(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る印刷装置について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、印刷装置10の要部を示す斜視図である。
図2は、印刷装置10の概略構成図である。
図1には、互いに直交するXYZ軸が描かれており、以降に示す図についても必要に応じてXYZ軸を付している。本実施形態において、印刷装置10の使用姿勢では、Z軸方向(Z方向及び−Z方向)が鉛直方向であり、印刷装置のX方向の面が正面である。また、印刷装置10の主走査方向はY軸方向(Y方向及び−Y方向)であり、副走査方向はX軸方向(X方向及び−X方向)である。
【0015】
印刷装置10は、複数のインクカートリッジ100と、装着部としてのホルダー20と、紙送りモーター30と、キャリッジモーター33と、印刷ヘッド35と、検出部90と、制御部としての制御ユニット40とを備えている。各インクカートリッジ100には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等のインクが一色ずつ収容されている。ホルダー20には、各インクカートリッジ100が装着される。なお、ホルダー20として、上記以外の任意の複数種類のインクカートリッジを装着できるホルダーを利用可能である。ホルダー20と印刷ヘッド35はキャリッジに備えられ、キャリッジモーター33に駆動されることにより印刷媒体PA上を往復移動する。紙送りモーター30は、印刷媒体PAを副走査方向VDに搬送する。キャリッジモーター33は、ホルダー20を主走査方向HDに駆動する。印刷ヘッド35は、キャリッジに搭載されて、各インクカートリッジ100から供給されたインクを吐出する。
図1及び
図2では、ホルダー20は、ホームポジションに位置している。なお、ホルダー20がキャリッジ上にあるオンキャリッジタイプの印刷装置について本発明を適用した例を説明したが、本発明は、ホルダー20がキャリッジ以外の場所にあるオフキャリッジタイプの印刷装置にも適用可能である。
【0016】
検出部90は、ホルダー20の主走査方向HDと平行して配置されて、インクの残量状態を検出する。検出部90は、反射型のフォトインタラプター(フォトリフレクター)として構成されており、発光部92、フォトダイオードからなる受光部94、及び受光部94と電源電位との間に流れる電流の変化を電圧として出力する検出回路とを備えている。検出部90の備える発光部92及び受光部94は、ホルダー20が移動する主走査方向HD(Y軸方向)と平行して並んで配置されている。
【0017】
制御ユニット40は、ニアエンド判定部41、初期充填判定部42、初期充填処理部43、記憶部44、及びインク消費量推定部(図示略)として機能するように構成されている。また、制御ユニット40は、CPU、ROM、RAM等(図示略)を備えている。CPUは、ROMに予め記憶された制御プログラムをRAM上に展開して実行することで、ニアエンド判定部41、初期充填判定部42、初期充填処理部43及びインク消費量推定部として機能する。あるいは、ニアエンド判定部41、初期充填判定部42、初期充填処理部43及びインク消費量推定部は、これらの機能を実行する専用の制御ICで構成されても良い。また、一部分をROMに記憶された制御プログラムとCPUで、残りの部分を専用の制御ICで構成することとしても良い。制御ユニット40は、紙送りモーター30やキャリッジモーター33、印刷ヘッド35を制御することにより、印刷媒体PAに対しての印刷を制御する。
【0018】
制御ユニット40には、印刷装置10の動作状態やエラーメッセージ等が表示される表示パネル70が接続されている。また、制御ユニット40には、インターフェイス72を介してコンピューター60が接続されている。また、制御ユニット40には、キャリッジがケーブルFFC1を介して接続され、検出部90がケーブルFFC2を介して接続されている。
【0019】
ニアエンド判定部41は、インクカートリッジ100内のインク残量が所定量未満となったか否かを、インクカートリッジ100に配置されたプリズム170(
