特許第6215035号(P6215035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6215035
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】狭い空間で使用可能なレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/46 20060101AFI20171005BHJP
【FI】
   B25B13/46 D
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-262882(P2013-262882)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-116647(P2015-116647A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】513321858
【氏名又は名称】▲呉▼逸民
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼逸民
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3107779(JP,U)
【文献】 特開2004−255539(JP,A)
【文献】 特開2002−307318(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3146712(JP,U)
【文献】 米国特許第6209423(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/46
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体、歯車、2つの噛合アセンブリ、蓋体及びスライドを備えた狭い空間で使用可能なレンチであって、
前記本体は、中空状のヘッド部を有し、前記ヘッド部は、握持部と接続され、前記ヘッド部の外側面には、C字状の周壁が形成され、前記ヘッド部内には、階段孔が形成され、前記握持部は、2つの案内溝を有し、前記案内溝のそれぞれは、前記握持部に隣接した周壁に形成されて前記階段孔と連通し、
前記歯車は、前記階段孔に設置する軸を有し、前記軸は、中央部に設けられた連結構造と、外側面に設けられた連続した複数の歯と、を有し、
前記噛合アセンブリは、角柱及び弾性部材を含み、前記角柱及び前記弾性部材は、前記本体の同一の前記案内溝内に設置され、前記弾性部材は、前記角柱及び前記案内溝の壁面にそれぞれ接触され、前記案内溝に沿って前記歯車へ向かって前記角柱を押し動かし、
前記蓋体は、リング部を有し、前記リング部が前記軸に外嵌されると、前記階段孔の一端が封止され、前記歯車が支持されながら前記本体に対して回動自在となり、
前記スライドは、前記握持部の前記階段孔に隣接した箇所に揺動自在に接続され、前記案内溝中の前記噛合アセンブリを覆い、前記スライドには、前記角柱に対応した箇所に駆動構造が形成され、
前記スライドに力が加えられて前記スライドが普通空間モードまで移動されると、前記駆動構造により2つの前記角柱のうちの1つが前記案内溝内へ戻り、もう一つの前記角柱が常態下で前記歯車の何れかの歯と噛合し、前記レンチが標準空転角度で揺動可能となり、
前記スライドに力が加えられて前記スライドが狭い空間モードまで移動されると、前記2つの角柱が前記駆動構造の制限を受けずに前記歯車の歯と交互に噛合し、前記レンチが小さめの空転角度で揺動可能となることを特徴とする狭い空間で使用可能なレンチ。
【請求項2】
前記噛合アセンブリは、前記駆動構造の下方の前記角柱に設けられた短ピンを含み、
前記駆動構造は、前記スライドに形成された2つの突出部を含み、
前記2つの突出部の間には、凹部が形成され、
前記凹部には、前記短ピンが挿設され、
前記スライドが普通空間モードの位置まで移動されると、前記短ピンが前記突出部により止められ、前記スライドの回転により前記角柱が前記案内溝内に戻り、
前記スライドが狭い空間モードの位置まで移動されると、前記短ピンが前記突出部により拘束されずに、前記2つの角柱が前記弾性部材により前記歯車へ向かって押し出されて対応した歯に交互に噛合されることを特徴とする請求項1に記載の狭い空間で使用可能なレンチ。
【請求項3】
前記蓋体は、前記リング部の周囲から外方へ延びた結合部を有し、
