術】
【0002】
銅-ニッケル-クロム、銅-ニッケル-倣金又は銅-多層ニッケル-クロムの電気メッキプロセスは広く用いられている電気メッキ結合プロセスである。従来、これらの電気メッキ結合プロセスでは、銅下地メッキ層はシアン化メッキプロセスにより形成されるものであり、メッキされるワークと銅との置換反応を防止することができるため、メッキ層と基材との結合力に影響する。シアン化物を含有する前処理用電気銅メッキ液を採用すれば、得られたメッキ層は緻密で、結合力が良く、しかも、メッキ液によるメッキ層均一性、平坦性及び安定性も非常に優れる。しかし、シアン化物は劇毒な化学品で、0.005g程度だけで人間に対する致死量になるので、従業員の健康に有害なものであり、環境汚染問題もあり、また、廃水の処理も困難であり、汚水処理の費用が極めて高い。このため、環境を守って公害を低減するために、無シアン系前処理用電気銅メッキ液の開発が望まれている。
【0003】
現在、無シアン系前処理用電気銅メッキ液では、以下の電気メッキプロセスが採用されている。(1)ピロリン酸カリウムを錯化剤とするピロリン酸塩銅メッキについて、ピロリン酸カリウムは錯化性能が良く、銅イオンとピロリン酸基が形成した錯体の安定度定数はK
1=6.7、K
2=9.0となり、ピロリン酸カリウムを錯化剤とする電気メッキ液は質が安定し、比較的広い範囲で採用されるものであるが、鉄鋼基体に対して直接的には電気メッキを行うことができず、直接的にメッキを行うと、基体の表面で置換を起こして結合力が弱くなるという欠点が存在している。このため、ピロリン酸カリウムを錯化剤とする電気メッキ液の適用範囲は有限である。(2)クエン酸塩銅メッキについて、クエン酸の錯化能力は比較的強く、メッキ液の中において銅イオンと共に非常に安定した物質を生成し、銅イオンとクエン酸基との錯体の安定度定数はK
2=19.30となり、当該技術で銅メッキや鉄メッキをすれば、基体の表面に置換現象が現れることはない。しかし、クエン酸を錯化剤とする電気メッキ液は質が不安定で、電気メッキ液の分散性を高める必要があり、高温で変質する恐れがあるという欠点が存在している。(3)HEDP銅メッキについて、HEDPは有機リン酸塩の一種であり、錯化能力が良く、多種の金属と作用する時に比較的安定した物質を形成可能であり、HEDPを錯化剤として製造する電気メッキ液は質が安定し、分散性が良い。しかし、実際の製造において、当該電気メッキ液の加工電流の密度範囲が狭くて、メッキ層に銅粉を生じ易く、メッキ液の中の鉄不純物の沈殿速度が低減し、メッキ層と基体との結合力が弱くなるという欠点が存在している。このため、HEDPを錯化剤として製造する電気メッキ液は広く用いられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来の技術の欠点を解決するために、無シアン系前処理用電気銅メッキ液を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法を提供することをもう一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、その課題を解決するために採用される技術案は以下の通りである。
【0007】
1〜60重量%の錯化剤と、0.5〜30重量%の銅塩と、残った重量%の水とからなり、前記錯化剤の一般式はM
xH
yP
nO
3n+1R
z(式中、Mはアルカリ金属イオンとNH4+の中のいずれか1種又は複数種であり、Rはアシル基である)であり、銅塩の一般式はCu
x/2H
yP
nO
3n+1R
z(式中、x、n、zはいずれも正整数であり、yは0又は正整数であり、しかもx+y+z=n+2)である無シアン系前処理用電気銅メッキ液。
【0008】
以下、幾つかの例を挙げて上記した組成物の内の錯化剤の構成を説明する。
【0009】