図3参照)を用いて判定する。インク残量が所定量未満になったことを、以降では「インクニアエンド」ともいう。ニアエンド判定部41は、インクカートリッジ100のプリズム170が検出部90に対して所定の位置(検出位置)にあるときに、受光部94が受光した光の量に基づき検出部90の検出回路が出力する出力電圧を、検出部90からケーブルFFC2を介して取得する。次に、ニアエンド判定部41は、取得した出力電圧と所定の閾値とに基づき、インクカートリッジ100内のインク残量が所定量未満となったか否かを判定する。
【0020】
初期充填判定部42は、印刷装置10の初期充填処理が完了しているか否かの情報、及び各インクカートリッジ100内のインク残量等に基づいて、初期充填処理を実行するか否かを判定する。初期充填処理部43は、各インクカートリッジ100から印刷ヘッド35に初めてインクを供給する初期充填処理を実行する。記憶部44は、初期充填処理が完了しているか否かの情報等を記憶する。記憶部44としては、例えば、EEPROM等の不揮発性メモリーを用いることができる。
【0021】
図3は、インクカートリッジ100の斜視図である。インクカートリッジ100は、インクを内部に収容する略直方体形状のインク収容室130と、回路基板150と、ホルダー20にインクカートリッジ100を着脱するためのレバー120とを備えている。回路基板150は、インク収容室130の−X方向側の面の−Z方向側に設けられており、レバー120は、インク収容室130の−X方向側の面の+Z方向側に設けられている。インク収容室130の底部には、直角二等辺三角柱状のプリズム170が配置されている。プリズム170の底面は、インクカートリッジ100の−Z方向側の面をなす底面101から露出している。インクカートリッジ100の底面101には、インクカートリッジ100がホルダー20に装着されたときに、ホルダー20に設けられたインク受給針(図示略)が挿入されるインク供給口110が形成されている。インクカートリッジ100の使用前の状態では、インク供給口110はフィルムによって封止されている。ホルダー20にインクカートリッジ100を上方から装着すると、インク受給針によってフィルムが破れ、インク供給口110を通じてインク収容室130から印刷ヘッド35にインクが供給される。
【0022】
回路基板150の裏面には、インクカートリッジ100に関する情報を記録するための記憶部151が実装されている。回路基板150の表面には、記憶部151に電気的に接続された複数の端子152が配置されている。複数の端子152は、インクカートリッジ100がホルダー20に装着されたときに、ホルダー20に設けられた複数の本体側端子(図示略)と電気的に接触する。これらの本体側端子は、ケーブルFFC1によって、制御ユニット40に電気的に接続されている。これにより、インクカートリッジ100がホルダー20に装着されたとき、制御ユニット40は、記憶部151に電気的に接続されて記憶部151に対してデータの読み書きが可能になる。記憶部151としては、例えば、EEPROM等の不揮発性メモリーを用いることができる。なお、このようなインクカートリッジの構成は一例であり、他の任意の構成を有するインクカートリッジを採用することが可能である。
【0023】
図4は、インクカートリッジ100の記憶部151に記憶されているカートリッジ情報C10の構成例を示す図である。
図4に示すように、インクカートリッジ100のカートリッジ情報C10は、インク消費量(%)C11、インクカートリッジ種類C12、インク種類C13、及びインクカートリッジIDC14を含んでいる。インク消費量(%)C1は、有効インク量に対して消費されたインク量の比率を示している。有効インク量とは、インクカートリッジ100のインク収容室130にインクカートリッジ出荷時に収容されているインク量のうち、印刷装置10によって消費可能なインクの量を示している。(インクカートリッジには、ヘッドの空打ちを防止するために、本体のインク消費量推定部が、インクカートリッジ内のインク消費量の累計が100%となった時点で、カートリッジ内にわずかなインクが残るように設定されている。印刷装置によって消費可能なインクの量とは、インク量推定部が、インク消費量の累計を100%とカウントする量に相当する。)インクカートリッジ種類C12は、インクカートリッジ100の種類を示している。インク種類C13は、インクカートリッジ100に収容されているインクの種類を示している。インクカートリッジIDC14は、インクカートリッジ100を個別に特定可能な識別情報であり、例えば、製造ライン及び製造日時分秒で指定できる製造情報を用いる。
