特許第6213359号(P6213359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6213359ドライブレコーダ及びドライブレコーダにおける加速度補正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6213359
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】ドライブレコーダ及びドライブレコーダにおける加速度補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20171005BHJP
   G01P 21/00 20060101ALI20171005BHJP
【FI】
   G07C5/00 Z
   G01P21/00
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-84587(P2014-84587)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-204062(P2015-204062A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯野 靖文
(72)【発明者】
【氏名】菅野 泰成
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 拡基
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−286278(JP,A)
【文献】 特開2008−32661(JP,A)
【文献】 特開2007−311904(JP,A)
【文献】 特開2012−222736(JP,A)
【文献】 特開2013−196387(JP,A)
【文献】 特開2014−52977(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/045344(WO,A1)
【文献】 特開平7−77431(JP,A)
【文献】 特開平7−162846(JP,A)
【文献】 特開2002−259995(JP,A)
【文献】 特開2002−197469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00− 5/12
G01P21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置され、車両の前方を撮影するカメラ(2)と、前記カメラ(2)に対して固定的な位置に設置され該車両に作用する加速度を検出する加速度センサ(3)とを備え、前記加速度センサ(3)の検出加速度に基づいて前記カメラ(2)による撮影画像を記録するドライブレコーダ(1)であって、
前記カメラ(2)による撮影画像から、前記加速度センサ(3)の設置角度のずれ量を算出するずれ量算出手段(11、12)と、
前記ずれ量算出手段(11、12)の算出に基づいて、前記加速度センサ(3)の検出値を補正する補正手段(13、14)とを備えると共に、
前記ずれ量算出手段(11、12)は、前記カメラ(2)による撮影画像を取込み、当該画像の画像処理により一点透視図法を用いて消失点及び水平線を検出し、それら消失点及び水平線の理想状態との差異を求めることに基づいて、前記加速度センサ(3)の設置角度の、X軸回りのピッチ角、Y軸回りのロール角、Z軸回りのヨー角のずれ量を算出することを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項2】
前記ずれ量算出手段(11、12)は、画像中の道路構造物や道路標示、建造物のエッジ検出を用い、画像から前後方向に所定長さ以上に真直ぐに延びる平行線並びに垂直方向に所定長さ以上に真直ぐに延びる線を抽出することに基づいて、消失点及び水平線を検出することを特徴とする請求項1記載のドライブレコーダ。
【請求項3】
前記ずれ量算出手段(11、12)の算出したずれ量が、しきい値を越えて大きい場合には、その旨を報知する報知手段(5)を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のドライブレコーダ。
【請求項4】
