特許第6213035号(P6213035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6213035
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/54 20060101AFI20171005BHJP
   H01H 50/14 20060101ALI20171005BHJP
   H01H 50/02 20060101ALI20171005BHJP
   H01H 50/38 20060101ALI20171005BHJP
【FI】
   H01H50/54 B
   H01H50/14 B
   H01H50/02 B
   H01H50/38 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-167591(P2013-167591)
(22)【出願日】2013年8月12日
(65)【公開番号】特開2015-37022(P2015-37022A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】代島 英樹
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−186648(JP,U)
【文献】 特開昭58−089721(JP,A)
【文献】 特開昭51−011173(JP,A)
【文献】 特開2012−129159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06 − 1/66
H01H 9/30 − 9/52
H01H 33/00 − 33/26
H01H 50/02 , 50/14 , 50/38 ,
50/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋絡形の可動接触子に対向して接点ユニットフレームの端子台座にb接点仕様の固定接触子を備えた電磁接触器であり、b接点仕様の固定接触子は、前記端子台座上に保持した平板状の端子部と、該端子部の後端からL字状に起立延在する接点台と、該端子台の先端部に前記可動接触子の接点と対向する固定接点を接合した構成になり、かつ前記接点台の起立基部から先端部との間で、その板面の一方の側縁を凹状に切欠してフレーム外方に通じるガス抜き通路を確保するようにしたものにおいて、
前記固定接触子の端子台先端部に接合した固定接点の形状を、前記ガス抜き通路に向けて先端が先細りになる略三角形に形成したことを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁接触器において、前記接点台の起立部に沿って耐熱性の絶縁カバーを被着したことを特徴とする電磁接触器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電磁接触器において、前記固定接触子を挟んでその左右両側にアーク駆動用磁石と組み合わせた磁性板を立設したことを特徴とする電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータのダイナミックブレーキなどに適用するb接点仕様の電磁接触器に関し、詳しくは該電磁接触器に搭載した固定接触子の接点構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
まず、b接点仕様の固定接触子を搭載した直流電磁接触器について、従来例(従来例1,および従来例2)の接点ユニット組立構造を図2図3、および図4図5にそれぞれ示す(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来例1:
図2(a)〜(c)において、1は図示してない電磁石ユニット(下部ユニット)の上に組み合わせた接点ユニットのフレーム(樹脂成形品)、1aは接点ユニットフレーム1の両端部に形成した電源側,負荷側の端子台座、1bは各極の端子台座1aの両側に立設した極間隔壁、1cは消弧室カバー、2はb接点仕様の固定接触子、3は電磁石ユニットの可動鉄心(不図示)に連結して開閉位置に駆動される接触子ホルダ、4は接触子ホルダ3に保持して前記一対の固定接触子2に対向配置した橋絡形の可動接触子、5は端子ネジ、6は接点ユニットフレーム1の消弧室側に配したアーク駆動用の棒状永久磁石、7は永久磁石6の両端に連結して前記固定接触子2の両側に立設した磁極板である。
【0004】
ここで、前記b接点仕様の固定接触子2は、図2(c)で示すように端子板2aと、該端子板2aの後端部から略C字形に起立し、かつその先端をU字状に折り返した接点台2bと、橋絡形可動接触子4の接点4aに対向して接点台2bの先端部2cに接合した固定接点2dとからなり、接点台2b,接点2dはそれぞれ端子板2a,接点台2cの先端部2cにろう付けされている。なお、接点2dには角形の接点が一般に採用されている。
【0005】
また、前記接点台2bは、取付け基部と先端部2cとの間に沿ってその板幅を狭めるように一方の側縁を凹状に切欠して側縁切欠部2eを形成し、この側縁切欠部2eにより後述のように固定,可動接点間に発生したアーク(直流アーク放電)の伸長駆動、およびアークガスをフレーム外方に向けて放流するガス抜き通路8(図2(b)参照)を形成し、さらに接点台2bの起立導体部分には耐熱性の絶縁カバー2fを被着して接触子導体とアークとの接触を防ぐようにしている。なお、図3は当該接点ユニット組立体の側視図である。