前記結合部の周壁の切欠きから突出された部分と、前記本体の前記握持部とにより段差が形成され、前記結合部と前記握持部との間に前記スライドを挿設し、前記スライドと前記結合部と前記握持部とを締付け具により合体させることを特徴とする請求項1又は2に記載の狭い空間で使用可能なレンチ。
【請求項4】
前記スライドは、受力部及び収容槽を有し、
前記収容槽は、前記スライドの頂面に形成され、前記スライドと前記結合部とが相補構造に形成され、前記結合部から前記受力部が露出されることを特徴とする請求項3に記載の狭い空間で使用可能なレンチ。
【請求項5】
前記結合部は、ウィンドウを有し、
前記スライドの前記収容槽には、前記ウィンドウに対応した箇所に識別構造が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の狭い空間で使用可能なレンチ。
【請求項6】
前記識別構造は、数字、色、模様、アルファベット、文字及びパターンからなる群から選ばれる1つであることを特徴とする請求項5に記載の狭い空間で使用可能なレンチ。
【請求項7】
前記スライドには、円弧孔が形成され、
前記円弧孔中には、一部が前記握持部に固定された規制ピンが収容され、前記規制ピンの幅を前記円弧孔の幅より小さくして前記スライドの揺動幅を制限することを特徴とする請求項3に記載の狭い空間で使用可能なレンチ。
【請求項8】
前記スライドは、前記握持部に対応するように形成された2つの凹穴を有し、
前記凹穴には、前記握持部から一部が露出された鋼球が収容され、前記スライドを位置決めすることを特徴とする請求項3に記載の狭い空間で使用可能なレンチ。
【請求項9】
前記連結構造は、貫通軸中央に形成された多辺形嵌合孔を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の狭い空間で使用可能なレンチ。
【請求項10】
前記連結構造は、突出軸中央に形成された多辺形柱体を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の狭い空間で使用可能なレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンチの空転技術に関し、特に、レンチの歯数を同じに維持しつつ、標準又は小さめの空転角度によりトルク伝達を行う、狭い空間で使用可能なレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
レンチは、中空状のヘッド部に歯車が取り付けられているのが一般的である。ヘッド部内には、略爪状を呈した係合構造が設けられ、歯車の外側の歯に噛合され、ヘッド部が歯車の周囲で一方向へ空転されると、歯車が同時に反対方向へ回転してトルクを出力する。このように、レンチはヘッド部により歯車を同期で回転させ、一定幅で反対方向へ空転させて継続的に力を加える。
【0003】
しかし、歯車の歯数が同じに維持されているため、空転角度は係合構造が歯を超える幅に等しい。歯車の空転角度は、歯数と関係するため、歯数が少ない場合、空転幅が大きくなり、歯数が多い場合、空転幅が小さくなる。しかし、このようなレンチは、操作空間が狭い施工現場などの環境では、使用が困難となることがある。
【0004】
前述の問題点を改善するために、メーカの一部は歯車の外側に設けられた歯の数を増やすことにより、空転幅が大きすぎるという従来技術の欠点を改善することができるが、歯の幅が狭くなるため、歯の潰れ強度が相対的に小さくなるという問題点が生じた。その原因としては、ヘッド部により歯車を同期で回転させる期間、歯の潰れ強度よりトルクが大きい場合に歯が損壊してしまい、運動エネルギをワークへ伝達させることができなくなってトルクを継続的に出力させることができなくなる虞があった。
【0005】
本発明者は、空転角度の変化の概念に基づき、可変式小さな空転角度のレンチを各国に出願した(特許文献1〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願番号第12195169.3号
【特許文献2】米国特許出願第13/691477号
【特許文献3】特許出願番号第2013−170474号
【特許文献4】中国特許出願番号第201210507001.6号
