(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を
図1〜3に基づき説明する。
【0021】
[運賃箱の全体構成]
図1は本発明に係る一実施形態である運賃箱100の斜視図である。運賃箱100は、例えばバスの運転席の横に設置されるもので、乗客が運賃受入口101に投入した運賃は金庫取付部110に取り付けられた金庫200に収納される。金庫取付部110は、運賃箱100の側面に形成された、金庫200とほぼ同じ大きさの凹部である。金庫200は、乗務員等が取手210をつかんで引き出すことにより、金庫取付部110から取り外される。金庫200は、運賃箱に取り付けられる際には、取り外されるときとは逆に、金庫取付部110の中に押し込まれる。
【0022】
図2は運賃箱100および金庫200の内部構造を示す構成図である。運賃箱100の内部には、運賃受入口101で受け入れた券類と硬貨とを分別する券銭分離部111と、券銭分離部111が分別した硬貨の金種を識別し枚数と金額とを計測する硬貨計数部112と、硬貨を金種別に選別する硬貨選別部113とが設けられている。さらに、硬貨を硬貨返却口102に搬送する硬貨搬送部114と、運賃箱制御部120とが設けられており、前述のように金庫取付部110に金庫200が着脱可能に取り付けられている。ここで、運賃受入口101が、本発明の硬貨受入部に相当する。
【0023】
なお、一般的な運賃箱用金庫と同様に、金庫200は、金庫取付部110に取り付けられると、金庫取付部に設けられたロック機構(図示略)により自動的に運賃箱100に対してロックされるとともに、金庫扉(後述する)が開放される。また、金庫200は、乗務員等の操作によりロックが解除されると取り外し可能となり、金庫取付部110から引き抜かれるときには、金庫扉施錠機構(図示略)により金庫扉が閉鎖され施錠される。従って、運賃箱100に金庫200が取り付けられて運用されている間は金庫扉は開放されており、運賃箱100から取り外されると金庫200の金庫扉は閉じられて施錠された状態になる。
【0024】
[電気的構成]
図3は、運賃箱および金庫の電気的構成を示すブロック図である。CPU121は、運賃箱制御部120の演算処理装置であり、メモリ122は、読み出し専用のROMと書き換え可能なRAMを備えた記憶装置であり、I/Oユニット123は、信号を伝達するデータバスを構成する部分である。CPU120およびメモリ122は、I/Oユニット123に接続されており、CPU120はI/Oユニット123を介してメモリ122にアクセス可能である。また、CPU121は、I/Oユニット123を介して券銭分離部111、硬貨計数部112、硬貨選別部113、硬貨搬送部114および金庫制御部220に対して各種命令を送るとともにこれらの装置類との間でデータの送受信を行う。
【0025】
CPU221は、金庫制御部220の演算処理装置であり、メモリ222は、読み出し専用のROMと書き換え可能なRAMを備えた記憶装置であり、I/Oユニット223は、信号を伝達するデータバスを構成する部分である。CPU221およびメモリ222は、I/Oユニット123に接続されており、CPU120はI/Oユニット123を介してメモリ122にアクセス可能である。CPU221は、I/Oユニット223を介して硬貨供給部214および保持硬貨枚数検出センサ215に対して各種命令を送るとともにこれらの装置類との間でデータの送受信を行う。ここで、メモリ222が、本発明の記憶手段に相当する。
【0026】
[券銭分離部]
図に示すように、券銭分離部111は、運賃受入部101の下方近傍に設けられている。券銭分離部111には、一対の券銭分離ローラ(図示略)が配置されており、運賃として運賃受入部101から受け入れた硬貨と券類とが券銭分離部111に入ると、券類は、券銭分離ローラの回転によって一対の券銭分離ローラの間に巻き込まれるようにしてローラ間を通過するが、硬貨は、券銭分離ローラの間を通過しないため、券類と硬貨とが分離される。券銭分離部111は、分離した券類を券類収納部211へ送り、分離した硬貨を硬貨計数部112へ送る。
【0027】
[硬貨計数部]
