特許第6212252号(P6212252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6212252
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】レーダ受信装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/32 20060101AFI20171002BHJP
【FI】
   G01S7/32 250
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-243098(P2012-243098)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-92458(P2014-92458A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】土屋 廣憲
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−232282(JP,A)
【文献】 特開昭55−074476(JP,A)
【文献】 特開2002−062349(JP,A)
【文献】 特開2012−103197(JP,A)
【文献】 特開2011−095215(JP,A)
【文献】 特開平11−094931(JP,A)
【文献】 高山卓也、外2名,“移動目標対応型スキャン間相関処理”,電子情報通信学会技術研究報告,2010年12月10日,Vol.110,No.348,p.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42
G01S13/00−13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射レーダ信号を受信する反射レーダ信号受信部と、
前記反射レーダ信号受信部が受信した反射レーダ信号に基づいて、スキャン画像を生成するスキャン画像生成部と、
前記スキャン画像生成部が生成した過去及び現在のスキャン画像について、反射レーダ強度の差分絶対値を算出する反射レーダ強度差分算出部と、
前記反射レーダ強度差分算出部が算出した反射レーダ強度の差分絶対値が予め設定された差分閾値より大きいか小さいかを、前記スキャン画像生成部が生成したスキャン画像を分割する領域毎に判定する反射レーダ強度差分閾値判定部と、
前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より大きいと判定した領域については、前記スキャン画像生成部が生成した過去のスキャン画像に基づいて、物標の移動ベクトルを算出し物標の現在位置を推定し、前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より小さいと判定した領域については、物標の移動ベクトルを0とみなす移動ベクトル算出部と、
前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より大きいと判定した領域については、前記スキャン画像生成部が生成した過去のスキャン画像における物標の表示位置を、前記移動ベクトル算出部が推定した物標の現在位置に補正し、前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より小さいと判定した領域については、前記スキャン画像生成部が生成した過去のスキャン画像を、前記補正を実行せずそのまま出力する物標表示位置補正部と、
前記スキャン画像生成部が生成した現在のスキャン画像及び前記物標表示位置補正部が前記補正を実行した又は前記補正を実行しない過去のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成するスキャン相関画像生成部と、
前記スキャン画像生成部が生成した過去及び現在のスキャン画像について、反射レーダ強度が予め設定された強度閾値より大きいか小さいかを、前記スキャン画像生成部が生成したスキャン画像を分割する領域毎に判定する反射レーダ強度閾値判定部と、を備え、
前記反射レーダ強度閾値判定部が反射レーダ強度が前記強度閾値より小さいと判定した領域については、前記反射レーダ強度差分算出部、前記反射レーダ強度差分閾値判定部、前記移動ベクトル算出部及び前記物標表示位置補正部における処理を実行せず、前記スキャン相関画像生成部が、前記スキャン画像生成部が生成した過去及び現在のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成し、