a:x=1、y=1の場合、z=nとなり、錯化剤の一般式はMHP
nO
3n+1R
nとなり、その構造式が式(1)で表され、
構造式(1)
【化1】
b:x=n、y=0の場合、z=2となり、錯化剤の一般式はM
nP
nO
3n+1R
2となり、その構造式は式(2)で表され、
構造式(2)
【化2】
c:x=1、y=n−1の場合、R=2となり、錯化剤の一般式はMH
n−1P
nO
3n+1R
2となり、その構造式は式(1)で表される。
構造式(3)
【化3】
【0010】
本発明の無シアン系前処理用電気銅メッキ液は錯化剤と、銅塩と水を混合させてなるものであり、その中で、錯化剤の錯化能力が強く、銅イオンとの錯化定数が10
26−27に達して、従来の技術における通常の錯化剤よりも遥かに優れる。当該錯化剤により製造された電気メッキ液は安定性が大幅に向上され、品質が高くなる。この無シアン系の電気メッキ液が前処理に使用される際に、電気メッキ液における主塩の金属イオンが金属の基材と置換反応をすることはなく、粗い置換層構造を生じることはないため、電気メッキ層と金属基材の結合力が強くなり、メッキ層の表面が平滑となり、電気メッキ層の質を大幅に向上させる。
【0011】
好ましくは、前記無シアン系前処理用電気銅メッキ液は5〜45重量%の錯化剤と、1〜20重量%の銅塩と、残った重量%の水とからなり、前記錯化剤の一般式はM
xH
yP
nO
3n+1R(式中、MはNa
+、K
+とNH4+のいずれか1種又は複数種であり、Rはアシル基である)であり、銅塩の一般式はCu
x/2H
yP
nO
3n+1R(x、nはいずれも正整数であり、yは0又は正整数であり、しかもx+y=n+1)である。錯化剤、銅塩及び水の配合比は合理的なものであるので、このような配合比の条件での無シアン系電気メッキ液は安定性が最も良く、品質が最も優れる。
【0012】
以下、幾つかの例を挙げて当該好ましい技術案における錯化剤の構成を説明する。
【0013】
d:y=0の場合、x=n+1となり、錯化剤の一般式はM
n+1P
nO
3n+1Rとなり、その構造式が式(4)で表され、
構造式(4)
【化4】
e:y=1の場合、x=nとなり、錯化剤の一般式はM
nHP
nO
3n+1Rとなり、その構造式が式(5)で表され、
構造式(5)
【化5】
f:y=n−1の場合、x=2となり、錯化剤の一般式はM
2H
n−1P
nO
3n+1Rとなり、その構造式が式(6)で表される。
構造式(6)
【化6】
【0014】
無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法であって、
(1)Mを含有するアルカリと、炭酸塩又は炭酸水素塩及びリン酸と、R基を含有する一塩基有機酸又は多塩基有機酸の酸性塩とをモル比で混合し反応させ、そして反応液を100〜800°Cの条件で0.5〜10時間ワンステップ重合させて錯化剤製品を得て、或いは、前記反応液を乾燥させてから、100〜800°Cの条件で0.5〜10時間重合させて錯化剤製品を得る錯化剤の製造ステップと、
(2)ステップ(1)で製造された錯化剤と2価の銅化合物をモル比で水相系において均一的に混合させて、25〜100°Cで0.5〜1時間反応させて、反応が終わってから遠心分離、乾燥をして銅塩を得る銅塩の製造ステップと、
(3)ステップ(1)における錯化剤を適量の水に溶解させてから、ステップ(2)における銅塩を比例で前記錯化剤水溶液に溶解させ、更に余量の水を入れて均一に混合させ、その後pH値を8.5〜9.5に調整して無シアン系前処理用電気銅メッキ液を得る電気メッキ液の製造ステップと
を含む製造方法。
【0015】