【0024】
図5は、印刷装置10の記憶部44に記憶されている初期充填情報P10の構成例を示す図である。
図5に示すように、印刷装置10の初期充填情報P10は、初期充填済フラグP11を含んでいる。初期充填済フラグP11には、初期値として「0」が設定されている。印刷装置10において初期充填処理が完了した場合は「1」が設定される。
【0025】
図6は、
図4に示すインクカートリッジ種類C12とインク種類C13とで規定される有効インク量(g)のテーブルの例を示している。これらの情報は、印刷装置10の記憶部44に記憶されている。インク消費量推定部は、カートリッジの記憶部151から読み出したインクカートリッジ種類とインク種類により、テーブルからインクカートリッジに収容されている有効インク量を取得する。そして、有効インク量に対する、ヘッドから吐出された累計のインク消費量からインク消費割合を算出する。そして、インク消費量推定部は、適宜、算出したインク消費量割合で、記憶部151のインク消費量(%)C11を更新する。更新のタイミングは、印刷JOBの終了毎、所定インク量消費毎、印刷装置の電源オフ時などである。
図6では、インクカートリッジ種類として、「同梱」、「Lサイズ」、「Mサイズ」、「Sサイズ」の4種類のインクカートリッジが示されている。「同梱」は印刷装置10の出荷時に同梱されているカートリッジである。「Lサイズ」のインクカートリッジ、「Mサイズ」のインクカートリッジ、「Sサイズ」のインクカートリッジは、印刷装置とは別に、印刷装置のユーザーが購入可能なインクカートリッジで、各々異なるインク量を収容している。ユーザーは、印刷頻度等により、インクカートリッジのサイズを選択する。「Lサイズ」、「Mサイズ」、「Sサイズ」のそれぞれは、インク容量が、Lサイズのカートリッジ、Mサイズのカートリッジ、Sサイズのカートリッジである。また、インク種類としては、「ブラック」、「シアン」、「マゼンタ」、「イエロー」の4色のインクが示されている。そして、各インクカートリッジ種類と各インク種類の組み合わせにおける有効インク量(g)が表形式で示されている。同梱カートリッジには、印刷装置が初期充填を実行可能量以上のインクが収容されている。
【0026】
次に、プリズム170を用いたインクニアエンドの判定方法について説明する。
図7は、インクニアエンドの判定に用いるプリズム170について説明するための図である。
図7に示すように、印刷装置10のホルダー20の底面には、4つの開口部21a〜21dが設けられている。ホルダー20には、それぞれの開口部21a〜21dに対応する位置に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色の4つのインクカートリッジ100a〜100dが装着されている。インクカートリッジ100a〜100dの各インク収容室130内に設けられた各プリズム170は、傾斜面170Lと傾斜面170Rとで頂角を形成した、直角二等辺三角柱状の透明部材であり、例えばポリプロピレンによって形成されている。発光部92から各プリズム170に入射する光の反射光の状態は、傾斜面170L,170Rのそれぞれに接する流体(インク又は空気)の屈折率によって異なる。
【0027】
ホルダー20は、前記したキャリッジモーター33によって駆動されることで、印刷装置10に固定された検出部90上を主走査方向HDに往復移動する。そして、ホルダー20が検出部90上を移動したときに、ホルダー20と検出部90との位置関係が、
図7に示す位置Pa、位置Pbの例のように相対的に変化する。
【0028】