前記反射レーダ強度閾値判定部が反射レーダ強度が前記強度閾値より大きいと判定した領域については、前記反射レーダ強度差分算出部、前記反射レーダ強度差分閾値判定部、前記移動ベクトル算出部及び前記物標表示位置補正部における処理を実行し、前記スキャン相関画像生成部が、前記スキャン画像生成部が生成した現在のスキャン画像及び前記物標表示位置補正部が前記補正を実行した又は前記補正を実行しない過去のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成することを特徴とするレーダ受信装置。
【請求項2】
自装置からの距離が予め設定された距離閾値より長い遠距離領域については、前記反射レーダ強度差分算出部、前記反射レーダ強度差分閾値判定部、前記移動ベクトル算出部及び前記物標表示位置補正部における処理を実行せず、前記スキャン相関画像生成部が、前記スキャン画像生成部が生成した過去及び現在のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成し、
自装置からの距離が前記距離閾値より短い近距離領域については、前記反射レーダ強度差分算出部、前記反射レーダ強度差分閾値判定部、前記移動ベクトル算出部及び前記物標表示位置補正部における処理を実行し、前記スキャン相関画像生成部が、前記スキャン画像生成部が生成した現在のスキャン画像及び前記物標表示位置補正部が前記補正を実行した又は前記補正を実行しない過去のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成することを特徴とする請求項1に記載のレーダ受信装置。
【請求項3】
反射レーダ信号を受信する反射レーダ信号受信部と、
前記反射レーダ信号受信部が受信した反射レーダ信号に基づいて、スキャン画像を生成するスキャン画像生成部と、
前記スキャン画像生成部が生成した過去及び現在のスキャン画像について、反射レーダ強度の差分絶対値を算出する反射レーダ強度差分算出部と、
前記反射レーダ強度差分算出部が算出した反射レーダ強度の差分絶対値が予め設定された差分閾値より大きいか小さいかを、前記スキャン画像生成部が生成したスキャン画像を分割する領域毎に判定する反射レーダ強度差分閾値判定部と、
前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より大きいと判定した領域については、前記スキャン画像生成部が生成した過去のスキャン画像に基づいて、物標の移動ベクトルを算出し物標の現在位置を推定し、前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より小さいと判定した領域については、物標の移動ベクトルを0とみなす移動ベクトル算出部と、
前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より大きいと判定した領域については、前記スキャン画像生成部が生成した過去のスキャン画像における物標の表示位置を、前記移動ベクトル算出部が推定した物標の現在位置に補正し、前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より小さいと判定した領域については、前記スキャン画像生成部が生成した過去のスキャン画像を、前記補正を実行せずそのまま出力する物標表示位置補正部と、
前記スキャン画像生成部が生成した現在のスキャン画像及び前記物標表示位置補正部が前記補正を実行した又は前記補正を実行しない過去のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成するスキャン相関画像生成部と、を備え
自装置からの距離が予め設定された距離閾値より長い遠距離領域については、前記反射レーダ強度差分算出部、前記反射レーダ強度差分閾値判定部、前記移動ベクトル算出部及び前記物標表示位置補正部における処理を実行せず、前記スキャン相関画像生成部が、前記スキャン画像生成部が生成した過去及び現在のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成し、