前記ずれ量算出手段(11、12)によるずれ量の算出ができない場合には、前記補正手段(13、14)は、前回に算出したずれ量を用いて前記加速度センサ(3)の検出値の補正を行う、或いは、検出値を補正せずそのまま用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のドライブレコーダ。
【請求項5】
前記ずれ量算出手段(11、12)によるずれ量の算出は、装置(1)の起動時に実行されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のドライブレコーダ。
【請求項6】
前記ずれ量算出手段(11、12)によるずれ量の算出は、車両の走行時に定期的に実行されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のドライブレコーダ。
【請求項7】
前記ずれ量算出手段(11、12)によるずれ量の算出は、車両が平坦な道路を一定速度で直進走行している加速度変化の変動のない状態で実行されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のドライブレコーダ。
【請求項8】
持運び可能な本体に前記カメラ(2)及び加速度センサ(3)を組込んで構成され、前記車両に対して着脱可能に設置されるこことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のドライブレコーダ。
【請求項9】
車両に設置され、車両の前方を撮影するカメラ(2)と、前記カメラ(2)に対して固定位置に設置され該車両に作用する加速度を検出する加速度センサ(3)とを備えたドライブレコーダ(1)に組込まれ、前記加速度センサ(3)の検出加速度に基づいて前記カメラ(2)による撮影画像を記録する動作を実行するコンピュータ(6)に、前記加速度センサ(3)の検出加速度の補正処理を実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記コンピュータ(6)に、
前記カメラ(2)による撮影画像から、前記加速度センサ(3)の設置角度のずれ量を算出するずれ量算出ルーチンと、
前記ずれ量算出ルーチンの算出結果に基づいて、前記加速度センサ(3)の検出値を補正する補正ルーチンとを実行させると共に、
前記ずれ量算出ルーチンにおいては、前記カメラ(2)による撮影画像を取込み、当該画像の画像処理により一点透視図法を用いて消失点及び水平線を検出し、それら消失点及び水平線の理想状態との差異を求めることに基づいて、前記加速度センサ(3)の設置角度の、X軸回りのピッチ角、Y軸回りのロール角、Z軸回りのヨー角のずれ量を算出することを特徴とするドライブレコーダにおける加速度補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前方を撮影するカメラと該車両に作用する加速度を検出する加速度センサとを備えたドライブレコーダ及びドライブレコーダにおける加速度補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両(自動車)においては、衝突事故等の発生時の車両周囲の画像データ(音声データを含む)を記録しておき、事故解析等に役立たせるためのドライブレコーダが供されてきている(例えば特許文献1、2参照)。この種のドライブレコーダは、例えば車両の前方を撮影するカメラと、車両に作用する加速度を検出するための加速度センサと、画像データを記憶するメモリ部と、全体を制御する制御部(コンピュータ)とを備えている。そして、前記加速度センサが設定値以上の加速度を検出した(車両に大きな衝撃があった)ときに、前記カメラが撮影した画像データが、その検出前後の一定時間についてメモリ部に保存されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−134803号公報
