(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドラムブレーキ内のパーキングレバーが電動アクチュエータの正駆動により復帰位置から作動位置に駆動されてブレーキシューが復帰位置から作動位置に駆動され、前記パーキングレバーが前記電動アクチュエータの逆駆動により作動位置から復帰位置に駆動されてブレーキシューが作動位置から復帰位置に駆動されるように構成されている電動駐車ブレーキ装置であって、
前記電動アクチュエータが、
正逆回転駆動可能で、回転負荷に応じてモータ制御手段によって作動を制御される電気モータと、
回転運動を直線運動に変換可能で、前記電気モータが正回転する正駆動時には前記パーキングレバーを復帰位置から作動位置に向けて移動可能であり、且つ、前記電気モータが逆回転する逆駆動時には前記パーキングレバーを作動位置から復帰位置に向けて移動可能である変換機構と、
前記電気モータの逆回転により、前記パーキングレバーが作動位置から復帰位置に移動した後に、前記変換機構の構成部材を駆動して、前記電気モータに所定の回転負荷を付与する負荷付与機構を備えていて、
前記負荷付与機構が前記電気モータに付与する回転負荷は、前記電気モータの逆回転に伴い上昇し、前記パーキングレバーが復帰位置に移動した後に所定値となるように設定されており、前記電気モータの逆回転による回転負荷が前記所定値になったときに前記モータ制御手段が前記電気モータの逆回転を停止させるように設定されている電動駐車ブレーキ装置。
【発明の概要】
【0005】
上記した特許文献1に記載されている電動駐車ブレーキ装置においては、電気モータに流れる電流値で電気モータの作動・停止を制御することができるといった利点(パーキングレバーの状態を電気的に検出するセンサが不要であるとの利点)がある。しかし、ドラムブレーキにおけるブレーキシューには、一般に、同ブレーキシューを復帰位置に向けて付勢するリターンスプリングが設けられている。このため、パーキングブレーキの解除時には、電動アクチュエータの逆駆動がリターンスプリングによって助勢される。
【0006】
したがって、逆回転する電気モータに流れる電流が無負荷電流になるタイミングと、パーキングレバーが復帰位置に戻るタイミングが相違するおそれがある。これにより、パーキングブレーキの解除時において、パーキングレバーの戻し不足や戻し過ぎが生じるおそれがある。なお、パーキングレバーの戻し不足が生じた場合には、例えば、ブレーキの引き摺り等の不具合が発生し、また、パーキングレバーの戻し過ぎが生じた場合には、例えば、次回パーキングブレーキ作動時の応答遅れ等の不具合が発生することとなる。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたもの(パーキングブレーキの解除時において、パーキングレバーの戻し不足や戻し過ぎが生じないようにすること)であり、
ドラムブレーキ内のパーキングレバーが電動アクチュエータの正駆動により復帰位置から作動位置に駆動されてブレーキシューが復帰位置から作動位置に駆動され、前記パーキングレバーが前記電動アクチュエータの逆駆動により作動位置から復帰位置に駆動されてブレーキシューが作動位置から復帰位置に駆動されるように構成されている電動駐車ブレーキ装置であって、
前記電動アクチュエータが、
正逆回転駆動可能で、回転負荷に応じてモータ制御手段によって作動を制御される電気モータと、
回転運動を直線運動に変換可能で、前記電気モータが正回転する正駆動時には前記パーキングレバーを復帰位置から作動位置に向けて移動可能であり、且つ、前記電気モータが逆回転する逆駆動時には前記パーキングレバーを作動位置から復帰位置に向けて移動可能である変換機構と、
前記電気モータの逆回転により、前記パーキングレバーが作動位置から復帰位置に移動した後に、前記変換機構の構成部材を駆動して、前記電気モータに所定の回転負荷を付与する負荷付与機構を備えていることに特徴がある。
この場合において、前記負荷付与機構が前記電気モータに付与する回転負荷は、前記電気モータの逆回転に伴い上昇し、前記パーキングレバーが復帰位置に移動した後に所定値となるように設定されており、前記電気モータの逆回転による回転負荷が前記所定値になったときに前記モータ制御手段が前記電気モータの逆回転を停止させるように設定されていることが望ましい。
【0008】
上記した本発明の実施に際して、
