特許第6211897号(P6211897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62118973−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211897
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/50 20060101AFI20171002BHJP
   C07C 47/14 20060101ALI20171002BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20171002BHJP
【FI】
   C07C45/50
   C07C47/14
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-228092(P2013-228092)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-86200(P2015-86200A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】591180358
【氏名又は名称】東ソ−・エフテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山川 哲
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−068512(JP,A)
【文献】 特開2002−308817(JP,A)
【文献】 特開2000−053606(JP,A)
【文献】 Ojima, Iwao et al.,Journal of the American Chemical Society,1987年,109(25),7714-7720
【文献】 Nozaki, Kyoko et al.,Bulletin of the Chemical Society of Japan,1999年,72(8),1911-1918
【文献】 Ahmed, Moballigh et al.,Journal of the American Chemical Society ,2003年,125(34),10311-10318
【文献】 Kranenburg, Mirko et al.,Organometallics,1995年,14(6),3081-3089
【文献】 Selent, Detlef et al.,Organometallics,2011年,30(17),4509-4514
【文献】 Vogl, Christian et al.,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2005年,232(1-2),41-44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B
C07C
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジウム化合物および、一般式(1−1)
【化1】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1から3のアルコキシ基を示す。Xはジメチルメチレン基またはイミノ基を示す。)または一般式(1−2)
【化2】
(式中、Rは、炭素数1から3のアルキル基を示す。Rは、炭素数1から4のアルキル基を示す。)で表されるジホスフィンの存在下、一般式(2)
【化3】
(式中、Rfは、炭素数1〜16のペルフルオロアルキル基を示す。)で表される(ペルフルオロアルキル)エチレンと、一酸化炭素および水素とを反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化4】
(式中、Rfは、前記と同じ内容を示す。)で表される3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法。
【請求項2】
Rfがトリフルオロメチル基である請求項1に記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法。
【請求項3】
一酸化炭素および水素の分圧が各々独立に0.1〜0.9気圧であり、かつ、一酸化炭素、水素および(ペルフルオロアルキル)エチレン(2)の分圧の総和が1気圧以下である請求項1または2に記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法。
【請求項4】
一酸化炭素と水素の分圧比が、1:1〜9:1である請求項1から3のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法。
【請求項5】
反応温度が、70〜120℃である請求項1から4のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法。
【請求項6】
ロジウム化合物が、ヘキサロジウム(0)ヘキサデカカルボニル、ヒドロキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、メトキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)、ヒドリドカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)およびトリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)から選ばれる一種以上である請求項1から5のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法。
【請求項7】
Xが、ジメチルメチレン基であり、Rが、水素原子、フッ素原子またはメトキシ基である請求項1から6のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法。
【請求項8】
Xが、ジメチルメチレン基であり、Rが、水素原子である請求項1から6のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法。
【請求項9】
Xが、イミノ基であり、Rが、水素原子である請求項1から6のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法。
【請求項10】
がメチル基でありかつRがtert−ブチル基である請求項1から6のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法として、金属触媒の存在下に、(ペルフルオロアルキル)エチレンと、一酸化炭素および水素とを反応させる方法、いわゆるヒドロホルミル化が知られている。非特許文献1には、コバルト、白金、ルテニウムまたはロジウム化合物から成る触媒の存在下、110−130気圧の一酸化炭素と水素の1:1混合ガス中で3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ−1−デセンをヒドロホルミル化する方法が開示されている。また、非特許文献2および3には、ロジウム化合物とジホスフィンから成る触媒の存在下、20−100気圧の一酸化炭素と水素の1:1混合ガス中で3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクテンをヒドロホルミル化する方法が開示されている。
【0003】