【特許文献2】特開2008−32661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ドライブレコーダ用の加速度センサは、例えば、車両の左右(X軸)方向、前後(Y軸)方向、上下(Z軸)方向の三軸方向についての加速度を検出するものとなっている。そのため、ドライブレコーダを車両に設置するにあたっては、加速度センサの検出軸を、車両の左右、前後、上下の方向と一致させる必要がある。ところが、ドライブレコーダ(加速度センサ)の設置の際に、方向の精度が不十分であったり、設置後に運転中の振動などにより加速度センサがずれ動いたりすることがある。加速度センサの設置角度にずれが生じていると、正確な加速度が検出できず、検出加速度が実際よりも小さい或いは大きい値となり、ひいては適切なタイミングで画像データを記録できなくなる問題が生ずる。また、ドライブレコーダを利用する際に、都度設置する場合には設置のたびにずれ方も異なってくる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、加速度センサの設置角度に、理想の状態からのずれが生じていても、車両に作用する加速度を正確に検出することができるドライブレコーダ及びドライブレコーダにおける加速度補正プログラムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のドライブレコーダ(1)は、車両に設置され、車両の前方を撮影するカメラ(2)と、前記カメラ(2)に対して固定的な位置に設置され該車両に作用する加速度を検出する加速度センサ(3)とを備え、前記加速度センサ(3)の検出加速度に基づいて前記カメラ(2)による撮影画像を記録するものであって、前記カメラ(2)による撮影画像から、前記加速度センサ(3)の設置角度のずれ量を算出するずれ量算出手段(11、12)と、前記ずれ量算出手段(11、12)の算出に基づいて、前記加速度センサ(3)の検出値を補正する補正手段(13、14)とを備えると共に、前記ずれ量算出手段(11、12)は、前記カメラ(2)による撮影画像を取込み、当該画像の画像処理により一点透視図法を用いて消失点及び水平線を検出し、それら消失点及び水平線の理想状態との差異を求めることに基づいて、前記加速度センサ(3)の設置角度の、X軸回りのピッチ角、Y軸回りのロール角、Z軸回りのヨー角のずれ量を算出するところに特徴を有する。
【0007】
この種のドライブレコーダは、1つのユニット(本体)内に、カメラや加速度センサ、制御装置などが一体的に組付けられていることが一般的であり、カメラに対して、加速度センサが固定的な位置(角度)に設置されている。また、近年、ドライブレコーダ専用機ではない、例えばスマートフォン等の携帯型の情報端末装置を、車内に持込んでドライブレコーダとして使用することも考えられている。この場合も、情報端末装置の本体内に、カメラや加速度センサが固定的な位置関係に組込まれており、例えば、カメラの光軸方向と、加速度センサの前後軸(Y軸)方向とが一致している。
【0008】
上記構成によれば、カメラ(2)に対して加速度センサ(3)が固定的な位置に設置されているため、仮に加速度センサ(3)の設置角度(各検出軸の方向)に理想状態からのずれが生じていると、カメラ(2)による撮影画像(視野)にも理想状態からのずれが発生している。このことを利用して、カメラ(2)による撮影画像から、ずれ量算出手段(11、12)により、加速度センサ(3)の設置角度のずれ量を算出することができる。そして、前記ずれ量算出手段(11、12)の算出に基づいて、補正手段(13、14)により、加速度センサ(3)の検出値を補正することができる。
【0009】
従って、加速度センサ(3)の設置角度に、理想の状態からのずれが生じていても、車両に作用する加速度を正確に検出することができ、ひいては、ドライブレコーダ(1)としての適切な動作が可能となる。このとき、元々備えられているカメラ(2)の撮影画像から、画像処理に基づいて設置角度のずれ量を求めるものであるから、別途に装置等を付加することなく、容易に実現することができる。また、上記のように、スマートフォン等の携帯型の情報端末装置を、車内に持込んでドライブレコーダとして使用する場合には、本体の設置位置(角度)が毎回変動することも考えられるが、そのような場合でも、常に加速度を正しく検出することができ、極めて有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例を示すものであり、ドライブレコーダの電気的構成を概略的に示すブロック図
図2】制御装置の実行する加速度補正の処理手順を示すフローチャート
