(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
床暖房システムなどの暖房装置や空調装置には、暖房や空調を実施している室内の温度を検出するために、温度検出素子(たとえば、サーミスタなど)を操作装置の制御基板上に配置している。室内の温度を検出しやすいように、温度検出素子に近い部分には、制御基板を収容するケースに通気のための開口(スリット部)が設けられている。
【0007】
しかしながら、このスリット部に操作者の指が近づくと、指から温度検出素子に静電気が放電されることがある。温度検出素子は、静電気のサージに弱い電子部品(たとえば、マイコン等)に接続されていることもあるので、温度検出素子への静電気の放電を防ぐことが必要である。
【0008】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、温度検出素子を搭載する操作装置における静電気に対する電子部品の保護を強化することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による操作装置は、開口したスリット部が設けられたケースと、ケースの内部に収容された制御基板と、温度検出部とを備える。温度検出部は、制御基板に取り付けられて、スリット部を介してケース外の空気の温度を検出する。制御基板は、スリット部と温度検出部との間に配置され、静電気を吸収するための保護部を含む。
【0010】
本発明の操作装置によれば、スリット部および温度検出素子との間に静電気を吸収するための保護部を設けることにより、温度検出素子を搭載する操作装置において、静電気に対する電子部品の保護を強化することができる。
【0011】
好ましくは、保護部は、制御基板において接地電位を与えるノード(接地ノード)と電気的に接続される。または、保護部は、制御基板において接地電位を与えるノードと電気的に接続された電子部品を含む。さらに好ましくは、保護部は、制御基板において温度検出部に接続される信号配線パターンよりも太く形成された接地パターンを含む。接地パターンは、接地電位を与えるノードと電気的に接続される。
【0012】
このようにすると、静電気による電荷を、保護部によって接地ノードに導くことで吸収することができる。特に、低インピーダンスの接地パターンを保護部とすることにより、静電気を吸収し易くすることができる。
【0013】
さらに、好ましくは、保護部は、接地パターンに接続された電位部品または導電部をさらに含む。電位部品および導電部は、制御基板からの高さが接地パターンよりも高い。
【0014】
このようにすると、接地パターンよりも高い導電部または電子部品によって、静電気を吸収する効果を高めることができる。
【0015】
好ましくは、制御基板には、温度検出部の取付部分と保護部との間に切り欠き部が設けられる。
【0016】
このようにすると、温度検出部による検出温度が、制御基板の温度の影響を受け難いようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、温度検出素子を搭載する操作装置における静電気に対する電子部品の保護を強化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
[実施の形態に共通する構成]
まず、本発明の一実施の形態における操作装置(以下、リモコン装置ともいう)の構成について説明する。
【0021】
本発明の一実施の形態におけるリモコン装置は、たとえば床暖房システムなどの室温に応じた制御する装置を操作するためのものであり、室内の壁面に取り付けられて、床暖房システム本体の制御装置と電装線で接続された状態で使用される。つまり、リモコン装置は電装線と電気的に接続可能であり、電装線によって床暖房システム本体と電気的に接続可能である。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態におけるリモコン装置の外観を概略的に示す斜視図であり、
図2は、リモコン装置のカバーを開けた状態を概略的に示す斜視図であり、
図3は、リモコン装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【0023】
図1〜
図3を参照して、本発明の一実施の形態のリモコン装置は、ケース1と、カバー2と、表示部3と、スイッチ4と、制御基板5と、絶縁シート8と、取付板9とを主に有している。