本発明の無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法は、操作が簡単となり、生産コストが低く、製品の性能価格比が高く、ステップ(1)における乾燥手法として噴霧乾燥又はフラッシュ乾燥が用いられ、製造の加工プロセス全体は環境が友好し、ステップ(1)とステップ(2)における原料投与量が精確で、原料の転化率が100%に近く、反応済の廃水において不純物の含有量が少なく、廃水の処理コストが低くなる。
【0016】
好ましくは、MはNa
+である場合、ステップ(1)において錯化剤は、水酸化ナトリウムと、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム及びリン酸と、R基を含有する一塩基有機酸又は多塩基有機酸の酸性塩とをモル比で混合し反応させ、そして反応液を200〜400°Cの条件で0.5〜10時間ワンステップ重合させて錯化剤製品を得て、或いは、前記反応液を乾燥させてから、200〜400°Cの条件で0.5〜10時間重合させて錯化剤製品を得るとの操作によって、製造される。
【0017】
好ましくは、MはK
+である場合、ステップ(1)において錯化剤は、水酸化カリウムと、炭酸カリウム又は炭酸水素カリウム及びリン酸と、R基を含有する一塩基有機酸又は多塩基有機酸の酸性塩とをモル比で混合し反応させ、そして反応液を250〜800°Cの条件で0.5〜10時間ワンステップ重合させて錯化剤製品を得て、或いは、前記反応液を乾燥させてから、250〜800°Cの条件で0.5〜10時間重合させて錯化剤製品を得るという操作によって、製造される。
【0018】
好ましくは、MはNH4+である場合、ステップ(1)において錯化剤は、水酸化アンモニウムと、炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウム及びリン酸と、R基を含有する一塩基有機酸又は多塩基有機酸の酸性塩とをモル比で混合し反応させ、そして反応液を100〜300°Cの条件で0.5〜10時間ワンステップ重合させて錯化剤製品を得て、或いは、前記反応液を乾燥させてから、100〜300°Cの条件で0.5〜10時間重合させて錯化剤製品を得るという操作によって、製造される。
【0019】
本発明の無シアン系前処理用電気銅メッキ液における銅塩は、上記した銅塩の外、硫酸銅、塩化銅又は塩基性炭酸銅から直接的に選ばれる一種又は複数種でもあり、この技術方案の場合、前記無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法は、
(1)Mを含有するアルカリと、炭酸塩又は炭酸水素塩及びリン酸と、R基を含有する一塩基有機酸又は多塩基有機酸の酸性塩とをモル比で混合し反応させ、そして反応液を100〜800°Cの条件で0.5〜10時間ワンステップ重合させて錯化剤製品を得て、或いは、前記反応液を乾燥させてから、100〜800°Cの条件で0.5〜10時間重合させて錯化剤製品を得る錯化剤の製造ステップと、
(2)ステップ(1)における錯化剤を適量の水に溶解させてから、上記の銅塩を比例で前記錯化剤水溶液に溶解させ、更に余量の水を入れて、その後pH値を8.5〜9.5に調整して無シアン系前処理用電気銅メッキ液を得る電気メッキ液の製造ステップと
を含む製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0021】
(1)本発明の無シアン系前処理用電気銅メッキ液は錯化剤と、銅塩と水からなり、その中で、錯化剤の錯化能力が強く、銅イオンとの錯化定数が10
26−27に達して、従来の無シアン電気メッキ技術における通常の錯化剤よりも遥かに優れる。当該錯化剤により製造された電気メッキ液は安定性が大幅に向上され、品質が高くなる。この無シアン系の電気メッキ液が前処理に使用される際に、電気メッキ液における主塩の金属イオンが金属の基材と置換反応をすることはなく、粗い置換層構造を生じることはないため、電気メッキ層と金属基材の結合力が強くなり、メッキ層の表面が平坦となり、電気メッキ層の質を大幅に向上させる。