(ペルフルオロアルキル)エチレンのヒドロホルミル化においては、目的とする3−(ペルフルオロアルキル)プロパナール(以下、直鎖アルデヒドと称する)とともに、2−メチル−2−(ペルフルオロアルキル)エタナール(以下、分岐アルデヒドと称する)が副生する。ヒドロホルミル化後の分離工程を簡便にするためには、分岐アルデヒドの副生を極力抑制し、生成する直鎖アルデヒドの割合((直鎖アルデヒドの収率)/(直鎖アルデヒドの収率+分岐アルデヒドの収率)、以下、選択率と称する)が高いことが好ましい。非特許文献1に記載のオクタカルボニルジコバルト存在下での3,3,3−トリフルオロプロペンのヒドロホルミル化では、直鎖アルデヒドである4,4,4−トリフルオロブタナールの選択率は、93%である。また、白金、ルテニウムまたはロジウム化合物の存在下では、3%−71%である。さらにテトラロジウムドデカカルボニルの存在下、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ−1−デセンのヒドロホルミル化では、選択率は、5.3−27.2%である。また、非特許文献2および3に記載のロジウム化合物存在下での3,3,3−トリフルオロプロペンのヒドロホルミル化では、選択率は4−12%である。また、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクテンのヒドロホルミル化では、選択率は9%である。
【0004】
1,1’−(9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル)ビス(1,1−ジフェニルホスフィン)およびその誘導体は、ロジウム化合物と組み合わせて用いることにより、選択率が極めて高いヒドロホルミル化用触媒となることが開示されている(例えば、非特許文献4、5)。また、6,6’−[(3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)]ビス(ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)は、ロジウム化合物と組み合わせて用いることにより、選択率が極めて高いヒドロホルミル化用触媒となることが開示されている(例えば、非特許文献6)。これらの触媒系を用いたヒドロホルミル化でも、10−33気圧の高圧の一酸化炭素と水素の1:1混合ガス中で実施されている。また、これらの触媒系を用いて、(ペルフルオロアルキル)エチレンのヒドロホルミル化を実施した例はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society,109巻,7714ページ,1987年.
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society,119巻,4413ページ,1997年.
【非特許文献3】Journal of the American Chemical Society,125巻,8555ページ,2003年.
【非特許文献4】Organometallics,14巻,3081ページ,1995年.
【非特許文献5】Journal of the American Chemical Society,125巻,10311ページ,2003年.
【非特許文献6】Angewandte Chemie,International Edition,52巻,1586ページ,2013年.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、(ペルフルオロアルキル)エチレンのヒドロホルミル化により、低圧条件下で、直鎖アルデヒドを高い選択率で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を鑑み、鋭意検討を重ねた結果、ロジウム化合物およびジホスフィンを用いることにより、(ペルフルオロアルキル)エチレンのヒドロホルミル化で、1気圧以下の低圧で直鎖アルデヒドを高い選択率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
(i)ロジウム化合物および、一般式(1−1)
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1から3のアルコキシ基を示す。Xはジメチルメチレン基またはイミノ基を示す。)または一般式(1−2)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、Rは、炭素数1から3のアルキル基を示す。Rは、炭素数1から4のアルキル基を示す。)で表されるジホスフィンの存在下、一般式(2)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、Rfは、炭素数1〜16のペルフルオロアルキル基を示す。)で表される(ペルフルオロアルキル)エチレンと、一酸化炭素および水素とを反応させることを特徴とする、一般式(3)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、Rfは、前記と同じ内容を示す。)で表される3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法;
(ii)Rfがトリフルオロメチル基である請求項(i)に記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法;
(iii)一酸化炭素および水素の分圧が各々独立に0.1〜0.9気圧であり、かつ、一酸化炭素、水素および(ペルフルオロアルキル)エチレン(2)の分圧の総和が1気圧以下である(i)または(ii)に記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法;
(iv)一酸化炭素と水素の分圧比が、1:1〜9:1である(i)から(iii)のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法;
(v)反応温度が、70〜120℃である(i)から(iv)のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法;
(vi)ロジウム化合物が、ヘキサロジウム(0)ヘキサデカカルボニル、ヒドロキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、メトキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)、ヒドリドカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)およびトリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)から選ばれる一種以上である(i)から(v)のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法;
(vii)Xが、ジメチルメチレン基であり、Rが、水素原子、フッ素原子またはメトキシ基である(i)から(iv)のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法;
(viii)Xが、ジメチルメチレン基であり、Rが、水素原子である(i)から(iv)のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法;
(ix)Xが、イミノ基であり、Rが、水素原子である(i)から(iv)のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法;
(x)Rがメチル基でありかつRがtert−ブチル基である(i)から(iv)のいずれかに記載の3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールの製造方法;