図3】画面に対する消失点及び水平線の位置の例を示す図(その1)
図4】画面に対する消失点及び水平線の位置の例を示す図(その2)
図5】画面に対する消失点及び水平線の位置の例を示す図(その3)
図6】画面に対する消失点及び水平線の位置の例を示す図(その4)
図7】画面に対する消失点及び水平線の位置の例を示す図(その5)
図8】画面に対する消失点及び水平線の位置の例を示す図(その6)
図9】画面に対する消失点及び水平線の位置の例を示す図(その7)
図10】画面に対する消失点及び水平線の位置の例を示す図(その8)
図11】カメラによる撮影画像の例を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施例に係るドライブレコーダ1の電気的構成を示している。このドライブレコーダ1は、車両の前方を撮影するカメラ2、車両に作用する加速度を検出する加速度センサ3、前記カメラ2の撮影画像(画像データ及び音声データ)を記録するメモリ部4、表示部や操作部、ブザー等を有するHMI部5、それらが接続された制御装置6を備えて構成されている。前記加速度センサ3は、例えば周知の半導体加速度センサからなり、車両の左右(X軸)方向、前後(Y軸)方向、上下(Z軸)方向の直交する3軸方向の加速度を検出するようになっている。
【0012】
詳しく図示はしないが、このドライブレコーダ1は、本体ケース内に各部品を組込んでユニット化され、例えば、車室内のフロントガラスの上部中央部部分に取付けられる。このとき、前記加速度センサ3は、前記カメラ2に対し固定的な位置に取付けられており、カメラ2の光軸が、加速度センサ3のY軸方向(図3等参照)に一致するように設けられている。このドライブレコーダ1は、前記カメラ2のレンズ(光軸)が、水平方向に真直ぐ前方(進行方向)を向くように、車室内に設置される。この状態が理想状態であり、加速度センサ3のX軸が車両の左右方向に一致し、加速度センサ3のY軸が車両の前後方向に一致し、加速度センサ3のZ軸が上下方向(重力加速度方向)と一致する。
【0013】
前記制御装置6は、CPU、ROM及びRAM等を有するコンピュータを主体として構成され、そのソフトウエア的構成(制御プログラムの実行)により、ドライブレコーダ1の動作全般を制御する。具体的には、ドライブレコーダ1の電源オン時(車両のエンジン動作時)には、制御装置6は、カメラ2により、車両前方の撮影動作を実行させ、その撮影画像データを、最新の所定時間(例えば30秒)分に関して、常時前記メモリ部4に記憶させるようになっている。従って、メモリ部4においては、所定時間(例えば30秒)が経過した画像データが順次除去されていく。
【0014】
このとき、制御装置6は、常に加速度センサ3の検出信号を監視し、加速度センサ3の検出値がしきい値を越えた場合、つまり車両に所定以上の大きな衝撃があったときに、その時点の前後一定時間分に跨るカメラ2の撮影画像データを、メモリ部4の不揮発性領域に保存するようになっている。
【0015】
尚、前記制御装置6は、例えばCAN等の車内LAN7を介して、車両に設置された各種ECU8に接続されている。これにより、制御装置6には、例えば、ナビゲーション装置(GPS装置)により検出された自車両の現在位置及び現在時刻、車両の速度、アクセル開度、ステアリング操作量、ブレーキ量等の車両の状況を示す各種データが入力されるようになっている。
【0016】
さて、本実施例では、前記制御装置6は、加速度センサ3の検出加速度の補正処理のプログラムの実行により、前記カメラ2による撮影画像から、加速度センサ3の設置角度の理想状態からのずれ量を算出するずれ量算出ルーチンと、ずれ量算出ルーチンの算出結果に基づいて加速度センサ3の検出値を補正する補正ルーチンとを実行する。尚、本実施例では、上記ずれ量算出の処理ルーチンは、ドライブレコーダ1の電源オン状態(車両の走行状態)で、常時(定期的に)実行されるようになっている。
【0017】
より具体的には、詳しくは後の作用説明(フローチャート説明)にて述べるように、ずれ量算出ルーチンにおいては、カメラ2による撮影画像Iから消失点V及び水平線H(図3図9参照)を検出する処理、及び、それら消失点V及び水平線Hの理想状態との差異を求めることに基づいて加速度センサ3の設置角度のずれ量を算出する処理が実行される。また、前記補正ルーチンにおいては、上記算出されたずれ量に基づいて、加速度センサ3の検出値を補正するための補正パラメータを算出する処理、及び、その補正パラメータを用いて加速度センサ3の実際の検出値を補正する処理が実行される。上記した加速度センサ3の検出値としきい値との比較は、補正後の値で行われる。
