特許第6213099号(P6213099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6213099エポキシ樹脂成形材料、モールドコイルの製造方法及びモールドコイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6213099
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂成形材料、モールドコイルの製造方法及びモールドコイル
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20171005BHJP
【FI】
   C08G59/42
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-199093(P2013-199093)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-63629(P2015-63629A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 達朗
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−242732(JP,A)
【文献】 特開平10−060085(JP,A)
【文献】 特開2009−016638(JP,A)
【文献】 特開2009−278074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填材及び(C)酸無水物系の硬化剤を含む樹脂組成物を混合及び/又は混練してなり、射出成形によりコイルを封入することによりモールドコイルを得ることができるエポキシ樹脂成形材料であって、
記式(2)で表わされる前記(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aが230g/eq以上であることを特徴とするエポキシ樹脂成形材料
【数2】

A:酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量
Aj:酸無水物jの酸無水物当量
WAj:酸無水物jの全酸無水物の重量分率
【請求項2】
前記モールドコイルが最外部にケースを有しない構造であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【請求項3】
下記式(1)で表わされる前記(A)エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量Eが230g/eq以上であり、かつ、前記式(2)で表わされる前記(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aが230g/eq以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【数1】

E:エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量
Ei:エポキシ樹脂iのエポキシ当量
WEi:エポキシ樹脂iの全エポキシ樹脂中の重量分率
【請求項4】
DSCにおける発熱量が90J/g以下であることを特徴とする、請求項から請求項3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【請求項5】
E型粘度計を用いて、温度60℃、1rpmの条件で測定した際の粘度が1Pa・s以上、100Pa・s以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【請求項6】
120℃でのゲル化時間が60秒以上、300秒以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【請求項7】
150℃でのゲル化時間が15秒以上、100秒以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【請求項8】
前記(B)無機充填材が、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク及びマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【請求項9】
前記(B)無機充填材が、溶融シリカ、及び/又は結晶シリカであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【請求項10】
前記(B)無機充填材の配合量が、前記エポキシ樹脂成形材料全体の35体積%以上、70体積%以下であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【請求項11】
前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の液状のエポキシ樹脂に、軟化点60℃以上、120℃以下の固形エポキシ樹脂を溶解させたエポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【請求項12】
前記(C)酸無水物系の硬化剤が、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【請求項13】
(a)コイルを収納したケースを金型キャビティ内に設置する工程、
(b)射出成形機を用いて、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料を前記ケース内に加圧注入して前記コイルを封入する工程、
を有することを特徴とするモールドコイルの製造方法。
【請求項14】
(c)コイルを直接金型キャビティ内に設置する工程、