に関するものである。
以下に本発明を詳細に説明する。
ジホスフィン(1−1)のRで表されるハロゲン原子としては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。収率および選択率が良い点で、フッ素原子が好ましい。
【0016】
ジホスフィン(1−1)のRで表される炭素数1〜3のアルコキシ基は、直鎖または分岐のいずれでも良く、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基が例示できる。収率および選択率が良い点で、メトキシ基が好ましい。
ジホスフィン(1−1のXは、ジメチルメチレン基またはイミノ基である。
ジホスフィン(1−2)のRで表される炭素数1〜3のアルキル基は、直鎖または分岐のいずれでも良く、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が例示できる。収率および選択率が良い点で、メチル基が好ましい。
ジホスフィン(1−2)のRで表される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖または分岐のいずれでも良く、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できる。収率および選択率が良い点で、tert−ブチル基が好ましい。
【0017】
(ペルフルオロアルキル)エチレン(2)のRfで表されるペルフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、ペルフルオロ−tert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロイソペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロイソヘキシル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロシクロオクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデカニル基、ペルフルオロウンデカニル基、ペルフルオロドデカニル基、ペルフルオロトリデカニル基、ペルフルオロテトラデカニル基、ペルフルオロペンタデカニル基、ペルフルオロヘキサデカニル基等が例示できる。医薬品や機能性材料合成用の含フッ素ビルディングブロックとして有用な点で、直鎖状が好ましく、中でもトリフルオロメチル基が好ましい。
【0018】
本発明で用いることのできるロジウム化合物としては、具体的には、ヘキサロジウム(0)ヘキサデカカルボニル、テトラロジウム(0)ドデカカルボニル等の0価ロジウム化合物、クロロビス(2,2’−ビピリジル)ロジウム(I)、(アセチルアセトナト)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)、クロロビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)ダイマー、ヒドロキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、メトキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、クロロ(ノルボルナジエン)ロジウム(I)ダイマー、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、ヒドリドカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)等のI価ロジウム化合物、三塩化ロジウム(III)、酢酸ロジウム(III)、硝酸ロジウム(III)、クロロペンタキス(トリクロロスタナト)ロジウム(III)、クロロ(テトラフェニルポルフィリナト)ロジウム(III)、ヘキサアンミンロジウム(III)塩、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)等のIII価ロジウム化合物を例示することができる。収率および選択率が良い点で、ヘキサロジウム(0)ヘキサデカカルボニル、ヒドロキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、メトキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)、ヒドリドカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)が好ましい。
【0019】
また、これらのロジウム化合物の内、クロロビス(2,2’−ビピリジル)ロジウム(I)、クロロビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)ダイマー、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、クロロ(ノルボルナジエン)ロジウム(I)ダイマー、(クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、塩化ロジウム(III)、クロロペンタキス(トリクロロスタナト)ロジウム(III)、クロロ(テトラフェニルポルフィリナト)ロジウム(III)等のクロロ配位子をもつロジウム化合物を用いる場合は、有機塩基を添加することが、収率および選択率が良い点で好ましい。用いることのできる有機塩基としては、ピリジン、4−アミノピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール等の芳香族アミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等の脂肪族アミンが例示できる。収率および選択性が良い点で、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、N−メチルイミダゾール、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミンが好ましい。
【0020】
有機塩基の使用量に特に制限はないが、ロジウム化合物中のロジウム原子に対して1〜500倍モルから適宜選ばれる量を用いることができる。
ジホスフィン(1−1)は、具体的には、1,1’−(9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル)ビス(1,1−ジフェニルホスフィン)、1,1’−(9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル)ビス[1,1−ジ(4−メトキシフェニル)ホスフィン]、1,1’−(9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル)ビス[1,1−ジ(4−フルオロフェニル)ホスフィン]、4,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)−10H−フェノキサジンが、収率および選択率が良い点で好ましい。また、ジホスフィン(1−2)は、具体的には、6,6’−[(3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)]ビス(ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)が、収率および選択率が良い点で好ましい。これらのジホスフィン(1−1、1−2)は、市販品を用いても良いし、Organometallics,14巻,1995年,3081ページ.