前記変換機構が、前記パーキングレバーに対して係合・離脱可能で前記パーキングレバーの作動方向にて軸方向に移動可能なロッドと、前記ロッドが有するネジ部に螺合するネジ部を有していて復帰位置にて前記パーキングレバーの復帰方向への軸方向移動を規制された状態で前記電気モータにより回転駆動される出力ギヤを備え、
前記負荷付与機構が、前記電気モータの逆回転により、前記パーキングレバーが作動位置から復帰位置に移動した後に、前記パーキングレバーから離れた(係合を解かれた)前記ロッドと係合して、前記ロッドの復帰方向への軸方向移動を規制するストッパと、前記出力ギヤが復帰位置から作動方向へ移動したとき前記出力ギヤに回転負荷を付与する回転負荷付与部材(例えば、摩擦材または回転ストッパ)を備えていることも可能である。
【0009】
また、上記した本発明の実施に際して、
前記変換機構が、前記パーキングレバーに対して係合・離脱可能で前記パーキングレバーの作動方向にて軸方向に移動可能なロッドと、前記ロッドが有するネジ部に螺合するネジ部を有していて復帰位置にて前記パーキングレバーの復帰方向への軸方向移動を規制された状態で前記電気モータにより回転駆動される出力ギヤを備え、
前記負荷付与機構が、前記ロッドまたは前記出力ギヤを作動方向に付勢していて、前記電気モータの逆回転により、前記パーキングレバーが作動位置から復帰位置に移動した後に、前記出力ギヤの逆回転により前記出力ギヤを復帰位置から作動方向へ移動させる付勢部材と、前記出力ギヤが復帰位置から作動方向へ移動したとき前記出力ギヤに回転負荷を付与する回転負荷付与部材(例えば、摩擦材または回転ストッパ)を備えていることも可能である。
【0011】
また、上記した本発明の実施に際して、
前記変換機構が、前記パーキングレバーに連結機構を介して連結されていて前記パーキングレバーの作動方向と復帰方向にて軸方向に移動可能なロッドと、前記ロッドが有するネジ部に螺合するネジ部を有していて復帰位置にて前記パーキングレバーの復帰方向への軸方向移動を規制された状態で前記電気モータにより回転駆動される出力ギヤを備え、
前記負荷付与機構が、前記電気モータの逆回転により、前記パーキングレバーが作動位置から復帰位置に移動した後に、前記ロッドと係合して、前記ロッドの復帰方向への軸方向移動を規制するストッパと、前記出力ギヤに対して同軸的に配置されていて、前記ロッドが前記ストッパにより軸方向移動を規制されている状態にて、前記出力ギヤの逆回転により前記出力ギヤが作動方向へ移動したとき、前記出力ギヤと係合して、前記出力ギヤの軸方向移動を弾性的に規制し、前記出力ギヤに回転負荷を付与する回転負荷付与部材を備えていることも可能である。
【0012】
上記した本発明の電動駐車ブレーキ装置においては、モータ制御手段において、パーキングブレーキスイッチの作動操作により電気モータを正回転させ、正回転する電気モータに作用する回転負荷が設定値となったときの電流値により正回転する電気モータを停止させるように設定することで、パーキングブレーキ作動を得ることが可能である。このときには、パーキングブレーキスイッチを作動操作すると、電気モータが正回転して、復帰位置にあるパーキングレバーが電動アクチュエータの正駆動により復帰位置から作動位置に駆動されて、ブレーキシューが復帰位置から作動位置に駆動される。ところで、このときには、正回転する電気モータに作用する回転負荷(ブレーキシューが作動位置に移動してブレーキドラムに圧接することにより得られる負荷)が設定値となったときの電流値により正回転する電気モータを停止させるように設定してあるため、常に所定のパーキングブレーキ力を得ることができる。
【0013】
また、モータ制御手段において、パーキングブレーキスイッチの解除操作により電気モータを逆回転させ、逆回転する電気モータに作用する回転負荷が所定値となったときの電流値により逆回転する電気モータを停止させるように設定することで、パーキングブレーキ解除を得ることが可能である。このときには、パーキングブレーキスイッチを解除操作すると、電気モータが逆回転して、作動位置にあるパーキングレバーが電動アクチュエータの逆駆動により作動位置から復帰位置に駆動されて、ブレーキシューが作動位置から復帰位置に駆動される。ところで、このときには、逆回転する電気モータに作用する回転負荷(負荷付与機構によって得られる負荷)が所定値となったときの電流値により逆回転する電気モータを停止させるように設定してあるため、パーキングレバーを常に所定の復帰位置に戻した状態にて止めることができる。
【0014】