【0018】
従って、図1に示すように、制御装置6は、カメラ2による撮影画像Iから消失点V及び水平線Hを検出する消失点/水平線算出部11、加速度センサ3の設置角度のずれ量を算出するずれ量算出部12、加速度センサ3の検出値補正用の補正パラメータを算出する補正パラメータ算出部13、その補正パラメータに基づいて加速度センサ3の検出値を補正する加速度補正部14を備えている。消失点/水平線算出部11及びずれ量算出部12がずれ量算出手段として機能し、前記補正パラメータ算出部13及び加速度補正部14が補正手段として機能する。
【0019】
特に本実施例では、上記した消失点/水平線算出部11による、撮影画像Iから消失点V及び水平線Hを検出する画像処理においては、周知の一点透視図法を用いて行われる。このとき、前記消失点/水平線算出部11は、画像中の道路構造物や道路標示、建造物のエッジ検出を用い、画像から前後方向に所定長さ以上に真直ぐに延びる平行線並びに垂直方向に所定長さ以上に真直ぐに延びる線を抽出することに基づいて、消失点V及び水平線Hを検出する。
【0020】
図11は、カメラ2により、車両の進行方向前方を撮影した撮影画像Iの一例を示している。このような画像中には、例えば、道路の境界線、中央線、横断歩道、歩道の縁石、ガードレール、フェンスの上下の縁部、ビル等の建物の外壁の側縁や上部の縁部、垂直に立つ支柱などが存在する。このような画像中の建造物などのエッジ検出から、前後方向に延びる複数本の線(平行線)や、垂直線を抽出することができる。そして、複数本の平行線が収束する点を求め消失点Vを検出することができ、また、前記消失点Vを通り垂直線に直角な線を引くことにより水平線Hを検出することができる。
【0021】
ここで、後の作用説明でも述べるように、水平線Hが理想位置から上下方向に平行にずれていれば、カメラ2が理想状態よりも上方又は下方に向いているということができ、加速度センサ3のピッチ角θのずれ(X軸回りのずれ)を計算することができる。また、水平線Hが理想位置から左右方向に傾いている場合には、カメラ2が車両の進行方向に対して左右に傾いているということができ、加速度センサ3のロール角φのずれ(Y軸回りのずれ)を計算することができる。更に、消失点Vが、水平線Hの中心から左右どちらかに位置している場合には、カメラ2が上下軸に対して右又は左に向いているということができ、加速度センサ3のヨー角ψのずれ(Z軸回りのずれ)を計算することができる。
【0022】
また、本実施例では、制御装置6は、前記ずれ量算出部12の算出したずれ量が、しきい値を越えて大きい場合、例えば消失点Vや水平線Hの左右の端部が画面Iから外れるような場合には、加速度センサ3の設置角度のずれ量が、検出値の補正では間に合わない程度に大きいと判断する。このときには、設置角度のずれが異常に大きい旨を、HMI部5の表示(LEDによる表示)や、ブザーの鳴動などにより報知するようになっており、報知手段が構成される。
【0023】
このとき、本実施例では、前記ずれ量算出部12によるずれ量の算出ができない場合(消失点/水平線算出部11により消失点V及び水平線Hが検出できない場合)には、前記加速度補正部14は、前回に算出したずれ量(補正パラメータ)を用いて加速度センサ3の検出値の補正を行うようになっている。或いは、ずれ量算出部12によるずれ量の算出ができなかった場合には、加速度センサ3の検出値の補正を行わず、そのままの数値を用いるようにしても良い。
【0024】
尚、本実施例では、上記ずれ量算出の処理ルーチンは、ドライブレコーダ1の電源オン状態(車両の走行状態)で、常時(定期的、例えば1分間隔で)実行されるようになっている。また、ずれ量算出の処理ルーチン(画像Iからの消失点V及び水平線Hの検出の処理)は、加速度センサ3の検出や、車速センサ、ステアリングセンサ等の検出に基づき、車両が平坦な道路を一定速度で直進走行している状態、つまり、右左折(カーブの走行)時、加速時、減速時、坂道走行時などを避け、車両の加速度変化の変動のない状態で実行されるようになっている。
