特許第6211802号(P6211802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211802
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】データ処理装置およびデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20171002BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   G05B23/02 V
   G05B23/02 302W
   G05B19/418 Z
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-113363(P2013-113363)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-232450(P2014-232450A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】登内 宏
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−058248(JP,A)
【文献】 特開平07−160323(JP,A)
【文献】 特開2002−268728(JP,A)
【文献】 特開2002−287816(JP,A)
【文献】 特開2007−172150(JP,A)
【文献】 特開2009−169556(JP,A)
【文献】 特開2008−307575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G05B 19/18
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列に発生する多量のデータを収集して処理するデータ処理装置であって、
入力される前記データを格納する記憶部と、
前記記憶部に蓄積された前記データの中から、基準となる動作パターンのテンプレートと、当該テンプレートに類似する比較パターンとをそれぞれ抽出するパターン抽出部と、を有し、
前記パターン抽出部は、
前記データの中から前記テンプレートを作成するテンプレート作成部と、
前記データの中から選択された比較パターンと、前記テンプレートとの類似度を取得する類似度取得部と、
前記類似度取得部により取得した類似度に基づいて、前記テンプレートと類似動作パターンとなる比較パターンを抽出して格納する比較パターン抽出部と、を含み、
前記時系列に発生するデータは、産業用ロボットを動作制御するために入力される指令データと、当該指令データに基づいて動作した前記産業用ロボットから出力されるサーボデータとを含み、
前記テンプレートおよび前記比較パターンは前記指令データの中から作成され、
前記パターン抽出部は、
前記テンプレートおよび前記比較パターンの対応する前記サーボデータを比較する
データ処理装置。
【請求項2】
前記パターン抽出部の前記類似度取得部は、
前記テンプレートと前記比較パターン間の相関値に基づいて前記類似度を判別する
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記サーボデータは、トルクデータを含み、
前記パターン抽出部は、
前記テンプレートおよび前記比較パターンの対応する前記トルクデータを比較する
請求項1または2記載のデータ処理装置。
【請求項4】
時系列に発生する多量のデータを収集して処理するデータ処理方法であって、
入力される前記データを記憶部に格納する記憶ステップと、
前記記憶部に蓄積された前記データの中から、基準となる動作パターンのテンプレートと、当該テンプレートに類似する比較パターンとをそれぞれ抽出するパターン抽出ステップと、を有し、
前記パターン抽出ステップは、
前記データの中から前記テンプレートを作成するテンプレート作成ステップと、
前記データの中から選択された比較パターンと、前記テンプレートとの類似度を取得する類似度取得ステップと、
前記類似度取得ステップにより取得した類似度に基づいて、前記テンプレートと類似動作パターンとなる比較パターンを抽出して格納する比較パターン抽出ステップと、を含み、
前記時系列に発生するデータは、産業用ロボットを動作制御するために入力される指令データと、当該指令データに基づいて動作した前記産業用ロボットから出力されるサーボデータとを含み、
前記テンプレートおよび前記比較パターンは前記指令データの中から作成され、
前記パターン抽出ステップにおいては、
前記テンプレートおよび前記比較パターンの対応する前記サーボデータを比較する
データ処理方法。
【請求項5】
前記類似度取得ステップにおいては、
前記テンプレートと前記比較パターン間の相関値に基づいて前記類似度を判別する
請求項4記載のデータ処理方法。
【請求項6】
前記サーボデータは、トルクデータを含み、
前記パターン抽出ステップにおいては、
前記テンプレートおよび前記比較パターンの対応する前記トルクデータを比較する
請求項4または5記載のデータ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列に発生する多量のデータを処理するデータ処理装置およびデータ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時系列に発生する多量のデータを処理するデータ処理方法は、たとえば、産業用ロボットの故障診断方法に利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
一般に、産業用ロボットの故障診断方法では、サーボモータを駆動源とする産業用ロボットのデータを収集して抽出し、所定の処理を行い、そのデータを用いて産業用ロボットの経年変化を監視している。