(d)射出成形機を用いて、請求項2から請求項12のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料を前記金型キャビティ内に加圧注入して前記コイルを封入する工程、
を有することを特徴とする最外部にケースを有しないモールドコイルの製造方法。
【請求項15】
(a)磁気コア、一次コイル及び二次コイルを備えたイグニッションコイルを収納したケースを金型キャビティ内に設置する工程、
(b)射出成形機を用いて、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料を前記ケース内に加圧注入して前記イグニッションコイルを封入する工程、を有することを特徴とするモールドコイルの製造方法。
【請求項16】
(c)磁気コア、一次コイル及び二次コイルを備えたイグニッションコイルを直接金型キャビティ内に設置する工程、
(d)射出成形機を用いて、請求項2から請求項12のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料を前記金型キャビティ内に加圧注入して前記イグニッションコイルを封入する工程、
を有することを特徴とする最外部にケースを有しないモールドコイルの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂成形材料、モールドコイルの製造方法及びモールドコイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に電気機器部品は、構成部品の保護及び絶縁性の担保を目的として、樹脂組成物で封止されている。自動車電装部品のイグニッションコイルでは、樹脂組成物のなかでも、絶縁性、機械特性に優れたエポキシ樹脂組成物が多く用いられているが、近年、小型化、高機能化及び低コスト化の要求が高まっている。こうした中、イグニッションコイル封止用の樹脂組成物には、小型化及び高機能化に対応した高含浸性、高絶縁性及び高信頼性などが求められている。
【0003】
イグニッションコイルは、通常、ケースにコイルなどの部品を収納した後、注型用エポキシ樹脂組成物を流し込み硬化させることで、注型封止されている。特許文献1には、高密度化、高集積化に対応する長寿命、高耐久性の電気・電子機器を広く提供することを目的として、ケース内に収容した巻線及びボビンからなるコイルを予めコイルとの接着性が良好な樹脂Aで前処理した後、ケース内に収容した部品全体を低弾性樹脂Bで処理することが提案されている。しかしながら、注型用エポキシ樹脂を用いた注型封止では、ボイドが発生しやすいため、十分な信頼性が得られない場合があった。また、注型用エポキシ樹脂を用いた注型封止では硬化時間が長く、生産性が劣る点に課題を有していた。このように、低コスト化と高信頼性とを両立することができるコイルの封止方法及びそれに適した材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−158019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生産サイクルの短縮による低コスト化、ならびに、加圧によるボイドレス化、コイルへの樹脂の含浸性向上及びとそれらに起因しての信頼性向上を可能とする樹脂封止方法として、インジェクション成形などの成形による封止が期待される。しかしながら、生産サイクルの短縮のために、硬化性を高めて短時間での硬化を行うと、反応熱の蓄熱が起こりやすくなり、ボビン等の部品の熱による変形等が発生し、製品としての機能を発揮できなくなる場合があった。そこで、発熱による内部部品の変形等を発生させない程度に反応熱を抑え、かつ、生産サイクルの短縮化を可能とする短時間での硬化に対応できるインジェクション成形用の成形材料が求められる。
【0006】
本発明の目的は、モールドコイルのコイルへの樹脂の含浸性を確保しつつ、発熱による内部部品の変形等を発生させずに、ハイサイクルでの連続成形を可能とするインジェクション成形用エポキシ樹脂成形材料を提供することにある。また、本発明の別の目的は、高い信頼性を有するモールドコイルを低コストで製造することができるモールドコイルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)無機充填材及び(C)酸無水物系の硬化剤を含む樹脂組成物を混合及び/又は混練してなり、射出成形によりコイルを封入することによりモールドコイルを得ることができるエポキシ樹脂成形材料であって、下記式(2)で表わされる前記(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aが230g/eq以上であることを特徴とするエポキシ樹脂成形材料
【数2】

A:酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量
Aj:酸無水物jの酸無水物当量
WAj:酸無水物jの全酸無水物の重量分率
[2] 前記モールドコイルが最外部にケースを有しない構造であることを特徴とする[1]に記載のエポキシ樹脂成形材料。
[3]下記式(1)で表わされる前記(A)エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量Eが230g/eq以上であり、かつ、前記式(2)で表わされる前記(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aが230g/eq以上であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂成形材料。
【数1】

E:エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量
Ei:エポキシ樹脂iのエポキシ当量
WEi:エポキシ樹脂iの全エポキシ樹脂中の重量分率
[4] DSCにおける発熱量が90J/g以下であることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