位置Paでは、「インクニアエンド」状態にあるインクカートリッジ100aのプリズム170と検出部90が対向している。インクカートリッジ100aでは、インクIKが消費されてプリズム170の傾斜面170L,170Rの大部分がインクIKから露出し、傾斜面170L,170Rが空気に接触している。このため、発光部92からプリズム170に向けて照射された光R170aは、プリズム170の底面からプリズム170内に入射されると、プリズム170と空気との屈折率の違いにより、傾斜面170R及び傾斜面170Lのそれぞれで全反射する。その結果、発光部92から照射された光R170aの反射光は、その進行方向が180度反転され、プリズム170の底面から外部に射出されて受光部94に受光される。
【0029】
インクカートリッジ100bは「インク有り」状態にある。位置Pbでは、検出部90は、インクカートリッジ100bのプリズム170と対向している。インクカートリッジ100bでは、インクIKがプリズム170の傾斜面170L,170Rより高い位置まで残存している。このため、発光部92からプリズム170に向けて照射された光R170bの大部分は、プリズム170とインクIKとの屈折率が同程度であることから、傾斜面170Rを透過してインクIK内で吸収されることになる。
【0030】
制御ユニット40は、インクカートリッジ100a〜100dの各プリズム170が検出部90上を通過するようにホルダー20を主走査方向HDに移動させる。次に、制御ユニット40は、各プリズム170からの反射光の光量に対応する出力電圧を検出部90から取得する。ニアエンド判定部41は、各測定結果に基づいて、インクカートリッジ100a〜100dのそれぞれが「インク有り」状態であるか「インクニアエンド」状態であるかを判定する。制御ユニット40は、「インクニアエンド」を検出した後、あらかじめ設定された量のインクを消費したら、インクカートリッジはインクがなくなったと判定し、印刷装置の動作を停止する。
【0031】
次に、初期充填処理を実行する際の判定処理について説明する。
図8は、初期充填処理を実行する際の判定処理に係るフローチャートである。この判定処理は、例えば、印刷装置10の起動時やホルダー20へのインクカートリッジ100の装着時などのタイミングで実行される。
【0032】
先ず、制御ユニット40は、印刷装置10の記憶部44に記憶されている初期充填済フラグP11が「0」であるか否か、即ち印刷装置10に対して初期充填処理が未完であるか否かを判定する(ステップS10)。
【0033】
初期充填済フラグP11が「0」(初期充填処理が完了していない)の場合(ステップS10:YES)は、次のステップS20に進む。他方、初期充填済フラグP11が0でない(初期充填処理が完了している)場合(ステップS10:NO)は、フローチャートの処理を終了する。
【0034】
ステップS20では、制御ユニット40は、全てのインクカートリッジ100がホルダー20に装着されているか否かを判定する。
【0035】
全てのインクカートリッジ100が装着されている場合(ステップS20:YES)は、次のステップS30に進む。他方、各インクカートリッジ100のいずれかでも装着されていない場合(ステップS20:NO)は、ステップS190に進み、インクカートリッジが装着されていない旨のエラーメッセージを表示パネル70に表示してフローチャートの処理を終了する。
【0036】
ステップS30では、制御ユニット40は、各インクカートリッジ100の記憶部151に記憶されているカートリッジ情報C10から、インク消費量(%)C11、インクカートリッジ種類C12、インク種類C13、インクカートリッジIDC14を読み出し、制御ユニット40のRAM上に記憶させる。
【0037】
次に、制御ユニット40は、各インクカートリッジ100について、インクの残量状態をプリズム170を用いて検出し、全てのインクカートリッジ100が「インク有り」状態であるか否かを判定する(ステップS40)。
【0038】
全てのインクカートリッジ100が「インク有り」状態の場合(ステップS40:YES)は、次のステップS50に進む。他方、各インクカートリッジ100のいずれかでも「インクニアエンド」状態の場合(ステップS40:NO)は、ステップS190に進み、「インクニアエンド」の旨のエラーメッセージを表示パネル70に表示してフローチャートの処理を終了する。
【0039】
