(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マスターカメラ装置の制御部は、前記エンコードレベルを制御することで前記送信状態が良化した場合、前記各スレーブカメラ装置と通信を行うことで、自己が備えるエンコーダも含め、制御した前記エンコードレベルを元のエンコードレベルに戻すこと
を特徴とする請求項1に記載のカメラシステム。
前記マスターカメラ装置および前記スレーブカメラ装置の前記エンコーダは、前記撮像画像に所定の圧縮符号化処理を施し所定の転送レートの前記エンコードデータを形成するエンコード処理を行い、
前記マスターカメラ装置の制御部は、制御する前記エンコードレベルに対応する圧縮符号化率、または、転送レートとなるように、前記エンコーダを制御すること
を特徴とする請求項1から請求項3のうち、いずれか一項に記載のカメラシステム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るカメラシステム、マスターカメラ装置およびスレーブカメラ装置を適用した監視カメラシステムの実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
(概要)
一般的に監視カメラシステムの配信制御は、各カメラ装置が個別に自身の制御を行うか、または監視用のパーソナルコンピュータ装置またはやレコーダ装置等の集中管理装置でシステム的に行われる。各カメラ装置が個別に自身の制御を行う場合、システムとしては管理されない。また、集中管理装置でシステム的に各カメラ装置を制御する場合、全映像信号が集中するため常時過負荷状態となるおそれがある。
【0016】
この実施の形態の監視カメラシステムでは、マスタ登録された一つあるいは複数のマスターカメラ装置、および、一つあるいは複数のスレーブカメラ装置を、所定のネットワークを介して相互に接続し、一つの制御単位となるセグメントを形成する。
【0017】
また、マスターカメラ装置およびスレーブカメラ装置が、それぞれ自己がマスターカメラ装置であるか否かを示す情報、各エンコーダの優先度の情報、また、エンコードレベルを制御する際に、圧縮率および送信レートのうち、どちらを制御するかを示す情報を記憶する機能を有する。または、マスターカメラ装置およびスレーブカメラ装置は、これらの情報を、例えばHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)のGETコマンドを用いたカメラ制御コマンド(API(Application Programming Interface)コマンド)またはユーザインタフェース等により設定可能とする機能を有する。
【0018】
各セグメントのマスターカメラ装置は、自己の送信状態を監視すると共に、例えばマルチキャスト通信等の通信により、セグメント内の各スレーブカメラ装置の送信状態を監視する。そして、マスターカメラ装置は、送信状態の悪化を検出した際に、自己が有するエンコーダも含め、優先度が低いエンコーダから順に、送信状態を良化させるように、エンコード処理の度合いを示すエンコードレベルを制御する(段階的制御)。これにより、ネットワークトラフィックとカメラ用途の実体(監視カメラシステムは撮像画像のリアルタイム性が重要)に即し、且つシステム的に管理された制御を可能とすることができる。
【0019】
(実施の形態の構成)
図1に、本発明の実施の一形態となる監視カメラシステムのシステム構成図を示す。この監視カメラシステムは、複数の監視ユニット1,2を、ルータ装置3等の中継機器を介して相互に接続して構成されている。各監視ユニット1,2は、それぞれ同じ構成を有している。以下、監視ユニット1の構成を説明する。監視ユニット2の構成は、以下の監視ユニット1の説明を参照されたい。
【0020】
監視ユニット1は、カメラユニット11、記録装置12、モニタ装置13、パーソナルコンピュータ装置14、およびルータ装置15を有している。記録装置12は、ハードディスクまたは半導体メモリ等に、カメラユニット11から送信される撮像画像を記録する。ルータ装置15は、所定のネットワークを介して各監視ユニット1,2を接続するルータ装置3に接続されている。
【0021】
図2は、パーソナルコンピュータ装置14のハードウェア構成図である。この
