(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6215051
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】油、脂肪、水溶液または有機溶液中のカルボン酸を、マイクロ−またはナノエマルション化により、可溶化、分離、除去、および反応させるための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B01F 1/00 20060101AFI20171005BHJP
A61M 1/14 20060101ALI20171005BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20171005BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20171005BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20171005BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20171005BHJP
B01F 3/08 20060101ALI20171005BHJP
B01F 11/02 20060101ALI20171005BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20171005BHJP
C02F 1/08 20060101ALI20171005BHJP
C02F 1/26 20060101ALI20171005BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20171005BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20171005BHJP
C02F 1/469 20060101ALI20171005BHJP
C02F 1/48 20060101ALI20171005BHJP
C02F 1/68 20060101ALI20171005BHJP
C07C 67/58 20060101ALI20171005BHJP
C07C 67/62 20060101ALI20171005BHJP
C07C 69/30 20060101ALI20171005BHJP
【FI】
B01F1/00 G
A61M1/14
B01D15/00 K
B01D15/00 M
B01D61/44 500
B01D61/58
B01D63/02
B01F3/08 A
B01F11/02
B01J13/00 A
C02F1/08
C02F1/26 B
C02F1/28 A
C02F1/28 Z
C02F1/44 A
C02F1/44 D
C02F1/46 103
C02F1/48 B
C02F1/68 510Z
C02F1/68 520G
C02F1/68 530A
C02F1/68 540A
C02F1/68 540D
C02F1/68 540E
C02F1/68 540Z
C07C67/58
C07C67/62
C07C69/30
【請求項の数】10
【全頁数】93
(21)【出願番号】特願2013-515776(P2013-515776)
(86)(22)【出願日】2011年6月22日
(65)【公表番号】特表2013-538106(P2013-538106A)
(43)【公表日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】EP2011003182
(87)【国際公開番号】WO2011160857
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2014年6月10日
【審判番号】不服2016-2625(P2016-2625/J1)
【審判請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】61/344,311
(32)【優先日】2010年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10075274.0
(32)【優先日】2010年6月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512330905
【氏名又は名称】ディーツ ウルリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ディーツ ウルリッヒ
【合議体】
【審判長】
西村 泰英
【審判官】
長清 吉範
【審判官】
平岩 正一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−504802(JP,A)
【文献】
特公昭47−24868(JP,B1)
【文献】
特開昭51−44623(JP,A)
【文献】
特許第2532042(JP,B2)
【文献】
国際公開第00/10606(WO,A1)
【文献】
Mura P., “Ternary systems of naproxen with hydroxypropyl−β−cyclodextrin and aminoacids”,international journal of pharmaceutics,(蘭),ELSEVIER,2003年7月24日,Vol.260,p.292−302
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00
C07B 63/04
C07C 67/00-69/00
C02F 1/00-1/68, 9/00
B01D 15/00, 61/00-71/00
B01J 13/00
A61M 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学的分析、食品分析、食品処理、油処理、油分析、燃料処理、化学または物理−化学反応の調節、難溶解性分子の可溶化、薬学または化学工業または科学における分析、個人的、商業的、または工業的洗浄からの汚水からのカルボン酸の除去、バイオリアクタープロセスからのカルボン酸の除去、カルボン酸の有機ゲル化またはナノエマルション化において生じる、水性または有機性の溶液、エマルション、懸濁液から、可溶化化合物を使ってカルボン酸を可溶化および分離する方法であって、
前記可溶化化合物は、少なくとも1つのアミジノ基および/または少なくとも1つのグアニジノ基を含有し、
前記可溶化化合物のN−オクタノールと水の分配係数KOWが<0.63であり、かつ、
前記方法は以下の工程:
i)カルボン酸を含有する溶液またはエマルションまたは懸濁液の供給、
ii)少なくとも等モル量の少なくとも1つの可溶化化合物の添加、
iii)相分離、濾過、ナノ濾過、透析、吸収、複合化、電気泳動、蒸発、蒸留、および/または抽出によって、前記溶液またはエマルションまたは懸濁液から、可溶化したカルボン酸を分離すること、
を含み、
前記可溶化化合物を使用することにより、前記カルボン酸がマイクロ−エマルションまたはナノエマルション化され、濃度勾配、熱勾配、電気勾配、物理−化学勾配、またはこれらの組み合わせを用いた、複合化、吸着、吸収、拡散、浸透、透析、濾過、ナノ濾過、蒸留、液体−液体抽出、または超臨界流体抽出により、前記カルボン酸を分離することが可能となる、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
工程iii)は、以下の分離方法の1つ、あるいはこれらの組み合わせにより達成される方法:
濃度勾配、熱勾配、物理−化学勾配、気流勾配、電気勾配、あるいはこれらの組み合わせを適用することにより、カルボン酸を個別にあるいは前記少なくとも1つの可溶化化合物とともに、分離膜あるいは管あるいは中空毛細管アセンブリを通過させる方法、または
相分離を構成する2つ以上の媒体を組み合わせることにより、相分離を実施する方法、または
濃度勾配、熱勾配、物理化学勾配、気流勾配、電気勾配、あるいはこれらの組み合わせを適用することにより、カルボン酸を、少なくとも1つの可溶化化合物とともに、前記カルボン酸と前記少なくとも1つの可溶化化合物の通過を許容する相分離界面を通過させる方法であって、前記相分離界面はゲル、有機ゲル、あるいは固体材料、あるいはこれらの組み合わせから構成される方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸を濾過する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸をナノ濾過する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸を透析する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸を吸着する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸を複合化する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸を蒸留する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いて超臨界流体抽出によりカルボン酸を分離する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
a)結合したおよび結合していないカチオンとアニオンの複合化、吸着、分離、または透析によってイオン強度を下げることにより、前記溶液を調製する工程、
b)酸または塩基を添加することによって前記溶液のpHを調節する工程、
c1)前記可溶化化合物のモル濃度を、可溶化するカルボン酸の見積もり濃度に対して、1:10〜20:1に調節する工程、および
d)前記カルボン酸含有水溶液または有機溶液中に、前記可溶化化合物を固体形態または溶液で添加し、マイクロ−エマルションまたはナノエマルションを生成する工程、を含む方法。
【請求項4】
更に、
a1)複合化または共有結合によって結合したカルボン酸を遊離する工程、
c2)前記可溶化化合物を溶液中に投与する場合、可溶化するカルボン酸との相溶性および反応条件を最適化するために酸性化またはアルカン化により前記溶液のpHを調節する工程、
e)エステラーゼ、加水分解酵素、または複合体ビルダーを添加する工程、
f)水および/または共溶媒を前記溶液に添加する工程、および/または
g)前記溶液を加熱および/または混合することによって反応条件を最適化し、これにより改善したマイクロ−エマルションまたはナノエマルションを生成する工程、を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程g)のあとに、さらに
g2)濃度勾配、化学勾配、気流勾配、電気勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、ナノ濾過技術を使用して前記反応溶液を第1チャンバーから第2チャンバーに分離パネルを介して導く工程、を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水性又は有機性の溶液は、植物、生物体、化石材料、天然または合成の反応混合物から得られる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの可溶化化合物を、前記カルボン酸を含有するエマルション、溶液、または懸濁液に添加し、前記エマルションを用いて、前記カルボン酸含有複合体を遊離、脱複合化、脱離、反応、凝集、複合化、凝固、凝結、沈降、または分離させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
物理−化学反応または化学反応の縮小、生物的または化学的反応プロセスにおける反応生成物あるいは成分の取り込みおよび移動の可能化および促進、小胞の取り込みによる物質の脱離、可溶化、遊離、対流による移動、および輸送、または乳化カルボン酸の親水性あるいは両親媒性の媒体あるいは固体への浸透の可能化あるいは促進のために、マイクロ−またはナノエマルションを使用する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
医学的療法、医学的分析、食品分析、食品処理、油処理、油分析、燃料処理、化学および薬理学または薬学的処理、薬学または化学工業または科学における分析、個人的、商業的、または工業的洗浄からの汚水からのカルボン酸の除去、バイオリアクタープロセスからのカルボン酸の除去、油性固体物質の洗浄、カルボン酸の有機ゲル化またはナノエマルション化において使用する、水性または有機性媒体中で、可溶化化合物を使ってカルボン酸を可溶化および分離するための装置であって、
前記可溶化化合物は、少なくとも1つのアミジノ基および/または少なくとも1つのグアニジノ基を含有し、
前記可溶化化合物のN−オクタノールと水の分配係数KOWが<0.63であり、前記可溶化化合物を使用することにより、前記カルボン酸がマイクロ−エマルションまたはナノエマルション化され、濃度勾配、熱勾配、電気勾配、物理−化学勾配、またはこれらの組み合わせを用いた、複合化、吸着、吸収、拡散、浸透、透析、濾過、ナノ濾過、蒸留、液体−液体抽出、または超臨界流体抽出により、前記カルボン酸を分離することが可能となり、
前記装置は、
i)カルボン酸含有水性媒体または有機媒体を、前記可溶化化合物と反応させるための第1チャンバー、
ii)前記可溶化したカルボン酸を受け入れるための第2チャンバー、
iii)前記第1チャンバーと前記第2チャンバーとの間の分離パネルであって、分離膜、管、または中空毛細管アセンブリを含むパネル、および
iv)濃度勾配、熱勾配、物理−化学勾配、気流勾配、電気勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、前記反応溶液を前記第1チャンバーから前記第2チャンバーに前記分離パネルを介して導くための手段、
を含む装置。
【請求項10】
a)カルボン酸含有水性媒体用の第1入口を有する、前記カルボン酸含有水性媒体を前記可溶化化合物と反応させるための第1チャンバー、
b)前記可溶化化合物用の容器であって、前記容器に前記可溶化化合物を充填するための第2入口を有し、第3入口を介して前記第1チャンバーに接続される容器、
c)前記濾過した反応溶液を受け入れるための第2チャンバー、
d)前記第1チャンバーと前記第2チャンバーとの間の分離パネルであって、分離膜または中空毛細管アセンブリを含むパネル、および
e)濃度勾配、熱勾配、電気勾配、物理−化学勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、前記反応溶液を前記第1チャンバーから前記第2チャンバーに前記分離パネルを介して導くための手段と、
を含む、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
A.発明の背景
本発明は、油、脂肪、水性エマルション、水溶液または有機溶液から、カルボン酸および特に脂肪酸を可溶化および除去するための、可溶化化合物、装置、および方法に関する。本方法を使用する装置は、油、脂肪、水性エマルション、親油性媒体、水性媒体、または有機溶液からカルボン酸をそれぞれ分離することにより、これらの反応条件を変化させるために用いるものとする。1つの応用は、脂肪酸を除去する必要がある被検者の血液から脂肪酸を除去するための装置である。この装置は、さらに、被検者の体液、食品、または医薬品中の脂肪酸濃度を分析、または診断する目的のために用いられる。さらに、この技術は、例えば食品および油工業において生じる工業的溶液中のカルボン酸残留物の除去に適用される。
【0002】
一般に、脂肪酸は、水溶液中にかろうじて可溶性である、高度に親油性の分子である。従って、低濃度の脂肪酸のみが水溶液中で可溶化され得り、この濃度を超える全ての脂肪酸分子は、ミセルの形態で存在するか、相分離によりエマルションを形成するか、または容器壁および/あるいは溶液中のタンパク質等のその他の親油性あるいは両親媒性の分子に吸収される。エステル化カルボン酸および非エステル化カルボン酸の臨界ミセル濃度(CMC)を超えると、水性媒体中の遊離脂肪酸の濃度はもはや変化しない。
【0003】
脂肪酸は、水性媒体中ではエマルションを形成する傾向にある。タンパク質や細胞構造体の存在下では、脂肪酸はこれらに吸収または吸着され得る。このような固定化した脂肪酸の可溶化は、主に周囲の水性媒体中の脂肪酸の臨界ミセル濃度(CMC)に依存する。エミュレーターおよび洗剤は、疎水性物質のCMCを上昇させることができるため、固定化した親油性分子が脱離するのを支援する。これらのエミュレーターおよび洗剤は、エマルションを、ミニ、マイクロ、またはナノエマルションに変換し得る。この場合、可溶化した脂肪酸の水相との接触面積は増加する。これにより、可溶化した脂肪酸の分離性および抽出性が向上する。従って、その他の分子との反応性も強化される。
【0004】
エステル化脂肪酸および非エステル化脂肪酸と、水性媒体とのエマルションは、有機溶媒によってのみ完全に分離することができる。膜の支援がない場合、有機溶媒と混合して脂肪酸を有機相内に移動させることによってのみ、これを達成することができる。また、アクセプターに吸着させることにより抽出することも可能である。タンパク質等の吸着分子の存在下では、相分離または抽出によるエマルションまたは懸濁液中の脂肪酸の分離は、多くの場合不完全である。さらに、この技術の能力は限定的であり、オンライン(連続)処理には通常適さない。このようなエマルションを濾過すると、水性分画をほとんど全て濾過することができる。しかし、親水性分子、特に大きなタンパク質も、有機相とともに保持および分離される。分子分離は、クロマトグラフ法により達成することができる。しかし、これらの方法は、時間がかかる上、能力も限定的である。
【0005】
カルボン酸を水性または有機媒体から分離する別の方法としては蒸留が挙げられる。しかし、この手順は、高エネルギーを必要とし、カルボン酸の異性化を生じるか、または媒体中で有機成分を変性させる可能性がある。さらなる方法としては、鹸化がある。添加した塩は、さらなる処理中に、有機溶液ならびに水溶液から除去することが難しい場合が多い。
【0006】
従って、水溶液または有機溶液のエマルションから脂肪酸を連続的かつ選択的に抽出する必要性がある。本発明の目的は、水性エマルションまたは有機媒体からの脂肪酸の簡単で迅速な生体適合性を有する分離を提供することである。
【0007】
驚くべきことに、この目的は、カルボン酸またはカルボン酸とその他の有機親和性分子の混合物を含有する、血液等の水性エマルションまたは水性媒体、親油性媒体、または有機性媒体に、可溶化化合物を添加することにより達成できることがわかった。本明細書で定義した特性を有する本発明の可溶化化合物は、カルボン酸を可溶化し、エマルゲートした(emulgated)カルボン酸を透析、濾過、および電気泳動等の分離方法によって分離可能なマイクロまたはナノエマルションに変換することができる。
【0008】
従って、この課題は、本発明の独立クレームの技術的教示により解決される。本発明のさらに有利な実施形態は、従属クレーム、説明、および実施例により定義される。
【0009】
<脂肪酸>
一般的に、脂肪酸は、カルボキシル先端基と長い脂肪鎖を有する。二重結合が存在するか否かによって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられる。脂肪酸については文献によって定義が異なる。1つの定義は、4個以上の炭素原子を有するカルボン酸を脂肪酸と見なすとしている。しかし、天然の脂肪酸は、少なくとも8個の炭素原子を有する。これらの炭素原子において、少なくとも1つのニトロ基が水素原子を置換し、ニトロ脂肪酸に転換する。また、ニトロ脂肪酸は、上記に挙げたような、さらなる置換基を担持し得る。