【0004】
具体的には、機械的な部分である機構部の経年変化を監視するために、たとえば、カセット内に収納されている半導体ウェハ等を産業用ロボットのハンドで搬入、搬出する動作等のように、ある決められた動作を定期的に実行させて、そのときのデータを取得し、導入当初の基準データと比較して異常であれば警報を発するシステムとして構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−172150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来は、基準データの収集動作を通常の生産動作とは別に用意して実行している。そのため、通常の生産運転と速度などの動作条件、動作パターンなど異なるので、経年変化として捉える解析も正確でない。
すなわち、時系列に発生する多量のデータの中から、動作条件、環境条件、動作パターン等の前提条件が基準となる動作パターンのデータと同じ比較したいデータを精度良く、容易に抽出することが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、時系列に発生する多量のデータの中から、比較したいデータを精度良く、容易に抽出することが可能なデータ処理装置およびデータ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、時系列に発生する多量のデータを収集して処理するデータ処理装置であって、入力される前記データを格納する記憶部と、前記記憶部に蓄積された前記データの中から、基準となる動作パターンのテンプレートと、当該テンプレートに類似する比較パターンとをそれぞれ抽出するパターン抽出部と、を有し、前記パターン抽出部は、前記データの中から前記テンプレートを作成するテンプレート作成部と、前記データの中から選択された比較パターンと、前記テンプレートとの類似度を取得する類似度取得部と、前記類似度取得部により取得した類似度に基づいて、前記テンプレートと類似動作パターンとなる比較パターンを抽出して格納する比較パターン抽出部と、を含み、前記時系列に発生するデータは、産業用ロボットを動作制御するために入力される指令データと、当該指令データに基づいて動作した前記産業用ロボットから出力されるサーボデータとを含み、前記テンプレートおよび前記比較パターンは前記指令データの中から作成され、前記パターン抽出部は、前記テンプレートおよび前記比較パターンの対応する前記サーボデータを比較する。
【0009】
このデータ処理装置によれば、時系列に発生する多量のデータの中から、比較したいデータを精度良く、容易に抽出することすることができる。
【0010】
本発明は、前記パターン抽出部の前記類似度判別部は、前記テンプレートと前記比較パターン間の相関値に基づいて前記類似度を判別するように構成してもよい。
【0011】
この構成によれば、類似度を相関値を用いて求めることで、式が高次で複雑な式でないことから、処理時間が短くてよく、高い処理能力を持ったコンピュータでなくともよく、汎用性に優れている。
【0012】
好適には、前記サーボデータは、トルクデータを含み、前記パターン抽出部は、前記テンプレートおよび前記比較パターンの対応する前記トルクデータを比較する。
【0013】
この構成によれば、既存技術では同じ入力条件に設定することが難しいという問題があったが、本構成によれば、同じ入力条件(テンプレートと動作パターン)が同じであるという前提で、このサーボデータを比較することに利点がある。
【0014】
本発明の第2の観点は、時系列に発生する多量のデータを収集して処理するデータ処理方法であって、入力される前記データを記憶部に格納する記憶ステップと、前記記憶部に蓄積された前記データの中から、基準となる動作パターンのテンプレートと、当該テンプレートに類似する比較パターンとをそれぞれ抽出するパターン抽出ステップと、を有し、前記パターン抽出ステップは、前記データの中から前記テンプレートを作成するテンプレート作成ステップと、前記データの中から選択された比較パターンと、前記テンプレートとの類似度を取得する類似度取得ステップと、前記類似度取得ステップにより取得した類似度に基づいて、前記テンプレートと類似動作パターンとなる比較パターンを抽出して格納する比較パターン抽出ステップと、を含み、前記時系列に発生するデータは、産業用ロボットを動作制御するために入力される指令データと、当該指令データに基づいて動作した前記産業用ロボットから出力されるサーボデータとを含み、前記テンプレートおよび前記比較パターンは前記指令データの中から作成され、前記パターン抽出ステップにおいては、前記テンプレートおよび前記比較パターンの対応する前記サーボデータを比較する。


【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、時系列に発生する多量のデータの中から、動作条件、環境条件、動作パターン等の前提条件が基準データと同じ比較したいデータを精度良く、容易に抽出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るロボット情報処理システムの概要を示す図である。
図2】本実施形態に係るデータ処理装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係るデータ処理装置におけるコントローラからの取得データの記憶部への蓄積の一例を示す図である。
図4】動作テンプレートの作成の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係るデータ処理装置においてテンプレートを作成する場合のロボット本体のハンドの動作例を示す図である。