図2に示すように、パーソナルコンピュータ装置14は、CPU20、ROM16、RAM17、ハードディスクドライブ(HDD)18、入出力インターフェイス(I/F)24、および通信I/F19を有する。CPUは、「Central Processing Unit」の略記である。ROMは、「Read Only Memory」の略記である。RAMは、「Random Access Memory」の略記である。CPU20、ROM16、RAM17、HDD18、入出力I/F24および通信I/F19は、バスライン26を介して相互に通信可能となるように接続されている。
【0022】
入出力I/F24には、操作メニュー、印刷設定画面、承認ルート設定画面、および画像等を表示する表示部27(=上述のモニタ装置13)が接続されている。また、入出力I/F24には、ユーザ入力を受け付けるキーボードやマウス装置等の操作部28が接続されている。また、入出力I/F24には、他機器との間でデータ入出力を行うUSB等のデータインターフェイスを接続することも可能である。USBは、「Universal Serial Bus」の略記である。また、入出力I/F24には、CD、DVD等の記録媒体からデータを読み出すドライブ装置を接続することも可能である。CDは、「Compact Disc(登録商標)」の略記である。DVDは、「Digital Versatile Disc」の略記である。
【0023】
HDD18には、カメラユニット11を制御するための監視制御プログラムが記憶されている。CPU20は、この監視制御プログラムに従って、カメラユニット11の各エンコーダのレベル設定制御等を行う。なお、監視制御プログラムは、HDD18以外であっても、例えばROM16またはRAM17に格納してもよい。また、監視制御プログラムは、所定のネットワークのコンピュータ装置上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードして取得してもよい。これに限らず、プリンタドライバは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されたものを取得してもよい。
【0024】
カメラユニット11は、1台(または複数台)のマスターカメラ装置21と、複数台(または1台)のスレーブカメラ装置22を、所定のネットワーク23を介して、中継機器等を介すことなく直接的に接続して構成されている。1台のマスターカメラ装置21および複数台のスレーブカメラ装置22で、一つの制御単位となるネットワークセグメント25を形成している。マスターカメラ装置21と各スレーブカメラ装置22は、中継機器等を介すことなく直接的に接続されているため、マスターカメラ装置21から各スレーブカメラ装置22に対するマルチキャスト通信が可能となる。マスターカメラ装置21は、ネットワークセグメント25内の各スレーブカメラ装置22とマルチキャスト通信を行いながら通信状態を監視し、各カメラ装置21、22の各エンコーダのエンコードレベルを制御して、良好な通信状態を維持する。
【0025】
図3に、マスターカメラ装置21およびスレーブカメラ装置22のハードウェア構成図を示す。この
図3に示すように、マスターカメラ装置21およびスレーブカメラ装置22は、撮像部30、第1〜第3のエンコーダ31〜33、ROM34、RAM35、タイマ36、制御部37、および通信部38を有している。
【0026】
撮像部30は、例えばCCDイメージセンサ、またはCMOSイメージセンサを有している。撮像部30は、監視カメラシステムで監視している監視対象を撮像し、撮像信号(撮像画像)を形成する。CCDは、「Charge Coupled Device」の略記である。また、CMOSは、「Complementary Metal-Oxide Semiconductor」の略記である。
【0027】
第1エンコーダ31〜第3エンコーダ33は、撮像部30からの撮像信号に所定の圧縮符号化処理を施し、所定の転送レートで出力するエンコード処理を行う。各エンコーダ31〜33には、優先度が設定されている。各エンコーダ31〜33は、設定された優先度に対応する圧縮率および転送レートで撮像信号をエンコード処理して出力する。
【0028】
RAM35には、各エンコーダ31〜33に設定されている優先度、および制御対象等を示す設定情報が記憶されている。なお、制御対象を示す設定情報とは、エンコーダで度合いを変化させる圧縮率および転送レートのうち、選択されている方のエンコード処理を示す情報である。
【0029】
