(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のゴム組成物、および本発明のゴム組成物を用いた空気入りタイヤについて説明する。
【0012】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物(以下、単に本発明の組成物ともいう)は、ジエン系ゴム(A)と、シリカおよび/またはカーボンブラック(B)と、1分子中に2つ以上のチタン原子を有する有機チタン化合物(C)とを含有し、上記シリカと上記カーボンブラックの合計の含有量が、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して5〜200質量部であり、上記有機チタン化合物(C)の含有量が、上記シリカと上記カーボンブラックの合計の含有量に対して0.1〜20質量%である。
【0013】
上述のとおり本発明の組成物は1分子中に2つ以上のチタン原子を有する有機チタン化合物を含有するため、加工性、耐スコーチ性および押出し肌性に優れるものと考えられる。このことは、有機チタン化合物を含有しない後述する比較例1−1、2−1、3−1および3−4、並びに、有機チタン化合物を含有するが1分子中のチタン原子の数が1つである比較例1−4および2−4と比較して、1分子中に2つ以上のチタン原子を有する有機チタン化合物を含有する後述する本願実施例はいずれも加工性、耐スコーチ性および押出し肌性に優れることからも推測される。
【0014】
<ジエン系ゴム(A)>
本発明の組成物に用いられるジエン系ゴム(A)は特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。上記ジエン系ゴム(A)は、1種のジエン系ゴムを単独で用いても、2種以上のジエン系ゴムを併用してもよい。
【0015】
上記ジエン系ゴム(A)としては、得られるタイヤの剛性が優れ、グリップ性能に優れる理由から、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴムを用いることが好ましく、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体とともにブタジエンゴム(BR)を併用することがより好ましい。
また、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴムなどが挙げられる。なかでも、得られるタイヤの剛性が優れ、グリップ性能に優れる理由から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)であることが好ましい。
【0016】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の芳香族ビニル含有量(例えば、スチレン含有量)は、ゴム剛性に優れる理由から、20〜45質量%であることが好ましく、23〜42質量%であることがより好ましい。
また、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の共役ジエン中のビニル結合量は、フィラーとの反応性に優れる理由から、10〜50%であることが好ましく、25〜48%であることがより好ましい。ここで、ビニル結合量とは、共役ジエンの結合様式であるシス−1,4−結合、トランス−1,4−結合および1,2−ビニル結合のうち、1,2−ビニル結合の割合をいう。
【0017】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、その製造方法について特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。
また、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を製造する際に使用される単量体としての、芳香族ビニル、共役ジエンは特に限定されない。
ここで、上記共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。
一方、上記芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、tert−ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4−ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0018】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を用いる場合の含有量は、得られるタイヤの剛性が優れ、グリップ性能に優れる理由から、上記ジエン系ゴム(A)の50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
また、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体とともに上記ブタジエンゴム(BR)を併用する場合、上記ブタジエンゴム(BR)の含有量は、得られるタイヤのウェット性能および耐摩耗性の観点から、上記ジエン系ゴム(A)の50質量%未満であることが好ましく、45質量%未満であることがより好ましく、40質量%未満であることがさらに好ましい。
【0019】
上記ジエン系ゴム(A)の重量平均分子量は、得られるタイヤの靭性と本発明の組成物の取り扱いの観点から、100,000〜1,500,000であることが好ましく、600,000〜1,300,000であることがより好ましい。ジエン系ゴム(A)の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0020】
<シリカおよび/またはカーボンブラック(B)>
本発明の組成物に用いられるシリカおよび/またはカーボンブラック(B)は、特に制限されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカおよびカーボンブラックを用いることができる。