【0010】
直鎖飽和脂肪酸の例としては、オクタン酸(カプリル酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、およびテトラコサン酸(リグノセリン酸)が挙げられる。
【0011】
本発明によれば、分離される飽和脂肪酸の好ましいサブグループは、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸である。
【0012】
モノオレフィン脂肪酸の例としては、シス−9−テトラデカン酸(ミリストレイン酸)、シス−9−ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、シス−6−ヘキサデセン酸(サルペン酸(salpenic acid))、シス−6−オクタデセン酸(ペトロセリン酸)、シス−9−オクタデセン酸(オレイン酸)、シス−11−オクタデセン酸(バクセン酸)、12−ヒドロキシ−9−シス−オクタデセン酸(リシノール酸)、シス−9−エイコセン酸(ガドレイン酸)、シス−11−エイコセン酸(ゴンド酸)、シス−13−ドコセン酸(エルカ酸)、シス−15−テトラコサン酸(ネルボン酸)、t9−オクタデセン酸(エライジン酸)、t11−オクタデセン酸(t−バクセン酸)、およびt3−ヘキサデセン酸がある。本発明によれば、分離する不飽和脂肪酸の好ましいサブグループは、t9−オクタデセン酸、t11−オクタデセン酸、およびt3−ヘキサデセン酸である。
【0013】
ポリオレフィン脂肪酸の例としては、9,12−オクタデカジエン酸(リノール酸)、6,9,12−オクタデカトリエン酸(γ−リノール酸)、8,11,14−エイコサトリエン酸(ジホモ−γ−リノール酸)、5,8,11,14−エイコサトリエン酸(アラキドン酸)、7,10,13,16−ドコサペンタエン酸、4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸(α−リノレン酸)、6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸(ステアリドン酸)、8,11,14,17−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸(EPA)、7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸(DPA)、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸(DHA)、5,8,11−エイコサトリエン酸(ミード酸)、9c 11t 13tエレオステアリン酸、8t 10t 12cカレンド酸、9c 11t 13cカタルプ酸、4,7,9,11,13,16,19ドコサヘプタデカン酸(ステラヘプタエン酸)、タキソール酸(taxolic acid)、ピノレン酸、およびスシアドン酸がある。
【0014】
本発明によれば、分離する不飽和脂肪酸の好ましいサブグループは、リノール酸、γ−リノール酸、EPA、およびDPAのトランス異性体である。
【0015】
アセチレン脂肪酸の例としては、6−オクタデシン酸(タリリン酸)、t11−オクタデセン−9−イン酸(サンタルビン酸またはキシメン酸(ximenic acid))、9−オクタデシン酸(ステアロール酸)、6−オクタデセン−9−イン酸(6,9−オクタデセニン酸(octadecenynoic acid))、t10−ヘプタデセン−8−イン酸(ピルル酸(pyrulic acid))、9−オクタデセン−12−イン酸(クレペン酸)、t7,t11−オクタデカジエン−9−イン酸(ヘイステル酸(heisteric acid))、t8,t10−オクタデカジエン−12−イン酸、5,8,11,14−エイコサテトライン酸(ETYA)がある。
【0016】
本発明によれば、塩基、または前述の脂肪酸の塩も、脂肪酸または遊離脂肪酸という一般的用語に包含されることに留意すべきである。
【0017】
塩形成に好適な有機および無機塩基の例としては、アルミニウム等の金属イオン、カリウムのナトリウム等のアルカリ金属イオン、カルシウムまたはマグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、またはアミン塩イオンから誘導される塩基、またはアルカリ−あるいはアルカリ土類水酸化物、−炭酸塩、または−重炭酸塩がある。例としては、水性の水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、アンモニアおよび重炭酸ナトリウム、アンモニウム塩、例えばメチルアミン等の低級アルキルアミン等の第一級、第二級、および第三級アミン、t−ブチリアミン、プロカイン、エタノールアミン、ジベンジルアミンやN,N−ジベンジルエチレンジアミン等のアリールアルキルアミン、N−エチルピペリジン等の低級アルキルピペリジン、シクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン、モルホリン、グルカミン、N−メチル−およびN,N−ジメチルグルカミン、1−アダマンチルアミン、ベンザチン、またはリジンあるいはオルニチンのようなアミノ酸から誘導される塩、または最初は中性あるいあは酸性のアミノ酸のアミドなどが挙げられる。
【0018】
以下のカルボン酸は、脂肪酸の好ましい例である:
オクタン酸(カプリル酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、シス−9−テトラデセン酸(ミリストレイン酸)、シス−9−ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、シス−6−オクタデセン酸(ペトロセリン酸)、シス−9−オクタデセン酸(オレイン酸)、シス−11−オクタデセン酸(バクセン酸)、シス−9−エイコセン酸(ガドレイン酸)、シス−11−エイコセン酸(ゴンド酸)、シス−13−ドコセン酸(エルカ酸)、シス−15−テトラコセン酸(ネルボン酸)、t9−オクタデセン酸(エライジン酸)、t11−オクタデセン酸(t−バクセン酸)、t3−ヘキサデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸(リノール酸)、6,9,12−オクタデカトリエン酸(γ−リノール酸)、8,11,14−エイコサトリエン酸(ジホモ−γ−リノレン酸)、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸(アラキドン酸)、7,10,13,16−ドコサテトラエン酸、4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸(α−リノール酸)、6,9,12,15−オクタデカデトラエン酸(ステアリドン酸)、8,11,14,17−エイコサテトリエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸(EPA)、7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸(DPA)、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸(DHA)、5,8,11−エイコサトリエン酸(ミード酸)、9c 11t 13tエレオステアリン酸、8t 10t 12cカレンド酸、9c 11t 13cカタルプ酸、4,7,9,11,13,16,19ドコサヘプタデカン酸(ステラヘプタエン酸)、タキソール酸(taxolic acid)、ピノレン酸、スシアドン酸、6−オクタデシン酸(タリリン酸)、t11−オクタデセン−9−イン酸(サンタルビン酸またはキシメニン酸)、9−オクタデシン酸(ステアロール酸)、6−オクタデセン−9−イン酸(6,9−オクタデセニン酸)、t10−ヘプタデセン−8−イン酸(ピルル酸(pyrulic acid)),9−オクタデセン−12−イン酸(クレペニン酸)、t7,t11−オクタデカジエン−9−イン酸(ヘイステル酸(heisteric acid))、t8,t10−オクタデカジエン−12−イン酸、5,8,11,14−エイコサテトライン酸(ETYA)、エレオステアリン酸、カレンド酸、カタルプ酸、ステラヘプタエン酸、タキソール酸(taxolic acid)、レチノイン酸、イソパルミチン酸、プリスタン酸、フィタン酸、11,12−メチレンオクタデカン酸、9,10−メチレンヘキサデカン酸、コロナル酸、(R,S)−リポ酸、(S)−リポ酸、(R)−リポ酸、6,8−ビス(メチルスルファニル)−オクタン酸、4,6−ビス(メチルスルファニル)−ヘキサン酸、2,4−ビス(メチルスルファニル)−ブタン酸、1,2−ジチオランカルボン酸、(R,S)−6,8−ジチアンオクタン酸、(R)−6,8−ジチアンオクタン酸、(S)−6,8−ジチアンオクタン酸、セレブロン酸、ヒドロキシネルボン酸、リシノール酸、レスクエロール酸、ブラシル酸、およびタプシン酸。
【0019】
<血中脂肪酸>
哺乳類において、脂肪酸は、生理学的に重要なエネルギー基質として機能し、エネルギー代謝において重要な役割を果たす。さらに、脂肪酸は、膜リン脂質や、エイコサンおよびロイコトリエンのような生物学的に活性な化学物質の合成にとって重要な基質である。哺乳類の体は、化学的に貯蔵されたエネルギー、細胞膜の構築ブロック、およびシグナル伝達物質の供給源として、脂肪酸に大きく依存している。脂肪酸の主な供給源は、膵臓の加水分解酵素の触媒作用により消化管内で消化される、食物脂質である。脂肪酸の一部は、炭化水素を基質として摂取する肝臓により生成される。しかし、かなりの割合の脂肪酸は、脂肪組織を構成する脂肪細胞中に、トリアシルグリセロールの形態で貯蔵される。
【0020】
血液中のエステル化および非エステル化脂肪酸の濃度は、食物摂取または脂肪組織からの放出等のいくつかの要因に依存する。脂肪酸は、トリグリセリドやリン脂質中などのように、他の分子と結合したり他の分子に付着したりすることができ、また少ない割合の脂肪酸は結合することなく生じる。いずれにしても、脂肪酸は、水に不溶性であり、生体中で輸送されるには水溶性成分に結合する必要がある。脂肪酸は、リンパ系および血管系を介して体内で輸送される。基本的に、目下のところ2つの輸送形態が存在する:脂肪酸は、カイロミクロン等の循環リポタンパク質および非常に低密度のリポタンパク質の主成分であるトリアシルグリセロールとして、または血漿タンパク質、特に血漿アルブミンに結合した非エステル化脂肪酸として、輸送され得る。完全に結合していない遊離脂肪酸は、溶解度が非常に低く、非常に低い濃度でのみ生じる。
【0021】
ヒト血液中の脂肪酸の組成、分布、および濃度は、非常に多様であり得り、次のような血漿の様々な画分の合計により構成される:コレステロールエステル、リン脂質、およびトリアシルグリセロール、ならびにアルブミン結合脂肪酸。ヒト血液中の飽和脂肪酸は、ほとんどの場合、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、およびステアリン酸(18:0)で構成される。主要なタイプの一価不飽和脂肪酸は、オレイン酸(18:1)とパルミトレイン酸(16:1)の群に属する。多価不飽和オメガ3脂肪酸としては、リノレン酸(18:3)、エイコサペンタエン酸(20:5)、ドコサペンタエン酸(22:5)、およびドコサヘキサエン酸(22:6)が挙げられる。多価不飽和オメガ6脂肪酸は、ほとんどの場合、リノレン酸(18:2)、エイコサジエン酸(20:2)、ジホモガンマリノレイン酸(20:3)、アラキドン酸(20:4)、アドレン酸(22:4)、およびドコサペンタエン酸(22:5)である。全血中におけるその他の脂肪酸の濃度は、通常は非常に低いが、遺伝的特徴、栄養、および生活スタイルによって多様であり得る。
【0022】
肥満患者の血中脂肪酸濃度は高く、2型糖尿病、肝臓脂肪症、およびアテローム性動脈硬化症等のいくつかの心臓血管疾患の一因となっている。アテローム性動脈硬化症、および大脳、心筋、腎臓、勃起不全等の付随する疾病の発症における脂肪酸の病因的役割が明らかにされている。包括的であることを意図しない、いくつかの態様を以下に説明する。脂肪酸の上昇は、活性酸素ラジカル形成を増加させ、内皮機能不全を引き起こすことが発見されている。内皮機能不全は、抗酸化剤で弱毒化することができる。(Pleinerら著、「FFA誘発内皮機能不全はビタミンCで治療可能である(FFA−induced endothelial dysfunction can be corrected by vitamin C)」、ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・エンドクライノロジー・アンド・メタボリズム(The Journal of Clinical Endocrinology &Metabolism)、2002年、第87巻、p.2913−7)。この作用は、さらに有害な作用を有することが疑われるトランス脂肪酸によって高められる(Lopez Garciaら著、「トランス脂肪酸の消費は、炎症および内皮機能不全の血漿バイオマーカーに関係している(Consumption of trans−fatty acids is related to plasma biomarkers of inflammation and endothelial dysfunction.)」、ジャーナル・オブ・ニュートリション(J Nutr )、2005年、第135巻、p.562−566;Mozaffarianら著、「トランス脂肪酸の健康上の影響:実験および観察にもとづく証拠(Health effects of trans−fatty acids: experimental and observational evidence)」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション(Eur J Clin Nutr)、2009年、第63巻付録(Suppl)2、p.S5−21)。
脂肪酸は、血圧を上昇させることが指摘されており、動脈高血圧の病因であることがわかっている(Zhengら著、「血漿脂肪酸組成物と中年成人における高血圧の6年発症率:コミュニティでのアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究(Plasma fatty acid composition and 6−year incidence of hypertension in middle−aged adults: the Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)Study)」、アメリカン・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー(Am J Epidemiol)、1999年、第150巻、p.492−500)。トランス脂肪酸は心筋梗塞と突然心臓死のリスクを上昇させることがわかっている(Ascherioら著、「トランス脂肪酸の摂取および心筋梗塞のリスク(Trans−fatty acids intake and risk of myocardial infarction)」、1994年発行、p.89,94−101;Baylinら著、「脂肪組織中の大量の18:2トランス脂肪酸はコスタリカ成人の非致死性急性心筋梗塞のリスク上昇と関係している(High 18:2 trans−fatty acids in adipose tissue are associated with increased risk of nonfatal acute myocardial infarction in Costa Rican adults.)」、ジャーナル・オブ・ニュートリション(J Nutr)、2003年、第133巻、p.1186−1191)。
トランス脂肪酸は、脂肪酸の血中濃度の長期的上昇とともに、インスリン耐性、および真性糖尿病の発症の原因である(Krachlerら著、「2型糖尿病発症前の赤血球膜の脂肪酸プロフィール(Fatty acid profile of the erythrocyte membrane preceding development of Type 2 diabetes mellitus)」、栄養、代謝&心血管疾患(Nutr Metab Cardiovasc Dis)、2008年、第18巻、p.503−510;Lionettiら著、「長期的過剰栄養からインスリン耐性まで:脂肪貯蔵能力の役割と炎症(From chronic overnutrition to insulin resistance: the role of fat−storing capacity and inflammation)」、栄養、代謝&心血管疾患(Nutr Metab Cardiovasc Dis)、2009年、第19巻、p.146−152;Yuら著、「筋肉におけるインスリンアクセプター基質−1(IRS−1)に関連するホスファチジルイノシトール3キナーゼ活性のインスリン活性化を脂肪酸が阻害するメカニズム(Mechanism by which fatty acids inhibit insulin activation of insulin receptor substrate−1(IRS−1)−associated phosphatidylinositol 3−kinase activity in muscle)」、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J Biol Chem)、2002年、第277巻、p.50230−50236)。
つまり、現在のところ、慢性的な過剰栄養の結果としての脂肪酸代謝回転数増加が、工業先進国の最も一般的な疾病の発症における最も重要な病理学的メカニズムであると考えられている(Bays著、「シック・ファット、代謝疾患、およびアテローム性動脈硬化症(Sick fat,metabolic disease, and atherosclerosis)」、アメリカン・ジャーナル・オブ・メディシン(Am J Med)、2009年、第122巻、p.S26−37)。過剰体重を効果的に低減するための医学的治療が欠如している(Aronneら著、「予防が失敗するとき:肥満治療戦略(When prevention fails: obesity treatment strategies)」、アメリカン・ジャーナル・オブ・メディシン(Am J Med)、2009年、第122巻、p.S24−32)。しかし、肥満の人でも、体重減少に成功し、脂肪酸誘発疾病が顕著に低減する場合もあり得る(Lienら著、「STEDMANプロジェクト:体重の減少、維持、および回復中における行動的体重喪失介入の生物物理学的、生化学的、および代謝的効果(The STEDMAN project: biophysical, biochemical and metabolic effects of a behavioral weight loss intervention during weight loss, maintenance, and regain)」、オーミクス(Omics)、2009年、第13巻、p.21−35;Schenkら著、「体重減少および運動トレーニング後のインスリン感受性の向上は、血漿脂肪酸動員の減少によるものであり、酸化能力の増大によるものではない。(Improved insulin sensitivity after weight loss and exercise training is mediated by a reduction in plasma fatty acid mobilization, not enhanced oxidative capacity.)」、ジャーナル・オブ・フィジオロジー(J Physiol)、2009年、第587巻、p.4949−4961)。従って、脂肪酸、好ましくは病原性が高い脂肪酸の全量を効果的に低減する医療装置が望ましい。