ROM34には、監視制御プログラムが記憶されている。マスターカメラ装置21の場合、制御部37は、ROM34に記憶されている監視制御プログラムに従って動作することで、タイマ36で計時される所定時間毎に、各スレーブカメラ装置22とマルチキャスト通信を行い、各スレーブカメラ装置22の送信状態を検出する。また、マスターカメラ装置21の制御部37は、自己の送信状態も検出する。そして、マスターカメラ装置21の制御部37は、検出した送信状態を良化させるように、自己のエンコーダ31〜33のうち、優先度が低いエンコーダから順に制御して送信状態の改善を図る。
【0030】
また、スレーブカメラ装置22の場合、制御部37は、ROM34に記憶されている監視制御プログラムに従って動作することで、タイマ36で計時される所定時間内における送信タイミングのずれの平均値を算出する。そして、スレーブカメラ装置22の場合、制御部37は、マスターカメラ装置21からの送信状態の取得要求に応じて、算出した平均値をマスターカメラ装置21に送信する。また、スレーブカメラ装置22の場合、制御部37は、マルチキャスト通信により、マスターカメラ装置21から指定された優先度のエンコーダ31〜33から順に、エンコード処理を制御して送信状態の改善を図る。
【0031】
マスターカメラ装置21およびスレーブカメラ装置22の通信部38は、ネットワーク(NW)23を介して記録装置12、パーソナルコンピュータ装置14、およびルータ装置15に接続されており、例えば低圧縮率で圧縮符号化処理された高転送レートの記録用の画像信号を、記録装置12に転送する。また、マスターカメラ装置21の通信部38は、パーソナルコンピュータ装置14等から取得要求があった際に、送信状態の制御履歴を転送する。
【0032】
マスターカメラ装置21およびスレーブカメラ装置22の各エンコーダ31〜33の優先度等の設定は、パーソナルコンピュータ装置14で行うようになっている。この設定時となると、
図2に示すCPU20は、HDD18に記憶されている監視制御プログラムに従って、例えば
図4に示すような設定画面を表示部27(モニタ装置13)に表示制御する。
【0033】
この
図4に示すように、設定画面は、マスターカメラ装置21およびスレーブカメラ装置22のローカルIPアドレス等を設定するためのネットワーク設定欄、および各エンコーダの優先度等を設定するためのネットワーク配信制御設定欄を有している。ネットワーク配信制御設定欄は、そのカメラ装置をマスターカメラ装置21として機能させるか否かを設定するためのマスターカメラ設定欄(ON/OFF)と、各エンコーダの優先度を設定するための優先度設定欄と、エンコード処理の制御対象を選択するための制御対象選択欄とを有している。
【0034】
マスターカメラ設定欄で「ON」が選択された場合、制御部37は、そのカメラ装置をマスターカメラ装置21として機能させる。また、マスターカメラ設定欄で「OFF」が選択された場合、制御部37は、そのカメラ装置をスレーブカメラ装置22として機能させる。
【0035】
この実施の形態の監視カメラシステムの場合、優先度は例えばレベル1(低)〜レベル5(最高)の間で設定可能となっている。レベル5の優先度は、低圧縮率で最高転送レートのエンコード処理を希望する場合に設定する優先度となっている。また、レベル5の優先度は、制御部37によるエンコード処理の変更を禁止する優先度となっている。このレベル5の優先度は、例えば記録装置12で記録するための撮像画像を生成するエンコーダ等に設定される。
【0036】
これに対して、レベル1(低)〜レベル4(高)の優先度は、後述するように制御部37が送信状態に応じて変更可能な優先度となっている。監視者は、そのエンコーダで生成される撮像画像の用途の重要度等に応じて、優先度の所望のレベルを設定する。
図4に示す例では、第1エンコーダ31に対してレベル5の優先度が設定され、第2エンコーダ32に対してレベル3の優先度が設定され、第3エンコーダ33に対してレベル1の優先度が設定されている。
【0037】
また、この実施の形態の監視カメラシステムの場合、「画質制御」および「フレームレート制御」のうち、いずれか一方を、送信状態に応じて制御する制御対象として設定するようになっている。「画質制御」は、圧縮率の制御を意味している。この「画質制御」が選択されている場合、制御部37は、優先度のレベルに対応する圧縮率となるように撮像画像をエンコード処理する。また、「フレームレート制御」は、転送レートの制御を意味している。この「フレームレート制御」が選択されている場合、制御部37は、優先度のレベルに対応する転送レートで、エンコード処理された撮像画像を出力制御する。