【0025】
次に、上記構成のドライブレコーダ1の作用について、図2図10も参照して述べる。まず、図3図10を参照して、カメラ2による撮影画像Iにおける、消失点V及び水平線Hの位置と、加速度センサ3の設置角度ひいてはドライブレコーダ1の本体の車両への取付角度のずれとの関係について述べる。尚、図3図10に示す撮影画像Iにおいては、画像領域の四隅を、左上から時計回り順に点A、B、C、Dとしている。また、水平線Hが、辺ADと交わる点を点Eとし、辺BCと交わる点を点Fとする。
【0026】
図3は、理想状態つまり加速度センサ3の設置角度にずれがない場合の画像Iにおける消失点V及び水平線Hの位置の例を示している。上記したように、前記カメラ2のレンズ(光軸)が、水平方向に真直ぐ前方を向いている。このようなカメラ2(ひいては加速度センサ3)にずれのない理想状態においては、水平線Hは、画面Iの上下方向中央部に検出され、消失点Vは、水平線Hの中心(画面Iの中心)に検出される。従って、各点間を結ぶ線分の長さが、AE=ED、且つ、BF=FC、且つ、AE=BFであり、更に、EV=VFである場合には、加速度センサ3の設置角度にずれがない理想状態と判断され、補正値(パラメータ)は全て0となる。
【0027】
図4は、前記カメラ2(本体)が進行方向に対して上向きに設置されている(X軸周りのピッチ角θにずれがある)場合の例を示している。このときには、水平線Hは、画面Iの中央よりも下部に水平に検出され、消失点Vは、水平線Hの中心に検出される。従って、AE>ED、且つ、BF>FC、且つ、AE=BFであり、更に、EV=VFである場合には、加速度センサ3の設置状態が、ピッチ角θ方向にずれがあると判断される。この場合、ずれ角度θに応じて、Y軸方向及びZ軸方向の夫々についての加速度検出値の補正を行うためのパラメータ(cosθ分の補正値)が算出される。前記カメラ2が進行方向に対して下向きに設置されている場合も同様に算出できる。
【0028】
図5は、前記カメラ2(本体)が進行方向に対して右に傾いて設置されている(Y軸周りのロール角φにずれがある)場合の例を示している。このときには、消失点Vは、画面I(水平線H)の中心に検出され、水平線Hは、画面I内に水平から左に下降傾斜して検出される。従って、(AE/AD)>(BF/BC)、且つ、AE=FCであり、更に、EV=VFである場合には、加速度センサ3の設置状態が、ロール角φ方向にずれがあると判断される。この場合、ずれ角度φに応じて、X軸方向及びZ軸方向の夫々についての加速度検出値の補正を行うためのパラメータ(cosφ分の補正値)が算出される。前記カメラ2が左に傾いて設置されている場合も同様に算出できる。
【0029】
図6は、前記カメラ2(本体)が進行方向に対して左を向いて設置されている(Z軸周りのヨー角ψにずれがある)場合の例を示している。このときには、水平線Hは、画面Iの上下方向中央部に検出され、消失点Vは、水平線H上の中心よりも右寄り部分に検出される。従って、AE=ED、且つ、BF=FC、且つ、AE=BFであり、更に、EV>VFの場合には、加速度センサ3の設置状態が、ヨー角ψ方向にずれがあると判断される。この場合、ずれ角度ψに応じて、X軸方向及びY軸方向の夫々についての加速度検出値の補正を行うためのパラメータ(cosψ分の補正値)が算出される。前記カメラ2が右を向いて設置されている場合も同様に算出できる。
【0030】
図7は、前記カメラ2(本体)が進行方向に対して左上を向いて設置されている(X軸周りのピッチ角θ及びZ軸周りのヨー角ψの双方にずれがある)場合の例を示している。このときには、水平線Hは、画面Iの上下方向中央よりも下方に水平に検出され、消失点Vは、水平線H上の中心よりも右寄り部分に検出される。従って、AE>ED、且つ、BF>FC、且つ、AE=BFであり、更に、EV>VFの場合には、加速度センサ3の設置状態が、ピッチ角θ方向及びヨー角ψ方向にずれがあると判断される。この場合、ずれ角度θ及びψに応じて、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の夫々についての加速度検出値の補正を行うためのパラメータが算出される。前記カメラ2が左下、右上、右下を向いて設置されている場合も同様に算出できる。
【0031】