【0023】
皮下脂肪組織の外科的抽出は、循環脂肪酸濃度またはその定性的含有量の低減には無効であることがわかった。血液からの直接吸着による高濃度のコレステロールを担持するリポタンパク質分画の除去は、これらの粒子の吸着または濾過によって達成することができる。これらのオンライン血液精製手順はLDLアフェレーシスと呼ばれる。これらの手順は、LDLコレステロールを低減するように設計されているが、さらにトリグリセリドも吸着する。しかし、抽出されるトリグリセリドの量は、体内の脂肪酸含有量を効果的に低減するには十分ではない。
【0024】
脂肪酸の含有量は、結合状態で静止しているときは少ない。しかし、脂肪分解中には顕著な増加が観察される(以下を参照)。水性媒体中では不溶性であるため、非エステル化脂肪酸の輸送は、タンパク質および細胞構造体によって達成される(Spectorら著、「ヒト血小板による長鎖遊離脂肪酸の利用(Utilization of long−chain free fatty acids by human platelets)」、ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)、1970年、第49巻、p.1489−1496)。血液中の主要な輸送タンパク質はアルブミンである。脂肪酸のための特定の結合部位が少なくとも10箇所存在することが文書化されている。しかし、結合力は、脂肪酸またはその他の脂質が過剰に存在する条件下で脂肪酸とミセルを形成することにより劇的に増加する可能性がある(Schubigerら著、「混合ミセル:比較したオメガ−
123I−ヘプタデカン酸の新しい問題のない解決策(Mixed micelles: a new problem−free solution for omega−
123I−heptadecanoic acid in comparison)」、核医学(Nuklearmedizin)、1984年、第23巻、p.27−28)。
【0025】
約600μmol/lのアルブミン容量モル濃度で、少なくとも0.006mol/lの脂肪酸結合力が存在するであろう。これは、約0.0035kg/lに相当する(BerkおよびStump著、「長鎖遊離脂肪酸の細胞取り込みメカニズム(Mechanisms of cellular uptake of long chain free fatty acids)」、モレキュラー・アンド・セルラー・バイオケミストリー(Mol Cell Biochem)、1999年、第192巻、p.17−31)。
【0026】
さらに、脂肪酸は、モノ−、ジ−、またはトリアシルグリセロールとしてエステル化した形態で輸送される。固定化血清濃度はかなり変化する。しかし、標準値は150mg/dl(1.7mmol/l)未満に設定されている。食後または運動中、濃度は数倍に上昇し、1000mg/dl(11.3mmol/l)を超えることさえあり得る。
【0027】
循環内の様々な部位における脂質含有量の違いを調査した報告は、ほんの僅かしか存在しない。これらの調査では、中心静脈系(大静脈)には、その他の測定部位と比べて、脂肪酸およびトリグリセリドの値が有意に高いことがわかった(Wieseら著、「乳児期、小児期、および青年期における血管系の脂質組成物(Lipid composition of the vascular system during infancy, childhood, and young adulthood)」、ジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ(J. Lipid Res.)1967年、第8巻、p.312−320;Zaunerら著、「肺の動脈−静脈における脂質と脂質代謝の違い(Pulmonary arterial−venous differences in lipids and lipid metabolites)」、レスピレーション(Respiration)、1985年、第47巻、p.214−219)。運動中および誘発された脂質分解中の中心静脈脂質含有量の変化についての報告は存在しない。
【0028】
ここで、後述のように、身体運動中に中心腹静脈で脂質含有量が急激に増加し、中心評価部位と抹消評価部位との間の脂質含有量の差が増大することがわかった。
【0029】
従って、本明細書にて開示される方法および装置および可溶化化合物を用いて血液中の脂肪酸含有量を低減することは、血液中または生体中の脂肪酸レベルの上昇に伴う上述の疾病を治療するために有用である。
【0030】
従って、本発明は、血液から脂肪酸を除去するために本明細書中に開示された可溶化化合物を使用することによる、2型糖尿病、肝臓脂肪症等の脂肪酸誘発疾患、動脈性高血圧、心筋梗塞、脳卒中、突然心臓死、アテローム性動脈硬化症等の心臓血管疾患、大脳、心筋、腎臓、および勃起不全等のアテローム性動脈硬化症に伴う疾病の、治療および予防、ならびに体重低減とコレステロール低減、さらにインスリン耐性の予防、および真性糖尿病の発症の予防に関する。
【0031】
[脂質分解]
血漿脂肪酸は、重要なエネルギー基質である。脂肪酸の消化吸収率は、脂肪組織トリアシルグリセロールの蓄えからの加水分解過程による動員により独占的に決定される。人間において、脂肪組織の脂肪分解は、ホルモン、パラクリン、および/または自己分泌の多数のシグナルによって調節される。代表的な主なホルモンシグナルは、カテコールアミン、インスリン、成長ホルモン、ナトリウム利尿ペプチド、チロキシン、およびいくつかのアディポサイトカインであり得る(StichおよびBerlan著、「NEFA消化吸収率の生理学的調節:脂質分解経路(Physiological regulation of NEFA availability: lipolysis pathway)」、プロシーディングス・オブ・ザ・ニュートリション・ソサイアティ(Proc Nutr Soc)、2004年、第63巻、p.369−374)。これらのシグナルの絶対的レベルならびに相対的重要性および寄与は生理学的状況により様々であり、食事および身体運動はホルモンシグナル伝達に影響を与える主要な生理学的変数である。それぞれ独特の機能を有するリパーゼと呼ばれる一群の酵素は、エネルギー貯蔵のために脂肪細胞内に貯蔵されたトリグリセリドの分解を担っている。炭化水素および脂肪酸は、筋肉収縮の主要なエネルギー燃料である。運動トレーニング中、脂肪分解により、7.1+/−1.2マイクロモル×分(−1)×kg(−1)体重を遊離し、その結果、体重100kgの人で1時間あたり4200μmolの脂肪酸が遊離されることになる。これは、0.15kgの脂肪酸に相当する(Cogganら著、「持久力訓練を行った人と行っていない人の高負荷運動中の脂肪代謝(Fat metabolism during high−intensity exercise in endurance−trained and untrained men)」、メタボリズム(Metabolism)、2000年、第49巻、p.122−128)。
しかし、薬理学的介入および/または局所物理学的手段による脂肪分解の刺激は、脂肪分解能力をさらに高め得る。天然のアクセプター作用薬または薬剤を全身に適用することにより、脂肪分解を3倍まで増加させた(Riisら著、「甲状腺機能亢進症における局部脂肪分解の上昇(Elevated regional lipolysis in hyperthyroidism)」、ジャーナル・オブ・クリニカル・エンドクリノロジー・アンド・メタボリズム(J Clin Endocrinol Metab)、2002年、第87巻、p.4747−4753;Barbeら著、ヒト皮下脂肪組織における脂肪分解および栄養血流の制御におけるベータ1−、ベータ2−、およびベータ3−アドレナリンアクセプターの役割のその場での評価(In situ assessment of the role of the beta 1−,beta 2− and beta 3−adrenoceptors in the control of lipolysis and nutritive blood flow in human subcutaneous adipose tissue)、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Br J Pharmacol)、1996年、第117巻、p.907−913)。脂肪分解の刺激を示すアドレナリン受容体アゴニストは:アドレナリン、ノルアドレナリン、イソプレナリン、エフェドリン、イソプロテリオール(isoproteriol)、サルブタモール、テオフィリン、フェノテロール、オルシプレナリン、他である。
【0032】
また、脂肪分解効果は、脂肪組織の物理的変化からも説明されてきた。研究者達は、絶食中に超音波を実施した場合、脂肪組織に液化効果をもたらし、脂肪組織の含有量を減少させることを発見した(Fagaら著、「小型ブタの網の超音波支援脂肪分解(Ultrasound−assisted lipolysis of the omentum in dwarf pigs)」、エステティック・プラスティック・サージェリー(Aesthetic Plast Surg)、2002年、第26巻、p.193−196;三輪ら著、「超音波適用の脂肪動員への効果(Effect of ultrasound application on fat mobilization)」、パソフィジオロジー(Pathophysiology)、2002年、第9巻、p.13)。
【0033】
上述の全ての手段において脂肪分解の増加が文書化されているが、非エステル化脂肪酸の濃度に対する測定可能な効果は小さかった。パイロット調査では、脂肪分解の刺激後、本発明の脂肪酸可溶化方法を用いて測定した場合、脂肪酸の含有量は非常に増加することがわかった。さらに、脂肪酸の含有量は、末梢の循環部より腹部の静脈系内の方がかなり高いことがわかった。この発見は、様々な血液収集部位を同時に測定したときの動物実験では観察されていなかったため、驚くべきことである。
【0034】
従って、本発明の手順により、かつアクセス部位として腹部の中心静脈を使うことにより、脂肪酸を除去する血液浄化を行いながら脂肪分解を刺激することが、本発明の好ましい実施形態である。
【0035】
上記手順を行いながら、血液中で輸送されるエステル化または非エステル化脂肪酸の含有量を上昇させることができるならば、抽出画分を増加させることができよう。
【0036】
驚くべきことに、この課題は、本発明の方法により脂肪分解を増加させることにより解決することができる。
【0037】
<水性媒体中の脂肪酸の溶媒和および付着挙動>
カルボン酸の水中での溶解度は、炭素鎖が炭素原子4個を超え、かつヒドロキシ(−OH)基、カルボキシル(−COOH)基、またはその他の親水性の極性基または荷電基が存在しない場合、および/またはアルキル置換基またはその他の親油性基の導入により、非常に低い。
【0038】
溶解度は洗剤により上昇させることができる。洗剤は、脂肪酸ミセルに貫入し、それによってミセルの安定性が低くなってサイズが小さくなる。また、水性媒体中の遊離脂肪酸分子の数が増加する。遊離脂肪酸とミセルの両方は、脂肪親和性構造体に結合する傾向がある。脂肪親和性構造体としては、炭素、金属、セラミックス、天然および合成ポリマーがある。さらに、有機構造物は親油性の領域を担持する。これらのいくつかは、脂肪酸と特異的に結合し、膜または脂質輸送タンパク質を形成するように設計されている。立体結合部位はほとんどの場合、疎水性アミノ酸によって線分される。
【0039】
血液中では、脂質は特殊な輸送タンパク質に静電気的に結合される。脂肪酸は主にアルブミンによって輸送される。このアルブミン分子での脂肪酸の結合は、疎水性ポケットに局所化した静電気力にも依存する。これらポケットの結合エネルギーは多様であるが、これらのポケット全てのpKaは実質的に脂肪酸のCMCより高い。従って、遊離脂肪酸が完全に除去された後でも、周囲の媒体に脂肪酸が依然として存在する。脂肪酸は有機溶媒中での溶解度は高いため、脂肪酸の遊離化のために有機溶媒を使用すると、アルブミンからの有機溶媒の抽出はほぼ完全であることがわかった。しかし、これらの溶媒は、タンパク質構造を変化させるため、生体内でのさらなる処理または使用には不適切である。医学等の目的にアルブミンを使用するには、アルブミンの構造および機能性を変化させずに脂肪酸含有量を低減する必要がある。この課題は、脂肪酸との結合親和力がアルブミンよりも高い活性化炭素粒子により解決することができる。しかし、このプロセスは、アルブミンの精製というさらなる工程を必要とする。従って、現在までのところ、アルブミン分子の超微細構造と機能を変化させずに、水性媒体内でアルブミンの脂肪酸含有量全てを素早く遊離および可溶化できる手順はない。
【0040】
また、カルボン酸は、リン脂質小胞内で輸送される。カルボン酸とリン脂質のそれぞれの炭化水素鎖間の静電相互作用により、カルボン酸は周囲の水性媒体に拡散されない。
【0041】
このことは、必要な変更を加えれば、その他の有機溶液、バイオマス、または有機廃水にも当てはまる。望ましくは、有機溶媒を使用せずに、さらに微調整、精製、または使用される有機溶液では、代替の生体適合性手順が望ましい。これまでのところ、このような手順は欠如している。
【0042】
驚くべきことに、本目的は、少なくとも1つのアミジノ部分および/または少なくとも1つのグアニジノ部分を含む本明細書にて開示される少なくとも1つの可溶化化合物の使用、および特には、一般式(I)、(II)、および(III)の可溶化化合物の使用、および最も特には、アルギニンおよびその誘導体の使用により、達成することができる。
【0043】
除去するカルボン酸が通常含まれるのは、血液あるいは血漿等の水性媒体または水溶液中、またはミルク等の水性エマルション中、または燃料、ガス、バイオディーゼル、ガソリン等の有機媒体中、または亜麻仁油、くるみ油、亜麻油、月見草油、ヒマワリ油、ヒマワリ種子油、大豆油、菜種油、オリーブ油、バージンオリーブ油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、綿実油、ココナッツ油、コーン油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、コメヌカ油、サフラワー油、ゴマ油等の植物油ならびに魚油等の動物油等の油中、またはバター、オレオ、またはマーガリン等の脂肪中である。
【0044】
カルボン酸が水、水性媒体、水性エマルション、または水性懸濁液中に含有される場合、少なくとも1つの可溶化化合物は、その水性媒体、エマルション、または懸濁液に直接添加することもできる。または、少なくとも1つの可溶化化合物を水中に溶解させ、この水溶液を、カルボン酸を含有する水性媒体、エマルション、または懸濁液に添加することもできる。この添加後、ナノエマルションおよび/またはマイクロエマルションの形成が観察される。
【0045】
カルボン酸が有機媒体または親油性有機媒体に含有される場合、可溶化化合物を水中に溶解させ、可溶化化合物の水溶液を有機媒体に添加する。二相混合物が得られ、カルボン酸は水相中に移動する。カルボン酸1分子と可溶化化合物1分子の複合体あるいは凝集体、またはその2量体または3量体が形成され、カルボン酸は水溶性になると想定される。従って、有機層と水層の二相混合物を撹拌または振盪することにより、2層を徹底的に混合することが好ましい。水相に含有されるカルボン酸は、相分離により除去することができる。所望であれば、抽出法を繰り返すことができる。
【0046】
カルボン酸が油または脂肪に含有される場合、可溶化化合物を水中に溶解させ、可溶化化合物の水溶液を油または脂肪に添加する。所望であれば、有機溶媒を油または脂肪に添加して、油または脂肪の粘度を低減して油または脂肪を撹拌しやすくすることができる。油または脂肪と可溶化化合物水溶液の混合物を撹拌する。カルボン酸は水相中に移動し、この水相はデカンテーションまたは相分離によって除去することができる。所望であれば、抽出プロセスを数回繰り返すことができる。
【0047】
従って、本発明は、さらに、少なくとも1つの可溶化化合物と少なくとも1つのカルボン酸をマイクロエマルゲート(micoremulgated)またはナノエマルゲート(nanoemulgated)した形態で含有する水性マイクロエマルションおよび/または水性ナノエマルションに関する。
【0048】
可溶化化合物の使用量が1.2〜2.8モル当量超、好ましくは1.5〜2.5モル当量、より好ましくは1.7〜2.3モル当量超である場合、1回の抽出工程で90%を超えるカルボン酸を除去することが可能である。抽出工程を2回繰り返すと、99%までのカルボン酸を除去することができる。
【0049】
除去可能なカルボン酸は、特に、炭素原子を5個超、より好ましくは7個超、特に好ましくは9個超を有するカルボン酸である。好ましくは、カルボン酸は本明細書にて開示する脂肪酸であるが、同時に、薬剤や毒素等のカルボキシル基またはカルボン酸基を含有するその他の親油性化合物も本方法により除去することができる。本発明から明示的に除外される1つのカルボン酸はナプロキセンである。さらに、生薬配合物を調製するために薬剤類を可溶化する方法および化合物または装置を提供することは、本発明の意図するところではない。特に好ましいのは、油、ガソリン、ガス、および燃料からのナフテン酸の除去および可溶化である。さらに、好ましいカルボン酸は、不飽和脂肪酸およびポリ不飽和脂肪酸等の二重結合および/または三重結合を含有するようなカルボン酸である。さらにより好ましいのは、生理学的カルボン酸、および特には人類に生じるこれらの生理学的カルボン酸である。工業的目的には、油および脂肪等の原料物質から不飽和脂肪酸を除去および可溶化することが好ましく、医学的目的には、患者の血液から飽和脂肪酸を除去することが好ましい。さらに、上述の供給源、特に魚等の動物、トウモロコシ、オリーブ、トウモロコシ、作物、米、大豆等からの油および脂肪中に生じるこれらのカルボン酸が好ましい。脂肪、ワックス、油、燃料、ガソリン等の有機媒体から除去されるカルボン酸がエステル化した形態で含有される(即ち、エステル中で結合される)場合、本発明の除去および可溶化を行う前に鹸化工程を実施することができる。このような鹸化は、水と、少なくとも水と相溶性のある第2の溶媒との溶媒混合物中で行うことが好ましい。さらに好ましいカルボン酸は、ペルフルオロプロピオン酸、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ペルフルオロデカン酸、ペルフルオロドデカン酸、ペルフルオロヘキサデカン酸等のペルフルオロカルボン酸、ならびにその他のペルフルオロカルボン酸とプロフィリン酸(prophyrinic acid)である。
【0050】
本発明は、さらに、安息香酸、4−アミノ安息香酸、アントラニル酸、ベンジル酸、ケイ皮酸、サリチル酸、フェニル酢酸、4−メトキシ−フェニル酢酸、没食子酸、フタル酸、テレフタル酸、アビエチン酸、ビシンコニン酸、キナ酸、コリスミ酸、クラブラン酸、フザリン酸、フシジン酸、尿酸、馬尿酸、イボテン酸、インドール−3−酢酸、マンデル酸、スチフニン酸、ウスニン酸、アブシシン酸、トロパ酸、ベンゾキノンテトラカルボン酸、ボズウェリア酸、コーヒー酸、カルミン酸、ケノデオキシコール酸、クマル酸、クロモグリク酸、シナリン、メクロフェナム酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ドウモイ酸、ピペミド酸、フェルラ酸、5−ヒドロキシフェルラ酸、イソフタル酸、メフェナム酸、メタ−クロロ過安息香酸、ペルオキシ安息香酸、プロトカテク酸、ナリジクス酸、シナピン酸、スクロン酸等の、上述のターゲット群に属する芳香族カルボン酸の可溶化、または除去も意味する。
