(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6212810
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】チェーン式無段変速機
(51)【国際特許分類】
F16G 5/18 20060101AFI20171005BHJP
F16H 9/24 20060101ALI20171005BHJP
【FI】
F16G5/18 C
F16H9/24
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-1898(P2014-1898)
(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-129565(P2015-129565A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】矢ケ崎 徹
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−317597(JP,A)
【文献】
特開2012−251578(JP,A)
【文献】
特開2005−054940(JP,A)
【文献】
特開2009−047288(JP,A)
【文献】
特開2011−069412(JP,A)
【文献】
特開2008−208926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/18
F16H 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝幅を変更可能なプーリ(13,14)間に巻き掛けられて駆動力を伝達する無端状のチェーン(15)が、軸方向に配置されて両端が前記プーリ(13,14)のV面(19)に接触する複数のクレードルピン(17)と、軸方向に積層されて前記複数のクレードルピン(17)を無端状に連結する複数のリンクプレート(16)と、前記クレードルピン(17)に固定されて前記複数のリンクプレート(16)のうちの軸方向端部に位置する端部リンクプレート(16E)を係止するリテーナピン(20)とを備えるチェーン式無段変速機であって、
前記チェーン(15)が前記プーリ(13,14)に巻き付く位置で、前記端部リンクプレート(16E)が前記プーリ(13,14)のV面(19)に接触したときに、前記リテーナピン(20)と前記端部リンクプレート(16E)との間に隙間(β)が形成されることを特徴とするチェーン式無段変速機。
【請求項2】
前記端部リンクプレート(16E)の径方向内端に軸方向外側に突出する突起部(16c)を備え、前記突起部(16c)が前記プーリ(13,14)のV面(19)に接触することを特徴とする、請求項1に記載のチェーン式無段変速機。
【請求項3】
前記端部リンクプレート(16E)の径方向外端に軸方向外側に突出する突起部(16d)を備え、前記径方向内端の突起部(16c)が前記プーリ(13,14)のV面(19)に接触するときに前記径方向外端の突起部(16d)も前記プーリ(13,14)のV面(19)に接触することを特徴とする、請求項2に記載のチェーン式無段変速機。
【請求項4】
前記端部リンクプレート(16E)の前後方向両端に軸方向外側に突出する突起部(16e)を備え、前記径方向内端の突起部(16c)が前記プーリ(13,14)のV面(19)に接触するときに前記前後方向両端の突起部(16e)も前記プーリ(13,14)のV面(19)に接触することを特徴とする、請求項2に記載のチェーン式無段変速機。
【請求項5】
前記端部リンクプレート(16E)を折り曲げて前記突起部(16c,16d,16e)を形成したことを特徴とする、請求項2〜請求項4の何れか1項に記載のチェーン式無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝幅を変更可能なプーリ間に巻き掛けられて駆動力を伝達する無端状のチェーンが、軸方向に配置されて両端が前記プーリのV面に接触する複数のクレードルピンと、軸方向に積層されて前記複数のクレードルピンを無端状に連結する複数のリンクプレートと、前記クレードルピンに固定されて前記複数のリンクプレートのうちの軸方向端部に位置する端部リンクプレートを係止するリテーナピンとを備えるチェーン式無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるチェーン式無段変速機において、チェーンの屈曲角が大きくなったときにリテーナピンとリンクプレートとの係合が外れ、リンクプレートからクレードルピンが脱落するのを防止するために、対をなす2本のクレードルピンの一方に形成した突出部を他方に形成した切欠きに嵌合させることで、対をなす2本のクレードルピンが軸方向に位置ずれしないようにしたものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4780368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかるチェーン式無段変速機のチェーンにおいて、軸方向に積層した状態でクレードルピンに支持された複数のリンクプレートのうち、軸方向両端に位置する2枚のリンクプレートをクレードルピンから脱落しないように係止するリテーナピンは、クレードルピンの外周面に溶接等の手段で固定されているため、そのリテーナピンがリンクプレートに繰り返し接触すると溶接の剥がれ等によりクレードルピンから脱落してしまう可能性があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、チェーン式無段変速機のチェーンにおいて、リンクプレートとリテーナピンとの接触を抑制してリテーナピンの耐久性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、溝幅を変更可能なプーリ間に巻き掛けられて駆動力を伝達する無端状のチェーンが、軸方向に配置されて両端が前記プーリのV面に接触する複数のクレードルピンと、軸方向に積層されて前記複数のクレードルピンを無端状に連結する複数のリンクプレートと、前記クレードルピンに固定されて前記複数のリンクプレートのうちの軸方向端部に位置する端部リンクプレートを係止するリテーナピンとを備えるチェーン式無段変速機であって、前記チェーンが前記プーリに巻き付く位置で、前記端部リンクプレートが前記プーリのV面に接触したときに、前記リテーナピンと前記端部リンクプレートとの間に隙間が形成されることを特徴とするチェーン式無段変速機が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記端部リンクプレートの径方向内端に軸方向外側に突出する突起部を備え、前記突起部が前記プーリのV面に接触することを特徴とするチェーン式無段変速機が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記端部リンクプレートの径方向外端に軸方向外側に突出する突起部を備え、前記径方向内端の突起部が前記プーリのV面に接触するときに前記径方向外端の突起部も前記プーリのV面に接触することを特徴とするチェーン式無段変速機が提案される。
【0009】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記端部リンクプレートの前後方向両端に軸方向外側に突出する突起部を備え、前記径方向内端の突起部が前記プーリのV面に接触するときに前記前後方向両端の突起部も前記プーリのV面に接触することを特徴とするチェーン式無段変速機が提案される。
【0010】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項2〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記端部リンクプレートを折り曲げて前記突起部を形成したことを特徴とするチェーン式無段変速機が提案される。
【0011】
尚、実施の形態の駆動プーリ13および従動プーリ14は本発明のプーリに対応する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、チェーン式無段変速機は、溝幅を変更可能なプーリ間に巻き掛けられて駆動力を伝達する無端状のチェーンが、軸方向に配置されて両端がプーリのV面に接触する複数のクレードルピンと、軸方向に積層されて複数のクレードルピンを無端状に連結する複数のリンクプレートと、クレードルピンに固定されて複数のリンクプレートのうちの軸方向端部に位置する端部リンクプレートを係止するリテーナピンとを備える。
【0013】
チェーンがプーリに巻き付く位置で、端部リンクプレートがプーリのV面に接触したときに、リテーナピンと端部リンクプレートとの間に隙間が形成されるので、端部リンクプレートとプーリのV面とが先に接触することにより、リテーナピンと端部リンクプレートとが接触するのを回避し、リテーナピンに荷重が加わるのを防止してリテーナピンの耐久性を高めることができる。
【0014】
また請求項2の構成によれば、端部リンクプレートの径方向内端に軸方向外側に突出する突起部を備え、突起部がプーリのV面に接触するので、端部リンクプレートの径方向内端を径方向内側に無駄に延長しなくても突起部の先端をV面に接近させることが可能となり、端部リンクプレートが僅かに傾いただけで突起部の先端がV面に接触することで、リテーナピンと端部リンクプレートとの接触を一層確実に回避することができる。
【0015】