または、US 2002/0049355.に記載の方法で合成することができる。
【0021】
ロジウム化合物の使用量に特に制限はないが、(ペルフルオロアルキル)エチレン(2)に対して、収率および選択率が良い点で、ロジウム化合物中のロジウム原子が0.001mol%〜5mol%が好ましく、0.01mol%〜2mol%がさらに好ましい。
【0022】
ロジウム化合物中のロジウム原子とジホスフィン(1−1、1−2)のモル比に特に制限はないが、1:0.1〜1:25が好ましく、1:0.5〜1:15がさらに好ましい。
【0023】
本製造方法は、一酸化炭素および水素の分圧が各々独立に0.1〜0.9気圧であり、かつ、一酸化炭素、水素および(ペルフルオロアルキル)エチレン(2)の分圧の総和が1気圧以下で実施することが、収率および選択性が良い点で好ましく、1気圧がさらに好ましい。
【0024】
一酸化炭素と水素のモル比は、収率および選択性が良い点で、1:1〜9:1が好ましく、1:1〜7.5:2.5がさらに好ましい。
一酸化炭素および水素は、(ペルフルオロアルキル)エチレン(2)に対して3倍モル以上であることが収率および選択率が良い点で好ましい。
【0025】
本発明の製造方法は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン等の脂肪族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル、アセトン、エチルメチルケトン、メチル(tert−ブチル)ケトン等のケトン、N−メチルピロリドン等のラクタム、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素を例示することができ、上記の有機溶媒のうち2種類以上を混合しても差し支えない。収率および選択率が良い点で、トルエン、ヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドンおよびこれらの混合溶媒が好ましい。
【0026】
(ペルフルオロアルキル)エチレン(2)が常温で気体の場合、気体のまま供給してもよいが、収率および選択率が良い点で溶媒に溶かして用いることが好ましい。その際、上記の反応用の溶媒を用いることが、利便性の点で好ましい。また、その際の濃度は、(ペルフルオロアルキル)エチレン(2)の溶解度によるが、収率および選択率が良い点で、0.05〜5mol/Lが好ましく、0.1〜1mol/Lがさらに好ましい。
【0027】
本発明の製造方法は、20℃〜200℃の温度から適宜選ばれた温度で実施することができる。収率および選択率が良い点で、70℃〜120℃が好ましい。
【0028】
反応時間に特に制限はないが、0.5時間以上行うことで、目的物を収率および選択性良く得ることができる。
【0029】
反応溶液から生成物を分離する方法としては、蒸留、カラムクロマトグラフィー、分取クロマトグラフィー、再結晶等、汎用的な方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、医薬品や機能性材料合成用の含フッ素ビルディングブロックとして重要な化合物である3−(ペルフルオロアルキル)プロパナールを、低圧条件下で高い選択率で製造する方法として有効である。
【実施例】
【0031】
次に本発明を実施例および比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例中では、以下の略号および化学式を用いる。
TFP:3,3,3−トリフルオロプロペン、TFB:4,4,4−トリフルオロブタナール、TFMP:3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロパナール、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、THF:テトラヒドロフラン、Xantphos:1,1’−(9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル)ビス(1,1−ジフェニルホスフィン)、[Rh(OH)(cod)]:ヒドロキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、CO:一酸化炭素、H:水素.
【0032】
なお、生成物の定量は、ベンゾトリフルオリドを内部標準とし、19F−NMRで行った。生成物の濃度を反応溶液と同一とし、直鎖アルデヒドの選択率が91%、95%、97%、99%、99.5%の5種類の標準試料を用いて検量線を作成し、直鎖アルデヒドと分岐アルデヒドのモル比が19F−NMRピークの面積比と同じとなることを確認した。さらに、選択率97%および99%の標準試料について、GCを用いて算出した選択率と一致することを確認した。
【0033】
実施例−1
【0034】
【化5】
【0035】
反応容器に[Rh(OH)(cod)]4.6mg(0.01mmol)、Xantphos34.7mg(0.06mmol)およびDMF5mLを加え、分圧0.5気圧のCO(0.6L)および分圧0.5気圧のH(0.6L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱撹拌した。この溶液に、TFP0.5mol/LのDMF溶液5mL(TFP含有量2.5mmol)を加え、80℃で15時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、TFB1.99mmol(収率80%)およびTFMP0.025mmol(収率1.0%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
TFB
H−NMR(重クロロホルム):δ2.46(2H,m),2.77(2H,t,J=7.5Hz),9.81(1H,brs).