自装置からの距離が前記距離閾値より短い近距離領域については、前記反射レーダ強度差分算出部、前記反射レーダ強度差分閾値判定部、前記移動ベクトル算出部及び前記物標表示位置補正部における処理を実行し、前記スキャン相関画像生成部が、前記スキャン画像生成部が生成した現在のスキャン画像及び前記物標表示位置補正部が前記補正を実行した又は前記補正を実行しない過去のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成することを特徴とするレーダ受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物標移動に対応可能なレーダ受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ計測技術では、遠くの物標や小さな物標等、反射強度の低い物標を検出するため、アンテナの大型化や出力パワーの大強度化を図ることができるほか、以下に説明のスキャン相関技術(例えば、特許文献1)を用いることができる。
【0003】
通常のスキャン相関技術では、過去のスキャン画像及び現在のスキャン画像を重み付け加算する。よって、スキャン画像間で相関の高い物標の表示は浮き出る一方で、スキャン画像間で相関の低いクラッタ成分は抑圧される。しかし、静止している物標については、物標の表示が浮き出るが、移動する物標については、物標の軌跡が薄く残る。
【0004】
移動物標対応型のスキャン相関技術では、過去のスキャン画像に基づいて物標の現在位置を推定し、過去のスキャン画像において物標の表示位置を物標の現在位置に補正し、物標の表示位置を補正した過去のスキャン画像及び現在のスキャン画像を重み付け加算する。よって、静止する物標についても、移動する物標についても、物標の表示が浮き出る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−103197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の移動物標対応型のスキャン相関技術では、3次元フーリエ変換を用いて、2次元の空間座標及び1次元の時間座標からなる3次元座標空間における、物標の直線の軌跡を算出することにより、過去のスキャン画像に基づいて、物標の移動ベクトルを算出し物標の現在位置を推定する。しかし、移動する物標が存在する領域のみならず、静止する物標しか存在しない領域や物標がそもそも存在しない領域についても、3次元フーリエ変換を用いて物標の移動ベクトルを算出すると、演算負荷が非常に高くなっていた。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、移動物標対応型のスキャン相関技術において、物標の移動の有無や物標の存在の有無に応じて、物標の移動ベクトルを算出し物標の現在位置を推定する演算負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、過去及び現在のスキャン画像において、反射レーダ強度の差分絶対値を算出する。そして、差分絶対値が予め設定された差分閾値より大きい領域では、移動する物標が存在すると判定し、物標の移動ベクトルを算出し物標の現在位置を推定する。一方で、差分絶対値が差分閾値より小さい領域では、静止する物標しか存在しない又は物標がそもそも存在しないと判定し、物標の移動ベクトルを0とみなす。
【0009】
具体的には、本発明は、反射レーダ信号を受信する反射レーダ信号受信部と、前記反射レーダ信号受信部が受信した反射レーダ信号に基づいて、スキャン画像を生成するスキャン画像生成部と、前記スキャン画像生成部が生成した過去及び現在のスキャン画像について、反射レーダ強度の差分絶対値を算出する反射レーダ強度差分算出部と、前記反射レーダ強度差分算出部が算出した反射レーダ強度の差分絶対値が予め設定された差分閾値より大きいか小さいかを、前記スキャン画像生成部が生成したスキャン画像を分割する領域毎に判定する反射レーダ強度差分閾値判定部と、前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より大きいと判定した領域については、前記スキャン画像生成部が生成した過去のスキャン画像に基づいて、物標の移動ベクトルを算出し物標の現在位置を推定し、前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より小さいと判定した領域については、物標の移動ベクトルを0とみなす移動ベクトル算出部と、前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より大きいと判定した領域については、前記スキャン画像生成部が生成した