したがって、本発明の電動駐車ブレーキ装置においては、パーキングブレーキの解除時において、パーキングレバーの戻し不足や戻し過ぎが生じないようにすることができる。これにより、パーキングレバーの戻し不足による不具合(例えば、ブレーキの引き摺り)を防止することが可能であるとともに、パーキングレバーの戻し過ぎによる不具合(例えば、次回パーキングブレーキ作動時の応答遅れ)を防止することが可能である。また、本発明の電動駐車ブレーキ装置においては、電気モータに流れる電流値で電気モータの作動・停止を制御することができるといった利点(パーキングレバーの状態を電気的に検出するセンサが不要であるとの利点)がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図4は本発明による電動駐車ブレーキ装置の第1実施形態を示していて、この第1実施形態の電動駐車ブレーキ装置は、駐車ブレーキ機構を備えたドラムブレーキ10と、駐車ブレーキ機構を駆動する電動アクチュエータ20とを備えている。
【0017】
ドラムブレーキ10は、
図1および
図2に示したように、円盤状のバックプレート11と、このバックプレート11に組付けた一対のブレーキシュー12、13、アンカーブロック14、ホイールシリンダ15等を備えている。バックプレート11は、車体側の取付部(図示省略)に固定されるように構成されている。
【0018】
各ブレーキシュー12、13は、バックプレート11に対して特定方向(プレート面に沿った方向)にて移動可能に組付けられていて、ブレーキ操作時にブレーキドラム(図示省略)に押し付けられる円弧状のライニング12a、13aを一体的に備えている。また、各ブレーキシュー12、13間には、アジャスト機構付の連結部材16とリターンスプリングS1,S2が組付けられている。
【0019】
図1および
図2にて左方のブレーキシュー12は、上端にてホイールシリンダ15の左方ピストン(図示省略)に係合し、下端にてアンカーブロック14に係合していて、ブレーキ操作時にはブレーキドラム(図示省略)に向けて左方に押し広げられるように構成されている。また、ブレーキシュー12には、パーキングレバー17が揺動可能に組付けられている。
【0020】
一方、
図1および
図2にて右方のブレーキシュー13は、上端にてホイールシリンダ15の右方ピストン(図示省略)に係合し、下端にてアンカーブロック14に係合していて、ブレーキ操作時にはブレーキドラム(図示省略)に向けて右方に押し広げられるように構成されている。また、ブレーキシュー13には、リターンスプリングS3(このスプリングS3は、上端がバックプレート11に係止され、下端がブレーキシュー13に係止されている)が組付けられている。
【0021】
アンカーブロック14は、一対の固定具14a、14bを用いて、バックプレート11の図示下部に固定されている。ホイールシリンダ15は、一対の固定具15a、15bを用いて、バックプレート11の図示上部に固定されている。このホイールシリンダ15は、ブレーキ操作時に左右に離間して、左右のブレーキシュー12、13を拡開させる左右一対のピストン(図示省略)を内部に収容している。
【0022】
連結部材16は、左端部にてブレーキシュー12の上部に対して傾動可能に係合するとともにパーキングレバー17の上部に対しても傾動可能に係合し、右端部にてブレーキシュー13の上部に対して傾動可能に係合している。この連結部材16は、その長さを、周知のアジャスト機構16aにより、ライニング12a、13aの摩耗量に応じて、自動的に調整可能(増大可能)に構成されている。
【0023】
パーキングレバー17は、図示左方のブレーキシュー12に沿って配設されていて、その上端部にてピン17aとクリップ17bを用いてブレーキシュー12に傾動可能(回転可能)に連結されている。また、パーキングレバー17は、その下端にて、
図3に示したように、電動アクチュエータ20におけるホルダ22fに係合していて、ホルダ22fによって左右方向に駆動される(ピン17a回りに回転駆動される)ように構成されている。
【0024】
電動アクチュエータ20は、
図1および
図2に示したように、ドラムブレーキ10内に設けられている。この電動アクチュエータ20は、
図3に示したように、電気モータ21と、変換機構22と、負荷付与機構として機能するストッパ23および摩擦材24を備えている。電気モータ21は、正逆回転駆動可能であり、回転負荷に応じた電流値によりモータ制御手段(電気制御装置)ECUによって作動を制御されるように構成されている。なお、回転負荷に応じた電流値は、モータ制御手段(電気制御装置)ECUが備える電流モニタIMによって検出可能である。
【0025】
変換機構22は、電気モータ21の回転運動をパーキングレバー17傾動端(