19F−NMR(重クロロホルム):δ−66.7.
TFMP
H−NMR(重クロロホルム):δ1.33(3H,d,J=7.2Hz),3.10(1H,m),9.77(1H,m).
19F−NMR(重クロロホルム):δ−68.5.
【0036】
実施例−2
90℃で反応を行った以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.85mmol(収率74%)およびTFMP0.010mmol(収率0.4%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0037】
実施例−3
100℃で反応を行った以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.55mmol(収率62%)が生成していることを確認した。TFMPの生成は認められなかった。
【0038】
実施例−4
Xantphosの量を17.4mg(0.03mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.84mmol(収率74%)およびTFMP0.061mmol(収率2.5%)が生成していることを確認した。選択率は97%であった。
【0039】
実施例−5
Xantphosの量を52.1mg(0.09mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.95mmol(収率78%)およびTFMP0.029mmol(収率1.1%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0040】
実施例−6
DMFをトルエンに替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.61mmol(収率64%)およびTFMP0.033mmol(収率1.3%)が生成していることを確認した。選択率は98%であった。
【0041】
実施例−7
DMFをアセトニトリルに替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.60mmol(収率64%)およびTFMP0.029mmol(収率1.2%)が生成していることを確認した。選択率は98%であった。
【0042】
実施例−8
DMFをN,N−ジメチルアセトアミドに替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.88mmol(収率75%)およびTFMP0.051mmol(収率2.0%)が生成していることを確認した。選択率は97%であった。
【0043】
実施例−9
DMFをN−メチルピロリドンに替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.92mmol(収率77%)およびTFMP0.009mmol(収率0.4%)が生成していることを確認した。選択率は99.5%であった。
【0044】
実施例−10
DMFをジメチルスルホキシドに替え、TFP0.2mol/Lのジメチルスルホキシド溶液10mL(TFP含有量2.0mmol)を加えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.56mmol(収率78%)およびTFMP0.034mmol(収率1.7%)が生成していることを確認した。選択率は98%であった。
【0045】
実施例−11
Xantphosを1,1’−(9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル)ビス[1,1−ジ(4−メトキシフェニル)ホスフィン]41.9mg(0.06mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.94mmol(収率77%)およびTFMP0.012mmol(収率0.5%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0046】
実施例−12
Xantphosを1,1’−(9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル)ビス[1,1−ジ(4−フルオロフェニル)ホスフィン]37.9mg(0.06mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.90mmol(収率76%)およびTFMP0.058mmol(収率2.3%)が生成していることを確認した。選択率は97%であった。
【0047】
実施例−13
Xantphosを4,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)−10H−フェノキサジン33.1mg(0.06mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.67mmol(収率67%)およびTFMP0.063mmol(収率2.5%)が生成していることを確認した。選択率は96%であった。
【0048】
実施例−14
Xantphosを6,6’−[(3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)]ビス(ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)47.2mg(0.06mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.53mmol(収率61%)およびTFMP0.061mmol(収率2.5%)が生成していることを確認した。選択率は96%であった。
【0049】
実施例−15
[Rh(OH)(cod)]をメトキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー4.8mg(0.01mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.90mmol(収率76%)およびTFMP0.038mmol(収率1.5%)が生成していることを確認した。選択率は98%であった。
【0050】
実施例−16