ステップS50では、制御ユニット40は、各インクカートリッジ100について、ステップS30において読み出したインク消費量(%)を、インク重量を示すインク消費量(g)に変換する(
図6のテーブルを参照し、有効インク量をもとにインク消費量(g)を求める。)。次に、制御ユニット40は、各インクカートリッジ100について、「A:有効インク量−有効インク量×10%」を演算する(ステップS60)。
【0040】
ここで、演算結果Aは、各インクカートリッジ100において、「インクニアエンド」状態になるときのインク消費量を示している。つまり、印刷装置は、検出部90がインクニアエンド判定をしたときにインク消費量が90%となるように設計されており、有効インク量の90%のインクが消費されたときに「インクニアエンド」状態になる。また、有効インク量×10%とは、「インクニアエンド」状態になった後、印刷装置10において継続して残りの印刷が可能なインク消費量を示している(前述の、「インクニアエンド」を検出した後、あらかじめ設定された量」に相当する。)。例えば、
図6の例では、インクカートリッジ種類「同梱」のインク種類「ブラック」の場合、有効インク量は12gであり、「インクニアエンド」状態になるときのインク消費量は約10.8gとなる。なお、「インクニアエンド」状態になるときのインク消費量は、有効インク量の90%に限られず、例えば使用環境や用途等の状況に応じて適正に設定することができる。
【0041】
次に、制御ユニット40は、各インクカートリッジ100について、「B:初期充填で使用されるインク量(「初期充填インク量」と呼ぶ。)+インク消費量」を演算する(ステップS70)。ここで、初期充填インク量は、各インクカートリッジ100において、印刷ヘッド35までの間をインクで満たすために使用するインク量となる。インク消費量は、各インクカートリッジ100について、ステップS50において変換後のインク消費量(g)である。
【0042】
次に、制御ユニット40は、全てのインクカートリッジ100について、演算結果A≧演算結果Bであるか否かを判定する(ステップS80)。
【0043】
ここで、演算結果A≧演算結果Bの比較式は、上記したように「有効インク量−有効インク量×10%」≧「初期充填インク量+インク消費量」を示している。「インク消費量に基づいて算出したインク残量(「算出インク残量」と呼ぶ。)=有効インク量−インク消費量」とした場合、上記比較式は、「算出インク残量」≧「初期充填インク量+有効インク量×10%」の比較式に変換できる。なお、「初期充填インク量+有効インク量×10%」は所定値に相当する。
【0044】
演算結果A≧演算結果B、即ち「算出インク残量」≧「初期充填インク量+有効インク量×10%」の場合(ステップS80:YES)、初期充填可能と判断して、次のステップS90に進む。他方、演算結果A<演算結果B、即ち「算出インク残量」<「初期充填インク量+有効インク量×10%」の場合(ステップS80:NO)、初期充填不可と判断して、ステップS190に進み、「初期充填不可」の旨のエラーメッセージを表示パネル70に表示してフローチャートの処理を終了する。
【0045】
例えば、
図6において、初期充填インク量を、各インクカートリッジ種類に共通の2gとする。未使用状態の「Mサイズ」の「ブラック」、「シアン」、「マゼンタ」及び「イエロー」の各インクカートリッジ100が装着された場合、それぞれの有効インク量は、
図6に示すように、「8g」、「7g」、「7g」、「7g」である。それぞれが未使用状態であることから、有効インク量と算出インク残量とが等しくなる。したがって、「算出インク残量」≧「初期充填インク量+有効インク量×10%」の比較結果は、「ブラック」については「8g」>「2g+0.8g」となり、「シアン」、「マゼンタ」及び「イエロー」についても「7g」>「2g+0.7g」となり、初期充填処理を実行できる。
【0046】
一方、未使用状態の「Sサイズ」の「ブラック」、「シアン」、「マゼンタ」及び「イエロー」の各インクカートリッジ100が装着された場合、それぞれの有効インク量は、