[5] E型粘度計を用いて、温度60℃、1rpmの条件で測定した際の粘度が1Pa・s以上、100Pa・s以下の範囲内であることを特徴とする[1]から[4]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
[6] 120℃でのゲル化時間が60秒以上、300秒以下の範囲内であることを特
徴とする[1]から[5]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
[7] 150℃でのゲル化時間が15秒以上、100秒以下の範囲内であることを特徴とする[1]から[6]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
[8] 前記(B)無機充填材が、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク及びマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする[1]から[7]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
[9] 前記(B)無機充填材が、溶融シリカ、及び/又は結晶シリカであることを特徴とする[1]から[8]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
[10] 前記(B)無機充填材の配合量が、前記エポキシ樹脂成形材料全体の35体積%以上、70体積%以下であることを特徴とする[1]から[9]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
[11] 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の液状のエポキシ樹脂に、軟化点60℃以上、120℃以下の固形エポキシ樹脂を溶解させたエポキシ樹脂を含むことを特徴とする[1]から[10]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
[12] 前記(C)酸無水物系の硬化剤が、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする[1]から[11]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料。
[13] (a)コイルを収納したケースを金型キャビティ内に設置する工程、(b)射出成形機を用いて、[1]から[12]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料を前記ケース内に加圧注入して前記コイルを封入する工程、を有することを特徴とするモールドコイルの製造方法。
[14] (c)コイルを直接金型キャビティ内に設置する工程、(d)射出成形機を用いて、[2]から[12]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料を前記金型キャビティ内に加圧注入して前記コイルを封入する工程、を有することを特徴とする最外部にケースを有しないモールドコイルの製造方法。
[15] (a)磁気コア、一次コイル及び二次コイルを備えたイグニッションコイルを収納したケースを金型キャビティ内に設置する工程、(b)射出成形機を用いて、[1]から[12]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料を前記ケース内に加圧注入して前記イグニッションコイルを封入する工程、を有することを特徴とするモールドコイルの製造方法。
[16] (c)磁気コア、一次コイル及び二次コイルを備えたイグニッションコイルを直接金型キャビティ内に設置する工程、(d)射出成形機を用いて、[1]から[12]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂成形材料を前記金型キャビティ内に加圧注入して前記イグニッションコイルを封入する工程、を有することを特徴とする最外部にケースを有しないモールドコイルの製造方法
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、モールドコイルのコイルへの樹脂の含浸性を確保しつつ、発熱による内部部品の変形等を発生させずに、ハイサイクルでの連続成形を可能とするインジェクション成形用エポキシ樹脂成形材料を得ることができる。また、本発明に従うと、高い信頼性を有するモールドコイルを低コストで製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のエポキシ樹脂成形材料は、(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填材及び(C)酸無水物系の硬化剤を含む樹脂組成物を混合及び/又は混練してなり、射出成形によりコイルを封入することによりモールドコイルを得ることができるエポキシ樹脂成形材料であって、下記式(1)で表わされる(A)エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量Eが230g/eq以上であるか、又は、下記式(2)で表わされる(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aが230g/eq以上であることを特徴とする。
【数1】

E:エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量
Ei:エポキシ樹脂iのエポキシ当量
WEi:エポキシ樹脂iの全エポキシ樹脂中の重量分率
【数2】

A:酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量
Aj:酸無水物jの酸無水物当量
