特許第6215034号(P6215034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

<>
  • 特許6215034-電動機及び電動機用ボビン 図000002
  • 特許6215034-電動機及び電動機用ボビン 図000003
  • 特許6215034-電動機及び電動機用ボビン 図000004
  • 特許6215034-電動機及び電動機用ボビン 図000005
  • 特許6215034-電動機及び電動機用ボビン 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6215034
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】電動機及び電動機用ボビン
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20171005BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20171005BHJP
【FI】
   H02K3/46 B
   H01F5/02 D
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-260742(P2013-260742)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-119537(P2015-119537A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】川島 博昭
(72)【発明者】
【氏名】税所 亮平
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−327109(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0181550(US,A1)
【文献】 特開2010−200592(JP,A)
【文献】 実開昭51−114605(JP,U)
【文献】 特開2008−263719(JP,A)
【文献】 特開昭55−117449(JP,A)
【文献】 実開昭60−044454(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を積層したステータコアと、外周にコイルが巻き回り、前記ステータコアのティースに挿入されるボビンとを有するステータと、
前記ステータの周方向外側に位置するロータとを備える電動機であって、
前記ボビンが、
前記ティースの外周形状に概略応じた略筒状の内壁面と
前記ティース挿入方向に延伸し、前記内壁面のステータコアティース挿入方向端部近傍に、記端部に近づくのに応じて鉛直方向断面の頭頂部高さ及び基部の幅が連続して増加する少なくとも1つの突起部と、
前記突起部を設ける内壁面と対向する内壁面の裏面外側面、且つ軸芯側の端部に軸方向外側に延伸して、前記コイルが他のコイルに結線するためのガイド突起部とを有し、
前記突起部が、前記ステータコアと積層方向で対向する内壁面の前記ティース先端側に設けられる電動機。
【請求項2】
請求項に記載の電動機であって、前記突起部の径方向の最頭頂部と、対向する前記内壁面との長さが、前記ステータコアの最小積厚値よりも短く、前記突起部を設ける前記内壁面と、前記対向する内壁面との長さが、前記ステータコアの最大積厚値より長い電動機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動機であって、前記突起部の鉛直方向断面頭頂部が、略角形状を有する電動機。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の電動機であって、前記ボビンが樹脂で形成されている電動機。
【請求項5】
外周にコイルが巻き回され、鋼板を積層したステータコアのティース外周形状に応じた略筒状の内壁面を有する本体部と、
前記ティース挿入方向に延伸し、前記本体部内壁面のステータコアティース挿入方向端部近傍に、該記端部に近づくのに応じて、鉛直方向断面の頭頂部高さ及び基部の幅が増加し、前記頭頂部の少なくとも一部が前記ティースと接触する少なくとも1つの突起部と、
前記突起部を設ける内壁面と対向する内壁面の裏面外側面、且つ軸芯側の端部に軸方向外側に延伸して、前記コイルが他のコイルに結線するためのガイド突起部とを有し、
前記突起部が、前記ステータコアと積層方向で対向する内壁面の前記ティース先端側に設けられる電動機用ボビン。
【請求項6】
請求項に記載の電動機用ボビンであって、前記突起部の前記本体部径方向の最頭頂部と、対向する前記内壁面との長さが、前記ステータコアの最小積厚値よりも短く、
前記突起部を設ける前記内壁面と、前記対向する内壁面との長さが、前記ステータコアの最大積厚値より長い電動機用ボビン。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電動機用ボビンであって、前記突起部の鉛直方向断面頭頂部が、略角形状を有する電動機用ボビン。
【請求項8】
請求項のいずれか一項に記載の電動機用ボビンであって、前記ボビンが樹脂で形成されている電動機用ボビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを設けた電動機及び電動機用ボビンに係り、特にコイルを巻回したボビンをステータティースに挿入する構成の電動機及び電動機用ボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロータ表面に永久磁石を配置する表面磁石型の永久磁石モータ等では,ステータコアに集中巻のコイルを配することが一般的であるが、その際、ステータコアと、コイルとの絶縁の確実化及びコイルへの巻回容易化をするために、樹脂等から成るボビンを用いる場合が多い。ボビンはコイルを巻き回すために、ステーコタのティース長とほぼ同一の長さを有し、そのティース先端側とコアバック側の両端部に衝立状の壁面を有し、その壁面間にコイルが巻回されるようになっている。