図6】ロボット本体におけるハンドと搬送対象物のストッカを対応付けて示す図である
図7図5に対応するハンドの動作をハンドとストッカを用いて具体的に示す図である。
図8】本実施形態に係るデータ処理装置の類似度として相関値を用いた場合の比較パターンのサーチ方法を説明するための図である。
図9図8中の丸部分の動作をグラフ化して示す図である。
図10】本実施形態に係るロボット情報処理システムの全体の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
以下の実施形態においては、産業機械として産業用ロボットを動作制御するために入力される指令データおよび指令データに基づいて動作した産業用ロボットから出力されるサーボデータを収集するデータ処理装置を含むロボット情報処理システムを例に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るロボット情報処理システムの概要を示すブロック図である。
【0019】
本ロボット情報処理システム10は、図1に示すように、ロボット本体20、ロボット本体20の動作を制御するコントローラ30、およびデータ処理装置40を含んで構成されている。
【0020】
[ロボット本体およびコントローラの構成および機能]
本実施形態において、ロボット本体20およびコントローラ30により、たとえば半導体ウェハや液晶表示パネル用ガラス基板(以下、半導体ウェハ等とする)を搬送する産業用ロボット50として構成される。
コントローラ30は、ロボット本体20の動作を制御し、ロボット本体20の通常の生産での入力データとしての指令データ(位置や速度)と出力データとしてのサーボデータ(トルクや偏差など)をデータ処理装置40に時系列に出力する。
すなわち、指令データおよびサーボデータは時系列に発生する多量のデータである。さらに、入力データとしての指令データ(位置や速度)はプログラム等によって作成されるデータであり、経年変化の影響を受けないデータである。
一方、出力データとしてのサーボデータ(トルクや偏差など)は産業用ロボットを構成する機械的な部分である機構部等の経年変化を受けやすいデータである。
【0021】
本形態のコントローラ30は、後述するが、産業用ロボット50のロボットアーム20ARMの駆動源としてサーボモータを使用しており、コントローラ30から指令データをサーボモータに出力し、サーボモータに取り付けられているエンコーダから出力されるサーボデータとしての検出値をフィードバックさせて、サーボモータの回転位置などを目標値(指令データ)に一致させることにより、目標値(指令データ)の変化に追従させている。
【0022】
ロボット本体20は、ロボット基台21、アーム基軸部22、第1アーム部23、第2アーム部24、およびたとえばハンド25を有する。
【0023】
ロボット本体20において、ロボット基台21には、図中に設定した直交座標系のZ軸方向(図では上下方向)に延びるアーム基軸部22が昇降および回転自在に配置されている。
【0024】
アーム基軸部22の上端部には、第1アーム部23の基端部が固定されている。
第1アーム部23の先端部には、第2アーム部24の基端部が回転自在に取り付けられている。
第2アーム部24の先端部には、搬送対象物である半導体ウェハ等を保持して搬送するハンド25が回転自在に配置されている。
【0025】
このハンド25は、たとえば半導体ウェハ等の搬送対象物がその上に載置されるように構成される。
ハンド25は、その上に載置された半導体ウェハ等の搬送対象物を解放可能に保持することができるように形成されている。
【0026】
第2アーム部24は、その基端部にて、第1アーム部23の先端部に回転自在に設けられた第2アーム回転軸26に固定的に取り付けられている。
ハンド25は、その基端部にて、第2アーム部24の先端部に回転自在に配置されたハンド(Hand)軸27に固定的に取り付けられている。
【0027】
このようにロボット本体20のロボットアーム20ARMは、アーム基軸部22、第1アーム部23、第2アーム部24、ハンド25、第2アーム回転軸26、およびハンド軸27を含んでいる。
この種のロボットアーム20ARMは、スカラ型水平多関節アームと呼ばれ、ロボットの制御部としてのコントローラ30によりロボットアーム20ARMの動作を制御することにより、ハンド25をX軸、Y軸、およびZ軸方向の所望の位置まで移動するが可能である。
【0028】
ロボット本体20は、第1アーム部23を回転駆動する第1アーム駆動部201、第2アーム部24を回転駆動する第2アーム駆動部202、ハンド軸27を回転駆動するハンド軸駆動部203、およびアーム基軸部22をZ軸方向に昇降駆動する昇降駆動部204を有している。
【0029】
第1アーム駆動部201は、ロボット基台21の内部空間に配置され、エンコーダを内蔵するサーボモータおよびその動力伝達機構を含む。
第2アーム駆動部202は、第1アーム部23の内部空間に配置され、エンコーダを内蔵するサーボモータおおよびその動力伝達機構を含む。
ハンド軸駆動部203は、第2アーム部24の内部空間に配置され、エンコーダを内蔵するサーボモータおよびその動力伝達機構を含む。
【0030】
動力伝達機構には、たとえば減速機を備え、サーボモータの動力が減速機の入力側に伝達され、そのトルクが予め定める増幅比で増幅され、その回転速度が予め定める減速比で減速されて、減速機の出力側から出力される。
このようにして減速機の出力側から出力された動力によって、アーム基軸部22、第2アーム回転軸26、およびハンド軸27のそれぞれが回転駆動される。これにより、第1アーム部23、第2アーム部24、およびハンド25のそれぞれが回転駆動される。
【0031】