WAj:酸無水物jの全酸無水物の重量分率
これにより、モールドコイルのコイルへの樹脂の含浸性を確保しつつ、発熱による内部部品の変形等を発生させずに、ハイサイクルでの連続成形を可能とするエポキシ樹脂成形材料を得ることができる。また、本発明のモールドコイルの製造方法は、(a)コイルを収納したケースを金型キャビティ内に設置する工程、(b)射出成形機を用いて、上述のエポキシ樹脂成形材料をケース内に加圧注入してコイルを封入する工程、を有することを特徴とする。また、本発明の最外部にケースを有しないモールドコイルの製造方法は、(c)コイルを直接金型キャビティ内に設置する工程、(d)射出成形機を用いて、上述のエポキシ樹脂成形材料を金型キャビティ内に加圧注入してコイルを封入する工程、を有することを特徴とする。これらにより、高い信頼性を有するモールドコイルを低コストで製造することができるモールドコイルの製造方法を得ることができる。さらに、本発明のモールドコイルは、上述の(a)工程及び(b)工程を有する方法により得られることを特徴とする。また、本発明の最外部にケースを有しないモールドコイルは、上述の(c)工程及び(d)工程を有する方法により得られることを特徴とする。これらにより、高い信頼性を有するモールドコイルを得ることができる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
先ず、本発明のエポキシ樹脂成形材料について説明する。本発明のエポキシ樹脂成形材料は、(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填材及び(C)酸無水物系の硬化剤を含む樹脂組成物を混合及び/又は混練してなり、射出成形によりコイルを封入することによりモールドコイルを得ることができるエポキシ樹脂成形材料、より好ましくは、射出成形によりコイルを封入することにより最外部にケースを有しないモールドコイルを得ることができるエポキシ樹脂成形材料であって、上記式(1)で表わされる(A)エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量Eが230g/eq以上であるか、又は、上記式(2)で表わされる(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aが230g/eq以上であることが好ましい。さらに好ましくは、上記式(1)で表わされる(A)エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量Eが260g/eq以上であるか、又は、上記式(2)で表わされる(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aが260g/eq以上であることがさらに好ましい。見かけのエポキシ当量E、又は、見かけの酸無水物当量Aを上記の下限値以上とすることで、材料中の反応基の数を減らすことができるため、反応熱が少なくなり、結果としてボビン等の耐熱性の低い部品の変形を抑えることができる。また、生産性や特性の観点から、上記式(1)で表わされる(A)エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量Eの上限値については1000g/以下程度であることが望ましく、上記式(2)で表わされる(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aの上限値については500g/eq以下程度であることが望ましい。
【0011】
また、本発明のエポキシ樹脂成形材料は、上記式(1)で表わされる(A)エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量Eが230g/eq以上であり、かつ、上記式(2)で表わされる(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aが230g/eq以上であることがより好ましく、上記式(1)で表わされる(A)エポキシ樹脂全体の見かけ
のエポキシ当量Eが260g/eq以上であり、かつ、上記式(2)で表わされる(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aが260g/eq以上であることが特に好ましい。見かけのエポキシ当量E及び見かけの酸無水物当量Aを共に上記の下限値以上とすることで、材料中の反応基の数をさらに減らすことができるため、反応熱がさらに少なくなり、結果としてボビン等の耐熱性の低い部品の変形をより確実に抑えることができる。また、上記式(1)で表わされる(A)エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量Eの上限値、及び上記式(2)で表わされる(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aの上限値については、特に限定されないが、生産性や特性の観点から、上記式(1)で表わされる(A)エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量Eの上限値が1000g/eq以下程度であり、かつ、上記式(2)で表わされる(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aの上限値が500g/eq以下程度であることが望ましい。
【0012】
本発明のエポキシ樹脂成形材料は、DSCにおける発熱量が90J/g以下であることが好ましく、70J/g以下であることがさらに好ましい。DSCにおける発熱量を上記の上限値以下とすることで、ボビン等の耐熱性の低い部品の変形を抑えることができる。
【0013】