【0038】
監視者は、マスターカメラ装置21およびスレーブカメラ装置22毎に、優先度および制御対象等の設定を行う。マスターカメラ装置21およびスレーブカメラ装置22の設定情報は、
図3に示すRAM35等に記憶される。マスターカメラ装置21およびスレーブカメラ装置22の制御部37は、設定情報の優先度が低いエンコーダから順に、設定情報の制御対象情報で示される圧縮率、または転送レートのエンコード処理を制御して、安定的な送信状態の維持を図る。
【0039】
次に、実施の形態の監視カメラシステムの動作説明をする。まず、
図5は、マスターカメラ装置21の動作の流れを示すフローチャートである。マスターカメラ装置21の制御部37は、ROM34に記憶されている監視制御プログラムに従って、タイマ36で例えば10秒がカウントされる毎に
図5のフローチャートのステップS1から処理を開始する(=10秒置きに
図5のフローチャートの処理が実行される)。
【0040】
ステップS1では、制御部37が、RAM35に記憶されている設定情報を読み込むことで、自機器がマスターカメラ装置21として設定されているか否かを判別する(マスターカメラ装置21の設定がONか、OFFか)。自機器がマスターカメラ装置21として設定されていないものと判別した場合(ステップS1:No)、そのカメラ装置はスレーブカメラ装置22であることを意味するため、制御部37は、
図5のフローチャートを終了して、
図6のフローチャートのステップS11に処理を進める。
【0041】
これに対して、自機器がマスターカメラ装置21として設定されているものと判別した場合(ステップS1:Yes)、制御部37は、処理をステップS2に進める。制御部37は、ステップS2において、マルチキャスト通信を行うことで、同じネットワークセグメント25内の各スレーブカメラ装置22に対して一斉に、エンコードデータの送信誤差の平均値の取得要求を行う。各スレーブカメラ装置22の制御部37およびマスターカメラ装置21の制御部37は、後述するように10秒間におけるエンコードデータの送信誤差の平均値を算出している。そして、各スレーブカメラ装置22は、上述のように送信誤差の平均値の取得要求を受信すると、算出した平均値をマスターカメラ装置21に送信する。
【0042】
マスターカメラ装置21の制御部37は、各スレーブカメラ装置22から平均値を取得すると、処理をステップS3に進める。そして、マスターカメラ装置21の制御部37は、ステップS3において、各スレーブカメラ装置22から取得した平均値およびマスターカメラ装置21の送信誤差の平均値から、ネットワークセグメント25全体の送信誤差の平均値(全体平均値)を算出する。
【0043】
次に、マスターカメラ装置21の制御部37は、ステップS4において、全体平均値と、各エンコーダ31〜33のエンコード処理の制御を行うか否かを判別するための制御実行閾値とを比較する。全体平均値が制御実行閾値以上であるということは、ネットワークトラフィックが混雑し、エンコードデータの送信状態が悪化してきていることを意味している(ステップS4:Yes)。この場合、制御部37は、処理をステップS5に進める。
【0044】
ステップS5では、マスターカメラ装置21の制御部37が、制御対象となるエンコーダの優先度、および一つ上の制御レベルを指定する制御実行命令を、マルチキャスト通信により、各スレーブカメラ装置22に対して一斉送信して、
図5のフローチャートの処理を終了する。各スレーブカメラ装置22の制御部37は、後述するように制御実行命令に従って、対象となるエンコーダの制御レベルを制御する。なお、マスターカメラ装置21の制御部37も、各スレーブカメラ装置22に送信した制御実行命令に基づいて、自機の対象となるエンコーダの制御レベルを制御する。
【0045】
これに対して、全体平均値と制御実行閾値とを比較した結果、全体平均値が制御実行閾値よりも低い値であるということは、ネットワークトラフィックが混雑していない状態であり、エンコードデータの送信状態も良好であることを意味している。この場合(ステップS4:No)、制御部37は、処理をステップS6に進め、全体平均値と、各エンコーダ31〜33の制御レベルを一つ戻すか否かを判別するための制御解除閾値とを比較する。
【0046】
全体平均値が制御解除閾値よりも値が大きいということは、ネットワークトラフィックが空いていて、エンコードデータの送信状態も安定していることを意味している。この場合(ステップS6:No)、各エンコーダ31〜33の制御レベルの制御は不用であるため、制御部37は、そのまま