硬貨計数部112は、券銭分離部111の下方に設けられており、券類から分離された硬貨が通過可能になっている。いずれも図示は省略するが、硬貨計数部112は、硬貨が通過する硬貨通路と、硬貨通路を通過する硬貨の種類を識別する硬貨識別センサと、硬貨の種類ごとの数および硬貨の総額の値を保持するメモリを備えている。硬貨識別センサには、硬貨の外径を識別するセンサ、硬貨の材質を識別するセンサ、硬貨の穴の有無を識別するセンサ、硬貨の色を識別するセンサ等の各種センサや、これらを組み合わせたものを用いることができる。
【0028】
硬貨計数部112に入った硬貨は硬貨通路に入る。硬貨識別センサは硬貨通路を通過する硬貨の種類を1枚ずつ識別し、その識別結果がメモリに保持される。硬貨計数部112に入ったすべての硬貨の識別が終了すると、メモリに保持されている識別結果のデータは運賃制御部120に送られる。
【0029】
[硬貨選別部]
硬貨選別部113は、硬貨計数部112の下方に設けられており、硬貨計数部112において種類が識別された硬貨は、硬貨選別部113に流入する。硬貨選別部113は、硬貨の直径に基づいて機械的に硬貨を種類別に選別して所定の送出先に送る機構を備えている。
【0030】
[切替機構]
切替機構113Aは、運賃箱制御部120の命令に基づき、硬貨の送出先を、金庫200の硬貨収納部212または硬貨保持部213(硬貨筒213A〜213D)のいずれか一方に選択的に切り替える。
【0031】
[金庫]
金庫200は、券類を収納する券類収納部211と、硬貨を収納する硬貨収納部212と、硬貨を保持する硬貨保持部213(硬貨筒213A〜213D)と、硬貨を硬貨保持部213から取り出して運賃箱100の硬貨搬送部114に送出する硬貨供給部214と、硬貨保持部213が保持する硬貨の枚数の値を取得する保持硬貨枚数検出センサ215と、硬貨供給部214および保持硬貨枚数検出センサ215を制御する金庫制御部220とを備えている。
【0032】
また、
図2には示していないが、金庫200の上面には金庫内に券類や硬貨が入るための金庫扉が設けられ、金庫供給部214の付近の金庫200の底面には金庫200から運賃箱100に硬貨を供給するための硬貨出口が設けられている。硬貨出口は開閉可能な扉を備えている。金庫扉および硬貨出口の扉の開閉は、金庫制御部220により制御される。
【0033】
[券類収納部]
券類収納部211は、上面に開口部を有する箱状体であり、券銭分離部111から送られてきた券類を受け入れて収納する。
【0034】
[硬貨収納部]
硬貨収納部212は、上面に開口部を有する箱状体であり、硬貨選別部113から送られてきた硬貨を受け入れる。硬貨収納部212は、各種の硬貨を種別に分けることなく一括して収納する。
【0035】
[硬貨保持部]
硬貨保持部213は筒状を呈する4本の硬貨筒213A〜213Dを備えている。硬貨
筒213A〜213Dは、円柱状の中空体であり、各硬貨筒の内部に硬貨を1列に積み重
ねた状態で収容する。硬貨筒213Aは10円硬貨用、213Bは50円硬貨用、213
Cは100円硬貨用、
213Dは500円硬貨用である。各硬貨筒の内径は、各々の保持
する硬貨の外径より僅かに大きいので、対応する種類の硬貨を揃えた状態で積み重ねて収
容できる。なお、硬貨筒213A〜213Dが、本発明の筒状体に相当する。
【0036】
各硬貨筒の上部は開口しており、硬貨選別部113の切換機構113Aから送られてきた硬貨を受け入れることができる。また、各硬貨筒の底面には開閉可能な蓋が設けられている。通常、蓋は閉じられているので、底部から硬貨が流出することなく各硬貨筒内に硬貨を積み重ねて保持することができる。後述の硬貨供給部214により蓋を開き、各硬貨筒の中に保持されている硬貨を1枚ずつ取り出すことができる。
【0037】
[ 保持硬貨枚数検出センサ]
保持硬貨検出センサ215は、硬貨筒213A〜213Dの各々の内部に設けられたセ
ンサであり、各硬貨筒が所定数以上の硬貨を保持しているか否かを検出し、その検出結果
を金庫制御部220に送る。保持硬貨検出センサ215には、光学式のフォトセンサや、
硬貨の有無を判定する磁気センサ等の各種センサを用いることができる。また、保持硬貨
検出センサ215は、各硬貨筒に硬貨が入ったことを検出するように設けられており、そ
の検出結果に基づいて
金庫制御部220が各硬貨筒213A〜213Dに保持されている
硬貨の枚数を更新するように構成されていてもよい。ここで、保持硬貨検出センサ215
が、本発明の保持硬貨枚数取得手段を構成するとともに、本発明の満杯検出センサにも相
当する。
【0038】
[硬貨供給部]