また、本発明のエポキシ樹脂成形材料は、E型粘度計を用いて、温度60℃、1rpmの条件で測定した際の粘度が1Pa・s以上、100Pa・s以下の範囲内であることが好ましく、2Pa・s以上、50Pa・s以下の範囲内であることがさらに好ましい。粘度を上記下限値以上することで成形時のバリの発生を抑制する効果を得ることができる。また、上記上限値以下とすることで、コイルへの樹脂の含浸性を向上させる効果を得ることができる。
【0014】
また、本発明のエポキシ樹脂成形材料は、120℃でのゲル化時間が60秒以上、300秒以下の範囲内であることが好ましく、90秒以上、270秒以下であることがさらに好ましい。ゲル化時間を上記下限値以上とすることで、コイルへの樹脂の含浸性を向上させる効果を得ることができる。また、ゲル化時間を上記上限値以下とすることで、バリの発生を抑制する効果を得ることができる。また、ゲル化時間を上記上限値以下とすることで、生産サイクルを短縮する効果を得ることができる。
【0015】
また、本発明のエポキシ樹脂成形材料は、150℃でのゲル化時間が15秒以上、100秒以下の範囲内であることが好ましく、25秒以上、80秒以下であることがさらに好ましい。ゲル化時間を上記下限値以上とすることで、コイルへの樹脂の含浸性を向上させる効果を得ることができる。また、ゲル化時間を上記上限値以下とすることで、バリの発生を抑制する効果を得ることができる。また、ゲル化時間を上記上限値以下とすることで、生産サイクルを短縮する効果を得ることができる。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂成形材料に用いられる(A)エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよく、特に限定するものではないが、エポキシ樹脂全体の上記式(1)で算出される見かけのエポキシ当量Eが230g/eq以上となるようなエポキシ樹脂を用いることが好ましく、260g/eq以上となるようなエポキシ樹脂を用いることがさらに好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、EP−4000(ADEKA社製、エポキシ当量320g/eq)、EP−4005(ADEKA社製、エポキシ当量510g/eq)、EP−7001(ADEKDA社製、エポキシ当量700g/eq)、jER871(三菱化学社製、エポキシ当量430g/eq)、YD−134(新日鉄住金化社製、エポキシ当量250g/eq)等が挙げられ、これらを単独又は2種を混合して使用することができる。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の液状のエポキシ樹脂に、固形エポキシ樹脂を溶解させたエポキ
シ樹脂を使用することもできる。液状のエポキシ樹脂に固形のエポキシ樹脂を溶解させたエポキシ樹脂を用いることにより、エポキシ樹脂成形材料の粘度が適正な範囲となることでコイルへの樹脂の含浸性を損なうことなく、エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量Eを高めることができる。
【0017】
液状のエポキシ樹脂に固形のエポキシ樹脂を溶解させたエポキシ樹脂を用いる場合、E型粘度計で測定した粘度を上述の範囲とする観点では、液状のエポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であることが好ましい。また、固形エポキシ樹脂の軟化点は60℃以上、120℃以下であることが好ましく、65℃以上、100℃以下であることがさらに好ましい。上記下限値以上とすることで、見かけのエポキシ当量Eを大きくする効果が得ることができる。また、上記上限値以下とすることで、溶解後の粘度を低下させることができる。このような固形エポキシ樹脂としては、例えば、jER1001(三菱化学社製、エポキシ当量475g/eq、軟化点64℃)、jER1002(三菱化学社製、エポキシ当量660g/eq、軟化点78℃)、jER1003(三菱化学社製、エポキシ当量755g/eq、軟化点89℃)、jER1004(三菱化学社製、エポキシ当量925g/eq、軟化点97℃)、YD−901(新日鉄住化社製、エポキシ当量475g/eq、軟化点70℃)、YD−902(新日鉄住化社製、エポキシ当量650g/eq、軟化点87℃)、YD−904(新日鉄住化社製、エポキシ当量950g/eq、軟化点102℃)等が挙げられ、これらを単独又は2種を混合して使用することができる。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂成形材料に用いられる(B)無機充填材の種類としては、特に限定するものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカなどが挙げられ、これらを単独又は2種以上混合して使用できる。これらの中でも、成形材料の流動性の観点から、溶融シリカ、及び/又は結晶シリカが特に好ましい。
【0019】
(B)無機充填材の配合量としては、特に限定するものではないが、エポキシ樹脂成形材料全体の35体積%以上、70体積%以下であることが好ましく、40体積%以上、65体積%以下であることがより好ましい。上記下限値以上とすることで、高粘度化するため、結果として、射出成形時のバリを抑制する効果を得ることができる。また、上記上限値以下とすることで、材料の流動性が低下することなく、良好な充填性を得ることができる。
【0020】