図3に示した部位)の直線運動(パーキングレバー17の傾動動作)に変換可能であり、電気モータ21が正回転する正駆動時にはパーキングレバー17を復帰位置(
図4の位置)から作動位置(
図3の位置)に向けて移動可能であり、且つ、電気モータ21が逆回転する逆駆動時にはパーキングレバー17を作動位置から復帰位置に向けて移動可能である。
【0026】
この変換機構22は、電気モータ21の回転軸21aに一体的に設けたピニオン22aと、ピニオン22aによって回転駆動される中間ギヤ22bと、中間ギヤ22bによって回転駆動される出力ギヤ22cと、出力ギヤ22cの中心(軸心)に設けられたネジ機構22dと、ネジ機構22dを介して出力ギヤ22cに連結されるロッド22eと、ロッド22eの先端に一体的に設けられていてパーキングレバー17に対して係合・離脱可能でパーキングレバー17によって回転を規制されているホルダ22fを備えている。
【0027】
中間ギヤ22bと出力ギヤ22cは、ハウジング22gに回転自在に組付けられている。出力ギヤ22cとハウジング22g間には、パーキングレバー17からの反力(
図3左方への力)を受けるスラストベアリング22hが組付けられている。出力ギヤ22cは、ハウジング22gに対して軸方向に移動可能に構成されている。なお、電気モータ21とハウジング22gは、バックプレート11に固定具(図示省略)を用いて固定されている。
【0028】
ネジ機構22dは、出力ギヤ22cの中心(軸心)に形成した雌ネジ部と、ロッド22eの右端に形成した雄ネジ部によって構成されていて、雌ネジ部と雄ネジ部は螺合している。このネジ機構22dでは、出力ギヤ22cの回転(回転運動)がロッド22eの軸方向移動(直線運動)に変換される。なお、ネジ機構22dでは、雌ネジ部と雄ネジ部のリードが適宜に設定されていて、パーキングレバー17からの反力では出力ギヤ22cが回転しないように設定されている。
【0029】
負荷付与機構として機能するストッパ23および摩擦材24は、パーキングレバー17が作動位置から復帰位置に移動した後に機能するものであり、ストッパ23はバックプレート11に固定具(図示省略)を用いて固定され、摩擦材24はハウジング22gに固定されている。ストッパ23は、パーキングレバー17が作動位置から復帰位置に移動した後に、
図4に示したように、パーキングレバー17から離れた(係合を解かれた)ホルダ22fと係合して、ホルダ22fおよびロッド22eの復帰方向(図示左方)への軸方向移動を規制するものである。
【0030】
摩擦材24は、出力ギヤ22cが逆回転されることにより、
図3の状態からロッド22eとホルダ22fが図示左方に移動して、パーキングレバー17が作動位置から復帰位置に移動した後に、ホルダ22fがストッパ23に係合して軸方向移動を規制されることで、出力ギヤ22cが
図3の復帰位置から
図4に示したように作動方向(図示右方)へ移動したとき、出力ギヤ22cと係合して、出力ギヤ22cに回転負荷を付与するものである。
【0031】
モータ制御手段(電気制御装置)ECUは、電気モータ21の正回転駆動時に回転負荷が設定値(
図3に例示したように、パーキングレバー17が作動位置に移動することにより得られる)に達したとき、電気モータ21の作動を停止させる機能と、電気モータ21の逆回転駆動時に回転負荷が所定値(
図4に例示したように、出力ギヤ22cが摩擦材24に係合することにより得られる)に達したとき、電気モータ21の作動を停止させる機能を備えている。
【0032】
また、モータ制御手段(電気制御装置)ECUは、当該車両の運転席に設けられているパーキングブレーキスイッチ(図示省略)にも接続されていて、パーキングブレーキスイッチの作動操作によって電気モータ21の正回転駆動が開始され、パーキングブレーキスイッチの解除操作によって電気モータ21の逆回転駆動が開始されるように構成されている。
【0033】
上記のように構成した第1実施形態の電動駐車ブレーキ装置では、パーキングブレーキスイッチの作動操作によって電気モータ21の正回転駆動が開始されると、電動アクチュエータ20が
図4の状態から
図3の状態に変化して、パーキングレバー17が復帰位置から作動位置に向けて移動する。このときには、
図1および