【0051】
特に好ましいのは、血液からのカルボン酸の除去および可溶化である。血液中のカルボン酸は、このようなカルボン酸および特に脂肪酸の増加および/または非健康的レベルによって引き起こされる、および/またはこれに伴う、様々な疾病を招く。
【0052】
カルボン酸は好ましくは親油性であり、好ましくは、n−オクタノールと水との間の分配係数(logK
owまたはオクタノール−水分配係数としても知られる)は、>2.0、好ましくは>3.0、より好ましくは>4.0である。(例えば、酢酸のlogK
owは−0.17、酪酸は0.79、オクタン酸は3.05、およびデカン酸は4.09である。)
【0053】
また、除去するカルボン酸のpKs値が>4.85、好ましくは>4.87であると好ましい。(例えば:酢酸のpKsは4.76、酪酸は4.82、ペンタン酸は4.84、およびオクタン酸は4.89である。)
【0054】
従って、本発明は、全くまたは余り水溶性ではなく、本明細書で開示される可溶化化合物により好ましくはナノ−またはマイクロエマルションの形態で水に可溶化され得るカルボン酸を分離する方法を提供する。脂肪酸は、水相に移動すると、本明細書にて開示される様々な技術により除去することができる。
【0055】
従って、本発明は、水性媒体または有機性媒体中でカルボン酸を可溶化する可溶化化合物の使用に関する。この可溶化化合物は、少なくとも1つのアミジノ基および/または少なくとも1つのグアニジノ基を含有し、n−オクタノールと水の分配係数K
owは<6.30である。
【0056】
「水性媒体または有機性媒体中でのカルボン酸の可溶化」という用語は、次のように理解すべきである:可溶化するカルボン酸は、油または燃料等の有機性媒体中または血液やミルク等の水性媒体中に含有され、水相中で可溶化化合物を使用することにより可溶化される。
【0057】
従って、本発明は、さらに、水相中で水性媒体または有機性媒体からカルボン酸を可溶化する可溶化化合物の使用に関し、この可溶化化合物は、少なくとも1つのアミジノ基および/または少なくとも1つのグアニジノ基を含有し、さらに可溶化化合物のn−オクタノールと水の分配係数K
owが<6.30であることを特徴とすると記載することもできる。
【0058】
さらに、本発明は、水性媒体中で親油性カルボン酸を可溶化する可溶化化合物の使用に関し、この可溶化化合物は、少なくとも1つのアミジノ基および/または少なくとも1つのグアニジノ基を含有し、さらに可溶化化合物のn−オクタノールと水の分配係数K
owが<6.30であることを特徴とする。
【0059】
カルボン酸が血液等の水相中に含有される場合、血液中にはほんの僅かな量の遊離カルボン酸しか存在しない。これは、これらのカルボン酸および特には脂肪酸の水溶性が低いためである。血液から除去されるカルボン酸のほとんどは、アルブミン等のその他の化合物に結合しており、もはや遊離カルボン酸ではない。しかし、血液中の非常に少量の遊離カルボン酸と、もはや遊離していないと見なされるそれ以外の結合したまたは蒸着したカルボン酸との間には均衡がある。ここで、遊離カルボン酸が本発明の方法により可溶化化合物で複合体を形成する場合、これらの遊離カルボン酸は均衡から除去され、アルブミンと結合したカルボン酸は血液中に放出される。その後、この放出されたカルボン酸を再び本発明の方法で除去し、最終的には血液中で遊離または結合した形態で含有されるほとんど全てのカルボン酸を除去することができるようにする。カルボン酸および特には脂肪酸を血液から除去するこのような連続処理には、特に透析が好適である。
【0060】
本明細書にて開示する可溶化化合物は、少なくとも1つのアミジノ基、または少なくとも1つのグアニジノ基、または少なくとも1つのアミジノ基および少なくとも1つのグアニジノ基を含む。アミジノ基が置換されない場合、次式で表すことができる:H
2N−C(NH)−。しかし、次の一般式で表されるように、3つの全ての水素原子を置換基R、R’、およびR’’で置き換えることも可能である:(R)(R’)N−C(NR’’)−。次式で表されるように、3つの水素原子のうち2つが置換基で置き換えられると好ましい:(R’)NH−C(NR’’)−または(R)(R’)N−C(NH)−。従って、少なくとも1つの水素を有するアミジノ基が好ましい。グアニジノ基が置換されない場合、次式で表すことができる:H
2N−C(NH)−NH−。しかし、次の一般式で表されるように、4つ全ての水素原子を置換基R、R’、R’’、およびR’’’で置き換えることも可能である:(R)(R’)N−C(NR’’)−N(R’’’’)−。次式で表されるように、4つの水素原子のうち3つが置換基で置き換えられると好ましい:(R’)NH−C(NR’’)−N(R’’’’)−または(R)(R’)N−C(NH)−N(R’’’’)−または(R)(R’)N−C(NR’’)−NH−。従って、少なくとも1つの水素、好ましくは2つの水素を有するグアニジノ基が好ましい。
【0061】
可溶化化合物は少なくとも1つのアミジノ基および/または少なくとも1つのグアニジノ基を含有するが、グアニジノ基が好ましい。さらに、可溶化化合物に含有される炭素原子は、好ましくは15以下、より好ましくは14以下、より好ましくは13以下、より好ましくは12以下、より好ましくは11以下、より好ましくは10以下、より好ましくは9以下、より好ましくは8以下であり、最も好ましくは、可溶化化合物はアルギニン誘導体である。ポリマーまたはオリゴマー可溶化化合物の場合、1つのアミジノ部分あたりまたは1つのグアニジノ部分あたり、好ましくは10以下の炭素原子、より好ましくは8以下の炭素原子が存在する。
【0062】
さらに、可溶化化合物は、親水性であり、次の置換基の1つ以上を含有することが好ましい:
−NH
2、−OH、−PO
3H
2、−PO
3H
-、−PO
32-、−OPO
3H
2、−OPO
3H
-、−OPO
32-、−COOH、−COO
-、−CO−NH
2、−NH
3+、−NH−CO−NH
2、−N(CH
3)
3+、−N(C
2H
5)
3+、−N(C
3H
7)
3+、−NH(CH
3)
2+、−NH(C
2H
5)
2+、−NH(C
3H
7)
2+、−NHCH
3、−NHC
2H
5、−NHC
3H
7、−NH
2CH
3+、−NH
2C
2H
5+、−NH
2C
3H
7+、−SO
3H、−SO
3-、−SO
2NH
2、−CO−COOH、−O−CO−NH
2、−C(NH)−NH
2、−NH−C(NH)−NH
2、−NH−CS−NH
2、−NH−COOH。
【0063】
また、アルギニンの誘導体か、またはアミノ酸アルギニンあるいはアルギニン誘導体を含有するジペプチドあるいはトリペプチドあるいはポリペプチドである可溶化化合物が好ましい。
【0064】
また、アミジノ基またはグアニジノ基は、イミダゾール、ヒスチジン、クロチアニジン、または4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルアミノ)−酪酸と同様に、複素環系の一部である可能性もある。
【0065】
可溶化化合物は親水性であり、n−オクタノールと水の分配係数(K
owまたはオクタノール−水−分配係数としても知られている)はK
ow<6.30(logK
ow<0.80)、好ましくはK
ow<1.80(logK
ow<0.26)、より好ましくはK
ow<0.63(logK
ow<−0.20)、および最も好ましくはK
ow<0.40(logK
ow<−0.40)である。
【0066】
好ましい可溶化化合物は:
L−2−アミノ−3−グアニジノプロピオン酸、L−アルギニン、L−NIL、H−Homoarg−OH、ヒスチジン、Nω−ニトロ−L−アルギニン、N−ω−ヒドロキシ−L−ノルアルギニン、D−アルギニンメチルエステル、ノメガ(nomega)−モノメチル−L−アルギニン、NG,NG−ジメチルアルギニン、D−(+)−オクトピン、アルギニノコハク酸、L−カナバニン遊離塩基、クレアチン、クアニジノ酢酸、3−グアニジノプロピオン酸、4−グアニジノブタン酸、4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルアミノ)−酪酸塩、(S)−(−)−2−グアニジノグルタル酸、6−グアニジノヘキサン酸、グアニジノ、スルファグアニジン、アグマチン硫酸塩、4−グアニジノ安息香酸、1,3−ジ−o−トリル−グアニジン、クロチアニジン、L−オルニチン、N−グアニル尿素、シメチジン、1−(o−トリル)ビグアニド、クロルヘキシジン、1,1−ジメチルビグアニド、プログアニル、ポリヘキサニド、ポリ−L−アルギニン(70.000〜150.000Mw(重量平均分子量))、ジミナゼン、メラニン、4−(4,6−ジアミノ−2,2−ジメチル−2H−[1,3,5]トリアジン−1−イル、イミダゾール、メチルイミダゾール、Tyr−Arg(キョートルフィン)、Arg−Gln、Gly−Arg、Arg−Phe、Arg−Glu、Lys−Arg酢酸塩、
His−Arg、Arg−Gly−Asp(RGD)、Arg−Phe−Ala、Thr−Lys−Pro−Arg(タフトシン(Tuftsin))、Gly−Gly−Tyr−Arg、Gly−His、アルガトロバン、L−NMMA(L−NG−モノメチル−アルギニン)、L−NAME(L−ニトロ−アルギニン−メチルエステル)、L−ヒドロキシ−アルギニン−シトレートクエン酸塩、ジメチルアルギニン(ADMA)、D−ホモアルギニン、ノルアルギニン、4−カナバニン(2−アミノ−4−(グアニジノオキシ)−酪酸)、4−グアニジノ−フェニルアラニン、3−グアニジノ−フェニルアラニン、O−α−ヒプリル−L−アルギニン酸、H−Arg−AMC(L−アルギニン−7−アミド−4−メチルクマリン)、L−TAME(P−トシル−L−アルギニン−メチルエステル)、ジフェニルアセチル−D−Arg−4−ヒトロキシベンジルアミド、アグマチン(アルガミン(argamin);1−アミノ−4−グアニジノブタン硫酸塩)、L−アルギニン−エチルエステル、L−アルギニン−メチルエステル、グアニジン、グアニジン酢酸塩、グアニジン炭酸塩、硝酸グアニジン、グアニジンチオシアネート、グアニル尿素、グアニル尿素リン酸塩、グアニル尿素ジニトロアミド、2−グアニジノアセトアルデヒド−ジメチルアセタール、ジシアンジアミド、2−グアニジノベンジミダゾール、S−((2−グアニジノ−4−チアゾリル)メチル)−イソチオ尿素、グアニジノブチルアルデヒド、4−グアニジノ安息香酸、レオヌリン(4−グアニジノ−n−ブチルシリンゲート)、
アンバゾン([4−(2−(ジアミノメチリデン)−ヒドラジニル)フェニル]イミノチオ尿素)、アミロリド(3,5−ジアミノ−N−カルバミミドイル−6−クロルピラジン−2−カルバミド)、アミノグアニジン、アミトロール(3−アミノ−1,2,4−トリアゾール)、ニトログアニジン、アルギニノコハク酸、バレチン((2S,5Z)−シクロ−[(6−ブロム−8−エン−トリプトファン)−アルギニン])、リジン、クロルヘキシジン(1,1’−ヘキサメチレンビス[5−(4−クロルフェニル)−ビグアニド])、シメチジン(2−シアン−1−メチル−3−[2−(5−メチルイミダゾール−4−イルメチルスルファニル)−エチル]−グアニジン、クロニジン(2−[(2,6−ジクロロフェニル)イミノ]イミダゾリジン)、クロチアニジン((E)−1−(2−クロル−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン)、2,4−ジアミノピリジン、N,N’−ジ−o−トリルグアニジン、グアネチジン、クレアチン、クレアチニン、キョートルフィン(L−チロシル−L−アルギニン)、ルグドゥナム(lugdunam)、(N−(4−シアノフェニル)−N−(2,3−メチレンジオキシベンジル)クアニジノ酢酸、メトホルミン(1,1−ジメチルビグアニド)、オクトピン(N
a−(1−カルボキシエチル)アルギニン)、ポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB))、プログアニル(1−(4−クロルフェニル)−5−イソプロピルビ−グアニド)、スルファグアニジン(4−アミノ−N−(ジアミノメチレン)ベンゼンスルホン−アミド)、テトラゼン(4−アミジノ−1−(ニトロソアミノアミジノ)−1−テトラゼナ(tetrazena))、L−アルギニン−4−メトキシ−β−ナフチルアミド、L−アルギニン−β−ナフチルアミド、L−アルギニン−ヒドロキサム酸塩、L−アルギニン−p−ニトロアニリド、N−α−ベンゾイル−DL−アルギニン、Nω−ニトロ−L−アルギニン、ロベニジン、(1,3−ビス[(4−クロロベンジリデン)アミノ]−グアニジン、1−(2,2−ジエトキシエチル)グアニジン、1−(P−トリル)−グアニジン硝酸塩。
【化1】
【0067】
本発明は、広範囲にわたる、可溶化化合物と可溶化する脂肪酸との濃度比において、効果的に使用することができる。多くの場合、溶液の脂肪酸含有量は正確にはわからない。従って、添加する可溶化化合物の比率を見積もる必要がある。可溶化化合物の(遊離および結合した)脂肪酸に対するモル比が1:1000〜1000:1の範囲である場合、本発明のカルボン酸および特に脂肪酸の可溶化を達成することができる。好ましいのは1:100〜100:1の範囲である。より好ましいのは1:10〜10:1の範囲である。さらに好ましいのは1:2〜2:1の範囲である。より好ましいのは1:1〜2:1の比である。使用する可溶化化合物のモル過剰は、3%または5%または7%または8%または10%または12%または15%または20%または25%または30%または35%または40%または45%または50%または55%または60%または70%または80%または90%または100%または120%または140%または160%または180%または200%であることが好ましい。
その上、脂肪酸の可溶化化合物に対するモル比は1:1〜1:200であることが好ましい。より好ましいのは、脂肪酸の可溶化化合物に対するモル比の範囲が1:1〜1:100、より好ましくは1:1〜1:50、さらにより好ましくは1:1〜1:30、さらにより好ましくは1:1〜1:25、さらにより好ましくは1:1〜1:20、さらにより好ましくは1:1〜1:15、さらにより好ましくは1:1〜1:10、さらにより好ましくは1:1〜1:9、さらにより好ましくは1:1〜1:8、さらにより好ましくは1:1〜1:7、さらにより好ましくは1:1〜1:6、さらにより好ましくは1:1〜1:5、さらにより好ましくは1:1〜1:4、さらにより好ましくは1:1〜1:3、さらにより好ましくは1:1〜1:2、さらにより好ましくは1:1〜1:1.8、さらにより好ましくは1:1〜1:1.6、さらにより好ましくは1:1〜1:1.5、さらにより好ましくは1:1〜1:1.4、また好ましくは1:1〜1:1.3、また好ましくは1:1〜1:1.2、また好ましくは1:1〜1:1.1、また好ましくは1:1〜1:1.05、また好ましくは1:1.2〜1:2.8、また好ましくは1:1.4〜1:2.6、また好ましくは1:1.6〜1:2.4、また好ましくは1:1.8〜1:2.2、より好ましくは1:1.9〜1:2.1、および最も好ましくは、脂肪酸の可溶化化合物に対するモル比の範囲は1.0:2.0である。
これらのモル比は、好ましくは、1つのアミジノ基または1つのグアニジノ基を有する可溶化化合物に関する。可溶化化合物が2つのアミジノ基、または2つのグアニジノ基、または1つのアミジノ基と1つのグアニジノ基を含有する場合、前記可溶化化合物の量の半分のみを好ましくは使用する。従って、このような場合、脂肪酸の可溶化化合物に対するモル比は1:0.5〜1:25、好ましくは1:0.6〜1:1.4、また好ましくは1:0.7〜1:1.3、また好ましくは1:0.8〜1:1.2、また好ましくは1:0.9〜1:1.1、より好ましくは1:0.95〜1:1.05、および最も好ましくは、脂肪酸の可溶化化合物に対するモル比は1.0:1.0である。
【0068】
可溶化は、好ましくは、pH値>7.0、およびより好ましくはpH範囲7.0〜9.0で行う。しかし、除去するカルボン酸を含有する媒体によっては、14までのpH値を使用可能であるが、血液からカルボン酸を除去する場合は7.0〜8.0のpH範囲を好ましくは使用する。しかし、完全な可溶化が得られない場合、可溶化化合物をさらに添加するか、またはpH値を上げるか、または水層を分離して抽出プロセスを繰り返すか、またはこれら3つの可能性の組み合わせを使用する。
【0069】
本発明の可溶化化合物のいくつかは、次の一般式(I)および(II)で表すことができる:
【化2】
式中、
R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、相互に独立して、−H、−OH、−CH=CH
2、−CH
2−CH=CH
2、−C(CH
3)=CH
2、−CH=CH−CH
3、−C
2H
4−CH=CH
2、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−CH(CH
3)
2、−C
4H
9、−CH
2−CH(CH
3)
2、−CH(CH
3)−C
2H
5、−C(CH
3)
3、−C
5H
11、−CH(CH
3)−
3H
7、−CH
2−CH(CH
3)−C
2H
5、−CH(CH
3)−CH(CH
3)
2、−C(CH
3)
2−C
2H
5、−CH
2−C(CH
3)
3、−CH(C
2H
5)
2、−C
2H
4−CH(CH
3)
2、−C
6H
13、−C
7H
15、シクロ−C
3H
5、シクロ−C
4H
7、シクロ−C
5H
9、シクロ−C
6H
11、−PO
3H
2、−PO
3H
-、−PO
32-、−NO
2、−C≡CH、−C≡C−CH
3、−CH
2−C≡CH、−C
2H
4−C≡CH、−CH
2−C≡C−CH
3、を表し、
または、R’およびR’’は共に、残基−CH
2−CH
2−、−CO−CH
2−、−CH
2−CO−、−CH=CH−、−CO−CH=CH−、−CH=CH−CO−、−CO−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−CO−、−CH
2−CO−CH
2−、または−CH
2−CH
2−CH
2−を形成し、
Xは、−NH−、−NR’’’’−、−O−、−S−、あるいは−CH
2−、または置換された炭素原子を表し、および
Lは、
−NH
2、−OH、−PO
3H
2、−PO
3H
-、−PO
32-、−OPO
3H
2、−OPO
3H
-、−OPO
32-、−COOH、−COO
-、−CO−NH
2、−NH
3+、−NH−CO−NH
2、−N(CH
3)
3+、−N(C
2H
5)
3+、−N(C
3H
7)
3+、−NH(CH
3)
2+、−NH(C
2H
5)
2+、−NH(C
3H
7)
2+、−NHCH
3、−NHC
2H
5、−NHC
3H
7、−NH
2CH
3+、−NH
2C
2H
5+、−NH
2C
3H
7+、−SO
3H、−SO
3-、−SO
2NH
2、−CO−COOH、−O−CO−NH
2、−C(NH)−NH
2、−NH−C(NH)−NH
2、−NH−CS−NH
2、−NH−COOH、または
【化3】
を含む、またはこれらからなる群から選択される親水性置換基を表し、
または、
Lは、
−NH
2、−OH、−PO
3H
2、−PO
3H
-、−PO
32-、−OPO
3H
2、−OPO
3H
-、−OPO
32-、−COOH、−COO
-、−CO−NH
2、−NH
3+、−NH−CO−NH
2、−N(CH
3)