また請求項3の構成によれば、端部リンクプレートの径方向外端に軸方向外側に突出する突起部を備え、径方向内端の突起部がプーリのV面に接触するときに径方向外端の突起部もプーリのV面に接触するので、端部リンクプレートがプーリのV面から受ける荷重を径方向内端および外端の突起部に分散し、それらの突起部の強度を小さく抑えながら耐久性を確保することができる。
【0016】
また請求項4の構成によれば、端部リンクプレートの前後方向両端に軸方向外側に突出する突起部を備え、径方向内端の突起部がプーリのV面に接触するときに前後方向両端の突起部もプーリのV面に接触するので、端部リンクプレートがプーリのV面から受ける荷重を径方向内端および前後方向両端の突起部に分散し、それらの突起部の強度を小さく抑えながら耐久性を確保することができる。しかもチェーンがプーリのV面に噛み込むときに、前後方向前側の突起部がクレードルピンよりも先にプーリのV面に接触するため、端部リンクプレートを軸方向に位置決めした状態でクレードルピンがプーリのV面に接触することで、リテーナピンが端部リンクプレートに接触するのを一層確実に防止することができる。
【0017】
また請求項5の構成によれば、端部リンクプレートを折り曲げて突起部を形成したので、突起部を形成するための特別の部品が不要になり、部品点数や組み付け工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】チェーン式無段変速機の全体構造を示す図。(第1の実施の形態)
【
図4】
図3の4−4線断面図。(第1の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1〜
図4に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。尚、本明細書において、軸方向とは入力軸11および出力軸12の軸方向を指し、径方向とは駆動プーリ13および従動プーリ14の径方向を指し、前後方向とはチェーン15が移動する方向を指すものと定義される。
【0020】
図1に示すように、チェーン式無段変速機Tは、エンジンEに接続された入力軸11と、入力軸11に対して平行に配置された出力軸12とを備えており、入力軸11に設けた駆動プーリ13および出力軸12に設けた従動プーリ14にチェーン15が巻き掛けられる。駆動プーリ13は、入力軸11に固定された固定側プーリ半体13aと、固定側プーリ半体13aに対して油圧で軸方向に移動可能な可動側プーリ半体13bとからなり、従動プーリ14は、出力軸12に固定された固定側プーリ半体14aと、固定側プーリ半体14aに対して油圧で軸方向に移動可能な可動側プーリ半体14bとからなる。駆動プーリ13の溝幅を増加させて従動プーリ14の溝幅を減少させると、入力軸11および出力軸12間の変速比が無段階に減少し、駆動プーリ13の溝幅を減少させて従動プーリ14の溝幅を増加させると、入力軸11および出力軸12間の変速比が無段階に増加する。
【0021】
図2〜
図4に示すように、チェーン15は、複数のリンクプレート16…と、それら複数のリンクプレート16…を無端状に連結する複数のクレードルピン17…とで構成される。軸方向に配置される各クレードルピン17は2本の非円形断面のピン単体18,18が対をなすもので、各ピン単体18は第1外周面18aと、第2外周面18bと、駆動プーリ13および従動プーリ14(以下、プーリ13,14という)のV面19,19に当接する、軸線方向に対して傾斜した一対のプーリ当接面18c,18cとを備える。対をなす2本のピン単体18,18は、それらの第2外周面18b,18bどうしが相互に転動可能に接触するように逆向きに配置される。
【0022】
各リンクプレート16は中央に開口部16aを有する平坦な板材からなり、クレードルピン17の後側のピン単体18の第1外周面18aに前側のリンクプレート16の開口部16aの後端が嵌合し、かつクレードルピン17の前側のピン単体18の第1外周面18aに後側のリンクプレート16の開口部16aの前端が嵌合するように、前側のリンクプレート16および後側のリンクプレート16を軸方向に交互に重ね合わせることで無端状のチェーン15が組み立てられる。
【0023】
このとき、クレードルピン17からリンクプレート16…が軸方向に脱落してチェーン15がばらばらにならないように、クレードルピン17のピン単体18の軸方向両端に径方向外側に突出するリテーナピン20,20が溶接等の手段で固定されており、これらのリテーナピン20,20で軸方向両端に位置する一対のリンクプレート16,16(以下、端部リンクプレート16E,16Eという)が脱落不能に係止される。本実施の形態の端部リンクプレート16Eは、他のリンクプレート16と同一形状の部材である。
【0024】
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施の形態の作用を説明する。
【0025】