図2に示したパーキングレバー17がリターンスプリングS1,S2,S3の作用に抗して反時計回転方向に傾動し、この傾動によって連結部材16を介して図示右方のブレーキシュー13のライニング13aが図示しないブレーキドラムに押し付けられるとともに、ピン17aを介して図示左方のブレーキシュー12のライニング12aもブレーキドラムに押し付けられて駐車ブレーキがかけられる。なお、パーキングレバー17が作動位置に移動すると、電気モータ21の正回転駆動による回転負荷(ブレーキシュー12,13が作動位置に移動して、ライニング12a,13aがブレーキドラムに圧接することにより得られる負荷)が設定値となって、モータ制御手段(電気制御装置)ECUにより電気モータ21の作動が停止される。
【0034】
一方、パーキングブレーキスイッチの解除操作によって電気モータ21の逆回転駆動が開始されると、電動アクチュエータ20が
図3の状態から
図4の状態に変化して、パーキングレバー17がリターンスプリングS1,S2,S3の作用により作動位置から復帰位置に向けて移動する。このときには、
図1および
図2に示したパーキングレバー17が作動位置から復帰位置に向けて時計回転方向に傾動する。このため、この傾動によって左右のブレーキシュー12,13等が復帰位置に復帰して、駐車ブレーキが解除される。なお、パーキングレバー17が復帰位置に移動した後には、出力ギヤ22cが摩擦材24に係合することにより、電気モータ21の逆回転駆動による回転負荷(負荷付与機構(ストッパ23および摩擦材24)によって得られる負荷)が所定値となって、モータ制御手段(電気制御装置)ECUにより電気モータ21の作動が停止される。
【0035】
ところで、この第1実施形態では、モータ制御手段(電気制御装置)ECUによって、正回転する電気モータ21に作用する回転負荷(ブレーキシュー12,13が作動位置に移動して、ライニング12a,13aがブレーキドラムに圧接することにより得られる負荷)が設定値となったときの電流値により正回転する電気モータ21を停止させるように設定してあるため、常に所定のパーキングブレーキ力を得ることができる。また、モータ制御手段(電気制御装置)ECUによって、逆回転する電気モータ21に作用する回転負荷(負荷付与機構によって得られる負荷)が所定値となったときの電流値により逆回転する電気モータ21を停止させるように設定してあるため、パーキングレバー17を常に所定の復帰位置に戻した状態にて止めることができる。
【0036】
したがって、この第1実施形態では、パーキングブレーキの解除時において、パーキングレバー17の戻し不足や戻し過ぎが生じないようにすることができる。これにより、パーキングレバー17の戻し不足による不具合(例えば、ブレーキの引き摺り)を防止することが可能であるとともに、パーキングレバー17の戻し過ぎによる不具合(例えば、次回パーキングブレーキ作動時の応答遅れ)を防止することが可能である。また、この第1実施形態では、電気モータ21に流れる電流値で電気モータ21の作動・停止を制御することができるといった利点(パーキングレバー17の状態を電気的に検出するセンサが不要であるとの利点)がある。
【0037】
上記した第1実施形態においては、ストッパ23と摩擦材24によって負荷付与機構を構成して実施したが、
図5〜
図7に示した第2実施形態のように、付勢部材25と回転ストッパ26によって負荷付与機構を構成して実施することも可能である。付勢部材25と回転ストッパ26は、パーキングレバー17が作動位置から復帰位置に移動した後に機能するものであり、付勢部材25はパーキングレバー17とホルダ22f間に設けられ、回転ストッパ26は出力ギヤ22cとハウジング22g間に設けられている。
【0038】
付勢部材25は、圧縮コイルスプリングであり、パーキングレバー17とホルダ22f間に圧縮状態で設けられていて、パーキングレバー17が復帰位置に移動してその反力(
図5左方への力)が消失した後に、パーキングレバー17に対してホルダ22fとロッド22eを弾性的に保持する機能(ホルダ22fとロッド22eの
図5左方への移動を弾性的に規制する機能)を有している。このため、パーキングレバー17が復帰位置に移動した後の出力ギヤ22cの逆回転は、出力ギヤ22cを
図5右方へ軸方向移動させる。
【0039】
回転ストッパ26は、出力ギヤ22cに設けた突起26aと、ハウジング22gに設けた突起26bによって構成されている。この回転ストッパ26では、パーキングレバー17が復帰位置に移動した後に、出力ギヤ22cが逆回転しながら
図5右方へ軸方向移動するとき(出力ギヤ22cが復帰位置から作動方向に移動するとき)、突起26aが突起26bに係合して、出力ギヤ22cに回転負荷が付与される。なお、突起26aと突起26bには、