【0006】
従来例2:
次に、電磁接触器の接点ユニットに搭載したb接点仕様の固定接触子2について、前記従来例1と形状が異なる従来例2の接点ユニットの組立構造、および固定接触子の形状を図4(a),(b)に示す
すなわち、この従来例2の接点ユニットに搭載した固定接触子2は端子部と接点台が一体のZ字形体であり、図4(a),(b)で示すように、先記した接点ユニットフレームの端子台座1a(図2(a)参照)に載置する平板状の端子部2aと、該端子部2aの後端からL字状に起立延在する接点台2bと、該端子台2の先端部2cに接合して可動接触子4の接点4aと対向する固定接点2dからなり、かつ接点台2bには先記の従来例1と同様に接点台2bの起立基部から先端部2cに至る間に側縁切欠部2eを形成して接点ユニットフレーム1(図2(a)参照)の外方に通じるアークガスのガス抜き通路8(図4(a)参照)を確保し、さらに接点台2bの起立部分には絶縁カバー2fを被着している。
【0007】
このように固定接触子2を従来例1(図2図3参照)の端子板とC字形の端子台を組み合わせた構造から、従来例2(図4図5参照)のZ字形一体構造に変更することにより、接点ユニット組立体の外形寸法、すなわち図3の図中に記した諸元の寸法a1,b1,c1を、それぞれ図5の図中に記した諸元の寸法a2(a2<a1),b2(b2<b1),c2(c2<c1)に縮減して電磁接触器を小形に構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−129159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先記のように、接点ユニットフレーム1に搭載するb接点仕様の固定接触子2に、図4図5で示したZ字形の固定接触子2(従来例2)を採用することで電磁接触器を小型化できる利点がある反面、電流の遮断時に固定,可動接点間に生じたアーク(直流アーク放電)の消弧性で次記のような課題が新たに派生する。
【0010】
すなわち、可動接触子の開極動作により固定,可動接点間に生じたアークには図2で述べた永久磁石6,磁極板7からなる磁気駆動ユニットによるローレンツ力fが作用し、これによりアークが図示の実線矢印方向に駆動される。
【0011】
この場合に図6(a)に示した従来例1の固定接触子2では、その先端部2cを接点ユニットの外側に向けてU字状に折り返し、さらに接点台2bの起立導体と対峙する先端コーナーの角部を図中の2c−1で表すように面取りしている。
【0012】
これにより、図示のように固定,可動接点間に発生し、接点ユニットの外側に向け磁気駆動(ローレンツ力)されるアークの足は、接点2dの表面のA点から接触子先端部2cのコーナー角部のB点に素早く転移するようになる。なお、角形の接点間に生じたアークの足(発弧点)は、電界が集中する接点周縁のエッジ部に移行する性質がある。
【0013】
したがって、B点に転移したアークはその前方に起立して立ちはだかる接点台2bに邪魔されることなく、接点台2bの起立側縁部分に形成した側縁切欠部2eの空間に向けて図示の点線矢印Pの方向に伸長し、また消弧室内に発生したアークガスは図2(b)に示した接点ユニット組立体のガス抜け通路8を通じて接点ユニットフレームの外方へ放出されるようになる。
【0014】
これに対して、図6(b)に示す従来例2のZ字形固定接触子2では、従来例1のように接点台2bの先端部2cがU字状に折り返しされてなく、その先端部2cは従来例1とは逆に消弧室の内側に向いている。
【0015】
そこで、このZ字形形状になる従来例2の固定接触子2では、固定,可動接点間に発生したアークを接点2aの表面A点から接触子先端部2cの後端コーナーに形成されている切欠き角部(図4(b)の側縁切欠部2eによる先端部2cの角部)のB点へ転移させることで、図6(a)の従来例1と同様に、接触子の接点台2bとの不要な干渉を避けてアーク,アークガスを接点台2bの側縁切欠部2eに向けて伸長,放流させるように設計している。
【0016】
ところで、発明者等が電流遮断の繰り返しテストで高速カメラにより固定接点2dに発生したアークの移動を観測したところ、固定,可動接点間に生じたアークの足(発弧点)は固定接点2dのA点から接触子先端部2cの切欠き角部B点に転移せずに、図示のC点(固定接点2dのコーナーエッジ部)に移行してこの位置に停滞する現象が屡々発生することが確認されている。しかも、図示C点の前方には接点台2bが近接して起立対峙していることから、磁気駆動力(ローレンツ力)を受けて固定接点2dのA点から同じ固定接点2dの角部のC点に発弧点が転移してこの位置に停滞したアークは、その前方に立ちはだかる接触子の接点台2bが障害物になってアーク長が充分伸長されずにアークの停滞状態が継続し、またアークの周域に生じたアークガスも前方の接点台2cが障害物となってユニット外方へスムーズに放流されなくなる。このために、固定接点2dはアーク熱による局所的な消耗が早まり、またアークの消弧,遮断機能も充分発揮されなくなる。