3+、−N(C
2H
5)
3+、−N(C
3H
7)
3+、−NH(CH
3)
2+、−NH(C
2H
5)
2+、−NH(C
3H
7)
2+、−NHCH
3、−NHC
2H
5、−NHC
3H
7、−NH
2CH
3+、−NH
2C
2H
5+、−NH
2C
3H
7+、−SO
3H、−SO
3-、−SO
2NH
2、−CO−COOH、−O−CO−NH
2、−C(NH)−NH
2、−NH−C(NH)−NH
2、−NH−CS−NH
2、−NH−COOH、または
【化4】
を含む、またはこれらからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する、C
1〜C
8の直鎖又は分枝鎖、および飽和または不飽和の炭素鎖を表し、
または
Lは、ベンゼン環、および好ましくは、
−NH
2、−OH、−PO
3H
2、−PO
3H
-、−PO
32-、−OPO
3H
2、−OPO
3H
-、−OPO
32-、−COOH、−COO
-、−CO−NH
2、−NH
3+、−NH−CO−NH
2、−N(CH
3)
3+、−N(C
2H
5)
3+、−N(C
3H
7)
3+、−NH(CH
3)
2+、−NH(C
2H
5)
2+、−NH(C
3H
7)
2+、−NHCH
3、−NHC
2H
5、−NHC
3H
7、−NH
2CH
3+、−NH
2C
2H
5+、−NH
2C
3H
7+、−SO
3H、−SO
3-、−SO
2NH
2、−CO−COOH、−O−CO−NH
2、−C(NH)−NH
2、−NH−C(NH)−NH
2、−NH−CS−NH
2、−NH−COOH、−NH
2、−OH、−OPO
3H
2、−OPO
3H
-、−OPO
32-、−NH
3+、−NH−CO−NH
2、−N(CH
3)
3+、−N(C
2H
5)
3+、−N(C
3H
7)
3+、−NH(CH
3)
2+、−NH(C
2H
5)
2+、−NH(C
3H
7)
2+、−NHCH
3、−NHC
2H
5、−NHC
3H
7、−NH
2CH
3+、−NH
2C
2H
5+、−NH
2C
3H
7+、−SO
3H、−SO
3-、−SO
2NH
2、−CO−COOH、−O−CO−NH
2、−NH−C(NH)−NH
2、−NH−CS−NH
2、−NH−COOH、または
【化5】
を含む、またはこれらからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するパラ置換されたベンゼン環を表す。
【0070】
しかし、Xが−O−または−S−を表し、かつLが、−NH
2、−OH、−OPO
3H
2、−OPO
3H
-、−OPO
32-、−NH
3+、−NH−CO−NH
2、−N(CH
3)
3+、−N(C
2H
5)
3+、−N(C
3H
7)
3+、−NH(CH
3)
2+、−NH(C
2H
5)
2+、−NH(C
3H
7)
2+、−NHCH
3、−NHC
2H
5、−NHC
3H
7、−NH
2CH
3+、−NH
2C
2H
5+、−NH
2C
3H
7+、−SO
3H、−SO
3-、−SO
2NH
2、−CO−COOH、−O−CO−NH
2、−NH−C(NH)−NH
2、−NH−CS−NH
2、−NH−COOH、
【化6】
を表す場合、このような化合物は好ましくなく、本願から除外することができる。
【0071】
また、式中Xが、−NH−または−NR’’’’−を示し、Lが、−OPO
3H
2、−OPO
3H
-、−OPO
32-、−NH−CO−NH
2、−CO−COOH、−O−CO−NH
2、−NH−C(NH)−NH
2、−NH−CS−NH
2、または−NH−COOHを示す化合物も除外される。
【0072】
残基Lは、R
1〜R
13として定義される置換基でさらに置換されてもよい。残基Lは、好ましくは1〜10の炭素原子、より好ましくは1〜6の炭素原子、および最も好ましくは2〜4の炭素原子からなる。残基L上に存在する−COOH等の任意の置換基の炭素原子は、前述の炭素原子数に含まれる。従って、残基Lは、直鎖あるいは分枝鎖の炭素原子鎖か、またはフェニル環を含有し、1つ以上の飽和あるいは不飽和および直鎖あるいは分枝鎖のアルキル置換基、および/またはR
1〜R
13として定義される置換基と置換してもよい。
【0073】
Lの炭素鎖の範囲は、C
1〜C
7であることが好ましく、より好ましくはC
1〜C
6、および最も好ましくはC
1〜C
5である。
【0074】
水性媒体中または水中で脂肪酸を可溶化するために使用可能な一般式(I)または(II)の化合物は、次式(I)または(II)によって表される:
【化7】
式中、
R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、相互に独立して−H、−OH、−CH=CH
2、−CH
2−CH=CH
2、−C(CH
3)=CH
2、−CH=CH−CH
3、−C
2H
4−CH=CH
2、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−CH(CH
3)
2、−C
4H
9、−CH
2−CH(CH
3)
2、−CH(CH
3)−C
2H5、−C(CH
3)
3、−C
5H
11、−CH(CH
3)−C
3H
7、−CH
2−CH(CH
3)−C
2H
5、−CH(CH
3)−CH(CH
3)
2、−C(CH
3)
2−C
2H
5、−CH
2−C(CH
3)
3、−CH(C
2H
5)
2、−C
2H
4−CH(CH
3)
2、−C
6H
13、−C
7H
15、シクロ−C
3H
5、シクロ−C
4H
7、シクロ−C
5H
9、シクロ−C
6H
11、−PO
3H
2、−PO
3H
-、−PO
32-、−NO
2、−C≡CH、−C≡C−CH
3、−CH
2−C≡CH、−C
2H
4−C≡CH、−CH
2−C≡C−CH
3を表し、
または、R’およびR’’は共に、残基−CH
2−CH
2−、−CH=CH−、または−CH
2−CH
2−CH
2−を形成し、
Xは、−NH−、−NR’’’’−、−O−、−S−、あるいは−CH
2−、または置換された炭素原子を表し、および
Lは、−CR
1R
2R
3、−CR
4R
5−CR
1R
2R
3、−CR
6R
7−CR
4R
5−CR
1R
2R
3、−CR
8R
9−CR
6R
7−CR
4R
5−CR
1R
2R
3、−CR
10R
11−CR
8R
9−CR
6R
7−CR
4R
5−CR
1R
2R
3、−CR
12R
13−CR
10R
11−CR
8R
9−CR
6R
7−CR
4R
5−CR
1R
2R
3、
【化8】
を表し、
R
*、R
#、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13は、相互に独立して次の残基を表し:
−NH
2、−OH、−PO
3H
2、−PO
3H
-、−PO
32-、−OPO
3H
2、−OPO
3H
-、−OPO
32-、−COOH、−COO
-、−CO−NH
2、−NH
3+、−NH−CO−NH
2、−N(CH
3)
3+、−N(C
2H
5)
3+、−N(C
3H
7)
3+、−NH(CH
3)
2+、−NH(C
2H
5)
2+、−NH(C
3H
7)
2+、−NHCH
3、−NHC
2H
5、−NHC
3H
7、−NH
2CH
3+、−NH
2C
2H
5+、−NH
2C
3H
7+、−SO
3H、−SO
3-、−SO
2NH
2、−CO−COOH、−O−CO−NH
2、−C(NH)−NH
2、−NH−C(NH)−NH
2、−NH−CS−NH
2、−NH−COOH、−H、−OCH
3、−OC
2H
5、−OC
3H
7、−O−シクロ−C
3H
5、−OCH(CH
3)
2、−P(O)(OCH
3)
2、−Si(CH
3)
2(C(CH
3)
3)、−OC(CH
3)
3、−OC
4H
9、−OPh、−OCH
2−Ph、−OCPh
3、−SH、−SCH
3、−SC
2H
5、−SC
3H
7、−S−シクロ−C
3H
5、−SCH(CH
3)
2、−SC(CH
3)
3、−NO
2、−F、−Cl、−Br、−I、−P(O)(OC
2H
5)
2、−P(O)(OCH(CH
3)
2)
2、−C(OH)[P(O)(OH)
2]
2、−Si(C
2H
5)
3、−Si(CH
3)
3、−N
3、−CN、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−CHO、−COCH
3、−COC
2H
5、−COC
3H
7、−CO−シクロ−C
3H
5、−COCH(CH
3)
2、−COC(CH
3)
3、−COCN、−COOCH
3、−COOC
2H
5、−COOC
3H
7、−COO−シクロ−C
3H
5、−COOCH(CH
3)
2、−COOC(CH
3)
3、−OOC−CH
3、−OOC−C
2H
5、−OOC−C
3H
7、−OOC−シクロ−C
3H
5、−OOC−CH(CH
3)
2、−OOC−C(CH
3)
3、−CONHCH
3、−CONHC
2H
5、−CONHC
3H
7、−CONH−シクロ−C
3H
5、−CONH[CH(CH
3)
2]、−CONH[C(CH
3)
3]、−CON(CH
3)
2、−CON(C
2H
5)
2、−CON(C
3H
7)
2、−CON(シクロ−C
3H
5)
2、−CON[CH(CH
3)
2]
2、−CON[C(CH
3)
3]
2、−NHCOCH
3、−NHCOC
2H
5、−NHCOC
3H
7、−NHCO−シクロ−C
3H
5、−NHCO−CH(CH
3)
2、−NHCO−C(CH
3)
3、−NHCO−OCH
3、−NHCO−OC
2H
5、
−NHCO−OC
3H
7、−NHCO−O−シクロ−C
3H
5、−NHCO−OCH(CH
3)
2、−NHCO−OC(CH
3)
3、−NH−シクロ−C
3H
5、−NHCH(CH
3)
2、−NHC(CH
3)
3、−N(CH
3)
2、−N(C
2H
5)
2、−N(C
3H
7)
2、−N(シクロ−C
3H
5)
2、−N[CH(CH
3)
2]
2、−N[C(CH
3)
3]
2、−SOCH
3、−SOC
2H
5、−SOC
3H
7、−SO−シクロ−C
3H
5、−SOCH(CH
3)
2、−SOC(CH
3)
3、−SO
2CH
3、−SO
2C
2H
5、−SO
2C
3H
7、−SO
2−シクロ−C
3H
5、−SO
2CH(CH
3)
2、−SO
2C(CH
3)
3、−SO
3CH
3、−SO
3C
2H
5、−SO
3C
3H
7、−SO
3−シクロ−C
3H
5、−SO
3CH(CH
3)
2、−SO
3C(CH
3)
3、−SO
2NH
2、−OCF
3、−OC
2F
5、−O−COOCH
3、−O−COOC
2H
5、−O−COOC
3H
7、−O−COO−シクロ−C
3H
5、−O−COOCH(CH
3)
2、−O−COOC(CH
3)
3、−NH−CO−NHCH
3、−NH−CO−NHC
2H
5、−NH−CS−N(C
3H
7)
2、−NH−CO−NHC
3H
7、−NH−CO−N(C
3H
7)
2、−NH−CO−NH[CH(CH
3)
2]、−NH−CO−NH[C(CH
3)
3]、−NH−CO−N(CH
3)
2、−NH−CO−N(C
2H
5)
2、−NH−CO−NH−シクロ−C
3H
5、−NH−CO−N(シクロ−C
3H
5)
2、−NH−CO−N[CH(CH
3)
2]
2、−NH−CS−N(C
2H
5)
2、−NH−CO−N[C(CH
3)
3]
2、−NH−CS−NH
2、−NH−CS−NHCH
3、−NH−CS−N(CH
3)
2、−NH−CS−NHC
2H
5、−NH−CS−NHC
3H
7、−NH−CS−NH−シクロ−C
3H
5、−NH−CS−NH[CH(CH
3)
2]、−NH−CS−NH[C(CH
3)
3]、−NH−CS−N(シクロ−C
3H
5)
2、−NH−CS−N[CH(CH
3)
2]
2、−NH−CS−N[C(CH
3)
3]
2、−NH−C(=NH)−NH
2、−NH−C(=NH)−NHCH
3、
−NH−C(=NH)−NHC
2H
5、−NH−C(=NH)−NHC
3H
7、−O−CO−NH−シクロ−C
3H
5、−NH−C(=NH)−NH−シクロ−C
3H
5、−NH−C(=NH)−NH[CH(CH
3)
2]、−O−CO−NH[CH(CH
3)
2]、−NH−C(=NH)−NH[C(CH
3)
3]、−NH−C(=NH)−N(CH
3)
2、−NH−C(=NH)−N(C
2H
5)
2、−NH−C(=NH)−N(C
3H
7)
2、−NH−C(=NH)−N(シクロ−C
3H
5)
2、−O−CO−NHC
3H
7、−NH−C(=NH)−N[CH(CH
3)
2]
2、−NH−C(=NH)−N[C(CH
3)
3]
2、−O−CO−NHCH
3、−O−CO−NHC
2H
5、−O−CO−NH[C(CH
3)
3]、−O−CO−N(CH
3)
2、−O−CO−N(C
2H
5)
2、−O−CO−N(C
3H
7)
2、−O−CO−N(シクロ−C
3H
5)
2、−O−CO−N[CH(CH
3)
2]
2、−O−CO−N[C(CH
3)
3]
2、−O−CO−OCH
3、−O−CO−OC
2H
5、−O−CO−OC
3H
7、−O−CO−O−シクロ−C
3H
5、−O−CO−OCH(CH
3)
2、−O−CO−OC(CH
3)
3、−CH
2F、−CHF
2、−CF
3、−CH
2Cl、−CH
2Br、−CH
2I、−CH
2−CH
2F、−CH
2−CHF
2、−CH
2−CF
3、−CH
2−CH
2Cl、−CH
2−CH
2Br、−CH
2−CH
2I、シクロ−C
3H
5、シクロ−C
4H
7、シクロ−C
5H
9、シクロ−C
6H
11、シクロ−C
7H
13、シクロ−C
8H
15、−Ph、−CH
2−Ph、−CPh
3、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−CH(CH
3)
2、−C
4H
9、−CH
2−CH(CH
3)
2、−CH(CH
3)−C
2H5、−C(CH
3)
3、−C
5H
11、−CH(CH
3)−C
3H
7、−CH
2−CH(CH
3)−C
2H
5、−CH(CH
3)−CH(CH
3)
2、−C(CH
3)
2−C
2H
5、−CH
2−C(CH
3)
3、−CH(C
2H
5)
2、−C
2H
4−CH(CH
3)
2、−C
6H
13、−C
7H
15、−C
8H
17、−C
3H
6−CH(CH
3)
2、−C
2H
4−CH(CH
3)−C
2H
5、−CH(CH
3)−C
4H
9、−CH
2−CH(CH
3)−C
3H
7、
−CH(CH
3)−CH
2−CH(CH
3)
2、−CH(CH
3)−CH(CH
3)−C
2H
5、−CH
2−CH(CH
3)−CH(CH
3)
2、−CH
2−C(CH
3)
2−C
2H
5、−C(CH
3)
2−C
3H
7、−C(CH
3)
2−CH(CH
3)
2、−C
2H
4−C(CH
3)
3、−CH(CH
3)−C(CH
3)
3、−CH=CH
2、−CH
2−CH=CH
2、−C(CH
3)=CH
2、−CH=CH−CH
3、−C
2H
4−CH=CH
2、−CH
2−CH=CH−CH
3、−CH=CH−C
2H
5、−CH
2−C(CH
3)=CH
2、−CH(CH
3)−CH=CH、−CH=C(CH
3)
2、−C(CH
3)=CH−CH
3、−CH=CH−CH=CH
2、−C
3H
6−CH=CH
2、−C
2H
4−CH=CH−CH
3、−CH
2−CH=CH−C
2H
5、−CH=CH−C
3H
7、−CH
2−CH=CH−CH=CH
2、−CH=CH−CH=CH−CH
3、−CH=CH−CH
2−CH=CH
2、−C(CH
3)=CH−CH=CH
2、−CH=C(CH
3)−CH=CH
2、−CH=CH−C(CH
3)=CH
2、−C
2H
4−C(CH
3)=CH
2、−CH
2−CH(CH
3)−CH=CH
2、−CH(CH
3)−CH
2−CH=CH
2、−CH
2−CH=C(CH
3)
2、−CH
2−C(CH
3)=CH−CH
3、−CH(CH
3)−CH=CH−CH
3、−CH=CH−CH(CH
3)
2、−CH=C(CH
3)−C
2H
5、−C(CH
3)=CH−C
2H
5、−C(CH
3)=C(CH
3)
2、−C(CH
3)
2−CH=CH
2、−CH(CH
3)−C(CH
3)=CH
2、−C(CH
3)=CH−CH=CH
2、−CH=C(CH
3)−CH=CH
2、−CH=CH−C(CH
3)=CH
2、−C
4H
8−CH=CH
2、−C
3H
6−CH=CH−CH
3、−C
2H
4−CH=CH−C
2H
5、−CH
2−CH=CH−C
3H
7、−CH=CH−C
4H
9、−C
3H
6−C(CH
3)=CH
2、−C
2H
4−CH(CH
3)−CH=CH
2、−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−CH=CH
2、−C
2H
4−CH=C(CH
3)
2、−CH(CH
3)−C
2H
4−CH=CH
2、−C
2H
4−C(CH
3)=CH−CH
3、−CH
2−CH(CH
3)−CH=CH−CH
3、−CH(CH
3)−CH
2−CH=CH−CH
3、−CH
2−CH=CH−CH(CH
3)
2、−CH
2−CH=C(CH
3)−C
2H
5、−CH
2−C(CH
3)=CH−C
2H
5、−CH(CH
3)−CH=CH−C
2H
5、−CH=CH−CH
2−CH(CH
3)
2、−CH=CH−CH(CH
3)−C
2H
5、−CH=C(CH
3)−C
3H
7、
−C(CH
3)=CH−C
3H
7、−CH
2−CH(CH
3)−C(CH
3)=CH
2、−C[C(CH
3)
3]=CH
2、−CH(CH
3)−CH
2−C(CH
3)=CH
2、−CH(CH
3)−CH(CH
3)−CH=CH
2、−CH=CH−C
2H
4−CH=CH
2、−CH
2−C(CH
3)
2−CH=CH
2、−C(CH
3)
2−CH
2−CH=CH
2、−CH
2−C(CH
3)=C(CH
3)
2、−CH(CH
3)−CH=C(CH
3)
2、−C(CH
3)
2−CH=CH−CH
3、−CH=CH−CH
2−CH=CH−CH
3、−CH(CH
3)−C(CH
3)=CH−CH
3、−CH=C(CH
3)−CH(CH
3)
2、−C(CH
3)=CH−CH(CH
3)
2、−C(CH
3)=C(CH
3)−C
2H
5、−CH=CH−C(CH
3)
3、−C(CH
3)
2−C(CH
3)=CH
2、−CH(C
2H
5)−C(CH
3)=CH
2、−C(CH
3)(C
2H
5)−CH=CH
2、−CH(CH
3)−C(C
2H
5)=CH
2、−CH
2−C(C
3H
7)=CH
2、−CH
2−C(C
2H
5)=CH−CH
3、−CH(C
2H
5)−CH=CH−CH
3、−C(C
4H
9)=CH
2、−C(C
3H
7)=CH−CH
3、−C(C
2H
5)=CH−C
2H
5、−C(C
2H
5)=C(CH
3)
2、−C[CH(CH
3)(C
2H
5)]=CH
2、−C[CH
2−CH(CH
3)
2]=CH
2、−C
2H
4−CH=CH−CH=CH
2、−CH
2−CH=CH−CH
2−CH=CH
2、−C
3H
6−C≡C−CH
3、−CH
2−CH=CH−CH=CH−CH
3、−CH=CH−CH=CH−C
2H
5、−CH
2−CH=CH−C(CH
3)=CH
2、−CH
2−CH=C(CH
3)−CH=CH
2、−CH
2−C(CH
3)=CH−CH=CH
2、−CH(CH
3)−CH
2−C≡CH、−CH(CH
3)−CH=CH−CH=CH
2、−CH=CH−CH
2−C(CH
3)=CH
2、
−CH(CH
3)−C≡C−CH
3、−CH=CH−CH(CH