【特許文献5】台湾特許出願番号第101139643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、歯数を同じに維持しつつ、普通の空間及び狭い空間モードを提供し、必要に応じて異なる空転幅を選択して使用することができる、狭い空間で使用可能なレンチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、本体、歯車、2つの噛合アセンブリ、蓋体及びスライドを備えた狭い空間で使用可能なレンチであって、前記本体は、中空状のヘッド部を有し、前記ヘッド部は、握持部と接続され、前記ヘッド部の外側面には、C字状の周壁が形成され、前記ヘッド部内には、階段孔が形成され、前記握持部は、2つの案内溝を有し、前記案内溝のそれぞれは、前記握持部に隣接した周壁に形成されて前記階段孔と連通し、前記歯車は、前記階段孔に設置する軸を有し、前記軸は、中央部に設けられた連結構造と、外側面に設けられた連続した複数の歯と、を有し、前記噛合アセンブリは、角柱及び弾性部材を含み、前記角柱及び前記弾性部材は、前記本体の同一の前記案内溝内に設置され、前記弾性部材は、前記角柱及び前記案内溝の壁面にそれぞれ接触され、前記案内溝に沿って前記歯車へ向かって前記角柱を押し動かし、前記蓋体は、リング部を有し、前記リング部が前記軸に外嵌されると、前記階段孔の一端が封止され、前記歯車が支持されながら前記本体に対して回動自在となり、前記スライドは、前記握持部の前記階段孔に隣接した箇所に揺動自在に接続され、前記案内溝中の前記噛合アセンブリを覆い、前記スライドには、前記角柱に対応した箇所に駆動構造が形成され、前記スライドに力が加えられて前記スライドが普通空間モードまで移動されると、前記駆動構造により2つの前記角柱のうちの1つが前記案内溝内へ戻り、もう一つの前記角柱が常態下で前記歯車の何れかの歯と噛合し、前記レンチが標準空転角度で揺動可能となり、前記スライドに力が加えられて前記スライドが狭い空間モードまで移動されると、前記2つの角柱が前記駆動構造の制限を受けずに前記歯車の歯と交互に噛合し、前記レンチが小さめの空転角度で揺動可能となることを特徴とする狭い空間で使用可能なレンチが提供される。
【0009】
前記噛合アセンブリは、前記駆動構造の下方の前記角柱に設けられた短ピンを含み、前記駆動構造は、前記スライドに形成された2つの突出部を含み、前記2つの突出部の間には、凹部が形成され、前記凹部には、前記短ピンが挿設され、前記スライドが普通空間モードの位置まで移動されると、前記短ピンが前記突出部により止められ、前記スライドの回転により前記角柱が前記案内溝内に戻り、前記スライドが狭い空間モードの位置まで移動されると、前記短ピンが前記突出部により拘束されずに、前記2つの角柱が前記弾性部材により前記歯車へ向かって押し出されて対応した歯に交互に噛合されることが好ましい。
【0010】
前記蓋体は、前記リング部の周囲から外方へ延びた結合部を有し、前記結合部の周壁の切欠きから突出された部分と、前記本体の前記握持部とにより段差が形成され、前記結合部と前記握持部との間に前記スライドを挿設し、前記スライドと前記結合部と前記握持部とを締付け具により合体させることが好ましい。
【0011】
前記スライドは、受力部及び収容槽を有し、前記収容槽は、前記スライドの頂面に形成され、前記スライドと前記結合部とが相補構造に形成され、前記結合部から前記受力部が露出されることが好ましい。
【0012】
前記結合部は、ウィンドウを有し、前記スライドの前記収容槽には、前記ウィンドウに対応した箇所に識別構造が設けられていることが好ましい。
【0013】
前記識別構造は、数字、色、模様、アルファベット、文字及びパターンからなる群から選ばれる1つであることが好ましい。
【0014】
前記スライドには、円弧孔が形成され、前記円弧孔中には、一部が前記握持部に固定された規制ピンが収容され、前記規制ピンの幅を前記円弧孔の幅より小さくして前記スライドの揺動幅を制限することが好ましい。
【0015】
前記スライドは、前記握持部に対応するように形成された2つの凹穴を有し、前記凹穴には、前記握持部から一部が露出された鋼球が収容され、前記スライドを位置決めすることが好ましい。
【0016】
前記連結構造は、貫通軸中央に形成された多辺形嵌合孔を含むことが好ましい。
【0017】
前記連結構造は、突出軸中央に形成された多辺形柱体を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の狭い空間で使用可能なレンチは、歯数を同じに維持しつつ、普通の空間及び狭い空間モードを提供し、必要に応じて異なる空転幅を選択して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る狭い空間で使用可能なレンチを示す斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る狭い空間で使用可能なレンチを示す分解斜視図である。
図3図3は、レンチの部品を別の角度から見たところを示す斜視図である。