【0022】
(2)当該無シアン系前処理用電気銅メッキ液では、常温から65°Cまでの加工温度でメッキを行うので、メッキ層を沈積する速度が速く、実際の生産要求を満たすことができ、電気メッキの生産効率を向上させる。
【0023】
(3)本発明の無シアン系前処理用電気銅メッキ液では、比較的に高い加工温度でのメッキ液の分散能力及びメッキ層との結合力が著しく強くなり、且つこのメッキ液の成分は揮発し難く安定するものであるので、得られたメッキ層が緻密で、メッキ層の表面が滑らかになり、従来技術における電気メッキ液の成分が比較的高い温度で揮発し易く電気メッキ液の質が不安定になるという欠点を回避することができる。
【0024】
(4)本発明の無シアン系前処理用電気銅メッキ液は金属基材と良く結合することができ、金属基材に対する腐食性がないので、広い範囲で応用され、特に亜鉛、アルミニウム、マグネシウム又はそれらの合金など多種の金属基材に応用されると、従来の技術における電気メッキ液による金属基材の腐食問題の発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、具体的な実施例によって、本発明の技術方案を更に詳しく説明する。
【0026】
以下の各実施例において、試薬や原料は全て市販されている通常のものであり、純度は分析純であり、各実施例の中の百分率は質量百分率である。
(実施例1)
【0027】
無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法であって、
(1)一般式はM
xH
yP
nO
3n+1R
z(式中、x=3、y=0、n=2、z=1、MはK
+であり、Rはアセチル基である)であり、具体的な構造式が式(9):
構造式(9)
【化7】
で表される錯化剤の製造ステップであって、
水酸化カリウム、リン酸と酢酸をモル比3:2:1で混合し反応させ、反応液を噴霧乾燥させて、部分的に重合した中間体の粉末を得て、当該中間体の粉末を熊手乾燥機内に置いて250°Cで10時間重合反応をさせて、重合反応が終わると錯化剤製品を得る錯化剤の製造ステップと、
(2)ステップ(1)で製造された錯化剤と硫酸銅をモル比2:3で水相系において均一に混合させて、25°Cで1時間反応をさせて、反応が終わってから遠心分離、乾燥をして、構造式が以下の式:
【化8】
で表される銅塩を得る銅塩の製造ステップと、
(3)1.0%のステップ(1)における錯化剤を50%の水に溶解させてから、0.5%のステップ(2)における銅塩を錯化剤溶液に加えて、更に48.5%の水を均一に混合させ、その後pH値を8.5に調整して無シアン系前処理用電気銅メッキ液を得る電気メッキ液の製造ステップと
を含む製造方法。
(実施例2)
【0028】
無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法であって、
(1)一般式はM
xH
yP
nO
3n+1R
z(式中、x=3、y=0、n=3、z=2、MはK
+とNa
+であり、Rはアセチル基である)であり、具体的な構造式は下の式:
【化9】
で表される錯化剤の製造ステップであって、
水酸化ナトリウム、リン酸と酢酸をモル比3:3:2で混合し反応させ、反応液をフラッシュ乾燥させて、部分的に重合した中間体の粉末を得て、当該中間体の粉末を熊手乾燥機内に置いて200°Cで10時間重合反応をさせて、重合反応が終わると錯化剤製品を得る錯化剤の製造ステップと、
(2)ステップ(1)で製造された錯化剤と硫酸銅をモル比2:3で水相系において均一に混合させて、100°Cで0.5時間反応をさせて、反応が終わってから遠心分離、乾燥をして、構造式が下の式:
【化10】
で表される銅塩を得る銅塩の製造ステップと、