図5のフローチャートの処理を終了する。
【0047】
これに対して、全体平均値が制御解除閾値以下であるということは、ネットワークトラフィックが極度に空いていて、各エンコーダ31〜33の制御レベルが高すぎることが懸念される。この場合(ステップS6:Yes)、制御部37は、処理をステップS7に進め、制御対象となるエンコーダの優先度、および一つ下の制御レベルを指定する制御解除命令を、マルチキャスト通信により、各スレーブカメラ装置22に対して一斉送信して、
図5のフローチャートの処理を終了する。各スレーブカメラ装置22の制御部37は、後述するように制御解除命令に従って、対象となるエンコーダの制御レベルを制御する。なお、マスターカメラ装置21の制御部37も、各スレーブカメラ装置22に送信した制御解除命令に基づいて、自機の対象となるエンコーダの制御レベルを制御する。
【0048】
次に、
図6のフローチャートに、スレーブカメラ装置22の動作の流れを示す。スレーブカメラ装置22の制御部37は、ROM34に記憶されている監視制御プログラムに従って、
図6のフローチャートのステップS11から処理を開始する。
【0049】
ステップS11では、スレーブカメラ装置22の制御部37が、タイマ36でカウントされる例えば10秒間における各エンコーダ31〜33の送信誤差の平均値を算出し、RAM35に一時的に保存する。
【0050】
具体的に説明すると、設定されたフレームレートから計算される理想フレーム間隔に対する、撮像画像の各フレームの送信間隔の時間的なずれを、各エンコーダ31〜33の送信誤差として検出する。スレーブカメラ装置22の制御部37は、常時、自身が配信中の撮像画像のフレーム間隔を、10秒間に渡りRAM35に記憶する。そして、制御部37は、理想フレーム間隔より遅れた分の平均値と、理想フレーム間隔より早かった分の平均値の絶対値の平均を10秒毎に計算し、自身の送信状態を示す情報としてRAM35に記憶する。
【0051】
例えば、
図7に示す例は、理想フレーム間隔が1/15fps(66msec)の例であり、10秒間内における各エンコーダ31〜33のフレーム間隔のずれを示している。理想フレーム間隔を示すラインよりも上に表示されている点は、時間的に遅れたフレーム間隔を示している。理想フレーム間隔を示すラインよりも下に表示されている点は、時間的に早くなったフレーム間隔を示している。
【0052】
時間的に遅れたフレーム間隔の平均値が5.4msec、時間的に早くなったフレーム間隔の平均値が6.8msecであった場合、スレーブカメラ装置22の制御部37は、「(5.4msec+6.8msec)/2=6.1msec」の演算を行う。スレーブカメラ装置22の制御部37は、このように演算した、理想フレーム間隔より遅れた分の平均値と、理想フレーム間隔より早かった分の平均値の絶対値の平均値(送信間隔平均値)をRAM35に記憶する。スレーブカメラ装置22の制御部37は、10秒間毎に上述の演算を行い、10秒間毎の送信間隔平均値をRAM35に記憶する。
【0053】
次に、スレーブカメラ装置22の制御部37は、ステップS12において、マスターカメラ装置21から上述のマルチキャスト通信による、送信状態を示す平均値の取得要求を受信したか否かを判別する。送信状態を示す平均値の取得要求を受信しないものと判別した場合(ステップS12:No)、スレーブカメラ装置22の制御部37は、ステップS13に処理を進める。これに対して、送信状態を示す平均値の取得要求を受信したものと判別した場合(ステップS12:Yes)、スレーブカメラ装置22の制御部37は、ステップS15に処理を進め、RAM35に記憶されている送信間隔平均値をマスターカメラ装置21に送信する。マスターカメラ装置21の制御部37は、各スレーブカメラ装置22から取得した送信間隔平均値から、エンコードデータの現在の送信状態を判断し、以下に説明するように各エンコーダ31〜33の制御レベルの制御を行う。
【0054】