3)−CH=CH
2、−CH=C(CH
3)−CH
2−CH=CH
2、−C
2H
4−CH(CH
3)−C≡CH、−C(CH
3)=CH−CH
2−CH=CH
2、−CH=CH−CH=C(CH
3)
2、−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−C≡CH、−CH=CH−C(CH
3)=CH−CH
3、−CH=C(CH
3)−CH=CH−CH
3、−CH
2−CH(CH
3)−C≡CH、−C(CH
3)=CH−CH=CH−CH
3、−CH=C(CH
3)−C(CH
3)=CH
2、−C(CH
3)=CH−C(CH
3)=CH
2、−C(CH
3)=C(CH
3)−CH=CH
2、−CH=CH−CH=CH−CH=CH
2、−C≡CH、−C≡C−CH
3、−CH
2−C≡CH、−C
2H
4−C≡CH、−CH
2−C≡C−CH
3、−C≡C−C
2H
5、−C
3H
6−C≡CH、−C
2H
4−C≡C−CH
3、−CH
2−C≡C−C
2H
5、−C≡C−C
3H
7、−CH(CH
3)−C≡CH、−C
4H
8−C≡CH、−C
2H
4−C≡C−C
2H
5、−CH
2−C≡C−C
3H
7、−C≡C−C
4H
9、−C≡C−C(CH
3)
3、−CH(CH
3)−C
2H
4−C≡CH、−CH
2−CH(CH
3)−C≡C−CH
3、−CH(CH
3)−CH
2−C≡C−CH
3、−CH(CH
3)−C≡C−C
2H
5、−CH
2−C≡C−CH(CH
3)
2、−C≡C−CH(CH
3)−C
2H
5、−C≡C−CH
2−CH(CH
3)
2、−CH(C
2H
5)−C≡C−CH
3、−C(CH
3)
2−C≡C−CH
3、−CH(C
2H
5)−CH
2−C≡CH、−CH
2−CH(C
2H
5)−C≡CH、−C(CH
3)
2−CH
2−C≡CH、−CH
2−C(CH
3)
2−C≡CH、−CH(CH
3)−CH(CH
3)−C≡CH、
−CH(C
3H
7)−C≡CH、−C(CH
3)(C
2H
5)−C≡CH、−CH
2−CH(C≡CH)
2、−C≡C−C≡CH、−CH
2−C≡C−C≡CH、−C≡C−C≡C−CH
3、−CH(C≡CH)
2、−C
2H
4−C≡C−C≡CH、−CH
2−C≡C−CH
2−C≡CH、−C≡C−C
2H
4−C≡CH、−CH
2−C≡C−C≡C−CH
3、−C≡C−CH
2−C≡C−CH
3、−C≡C−C≡C−C
2H
5、−C(C≡CH)
2−CH
3、−C≡C−CH(CH
3)−C≡CH、−CH(CH
3)−C≡C−C≡CH、−CH(C≡CH)−CH
2−C≡CH、−CH(C≡CH)−C≡C−CH
3、−CH=CH−Ph、−NH−CO−CH
2−COOH、−NH−CO−C
2H
4−COOH、−NH−CO−CH
2−NH
2、−NH−CO−C
2H
4−NH
2、−NH−CH(COOH)−CH
2−COOH、−NH−CH
2−COOH、−NH−C
2H
4−COOH、−NH−CH(COOH)−C
2H
4−COOH、−NH−CH(CH
3)−COOH;
式中、好ましくは置換基R
*、R
#、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13の少なくとも1つは、次の置換基から選択される:
−NH
2、−OH、−PO
3H
2、−PO
3H
-、−PO
32-、−OPO
3H
2、−OPO
3H
-、−OPO
32-、−COOH、−COO
-、−CO−NH
2、−NH
3+、−NH−CO−NH
2、−N(CH
3)
3+、−N(C
2H
5)
3+、−N(C
3H
7)
3+、−NH(CH
3)
2+、−NH(C
2H
5)
2+、−NH(C
3H
7)
2+、−NHCH
3、−NHC
2H
5、−NHC
3H
7、−NH
2CH
3+、−NH
2C
2H
5+、−NH
2C
3H
7+、−SO
3H、−SO
3-、−SO
2NH
2、−CO−COOH、−O−CO−NH
2、−C(NH)−NH
2、−NH−C(NH)−NH
2、−NH−CS−NH
2、−NH−COOH。
【0075】
また、以下に示すような一般式(III)の化合物も好ましい。
【化9】
式中、残基XおよびLは、本明細書にて開示された意味を有する。
【0076】
好ましくは、一般式(I)、(II)、および(III)の化合物のn−オクタノールと水の分配係数(K
owまたはオクタノール−水−分配係数としても知られる)は、K
ow<6.30(logK
ow<0.80)、好ましくはK
ow<1.80(logK
ow<0.26)、より好ましくはK
ow<0.63(logK
ow<-0.20)、および最も好ましくはK
ow<0.40(logK
ow<-0.40)である。
【0077】
さらに、一般式(I)、(II)、および(III)の化合物の好ましい炭素原子数、好ましい可溶化反応のpH範囲、好ましいカルボン酸の可溶化化合物に対するモル比、および好ましい反応条件は、一般的な可溶化化合物について上述したものと同じである。
【0078】
分配係数は、2つの溶液間の非イオン化化合物の濃度の比率である。イオン性溶質の分配係数を測定するには、その化合物の支配的な形態が非イオン性となるように水相のpHを調節する。溶媒中の非イオン化溶質の濃度比の対数を、logPと呼ぶ。
【数1】
【0079】
分布係数は、2つの溶液のそれぞれにおける全ての形態の化合物(イオン化+非イオン化)の濃度の合計の比率である。分布係数を測定するには、その化合物の導入によってpHが著しく乱れることがないように水相のpHを特定の値に緩衝剤で処理する。一方の溶媒中の様々な形態の溶質の濃度合計の、他方の溶媒中のその形態の濃度合計に対する比率の対数を、logDと呼ぶ。
【数2】
【0080】
加えて、logDはpHに依存するため、logDを測定したpHを特定しなければならない。特に関心が持たれるのは、pH=7.4(血清の生理学的pH)でのlogDである。非イオン性化合物の場合、いかなるpHでもlogP=logDである。
【0081】
[アルギニン]
アルギニン(2−アミノ−5−グアニジノペンタン酸)はα−アミノ酸である。アルギニンのアミノ酸側鎖は、3−炭素脂肪族直鎖からなり、その遠位端は複合グアニジニウム基で末端保護される。本発明によれば、L−アルギニン、D−アルギニン、ならびにこれらのラセミ化合物が使用可能である。
【化10】
【0082】
pK
aが12.48の場合、グアニジウム基は中性、酸性、さらには最も塩基性の各環境においても正荷電され、従って、アルギニンに塩基の化学的性質を付与する。二重結合と窒素孤立電子対とが共役するため、正電荷が非局在化され、複数のH結合が形成される。アルギニンをプロトン化し、側鎖(pK
a 12.48)、アミノ基(pK
a 8.99)、およびカルボキシル基(pK
a 1.82)に位置する、3つのさらなる電荷を担持させることができる。
【0083】
L−型は、20種類の最も一般的な天然アミノ酸の1つである。哺乳類では、アルギニンは、個々の成長段階および健康状態によって、半必須アミノ酸または条件付き必須アミノ酸に分類される。乳児はその必要条件を満たすことができないため、アルギニンは乳児にとって栄養上必須である。
【0084】
アルギニンは、反応性カルボキシ基を有する両親媒性分子である。
【0085】
アルギニンのlogP
ow(上記を参照)の文献値は?4.20である。アルギニンは、分布係数と分配係数はほぼ等しい。これは、アルギニンがpH=7ではほぼ間違いなくイオンの形態で存在するからである。Libbyら(モレキュラー・ファーマコロジー(Mol Pharmacol)、1981年、第20巻、p.602−608)は、logD
ow=−4.08であると結論付けた。
【0086】
水性アミノ酸系によって脂肪酸の可溶化能力を調査した際、アルギニンはモル比1:1(アルギニン:脂肪酸)を超えるとマイクロ−およびナノエマルションの形成によりオレイン酸を完全に溶解することを見出した。興味深いことに、カルボン酸を可溶化するのに共溶媒を必要としない。周囲温度にてナノエマルションの自然形成が観察された。1:1のマイクロエマルションの自己アセンブリ後のpH値は約9.8である。ナノエマルションでの粒径は直径約2nmであることが発見され、25nmより大きい凝集体は発見されなかった。このナノ粒子の自己アセンブリは、ナノエマルションの中心的特性である。ナノエマルションは、−20〜100°Cの温度では6ヶ月を超える期間、完全に透明かつ安定的である。酸(HCl)の添加によるpHの低下によって、溶媒和能力が低下し、アルギニンの添加によりこれを克服できよう。しかし、溶液のpHは、pH8未満で低下するアルギニンのナノエマルション化能力にとって重要である。
【0087】
驚くべきことに、アルギニンは有機溶液においても可溶化能力を示すことが見出された。水溶液中に様々な濃度で含まれるアルブミンおよびオレイン酸を、アルギニンを添加することにより調査した。脂肪酸が多すぎると溶液は濁る。アルギニンを添加することにより、この効果を完全に逆転させることができる。アルギニンを用いておよび用いずに平衡透析を行った。5000Dセルロース膜を脂肪酸が通過する量は、モデル溶液中にアルギニンが存在すると、10倍まで増加することを見出すことができた。ヒト血漿を用いて行った同じ調査でも同等の結果が示された(実施例1)。アルブミンに結合した脂肪酸を遊離させるアルギニンの能力を、
3Hで標識したオレイン酸で調べた。アルギニンを使用しない場合、放射線標識した脂肪酸の約40%は、n−ヘキサンで抽出した後、有機相に残留する。アルギニンを添加することにより、脂肪酸は遊離した。しかし、最大限の効果を達成するには、アルギニンのモル濃度は脂肪酸より高い必要があった。残留脂肪酸を2%まで減少させることができた。温度を38°Cまで上げると、室温に比べて、有効性が高まった。その他の親水性アミノ酸(リジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン)ならびに疎水性アミノ酸を同じ手順で調べた結果、やはり残留脂肪酸は減少した。しかし、これは、アルギニンと比べると顕著に少なかった。
【0088】
<可溶化化合物としてのアルギニンの誘導体>
「アルギニンの誘導体」という用語は、カルボキシ基(−COOH)およびアミジノ基(H
2N−C(NH)−)または少なくとも1つの炭素原子で分離された置換アミジノ基を有する化合物、またはカルボキシ基(−COOH)およびグアニジノ基(H
2N−C(NH)−NH−)または少なくとも1つの炭素原子で分離された置換グアニジノ基を有する化合物を意味する。上述の一般式(I)の化合物もアルギニンの誘導体である。
【0089】
アルギニンの誘導体の例としては、例えばアミジノ酢酸、アミジノプロピオン酸、アミジノブタン酸、グアニジノプロピオン酸、グアニジノブタン酸、オリゴアルギニン、ポリアルギニン、ならびに
【化11】
【化12】
【化13】
がある。
【0090】
<カルボン酸と可溶化化合物の相互作用>
本発明によれば、水溶液または有機溶液からカルボン酸を除去するための好ましい方法は、次の重要な工程を含む:
a)可溶化化合物を脂肪酸含有溶液に添加する工程、
b)脂肪酸をそのエステル化形態から放出することができる固定化したリパーゼまたは触媒を担持し、かつエステル化脂肪酸との完全な相互作用を達成するためにマイクロ−またはナノ流体毛細管(キャピラリー)システムに導入される表面に、上記溶液を流す工程、
c)分離膜、ゲル、または中空フルイディク毛細管アセンブリからなる界相に、上記溶液を流す工程、
d)濃度勾配、浸透勾配、物理化学勾配、pH勾配、気流勾配、温度勾配、電気勾配、またはこれらの組み合わせにより、相分離界面越しに勾配を適用する工程、
e)可溶化化合物に付随した脂肪酸分画を分離する工程、
f)アクセプター媒体中に脂肪酸を溶解させる工程、および
g)任意に、溶液から可溶化化合物を除去する工程。
【0091】
従って、水性媒体または有機媒体中のカルボン酸からマイクロ−およびナノエマルションを構築する可溶化化合物の能力は、本発明の基礎をなす。この基本原理は、次に述べる様々な医学、薬学、生化学、工業、および環境の各応用に使用することができる。
【0092】
<可溶化化合物の処方>
可溶化化合物は、純粋な溶液、pH調整溶液、または複合溶液として使用することが可能である。可溶化化合物は、ペプチドまたはタンパク質、ならびに負に荷電した有機または無機のポリマーまたは表面に、静電気的に結合されるか、または共有結合され得る。
【0093】
処理または分析する溶液、エマルション、または油のイオン強度を低減することにより、例えば、キレート化、透析、または電気透析でカチオン濃度を低減することにより、可溶化効果を高めることができる。さらに、タンパク質表面エネルギーを変化させるかスルフィド結合をチオール化するかし、これとともにタンパク質の立体配座を変化させることにより、精製するカルボン酸の静電カルボン酸−タンパク質相互作用の結合エネルギーを変化させることは有用であり得る。実施例で記載されるように、アルギニン等の可溶化化合物に関して、アルギニンと、イオン化疎水性物質、特に脂肪酸との付加体が、好適な環境下で自然かつ化学量論的に形成されることを示すことができた。ミニ、マイクロまたはナノエマルションが得られる。
【0094】
本発明によれば、これらのミニ、マイクロまたはナノエマルション化されたカルボン酸を、水性溶媒または有機性溶媒から分離、または抽出することができる。その方法は、以下の通りである:
1.特に、石質いん石、球体、マイクロビーズ、またはセオライト(ceolites)等の表面が、分離する物質と静電気結合または共有結合可能な表面特性を示す場合、分離する物質のこれらの表面上への吸着、
2.複合化、即ち塩の形成
3.分離する物質のアクセプター媒体(特に有機ゲル)中への拡散、
4.熱、電気、または物理化学的勾配による、分離する物質の透析、
5.熱、電気、または物理化学的勾配による、分離する物質の濾過、
6.蒸留技術、
7.超臨界液体抽出、
8.ナノ流体分離技術。
【0095】
<血液透析>
血液透析は、血液を精製(浄化)する手順であり、腎機能不全患者を治療するための方法である。透析の原理は、半透過性膜を介した溶質の拡散である(浸透)。この膜の一方の側に水溶性毒素、電解質、尿素、およびその他の物質を含む血液/血漿(透過物)が、他方の側に水と多数の重要な電解質からなる生理学的濃度の透析溶液(透析液)が配置される。水、電解質、尿素、および溶出液等の小分子は濃度勾配に従って膜の小さな穴を通って拡散するが、タンパク質や血液の細胞は膜を通過しない。血液透析では、患者から血液をポンプで送り、透析器内の膜に沿って流し、浄化した血液(レチネート(retinate))をポンプで患者に戻す。血液と透析液の向流により、血液と透析液間の溶質の濃度勾配が最大化する。
【0096】
透析溶液は、電解質と緩衝系の濃縮溶液を滅菌脱イオン水と混合することにより調製される(透析液)。透析液は温められ、ガスを含まない。基本的に2つの異なる混合システムがある。体積測定混合システムでは、2つの定置型の調節済みポンプが、透析溶液の流量と濃度が変化しないように、濃縮液と水を混合する。伝導率は溶液中の電解質濃度の指標である。混合後、溶液の伝導率を測定し、必要であれば手動でポンプを調節して水または濃縮液の量を変更する。
【0097】
透析装置は通常、次の機能を提供する:
−ローラーポンプによる患者からの血液の吸引
−抗凝血
−1つまたは2つ以上の透析器を介した輸送プロセス
−透析液と濾液の流速の制御
−透析液と濾液循環間の圧力勾配の制御
−伝導率の制御
−イオン強度とpHの調節
−閉じ込められた空気と粒子の除去
−再循環血液の調質(tempering)
−ローラーポンプによる患者への血液の再循環。
【0098】
電解質、尿素、クレアチニン、リン酸、アミノ酸、薬理学的活性物質、および水は、血液透析で用いられる場合、半透過性膜を通過することができる。
【0099】
B.定義
「透析器」は、物理的および/または化学的勾配により、溶液中のカルボン酸を分離界面の一方の側から他方の側の別の溶液中に拡散および透過させることが可能な相分離界面を含有する装置を意味する。
【0100】
「抽出器」は、カルボン酸を界面と物理的および/または化学的に相互作用させることによりこれを吸着、および/または吸収、および/または複合化、および/または分離することを可能にする材料を含有する装置を意味する。
【0101】
「毛細管空隙」は、材料内の、連続した、直線状の、管形状の開口した空間である。
【0102】
「多孔質」は、勾配に従って所定の分子を1つの区画から別の区画に通過させることが可能な孔、開口部、または窪みを有する材料の特性を意味する。これらの孔、開口部、または窪みのサイズ、形状、および分布は、材料全体、好ましくは膜全体で、均一または多様であり得る。
【0103】
本明細書に記載される「血液」という用語は、血液、全血、血漿、および血清を意味する。
【0104】
「血液」という用語は、本明細書において、血液成分および血液代用物をさらに意味し得ることに留意されたい。
【0105】
本発明で使用する場合、「血液成分」という用語は、赤血球/白血球、血小板、タンパク質およびペプチド、ならびに脂質画分を含む、細胞および非細胞成分である。
【0106】
本発明で使用する場合、「血液代用薬」という用語は、生理学的酸素および血液量を増加させるために使用される体積増加剤を少なくとも部分的に担持し、血液循環を支援するが血液の生理学的機能は果たすことができない血液代用薬を意味する。
【0107】
「被検者」という用語は、ヒトを含む任意の哺乳類を意味する。ヒトが好ましい。
【0108】
「第1入口」、「第2入口」、「第3入口」、「第4入口」等の用語は、装置の入口の番号として理解すべきであり、装置の1つのチャンバ等の装置の一部分における入口の番号として理解すべきではない。従って、「第2チャンバの第4入口」は、第2チャンバが4つの入口を有することを意味するのではなく、第2チャンバが装置の入口No.4を有することを意味する。
【0109】
本発明で使用する場合、マイクロエマルションという用語は、本発明の可溶化化合物とカルボン酸のエマルションの特性を意味する。この特性は、次のうち少なくとも2つを含む:
自然な自己アセンブリ、透光性、濁度<1.1cm−1、ミセルの>80%が25°Cで<200nm、−40〜99°Cの温度範囲での透光性の安定、少なくとも12ヶ月間の透光性の安定、表面張力<60dyn/秒。
【0110】
本発明で使用する場合、ナノエマルションという用語は、本発明の可溶化化合物とカルボン酸のエマルションの特性を意味する。この特性は、次のうち少なくとも2つを含む:
自然な自己アセンブリ、光透過性、濁度<0.4cm−1、ミセルの>80%が25°Cで<100nm、−40〜99°Cの温度範囲での光透過性の安定、少なくとも12ヶ月間の光透過性の安定、表面張力<50dyn/秒。
【0111】
C.水性媒体または有機性媒体からの遊離カルボン酸の分離および反応方法
遊離カルボン酸の分離は、当該技術分野において周知の物理的または化学的方法により実現することができる。これは、次の方法の1つ又はこれらの組み合わせを含むが、これらに制限されない:吸着、複合化、濾過、透析、蒸着、自重による分離、電気泳動、電気分解、電気浸透、界面動電、浸透圧、熱、濃度勾配、または化学反応。
【0112】
吸着、濾過、透析、電気分解、ならびに複合化、および自重による分離で分離を行うことが好ましい。
【0113】
ナノ−エマルション化効果の使用方法
可溶化化合物のカルボン酸に対するナノ−エマルション化効果により、水性媒体中での溶媒和および精製、電解質としての使用、水性媒体中での化学反応、化学反応性の向上が可能となり、疎水性および親油性物質へのカルボン酸の溶解能力が向上する。ナノエマルションは、分子複合体、および有機又は無機の固体へのカルボン酸の溶解および浸透を可能とし、または向上させる。さらに、ナノエマルションを使用することにより、カルボン酸と非極性または両親媒性分子との複合体を有機媒体またはエマルション中に溶解することができる。