図4図4は、レンチの部品を別の角度から見たところを示す斜視図である。
図5図5は、レンチを狭い空間モードの状態で使用するときの状態を示す平面図である。
図6図6は、レンチを狭い空間モードの状態で使用するときの状態を示す断面図である。
図7図7は、レンチを普通空間モードの状態で使用するときの状態を示す平面図である。
図8図8は、レンチを普通空間モードの状態で使用するときの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の狭い空間で使用可能なレンチの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1を参照する。図1は、本発明の一実施形態に係る狭い空間で使用可能なレンチを示す斜視図である。図1に示すように、レンチ10は、本体11を含む。本体11は、握持部12を有し、握持部12はヘッド部20と一体化される。ヘッド部20上には、蓋体50が設けられ、ヘッド部20と蓋体50との間には、歯車30及びスライド60が取り付けられる。このときのスライド60は、狭い空間モードの状態にあるが、普通空間モードへ切換えることもできる。
【0022】
図2を参照する。図2に示すように、ヘッド部20は、扁平したリング状ハウジングであり、握持部12の一端に形成される。ヘッド部20の外側面には、C字状に形成された周壁21が形成されている。ヘッド部20は、周壁21の頂端からハウジングの底端にかけて異なる厚さを有し、前述の歯車30を設置する階段孔22を有する。
【0023】
握持部12の表面には、第1の案内溝13及び第2の案内溝14が凹設されている。これら案内溝13,14は、一定の角度で間隔をおいて形成されている。各案内溝13,14は、周壁21に隣接した握持部12に形成されて階段孔22と連通し、噛合アセンブリ40を収容するために用いる。握持部12の各案内溝13,14の近傍には、結合孔15、球槽16及び小孔17が形成されている。結合孔15は、2つの案内溝13,14の間に形成されて締付け具80(例えば、ねじ)が螺合される。球槽16と結合孔15とは互いに隣接し、球槽16内には、圧縮ばね82及び鋼球84が順次収容される。鋼球84の直径は、球槽16の開口直径より小さく、圧縮ばね82の押圧力を受けて球の一部が握持部12の外側に露出される。小孔17の壁面には、規制ピン86の根部が押し付けられて固定され、規制ピン86の一部が握持部12から露出される。
【0024】
本実施形態の歯車30の本体は、円筒状の1本の軸32からなる。軸32は、中央部に連結構造を有する。軸32の外周面には、36個の連続した歯34が形成されている。2つの対応した歯34の先端の間隔は、階段孔22の最小直径より大きく、歯34の側面が下肩部23により止められるまで、軸32の底端がヘッド部20下部のリング状下肩部23へ挿設し、歯車30を支持しながらヘッド部20に対して回転させる。また、この連結構造は、軸32を中央に貫通させる多辺形嵌合孔36を含む。
【0025】
続いて、前述の第1の案内溝13に収容される噛合アセンブリ40は、能動角柱41及び弾性部材(例えば圧縮ばね42)を含む。圧縮ばね42は、能動角柱41と第1の案内溝13の封止端の壁面とにそれぞれ接触され、能動角柱41を第1の案内溝13に沿わせて歯車30に向かって押し動かす。
【0026】
前述の第2の案内溝14に収容される噛合アセンブリ40は、角柱及びもう一つの圧縮ばね42を含む点が同じであるが、短ピン44が受動角柱43の頂端から突出されるように形成され、能動角柱41と間隔をおいて形成されている。受動角柱43が第2の案内溝14に位置すると、短ピン44が握持部12の表面から突出される。
【0027】
図1及び図2に示すように、蓋体50は、不規則な輪郭を有し、必要に応じてリング部51及び結合部52に形成される。リング部51は、周壁21の内径に一致した外周面を有し、軸32の上半部に外嵌され、ヘッド部20の内壁に形成された下肩部23より高い位置の環状上肩部24に当接されるとともに、階段孔22の一端を封止し、歯車30を支持して歯車30の回転を安定させる。
【0028】
図3を見ると容易に分かるように、結合部52は、リング部51の周囲から外方へ延び、両者が一体化されて結合部52下部に段差部53が形成されている。
【0029】