昇降駆動部204は、ロボット基台21の内部に配置されており、角変位量を調整可能なモータを用いたボールねじ機構によって実現される。
たとえば、昇降駆動部204は、ボールネジと、このボールネジに螺合される螺合体と、ボールネジを回転駆動するモータと、を含み、螺合体にアーム基軸部22が固定される。昇降駆動部204のモータには、エンコーダを内蔵するサーボモータが用いられる。
【0032】
このような構成を有するロボット本体20においては、第1アーム駆動部201によってアーム基軸部22がロボット基台21に対して回転軸線RX1周りに回転駆動される。
これにより、第1アーム部23が、ロボット基台21に対して回転軸線RX1周りに回転駆動される。
【0033】
第2アーム駆動部202によって、第2アーム回転軸26が、第1アーム部23に対して回転軸線RX2周りに回転駆動される。
これにより、第2アーム部24が、第1アーム部23に対して回転軸線RX2周りに回転駆動される。
【0034】
ハンド軸駆動部203によって、ハンド軸27が、第2アーム部24に対して回転軸線RX3周りに回転駆動される。
これにより、ハンド25が、第2アーム部24に対して回転軸線RX3周りに回転駆動される。
【0035】
ロボット本体20では、基本的に、通常の生産動作において、第1アーム駆動部201、第2アーム駆動部202、ハンド軸駆動部203、および昇降駆動部204の各サーボモータは、コントローラ30により入力される位置または速度指令に応じて駆動され、トルクや偏差などのサーボデータがコントローラ30に時系列に出力される。
【0036】
コントローラ30は、制御対象の第1アーム駆動部201、第2アーム駆動部202、ハンド軸駆動部203、および昇降駆動部204に対して位置または速度指令を出力し、各駆動部のサーボモータのエンコーダから、各サーボモータの角度位置を取得することによって、各駆動部をフィードバック制御する。
これにより、ハンド25を目的位置に精度良く位置合わせすることが可能となる。
【0037】
コントローラ30は、通常の生産動作でのロボット本体20のサーボ系駆動源(サーボモータ)の駆動制御に関する情報である指令(位置または速度)およびサーボデータ(トルク、偏差など)の時系列に発生する多量のデータS30をデータ処理装置40に出力する。
ここで、指令データとしての位置データ(または速度データ)は、産業用ロボット50を動作制御するために入力される入力データであり、コントローラ30からロボット本体20の対応する駆動部に出力されるデータである。サーボデータは、指令データに基づいて動作制御する産業用ロボット50から出力される出力データであり、ロボット本体20の駆動部からコントローラ30に出力されるデータである。
コントローラ30は、指令データとしての位置データ(または速度データ)および出力データとしてのサーボデータ(トルク、偏差など)を、ロボット本体20の通常の生産動作にあわせてデータ処理装置としてのCPC40に出力できるように構成されている。
なお、本実施形態では、コントローラ30から上記した位置データ(または速度データ)およびサーボデータ(トルク、偏差など)を時系列に出力するようにしている。
【0038】
コントローラ30は、たとえばCPU(Central Processing Unit)31およびメモリ32を含んで構成される。
CPU31は、メモリ32に格納される動作プログラムを実行してロボット本体20を制御する。
メモリ32には、ロボット本体20の動作を制御するための教示点に関するデータ(位置データ)を格納することもでき、メモリ32に格納された教示点に関するデータに基づいて、ハンド25が所定の位置へと動かされる。
また、メモリ32には、ハンド25の形状・寸法に関するデータ、ハンド25に保持された半導体ウェハ等の形状・寸法に関するデータも格納される。
【0039】
以上、ロボット本体20およびコントローラ30の構成および機能について説明した。
次に、本実施形態に係るデータ処理装置の構成および機能について詳細に説明する。
【0040】
[データ処理装置の構成および機能]
本実施形態に係るデータ処理装置40は、コントローラ30からロボット本体20の通常の生産動作にあわせて出力される、サーボ系駆動源の駆動制御に関する情報である位置データ(または速度データ)およびサーボデータ(トルク、偏差など)を収集して所定の処理を施し、たとえば時系列に発生する多量のデータの中から、動作条件、環境条件、動作パターン等の前提条件が基準データと略同じ比較したいデータを精度良く、容易に抽出する機能を有する。
【0041】
本実施形態に係るデータ処理装置40は、基本的に、コントローラ30から入力される時系列に発生する多量のデータに所定の処理を実施しており、位置データ (または速度データ)およびサーボデータを格納する記憶部、および記憶部に蓄積されたデータの中から基準となる動作パターンのテンプレート(基準データ)と、このテンプレートに類似する比較パターン(比較したいデータ)とを抽出するパターン抽出部と、を含んで構成される。
【0042】
データ処理装置40のパターン抽出部は、時系列に発生する多量のデータの中で、入力データとしての指令データ、すなわち、位置データ(または速度データ)に基づいて、基準データとしての動作パターンのテンプレートを作成する機能と、時系列に発生する多量のデータの中から選択された比較したいデータとしての比較パターンと、作成したテンプレートとの類似度を取得する類似度取得機能と、取得した類似度に基づいて、テンプレートと類似動作パターンとなる比較パターンを抽出して格納する比較パターン抽出機能と、を含む。
【0043】
パターン抽出部の類似度判別機能は、たとえばテンプレートと比較パターン間の相関値に基づいて類似度を判別する。
このように、類似度を相関値を用いて求めることで、式が高次で複雑な式でないことから、処理時間が短くてよく、高い処理能力を持ったコンピュータでなくともよく、汎用性に優れている。