【0114】
ナノエマルション化
ナノエマルション化という用語は、ナノエマルションの形成を意味する。ナノエマルションは、幅広い様々な応用で使用可能である。二相の水性媒体中の最適な溶解度、二相間の大きな表面積、ならびにナノメートル単位でのこれらの相の寸法および幾何学的構造は、ナノエマルションを、反応物質、化学物質、または薬剤類を溶解する多機能媒体にする。ナノエマルションに関して報告されているいくつかの情報手段において、アルギニンまたはアルギニン誘導体等の可溶化化合物が貴重な添加剤であることが示されている。しかし、ナノエマルションを調製するためのこのような可溶化化合物の単独使用については、これまでのところ文書化されていない。
【0115】
複合化および吸着方法
水性媒体中で可溶化したカルボン酸は、複合化または吸着によって分離することにより、さらに処理することができる。水性媒体中では、複合化用材料は、カルボン酸と塩を構築する能力を有するプロトン供与体でなければならない。好ましい実施形態は、カルシウム塩の使用である。
【0116】
吸着剤は、親水性または疎水性媒体中で使用することができ、親水性または疎水性特性を有し得り、溶解された形態で存在するか支持材料上で固定化することができる。使用する材料は後述する(5.アクセプター−/吸着剤−分子/材料)。好ましい実施形態では、炭素、固定化したアルギニン、またはカルシウムが使用される。脂肪酸を吸着または複合化するには、有機性水性媒体中で脂肪酸をプロトン化するか、または有機溶媒中で脂肪酸を脱プロトン化する必要があり得る。このようにすることで、有機性水性媒体または溶媒中で脂肪酸を容易に吸着することができる。好ましい実施形態は、n−ヘキサン、トリグリセリド、またはコレステロールの使用である。
【0117】
液体−液体分離手順の使用方法
本発明の可溶化効果は、さらに、当該技術分野において周知の液体−液体抽出により、有機媒体からカルボン酸を分離するために使用することができる。本方法の原理は、水相と有機相の自然または駆動分離である。有機相内に溶解されたカルボン酸を分離または除去するため、可溶化化合物を含有する水溶液を有機相と混合する。この混合は、振盪、撹拌、振動、超音波、加熱、発泡、蒸気、ならびに層流または乱流動態等の様々な物理的手段を使用して行うことができる。可溶化したカルボン酸は水性媒体とともに運ばれ、水溶液中で分離および濃縮する。相分離は、遠心分離または音波処理のような物理的手段により作用し得る重力により実現することができる。このように分離されたカルボン酸を抽出するために、標準的な方法で水溶液または有機溶液を除去する。溶解したカルボン酸は、溶液の酸性化と有機溶媒を用いた抽出により分離することができる。逆に、有機溶媒中に溶解したカルボン酸は、本発明の可溶化化合物を用いた抽出により、水性媒体に移動または放出することができる。本方法は、調製や分析に使用可能であり、または大規模な工業的プラントに適用可能である。
【0118】
界面動電法および電気泳動法
好ましい実施形態は、カルボン酸の電気泳動分離である。カルボン酸は、弱い電解質である。カルボン酸のイオン強度は、カルボン酸の分配が少ないため、水溶液系中のCMCに対応する。イオン性およびアニオン性の洗剤は、CMCを下げることにより分配を増やすことを示している。しかし、イオン性界面活性剤、または対イオンの存在だけでも、高いイオン強度に到達する。理論的には、ミセル化を妨げる対イオンは、同時に最適な分配をもたらし、イオン対結合の解離定数が高い場合は分配をさらに向上させる。ナノエマルション中のカルボン酸の分配についての詳細な分析は欠如している。驚くべきことに、可溶化化合物はこれらの特性を示すことが見出された。さらに、可溶化化合物はカルボン酸を可溶化し、カルボン酸の予想外に高い電気泳動移動性を許容した。このような分子と相互作用している間はカルボン酸の炭素鎖間の付着が弱いことが、観察された移動性の原因である可能性が高い。従って、可溶化化合物とカルボン酸のナノエマルゲーション(nanoemulgation)により、水性媒体または有機媒体中でのこれらの電気泳動が可能になる。さらに、これらの可溶化化合物は、カルボン酸を、当該技術分野において周知の電気泳動分析および分離手順に適したものにする。好ましい実施形態は、ゲル電気泳動での使用である。ヒドロゲルまたは有機ゲルが好適である。無機発色団(即ち、クロム酸塩(254nm)、モリブデン酸塩(230nm)、または芳香族酸)を強力なUV発色団(即ち、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、安息香酸、ピリジンジカルボン酸、酢酸銅(II)ピリジン、および4−アミノ安息香酸)とともに使用して、当該技術分野において周知の技術により、電気泳動的に分離したカルボン酸を検出することができる。
【0119】
別の好ましい実施形態は、電気浸透、電気透析、および電気濾過での使用である。
【0120】
カルボン酸は、前述のように、水性媒体中ではミセルを形成する傾向を示す。有機溶媒中では、カルボン酸は自由に移動する。しかし、カルボン酸は有機溶媒中ではプロトン化するため、界面動電での移動は不可能である。水性媒体中で塩として存在する場合、電気泳動運動性は劣る。さらに、カルボン酸はミセル形成により通常小分子であるが、濾材を通過するのは僅かである。入手可能な濾過器材料は親水性または疎水性のいずれかであるという事実により、この発見はさらに不利となる。しかし、これらの特性は、カルボン酸の分配には理想的とはいえない。従って、電気浸透、電気透析、および電気濾過は本目的には有効ではない。
【0121】
驚くべきことに、本発明の可溶化化合物を使用することにより、カルボン酸がナノエマルゲーション(nanoemulgation)されるため、濃度勾配、熱勾配、電気勾配、物理化学的勾配、またはこれらの組み合わせを用いて、浸透、透析、濾過、蒸留、または超臨界流体抽出により、カルボン酸を分離することができる。好ましい実施形態では、有機親和性分離膜が使用される。この膜は、浸透または透析で使用される場合は高い割合の有機分子を有するべきであり、またはフィルターチャネルの表面は高い親油性分子含有量を示すべきである。
【0122】
しかし、このような特性を示す分離媒体は欠如している。驚くべきことに、本発明者は、分離媒体の表面の分子を選択すると同時に穴/チャネルの寸法を小さくすることで、カルボン酸の輸送能力と選択性が向上し得ることを発見した。
【0123】
本発明の手順のメカニズムは、上記効果の組み合わせであると考えられる。即ち、カルボン酸の分配が多く、かつアルギニンまたはその他の可溶化化合物の解離速度が速いため、電界での高速移動が可能になる。ナノチャネル内で生じる界面動電流が、電気泳動輸送能力をさらに高めることができる。
【0124】
ナノ濾過方法
カルボン酸の分子量は小さく、寸法も小さい。従って、カルボン酸は原理的にはナノ濾過に適している。しかし、水性媒体中の遊離カルボン酸の濃度が低いと、ナノ濾過は有効ではなくなる。さらに、疎水性または親油性物質の膜選択が不適切であるか、または欠如する。本発明の脂肪酸の可溶化は、遊離カルボン酸の分画を増やし、それらのナノ濾過を可能にする。近年、ナノ濾過膜は市販されるようになった。しかし、それらの表面は親水性であり、カルボン酸用としては不適切である。チャネル表面の疎水化は、濾過率にほんの僅かな効果しかなかった。ナノ濾過は、マイクロ濾過膜や限外濾過膜の使用に比べ、高い基質特異性やフラックスの向上のような決定的な利点を提供し得るため、ナノチャネルでのカルボン酸の分配を向上させるよう努力した。従って、ナノチャネルの表面を親油性にするため、ナノチャネルの表面機能化に取り組んだ。本目的は、いくつかの分子クラス(アミノ酸、ポリペプチド、およびカルボン酸)により実現することができた(章「E、4.表面機能化の材料」を参照)。
【0125】
従って、好ましい実施形態は、低い親水性(25°Cでの水の接触角>100°)と高い親油性(25°Cでのオレイン酸の接触角<10°)の特性を示す機能化された表面を有するナノ濾過膜の使用である。平均チャネル幅は、5〜100nm、より好ましくは10〜50nmでなければならない。チャネル長は、0.1〜10μm、より好ましくは2〜5μmでなければならない。使用可能な材料を以下に記載する(章「E、3.3 分離膜材料」)。
【0126】
好ましい材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭素、ポリカーボネート、ポリエチレン、ケイ酸塩である。
【0127】
好ましい実施形態では、表面機能化の前に、機能化に使用する分子(接続層と呼ばれる)や、接続層に付着して表面特性を決定する分子(機能化層と呼ばれる)との反応に適したポリマーを用いて、チャネル表面を単層コーティングしなければならない。
【0128】
1.接続層
この層は、任意の支持材料と機能化層との界面として機能する。最初に支持材料の分子構造を導入または活性化する必要があり得る。接続層は前記表面を完全にカバーしなければならず、処理後滑らかでなければならない。機能化層の分子との反応に適切な反応基が多数存在しなければならない。しかし、チャネル構造を形作るには、規定された多層コーティングが望ましい。これは、以下(章「E、3.3.分離膜材料」)に記載するように、ポリマーによって実現することができる。
【0129】
好ましい実施形態は、APTS、ペンタフルオロフェニルアクリレート(PFA)、ペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFMA)、ポリ−N−トリメチル−アミノエチルメタクリレート(PTMAEMA)、およびポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(PDMAEMA)等のポリマーの使用である。
【0130】
2.機能化層
この層は、規定された表面条件を実現することを狙いとする。
【0131】
本発明の表面機能化のクーロン、ファン・デル・ワールス、水素結合、および疎水相互作用の分子間力の合計から得られる好ましい表面条件は、カルボン酸の分配を許容する正味の親油効果を有する。陽性または陰性であり得る、表面荷電を創出する荷電基間の干渉が、好ましい実施形態で使用される。さらに好ましい実施形態は、中性または陽性表面電荷を有する状態での2〜20nmの親油性または疎水性表面力の設定である。好適な分子は、カルボン酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、第三級または第四級アミド、芳香族炭化水素、またはシクロデキストリンであり得る。(章「E、4.表面機能化の材料」を参照)。
【0132】
好ましい実施形態では、脂肪酸、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン、リジン、アミジン、またはグアニジンが、分子構造内の中心官能基として用いられる。
【0133】
従って、本発明は、さらに、カルボン酸を透析、濾過、またはナノ濾過するための限外またはナノ濾過分離パネルを意味する。このパネルは、一般式(I)または(II)の物質の1つ以上を用いて機能化され、少なくとも機能化層と任意に接続層を有する。
【0134】
D.本発明の可溶化手順の応用
<血中脂肪酸の透析>
透析は、医療、分析において、および化学または医薬工業において、標準的な手順である。この手順を用いて、勾配による界面通過により供給溶液から物質を低減又は排除する。界面は、ほとんどの場合、規定されたサイズまでの分子の通過を許容する多孔質膜からなる。入手可能な膜の親水性および疎水性は多様である。しかし、遊離カルボン酸の通過可能量は無視できる程度に限られる。その1つの理由としては、高濃度の洗剤の存在下であっても遊離脂肪酸の量は少ないことが挙げられる。これは、ミセルが依然として存在し続け、その結果、粒径が膜の孔を通過できないものであるためである。この問題は、本発明のマイクロ−またはナノエマルションの形成によって解決することができる。本発明の方法は、従来の血液透析を修正することにより実施することができる。即ち、被検者の血液系は管を介して透析器に連結される。あるいは、一定の量の血液をサンプルとして採取し、本発明の方法に従って修正された透析器で処理を行い、その後患者に戻す。後者の場合、採取する血液サンプルの量は、10ml〜0.5l、好ましくは100〜500ml、より好ましくは300〜500mlである。
【0135】
本発明で開示される全ての方法は、in vivo、即ちヒトおよび動物の体内で、およびin vitro、即ちヒトおよび動物の体外で、実施することができることを強調しなければならない。
【0136】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、脂肪酸を除去する必要がある被検者の血液から脂肪酸を除去するために使用される。従って、本方法の医学的および科学的応用が存在する。本発明によれば、上述の本発明の原理を被験者の血液に応用する透析器、または抽出器が提供される。この目的のため、本発明の装置は、カニューレ、カテーテル、および管により、哺乳類、好ましくはヒトの静脈または動脈循環に連結される。本明細書において、いくつかの実施形態では、市販の透析機器、例えばPlasmat futura(登録商標)(BBraun Melsungen社、ドイツ)を使用することができる。静脈または動脈管を介してこの機器が吸引した血液、または血液サンプルによって供給された血液は、血液分離の後または血液分離を行うことなく、ローラーポンプ(212)により、透析装置内に送ることができる(
図2:213の概略図を参照)。透析装置は、2つのサブユニットからなり、これらのサブユニットは適切な管により相互に接続される(例えば、Fresenius社、Lifeline(登録商標)Beta SN Set SRBL−R、ドイツ)。第1サブユニットは、後述するような透析器からなる(詳細な説明は「透析/抽出手順」の項を参照)。この透析機器が吸引した血液は、当該技術分野において周知の透析および/またはシトレートクエン酸塩抗凝血(202)により前処理を行ってもよいし、または血液分離手順あるいは一連のこれらの手順工程を行ってもよい。調製された血液(血漿)は、透析機器により透析器の入口にポンプで送られ、同時にアルギニン等の可溶化化合物の無菌溶液を含有する貯蔵袋(215)からアルギニン溶液またはその他の任意の可溶化化合物溶液を注入ポンプ(214)で一定注入する。透析液中の可溶化化合物の最終濃度は、血液(血漿)流量と注入溶液中の可溶化化合物濃度から算出することができる。アルギニンの場合、100〜300mmol/lの最終濃度を目的とする。アルギニンが透析器の分配チャンバ内で溶解すると(詳細な説明は「透析/抽出手順」の項を参照)、可溶化化合物−血液(血漿)溶液の混合物は、マイクロ−またはナノ流体条件を許容する中空繊維膜を通過する。
好ましい実施形態では、典型的な直径が200μμmおよび長さが30cmの中空チャンバ毛細管の装置を使用する。分離媒体内の血液(血漿)量は40〜80ml、好ましくは50〜60mlである。中空チャンバ毛細管の材料は、有機、無機、または両方の組み合わせであり得る。使用可能な材料を、界面材料リストにまとめている(章「E、3.4 中空多孔質毛細管」を参照)。膜界面は、分子的に機能化されるマイクロ孔またはナノ孔を有する。表面、孔、およびチャネルの機能化および特性については後述する(章「4.表面機能化の材料」を参照)。可溶化化合物の通過時間は、好ましくは20〜60秒、より好ましくは30〜40秒でなければならない。結果としての供給溶液と界面との間の接触時間は、可溶化した脂肪酸を完全に除去するものでなければならない。このようなフィルターカートリッジのアセンブリは、当該技術分野において周知である。透析液は、透析液入口を通って灌流する。透析液は、中空繊維の外側とカートリッジの内壁の間の空間を充たす。灌流方向は、供給流と反対方向であり、当該技術分野においてクロスフローと呼ばれている。透析液の典型的な灌流速度の範囲は、供給流と同じ範囲である。しかし、この流速比は変化させる必要があろう。典型的な流速比は、供給溶液の脂質濃度によって、1:2、1:1、2:1、または3:1の間であり得る。透析液はカートリッジの出口円錐から排出され、後述する二次循環に移動する。
【0137】
血液(血漿)は、収集チャンバー内に収集されることにより透析器から排出され、適切な管を通って第2装置内に移動する。第2装置は、血液透析で使用される標準的な透析器(201)からなる。血液(血漿)は、透析器内の中空チャンバー毛細管を通過する。これにより、透析溶液(210)に対する低分子の親水性分子および電解質の濃度平衡が可能となる。透析溶液は、ローラーポンプ(216)によって送られ、繊維の外表面とカートリッジの内表面の間の空間を透過する。透析液は、標準的な透析器の出口から排出され、廃液タンク(211)内に集められる。透析液の濃度、またはイオン強度、およびpHは、透析機器が調節する。精製した血漿は、分離した血球と混合される(
図2中に示されていない)。精製した血液は、ローラーポンプ(212)により、前述のカテ−テルシステムを通って患者に戻される。
【0138】
二次循環装置
前述のように、本明細書ではアクセプター溶液と呼ばれる二次循環内の溶液は、透析器(203)の界面を通過した脂肪酸と結合し、かつ本明細書では脂肪酸交換モジュールと呼ばれるさらなる二次抽出装置(204)に脂肪酸を対流によって移動させる高い能力を有していなければならない。二次回路内のアクセプター溶液(章「E、7.アクセプター溶液」を参照)は、有機又は無機のアクセプター(「E、5.アクセプター−/吸着剤−分子/材料」を参照)を有する水溶液であり得る。アクセプター分子は、遊離した形態で溶解することもできるし、またはセオライト(ceolites)あるいは吸着表面に固定化することもできる(章「E、4.表面機能化の材料」を参照)。好ましくは、ヒト供給源または合成生成から生じる精製された脂肪酸結合タンパク質の溶液を、二次循環中の脂肪酸のアクセプターとして使用しなければならない。二次循環のアクセプター溶液を、ポンプ(205)、優先的にはローラーポンプによって移動させる。脂肪酸を含んだアクセプター溶液は、ローラーポンプ(205)の吸引により濾液出口を介して透析器から排出され、適切な管を通って脂肪酸交換モジュール(204)の入口へ進み、抽出粒質物で充たされた一般的な交換チャンバーを灌流する。アクセプター溶液は、抽出粒質物を通過する際に精製され、次に排出口で交換モジュールから排出され、濾過チャンバの入口で透析器と接続された管に流入する。
【0139】
カルボン酸交換モジュール(
図3を参照)は、円筒形カートリッジの対向する両側に配置された2つの入口と2つの出口を示すカートリッジからなる。二次循環の入口(301)および出口(303)は、フィルター漏斗(305)により覆われる。フィルター漏斗(305)の孔径は、交換循環の抽出粒質物の粒径範囲の下限値未満である。三次循環の入口(302)および出口(304)は、粒状抽出材料が低圧力で流入および流出できる大きさである。交換モジュール内では、二次循環の交換溶液は、三次循環の抽出粒質物と直接接触する。二次循環の溶液と三次循環からの抽出粒質物の交換モジュールの灌流の方向は、相互に反対方向である。二次回路の新しく補給されたアクセプター溶液は、交換モジュールの出口(303)から排出され、管を介して透析器の濾液入口接続箇所へ導かれる。
【0140】
三次循環
三次抽出循環は、粒状抽出材料の使用に適したポンプ(