図4に示すように、チェーン15がプーリ13,14に巻き付いている部分では、チェーン15のクレードルピン17を構成するピン単体18の軸方向両端のプーリ当接面18c,18cが、プーリ13,14の固定側プーリ半体13a,14aおよび可動側プーリ半体13b,14bの一対のV面19,19間に挟圧される。
【0026】
このとき、クレードルピン17の軸方向長さと、クレードルピン17上で積層された複数のリンクプレート16…のトータルの軸方向厚さとは、端部リンクプレート16Eの径方向内端16bがそれに対向するV面19との間に僅かな隙間αが生じるように、あるいはV面19に軽く接触するように設定されている。それに対して、クレードルピン17に固定されたリテーナピン20と端部リンクプレート16Eとの間には、前記隙間αよりも充分に大きい隙間βが形成されている。
【0027】
従って、チェーン15がプーリ13,14の一対のV面19,19間に正しい姿勢で挟圧されているときに、リテーナピン20が端部リンクプレート16Eと接触することが防止されるのは勿論のこと、プーリ13,14がチェーン15から受ける反力荷重で変形してチェーン15が
図4の矢印A方向に傾いたような場合でも、前記隙間βに相当する余裕が存在するため、リテーナピン20が端部リンクプレート16Eと接触することが防止される。これにより、リテーナピン20が端部リンクプレート16Eに繰り返し接触するのを防止してリテーナピン20の耐久性を高めることができる。
【0028】
またリテーナピン20をクレードルピン17の外周面の何れの位置に固定しても、クレードルピン17からのリンクプレート16…の脱落を防止する機能に変わりはないが、本実施の形態では、クレードルピン17の外周面のうちの最も径方向外側位置にリテーナピン20が固定される。その理由は、クレードルピン17の軸方向両端のプーリ当接面18c,18cはプーリ13,14のV面19,19の傾斜に沿うように傾斜しているため、クレードルピン17の外周面の軸方向長さは径方向外側位置で最も長くなり、そこにリテーナピン20を固定することで、リテーナピン20および端部リンクプレート16E間の隙間βは大きく確保できるからである。
【0029】
次に、
図5および
図6に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0030】
第1の実施の形態の端部リンクプレート16Eは他のリンクプレート16…と同一形状であるが、第2の実施〜第4の実施の形態では、端部リンクプレート16Eの形状が他のリンクプレート16…の形状と異なっている。
【0031】
本実施の形態の端部リンクプレート16Eは、径方向内端部に前後方向に離間する一対の突起部16c,16cを備えるとともに、径方向外端部の前後方向中央部に1個の突起部16dを備えている。これらの突起部16c,16c,16dは端部リンクプレート16Eを構成する板材の外周部に一体に形成した部分を、軸方向外側に向かって90°折り曲げることで構成される。突起部16c,16c,16dの長さは、それに対向するV面19との間に僅かな隙間αが生じるように、あるいはV面19に軽く接触するように設定されており、従って径方向内端の突起部16c,16cの長さより、径方向外端の突起部16dの長さの方が、V面19の傾斜角に応じて長くなっている。
【0032】
そして本実施の形態においても、端部リンクプレート16Eの軸方向外面とリテーナピン20との間には前記隙間αよりも大きい所定の隙間βが形成される。
【0033】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態の作用効果に加えて、以下のような更なる作用効果を達成することができる。即ち、積層された複数のリンクプレート16…,16E,16Eのトータルの軸方向厚さは、リンクプレート16…,16E,16Eを構成する板材の厚さや積層枚数によって決まるため、そのトータルの軸方向厚さが離散的なって最適の大きさに設定できない場合がある。
【0034】
従って、第1の実施の形態の端部リンクプレート16Eのように径方向内端の突起部16c,16cを持たない場合には、その径方向内端16b(
図4参照)がプーリ13,14のV面19,19との間に僅かな隙間αを介して対向するためには、端部リンクプレート16Eの径方向内端16bを径方向内側に向かって(つまりプーリ13,14の溝底に向かって)延長する必要が生じることがある。その結果、端部リンクプレート16Eの径方向寸法が増加するため、チェーン15をプーリ13,14の溝底に接近させることが難しくなり、チェーン式無段変速機Tのレシオレンジが小さくなる問題がある。
【0035】
しかしながら、本実施の形態によれば、径方向内端の突起部16c,16cの軸方向の突出量を適宜調整することで、突起部16c,16cの位置を径方向内側に移動させることなく、その軸方向外端をプーリ13,14のV面19に僅かな隙間αを介して対向させることが可能となり、チェーン式無段変速機Tのレシオレンジを充分に確保することができる。