硬貨供給部214は、硬貨筒213A〜213Dの底部に取り付けられている。硬貨供給部214は、金庫制御部220の命令に基づき、各硬貨筒の底面の扉を開いて払いだすべき金種の硬貨を取り出す。硬貨供給部214が各硬貨筒から取り出す硬貨の枚数の情報は、金庫制御部220から運賃箱制御部120に送信される。硬貨供給部214は、取り出した硬貨を金庫200の底面に設けられた扉付の硬貨出口を通じて運賃箱100の硬貨搬送部114に送出する。
【0039】
[硬貨搬送部]
硬貨搬送部114は、金庫200の底面に設けられた硬貨出口の下方から運賃箱100の硬貨返却口102にかけてL字状に設けられ、モータで駆動されるベルトコンベアを備えている。ベルトコンベアは、ベルト表面に一定間隔で設けられた凸部を有しており、硬貨を垂直方向にも搬送可能である。硬貨搬送部114は、ベルトコンベアによって硬貨を上方に搬送し硬貨返却口102に払い出す。ここで、硬貨保持部213、硬貨供給部214および硬貨搬送部114を組み合わせたものが、本発明の払出機構に相当する。
【0040】
金庫200を運賃箱100から取り外すと、金庫扉は閉じられて施錠された状態となる。券類収納部211および硬貨収納部212は金庫200内に取り外し不能に設けられており、金庫扉が閉じられて施錠された状態では硬貨や券類の収容物を取り出すことはできない。
【0041】
次に、運賃箱100の動作について
図2〜
図3を参照して説明する。まず、乗客により券類と硬貨とが運賃受入口101に投入された場合の動作について説明する。
【0042】
運賃受入口101へ投入された券類および硬貨は券銭分離部111に入る。券銭分離部111の入口にはセンサ(図示略)が設けられており、券類および硬貨の通過を検出する。センサが券類および硬貨の通過を検出すると、その検出結果に基づき運賃箱制御部120は券銭分離部111、硬貨計数部112および硬貨選別部113の動作を開始させる。
【0043】
券銭分離部111は、受け取った券類と硬貨を分離し、券類を金庫200の券類収納部211に送り、硬貨を硬貨計数部112に送る。
【0044】
硬貨計数部112は、券銭分離部111から受け取った硬貨の種類を1枚ずつ識別し、その種類ごとの数と合計金額とを、運賃箱制御部120に通知する。硬貨計数部112で識別された硬貨は、硬貨計数部112の内部を通過し、硬貨選別部113に順次送られる。
【0045】
硬貨選別部113は、一般的な硬貨選別装置と同様の内部機構の動作により、硬貨を種類ごとに選別して対応する送出先に送出する。このとき、運賃箱制御部120は、金庫制御部220から、硬貨保持部213(硬貨筒213A〜213D)が保持している硬貨の数の情報を受け取る。運賃箱制御部120は、硬貨保持部213が保持している硬貨の数の情報を基に、硬貨保持部213に空きが十分あると判断した場合は、切換機構113Aで硬貨の送出先を切り替えて硬貨選別部113から硬貨保持部213へ硬貨を送り、硬貨保持部213に空きが十分なければ、硬貨収納部212へ硬貨を送る。硬貨収納部212および硬貨保持部213は、いずれも金庫200内に設けられているので、運賃箱100が受け入れた硬貨はすべて金庫200内に送られる。所定時間にわたって券類または硬貨の追加受け入れがない場合、運賃箱制御部120は、券銭分離部111、硬貨計数部112および硬貨選別部113の動作を停止させる。
【0046】
次に、釣銭が発生した場合など、乗客に対して硬貨を払いだす場合の動作について説明する。
運賃箱制御部120は、1人の乗客から運賃を受け取る度に、硬貨計数部112の計数結果より乗客によって投入された硬貨の合計金額を取得する。また、メモリ122には予め設定された運賃のデータを保持している。運賃箱制御部120は、受け取った硬貨の合計金額と運賃データとの差額を計算して乗客に返却する金額を求め、払い出すべき金額または払い出すべき硬貨の枚数の情報を金庫制御部220へ送る。また、運賃箱制御部120は、硬貨搬送部114の動作を開始させる。金庫制御部220は、受け取った払い出すべき硬貨の情報を基に、乗客に返却する硬貨の種類ごとの枚数を決定し、硬貨保持部213(硬貨筒213A〜213D)から払い出しに必要な硬貨を取り出すよう硬貨供給部214を制御する。硬貨供給部214は、金庫制御部220の命令に基づき、所定数の硬貨を硬貨保持部213から取り出して、金庫200の下部から硬貨搬送部114へと送出する。
【0047】