【0044】
本実施形態においては、時系列に発生する多量のデータは、産業用ロボット本体20を動作制御するために入力される指令データと、指令に基づいて動作した産業用ロボット本体20からの出力データとを含み、テンプレートおよび比較パターンは指令データの中から作成される。
そして、パターン抽出部は、テンプレートおよび比較パターンの対応するデータを比較する。
後述するように、テンプレートおよび比較パターンには、それぞれ対応するサーボデータが関連付けされており、パターン抽出部は、テンプレートおよび比較パターンの対応するサーボデータを比較する。すなわち、本実施形態では、テンプレートと比較パターンに対応するサーボデータを比較することで、経年変化の影響を数値化することが可能となっている。
サーボデータは、たとえばトルクデータを含み、パターン抽出部は、テンプレートおよび比較パターンの対応するトルクデータを比較する。
【0045】
図2は、本実施形態に係るデータ処理装置の構成例を示すブロック図である。
図2のデータ処理装置40は、パーソナルコンピュータ(PC)等により構成され、制御部41、入力部42、出力部43、記憶部44、パターン抽出部45を有している。
【0046】
制御部41は、CPUおよびROM,RAM、外部記憶装置などの各種メモリを含んで構成され、各部の制御、データの一時的な格納制御、データの転送制御等を行う。
【0047】
入力部42は、キーボードやマウスなどによりユーザが入力した情報を受信し、受信した情報を制御部41に供給する。また、ロボット本体20から出力されたデータも制御部41によりここで受信して記憶部44に送られる。
【0048】
出力部43は、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display device)などのディスプレイへの表示を行ったり、プリンタによる印刷を行う。
【0049】
記憶部44は、各種設定データ(プログラム等)、時系列に発生する多量のデータである、産業用ロボット本体20に供給された入力データ(位置、速度指令)、また産業用ロボット本体20から出力される出力データとしてのサーボデータ(トルクデータ、偏差データ等)、および比較した結果のデータを記憶する。
【0050】
パターン抽出部45は、産業用ロボット本体20に供給された入力データ(位置指令、速度指令)からテンプレートを作成するとともに、動作条件、環境条件、動作パターン等の前提条件がテンプレート(基準データ)と略同一の動作パターン(比較パターン)を抽出する。
このパターン抽出部45は、テンプレート作成部451、比較(動作)パターン作成部452、類似度取得部453、および比較パターン抽出部(比較部)454を有する。
【0051】
テンプレート作成部451は、記憶部44に蓄積された時系列に発生する多量のデータの中から基準となる動作パターンのテンプレートを作成する。
比較パターン作成部452は、時系列に発生する多量のデータの中から、作成されたテンプレートと比較する対象としての比較パターン(動作パターン)を作成する。
【0052】
類似度取得部453は、時系列に発生する多量のデータから選択された比較パターンと、テンプレートとの類似度を取得する。
ここで、上述しているように、テンプレートおよび比較パターン(動作パターン)は、入力データとしての指令(位置や速度)はプログラム等によって作成されるデータであり、経年変化の影響を受けないデータである。したがって、テンプレートと比較パターン(動作パターン)は、動作条件、環境条件、動作パターン等の前提条件が略一致していると考えられる。
比較パターン抽出部454は、類似度取得部453により取得した類似度に基づいて、テンプレートと類似動作パターンとなる比較パターンを抽出して、たとえば制御部41の制御の下、記憶部44に格納する。
【0053】
次に、このパターン抽出部45における動作パターンのテンプレート化と略同一の動作パターンである比較パターンを抽出する処理を、データ例に関連付けて説明する。
ここでは、テンプレートと比較パターン間の相関値に基づいて類似度を判別する処理を例に説明する。
【0054】
図3は、本実施形態に係るデータ処理装置におけるコントローラからの取得データの記憶部への蓄積の一例を示す図である。
図4は、動作テンプレートの作成の一例を示す図である。
【0055】
[コントローラからの取得データの蓄積]
データ処理装置40は、コントローラ30から取得した位置指令とトルクデータを、図3に示すような形態で記憶部44に蓄積する。
図3には、データを収集した時刻、各時刻ごとの入力データとしての位置指令パルス、位置指令パルスに対応する出力データとしての出力トルクが明記されている。位置指令パルスは、各モータに取り付けられているエンコーダの出力数(パルス数)で示している。また、トルクデータは電流相当値であり、モータへ供給する電流値に比例する内部制御値である。
図3の例では、約20msec単位での取得している位置指令、トルクデータの一部を抜粋したものである。
なお、Hand、Z、TH….はロボットの動作軸の名称に対応しており、たとえば動作軸Handは図1のハンド軸27に相当し、動作軸ZはZ軸方向に昇降駆動されるアーム基軸部22のアーム基軸に相当する。また、動作軸THは、たとえば図1の第2アーム回転軸26に相当する。
【0056】
[動作テンプレートの登録]
データ処理装置40のパターン抽出部45は、テンプレート作成部451において記憶部44に蓄積されている過去からのサーボデータ変化を確認(チェック)したい軸の位置指令(または速度指令)の連続したデータの固まりを、たとえば図4に示すようなテンプレートTMPとして選択する。