図7に示したように、回転方向の一方にそれぞれ斜面26a1,26b1が形成されていて、出力ギヤ22cが正回転して突起26aと突起26bの係合が解かれる際に、同係合が容易に解かれるように設定されている。
【0040】
上記した各実施形態では、変換機構22のネジ機構22dが、出力ギヤ22cに形成した雌ネジ部と、ロッド22eに形成した雄ネジ部によって構成されているが、変換機構のネジ機構は、出力ギヤに形成した雄ネジ部と、ロッドに形成した雌ネジ部によって構成して実施することも可能である。また、上記した各実施形態では、ロッド22eとホルダ22fを別部材で構成し一体的に連結可能に構成して実施したが、ロッドの端部にホルダ部(ホルダ22fに相当するもの)を一体的に形成して実施することも可能である。
【0041】
また、上記した各実施形態では、パーキングレバー17が作動位置から復帰位置に移動した後に、出力ギヤ22cを復帰位置から作動方向へ移動させる手段として、ストッパ23または付勢部材25を採用して実施したが、ストッパ23または付勢部材25に代えて、出力ギヤ(22c)を復帰位置から作動方向へ移動させることが可能な斜歯を中間ギヤ(22b)と出力ギヤ(22c)の噛合部に設定して実施することも可能である。
【0042】
また、上記した第1実施形態では、ストッパ23と摩擦材24を採用して実施したが、ストッパ23に代えて例えば付勢部材25を採用して実施すること、または、摩擦材24に代えて例えば回転ストッパ26を採用して実施することも可能である。また、上記した第2実施形態では、付勢部材25と回転ストッパ26を採用して実施したが、付勢部材25に代えて例えばストッパ23を採用して実施すること、または、回転ストッパ26に代えて例えば摩擦材24を採用して実施することも可能である。
【0043】
図8〜
図10は、本発明の第3実施形態を示している。この第3実施形態では、
図8に示したストッパ27と皿ばね組立体28によって負荷付与機構が構成されている。ストッパ27は、第1実施形態のストッパ23と同様にバックプレート11に固定具(図示省略)を用いて固定されている。このストッパ27は、パーキングレバー17が作動位置から復帰位置に移動した後に、
図8に示したように、連結機構29の第1連結ピン29aと係合して、ロッド22eの復帰方向(図示左方)への軸方向移動を規制するものである。
【0044】
また、この第3実施形態では、電動アクチュエータ20が、
図8に示したように、電気モータ21と、変換機構22と、連結機構29を備えている。電気モータ21は、上記した各実施形態と同様に、正逆回転駆動可能であり、回転負荷に応じた電流値によりモータ制御手段(電気制御装置)ECUによって作動を制御されるように構成されている。
【0045】
変換機構22は、電気モータ21の回転運動をロッド(ネジ軸)22eの直線運動(連結機構29を介したパーキングレバー17の揺動動作)に変換可能であり、電気モータ21が正回転する正駆動時にはロッド22eを復帰位置(
図8の位置)から作動位置(
図8の位置より所定量右方の位置)に向けて軸方向に移動可能であり、且つ、電気モータ21が逆回転する逆駆動時にはロッド22eを作動位置から復帰位置に向けて軸方向に移動可能である。
【0046】
この変換機構22は、電気モータ21の回転軸21aに一体的に設けたピニオン22aと、ピニオン22aによって回転駆動される第1中間ギヤ22b1および第2中間ギヤ22b2と、第2中間ギヤ22b2によって回転駆動される出力ギヤ22cと、出力ギヤ22cの中心(軸心)に設けられたネジ機構22dと、ネジ機構22dを介して出力ギヤ22cに連結されるロッド22eを備えている。なお、第1中間ギヤ22b1および第2中間ギヤ22b2は、回転軸21aの回転を減速して出力ギヤ22cに伝達する。
【0047】
第1中間ギヤ22b1および第2中間ギヤ22b2と出力ギヤ22cは、ハウジング22gに回転自在に組付けられている。出力ギヤ22cとハウジング22g間には、パーキングレバー17からの反力(
図8左方への力)を受けるスラストベアリング22hが組付けられている。出力ギヤ22cは、ハウジング22gに対して軸方向に移動可能に構成されている。なお、電気モータ21とハウジング22gは、バックプレート11に固定具(図示省略)を用いて固定されている。
【0048】
ネジ機構22dは、出力ギヤ22cの中心(軸心)に形成した雌ネジ部と、ロッド22eの中間部から右端に形成した雄ネジ部によって構成されていて、雌ネジ部と雄ネジ部は螺合している。このネジ機構22dでは、出力ギヤ22cが軸方向移動(図示左方への移動)を規制されている状態にて、出力ギヤ22cの回転(回転運動)がロッド22eの軸方向移動(直線運動)に変換され、ロッド22eがストッパ27により軸方向移動(図示左方への移動)を規制されている状態にて、出力ギヤ22cの回転(回転運動)が出力ギヤ22cの軸方向移動に変換される。