次に、ステップS13において、スレーブカメラ装置22の制御部37は、マスターカメラ装置21から制御実行命令を受信したか否かを判別する。スレーブカメラ装置22の制御部37は、マスターカメラ装置21から制御実行命令を受信していないものと判別した場合(ステップS13:No)、ステップS14に処理を進める。これに対して、マスターカメラ装置21から制御実行命令を受信したものと判別した場合(ステップS13:Yes)、スレーブカメラ装置22の制御部37は、ステップS16に処理を進める。制御実行命令は、送信状態が悪化しているものとマスターカメラ装置21が判別した際に、制御を行うエンコーダの優先度を指定してマスターカメラ装置21から送信される。このため、スレーブカメラ装置22の制御部37は、制御実行命令で指定されている優先度と、自機の各エンコーダ31〜33に設定されている優先度を比較して、制御実行命令で指定されている優先度以下の優先度のエンコーダが存在するか否かを判別する。
【0055】
具体的には、制御実行命令でレベル3の優先度が指定された場合、スレーブカメラ装置22の制御部37は、レベル3、レベル2、レベル1の優先度の、制御対象となるエンコーダが存在するか否かを判別する。制御対象となるエンコーダが存在しない場合(ステップS16:No)、処理はステップS14に進む。制御対象となるエンコーダが存在する場合(ステップS16:Yes)、スレーブカメラ装置22の制御部37は、処理をステップS17に進め、制御対象となるエンコーダの優先度のレベルを一つ上げ、上げたレベルの優先度に対応する度合いのエンコード処理を行うように、制御対象のエンコーダを制御する。
【0056】
例えば、制御対象となるエンコーダの優先度がレベル1であった場合、スレーブカメラ装置22の制御部37は、制御対象となるエンコーダの優先度をレベル2に変更し、変更したレベル2の度合いのエンコード処理を行うように、制御対象のエンコーダを制御する。なお、制御部37は、圧縮率および転送レートのうち、選択されている方のエンコード処理のレベルの度合いを変更して制御する。これにより、例えば優先度がレベル3以下のエンコーダの圧縮率を上げ、または、転送レートを下げて、エンコードデータの送信を行うことができる。このため、送信状態を改善することができる。
【0057】
次に、ステップS14において、スレーブカメラ装置22の制御部37は、マスターカメラ装置21から制御解除命令を受信したか否かを判別する。スレーブカメラ装置22の制御部37は、制御解除命令を受信していないものと判別した場合(ステップS14:No)、そのまま
図6のフローチャートに示す全処理を終了する。これに対して、制御解除命令を受信したものと判別した場合(ステップS14:Yes)、スレーブカメラ装置22の制御部37は、ステップS18に処理を進める。制御解除命令は、送信状態に大きな余裕があるものとマスターカメラ装置21が判別した際に、制御を行うエンコーダの優先度を指定してマスターカメラ装置21から送信される。このため、スレーブカメラ装置22の制御部37は、制御解除命令で指定されている優先度と、自機の各エンコーダ31〜33に設定されている優先度を比較して、制御解除命令で指定されている優先度以下の優先度のエンコーダが存在するか否かを判別する。
【0058】
具体的には、制御解除命令でレベル2の優先度が指定された場合、スレーブカメラ装置22の制御部37は、レベル2およびレベル1の優先度の、制御対象となるエンコーダが存在するか否かを判別する。制御対象となるエンコーダが存在しない場合(ステップS18:No)、
図6のフローチャートに示す処理を終了する。制御対象となるエンコーダが存在する場合(ステップS18:Yes)、スレーブカメラ装置22の制御部37は、処理をステップS19に進め、制御対象となるエンコーダの優先度のレベルを一つ下げ、下げたレベルの優先度に対応する度合いのエンコード処理を行うように、制御対象のエンコーダを制御する。
【0059】
例えば、制御対象となるエンコーダの優先度がレベル2であった場合、スレーブカメラ装置22の制御部37は、制御対象となるエンコーダの優先度をレベル1に変更し、変更したレベル1の度合いのエンコード処理を行うように、制御対象のエンコーダを制御する。なお、制御部37は、圧縮率および転送レートのうち、選択されている方のエンコード処理のレベルの度合いを変更して制御する。これにより、例えば優先度がレベル2以下のエンコーダの圧縮率を下げ、または、転送レートを上げて、エンコードデータの送信を行うことができる。このため、ネットワークの通信帯域を有効に利用してエンコードデータの送信を行うことができる。
【0060】
次に、マスターカメラ装置21の制御部37は、各スレーブカメラ装置22から取得した送信間隔平均値および自機器の送信間隔平均値をRAM35に記憶する。これにより、マスターカメラ装置21のRAM35には、
図8または