【0024】
リモコン装置の幅方向において、ケース1の一方端部にカバー2の一方端部が軸回りに開閉可能に連結されている。ケース1およびカバー2はたとえばABS樹脂などの樹脂材によって形成されている。ケース1の表面側に表示部3と、スイッチ4とが配置されている。カバー2が開いた状態で表示部3とスイッチ4とがカバー2の内側から現れる。なお、カバー2に覆われていない一部のスイッチ4については、カバーが閉じた状態でも操作することが可能である。なお、
図1に示すようにカバー2が閉じた状態で表示部3とスイッチ4とはカバー2によって覆われている。ケース1の側面部の下方には、空気を送通させる開口部であるスリット部10が設けられている。
【0025】
図3に示すように、ケース1の内側に制御基板5、絶縁シート8、取付板9が取り付けられている。ケース1の操作面から背面に向けて、ケース1、制御基板5、絶縁シート8、取付板9の順に、これらが重ねられ組みつけられている。
【0026】
絶縁シート8は、絶縁性を有する材料で形成されており、たとえばポリエチレン樹脂などの樹脂材によって形成されている。絶縁シート8は、可撓性を有する材料によってシート状に形成されている。絶縁シート8は、制御基板5上に設けられた電装線のコネクタの挿し込み口の手前近傍に相当する個所に、電装線の先端の挿入部を挿入する開口部を形成するための舌片部8aを有している。
【0027】
取付板9は、板状に形成されており、たとえば鉄によって形成されている。取付板9は中央に開口部9aを有している。この開口部9aを覆うように絶縁シート8がケース1に取り付けられており、この状態で絶縁シート8の舌片部8aによって形成された開口部を通って電装線がコネクタ6に接続される。この取付板9は室内の壁面にねじなどによって取り付けられる。そして、取付板9が壁面に取り付けられた後に、取付板9にケース1を装着することによって、リモコン装置が室内の壁面に取り付けられる。
【0028】
[比較例]
図4は、ケース1に収容された状態の制御基板の拡大図であり、比較例を示す図である。
図4を参照して、ケース1の下方コーナー付近の側面部には、空気を送通させる開口部であるスリット部10が設けられている。
【0029】
制御基板5は、室温を検出するための温度検出素子であるサーミスタ20と、サーミスタ20で検出した温度を取り込むマイクロコンピュータ50とを含む。サーミスタ20は、制御基板5のスリット部10に近い部分にリード21によって取り付けられている。
【0030】
図5は、サーミスタ20を電気回路で示した図である。
図5を参照して、電源電位VDDと接地電位GNDとの間に抵抗Rとサーミスタ20とが直列接続される。抵抗Rとサーミスタ20との接続ノードからは、分圧電圧Vtが出力される。サーミスタ20は、温度により抵抗値が変化するので、分圧電圧Vtも温度に応じて変化する。
【0031】
分圧電圧Vtをマイクロコンピュータ50で取り込むことによってマイクロコンピュータは室温を検出することができる。たとえば、温度と分圧電圧Vtとの対応関係を示すマップをマイクロコンピュータ50のメモリに記憶しておく。そして、マイクロコンピュータ50が内蔵するA/Dコンバータで分圧電圧Vtをディジタル変換し、メモリのマップと照合することによって、マイクロコンピュータ50は室温を検出することができる。
【0032】
このようなサーミスタ20の配置に関連して、静電気に関連する問題が生じる場合がある。
図1および
図2に示されるように、スリット部10の位置は、カバー2が閉じた状態ではカバー2の端部と近接している。リモコン装置を操作する操作者は、カバー2が閉じた状態であるときに、スイッチ操作をするために、
図1の閉じた状態のカバー2の端部を指でケース1の本体部分から引き離して、カバー2を
図2に示した状態に開く。
【0033】
この時に、カバー2を開こうとする操作者の指が
図4に示すように静電気を帯びていれば、静電気がスリット部10を通過してサーミスタ20のリード21に跳び、制御基板5の信号配線パターン40を通じて、マイクロコンピュータ50の端子に静電気が印加される。したがって、
図4に示す比較例では、マイクロコンピュータ50の故障を招く可能性があるという問題がある。
【0034】
[実施の形態1]
図6は、ケース1に収容された状態の制御基板の拡大図であり、実施の形態1の制御基板を示す図である。