【0017】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解消して固定,可動接点間に生じたアークの停滞を防いで消弧,遮断性の向上が図れるようにb接点仕様の固定接触子の接点形状を改良した電磁接触器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明によれば、橋絡形の可動接触子に対向して接点ユニットフレームの端子台座にb接点仕様の固定接触子を備えた電磁接触器であり、そのb接点仕様の固定接触子は、前記端子台座上に保持した平板状の端子部と、該端子部の後端からL字状に起立延在する接点台と、該端子台の先端部に固定接点を接合した構成になり、かつ前記接点台の起立基部から先端部との間で、その板面の一方の側縁を凹状に切欠してユニットフレーム外方に通じるガス抜き通路を確保するようにしたものにおいて、
前記固定接触子の端子台先端部に接合した固定接点の形状を、前記ガス抜き通路に向けて先端が先細りになる略三角形に形成する(請求項1)。
【0019】
また、前記構成の電磁接触器においては、前記接点台の起立部に沿って耐熱性の絶縁カバーを被着する(請求項2)。
さらに、前記固定接触子を挟んでその左右両側にアーク駆動用磁石と組み合わせた磁性板を立設する(請求項3)。
【発明の効果】
【0020】
上記構成になるb接点仕様の固定接触子によれば、電流遮断動時に固定,可動接点間に生じたアークについて、その固定接点の表面に発弧したアークの足を高い電界強度が作用する略三角形の先細り端側に誘導し、ここから図6bのB点に対応する接触子先端部の切欠き角部に素早く転移させることができる。
【0021】
これによりb接点仕様の固定接触子(従来例2)で問題になっていたアークの継続的な停滞に起因する固定接点の局所的な損耗、磁気駆動力を受けて伸長されるアークと固定接触子の接点台との不要な干渉を回避して、固定,可動接点間に発生したアークに対して高い消弧性能を発揮して電磁接触器の遮断性向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例によるb接点仕様の固定接触子の構造図であって、(a),(b)はそれぞれ異なる方向から見た固定接触子の外形斜視図である。
図2】従来例1に係わる電磁接触器の構成図であって、(a)は接点ユニット全体の断面図、(b)は(a)における接点ユニット組立体の斜視図、(c)は固定接触子の外形斜視図ある。
図3図2(b)に対応する接点ユニット組立体の正面図である。
図4】従来例2に係わる接点ユニットの構成図であって、(a)接点ユニット組立体の斜視図、(c)は固定接触子の外形斜視図ある。
図5図4(a)に対応する接点ユニット組立体の正面図である。
図6】従来例1,従来例2の固定接触子におけるアーク転移の説明図であって、(a),(b)はそれぞれ図2(a)、および図4(b)に対応する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図1(a),(b)に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図4(b)および図6(b)に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0024】
すなわち、図1に示したこの実施例によるb接点仕様の固定接触子は、図4に示した従来例2の固定接触子2と基本的に同様なZ字形の一体構造であり、固定接点2dは端子部2aからL字形に起立する接点台2bの先端部2cの下面に接合されている。ここで、従来例2における固定接点2dの形状(輪郭形状)は角形(正方形)であるのに対して、図1の実施例では固定接点2dの形状が略三角形に形成され、かつ図示のように三角形の先細りの先端を接点台2bの側縁切欠部2eに向けた姿勢で端子台の先端部2cに接合されている。また、前記接点台2bは、その基部から先端部2cの間に沿ってその接触子導体には耐熱性の絶縁カバー2fが被着されている。さらに、図1には図示してないが、接点ユニットの消弧室側には図2(a)で述べたと同様な永久磁石6,磁極板7からなるアークの磁気駆動ユニットを備えている。
【0025】
上記の構成により、電流遮断動作時に固定,可動接点間に発生したアークの挙動について、固定接点2dの表面のA点に発弧したアーク足は、磁気駆動ユニットによるローレンツ力を受けて三角形状の固定接点2dの先細り先端側に誘導され、ここからさらに電界が集中する接触子先端部2cのコーナー角部のC点に素早く転移するようになる。
【0026】
この結果、図6(b)で述べた従来例2の接触子構造で問題視さていた固定接点の周縁角部(図6(b)のC点)にアークが継続的に停滞する現象を解消してアークの消弧性向上、および固定接点の局部的な損耗発生を効果的に回避して遮断性能,信頼性の高い電磁接触器を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 接点ユニットフレーム
2 b接点仕様の固定接触子
2a 端子部
2b L字形の接点台
2c 先端部
2d 固定接点
2e 側縁切欠部
2f 絶縁カバー
4 橋絡形可動接触子
6 アーク駆動ユニットの永久磁石
7 磁極板
8 ガス抜き通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6