(3)30.0%のステップ(1)における錯化剤を40%の水に溶解させてから、10%のステップ(2)における銅塩を錯化剤溶液に加えて、更に20.0%の水を均一に混合させ、その後pH値を8.8に調整して無シアン系前処理用電気銅メッキ液を得る電気メッキ液の製造ステップと
を含む製造方法。
(実施例3)
【0029】
無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法であって、
(1)一般式はM
xH
yP
nO
3n+1R
z(式中、x=1、y=100、n=100、z=1、MはNa
+であり、Rはアセチル基である)であり、具体的な構造式は下の式:
【化11】
で表される錯化剤の製造ステップであって、
水酸化ナトリウム、リン酸と酢酸をモル比1:100:1で混合し反応させた反応液をフラッシュ乾燥させて、部分的に重合した中間体の粉末を得て、当該中間体の粉末を熊手乾燥機内に置いて300°Cで2.5時間重合反応をさせて、重合反応が終わると錯化剤製品を得る錯化剤の製造ステップと、
(2)ステップ(1)で製造された錯化剤と硫酸銅をモル比2:1で均一に混合させて、25°Cで1.0時間反応をさせて、反応が終わってから遠心分離、乾燥をして、構造式が下の式:
【化12】
で表される銅塩を得る銅塩の製造ステップと、
(3)40.0%のステップ(1)における錯化剤を30%の水に溶解させてから、15%のステップ(2)における銅塩を錯化剤溶液に加えて、更に15.0%の水を均一に混合させ、その後pH値を8.7に調整して無シアン系前処理用電気銅メッキ液を得る電気メッキ液の製造ステップと
を含む製造方法。
(実施例4)
【0030】
無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法であって、
(1)一般式はM
xH
yP
nO
3n+1R
z(式中、x=1、y=100、n=100、z=1、MはNa
+であり、Rはアラニンから水素を引き抜いてなったアミド基である)であり、具体的な構造式は下の式:
【化13】
で表される錯化剤の製造ステップであって、
水酸化ナトリウム、リン酸とアラニンをモル比1:100:1で混合し反応させ、反応液をフラッシュ乾燥させて、部分的に重合した中間体の粉末を得て、当該中間体の粉末を熊手乾燥機内に置いて300°Cで2.5時間重合反応をさせて、重合反応が終わると錯化剤製品を得る錯化剤の製造ステップと、
(2)ステップ(1)で製造された錯化剤と硫酸銅をモル比2:1で均一的に混合させて、25°Cで1.0時間反応をさせて、反応が終わってから遠心分離、乾燥をして、構造式が下の式:
【化14】
で表される銅塩を得る銅塩の製造ステップと、
(3)60.0%のステップ(1)における錯化剤を20%の水に溶解させてから、10%のステップ(2)における銅塩を錯化剤溶液に加えて、更に10.0%の水を均一に混合させ、その後pH値を8.5に調整して無シアン系前処理用電気銅メッキ液を得る電気メッキ液の製造ステップと
を含む製造方法。
(実施例5)
【0031】
無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法であって、
(1)一般式はM
xH
yP
nO
3n+1R
z(式中、x=3、y=0、n=2、z=1、MはNa
+であり、Rはメチルホスホン酸から水素を引き抜いてなったメチル基である)であり、具体的な構造式は下の式:
【化15】
で表される錯化剤の製造ステップであって、
水酸化カリウム、リン酸とメチルホスホン酸をモル比3:2:1で混合し反応させた反応液をフラッシュ乾燥させて、部分的に重合した中間体の粉末を得て、当該中間体の粉末を熊手乾燥機内に置いて300°Cで5時間重合反応をさせて、重合反応が終わると錯化剤製品を得る錯化剤の製造ステップと、
(2)ステップ(1)で製造された錯化剤と硫酸銅をモル比2:3で均一に混合させて、常温で1.0時間の反応をさせて、反応が終わってから遠心分離、乾燥をして、構造式が下の式:
【化16】
で表される銅塩を得る銅塩の製造ステップと、
(3)40.0%のステップ(1)における錯化剤を20%の水に溶解させてから、20%のステップ(2)における銅塩を錯化剤溶液に加えて、更に20.0%の水を均一に混合させ、その後pH値を9.5に調整して無シアン系前処理用電気銅メッキ液を得る電気メッキ液の製造ステップと
を含む製造方法。
【0032】
無シアン系前処理用電気銅メッキ液の製造方法では、錯化剤は、実施例1乃至5に採用される錯化剤の外、実施例6、7に示される錯化剤でもある。実施例6、7において製造される錯化剤のそれぞれはまず、あるモル比で硫酸銅又は塩化銅と反応して銅塩を生成し、そして比例で錯化剤、水と均一に混合し、pH値が8.5〜9.5まで調整され、よって本発明の電気メッキ液を得る。
(実施例6)
【0033】
一般式はM
xH
yP
nO
3n+1R
z(式中、x=5、y=0、n=5、z=2、MはNa
+であり、Rはアセチル基と酒石酸水素ナトリウムから水素を引き抜いてなったアシル基である)であり、具体的な構造式は下の式:
【化17】
で表される。
この錯化剤の製造方法は以下の通りである。炭酸水素ナトリウム、リン酸、酢酸と酒石酸水素ナトリウムをモル比5:5:1:1で混合し反応させて、反応液をフラッシュ乾燥させて、部分的に重合した中間体の粉末を得て、当該中間体の粉末を熊手乾燥機内に置いて400°Cで0.5時間重合反応をさせて、重合反応が終わると錯化剤製品を得る。
(実施例7)
【0034】
一般式はM
xH
yP
nO
3n+1R
z(式中、x=10、y=1、n=10、z=1、MはK
+とNa
+であり、Rは酒石酸水素ナトリウムから水素を引き抜いてなったアシル基である)であり、具体的な構造式は下の式:
【化18】
で表される。
この錯化剤の製造方法は以下の通りである。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸と酒石酸水素ナトリウムをモル比1:9:10:1で混合し反応させて、反応液をフラッシュ乾燥させて、部分的に重合した中間体の粉末を得て、当該中間体の粉末を熊手乾燥機内に置いて800°Cで0.5時間重合反応をさせて、重合反応が終わると錯化剤製品を得る。
(実施例8)
【0035】
一般式はM
xH
yP
nO
3n+1R
z(式中、x=10、y=1、n=10、z=1、MはNa
+であり、Rはクエン酸水素二ナトリウムから水素を引き抜いてなったアシル基である)であり、具体的な構造式は下の式:
【化19】
で表される。
この錯化剤の製造方法は以下の通りである。炭酸ナトリウム、リン酸とクエン酸水素二ナトリウムをモル比5:10:1で混合し反応させて、反応液をフラッシュ乾燥させて、部分的に重合した中間体の粉末を得て、当該中間体の粉末を熊手乾燥機内に置いて400°Cで0.5時間重合反応をさせて、重合反応が終わると錯化剤製品を得る。
【0036】
実施例1乃至5において製造された前処理用電気銅メッキ液を次のように検討する。
1.ハルセル試験(267ml)
1.1 予備試験
実施例1乃至5のそれぞれにおいて製造された電気メッキ液に対して、25°Cの温度、1Aの電路(定電流)、空気攪拌の条件でメッキ片に対するテストを5分間行う。メッキ片に対するテストの過程において、定電流条件で槽内電圧状態も相対的に安定し、且つメッキ片に広い面積で半光沢が現れ、結晶が細緻であるとの特徴が観察される。
【0037】
1.2 ハルセル試験による電流密度範囲の決定
実施例1乃至実施例5で製造したメッキ液を使用して、55℃の温度、1Aの電流、10分間の時間の条件でメッキ片に対するハルテストをすることにより最適の電流密度範囲を決定する。メッキ片に対するテストに用いられるシート材は、600#耐水研磨紙で研磨した0.5*70*100のA3鋼片を採用する。経験公式J