[Rh(OH)(cod)]を(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)4.8mg(0.02mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.95mmol(収率78%)およびTFMP0.012mmol(収率0.5%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0051】
実施例−17
[Rh(OH)(cod)]をヒドリドカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)13.1mg(0.02mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.86mmol(収率74%)およびTFMP0.015mmol(収率0.6%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0052】
実施例−18
[Rh(OH)(cod)]をヘキサロジウム(0)ヘキサデカカルボニル3.6mg(0.0033mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.96mmol(収率78%)およびTFMP0.012mmol(収率0.5%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0053】
実施例−19
[Rh(OH)(cod)]をトリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)8.0mg(0.02mmol)に替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.90mmol(収率76%)およびTFMP0.012mmol(収率0.5%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0054】
実施例−20
混合ガスを、分圧0.6気圧のCO(1.08L)および分圧0.4気圧のH(0.72L)の混合ガスに替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB2.00mmol(収率80%)およびTFMP0.028mmol(収率1.1%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0055】
実施例−21
混合ガスを、分圧0.7気圧のCO(1.26L)および分圧0.3気圧のH(0.54L)の混合ガスに替えた以外は、実施例−1と同じ操作を行い、TFB2.17mmol(収率87%)およびTFMP0.032mmol(収率1.3%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0056】
実施例−22
混合ガスを、分圧0.75気圧のCO(1.35L)および分圧0.25気圧のH(0.45L)の混合ガスに替えた以外は実施例−1と同じ操作を行い、TFB2.24mmol(収率89%)およびTFMP0.031mmol(収率1.2%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0057】
実施例−23
混合ガスを、分圧0.8気圧のCO(1.44L)および分圧0.2気圧のH(0.36L)の混合ガスに替えた以外は実施例−1と同じ操作を行い、TFB1.96mmol(収率78%)およびTFMP0.030mmol(収率1.2%)が生成していることを確認した。選択率は98%であった。
【0058】
実施例−24
反応容器に[Rh(OH)(cod)]1.1mg(0.0025mmol)、Xantphos17.4mg(0.03mmol)およびDMF5mLを加え分圧0.75気圧のCO(1.35L)および分圧0.25気圧のH(0.45L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱撹拌した。この溶液に、TFP0.5mol/LのDMF溶液5mL(TFP含有量2.5mmol)を加え、80℃で18時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、TFB2.06mmol(収率82%)およびTFMP0.078mmol(収率3.1%)が生成していることを確認した。選択率は96%であった。
【0059】
実施例−25
90℃で反応を行ったこと以外は実施例−24と同じ操作を行い、TFB2.17mmol(収率87%)およびTFMP0.021mmol(収率0.8%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0060】
実施例−26
反応容器に[Rh(OH)(cod)]0.46mg(0.001mmol)、Xantphos10.4mg(0.018mmol)およびDMF5mLを加え、分圧0.5気圧のCO(0.6L)および分圧0.5気圧のH(0.6L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱撹拌した。この溶液に、TFP0.5mol/LのDMF溶液5mL(TFP含有量2.5mmol)を加え、反応雰囲気を分圧0.75気圧のCO(1.35L)および分圧0.25気圧のH(0.45L)の混合ガスに変え、90℃で18時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、TFB1.54mmol(収率61%)およびTFMP0.015mmol(収率0.6%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0061】
実施例−27
Xantphosの量を13.9mg(0.024mmol)とした以外は全て実施例−26と同じ操作を行い、TFB1.79mmol(収率72%)およびTFMP0.011mmol(収率0.4%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0062】
実施例−28
Xantphosの量を13.9mg(0.024mmol)とし、100℃で反応を行った以外は全て実施例−26と同じ操作を行い、TFB1.66mmol(収率66%)が生成していることを確認した。TFMPの生成は認められなかった。
【0063】
実施例−29