過去のスキャン画像における物標の表示位置を、前記移動ベクトル算出部が推定した物標の現在位置に補正し、前記反射レーダ強度差分閾値判定部が反射レーダ強度の差分絶対値が前記差分閾値より小さいと判定した領域については、前記スキャン画像生成部が生成した過去のスキャン画像を、前記補正を実行せずそのまま出力する物標表示位置補正部と、前記スキャン画像生成部が生成した現在のスキャン画像及び前記物標表示位置補正部が物標の表示位置を補正した過去のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成するスキャン相関画像生成部と、を備えることを特徴とするレーダ受信装置である。
【0010】
この構成によれば、静止する物標しか存在しない領域や物標がそもそも存在しない領域では、物標の移動ベクトルの算出が行われないため、演算処理を軽減することができる。
【0011】
また、本発明は、前記スキャン画像生成部が生成した過去及び現在のスキャン画像について、反射レーダ強度が予め設定された強度閾値より大きいか小さいかを、前記スキャン画像生成部が生成したスキャン画像を分割する領域毎に判定する反射レーダ強度閾値判定部、をさらに備え、前記反射レーダ強度閾値判定部が反射レーダ強度が前記強度閾値より小さいと判定した領域については、前記反射レーダ強度差分算出部、前記反射レーダ強度差分閾値判定部、前記移動ベクトル算出部及び前記物標表示位置補正部における処理を実行せず、前記スキャン相関画像生成部が、前記スキャン画像生成部が生成した過去及び現在のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成し、前記反射レーダ強度閾値判定部が反射レーダ強度が前記強度閾値より大きいと判定した領域については、前記反射レーダ強度差分算出部、前記反射レーダ強度差分閾値判定部、前記移動ベクトル算出部、前記物標表示位置補正部及び前記スキャン相関画像生成部における処理を実行することを特徴とするレーダ受信装置である。
【0012】
この構成によれば、物標がそもそも存在しない領域では、反射レーダ強度の差分絶対値の算出が行われないため、演算処理をさらに軽減することができる。
【0013】
また、本発明は、自装置からの距離が予め設定された距離閾値より長い遠距離領域については、前記反射レーダ強度差分算出部、前記反射レーダ強度差分閾値判定部、前記移動ベクトル算出部及び前記物標表示位置補正部における処理を実行せず、前記スキャン相関画像生成部が、前記スキャン画像生成部が生成した過去及び現在のスキャン画像について、スキャン相関処理を実行することにより、スキャン相関画像を生成し、自装置からの距離が前記距離閾値より短い近距離領域については、前記反射レーダ強度差分算出部、前記反射レーダ強度差分閾値判定部、前記移動ベクトル算出部、前記物標表示位置補正部及び前記スキャン相関画像生成部における処理を実行することを特徴とするレーダ受信装置である。
【0014】
この構成によれば、物標の速度が見かけ上遅い遠距離領域では、物標の移動ベクトルの算出が行われないため、演算処理をさらに軽減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、移動物標対応型のスキャン相関技術において、物標の移動の有無や物標の存在の有無に応じて、物標の移動ベクトルを算出し物標の現在位置を推定する演算負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のレーダ表示画面を内容を示す図である。
図2】本発明のレーダ受信装置の構成を示す図である。
図3】本発明のレーダ受信装置の処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0018】
本発明のレーダ表示画面を内容を図1に示す。レーダ表示画面Dは、レーダ受信装置Rからの方位に応じて、図1では8個の領域に分割されており、レーダ受信装置Rからの距離に応じて、複数の領域に分割されている。また、レーダ表示画面Dは、距離領域境界Bによって、レーダ受信装置Rからの距離が短い近距離領域と、レーダ受信装置Rからの距離が長い遠距離領域と、に分割されている。ここで、物標の速度が同一であっても、近距離領域では物標の速度は見かけ上速く、遠距離領域では物標の速度は見かけ上遅い。
【0019】