【0049】
また、このネジ機構22dでは、雌ネジ部と雄ネジ部のリードが適宜に設定されていて、パーキングレバー17からの反力(軸力)では出力ギヤ22cが回転しないように設定されている。なお、ロッド22eに設けた雄ネジ部は、ロッド22eの先端部(左端部)とハウジング22g間に設けたブーツ22jによって被覆保護されている。ブーツ22jは、ロッド22eの軸方向移動に伴って伸縮可能に構成されている。
【0050】
皿ばね組立体28は、電気モータ21の逆回転によって出力ギヤ22cが逆回転されることにより、パーキングレバー17が作動位置から復帰位置に移動した後に、第1連結ピン29aがストッパ27に係合し、ロッド22eがストッパ27により軸方向移動を規制されている状態にて、出力ギヤ22cの逆回転により出力ギヤ22cが
図8の復帰位置から作動方向(図示右方)へ移動したとき、出力ギヤ22cの右端と係合して、出力ギヤ22cの軸方向移動(右動)を弾性的に規制し、出力ギヤ22cに回転負荷を付与するものである。
【0051】
この皿ばね組立体28は、ハウジング22g内にて、ハウジング22gと出力ギヤ22cの右端間に、出力ギヤ22cに対して同軸的に配置されている。また、皿ばね組立体28は、ホルダ28aと、3枚の皿バネ28bと、スラストプレート28cを備えている。ホルダ28aは、小径筒部にて3枚の皿バネ28bとスラストプレート28cを軸方向にて移動可能に支持するものであり、出力ギヤ22cに対して同軸的に配置されていて、大径部にてハウジング22gに固定されている。
【0052】
3枚の皿バネ28bは、ホルダ28aの大径部とスラストプレート28c間にて、図示のように交互に(大径部同士と小径部同士がそれぞれ当接するように)配置されていて、図示状態では略自由状態である。スラストプレート28cは、図示左端の皿バネ28bと出力ギヤ22cの右端間に配置されていて、出力ギヤ22cの右端を回転自在に受承可能である。このスラストプレート28cは、
図8の位置にて、ホルダ28aの小径筒部に対して抜け止め(左動不能に)固定されている。
【0053】
連結機構29は、
図8および
図9に示したように、第1連結ピン29aと第2連結ピン29bと一対の連結板(連結部材)29cを備えている。第1連結ピン29aは、ロッド22eの先端(端部)に組付けられていて、ロッド22eに対して直交し、パーキングレバー17のピン(支持軸)17aに対して平行に配置されている。第1連結ピン29aの中間部は、ロッド22eの先端(端部)に設けた取付孔22e1に、一体的に嵌合固定されている。第1連結ピン29aの両端部は、各連結板29cに設けた長円形状の第1孔部29c1に、相対回転可能かつ長径方向(
図8および
図9の左右方向)に移動可能に組付けられている。また、第1連結ピン29aの両端部は、ロッド22eが復帰位置に復帰移動したときに、
図8に示したように、ストッパ27に当接可能に設定されている。
【0054】
第2連結ピン29bは、パーキングレバー17の揺動端部17cに組付けられていて、第1連結ピン29aに対して平行に配置されている。この第2連結ピン29bは、中間部にて揺動端部17cに設けた円形の組付孔17c1に相対回転可能に組付けられ、両端部にて各連結板29cに設けた円形の第2孔部29c2に相対回転可能に組付けられている。なお、第2連結ピン29bは、両端が中間部位に比して大径とされていて抜け止めされている。
【0055】
各連結板29cは、第1連結ピン29aに組付けられる第1孔部29c1にてロッド22eの端部に対して第1連結ピン29aの周方向に回転可能であり、第2連結ピン29bに組付けられる第2孔部29c2にてパーキングレバー17に対して第2連結ピン29bの周方向に回転可能であって、第1連結ピン29aと第2連結ピン29bとを連結している。
【0056】
また、上記した構成において、連結機構29によって連結されているパーキングレバー17とロッド22eでは、パーキングレバー17の揺動面とロッド22eの軸線が同一面に配置されている。このため、この実施形態では、電動アクチュエータ20の駆動力をパーキングレバー17の揺動端部17cに円滑に伝達することが可能である。
【0057】