具体的には、テンプレートTMPは、産業用ロボット50が初めて生産に供されるときは試運転が完了した時点、または産業用ロボットの動力伝達機構に修理や部品交換が施されときは通常運転が可能になった時点でもデータの中から作成される。換言すれば、動力伝達機構等に経年劣化が進行していないときに基準データを取得する。このように、基準データは、経年劣化が進んでいなければ、いつの時点で取得しても良いので、基準データ取得段階は厳密に定める必要はない。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸はハンド25の移動距離を相対的な値として示している。
図4は、あくまでも一例であって、図3のHand軸の位置指令パルスで連続しデータかたまりを動作テンプレートTMPとして登録したもので、それを分かりやすくするためにグラフ表示したものである。
【0057】
図5は、本実施形態に係るデータ処理装置においてテンプレートを作成する場合のロボット本体のハンドの動作例を示す図である。
図6は、ロボット本体におけるハンドと半導体ウェハ等(搬送対象物)を格納するストッカを対応付けて示す図である。
図7は、図5に対応するハンドの動作をハンドとストッカを用いて具体的に示す図である。
図6および図7において、60は半導体ウェハ等(搬送対象物)を格納するストッカを、70は搬送対象物の一例では半導体ウェハ等を示している。また、図7において、61はストッカ60内に形成されている複数の載置棚のある一の棚を示している。
なお、図7は、ロボットが半導体ウェハ等をストッカから搬出する動作を示している。ハンドのZ軸方向、図では下から上に向かって移動する動作を含む。
【0058】
図5において、ステップST1〜ST4は図4のテンプレートのグラフに付した符号ST1〜ST4に対応している。
ステップST1で、第1の位置PT1にあるハンド25をストッカ60の方向に延ばしを開始して、図7(A)に示すように、搬送すべき半導体ウェハ70等を保持できる第2の位置PT2に水平移動させる。この状態がステップST2である。
次に、図7(B)に示すように、第2の位置PT2においてハンド25で半導体ウェハ70等の下面部を吸着等の方法で保持し、図7(C)に示すように、第2の位置PT2でZ軸方向にアーム基軸部22の上昇(垂直移動)を開始する。
そして、ステップST3において、図7(C)に示すように、Z軸方向の第3の位置PT3で上昇を完了する。
次いで、ハンド25をストッカ60から離れる方向に水平移動させ、第4の位置PT4まで戻して、一連の動作が完了する。
【0059】
[比較したい日時のデータ範囲から上記動作テンプレートと同じものをサーチ]
次に、比較したい日時のデータ範囲から上記動作テンプレートと同じ動作パターン(比較パターン)をサーチする。
【0060】
図8は、本実施形態に係るデータ処理装置の類似度として相関値を用いた場合の比較パターンのサーチ方法を説明するための図である。
この例では、動作テンプレートの位置指令パルスと対象となるデータ範囲の中の位置指令パルス間の相関値をとる。
切り出す方法の一つの例として相関値をグラフ化したものが図8である。
この中からできるだけ相関値が0.999以上のものを抽出する(図8中符号Aで示す丸部分)。
なお、相関値が0.999以上のものを抽出することにしているのは、図6に示すように、産業ロボット50およびハンド25とストッカ60に形成された載置棚61との関係は、各棚ごとに異なっている。また、図示していないが、ストッカ60は複数のストッカが配置されているため、産業用ロボット50と各ストッカとの位置関係も異なっている。このような違いが、図8に示すような相関値の違いとなって生じている。
【0061】
[切り出した動作]
図9は、図8中の丸部分の動作をグラフ化して示す図である。
図9の比較パターンと図4の動作テンプレートとを比較すると、両者は実質的にまったく同じ動作(略同一の動作)あるいは類似の動作とみなすことができる。
【0062】
[テンプレートと抽出した(切り出した)動作パターンのトルクデータを比較]
上述したように、動作テンプレートと抽出した一致する動作パターン(比較パターン)のサーボデータ、たとえばトルクデータを比較する。
これにより、たとえばロボット本体20のサーボ系駆動部のいわゆる経年変化を確認(チェック)することが可能である。
換言すれば、期間の開いた同じ動作パターンが抽出できたので、その間のトルクデータを比較することにより、経年変化を確認(チェック)する。
なお、比較方法は、特許文献1に記載された方法等、種々の方法を採用可能である。
【0063】
すなわち、上述したテンプレートと動作パターンには、それぞれ、対応するデータ(本実施形態ではサーボデータとしてのトルクデータ)が関連付けされている。
従来は、同じ入力条件に設定することが難しいという問題があったが、本実施形態によれば、同じ入力条件(テンプレートと動作パターン)が同じであるという前提で、このサーボデータを比較することに利点がある。
【0064】
このように、本実施形態では、上記したとおり、位置指令におけるテンプレートと動作パターンとが同一であることによって、入力条件が同じとなる。そのときのロボットからの出力、すなわち、サーボデータを比較することで、ロボットの経年変化を確認することが可能となり、故障診断を行うことが可能となる。
具体的には、ロボットの経年変化によって、たとえば、モータ、軸受等の寿命、劣化等が生じるが、同じ入力条件(位置指令)に対して、ロボット本体の出力(サーボデータ)を比較することで、出力差を調べて、各部品の寿命や交換時期等を判断することが可能となる。
【0065】
[ロボット情報処理システムの全体の動作]
図10は、本実施形態に係るロボット情報処理システムの全体の動作を説明するためのフローチャートである。