近距離領域のうち、第1物標が存在する領域では、第1物標の存在位置は、白丸で示した第1物標の過去での位置TP1から黒丸で示した第1物標の現在での位置TL1へと移動しており、レーダ受信装置Rから見る第1物標の移動角度は大きい。近距離領域のうち、第2物標が存在する領域では、第2物標の存在位置は、白丸で示した第2物標の過去での位置TP2及び黒丸で示した第2物標の現在での位置TL2の間でほとんど移動していない。近距離領域のうち、他の領域では、背景成分であるクラッタ成分Cのみ存在する。
【0020】
遠距離領域のうち、第3物標が存在する領域では、第3物標の存在位置は、白丸で示した第3物標の過去での位置TP3から黒丸で示した第3物標の現在での位置TL3へと移動するが、レーダ受信装置Rから見る第3物標の移動角度は小さい。遠距離領域のうち、第4物標が存在する領域では、第4物標の存在位置は、白丸で示した第4物標の過去での位置TP4及び黒丸で示した第4物標の現在での位置TL4の間でほとんど移動していない。遠距離領域のうち、他の領域では、背景成分であるクラッタ成分Cのみ存在する。
【0021】
本発明のレーダ受信装置の構成を図2に示す。レーダ受信装置Rは、反射レーダ信号受信部1、スキャン画像生成部2、スキャン画像格納部3、反射レーダ強度閾値判定部4、反射レーダ強度差分算出部5、反射レーダ強度差分閾値判定部6、移動ベクトル算出部7、物標表示位置補正部8、スキャン相関画像生成部9、クラッタレベル算出部10、スキャン相関画像格納部11及びスキャン相関画像表示部12から構成される。
【0022】
反射レーダ信号受信部1は、反射レーダ信号を受信する。スキャン画像生成部2は、反射レーダ信号受信部1が受信した反射レーダ信号に基づいて、スキャン画像を生成する。スキャン画像格納部3は、スキャン画像生成部2が生成したスキャン画像を格納する。
【0023】
本発明のレーダ受信装置の処理を図3に示す。以下では、図1のレーダ表示画面Dの各領域について、本発明のレーダ受信装置Rの処理を説明する。
【0024】
まず、図1の近距離領域のうち、第1物標が過去での位置TP1から現在での位置TL1へと大きく移動している領域について、レーダ受信装置Rの処理を説明する。
【0025】
レーダ受信装置Rは、距離領域境界Bを参照し、当該領域が近距離領域であると判定し(ステップS1において「近距離領域」)、ステップS2に進む。
【0026】
反射レーダ強度閾値判定部4は、過去のスキャン画像Ai−1及び現在のスキャン画像Aについて、反射レーダ強度を読み出す(ステップS2)。ここで、過去のスキャン画像は、現在のスキャン画像Aと比較して、直前のスキャン画像であってもよく、さらに以前のスキャン画像であってもよいが、図1のレーダ表示画面Dの各領域において物標が通過に要する時間より短い時間だけ以前のスキャン画像であることが望ましい。
【0027】
反射レーダ強度閾値判定部4は、過去のスキャン画像Ai−1及び現在のスキャン画像Aにおける反射レーダ強度が、それぞれ第1物標の過去での位置TP1及び現在での位置TL1において、予め設定された強度閾値より大きいと判定する(ステップS3においてYES)。ここで、強度閾値は、クラッタによる反射レーダ強度より大きいことが望ましい。
【0028】
反射レーダ強度差分算出部5は、過去のスキャン画像Ai−1及び現在のスキャン画像Aについて、反射レーダ強度の差分絶対値を算出する(ステップS4)。
【0029】
反射レーダ強度差分閾値判定部6は、過去のスキャン画像Ai−1及び現在のスキャン画像Aにおける反射レーダ強度の差分絶対値が、第1物標の過去での位置TP1及び現在での位置TL1において、予め設定された差分閾値より大きいと判定する(ステップS5においてYES)。ここで、差分閾値は、ほぼ重なり合わない物標の過去での位置及び現在での位置においては、差分絶対値が大きいと判定される程度に、かつ、ほぼ重なり合う物標の過去での位置及び現在での位置においては、差分絶対値が小さいと判定される程度に、かつ、過去にも現在にも物標が存在せずクラッタ成分Cのみ存在する位置においても、差分絶対値が小さいと判定される程度に、設定されていることが望ましい。
【0030】
移動ベクトル算出部7は、過去のスキャン画像Ai−1〜Ai−Nに基づいて、物標の移動ベクトルを算出し、物標の現在位置を推定する(ステップS6)。ここで、参照する過去のスキャン画像の枚数は、物標の移動ベクトルの算出精度や物標の現在位置の推定精度が高くなる程度に、設定されていることが望ましい。
【0031】
物標の移動ベクトルの算出方法を説明する。2次元の空間座標及び1次元の時間座標からなる3次元実空間座標における、物標の直線の軌跡を算出する。
【0032】