上記のように構成した第3実施形態の電動駐車ブレーキ装置では、ロッド22eの軸方向移動が連結機構29を介してパーキングレバー17に伝達されること、および、駐車ブレーキの解除時において、皿ばね組立体28によって出力ギヤ22cに回転負荷を付与することが可能であることを除いて、上記した第1実施形態と実質的に同じであるため、その作動説明は省略する。
【0058】
なお、第3実施形態の電動駐車ブレーキ装置では、駐車ブレーキの解除時において、経過時間T(電気モータ作動経過時間)とモータ電流値Aの関係が、
図10に示したように、変化する。
図10において、T1はパーキングブレーキスイッチが解除操作されたときを示し、T2はモータ起動時電流(これ自体は周知のものである)が安定したときを示し、T3は出力ギヤ22cがスラストプレート28cに当接したときを示し、T4は各皿バネ28bが所定量弾性変形して電気モータ21の逆回転駆動による回転負荷(モータ電流値A)が所定値となったときを示している。このため、モータ制御手段(電気制御装置)ECUでは、T2以前において例えばモータ起動時電流によって電気モータ21の逆回転駆動による回転負荷(モータ電流値A)が所定値となっても、電気モータ21の作動が停止されないように設定されている。かかる設定は、上記した第1実施形態や第2実施形態においても同様になされている。
【0059】
また、上記した第3実施形態では、ロッド22eの端部とパーキングレバー17の揺動端部17cとを連結する連結機構29が、上記した第1連結ピン29aと第2連結ピン29bと連結板29c、29cを備えていて、直線運動するロッド22eに対するパーキングレバー17の動き(支持ピン17aを中心とした揺動)が、連結板29c、29cの第1連結ピン29aと第2連結ピン29bのピン(軸)周りの回転運動によって許容される。
【0060】
また、上記した第3実施形態では、各連結板29cの第1孔部29c1が、連結板29cの移動方向(図示左右方向)に長い長円形状に形成されている。このため、部品相互間の寸法バラツキや、当該ドラムブレーキ10のサービスブレーキ作動時(ホイールシリンダ15の作動によるブレーキ作動時)の連結板29cの移動を、長円形状とされた第1孔部29c1での第1連結ピン29aの移動によって吸収することが可能である。
【0061】
また、上記した第3実施形態では、ロッド22eが復帰位置に移動したときに、第1連結ピン29aがストッパ27に当接可能に設定されている。このため、第1連結ピン29aがストッパ27に当接することで、ロッド22eが復帰位置にて停止する。これにより、連結機構29にてロッド22eの端部と連結されているパーキングレバー17も停止させることが可能であり、ロッド22e、パーキングレバー17等の無用な動きを規制することが可能である。
【0062】
上記した第3実施形態においては、出力ギヤ(22c)に対して同軸的に配置されていて、ロッド(22e)がストッパ(27)により軸方向移動を規制されている状態にて、出力ギヤ(22c)の逆回転により出力ギヤ(22c)が作動方向へ移動したとき、出力ギヤ(22c)と係合して、出力ギヤ(22c)の軸方向移動を弾性的に規制し、出力ギヤ(22c)に回転負荷を付与する回転負荷付与部材として、皿ばね組立体28(皿バネ28b(皿状板ばね)を構成部材とするもの)を採用して実施したが、かかる回転負荷付与部材としては、例えば、波状板ばね(ウエイブスプリング)を構成部材とするものも採用可能である。
【0063】
また、上記した第3実施形態においては、各連結板29cの第1孔部29c1を長円形状に形成し、各連結板29cの第2孔部29c2を円形形状に形成して実施したが、各連結板29cの第1孔部29c1を円形形状に形成し、各連結板29cの第2孔部29c2を長円形状に形成して実施することも可能である。また、上記した第3実施形態においては、ロッド22eが復帰位置に移動したときに、第1連結ピン29aの両端部がストッパ27に当接可能に設定されているが、ロッド22eが復帰位置に移動したときに、第1連結ピン29aの一端部がストッパ27に当接可能に設定することも可能である。
【0064】
また、上記した第3実施形態においては、ロッド22eの端部とパーキングレバー17の揺動端部17cとを連結する連結機構29が、第1連結ピン29aと第2連結ピン29bと一対の連結板29c、29cを備える構成として実施したが、例えば、ロッド22eの端部とパーキングレバー17の揺動端部17cをそれぞれヨーク状(二股状)に形成して一つの連結板29cを挟むように構成すれば、連結機構29を、第1連結ピン29aと第2連結ピン29bと一つの連結板29cを備える構成(部品点数を減じた構成)として実施することも可能である。