【0021】
(シリカ)
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
本発明において、上記シリカは、ゴムの補強性の観点から、湿式シリカであることが好ましい。
【0022】
上記シリカは、得られるタイヤのウェット性能および耐摩耗性の観点から、窒素吸着比表面積(N
2SA)が100〜300m
2/gであることが好ましく、加工性および耐スコーチ性がより優れ、また、押出機圧がより低くなる理由から、190〜250m
2/gであることがより好ましい。
ここで、N
2SAは、シリカがゴム分子との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、シリカ表面への窒素吸着量をJIS K6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
【0023】
(カーボンブラック)
本発明の組成物に用いられるカーボンブラックは、特に限定されず、例えば、SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、FEF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、得られるタイヤの耐摩耗性の観点から、50〜500m
2/gであることが好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N
2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
【0024】
本発明の組成物において、上記シリカと上記カーボンブラックの合計の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、5〜200質量部であり、得られるタイヤのウェット性能および耐摩耗性の観点から、20〜140質量部であることが好ましく、35〜130質量部であることがより好ましい。
【0025】
<有機チタン化合物(C)>
本発明の組成物に用いられる有機チタン化合物(C)は、1分子中に2つ以上のチタン原子を有する有機チタン化合物であれば特に制限されない。
上記有機チタン化合物(C)としては、例えば、アルコキシ基を有するチタン化合物(チタンアルコキシド)であって1分子中に2つ以上のチタン原子を有するもの、アシレート基(−OCOR:Rは炭化水素基)を有するチタン化合物(チタンアシレート)であって1分子中に2つ以上のチタン原子を有するもの、チタンキレートであって1分子中に2つ以上のチタン原子を有するもの、などが挙げられる。なかでも、加工性および耐スコーチ性がより優れ、また、押出機圧がより低くなる理由から、チタンアシレートであって1分子中に2つ以上のチタン原子を有するものであることが好ましく、アルコキシ基、アシレート基および水酸基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有するチタンアシレートであって1分子中に2つ以上のチタン原子を有するものであることがより好ましい。
【0026】
上記有機チタン化合物(C)の好適な態様としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
上記式(1)中、R
11およびR
12は、それぞれ独立に、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を表す。複数あるR
11およびR
12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(1)中、R
11は、炭素数8〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数12〜20アルキル基であることがより好ましい。R
11は、直鎖状のアルキル基であることが好ましい。
上記式(1)中、R
12は、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましい。R
12は、分岐状のアルキル基であることが好ましい。
上記式(1)中、nは2以上の整数を表す。なかでも、3〜20であることが好ましく、5〜10であることがより好ましい。
【0029】
上記有機チタン化合物(C)の別の好適な態様としては、例えば、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
上記式(6)中、R
61は、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を表す。なかでも、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましい。複数あるR
61は同一であっても異なっていてもよい。
上記式(6)中、nは、2以上の整数を表す。なかでも、3〜30であることが好ましく、5〜20であることがより好ましい。
【0032】
本発明の組成物において、上記有機チタン化合物(C)の含有量は、上記シリカと上記カーボンブラックの合計の含有量に対して、0.1〜20質量%であり、加工性がより優れる理由から、5〜15質量%であることが好ましい。
有機チタン化合物(C)の含有量が上記シリカと上記カーボンブラックの合計の含有量に対して0.1質量%未満であると加工性、耐スコーチ性および押出し肌性が不十分となる。また、有機チタン化合物(C)の含有量が上記シリカと上記カーボンブラックの合計の含有量に対して20質量%を超えると加工性および/または押出し肌性が不十分となる。
【0033】
<任意成分>
本発明の組成物には、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに添加剤を含有することができる。
上記添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、プロセスオイル、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、加硫剤、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤が挙げられる。