用いられる(C)酸無水物系の硬化剤としては、特に限定するものではないが、上述の(A)エポキシ樹脂と反応し、硬化させ得るものであれば使用することができる。具体的には、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸及びこれらの誘導体などの酸無水物が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても良く、2種を混合して使用しても良い。本発明では、なかでもコイルへの樹脂の含浸性が良好となるため、液状かつ低粘度である酸無水物が好ましく、特に、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸及びこれらの誘導体などの酸無水物の使用が好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、ジシアンジアミド、イミダゾール、ルイス酸のアミン錯体などを併用してもよい。(C)硬化剤の配合量としては、特に限定するものではないが、(A)エポキシ樹脂の全エポキシ数と、(C)硬化剤の全官能基数の比率で、0.6以上、1.4以下であることが好ましく、0.8以上、1.2以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることで、硬化性を適切な範囲とすることが容易となる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂成形材料に用いられる(C)酸無水物系の硬化剤は、(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aが230g/eq以上となるよう酸無水物を用いることが好ましく、260g/eq以上となるような酸無水物を用いることがさらに好ましい。上記下限値以上とすることで、発熱量を小さくできるため、結果として樹脂の発熱を抑えることができる。このような酸無水物として、具体的には、YH−306(三菱化学社製、酸無水物当量:234g/eq)、DSA(三洋化成工業社製、酸無水物当量:266g/eq)、リカシッドHF−08(新日本理化社製、酸無水物当量:約330g/eq)、などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても良く、上記酸無水物と混合して使用してもよい。
【0022】
さらに、本発明のエポキシ樹脂成形材料には、以上の成分の他、必要に応じて硬化促進剤を配合してもよい。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進する作用を有するものであれば使用することができる。具体的には、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、などのイミダゾール化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5などのジアザビシクロアルケン及びその誘導体、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどホスフィン類などが挙げられ、これらを単独又は2種以上を混合して使用することができる。硬化促進剤の配合量としては、特に限定するものではないが、(C)酸無水物系硬化剤100質量部に対して、1質量部以上、18質量部以下であることが好ましく、3.5質量部以上、12質量部以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることで、硬化性、粘度等を適切な範囲とすることが容易となる。
【0023】
さらに、本発明のエポキシ樹脂成形材料には、必要に応じて、カップリング剤、沈降防止剤、カーボンブラックなどの着色剤、消泡剤などを配合することができる。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂成形材料は、主剤成分と硬化剤成分からなるエポキシ樹脂組成物を混合及び/又は混練して得ることができる。例えば、主剤成分は(A)エポキシ樹脂に、(B)無機充填材の一部、及び必要に応じて配合される各種成分を混合して製造することができ、硬化剤成分は(C)硬化剤に、(B)無機充填材の残余、硬化促進剤、及び必要に応じて配合される各種成分を混合して製造することができる。主剤成分、及び硬化剤成分はミキサーなどの混合機、及び/又は、ニーダ、ロールなどの混練機により混合及び/又は混練することによりエポキシ樹脂成形材料を得ることができる。
【0025】
次に、本発明のモールドコイルの製造方法について説明する。本発明のモールドコイルは、(a)磁気コア、一次コイル及び二次コイルを組み立てたイグニッションコイルなどのコイルを収納したケースを金型キャビティ内に設置する工程、(b)射出成形機を用いて、上述のエポキシ樹脂成形材料を前記ケース内に加圧注入してイグニッションコイルなどのコイルを封入する工程を経て、製造することができる。また、本発明の最外部にケースを有しないモールドコイルは、(c)磁気コア、一次コイル及び二次コイルを組み立てたイグニッションコイルなどのコイルを直接金型キャビティ内に設置する工程、(d)射出成形機を用いて、上述のエポキシ樹脂成形材料を金型キャビティ内に加圧注入してイグニッションコイルなどのコイルを封入する工程を経て、製造することができる。部品点数
削減による低コスト化という観点からは、最外部にケースを有しないモールコイル及びその製造方法がより好ましい。また、射出成形機を用いて本発明のエポキシ樹脂成形材料で成形封止する本発明のモールドコイルの製造方法では、発熱による部品変形等を発生させることなく、金型キャビティの形状及び封入されるコイルの形状などによって変動はあるものの、およそ、60秒〜360秒という短時間の生産サイクルでの連続生産が可能となり、240分〜600分という長時間の生産サイクルでしか生産ができなかった従来の注入封止に対して、大幅な生産性向上が図れることとなる。このように、射出成形機を用いて本発明のエポキシ樹脂成形材料で成形封止する本発明の製造方法によりモールドコイルを製造することで、高い信頼性を有するモールドコイルを低コストで製造することができるものである。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例及び比較例において用いた各原材料は以下のとおりである。
(A)エポキシ樹脂
(1)液状エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ダウケミカル日本社製、DER−331J、エポキシ当量186g/eq)