Xantphosの量を13.9mg(0.024mmol)とし、27時間反応を行った以外は全て実施例−26と同じ操作を行い、TFB1.87mmol(収率75%)およびTFMP0.010mmol(収率0.4%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0064】
実施例−30
Xantphosの量を13.9mg(0.024mmol)とし、反応雰囲気を分圧0.7気圧のCO(1.26L)および分圧0.3気圧のH(0.54L)の混合ガスに替え、27時間反応を行った以外は全て実施例−26と同じ操作を行い、TFB1.92mmol(収率77%)およびTFMP0.015mmol(収率0.6%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0065】
実施例−31
Xantphosの量を13.9mg(0.024mmol)とし、反応雰囲気を分圧0.65気圧のCO(1.17L)および分圧0.35気圧のH(0.63L)の混合ガスに替え、27時間反応を行った以外は全て実施例−26と同じ操作を行い、TFB2.05mmol(収率82%)およびTFMP0.042mmol(収率1.7%)が生成していることを確認した。選択率は98%であった。
【0066】
実施例−32
反応容器に[Rh(OH)(cod)]1.1mg(0.0025mmol)、Xantphos8.7mg(0.015mmol)およびDMF5mLを加え、分圧0.5気圧のCO(0.6L)および分圧0.5気圧のH(0.6L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱撹拌した。この溶液に、TFP0.5mol/LのDMF溶液5mL(TFP含有量2.5mmol)を加え、80℃で15時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、TFB1.94mmol(収率77%)およびTFMP0.065mmol(収率2.6%)が生成していることを確認した。選択率は97%であった。
【0067】
実施例−33
反応容器に[RhCl(cod)]4.9mg(0.01mmol)、Xantphos34.7mg(0.06mmol)およびDMF5mLを加え、分圧0.75気圧のCO(1.35L)および分圧0.25気圧のH(0.45L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱撹拌した。この溶液に、TFP0.5mol/LのDMF溶液5mL(TFP含有量2.5mmol)を加え、80℃で15時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、TFB1.97mmol(収率79%)およびTFMP0.10mmol(収率4.0%)が生成していることを確認した。選択率は95%であった。
【0068】
実施例−34
反応容器にメトキソ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー4.8mg(0.01mmol)、Xantphos23.1mg(0.04mmol)およびトルエン4mLを加え、分圧0.5気圧のCO(0.6L)および分圧0.5気圧のH(0.6L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱撹拌した。この溶液に、THF1mLおよびTFPの0.5mol/Lトルエン溶液5mL(TFP含有量2.5mmol)を加え、80℃で15時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、TFB1.12mmol(収率45%)およびTFMP0.046mmol(収率1.8%)が生成していることを確認した。選択率は96%であった。
【0069】
実施例−35
THFに替えてヘキサン1mLを用いた以外は全て実施例−34と同じ操作を行い、TFB1.19mmol(収率48%)およびTFMP0.055mmol(収率2.2%)が生成していることを確認した。選択率は96%であった。
【0070】
実施例−36
THFに替えてアセトン1mLを用いた以外は全て実施例−34と同じ操作を行い、TFB1.61mmol(収率64%)およびTFMP0.020mmol(収率0.8%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0071】
実施例−37
THFに替えてDMF1mLを用いた以外は全て実施例−34と同じ操作を行い、TFB1.70mmol(収率68%)およびTFMP0.031mmol(収率1.2%)が生成していることを確認した。選択率は98%であった。
【0072】
実施例−38
反応容器に[Rh(OH)(cod)]4.6mg(0.01mmol)、Xantphos34.7mg(0.06mmol)およびDMF5mLを加え、分圧0.5気圧のCO(0.6L)および分圧0.5気圧のH(0.6L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱撹拌した。この溶液に、TFP0.5mol/LのDMF溶液5mL(TFP含有量2.5mmol)を加え、80℃で2時間反応を行った。さらにTFPのDMF溶液5mL(0.5mol/L、TFP含有量2.5mmol)加え、80℃で2時間反応を行った。この操作をさらに3回繰り返した(全TFP投入量12.5mmol)後、19F−NMRにより、TFB9.84mmol(収率79%)およびTFMP0.11mmol(収率0.9%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0073】
実施例−39
反応容器に[Rh(OH)(cod)]4.6mg(0.01mmol)、Xantphos34.7mg(0.06mmol)およびDMF10mLを加え、分圧0.5気圧のCO(0.6L)および分圧0.5気圧のH(0.6L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱した。ここに、ガスタイトシリンジを用いてTFP(48mL、TFP量2.0mmol)を加え、80℃で15時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、TFB0.99mmol(収率50%)およびTFMP0.028mmol(収率1.4%)生成していることを確認した。選択率は97%であった。
【0074】
実施例−40