まず、3次元実空間座標から3次元周波数空間座標へと、3次元フーリエ変換を行う。ここで、3次元フーリエ変換を行うことにより、3次元実空間座標での物標の直線の軌跡は、3次元周波数空間座標での平面に変換されるが、3次元実空間座標でのクラッタのランダムな信号は、3次元周波数空間座標でのランダムな点に変換される。そこで、3次元周波数空間座標において、ランダムな点に埋もれた平面を抽出する。
【0033】
次に、3次元周波数空間座標から3次元実空間座標へと、3次元逆フーリエ変換を行う。ここで、3次元逆フーリエ変換を行うことにより、3次元周波数空間座標での抽出した平面は、3次元実空間座標での物標の直線の軌跡に変換される。そして、変換した物標の直線の軌跡に基づいて、物標の移動ベクトルを算出し、物標の現在位置を推定する。
【0034】
物標表示位置補正部8は、過去のスキャン相関画像A_bari−1(又は、過去のスキャン画像Ai−1)における物標の表示位置を、ステップS6において推定された物標の現在位置に補正する(ステップS7)。
【0035】
スキャン相関画像生成部9は、現在のスキャン画像A及び物標の表示位置を補正した過去のスキャン相関画像A_bari−1(又は、過去のスキャン画像Ai−1)について、重み付け加算を行うことにより、スキャン相関処理を実行する(ステップS8)。
【0036】
このように、近距離領域において、物標が過去から現在まで大きく移動しているときには、スキャン画像間の差分絶対値が大きいことを確認することにより、物標の移動が大きいことを確認したうえで、物標の移動ベクトルを算出する。
【0037】
次に、図1の近距離領域のうち、第2物標が過去での位置TP2及び現在での位置TL2の間でほとんど移動していない領域について、レーダ受信装置Rの処理を説明する。
【0038】
ステップS1〜S4の処理については、上述と同様である。
【0039】
反射レーダ強度差分閾値判定部6は、過去のスキャン画像Ai−1及び現在のスキャン画像Aにおける反射レーダ強度の差分絶対値が、第2物標の過去での位置TP2及び現在での位置TL2を含む全領域において、差分閾値より小さいと判定する(ステップS5においてNO)。第2物標の過去での位置TP2及び現在での位置TL2はほぼ重なり合い、かつ、クラッタ成分Cはほとんど時間変化しないためである。
【0040】
移動ベクトル算出部7は、物標の移動ベクトルを0とみなす(ステップS11)。物標表示位置補正部8は、過去のスキャン相関画像A_bari−1(又は、過去のスキャン画像Ai−1)を、補正を実行せずそのまま出力する(ステップS12)。スキャン相関画像生成部9は、現在のスキャン画像A及び補正を実行せずそのまま出力した過去のスキャン相関画像A_bari−1(又は、過去のスキャン画像Ai−1)について、重み付け加算を行うことにより、スキャン相関処理を実行する(ステップS13)。
【0041】
このように、近距離領域において、物標が過去から現在までほとんど移動していないときには、スキャン画像間の差分絶対値が小さいことを確認することにより、物標の移動が小さいことを確認したうえで、物標の移動ベクトルを算出せずに済ませる。よって、レーダ表示画面D全体では、演算処理を軽減することができる。
【0042】
次に、図1の近距離領域のうち、背景成分であるクラッタ成分Cのみ存在する他の領域について、レーダ受信装置Rの処理を説明する。
【0043】
ステップS1、S2の処理については、上述と同様である。
【0044】
反射レーダ強度閾値判定部4は、過去のスキャン画像Ai−1及び現在のスキャン画像Aにおける反射レーダ強度が、全領域において、強度閾値より小さいと判定する(ステップS3においてNO)。クラッタ成分Cのみ存在するためである。
【0045】
物標表示位置補正部8は、過去のスキャン相関画像A_bari−1(又は、過去のスキャン画像Ai−1)を、補正を実行せずそのまま出力する(ステップS12)。スキャン相関画像生成部9は、現在のスキャン画像A及び補正を実行せずそのまま出力した過去のスキャン相関画像A_bari−1(又は、過去のスキャン画像Ai−1)について、重み付け加算を行うことにより、スキャン相関処理を実行する(ステップS13)。
【0046】
このように、近距離領域において、クラッタ成分Cのみ存在するときには、スキャン画像におけるレーダ反射強度が小さいことを確認することにより、物標がそもそも存在しないことを確認したうえで、反射レーダ強度の差分絶対値や物標の移動ベクトルを算出せずに済ませる。よって、レーダ表示画面D全体では、演算処理を軽減することができる。