【0035】
図6を参照して、ケース1の下方コーナー付近の側面部には、空気を送通させる開口部であるスリット部10が設けられている。
【0036】
制御基板5は、室温を検出するための温度検出素子であるサーミスタ20と、サーミスタ20で検出した温度を取り込むマイクロコンピュータ50とを含む。サーミスタ20は、制御基板5のスリット部10に近いコーナー部分に取り付けられているが、制御基板5にグランドパターン30が設けられている点が
図4に示した場合の取付位置と異なる。サーミスタ20は「温度検出素子」の一実施例に対応する。
図8に示されるように、グランドパターン30は、制御基板5において、接地電位GNDを与える接地ノード60に対して電気的に接続される。
【0037】
グランドパターン30は、信号配線パターン40よりも幅が太いパターンである。このような幅が太いグランドパターンは、いわゆるベタグランド(信号配線より幅が太く、信号配線の無い部分を利用してグランドパターンを広げたもの)と呼ばれるような態様のものであっても良い。制御基板5上において、グランドパターン30をスリット部10とサーミスタ20との間の位置に設けたので、操作者の指が静電気を帯びている場合でも、静電気は、サーミスタ20に到達する前に、グランドパターン30で吸収されて、接地ノード60へ導かれる。これにより、静電気が、サーミスタ20を経由して、マイクロコンピュータ50を始めとする部品に印加されることを防止できる。
【0038】
図7は、
図6のVII−VII断面を示す概略図である。
図8は、静電気の放電を説明するための等価回路図である。
図7および
図8を参照して、スリット部10からの放電経路は、放電パスP1,P2が考えられる。放電パスP1は、サーミスタ20を経由して接地ノードに放電が生じるパスである。放電パスP2は、サーミスタ20の手前のグランドパターン30を経由して接地ノードに放電が生じるパスである。
【0039】
ここで、
図7の放電パスP1,P2の分岐点から先を考えると、放電パスP1のインピーダンスZa、放電パスP2のインビーダンスZgを
図8のように等価回路で表すことができる。インピーダンスZaは、主として空気の抵抗成分である。これに対してインビーダンスZgは、主としてグランドパターン30の抵抗成分である。グランドパターン30は、基板上に銅箔などの金属で形成されているので、空気よりもインビーダンスが低い。
【0040】
静電気は、インピーダンスの低い経路に流れようとするので、サーミスタ20とスリット部10の間の空間的位置に、基板上で最もインピーダンスが低いグランドパターン30を設けておくことでサーミスタ20を静電気から保護することができる。
【0041】
図9は、実施の形態1の第1の変形例を示す図である。
図9に示すように、グランドパターン30の上に、はんだ35を盛り上げることによって、はんだ35を回避してサーミスタ20に至る放電パスは長くなる。放電パスが長くなると、インピーダンスZaも高くなるので、静電気は、はんだ35およびグランドパターン30を含む経由に吸収され易くなる。これにより、サーミスタ20に直接放電がおこる可能性を、
図7に示した場合よりも低下することができる。
【0042】
図10は、実施の形態1の第2の変形例を示す図である。
図10に示す例は、グランドパターン30の上にリード37を有する電子部品36を配置している。このようにすれば、リード37が避雷針のような役割を果たし、一層スリット部10からの静電気の放電をサーミスタ20やそのリード21に受けにくくすることができる。なお、電子部品36は、導電性を有していればどのようなものであっても良い。たとえば、抵抗素子やコンデンサのようなものであっても良いし、ピン(端子)のようなものであっても良い。好ましくは、サーミスタ20やマイクロコンピュータ50よりもサージに強い特性を有しておればなお良い。
【0043】
再び
図6を参照して、実施の形態1について総括すると、操作装置(リモコン装置)は、開口したスリット部10が設けられたケース1と、ケース1の内部に収容された制御基板5と、制御基板5に取り付けられ、スリット部10を介してケース1外の空気の温度を検出するためのサーミスタ20とを備える。制御基板5は、スリット部10とサーミスタ20との間に配置されて静電気を吸収するための保護部を含む。
【0044】