k=I(5.1−5.24LgL)を参考にして試験片の各点の電流密度を計算する。メッキ片に対するテスト及び電流密度計算から分かるように、実施例1乃至実施例5で得られた電気メッキ液の電流密度範囲が0.5A/dm
2〜2.5A/dm
2である。
【0038】
2.電気メッキ液及び電気メッキ性能テスト
2.1 電流効率の測定:銅クーロンメーターにより測定する。実施例1で得られた電気メッキ液の電流効率が93.0%であり、実施例2で得られた電気メッキ液の電流効率が92.8%であり、実施例3で得られた電気メッキ液の電流効率が93.1%であり、実施例4で得られた電気メッキ液の電流効率が93.8%であり、実施例5で得られた電気メッキ液の電流効率が93.4%である。
【0039】
2.2 電気メッキ液の分散能力の測定:屈曲陰極法により電気メッキ液の分散能力を測定する。条件は電流1A、無油空気攪拌、55°Cの温度、30分間の時間とし、試料は600#耐水研磨紙で研磨した0.5*70*100のA3鋼片を採用する。
測定された実施例1に係る電気メッキ液の分散能力が93.5%であり、測定された実施例2に係る電気メッキ液の分散能力が92.5%であり、測定された実施例3に係る電気メッキ液の分散能力が93.3%であり、実施例4に係る電気メッキ液の分散能力が93.1%であり、実施例5に係る電気メッキ液の分散能力が93.3%である。
【0040】
2.3 被覆力の測定:インナーポール法によりメッキ液の被覆力を測定する。銅管サイズが10mm*100mmである。通り穴及び止まり穴法を採用し、電気メッキ液の温度は55°Cであり、陰極の電流密度は0.5A/dm2であり、時間は5分間である。実験した後、鉄パイプを切り開いて,管内におけるメッキ層の状況を観察する。
実施例1乃至実施例5の電気メッキ液を実験電気メッキ液とする。実験完了後、通り穴及び止まり穴に全て銅層がメッキされていることを見つけ、実施例1乃至実施例5で製造した電気メッキ液が優れた被覆力を有すると分かった。
【0041】
2.4 結合力テスト
2.4.1 曲げ実験:厚さ0.5mmの研磨鉄片(A3)を採用する。電気メッキ液の温度は55°Cであり、陰極の電流密度は2A/dm2であり、時間は15分間である。
実施例1乃至実施例5の電気メッキ液を実験電気メッキ液とする。実験完了後、メッキされた試験片を繰り返し曲げることで断裂させる。裂け目での無脱皮現象から明らかなように、メッキ層と基体とが分離していない。
2.4.2 熱衝撃試験:厚さ0.5mmの研磨鉄片(A3)を採用する。電気メッキ液の温度は55°Cであり、陰極の電流密度は2A/dm2であり、時間は15分間である。
実施例1乃至実施例5の電気メッキ液を実験電気メッキ液とする。実験完了後、メッキされた試験片をオーブンに置いて200°Cまで焼いて、1時間連続的に焼く。取り出した後、直ちに0°C水中に入れて急激に冷却させる。その結果、メッキ層に起泡及び脱皮現象が発見されていない。
【0042】
2.5 メッキ層靭性実験:厚さ1mmのA3鋼片をクロム酸で鈍化し、洗浄した後、それぞれを実施例1乃至実施例5の電気メッキ液の中で掛ける。メッキ層の厚さが20μmに達したら、メッキ層を剥離し、該メッキ層を180°屈曲するとともに屈曲部を押す。メッキ層が断裂していないので、メッキ層の靭性が良いと分かった。
【0043】
2.6 メッキ層空隙率実験:厚さ0.5mmの研磨鉄片(A3)を採用する。電気メッキ液の温度は55°Cであり、陰極の電流密度は1A/dm2であり、時間は20分間である。フェリシアン酸カリウム溶液による濾紙貼り付け実験法を採用し空隙率実験を行う。
フェリシアン酸カリウム 10g/L、 塩化ナトリウム20g/L。
実験の結果から明らかなように、実施例1乃至実施例5で得られた電気メッキ液を実験対象として形成した電気メッキ層はいずれも空隙率≦1個/dm2である。