【0036】
また本実施の形態によれば、端部リンクプレート16Eが径方向外端にも突起部16dを備えるので、端部リンクプレート16Eがプーリ13,14のV面19から受ける荷重を径方向内端および外端の突起部16c,16c,16dに分散し、それらの突起部16c,16c,16dの強度を小さく抑えながら端部リンクプレート16Eの耐久性を確保することができる。
【0037】
しかも本実施の形態によれば、端部リンクプレート16Eの一部を折り曲げることで突起部16c,16c,16dを構成するので、突起部16c,16c,16dを形成するための特別の部品が不要になり、部品点数や組み付け工数を削減することができる。
【0038】
次に、
図7および
図8に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0039】
第3の実施の形態の端部リンクプレート16Eは、第2の実施の形態の径方向内端の突起部16cの数を2個から1個に減らし、かつ径方向外端の1個の突起部16dを廃止した上で、前後方向両端を折り曲げて軸方向外側に突出する一対の突起部16e,16eを追加したものである。本実施の形態においても、径方向内端の突起部16cおよび前後方向両端の一対の突起部16e,16eが先にプーリ13,14のV面19に接触することで、リテーナピン20が端部リンクプレート16Eに接触するのを防止する機能は同じである。
【0040】
それに加えて、本実施の形態によれば、チェーン15がプーリ13,14のV面19,19に噛み込むときに、前後方向前側の突起部16e,16eがクレードルピン17のプーリ当接面18c,18cよりも先にプーリ13,14のV面19,19に接触するため、端部リンクプレート16Eを軸方向に位置決めした状態でクレードルピン17のプーリ当接面18c,18cがプーリ13,14のV面19,19に接触することで、チェーン15の姿勢を安定させてリテーナピン20が端部リンクプレート16Eに接触するのを一層確実に防止することができる。
【0041】
次に、
図9および
図10に基づいて本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0042】
第4の実施の形態は、第3の実施の形態の径方向内端の突起部16cを廃止し、前後方向両端の突起部16e,16eだけを残したものである。このように、端部リンクプレート16Eから径方向内端の突起部16cを廃止しても、前後方向両端の突起部16e,16eによりリテーナピン20と端部リンクプレート16Eとの間に隙間βを確保できるため、第3の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0043】
次に、
図11および
図12に基づいて本発明の第5の実施の形態を説明する。
【0044】
第5の実施の形態は、上述した第2の実施の形態の変形であって、第2の実施の形態の端部リンクプレート16Eの一部を折り曲げて形成した突起部16c,16c,16dに代えて、円柱状のピンよりなる別部材の突起部16c,16c,16dを端部リンクプレート16Eに圧入や溶接により固定したものである。この第5の実施の形態によれば、第2の実施の形態の作用効果に加えて、端部リンクプレート16Eを他のリンクプレート16と同一部材で構成し、部品の種類を減らしてコストダウンを図るという作用効果が達成される。
【0045】
次に、
図13および
図14に基づいて本発明の第6の実施の形態を説明する。
【0046】
第6の実施の形態は、上述した第4の実施の形態の変形であって、第4の実施の形態の端部リンクプレート16Eの一部を折り曲げて形成した突起部16e,16eに代えて、円柱状のピンよりなる別部材の突起部16e,16eを端部リンクプレート16Eに圧入や溶接により固定したものである。この第6の実施の形態によれば、第4の実施の形態の作用効果に加えて、端部リンクプレート16Eを他のリンクプレート16と同一部材で構成し、部品の種類を減らしてコストダウンを図るという作用効果が達成される。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0048】
例えば、チェーン15のリンクプレート16の形状や積層の仕方は、実施の形態に限定されるものではない。
【0049】
またクレードルピン17に対するリテーナピン20の固定手段は溶接に限定されず、圧入等の他の手段を採用することができる。
【符号の説明】
【0050】
13 駆動プーリ(プーリ)
14 従動プーリ(プーリ)
15 チェーン
16 リンクプレート
16E 端部リンクプレート
16c 径方向内端の突起部
16d 径方向外端の突起部
16e 前後方向両端の突起部
17 クレードルピン
19 V面
20 リテーナピン
β 隙間