反応容器に[Rh(OH)(cod)]4.6mg(0.01mmol)、Xantphos34.7mg(0.06mmol)およびトルエン10mLを加え、分圧0.5気圧のCO(0.6L)および分圧0.5気圧のH(0.6L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱した。ここに、ガスタイトシリンジを用いてTFP(48mL、TFP量2.0mmol)を加え、80℃で15時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、TFB0.86mmol(収率43%)およびTFMP0.029mmol(収率1.5%)生成していることを確認した。選択率は97%であった。
【0075】
実施例−41
反応容器に[RhCl(cod)]4.9mg(0.01mmol)、Xantphos34.7mg(0.06mmol)、DMAP3.7mg(0.03mmol)およびDMF5mLを加え、分圧0.75気圧のCO(1.35L)および分圧0.25気圧のH(0.45L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱撹拌した。この溶液に、TFP0.5mol/LのDMF溶液5mL(TFP含有量2.5mmol)を加え、80℃で15時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、TFB1.97mmol(収率87%)およびTFMP0.10mmol(収率0.4%)が生成していることを確認した。選択率は99.6%であった。
【0076】
実施例−42
DMAPの量を12.2mg(0.1mmol)とした以外は実施例−1と同じ操作を行い、TFB2.29mmol(収率92%)が生成していることを確認した。TFMPは生成しなかった。
【0077】
実施例−43
[RhCl(cod)]を1.2mg(0.0025mmol)Xantphosを17.4mg(0.03mmol)およびDMAP0.9mg(0.0075mmol)とした以外は実施例−1と同じ操作を行い、TFB2.04mmol(収率82%)およびTFMP0.019mmol(収率0.8%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0078】
実施例−44
DMAPに替えてN−メチルイミダゾール0.8mg(0.01mmol)を用いた以外は実施例−1と同じ操作を行い、TFB2.04mmol(収率82%)およびTFMP0.013mmol(収率0.5%)が生成していることを確認した。選択率は99%であった。
【0079】
実施例−45
DMAPに替えてトリブチルアミン1.9mg(0.01mmol)を用いた以外は実施例−1と同じ操作を行い、TFB2.11mmol(収率85%)およびTFMP0.010mmol(収率0.4%)が生成していることを確認した。選択率は99.5%であった。
【0080】
実施例−46
反応容器に三塩化ロジウム(III)三水和物5.3mg(0.02mmol)、Xantphos34.7mg(0.06mmol)、DMAP12.2mg(0.1mmol)およびDMF5mLを加え、分圧0.5気圧のCO(0.6L)および分圧0.5気圧のH(0.6L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱撹拌した。この溶液に、TFP0.5mol/LのDMF溶液5mL(TFP含有量2.5mmol)を加え、80℃で15時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、TFB1.61mmol(収率64%)が生成していることを確認した。TFMPの生成は認められなかった。
【0081】
実施例−47
【0082】
【化6】
【0083】
反応容器に[Rh(OH)(cod)]4.6mg(0.01mmol)、Xantphos34.7mg(0.06mmol)およびDMF10mLを加え、分圧0.5気圧のCO(0.6L)および分圧0.5気圧のH(0.6L)の混合ガス中、80℃、1時間加熱撹拌した。この溶液に、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン615mg(2.5mmol)を加え、80℃で15時間反応を行った。反応後、19F−NMRにより、4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプタナール2.28mmol(収率91%)が生成していることを確認した。3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−2−メチルヘキサナールの生成は認められなかった。
4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプタナール
H−NMR(重クロロホルム):δ2.47(2H,m),2.83(2H,t,J=7.5Hz),9.84(1H,brs).
19F−NMR(重クロロホルム):δ−81.2(3F,m),−114.6(2F,m),−124.5(2F,m),−126.1(2F,m).
【0084】
実施例−48
【0085】
【化7】
【0086】
3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン615mg(2.5mmol)に替えて3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ−1−デセン1.12g(2.5mmol)を用いた以外は全て実施例−42と同じ操作を行い、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカウンデセナール2.33mmol(収率93%)が生成していることを確認した。3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ−2−メチルデセナールの生成は認められなかった。
4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカウンデセナール
H−NMR(重クロロホルム):δ2.47(2H,m),2.83(2H,t,J=7.4Hz),9.84(1H,brs).
19F−NMR(重クロロホルム):δ−80.7(3F,t,J=10.0Hz),−114.7(2F,m),−121.7(2F,m),−121.9(4F,m),−122.7(2F,m),−123.5(2F,m),−126.1(2F,m).