【0047】
次に、図1の遠距離領域について、レーダ受信装置Rの処理を説明する。ここで、図1の遠距離領域のうち、第3物標が過去での位置TP3から現在での位置TL3へと大きく移動している領域、第4物標が過去での位置TP4及び現在での位置TL4の間でほとんど移動していない領域、及び、背景成分であるクラッタ成分Cのみ存在する他の領域について、レーダ受信装置Rの処理は同様であり、まとめて説明する。
【0048】
レーダ受信装置Rは、距離領域境界Bを参照し、当該領域が遠距離領域であると判定し(ステップS1において「遠距離領域」)、ステップS12に進む。
【0049】
物標表示位置補正部8は、過去のスキャン相関画像A_bari−1(又は、過去のスキャン画像Ai−1)を、補正を実行せずそのまま出力する(ステップS12)。スキャン相関画像生成部9は、現在のスキャン画像A及び補正を実行せずそのまま出力した過去のスキャン相関画像A_bari−1(又は、過去のスキャン画像Ai−1)について、重み付け加算を行うことにより、スキャン相関処理を実行する(ステップS13)。
【0050】
このように、遠距離領域では、物標の速度が見かけ上遅く、物標の移動角度は小さいため、物標が過去から現在までほとんど移動していないときやクラッタ成分Cのみ存在するときのみならず、物標が過去から現在まで大きく移動しているときであっても、反射レーダ強度の差分絶対値や物標の移動ベクトルを算出せずに済ませる。よって、レーダ表示画面D全体では、演算処理を軽減することができる。
【0051】
上述のいずれの場合でも、スキャン相関画像生成部9は、現在のスキャン画像A及び過去のスキャン相関画像A_bari−1(又は、過去のスキャン画像Ai−1)について、重み付け加算を行うことにより、スキャン相関処理を実行する(ステップS8、S13)。ここで、現在のスキャン画像Aは、クラッタ成分Cを含む。
【0052】
クラッタレベル算出部10は、過去のスキャン画像Ai−1〜Ai−N、現在のスキャン画像A及び過去のスキャン相関画像A_bari−1に基づいて、クラッタレベルCを算出する(ステップS9)。例えば、クラッタレベル算出部10は、STC(Sensitivity Time Control)を利用する。
【0053】
スキャン相関画像生成部9は、スキャン相関処理結果からクラッタレベルCを減算し、現在のスキャン相関画像A_barを生成する(ステップS10)。スキャン相関画像格納部11は、過去のスキャン相関画像A_bari−1に代えて、現在のスキャン相関画像A_barを格納する。スキャン相関画像表示部12は、過去のスキャン相関画像A_bari−1に代えて、現在のスキャン相関画像A_barを表示する。
【0054】
以上の説明では、各領域が遠距離領域であるか近距離領域であるかの判定(ステップS1)、各領域における反射レーダ強度及び強度閾値の大小判定(ステップS3)及び各領域における差分絶対値及び差分閾値の大小判定(ステップS5)を行っている。
【0055】
しかし、第1の変形例として、ステップS3、S5を行う一方で、ステップS1を行わなくてもよい。または、第2の変形例として、ステップS1、S5を行う一方で、ステップS3を行わなくてもよい。第1、2の変形例では、判定処理を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るレーダ受信装置は、船舶レーダや航空レーダ等、静止している物標のみならず移動する物標を検出する目的で、特に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
R:レーダ受信装置
1:反射レーダ信号受信部
2:スキャン画像生成部
3:スキャン画像格納部
4:反射レーダ強度閾値判定部
5:反射レーダ強度差分算出部
6:反射レーダ強度差分閾値判定部
7:移動ベクトル算出部
8:物標表示位置補正部
9:スキャン相関画像生成部
10:クラッタレベル算出部
11:スキャン相関画像格納部
12:スキャン相関画像表示部
〜Ai−N:スキャン画像
A_bar、A_bari−1:スキャン相関画像
D:レーダ表示画面
B:距離領域境界
C:クラッタ成分
TL1:第1物標の現在での位置
TP1:第1物標の過去での位置
TL2:第2物標の現在での位置
TP2:第2物標の過去での位置
TL3:第3物標の現在での位置
TP3:第3物標の過去での位置
TL4:第4物標の現在での位置
TP4:第4物標の過去での位置
図1
図2
図3