(2)液状エポキシ樹脂2:液状エポキシ樹脂(ADEKA製、EP−4000、エポキシ当量320g/eq)
(3)固形エポキシ樹脂3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER1002、エポキシ当量660g/eq、軟化点78℃)
(4)固形エポキシ樹脂4:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER1007、エポキシ当量2000g/eq、軟化点128℃)
(B)無機充填材
(5)無機充填材1:溶融球状シリカ(電気化学工業社製、FB−950)
(6)無機充填材2:結晶シリカ(福島窯業社製、シリカパウダーM)
(7)無機充填材3:アルミナ(電気化学工業社製、DAM−45)
(C)硬化剤
(8)酸無水物系硬化剤1:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成工業社製、HN−5500、酸無水物当量168g/eq)
(9)酸無水物系硬化剤2:アルキル変性テトラヒドロ無水フタル酸(三菱化学社製、YH−306、酸無水物当量234g/eq)
(10)酸無水物系硬化剤3:ドデセニルコハク酸無水物(三洋化成工業製、DSA、酸無水物当量266g/eq)
その他の成分
(11)硬化促進剤1:N、N−ジメチルベンジルアミン(花王社製、カオライザーNO.20)
(12)カップリング剤1:エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー社製、A187)
(13)消泡剤1:シリコーン消泡剤(信越化学工業社製、KS−603)
(14)チキソ付与材1:有機化クレイ(エレメンティス社製、ベントンSD−2)
【0028】
実験例1〜3、実施例4〜6、実験例7〜10、比較例1、2)
液状エポキシ樹脂1、2、固形エポキシ樹脂3、4、無機充填材1〜3、酸無水物系硬化剤1〜3、硬化促進剤1、カップリング剤1、消泡剤1、チキソ付与材1を、表1に示す配合割合で、スリーワン モーター(新東科学社製、BL1200Ft)を用いて、室
温(25℃)で10分間均一に混合し、エポキシ樹脂成形材料を得た。
【0029】
(エポキシ樹脂成形材料としての特性評価)
実施例、比較例において作製したエポキシ樹脂成形材料としての粘度、硬化性、発熱量、曲げ弾性率を以下に示す方法で評価した。評価結果を表1に示した。
(粘度)
エポキシ樹脂成形材料の粘度として、E型粘度計(東機産業製)を用い、ロータの型式は3度コーンを用い、粘度測定温度は60℃、コーンの回転数は1rpmとして、測定した。
【0030】
(硬化性)
エポキシ樹脂成形材料の硬化性を示すパラメーターとして、「JIS C 2105 電気絶縁用無溶剤液状レジン試験方法」に記載された「ゲル化時間」に準じて、120℃及び150℃の熱板上でのゲル化時間を測定した。
【0031】
(発熱量)
エポキシ樹脂成形材料の発熱量を示すパラメーターとして、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製 DSC−6100)を用い、昇温速度を10℃/minで、30℃から250℃まで加熱し、発熱量を測定した。
【0032】
(コイル封止における成形性評価)
実施例、比較例において作製したエポキシ樹脂成形材料を用いて、射出成形機を用いて、連続でコイルを封止成形した際の成形性について、以下に示す方法で評価した。評価結果を表1に示した。
【0033】
(コイルの封止成形1)
コイル(巻線径45μm、巻数4000)を収納したPPS製のケースを射出成形用金型のキャビティ内(40mm×40mm×高さ30mm)に配置し、減圧したPPS製のケース内にエポキシ樹脂成形材料を射出圧力3.5MPaで射出成形した。120℃、6分間硬化させた後、金型から取出した。
(コイルの封止成形2)
コイル(巻線径45μm、巻数4000)を射出成形用金型のキャビティ内(40mm×40mm×高さ30mm)に配置し、減圧した金型キャビティ内にエポキシ樹脂成形材料を射出圧力3.5MPaで射出成形した。120℃、6分間硬化させた後、金型から取出した。
【0034】
(ボイド発生の有無)
コイルを封止成形した成形品(モールドコイル)の外観、モールドコイルの切断面を目視観察することにより、ボイド発生の有無を評価した。
【0035】
(ボビン変形)
モールドコイル切断面を目視観察することにより、ボビン変形の有無を評価した。
【0036】
(コイルへの樹脂の含浸性)
モールドコイルの切断面を研磨し、コイルの最深部に樹脂が含浸しているかを顕微鏡で観察することで、コイルへの樹脂の含浸性を評価した。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例4〜6で作製したエポキシ樹脂成形材料は、本発明のエポキシ樹脂成形材料であり、コイルへの樹脂の含浸性も良好であり、ボイドは見られず、ボビン変形は見られなかった。一方、(A)エポキシ樹脂全体の見かけのエポキシ当量E、及び(C)酸無水物系の硬化剤全体の見かけの酸無水物当量Aがともに230g/eqを下回る、比較例1、2のエポキシ樹脂成形材料では、ボイドは見られず、コイルへの樹脂の含浸性も良好であったが、ボビン変形が発生する結果となった。したがって、本発明のエポキシ樹脂成形材料を用いることで、ボビン変形をさせずにコイル含浸性を両立できることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に従うと、モールドコイルのコイルへの樹脂の含浸性を確保しつつ、発熱による内部部品の変形等を発生させずに、ハイサイクルでの連続成形を可能とするインジェクション成形用エポキシ樹脂成形材料を得ることができ、高い信頼性を有するモールドコイルを低コストで製造することができるため、例えば自動車用のイグニッションコイルの製造に有用である。