次に、上記構成を有するロボット情報処理システムの全体の動作をデータ処理装置40の動作を中心に、図10のフローチャートに関連付けて説明する。
【0066】
本実施形態のロボット情報処理システム10においては、通常の生産動作での産業用ロボットから指令(ロボットに入力するデータ)とサーボデータ(ロボットから出力されるデータ)を取得することが可能である。
作業用ロボットの通常の生産動作において(ステップST11)、コントローラ30がサーボ系駆動源の駆動制御に関する情報である指令およびサーボデータをデータS30としてデータ処理装置40へ出力する(ステップST12)。
これにより、データ処理装置40は、入力される指令およびサーボデータを、たとえば約20msec単位で収集し、収集したデータを記憶部44に蓄積する(ステップST13、ST14)。
【0067】
たとえば、対象としている産業用ロボットは、たとえば図6および図7に示すように、半導体ウェハを収容するストッカ60と対向する位置関係にあり、ロボットのハンド25が半導体ウェハをストッカ60内に搬入し、またはストッカから搬出する動作を行う。
図7に示す動作をロボットは、図6に示すストッカ内の各段に対して処理するが、1つまたは複数配置されたストッカの位置や各ストッカのロボットとの位置関係等により、ロボットのハンドの位置が微妙に異なってくる。
具体的には、図4等に示す動作パターンの縦軸の値が微妙に異なってくる。
そのために、本実施形態に係るデータ処理装置40では、時系列に発生する多量(膨大)のデータの中から、微妙に異なる動作パターンと略同一の動作パターン(実施形態では相関値が0.999)を取り出すことを、精度良く、容易に短時間で処理することを可能とする。
【0068】
具体的には、データ処理装置40は、時系列に発生する多量のデータの中から、参照または基準となる動作パターンであるテンプレートを作成する(ステップST15)。
次に、データ処理装置40は、上記した多量のデータの中から、作成したテンプレートと略同一の動作パターンである比較パターンを類似度(たとえば相関値)を取得して抽出する(ステップST16)。
すなわち、テンプレートと選択した比較パターンとが略一致するか否かを判別し(ステップST17)、一致する場合には(ステップST17のYes)、その一致する比較パターンを抽出し(ステップST18)、記憶部44に格納する(ステップST19)。
ステップST17において、テンプレートと選択した比較パターンとが略一致しないと判別した場合には(ステップST17のNo)、ステップST16の処理に戻る。
なお、テンプレートや動作パターン(比較パターン)の作成は、繰り返し実行される。
【0069】
そして、たとえば抽出した比較パターンとテンプレートとした動作パターン間のサーボデータを比較し(ステップST20)、経年変化を確認する(ステップST21)。
【0070】
以上説明したように、本実施形態のデータ処理装置を含むロボット情報処理システム10は以下の構成を有する。
位置データ(または速度データ) およびサーボデータ(トルク、偏差など)を常時出力できるコントローラ30を有し、データ処理装置40は、時系列に発生する多量のデータを収集、保存、蓄積する。
データ処理装置40は、所望する動作パターン、たとえば経年変化を確認した動作パターンを位置指令(または、速度指令)を使用してテンプレート(基準データ)とする。
データ処理装置40は、テンプレートにて過去の蓄積された位置指令(または速度指令)と類似度を取得し、一致する(類似度の高い)動作パターンを抽出する。
そして、任意ではあるが、抽出した動作パターンとの動作パターンのテンプレート間のサーボデータを比較し経年変化を確認(チェック)する。
【0071】
その結果、本実施形態のデータ処理装置40によれば、過去と現在の任意の動作パターン間で、それに付随するトルクデータ、偏差データなどが解析可能になる。産業用ロボットの場合の生産運転は繰り返し動作が基本なので経時的に必ず同じ動作がある。
たとえば、図5および図7に示すような動作を、ストッカ60の複数の載置棚61の各棚ごと、また、複数のストッカに対して実施する。また、図5および図7では、ストッカ60に格納された半導体ウェハ70等を搬出する動作であるが、逆に、ハンド25を用いて、半導体ウェハ70等をストッカ60の載置棚61の所定の棚に搬入する動作がある。
【0072】
速度パターンのテンプレートは単動作、位置パターンのテンプレートでは組み合わせ動作の抽出が可能になり、また、各軸の複数のテンプレートを使用すれば、長い動作パターン同士の比較も可能になり、任意の動作パターンでの比較が可能である。
具体的には、本実施形態では、産業用ロボット50の動作は図5および図7に示す動作であるので、テンプレートおよび動作パターンとしてのパターンは、位置指令としての位置データを採用している。すなわち、図4および図9に示すような単純な台形形状である。
産業用ロボット50の動作が複雑な場合には、位置パターンで表した場合には単純な台形形状ではなく、複雑な形状となる場合がある。このような場合には、1つの動作、すなわち、図5図7)のステップST1の動作だけを用いて、速度指令としての速度データを用いてもよい。すなわち、ステップST1の動作を速度指令で考えると、停止した状態から所定の動作になるまで加速されることで速度が増加し、その後、一定の速度、さらに、動作を停止させるために速度を減少させて、速度がゼロとなり、所定の位置で停止することになる。この動作を速度と位置と時間との関係でグラフ化すれば、図4および図9と同じような単純な台形形状で表すことが可能となる。
【0073】
また、この機能を利用すればエラーが発生したときの動作パターンもテンプレートにして、過去にさかのぼって同じ動作パターンを抽出し、サーボデータの変化の比較が可能になり、エラー要因がサーボ系に関係するか判断できる。