図9に示すような送信間隔平均値の履歴が形成される。この履歴としては、制御日時と優先度のレベルが記録され、レベル制御が完全に解除された状態はレベル0として記録される。
【0061】
マスターカメラ装置21の制御部37は、例えばパーソナルコンピュータ装置14等の他の機器から履歴の送信要求を受信した場合、
図8または
図9に示すような送信間隔平均値の履歴をRAM35から読み出して転送する。この履歴を解析することで、各エンコーダ31〜33の送信状態が悪化する時間帯等を認識することができる。例えば、
図9に示す履歴においては、午前9時前後にネットワークトラフィックが混雑し、各フレームの配信間隔が乱れていることを認識することができる。
【0062】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施の形態となる監視カメラシステムは、ネットワークを介してマスターカメラ装置21と複数のスレーブカメラ装置22とを直接的に接続して、一つのネットワークセグメント25を形成する。マスターカメラ装置21およびスレーブカメラ装置22は、エンコードデータの送信状態を検出する。マスターカメラ装置21は、各スレーブカメラ装置22とマルチキャスト通信を行うことで、各スレーブカメラ装置22から送信状態を示す情報を取得する。マスターカメラ装置21は、各スレーブカメラ装置22の送信状態および自機器の送信状態から、送信状態の悪化を検出した際に、各スレーブカメラ装置22とマルチキャスト通信を行うことで、自己が備えるエンコーダも含め、優先度が低いエンコーダから順に、送信状態を良化させるように、エンコード処理の度合いを示すエンコードレベルを制御する。
【0063】
マスターカメラ装置21は、送信状態の悪化を検出したタイミングで、優先度が低いエンコーダから順に、送信状態を良化させるように、エンコード処理の度合いを制御している。このため、送信状態が乱れた比較的初期の段階で送信状態を改善することができ、表示される動画像の被写体が、ぎこちない動きとなる不都合を防止することができる。また、送信状態が大きく悪化し、最終的にパケットが破棄される不都合を、強力に防止することができる。
【0064】
監視カメラシステムは、監視対象を監視するために、表示する動画像のリアルタイム性および連続性を必要とする。本発明の実施の形態となる監視カメラシステムは、動画像のリアルタイム性および連続性を共に満足させる理想的な監視カメラシステムを提供することができる。
【0065】
また、例えば保存を目的とした高画質画像を記録している記録装置12に接続されるエンコーダは重要度が高く、圧縮率または転送レート等のエンコード処理の設定を変更することは好ましいことではない。本発明の実施の形態となる監視カメラシステムは、優先度が低いエンコーダから制御を行うため、優先度が高いエンコーダの設定の変更を極力防止したうえで、送信状態の悪化を改善することができる。
【0066】
また、エンコード処理の制御レベルを変更制御する場合、1レベルずつ制御している。このため、制御レベルに必要な変更制御信号のビット数を1ビットとすることができる。このため、各スレーブカメラ装置22に変更制御信号をマルチキャスト送信する際に、ネットワークを圧迫することなく、制御レベルの変更制御を可能とすることができる。
【0067】
また、パーソナルコンピュータ装置14と各カメラ装置21,22は、ルータ装置15を介して相互に接続されている。例えば、パーソナルコンピュータ装置14がマルチキャスト通信で各カメラ装置21,22を一斉に制御しようとしても、パーソナルコンピュータ装置14からの制御信号がルータ装置15により遮断され、各カメラ装置21,22の制御が困難となる。このため、パーソナルコンピュータ装置14で各カメラ装置21,22を制御する場合、1台ずつカメラ装置を指定して、制御を行う必要がある。これは、大変、非効率的である。
【0068】
これに対して、この実施の形態の監視カメラシステムは、ルータ装置15のような他の中継機器が存在せず、マスターカメラ装置21が各スレーブカメラ装置22と直接通信できる。このため、マスターカメラ装置21が各スレーブカメラ装置22と一斉に通信して上述の通信状態の制御を行うことができ、効率的な制御を可能とすることができる。
【0069】
上述の実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。実施の形態および実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。