図6に示すように、「5g」、「1g」、「1g」、「1g」である。それぞれが未使用状態であることから、有効インク量と算出インク残量とが等しくなる。したがって、「算出インク残量」≧「初期充填インク量+有効インク量×10%」の比較結果は、「ブラック」については「5g」>「2g+0.5g」となるが、「シアン」、「マゼンタ」及び「イエロー」については「1g」<「2g+0.1g」となり、初期充填処理を実行できない。
【0047】
ステップS90では、制御ユニット40は、各インクカートリッジ100から印刷ヘッド35までの間をインクで満たす初期充填処理を実行する。そして、初期充填完了を示す「1」を印刷装置10の初期充填済フラグP11に設定し(ステップS100)、フローチャートの処理を終了する。
【0048】
上述した実施形態では、各インクカートリッジが「インク有り」状態であるか「インクニアエンド」状態であるかをそれぞれのプリズムを用いて検出する。そして、全てのインクカートリッジの算出インク残量が初期充填処理を実行する条件を満たしている場合でも、「インクニアエンド」状態のインクカートリッジがある場合には、初期充填処理を実行しない。これにより、例えば、インクの乾燥等の理由によって時間とともにインク残量が減少してしまったインクカートリッジを用いる場合や、インク消費量に関する情報が正しくインクカートリッジの記憶部に記憶されなかった場合などに、対応することができる。具体的には、インクカートリッジの算出インク残量が初期充填処理を実行する条件を満たしていても、実際にはインクカートリッジ内のインク残量が少ない場合、初期充填に必要なインク量が不足してしまい初期充填処理が正しく実行されないトラブルが発生する可能性があり、このようなトラブルの発生を抑制することができる。
【0049】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る印刷装置について、図面を参照して説明する。
第2実施形態に係る印刷装置は、第1実施形態に係る印刷装置10と略同様の構成であるが、印刷装置10の記憶部44に記憶されている初期充填情報P10の構成と、初期充填処理を実行する際の判定処理に係るフローチャートとが異なる。なお、以下では、第1実施形態と同様の構成及び処理内容については、同じ符号を付与し、詳細な説明を省略することとする。
【0050】
図9は、第2実施形態における印刷装置10の初期充填情報P10Aの構成例を示す図である。
図9に示すように、印刷装置10の初期充填情報P10Aは、初期充填済フラグP11に加えて、初期充填時に、初期充填用のインクを供給したインクカートリッジのIDを記憶している。具体的には、初期充填時インクカートリッジID(ブラック)P12、初期充填時インクカートリッジID(シアン)P13、初期充填時インクカートリッジID(マゼンタ)P14、及び初期充填時インクカートリッジID(イエロー)P15を含んでいる。
【0051】
図10は、第2実施形態における初期充填処理を実行する際の判定処理に係るフローチャートである。
図10に示すフローチャートでは、
図8に示す第1実施形態におけるフローチャートに対して、ステップS210〜S290の処理が追加されている。ステップS10〜S190の処理内容は、
図8に示す第1実施形態におけるフローチャートのステップS10〜S190の処理内容と同様なので、説明を省略する。
【0052】
図10に示すフローチャートのステップS210は、初期充填処理を実行(ステップS90)して、初期充填完了を示す「1」を初期充填済フラグP11に設定(ステップS100)した後に印刷装置が実行する処理である。従って、
図8のステップS100を経た後、もしくは、印刷装置の起動時にステップS10で初期充填フラグが「1」に設定されていた場合に実行される処理である。ステップS210では、制御ユニット40は、ステップS30において読み出した各インクカートリッジ100のインクカートリッジIDC14のそれぞれを、印刷装置10の初期充填情報P10Aの初期充填時インクカートリッジID(ブラック〜イエロー)P12〜P15として記憶する。そして、フローチャートの処理を終了する。
【0053】