好ましくは、保護部は、接地ノード60と電気的に接続されて、静電気を接地電位GNDへ導く。代表的には、保護部は、
図6、
図9および
図10に示すように、制御基板5においてサーミスタ20に接続される信号配線パターン40よりも太いグランドパターン30により構成される。このようにすると、低インピーダンスのグランドパターン30によって、静電気の吸収能力を高めることができる。
【0045】
好ましくは、
図10に示すように、保護部は、制御基板5において接地ノード60に対して電気的に接続された電子部品36を含む。なお、電子部品36は、接地ノード60に対して電気的に接続されていれば、必ずしもグランドパターン30に直接接続されていなくてもよい。
【0046】
このような構成とすることにより、スリット部10から侵入した静電気によるサージ電流は、サーミスタ20に達する前にグランドパターン30に吸収されるので、サーミスタ20にはサージ電流が流れることが無くなる。したがって、サーミスタ20に接続されているマイクロコンピュータ50などの電子部品の静電気に対する保護を図ることができる。
【0047】
好ましくは、
図6および
図10に示すように、保護部は、グランドパターン30と、グランドパターン30に接続され、制御基板5からの高さがグランドパターン30よりも高い導電部(はんだ35)または電子部品36とを含む。
【0048】
このようにすると、高さが確保された導電部または電子部品によって、静電気によるサージを一層捕らえやすくなるので、静電気に対する電子部品の保護を一層強化することができる。
【0049】
[実施の形態2]
実施の形態1では、操作装置をスリット部とサーミスタとの間の基板上にグランドパターン30や電子部品36などを含む静電気保護部を設け、サーミスタ20に静電気が放電されないように構成した。
【0050】
しかし、このように構成すると、サーミスタ20を制御基板5の端部から制御基板5の内部へと移動させる必要がある。制御基板5の内部にサーミスタ20を配置すると、サーミスタ20は、制御基板5の温度に影響を受けやすくなり、室内温度を正確に測りにくくなり、室内温度を正しく反映した床暖房制御ができなくなる可能性がある。
【0051】
そこで、実施の形態2では、室内温度検出用のサーミスタ20を制御基板5の切り欠き部に配置し、基板の温度の影響を受けにくいようにする。
【0052】
図11は、ケース1に収容された状態の制御基板の拡大図であり、実施の形態2の制御基板を示す図である。
図11を参照して、実施の形態2の操作装置(リモコン装置)は、制御基板5に切り欠き部5#を設ける。他の部分については、
図6に示した構成と同様であり、マイクロコンピュータ50や信号配線パターン40については図示しない。
【0053】
図12は、
図11のXII−XII断面を示す概略図である。
図11および
図12を参照して、制御基板5から立ち上がったリード21が曲げられており、サーミスタ20は切り欠き部5#にちょうど入り込んでいる。
【0054】
このようにすることにより、サーミスタ20に制御基板5が接することが無いとともに、スリット部10からの静電気によるサージもサーミスタ20に到達する前にグランドパターン30に吸収されやすくなる。
【0055】
図13は、実施の形態2の変形例を示す図である。
図12の例では、切り欠き部の奥行きが切り欠き部の幅よりも狭い例を示したが、
図13では、切り欠き部の幅が切り欠き部の奥行きよりも狭い例を示す。このように構成しても、静電気からの保護を図りながら、制御基板5の温度の影響を受けにくくすることができる。
【0056】
実施の形態2では、実施の形態1のように静電気保護部をサーミスタ20とスリット部10との間に設けることに加えて、静電気保護部の脇に制御基板に切り欠き部を設けてサーミスタを制御基板5の温度の影響を受けにくくした。
【0057】
つまり、制御基板5には、サーミスタ20の取付部分と静電気保護部との間に切り欠き部が設けられる。このように構成することによって、室温を正確に検出することと、静電気から電子部品を保護することとを両立することができる。
【0058】
なお、実施の形態2の静電気保護部は、グランドパターン30のみを
図11〜
図13に図示したが、
図9および
図10に示したように、はんだ35や電子部品36をグランドパターン30の上に配置しても良い。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。