図2を再び参照する。上肩部24と握持部12の表面とが同じ高さで揃っているため、周壁21の切欠きから突出された結合部52と、握持部12(又は本体11)とにより形成される高度差を一定に維持することができる。結合部52は、2つの当接面54及びウィンドウ55を有し、各当接面54は、結合部52のリング部51に隣接した箇所に形成され、周壁21の端面25に対向し、蓋体50がヘッド部20に対してずれることを防ぐ。本実施形態のウィンドウ55は、結合部52の縁部に凹設された切欠きであり、第2の案内溝14の上方に位置し、蓋体50のウィンドウ55に隣接した箇所には、テーパ孔56が形成されている。テーパ孔56が握持部12の結合孔15に対応するため、前述の締付け具80をテーパ孔56へ挿通させ、結合孔15へ容易に螺合させることができる。
【0030】
図4から容易に理解できるように、スライド60は、一端に形成された受力部62と、他端の頂面に凹設された収容槽63と、を有する。スライド60の一部の厚さが薄くなり、収容槽63の底面には、数字などの識別構造64が設けられる。スライド60の厚さが薄い箇所には、軸孔61及び駆動構造が形成される。この駆動構造は、スライド60の縁部に突設された2つの突出部65を含み、これら2つの突出部65は所定の間隔をおいて凹部66が形成されている。
【0031】
図1及び図2のレンチ10から分かるように、スライド60の薄い部位を結合部52と握持部12との間に挿設させ、締付け具80を軸孔61に螺合させる。スライド60に力が加えられると、締付け具80を軸心としてスライド60が握持部12に対して揺動する。スライド60の収容槽63と結合部52の外縁とが一致すると、結合部52の下部に形成された段差部53がスライド60の縁部の曲線と一致し、スライド60と結合部52とが互いに相補構造となり、結合部52の外面から受力部62が露出される。
【0032】
スライド60により2つの案内溝13,14中の噛合アセンブリ40が覆われると、駆動構造が受動角柱43に対向し、凹部66中に短ピン44が挿設され、結合部52のウィンドウ55を介してユーザは識別構造64の数字を見ることができる。
【0033】
スライド60には、円弧孔67及び2つの凹穴68が形成される。円弧孔67は、握持部12の小孔17に位置合わせされ、孔内に規制ピン86の一部が収容され、規制ピン86の幅が円弧孔67の幅より小さいため、握持部12に対するスライド60の揺動幅を制限することができる。
【0034】
握持部12には、スライド60の凹穴68に対応した箇所に球槽16が形成され、収容された鋼球84を握持部12から露出させ、両者を凹凸係合して一定の抵抗力を発生させ、スライド60に必要な位置決め効果を得てもよい。
【0035】
図5及び図6に示すように、蓋体50のウィンドウ55を介してアラビア数字の72が見える場合、レンチ10は狭い空間モードの状態である。この場合、短ピン44が突出部65により拘束されないため、圧縮ばね42により押し動かされると、歯車30の歯34に受動角柱43が接触される。このように2つの角柱41,43が歯34に交互に噛合され、レンチ10が小さめの空転角度で揺動可能となる。簡単に述べると、既存の36歯の歯34が72歯の歯34の空転幅を有するということである。
【0036】
反対に、図7及び図8に示すように、蓋体50のウィンドウ55を介してアラビア数字の36が見える場合、レンチ10は普通空間モードの状態である。この場合、短ピン44が突出部65により止められるため、受動角柱43がスライド60に伴って回転し、第2の案内溝14内に戻り、能動角柱41が常態下で歯車30の何れか1つの歯34と噛合され、レンチ10が標準的な空転角度で揺動可能となる。
【0037】
空転角度の変換に関する原理及び技術手段に関しては、本発明者が特許文献1〜5において既に開示しているため、ここでは詳しく述べない。
【0038】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を逸脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0039】
10 レンチ
11 本体
12 握持部
13 第1の案内溝
14 第2の案内溝
15 結合孔
16 球槽
17 小孔
20 ヘッド部
21 周壁
22 階段孔
23 下肩部
24 上肩部
25 端面
30 歯車
32 軸
34 歯
36 嵌合孔
40 噛合アセンブリ
41 能動角柱
42 圧縮ばね
43 受動角柱
44 短ピン
50 蓋体
51 リング部
52 結合部
53 段差部
54 当接面
55 ウィンドウ
56 テーパ孔
60 スライド
61 軸孔
62 受力部
63 収容槽
64 識別構造
65 突出部
66 凹部
67 円弧孔
68 凹穴
80 締付け具
82 圧縮ばね
84 鋼球
86 規制ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8