図8は、前記カメラ2(本体)が進行方向に対して左上を向き、且つ右に傾いて設置されている(X軸周りのピッチ角θ、Y軸周りのロール角φ、Z軸周りのヨー角ψの全てにずれがある)場合の例を示している。このときには、水平線Hは、画面Iの上下方向中央よりも下方に左側に下降傾斜して検出され、消失点Vは、水平線H上の中心よりも右寄り部分(画面Iの中心以外)に検出される。従って、(AE/AD)>(BF/BC)、且つ、AE≠FCであり、更に、EV>VFである場合には、加速度センサ3の設置状態が、ピッチ角θ方向、ロール角φ方向、ヨー角ψ方向の全てにずれがあると判断される。この場合、ずれ角度θ、φ、ψに応じて、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の夫々についての加速度検出値の補正を行うためのパラメータが算出される。前記カメラ2が左下、右上、右下を向いて設置されており、且つ右又は左に傾いている場合も同様に算出できる。
【0032】
図9は、前記カメラ2(本体)が進行方向に対して大きく右に傾いて設置されている(ずれ量がしきい値を越えて大きくなる)場合の例を示している。このときには、消失点Vは検出できるものの、水平線Hが、画面I内で大きく左に傾いているため、線分ADと水平線Hとの交点Eが検出できない(画面Iをはみ出す)。このような場合、本体の設置角度が大きく傾いている旨が、HMI部5の表示や、ブザーの鳴動などによりユーザに報知され、ユーザの手動による設置位置(角度)の調整が促される。
【0033】
図10は、前記カメラ2(本体)の設置状態が理想状態から著しくかけ離れている場合の例を示している。このときには、画面I内に、消失点Vも水平線Hも検出することができない。このような場合にも、本体の設置状態に異常がある旨が、HMI部5の表示や、ブザーの鳴動などによりユーザに報知され、ユーザの手動による設置位置(角度)の調整が促される。
【0034】
さて、図2のフローチャートは、ドライブレコーダ1の制御装置6が実行する、加速度センサ3の検出値の補正に関する処理手順を示している。即ち、ドライブレコーダ1の電源がオンされる(車両のエンジンが駆動される)と、電源がオフ(エンジン停止)されるまで、図2の処理が定期的、例えば1分間隔で実行される。まず、ステップS1では、カメラ2による車両前方の撮影画像Iのデータが取込まれ、ステップS2では、消失点V及び水平線Hが求められる。
【0035】
ここでは図示されていないが、ステップS1、S2の処理を、所定時間間隔例えば5秒間隔で実行し、消失点V及び水平線Hが、所定回数例えば3回連続して同じ値(所定範囲内の値)であったときに、その値を採用するようにしている。消失点V及び水平線Hが求められると、次のステップS3にて、算出した値が、理想状態(図3参照)の値と同一かどうかが判断される。理想状態であった場合には(ステップS3にてYes)、加速度センサ3の検出値の補正を行う必要はないので(補正パラメータは0)、ステップS1からの処理が定期的に繰返される。
【0036】
これに対し、消失点V、水平線Hが理想状態から外れている(図4図10参照)場合には(ステップS3にてNo)、ステップS4に進み、消失点V、水平線Hの理想状態からのずれ量が算出され、引続きステップS5にて、加速度センサ3(本体)の設置角度の理想状態からのずれ角度が算出される。次のステップS6では、求められたずれ角度が、設定された許容範囲内(補正にて対応できる範囲内)であるかどうかが判断される。
【0037】
ずれ角度が許容範囲内である場合には(ステップS6にてYes)、次のステップS7にて、加速度センサ3の各軸方向のずれ量の補正パラメータが算出され、その補正パラメータにより加速度センサ3の検出値が補正される。これに対し、ずれ角度が許容範囲を超えている場合には(ステップS6にてNo)、ステップS8にて、アラーム音を発する、或いはLEDの点滅させるなどにより、ユーザにドライブレコーダ1の設置位置(角度)のずれの調整が促される。その後、ステップS1からの処理が定期的に繰返される。
【0038】