【0034】
本発明の組成物は、上記シリカおよび/またはカーボンブラック(B)の分散性が向上する理由から、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0035】
(シランカップリング剤)
本発明の組成物に含有されるシランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、1〜16であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0036】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、メルカプト基などが挙げられ、なかでも、メルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記シランカップリング剤は、押出し肌性がより優れ、また、押出機圧が低くなる理由から、メルカプト系シランカップリング剤であることが好ましい。
上記メルカプト系シランカップリング剤は、加水分解性基およびメルカプト基(−SH)を有するシラン化合物であれば特に制限されない。加水分解性基の具体例および好適な態様は上述のとおりである。上記メルカプト系シランカップリング剤は、メルカプト基以外の有機官能基を有していてもよい。有機官能基の具体例は上述のとおりである。
【0039】
また、上記シランカップリング剤の好適な態様としては、例えば、ポリエーテル鎖を有するメルカプト系シランカップリング剤、および/または、ポリシロキサン構造(−Si−O−)を有するメルカプト系シランカップリング剤などが挙げられる。
ここで、ポリエーテル鎖とは、エーテル結合を2以上有する側鎖であり、その具体例としては、例えば、構造単位−R
a−O−R
b−を合計して2個以上有する側鎖が挙げられる。ここで、上記構造単位中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立して、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、直鎖状もしくは分岐状のアルキニレン基、または、置換もしくは無置換のアリーレン基を表す。なかでも、直鎖状のアルキレン基であることが好ましい。
【0040】
上記ポリエーテル鎖を有するメルカプト系シランカップリング剤の好適な態様としては、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
上記式(2)中、R
21は、炭素数1〜8のアルコキシ基を表し、なかでも、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。炭素数1〜3のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。なお、lが2である場合の複数あるR
21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(2)中、R
22は、炭素数4〜30の直鎖状のポリエーテル基を表す。ポリエーテル基とは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位−R
a−O−R
b−を合計して2個以上有する基が挙げられる。R
aおよびR
bの定義および好適な態様は、上述したR
aおよびR
bと同じである。なお、mが2である場合の複数あるR
22はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
炭素数4〜30の直鎖状のポリエーテル基の好適な態様としては、下記式(5)で表される基が挙げられる。
【0044】
上記式(5)中、R
51は、直鎖状のアルキル基、直鎖状のアルケニル基、または、直鎖状のアルキニル基を表し、なかでも直鎖状のアルキル基が好ましい。上記直鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数8〜15の直鎖状のアルキル基がより好ましい。炭素数8〜15の直鎖状のアルキル基の具体例としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基などが挙げられ、なかでもトリデシル基が好ましい。
上記式(5)中、R
52は、直鎖状のアルキレン基、直鎖状のアルケニレン基、または、直鎖状のアルキニレン基を表し、なかでも直鎖状のアルキレン基が好ましい。上記直鎖状のアルキレン基としては、炭素数1〜2の直鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
上記式(5)中、pは、1〜10の整数を表し、3〜7であることが好ましい。
上記式(5)中、*は、結合位置を示す。
【0045】
上記式(2)中、R
23は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。
上記式(2)中、R
24は炭素数1〜30のアルキレン基を表し、なかでも炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましい。炭素数1〜5のアルキレン基の具体例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられる。
上記式(2)中、lは1〜2の整数を表し、1であることが好ましい。上記式(2)中、mは1〜2の整数を表し、2であることが好ましい。nは0〜1の整数を表し、0であることが好ましい。l、mおよびnはl+m+n=3の関係式を満たす。
【0046】
一方、上記ポリシロキサン構造を有するメルカプト系シランカップリング剤の好適な態様としては、例えば、下記式(3)で表される繰り返し単位および下記式(4)で表される繰り返し単位を有する共重合物が挙げられる。
【0048】