この場合、コイルの固定、即ちボビンの固定が集中巻ステータの信頼性に著しく影響する。
【0003】
特許文献1は、ボビンをステータコアの上下面にのみ配置するように分割し、その状態でコイルを巻き回す電動機を開示する。ボビン内壁には、ティースコアバック部に相対する位置に突起が設けられ、その突起に対応する箇所に穴を設けたステータコアの電磁鋼板が突起高さに相当する厚さにほぼ等しい枚数を重ねることにより、ボビンの突起とステータコアの空孔が勘合して固定される。更に、ボビンの突起はステータコアのティース先端の両側のツバ部の外部に一致するように設けられる。このように、コアバック部と、ティース先端の両側のツバ部との3点によってボビンがステータコアに対して固定される構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−095492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成は、ボビンの固定の精度は夫々の突起、空孔、ティース先端部の寸法精度に依存する。他方、樹脂で成形されるボビン、電磁鋼板を積層するステータコアの精度は制約があるので、ガタつくこと無く勘合することは極めて困難であり、成形や組立てに多大な工数や工夫を要するという課題がある。
ボビンやステータコアの寸法の精度に大きな影響を受けることなく,またそれらの組立てにおいても簡便にボビンとテータコアの固定を得る技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば、請求の範囲に記載の発明を適用する。即ち外周にコイルを巻き回したボビンと、該ボビンをティース部に挿入するステータコアとを有する電動機であって、前記ボビンが、前記ティース部の外周形状に概略応じた略筒状の内壁面形状と、前記ティース挿入方向に延伸し、前記内壁面のステータコアティース挿入方向端部近傍に、該記端部に近づくのに応じて鉛直方向断面の頭頂部高さ及び基部の幅が連続して増加する少なくとも1つの突起部と、を有する構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面によれば,ステータコアの積厚の変化に柔軟に対応して確実に固定するとともにボビンとティースのはめ込みが容易になるという効果を奏する。
本発明の他の課題及び効果は、以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明を適用した一実施形態である集中巻永久磁石モータの径方向横断面構造を示す模式図である。
図2】本実施形態の集中巻永久磁石モータの軸方向断面構造を示す模式図である。
図3】本実施形態の集中巻永久磁石モータに適用するボビンの構成を示す模式図である。同図において、ティース挿入方向である面を正面とした場合、図3(a)は左側面図であり、図3(b)は裏面図であり、図3(c)は正面図であり、図3(d)は上面図であり、図3(e)は右側面図である。
図4図4(a)及び(b)は、本実施形態の集中巻永久磁石モータにおいて、ボビンをティースに挿入前後の状態を模式的に示す遷移図である。
図5図5(a)は、本実施形態の突起部の要部を拡大した模式図であり、図5(b)及び(c)は、突起部の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1に、本発明を適用した一実施の形態である、集中巻永久磁石モータの径方向断面構造を示す。
【0010】
ロータ1の内径方向には、溝を有するロータコア11が設けられ、その溝に永久磁石12が配列されている。ステータ2の外径方向には、ステータコア21のティース部にコイル22が設けられている。本実施形態では、アウターロータ且つステータはオープンスロット構造であり、集中巻及び永久磁石も矩形とし、極数40、スロット数48で、極数とスロット数比を10対12としている。
【0011】
図2に、集中巻永久磁石モータの軸方向断面構造を示す。ステータ2のフレーム23にステータコアが設置され、ロータ1は軸受13を介してステータフレーム23と回転自在に接続される。
図3に、ステータ2のティースに挿入するボビンの概略構造を示す。図3(a)において、右方向からティースを挿入するようになっている。図3(a)は側面がボビンの横面からの外観図、図3(b)が(a)においてB側から見たB視図、図3(c)が(a)においてC側から見たC視図、図4(d)が(a)においてDから見たD視図、図3(e)が(c)におけるE断面図を示す。
【0012】
図3(a)に示すように、ボビン30は、ボビン先端部の端板301、ボビン根元部の端板302を両側に有する概略四角筒を成してなる。その筒の上板303、下板304を配し、概略円筒状のコイルガイド突起307をボビン根元部位に有している。更に、その下板304の内面側に概略三角錐状の突起309を複数(本例では2つ)有している(図3(b)、(c)参照。)。また、図3(d)に示すように、ボビン30には、左右にボビンの側板305、306が配設される。
なお、図3に示すごとく、端板301、302には空孔が設けられており,これは後述のステータコアのティース部212(図4)が挿入配置される部位となる。
【0013】