【0074】
また、本データ処理装置によれば、エラー発生時の動作パターンをテンプレートにして過去の同じ動作からサーボデータが変化していないか確認できる。この結果、エラー要因が機構部を含めたサーボ系に起因するものかどうか判断できる。
たとえば、サーボ系のエラーが発生したときにその時点までに蓄積していた位置(または速度)データからエラーが発生した動作パターンをテンプレート化する。
そのテンプレートから過去にさかのぼって同じ動作パターンを抽出する。過去の同じ動作パターンのサーボデータとエラーが発生した動作パターンのサーボデータと比較してエラー要因がサーボに起因するものかチェックする。
産業用ロボットではサイクルタイムの把握が求められる場合が多いがこの機能を応用するとサイクルタイムが自動的に導き出すことができる。
サイクルタイムの動作パターンをテンプレートとして登録する。
過去の動作パターンをサーチして同じ動作パターンを抽出してサイクルタイムを算出する。
【0075】
以上説明したように、本実施形態のデータ処理装置40によれば、時系列に発生する多量のデータを収集して処理するデータ処理装置40は、入力される多量のデータを格納する記憶部44と、記憶部44に蓄積されたデータの中から、基準となる動作パターンのテンプレートと、テンプレートに類似する比較パターンとをそれぞれ抽出するパターン抽出部45と、を有する。そして、パターン抽出部44は、記憶されたデータの中からテンプレートを作成するテンプレート作成部451と、記憶されたデータの中から選択された比較パターンと、テンプレートとの類似度を取得する類似度取得部453と、類似度取得部453により取得した類似度に基づいて、テンプレートと類似動作パターンとなる比較パターンを抽出して格納する比較パターン抽出部454と、を含む。
その結果、本実施形態のデータ処理装置によれば、時系列に発生する多量のデータの中から、比較したいデータを精度良く、容易に抽出することすることができる。
【0076】
また、本実施形態のデータ処理装置40は、パターン抽出部45の類似度判別部453は、テンプレートと比較パターン間の相関値に基づいて類似度を判別するように構成される。
この構成を有することにより、本実施形態のデータ処理装置40によれば、類似度を相関値を用いて求めることで、式が高次で複雑な式でないことから、処理時間が短くてよく、高い処理能力を持ったコンピュータでなくともよく、汎用性に優れているという利点がある。
【0077】
また、本実施形態のデータ処理装置40は、時系列に発生するデータは、産業用ロボット50を動作制御するために入力される指令と、この指令に基づいて動作した産業用ロボット50からの出力データとを含み、テンプレートおよび比較パターンは指令データの中から作成される。そして、パターン抽出部45は、テンプレートおよび比較パターンの対応するデータを比較するように構成される。
サーボデータは、トルクデータを含み、パターン抽出部45は、テンプレートおよび比較パターンの対応するトルクデータを比較する。
【0078】
この構成を有することにより、本実施形態のデータ処理装置40によれば、既存技術では同じ入力条件に設定することが難しいという問題があったが、本構成によれば、同じ入力条件(テンプレートと動作パターン)が同じであるという前提で、このサーボデータを比較することに利点がある。
換言すれば、本構成を有するデータ処理装置40によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)既存技術のようにサーボ関係の経年変化を見るために、基礎データ取得動作のような通常の生産動作とは異なる動作を用意する必要が無い。
(2)生産動作そのもののトルクデータを検査するので、実データに即した解析が可能である。
(3)この任意の特定動作のテンプレート機能により以下のようなことが可能である。
・生産中にエラーが突然発生したときに、そのときの動作パターンをテンプレートにして過去のデータをサーチし、正常時のトルクデータと比較でき、サーボ系が要因か判断できる。
・特定の動作で音がなるような症状が確認できたときに、そのときの動作パターンをテンプレートにして過去の動作パターンを抽出して、過去のトルクデータと比較し、機構系に変化がないか判断できる。
(4)サイクルを表すテンプレートを登録しておことにより、サイクルタイムの経年変化が把握できる。
【0079】
なお、以上詳細に説明した方法は、上記手順に応じたプログラムとして形成し、CPU等のコンピュータで実行するように構成することも可能である。
本実施形態では、テンプレートとして、経年劣化が進行していない時点の動作を選択したが、これに限定されるものではない。たとえば、本実施形態に示すように、テンプレート作成部451において記憶部44に蓄積されている過去からのサーボデータ変化を確認(チェック)したい軸の位置指令(または速度指令)の連続したデータの固まりをテンプレートとしてもよい。
また、このようなプログラムは、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク等の記録媒体、この記録媒体をセットしたコンピュータによりアクセスし上記プログラムを実行するように構成可能である。
【符号の説明】
【0080】
10・・・ロボット情報処理システム、20・・・ロボット本体、21・・・、30・・・コントローラ、40・・・データ処理装置、41・・・制御部、42・・・入力部、43・・・出力部、44・・・記憶部、45・・・パターン抽出部、451・・・テンプレート作成部、452・・・比較(動作)パターン作成部、453・・・類似度取得部(類似度演算部)、454・・・比較パターン抽出部(比較部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10