上記式(3)および(4)中、R
31およびR
41は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキレン基を表し、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられる。なかでも、プロピレン基が好ましい。複数あるR
31およびR
41はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(3)および(4)中、R
32およびR
42は、それぞれ独立に、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニレン基、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルキニレン基を表し、なかでも、炭素数3〜20のものが好ましい。R
32が末端である場合、R
32は、水素原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルキニル基を表し、なかでも、炭素数3〜20のものが好ましい。R
42が末端である場合、R
42の定義、具体例および好適な態様は、上記R
32と同じである。複数あるR
32およびR
42はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(3)および(4)中、R
33およびR
43は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルキニル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキル基であって末端に水酸基もしくはカルボキシル基を有するもの、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基であって末端に水酸基もしくはカルボキシル基を有するものを表す。R
43は、末端に水酸基を有する基であることが好ましい。R
32およびR
33は、R
32とR
33とで環を形成していてもよい。R
42およびR
43は、R
42とR
43とで環を形成していてもよい。複数あるR
33およびR
43はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
R
34は、炭素数1〜13のアルキル基を表し、なかでも、炭素数3〜10のアルキル基が好ましい。炭素数3〜10のアルキル基の具体例としては、たとえばヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。複数あるR
34はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
本発明の組成物において、上記シランカップリング剤の含有量は、上記シリカおよび/カーボンブラック(B)の分散性がより向上する理由から、上記シリカおよび/カーボンブラック(B)の含有量に対して0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜18質量%であることがより好ましく、2〜15質量%であることがさらに好ましい。
【0050】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0051】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明の組成物をタイヤ(好ましくはタイヤトレッド)に使用した空気入りタイヤである。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0052】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
【0053】
本発明の空気入りタイヤは、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のあるいは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
<実施例1−1〜1−3、実施例2−1〜2−3、比較例1−1〜1−4、比較例2−1〜2−4、実施例3−1〜3−4、比較例3−1〜3−4>
下記第1表に示す成分を、下記第1表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第1表に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて5分間混合し、150±5℃に達したときに放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を混合し、ゴム組成物を得た。
第1表中、SBRの量について、上段の値はSBR(油展品)の量(単位:質量部)であり、下段の値は、SBRに含まれるSBRの正味の量(単位:質量部)である。
また、第1表中、「有機チタン化合物/(シリカ+CB)」は、シリカとカーボンブラックの合計の含有量に対する有機チタン化合物の含有量を表したものである。
【0056】
<ムーニー粘度>
調製したゴム組成物(未加硫)について、JIS K6300−1:2001に準じて、L形ロータを使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、試験温度100℃の条件で、ムーニー粘度を測定した。
結果を第1表に示す。結果は、比較例1−2〜1−4および実施例1−1〜1−3については比較例1−1の値を100とする指数で表した。また、比較例2−2〜2−4および実施例2−1〜2−3については比較例2−1の値を100とする指数で表した。また、比較例3−2〜3−4および実施例3−1〜3−4については比較例3−1の値を100とする指数で表した。指数が小さいほど粘度が低く、加工性が優れることを示す。
【0057】
<ムーニースコーチ>
調製したゴム組成物(未加硫)について、JIS K6300−1:2001に準じて、L形ロータを使用し、試験温度125℃の条件で、スコーチタイムを測定した。