【0044】
2.7 堆積速度の測定:電流を1A、温度を55°C、時間を30分とする。測定結果から明らかなように、実施例1で得られた電気メッキ液の堆積速度が0.6μm/minであり、実施例2で得られた電気メッキ液の堆積速度が0.62μm/minであり、実施例3で得られた電気メッキ液の堆積速度が0.56μm/minであり、実施例4で得られた電気メッキ液の堆積速度が0.52μm/minであり、実施例5で得られた電気メッキ液の堆積速度が0.55μm/minである。
【0045】
実施例1乃至5で得られた電気メッキ液に対して中間試験を行う。中間試験のプロセスパラメータが、以下のとおりである。
プロセスフロー:鉄鋼部品→超音波油抜き→水洗1→水洗2→陽極電解油抜き→水洗1→水洗2→酸洗い油抜き→水洗1→水洗2→塩酸洗い→水洗1→水洗2→端子電解油抜き→水洗1→水洗2→酸活性化→水洗1→水洗2→実施例1乃至5の電気メッキ液→回収→水洗1→水洗2→酸活性化→酸銅。
超音波油抜き:オイル抜きパウダーの濃度50±5g/L、温度70±5°C、電流密度1−5A/dm2、時間5分間。
陰極電解除油: 電解オイル抜きパウダーの濃度50±5g/L、温度70±5°C、電流密度1−5A/dm2、時間5〜7分間。
陽極電解除油: 電解オイル抜きパウダーの濃度50±5g/L、温度70±5°C、電流密度1−5A/dm2、時間3〜5分間。
酸洗い:工業塩酸の濃度 15〜20%、時間8〜10分間、室温。
活性化:工業塩酸の濃度5〜10%、時間3〜5分間、室温。
実施例1乃至5のメッキ液: ボーメ度32−36;pH値8.5〜9.5;温度50〜55°C;電流密度0.5〜2.5A/dm2;時間5分間〜数時間。実験結果から明らかなように、100μmにメッキしても平整性及び光沢度が非常に良い。
【0046】
50Lの中間試験で電気メッキ生産ラインを20ヶ月連続で作動させ、350Lの中間試験で電気メッキ生産ラインを11ヶ月連続で作動させることによって、実施例1乃至5で得られた電気メッキ液が信頼性を有し、メッキ液の性能が安定し、メッキ液が10〜50ml/KAHで消耗されることを検証した。
【0047】
上述の中間試験に基づいて、実施例1乃至5で得られた電気メッキ液を工業化生産に応用される時のプロセス条件が分かる。
【0048】
1.鉄鋼部品
プロセスフロー:鉄鋼部品→超音波油抜き→水洗1→水洗2→陽極電解油抜き→水洗1→水洗2→酸洗い油抜き→水洗1→水洗2→塩酸洗い→水洗1→水洗2→端子電解油抜き→水洗1→水洗2→酸活性化→水洗1→水洗2→予備含浸→実施例1乃至5の電気メッキ液→回収→水洗1→水洗2→酸活性化→酸銅。
プロセス条件:
メッキ液密度:32〜36ボーメ度
温度:45〜60°C
pH値:8.60〜9.50
攪拌:空気攪拌プラス陰極移動
陽極:電解銅又は無酸素電解銅
陰陽極面積比:1:1.5〜2
電流:0.5〜2.5A/dm
2
【0049】
2.亜鉛合金部品
プロセスフロー:亜鉛合金部品→熱浸蝋除去→超音波蝋除去→水洗1→水洗2→超音波油抜き→水洗1→水洗2→陽極電解油抜き→水洗1→水洗2→酸塩活性化→水洗1→水洗2→超音波予備含浸液予備含浸30s→実施例1乃至5の電気メッキ液(帯電入槽25〜35°C)→回収→水洗1→水洗2→酸活性化→酸銅。
プロセス条件:
メッキ液密度:32〜38ボーメ度
温度:25〜35°C
pH値:8.60〜9.50
攪拌:空気攪拌プラス陰極移動
陽極:電解銅又は無酸素電解銅
陰陽極面積比:1:1.5〜2
電流:0.5〜1.5A/dm
2
【0050】
上述の実施例は、本発明の好ましい実施形態にすぎない。本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。請求の範囲に記載の技術案を超えない場合、その他の改変及び代替を行っても良い。