概略三角錐状の2個の突起309は、頂点(図5(a)の320z等)を回転軸方向に向け、回転方向に並列して配設される。突起309の少なくとも一辺は他の二辺より長くなっており、当該長辺が端板302方向に向いて、下板304上の端板301に近い部分に配設されている。本実施形態では、突起309の斜辺の一部がティース212の挿入方向と逆側に延伸する構成とするが、これはティース212が挿入されるにつれて、突起部309の延伸斜辺の頭頂部が徐々に切削され(又は押し潰され)、ティース212との接触面積が次第に拡大させ、摩擦係数の増加させる嵌め込みの容易化を図るためである。即ち突起部309は挿入方向に進むにつれてその鉛直方向断面の高さと、基部の幅とが連続的に増加する構成であればよく、三角錐形状に限るものではない。詳細は、後述する。
【0014】
図4に、コイルが巻き回されたボビン30と、ステータコア21(ティース)の概略構成を示す。図4(a)は、ボビン30をステータコア21に挿入する前の側断面を示し、図4(b)は、ボビン30をステータコア21に挿入し、一体になった後の側断面を示す。
図4(a)に示すように、コイル22はボビン30の端板301と302の間に巻き回される。なお、コイル22から延びた口出し線部位(不図示)は、コイルガイド307を介して他のコイル、中性点の結線又はモータ口出し線等に接続される。
【0015】
ステータコア21は,オープンスロット形状を有する概略直方体状のティース部212と、各ティースを結合する概略扇形状のコアバック部211とから成り、それらを一体として型抜き成形された電磁鋼板を複数枚積層して構成されている。積層方向は図の上下方向(回転軸方向)であり、例えば、積層方向に50mmの高さがあるとすれば、0.5mm厚の積層板が100枚程度,図の上下に積層構成されている。
【0016】
また、図4(a)に示すように、突起309の高さをH、ボビンの上板303と下板304の間隔をG、ステータコアの積厚をLとすると、以下の関係となるように設定されている。
G−H<L ・・・(1)
更に,ステータコアは用いる電磁鋼板の板厚偏差により,ステータコア21の積厚変動が生ずる。この時,最大積厚とLmax,最小積厚をLminとすれば,
G−H<Lmin ・・・(2)
G>Lmax ・・・(3)
の関係となるように各寸法は設定する。かかる構成によりステータコアが最大寸法でもボビンに挿入でき,ステータコアが最小寸法でも突起309の作用によって固定が可能となる。
【0017】
図4(b)に示すように、ボビン30をステータコア21に挿入すると、突起309がステータコアのティース部212によって、その頭部を切削された状態(もしくは押し潰された状態)となり、この切削された突起309の接触面によって、ボビン30とティース部212間に働く摩擦力によりボビン30と、ステータコア21の固定が図られるようになっている。
【0018】
図5(a)〜(c)を参照し、突起部309の形状及び他の形状例を説明する。図5(a)は、図3及び図4に示す突起部309の要部拡大図である。図中左下部はティース212の挿入方向側面から観察した側面図であり、その上は上面から観察した場合の模式図である。x、y、z断面の形状を、右側に示す。断面x、y、zには、夫々頭頂部320x〜zと、基部を示す330x〜zとを有する。頭頂部320zは、突起部309の頭頂部のうち最も高い頂点である。
【0019】
図5(b)(c)は、突起部309の他の例であり、側面から観察すると頭頂部が直線ではなく徐々に高く(もしくは低く)なる曲線状の位置関係となる。また、突起部309の鉛直方向断面は必ずしも三角形である必要はなく、(b)、(c)に示すように、基部以外の2辺の長さが異なったり、曲線であったりする形状でもよい。
【0020】
更には、突起部309の形状は、その鉛直方向断面が三角以外の多角形でも楕円系や円形でもよく、ティース212の挿入方向に連続する頭頂部の数も一つに限るものでもなく、頭頂部線もティース212の挿入方向に必ずしも平行である必要もなく、挿入に応じて切削(又は押し潰し)による接触面が増加する効果を得られる範囲で傾いていてもよい。
【0021】
以上のように、本実施形態によれば、ステータコア21と、ボビン30との嵌め込みが容易且つ確実に固定されるという効果を得ることができる。
【0022】
特に、本実施形態では、ボビン30は樹脂で形成され、鉄製のステータコア21よりも柔らかいことから、突起309の切削等が比較的容易であるという特有の効果がある。
【0023】
また、本実施形態では、ボビン30において、突起309の三角錐の長辺がステータコア21の根元方向に延びている形状であるため、ステータコアへの挿入時に、突起の切削が徐々になされ、円滑に挿入できるという効果もある。
【0024】
また、本実施形態では、ボビン30において、ステータコア21の先端側に位置する部分(端板301寄り)に、突起309が近接して設ける構成となっている。突起309とステータコア21の切削可動域を少なくし、突起309を切削することによるステータコア21の挿入力が大きくなる時間を短縮するという特有の効果もある。
【0025】
更には、本実施形態では、突起309がボビン30の下板304に設けられているため、ステータコア21の上面とボビンの高さ関係がステータコア21の積厚に関わらず一定となる。ボビン30のコイルからの口出し線がステータコア内面に設けられる結線部位までの配置が略水平を保つことができ、配線作業性や配線信頼性の向上や、外表面の磁束の乱れを低減させるという効果も期待できる。
【0026】
以上、本発明を実施するための一実施の形態を説明したが、本発明は、集中巻永久磁石モータの限るものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成が適用可能である。例えば、永久磁石を用いずに巻線により界磁を形成するモータでも、集中巻でボビンを用いるものであれば同様な構成として同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1…ロータ、2ステータ、11…ロータコア、12…永久磁石、21…ステータコア、22…コイル、30…ボビン、309…突起
図1
図2
図3
図4
図5