結果を第1表に示す。結果は、比較例1−2〜1−4および実施例1−1〜1−3については比較例1−1の値を100とする指数で表した。また、比較例2−2〜2−4および実施例2−1〜2−3については比較例2−1の値を100とする指数で表した。また、比較例3−2〜3−4および実施例3−1〜3−4については比較例3−1の値を100とする指数で表した。指数が大きいほどスコーチタイムが長く、耐スコーチ性が優れることを示す。
【0058】
<押出し肌性>
小型ゴム押出機を用いて100℃で押出したときの外観を目視で観察し、以下のとおり評価した。実用上、AまたはBであることが好ましく、Aであることがより好ましい。
・A:表面が平滑。
・B:表面に1mm以下の細かい凹凸が認められる。
・C:表面に1mm以上の大きな凹凸が認められる。
【0059】
<押出機圧>
調製したゴム組成物(未加硫)について、JIS K7199:1999に準じ、120℃の条件で押出機圧(一定体積流量における試験圧力)を測定した。
結果を第1表に示す。結果は、比較例1−2〜1−4および実施例1−1〜1−3については比較例1−1の値を100とする指数で表した。また、比較例2−2〜2−4および実施例2−1〜2−3については比較例2−1の値を100とする指数で表した。また、比較例3−2〜3−4および実施例3−1〜3−4については比較例3−1の値を100とする指数で表した。指数が小さいほど押出機圧が低いことを示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
上記第1表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・ジエン系ゴムA1(SBR):E581(油展品(SBR100質量部に対して油展オイル37.5質量部を含む。SBR中のSBRの正味は72.7質量%)、スチレン含有量:40質量%、ビニル結合量:44%、重量平均分子量:1,260,000、旭化成社製)
・ジエン系ゴムA2(BR):Nipol BR1200(日本ゼオン社製)
・シリカB1:Zeosil 1165MP(N
2SA:165m
2/g、ローディア社製)
・シリカB2:Ultrasil 9000GR(N
2SA:235m
2/g、エボニックデグッサ社製)
・カーボンブラックB3:ショウブラックN339(N
2SA:90m
2/g、キャボットジャパン社製)
・シランカップリング剤1:VP Si363(エボニックデグッサ社製)(上記式(2)で表される化合物。ここで、R
21:−OC
2H
5、R
22:−O(C
2H
4O)
5−C
13H
27、R
24:−(CH
2)
3−、l=1、m=2、n=0。)
・シランカップリング剤2:Si69(エボニックデグッサ社製)(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(NOFコーポレーション社製)
・老化防止剤:Santoflex6PPD(Solutia Europe社製)
・プロセスオイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・有機チタン化合物C1:オルガチックスTPHS(マツモトファインケミカル社製)(上記式(1)で表される化合物。ここで、R
11:−C
17H
35、R
12:−i−C
3H
7(イソプロポキシ基)、n=7〜13。)
・有機チタン化合物C2:B−10(日本曹達社製)(上記式(6)で表される化合物。ここで、R
61:−C
4H
9、n=10。)
・有機チタン化合物X1:プレンアクトTTS(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、味の素ファインテクノ社製)(1分子中にチタン原子を1つ有する有機チタン化合物)
・硫黄:油処理イオウ(軽井沢精錬所社製)
・加硫促進剤1:ノクセラーCZ−G(大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤2:Perkacit DPG(Flexsys社製)
・加硫促進剤3:ノクセラーNS(大内新興化学工業社製)
【0067】
第1表から分かるように、有機チタン化合物(C)を含有しない比較例1−1、1−4、2−1、2−4および3−1と比較して、有機チタン化合物(C)を含有する本願実施例はいずれも加工性、耐スコーチ性および押出し肌性に優れ、かつ、押出機圧が低かった。
実施例1−1〜1−3の対比および実施例2−1〜2−3の対比から、有機チタン化合物(C)がチタンアシレートである場合、有機チタン化合物(C)の含有量がシリカとカーボンブラックの合計の含有量に対して5〜15質量%である実施例1−2および2−2の方がより優れた加工性を示した。
また、実施例3−2と3−4との対比から、シリカの窒素吸着比表面積が190〜250m
2/gである実施例3−2の方が、加工性および耐スコーチ性により優れ、かつ、押出機圧がより低かった。
なお、実施例1−2と3−4との対比をしたところ、有機チタン化合物(C)がチタンアシレートであって1分子中に2つ以上のチタン原子を有するものである実施例1−2の方が、加工性および耐スコーチ性により優れ、かつ、押出機圧がより低かった。
【0068】
一方、有機チタン化合物(C)を含有するが、有機チタン化合物(C)の含有量がシリカとカーボンブラックの合計の含有量に対して0.1質量%未満である比較例1−2、2−2および3−2は加工性、耐スコーチ性および押出し肌性が不十分であり、また、押出機圧が高かった。
また、有機チタン化合物(C)を含有するが、有機チタン化合物(C)の含有量がシリカとカーボンブラックの合計の含有量に対して20質量%超である比較例1−3、2−3および3−3は加工性および/または押出し肌性が不十分であり、また、押出機圧が高かった。
また、有機チタン化合物(C)の代わりに、1分子中に1つしかチタン原子を有さない有機チタン化合物を配合した比較例1−4および2−4は加工性および耐スコーチ性が不十分であり、また、押出機圧が高かった。