また、ステップS220は、ステップS10において、初期充填済フラグP11が「0」でない(初期充填処理が完了している)場合(ステップS10:NO)に処理を行う。なお、この時点では、各インクカートリッジ100のカートリッジ情報C10がRAM上に読み込まれている。ステップS220では、制御ユニット40は、RAM上のインクカートリッジ種類C12に基づいて、初期充填用のインクカートリッジ100がホルダー20に装着されているか否かを判定する。初期充填用のインクカートリッジ100が装着されている場合(ステップS220:YES)は、次のステップS230に進む。他方、初期充填用のインクカートリッジ100が1つも装着されていない場合(ステップS220:NO)は、ステップS240に進み、印刷処理を実行してフローチャートの処理を終了する。
【0054】
ステップS230では、制御ユニット40は、装着されている初期充填用のインクカートリッジ100について、RAM上のインクカートリッジIDC14と、印刷装置10の対応する初期充填時インクカートリッジID(ブラック〜イエロー)P12〜P15とが一致するか否かを判定する。
【0055】
初期充填用のインクカートリッジ100の全てについて、インクカートリッジIDC14と、対応する初期充填時インクカートリッジID(ブラック〜イエロー)P12〜P15とが一致する場合(ステップS230:YES)は、次のステップS240に進み、印刷処理を実行してフローチャートの処理を終了する。他方、初期充填用のインクカートリッジ100のいずれかでも、インクカートリッジIDC14と、対応する初期充填時インクカートリッジID(ブラック〜イエロー)P12〜P15とが一致しない場合(ステップS230:No)は、ステップS290に進み、初期充填時のインクカートリッジと異なるインクカートリッジが装着されている旨のエラーメッセージを表示パネル70に表示してフローチャートの処理を終了する。
【0056】
上述した実施形態では、初期充填処理を実行したとき各インクカートリッジのインクカートリッジIDを印刷装置の記憶部に記憶する。そして、初期充填処理を実行後に初期充填用のインクカートリッジが装着されている場合、印刷装置に記憶されているインクカートリッジIDと、初期充填用のインクカートリッジのインクカートリッジIDとを比較し、一致しない場合はエラーとする。通常、ユーザーは、同梱されていたカートリッジの他に、別の同梱カートリッジを購入する状況は発生しないので、イレギュラーな状況が想定される。このような場合に、インクカートリッジをエラーとして扱って印刷装置に発生するトラブルの可能性を抑制することができる。
【0057】
(変形例1)
上述した実施形態では、発光部及び受光部を備える検出部と、インクカートリッジに配置されたプリズムとを用いて、インクカートリッジのインクの残量状態を検出した。しかし、この構成に限られず、例えば、インクカートリッジに圧力センサーなどのインク残量センサーを配置することによって、インクの残量状態を検出する構成としても良い。
【0058】
(変形例2)
上述した実施形態では、本発明を印刷装置とインクカートリッジとに適用した例を説明したが、本発明は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体消費装置に用いてもよく、また、そのような液体を収容した液体容器にも適用可能である。また、本発明の液体容器は、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体消費装置に流用可能である。
【0059】
(変形例3)
上述した実施形態では、インクカートリッジの記憶部151に記憶されているインクカートリッジ種類とインク種類により、制御ユニット40内に記憶されている
図6のテーブルを参照して各カートリッジの有効インク量を決定していたが、カートリッジの記憶部151に有効インク量を記憶しても良い。
【0060】
(変形例4)
上述した実施形態では、インクカートリッジがヘッドを備えるキャリッジ上に備えられているオンキャリッジの印刷装置であるが、インクカートリッジがヘッドを備えるキャリッジ上になく、印刷装置の別の場所に備えられていても良い。
【0061】
(変形例5)
上述した実施形態では、インクカートリッジの種類はLサイズ、Mサイズ、Sサイズの3種類であったがこれに限定されず、サイズは2種類でも良い。あるいは、3種類以上のサイズであっても良い。