硬貨搬送部114は、受け取った硬貨を搬送して硬貨返却口102に硬貨を送り出す。硬貨搬送部114の上部の出口近傍には硬貨センサ(図示略)が設けられており、硬貨返却口102に送り出される硬貨を検出する。硬貨センサの検出した硬貨の枚数に基づき、運賃箱制御部120は、払い出すべき硬貨の搬送が完了したか否かを判定する。硬貨センサの検出した硬貨のカウント数が払い出すべき硬貨の枚数に達し、払い出すべき全ての硬貨の搬送が完了したと判定すると、運賃箱制御部120は硬貨搬送部114の動作を停止させる。ここで、硬貨センサは、本発明の保持硬貨枚数取得手段を構成する。
【0048】
バスの運行が終了すると、金庫200は乗務員によって取り外される。金庫200は、先述のように運賃箱100内に受け入れた硬貨をすべて収納しており、運賃箱100から取り外されると自動的に金庫扉が閉じられて施錠される。運賃箱100から取り外した金庫200は、営業所等に設置されている精算機によって解錠され、券類収納部211および硬貨収容部212の内部の収容物が取り出される。
【0049】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)運賃箱100は、乗客に払い出すための硬貨を種類別に硬貨保持部213に保持し
ており、各種類の硬貨について必要数を払い出すことができる。硬貨を保持する硬貨保持
部213および硬貨収納部212は、いずれも金庫200の中にあるので、運賃箱100
の中の硬貨は全て金庫200の中に収納される。従って、車両の運行終了後に精算のため
に金庫200が運賃箱100から取り外されると、運賃箱100の中には硬貨が残ること
がない。従来は運賃箱の中に残されていた払い出し用の硬貨も全て営業所に持ち帰られる
ので、車両に硬貨を残すことなく運用することが可能となる。
(2)運賃として受け取った硬貨について、切換機構113Aにより、硬貨保持部213
と硬貨収納部212とに選択的に硬貨を送ることができる。このため、硬貨保持部213
に対して硬貨を適宜補充することができ、払い出し用に保持されている硬貨保持部213
の硬貨が不足してしまうおそれを抑制することができる。
(3)硬貨保持部213には所定枚数の硬貨のみが保持され、所定枚数を超える硬貨につ
いてはまとめて硬貨収納部212に収納するようにした。従って、硬貨保持部213およ
び硬貨供給部214からなる硬貨を分別保持するための機構を小型化することができる。
(4)硬貨保持部213を筒状体(硬貨筒213
A〜213D)とすることで、収納効率
を高め、硬貨保持部213を小型化することができる。また、硬貨を整列させて保持する
ことで正確な枚数を保持することが可能となるとともに、硬貨を1枚ずつ送出することが
容易になる。
【0050】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、例えば、以下の態様に変更してもよい。
・運賃箱100は、硬貨のみならず、紙幣を受け入れるようにしてもよい。この場合、受け入れた紙幣は金庫200に収納される。乗客が紙幣で運賃の支払いをする場合は、ほぼ確実に釣銭払い出しが必要となるが、上述のように硬貨保持部213には硬貨が適宜補充されるので、釣銭不足になるおそれが抑制されるので、本発明の金庫およびこれを備えた運賃箱は、紙幣受け入れに好適である。
・硬貨保持部213は硬貨を種類ごとに分けて保持するものであればよく、その構成は硬貨筒(筒状体)を備えるものに限られない。例えば、硬貨保持部は複数の箱からなるものであってもよい。この場合、箱状の金庫内において、硬貨保持部を隙間なく構成しやすくなるので、空間効率と工作性とに優れたものとすることができる。
・硬貨供給部214は必ずしも硬貨を硬貨筒213A〜213Dの底部から取り出す必要はなく、各硬貨筒の上部から取り出すように構成してもよい。例えば、各硬貨筒の底部に硬貨を押し上げる方向に付勢するバネを備え、上部から硬貨を押し込んでゆくような機構とすると、硬貨取り出しのための機構を簡素にすることができる。
・硬貨収納部212の硬貨のみを精算機によって回収するものに限定されず、硬貨保持部213に保持される硬貨も精算機で回収するようにしてもよい。また、精算機等の営業所の機材によって、硬貨保持部213に対して硬貨の補充および回収を自動的に行い、運賃箱100に取り付けられる金庫200の硬貨保持部213には常に所定数の硬貨が保持されるようにしてもよい。