このように本実施例では、カメラ2に対して加速度センサ3が固定的な位置に設置されているため、仮に加速度センサ3の設置角度(各検出軸の方向)に理想状態からのずれが生じていると、カメラ2による撮影画像Iにも理想状態からのずれが発生していることを利用して、カメラ2による撮影画像から、加速度センサ3の設置角度のずれ量を算出することができる。そして、そのずれ量に基づいて求められる補正パラメータにより、加速度センサ3の検出値を補正することができる。
【0039】
従って、本実施例のドライブレコーダ1によれば、加速度センサ3の設置角度に、理想の状態からのずれが生じていても、車両に作用する加速度を正確に検出することができ、ひいては、ドライブレコーダ1としての適切な動作が可能となる。このとき、元々備えられているカメラ2の撮影画像Iから、画像処理に基づいて設置角度のずれ量を求めるものであるから、別途に装置等を付加することなく、容易に実現することができる。
【0040】
特に本実施例では、カメラ2の撮影画像Iから、各種道路標示や建造物のエッジ抽出などを利用した画像処理に基づき、一点透視図法を用いて消失点V及び水平線Hを検出することにより、加速度センサ3のずれ量を算出するように構成したので、加速度センサ3の設置角度の各軸方向のずれ量を、十分な確かさで、比較的簡易に求めることが可能となる。加速度センサ3の設置角度のずれ量の算出は、車両の走行時に常時定期的に実行されるように構成したので、車両の走行中における設置角度の変動にも対応して、より一層信頼性の高いずれ量(補正値)を得ることができる。更に、ずれ量の算出の処理を、車両に対して加速度変化の変動のない状態で実行するようにしたので、正しいずれ量を検出することができる。
【0041】
また、本実施例では、求められたずれ量がしきい値を越えて大きい場合や、ずれ量の算出ができない場合には、その旨をユーザに報知する構成としたので、加速度センサ3の設置角度のずれ量が、検出値の補正では間に合わない程度に大きい場合に、ユーザに設置角度の調整を促すことができる。この場合、正確なずれ量の算出は、次回のずれ量の算出に先送りし、とりあえず加速度センサ3の検出値を利用し、制御を行うことができる。
【0042】
尚、本発明は、上述した一実施例にのみ限定されるものではなく、例えば次のように変形または拡張することができる。即ち、上記実施例では、車両のフロントガラス部分に装着される専用のドライブレコーダ1に適用するようにしたが、専用機ではない携帯型の情報端末装置例えばスマートフォンを、専用のアプリを実行させることによりドライブレコーダとして機能させることもできる。このとき、スマートフォンの本体内には、カメラ及び加速度センサが固定的な位置関係(カメラの光軸方向と加速度センサの前後軸(Y軸)方向とが一致)に組込まれおり。このスマートフォンを車室内に持込んで、例えばインストルメントパネル上のホルダ(クレードル)部分に着脱可能に設置してドライブレコーダとして使用するといった使い方をすることができる。
【0043】
このような場合、スマートフォンの本体の設置位置(角度)が毎回変動したり、また、車両の走行中に容易にずれ動いたりすることが考えられるが、上記実施例と同様に、ずれ量の算出及び補正パラメータの算出を行うことにより、本体の位置ずれに対し容易に対応することができる。この結果、毎回設置状況が相違する虞があっても、常に加速度を正しく検出することができ、極めて効果的となる。
【0044】
また、上記実施例では、ずれ量(補正パラメータ)の算出の処理をドライブレコーダ1の電源オン状態で定期的に実行するようにしたが、装置の起動時にのみ実行するように構成しても良い。これによれば、少なくとも起動時において、十分に信頼に足りるずれ量(補正パラメータ)を得ることができ、その後のずれ量算出動作を行わずに済ませて、制御装置の処理の負荷を低減することができる。その他、ドライブレコーダのハードウエア構成や、ずれ角度の計算の手法等についても、種々の変更が可能であるなど、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0045】
図面中、1はドライブレコーダ、2はカメラ、3は加速度センサ、4はメモリ部、5はHMI部(報知手段)、6は制御装置(コンピュータ)、11は消失点/水平線算出部、12はずれ量算出部(ずれ量算出手段)、13は補正パラメータ算出部、14は加速度補正部(補正手段)、Iは画像、Hは水平線、Vは消失点を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11