図2:205を参照)により作動する。優先的には、二重シリンダーポンプ(207)を使用することができる。このポンプを交換モジュールの出口と接続する管を介した流通により、少量の精製されたアクセプター溶液をこのシステムに同時に充填することにより、循環への空気の導入を低減する。ポンプのバイパス引き込み口により、システムに同時に充填することが可能となる。アクセプター溶液中に溶解された抽出物質は、脂肪酸交換モジュールの入口と接続された管を通って押し進められる。この部分内に輸送された残留空気は、逃がし口(217)の上部に取り付けられたエアートラップ(208)により除去される。逃がし口は、抽出材料の通過を許容しないフィルタープレートで密閉されている。抽出材料は交換モジュールを通過した後、カートリッジの三次循環の出口から排出される。この出口は、交換モジュール上方に垂直位に固定することができる管、およびアクセプター溶液用貯蔵容器(209)と接続されている。この管は、抽出材料の通過を許容しないフィルタープレート(218)で密閉された貯蔵容器と相互接続されている。しかし、アクセプター溶液は、貯蔵容器の充填面の適切な静水レベルまで、この管内に戻ることが可能である。抽出材料は、この管を通って容器(206)に押し進められる。この容器は、抽出材料を精製するための洗浄システムの一部である。このような精製は、物理的または化学的手段により作動させることができる。精製プロセスに続いて、滅菌水を用いた最終洗浄工程が行われる。その後、精製された抽出材料は、三次循環のポンプに接続される第2容器内に収集される。
【0141】
あるいは、三次循環で抽出材料を精製するために、新鮮な抽出材料を貯蔵器から取り込み、前述と同じ管を利用して交換モジュールを通過させた後、別の貯蔵器に排出することもできる。
【0142】
本発明によれば、前述の手順またはその部分を、透析、血液潅流、血液濾過、血液透析濾過、遠心分離−プラズマ−分離、プラズマ−アフェレーシス、カスケード−濾過、および熱−濾過のような、血液療法で標準的な技術と組み合わせることができる。
【0143】
本明細書において、分離能は、エステル化脂肪酸のさらなる加水分解、脂肪分解の増大、および/または血液精製のための中心静脈血吸引の使用により高められる。
【0144】
従って、本発明の1つの特に好ましい実施形態は、本明細書にて開示した可溶化化合物、ならびに好ましくはアルギニンおよびアルギニン誘導体を用いて、血液からカルボン酸、および特に脂肪酸を除去することである。最も一般的な血液精製方法は、血液から脂肪酸およびさらにはアルブミン結合脂肪酸を除去するためにも使用可能な透析である。
【0145】
<ヒト用途の可溶化液体の処方>
好ましい実施形態では、脂肪酸の可溶化は、本発明の可溶化化合物の使用により実現される。この可溶化化合物は、その純粋な形態で、またはHCLあるいはその他のヒトでの使用が許容可能な酸を使ってpHを調節した溶液で、適用することができる。好ましいpHは、7.5〜10.0、より好ましくは8.0〜9.0である。以下に記載される(章「E、8.アルギニンまたはその類似体を調製するための添加剤」を参照)、共溶媒または緩衝剤として添加剤を使用すると有利であり得る。好ましい添加剤は、アスコルビン酸である。
【0146】
臨床用途
本発明のヒト血液から脂肪酸を溶媒和および抽出する方法は、当業者に周知の標準的な技術によって応用され得り、腎臓または肝臓疾患によりそれを必要とする患者に行われる血液透析手順の一部となり得る。この手順の使用を、他の適応症に適応させることもできる。医学的適応症としては、真性糖尿病、メタボリック・シンドローム、過体重、肥満、動脈高血圧、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、高尿酸血症、蜂巣炎、アテローム性動脈硬化症、脂肪肝、脂肪腫症、心室期外収縮、心室性頻脈症、上室細動等の診断または規定が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態は、血液の吸引および再循環のための静脈アクセス部位である。吸引の部位は、中心静脈系内、最も優先的には下大静脈内でなければならない。生成した血液は、吸引部位の開口部の遠位にオリフィスを有する同じアクセス部位を介して患者に戻すことができる。これは、BioCath(Bionic Medizintechnik社、フリードリヒスドルフ(Friedrichsdorf)、ドイツ)のような市販のカテーテル装置で実現される。アクセス装置のフレンチサイズは、8〜14、より優先的には10〜12でなければならない。最も好ましい静脈アクセス部位は、大腿静脈である。
【0147】
管の接続および充填は、血液透析で行われているように、かつ当業者に周知の方法で行わなければならない。この手順を実施している間は、抗凝血治療が必須である。これは、ヘパリンまたは低分子量ヘパリンを、外因性血液凝固経路の遮断治療を達成できる用量を用いて、共注入することにより行うことができる。この用量は、それぞれ当業者に周知である、活性化部分トロンボプラスチン時間または抗Xa因子活性試験により測定した。あるいは、血液透析装置内の血液の抗凝血のために、カルシウムイオンを複合化するためのクエン酸塩を投与することもできる。この手順は、Multifiltrate(Fresenius,Medical Care社、ドイツ)のような透析機器により提供される。複合化カルシウムは、初期の血液透析工程で透析される。さらなる処理中は、血液の凝固はあり得ない。生成した血液を患者に渡す前に、カルシウムイオンを含有する所定の用量の注入液を血流に共投与し、凝固を回復させる。
【0148】
このように治療された人の脂肪分解を刺激することによって手順の抽出分画を増やすことができるという本発明の発見により、β1−、β2−、β3−アドレナリンアクセプターアゴニスト、ホスホジエステラーゼ−III阻害剤、α−1および−2アドレナリンアクセプターアゴニスト、窒素酸化物または窒素酸化物供与体、ホルモン感受性リパーゼ、レプチン、ナトリウム利尿ペプチド、バソプレシン、ヘパリンおよび類似体、チロシン、ヨヒンビン等の脂肪分解を促す薬剤を適用するのが好ましい。
【0149】
さらに、本発明の脂肪分解の刺激は、前述の脂肪分解剤、ならびに麻酔剤、リン脂質を含むリポソーム、ヒスタミンを含む血管拡張薬の局所皮下湿潤による、脂肪分解活性の局部強化に関する。電界刺激または超音波あるいはパルス波エネルギーの適用によって、脂肪分解をさらに促進することができる。
【0150】
アルギニン等の可溶化化合物は、他の水溶性小分子と同様に、親水性の透析膜を容易に通過する。有毒性ではないが、非生理学的な高濃度のアルギニンは、標準的な透析器(高流量または低流量)を使用して最終透析により血液/血漿から除去することが好ましい。最終透析は、生理学的な電解質濃度、浸透圧モル濃度、およびpHの回復を確実にする。
【0151】
手順中の非エステル化脂肪酸の輸送能力を高めるために、血中のアルブミン、リン脂質、またはシクロデキストリンの濃度を高めることは有用であり得る。
【0152】
このような組み合わせた治療中は、血流力学パラメーター(血圧、脈拍(heart frequency)、体温、ヘモグロビン酸素化)ならびに代謝パラメーター(血糖、pH、ナトリウム、およびカリウム)の厳格な監視が必須である。一治療エピソードの時間は臨床パラメーターに依存する。典型的には、一手順に3〜12時間かかり、より好ましくは4〜6時間かかる。抽出される脂肪酸の量は、病原性脂肪酸に対して使用される濾過膜の選択性に依存する。抽出される脂肪酸の好ましい量は、100〜2000ml、より好ましくは500〜1500mlである。
【0153】
臨床用途の精製手順は、透析、濾過、吸着、沈殿、またはこれらの組み合わせの方法として行うことができる。
【0154】
<工業における遊離脂肪酸の大規模抽出>
遊離カルボン酸は、大規模プラントで製造または使用する溶液またはエマルションで頻繁に見出される。例えば、脂肪酸は、未加工の植物油中、穀物、果実、および野菜の外皮および殻中、バイオマスあるいは廃水中、粗鉱油中に存在し、または処理中に生じ、ならびに油含有土壌中、廃油および脂廃棄物中に存在する。ほとんどの場合、高いエネルギー需要を必要とする物理的手順を用いて、これらのカルボン酸を除去する。場合によっては、分離手順の結果、精製した生成物に望ましくない影響がもたらされる。例えば、精製のために油を蒸気に曝し、揮発性脂肪酸を蒸留する。このような手順中、熱に曝すと、エステル化したカルボン酸がトランス異性化する可能性がある。これは、消費者にとって有害である可能性がある。従って、このような手順を回避することが望ましい。
【0155】
この課題は本発明の手順により解決できることがわかった。
【0156】
本発明によれば、これらの精製対象の水溶液または有機溶液は、植物、生物体、化石材料、天然または合成の反応混合物に由来する。
【0157】
1つの好ましい実施形態は、一般式(I)の化合物またはアルギニンまたはアルギニン類似体およびこのような化合物の混合物等の、本明細書で開示する少なくとも1つの可溶化化合物の水溶液を添加することにより、遊離カルボン酸から油を精製することである(
図4)。精製する油は、貯蔵タンク(402)から反応タンク(401)内に注がれる。貯蔵タンク(403)からの所定量の可溶化化合物の濃縮溶液を反応タンク(401)に添加する。好ましくは、混合装置(411)により溶液を混合する。次に、混合物を収集タンク(405)にポンプ(ポンプ412)で送る。収集タンク内では、水相と油相が重力により自然に分離する。下の水相は、カルボン酸を含有する。カルボン酸は、タンクの下方部位の出口から連続的に除去されるマイクロ−またはナノエマルション中で消散する。あるいは、混合物は、遠心分離器または膜分離器に移動する。高度な精製が必要とされる場合は、この手順を繰り返すことができる。可溶化プロセスの完全性を達成するため、溶液を混合しながら僅かに温めると有利であることが示された。混合プロセスは、ソナー波を適用することにより加速される。混合物は膜分離器を通過するとき、主にアニオンを選択する膜を使用すると有利であることがわかった。精製した油(トリグリセリド相)は通常、水の除去後、可溶化化合物を含有しない。
しかし、高度に精製された油を得るには、水での洗浄を繰り返すか、またはカチオン吸着器を使用すると有用であり得る。収集タンクの上部相からの精製されたトリグリセリド相は、タンクの上方部位に配置された出口から連続的に除去され、トリグリセリド貯蔵タンク(404)に移動する。水溶液は、収集タンク(405)の下部から第2反応タンク(406)内にポンプで送られる。酸貯蔵タンク(407)から所定量の酸を添加する。反応タンク内の溶液は、混合装置(411)により混合される。その後、混合された溶液は、第2分離タンク(408)内にポンプ(412)で送られる。脂肪酸と、水中で可溶化した可溶化化合物は、自重で分離することが可能である。しかし、当該技術分野において周知のその他の分離手段を代わりに使用することができる。第2分離タンクの上部に濃縮する精製された脂肪酸は、脂肪酸貯蔵タンク(409)内に常に移動する。第2分離タンクの下部に濃縮する可溶化化合物の水溶液は、電気透析装置(410)内に連続的にポンプで送られる。電気透析は、当該技術分野において周知の技術および装置により、かつイオン選択性膜(413)により、カチオンおよび/またはアニオンを除去するために適用することができる。可溶化化合物の精製された溶液は、可溶化化合物貯蔵タンク(403)にポンプで送られる。本目的のための好ましい可溶化化合物は、アルギニン誘導体および特にはアルギニンである。
【0158】
自重による分離の代替として、電気泳動、空気またはナノ濾過、固定化、凝集、蒸留、または有機溶媒による相転移を用いたプロセスにより、水相内の可溶化カルボン酸を分離してもよい。好ましい実施形態では、炭素による揮発性カルボン酸の吸着、カルシウムとの複合化、有機溶媒を用いた相転移、電気透析および有機−ナノ濾過が使用される。好ましい実施形態は、廃水処理またはバイオディーゼル製造において本発明の可溶化手順を使用する際のエステラーゼの使用である(章「E、2.加水分解酵素」を参照)。これらを組み合わせた使用は、有機性あるいは油性成分の除去または化学反応性の効果および完全性を高める。
【0159】
本発明の方法を実現するため、カルボン酸は溶液中に存在し得り、かつ一般式(I)または(II)の少なくとも1つの可溶化化合物を添加する。
【0160】
あるいは、一般式(I)または(II)の少なくとも1つの可溶化化合物を含有するマクロ−、マイクロ−、またはナノエマルションにカルボン酸を添加し、このエマルションを用いて、カルボン酸含有複合体を遊離、脱複合化、脱離、反応、凝集、複合化、凝固、凝集、沈降、または分離させる。
【0161】
これらの本発明の方法は、物理化学反応または化学反応の開始、促進、維持あるいは縮小、生物的または化学的反応プロセスにおける反応生成物あるいは成分の取り込みおよび移動の可能化および促進、小胞の取り込みによる物質の脱離、可溶化、遊離、対流による移動、および輸送、またはエマルション化したカルボン酸の親水性あるいは両親媒性の媒体あるいは固体への浸透の可能化あるいは促進のために使用することができる。
【0162】
好ましい工業的応用は、以下を含む。
−原油または燃料の処理で生じる脂肪酸含有溶液からの脂肪酸の除去。特に、鉱油および燃料またはバイオ燃料の製造および処理において、本発明の方法を適用することができる。
−工業的食品処理で生じる脂肪酸含有溶液からの脂肪酸の除去。特に、食用油の製造、トウモロコシ、米およびホエー糠、野菜、乳製品や魚加工品、低脂肪食品や無脂肪製品ならびに油を含有または生成する有機体の処理において、それぞれ本方法は有用であろう。
−汚水含有生物有機化合物の処理または工業的汚水で生じる脂肪酸含有水溶液からの脂肪酸の除去。例えば、バイオリアクターからの汚水を処理するために、本方法を適用することができる。
−羊毛、綿、またはその他の織物のような工業製品の洗浄や、タンク工場、タンカー、洗車場、屠殺場、その他のような工業的洗浄からの汚水の処理において生じる脂肪酸含有の有機溶液または水溶液からの脂肪酸の除去。
−接着剤または塗料の調製のような化学的または薬学的処理での脂肪酸の除去。
−可溶化カルボン酸に凝集または付着する非カルボン酸物質の除去。これにより共可溶化し、本発明の可溶化物質と、鉱物または有機体からの粗脂肪および粗油の精製に使用するカルボン酸とともに、分離または除去される。その結果、既に可溶化した、または有機あるいは無機物質に固定化した、複合化リン脂質、糖脂質、ステロール、殺虫剤が除去される。
−有機性の脂肪種子、油性の砂または岩、および油性堆積物を抽出するために、本発明の可溶化物質およびカルボン酸のマクロ−、マイクロ−、またはナノエマルションにより、付着、結合、または複合化した物質を除去する。
【0163】
<水性媒体中の脂肪酸の分析への応用>
カルボン酸の定性的および定量的分析は面倒な作業である。親水性または疎水性の置換基の存在に依存する、炭素鎖の長さが6〜10を超えるカルボン酸は、水性媒体中で測定することは不可能であり、電気泳動または電気伝導度測定によって測定することができない。さらに、有機溶媒を使用した場合でも、有機化合物からのカルボン酸が完全に溶解しないため、分析が妨害され得る。標準的な分析は、ガスクロマトグラフィ(GC)で行われる。しかし、GCを行うにはカルボン酸をメチル化する必要があるため、この方法は時間を要し、方法論的問題が生じやすい。これらの問題点は、本発明の溶媒和手順により解決することができる。
【0164】
本発明によれば、この方法は、水溶液中の脂肪酸含有量の定性的および定量的分析にも使用することができる。また、エステル化および非エステル化脂肪酸の相対的含有量の差別化にも好適である。
【0165】
本発明の溶媒和手順の好ましい実施形態は、電気泳動、電気伝導度測定、および分光分析法によってカルボン酸を分析するための使用である。
【0166】
分析用サンプルの調製
油と脂肪酸の混合物ならびに水中油型(o/w)および油中水型(w/o)エマルションのような水との混合物を、反応チャンバーに移す。本発明の可溶化化合物を含む溶液を添加する。エステル化脂肪酸を決定するため、脂肪酸を遊離させるために可溶化した化合物を添加する前または後に、またはその添加と同時に、エステラーゼを添加することができる。得られた溶液は、培養する必要がある。可溶化化合物を添加する前に、サンプル体積を適度に加熱したり、イオン強度を下げたり、またはpHを下げたりすると有用であることが示された。続いて、以下のように分析を行うことができる。
−現状の溶液を用いる
−遊離カルボン酸を沈殿させる
−有機溶媒を使って抽出する
【0167】
得られた分析サンプルの標準的分析方法での使用を以下に説明する。
【0168】
ゲル電気泳動手順
ゲル電気泳動によりカルボン酸を分析するため、可溶化化合物により溶解されてマイクロ−またはナノエマルションとなった水性分析サンプルを、本発明の形態で、または電気ナノ濾過または透析の濾液として、採取することができる。ゲル電気泳動の標準的な装置を使用することができる(例えば、BIOTEC−FISCHER GmbH、PHERO−vert 1010−E)およびSDS−ポリアクリルアミドゲル。エタノールのようなプロトン性溶媒を分析サンプルに添加すると有用であり得る。好ましい実施形態では、有機ゲルが使用される(「6.有機ゲル」を参照)。較正および読み取りは、当該技術分野において周知の通りに行うことができる。
【0169】
蒸留
可溶化化合物の水溶液中に可溶化した非エステル化脂肪酸を含有する溶液は、1工程または2工程の蒸留により精製することができる。これは、周囲空気圧または真空条件下で溶液を加熱し蒸気に当て、蒸留する脂肪酸の蒸発温度を下げることにより実施することができる。好ましい実施形態は、薄膜蒸発器(Normag社、Roatafil装置)の使用である。
【0170】
沈殿/複合化手順
可溶化したカルボン酸の沈殿または複合化は、前述したように当該技術分野において周知の通りに実施可能である。即ち、金属イオンまたはシクロデキストリンとの複合化等の方法が好ましい。沈殿物は、当該技術分野において周知の通りに抽出および水洗浄を行う必要がある。その後、精製した沈殿物は、カルボン酸が完全に溶解してプロトン化するまで、強酸(HCl、酢酸、炭酸)中で溶解する。その後、有機溶媒(n−ヘキサン、ジエチルエーテル、クロロホルム、その他)を用いて、カルボン酸を抽出する。有機相を注意深く除去および処理し、さらなる分析を行う。
【0171】
好ましい分析方法は、液体クロマトグラフィーである。
【0172】
溶媒抽出手順
酸性化または有機溶媒への暴露に感受性がない媒体からのカルボン酸の抽出は、水性媒体から直接行うことができる。本発明の可溶化化合物の使用は、抽出条件が溶媒抽出のみの手順ほど厳格である必要はないという決定的な利点を有する。これは、抽出するカルボン酸が本発明の溶媒和手順によって水相中に既に溶解されていることにより実現される。有機溶媒相の存在下で注意深く酸性化することにより、プロトン化したカルボン酸は、溶媒または媒体を徹底的に混合することを必要とせずに溶媒相に移動することができる。溶媒抽出は、当該技術分野において周知の通りに行われる。溶媒溶液は、NIR−、あるいはIR、あるいは遠赤外線分光分析法、または液体クロマトグラフィーで直接使用することができる。
【0173】
電気−ナノ−濾過/拡散手順
さらに好ましい分析方法は、電気泳動的または静電気的に作動する濾過または拡散を本発明の可溶化とともに使用して分離することである(
図5)。
【0174】
前述の可溶化により、有機又は無機の材料の溶液/エマルションを調製する。pH値は、>6.0、好ましくは8〜11に調節しなければならない。以下、規定のサンプル体積を分析装置のドナーチャンバー(donor chamber)/反応バッチに移す。このドナーチャンバー(503)は、カソード液で充填されたチャンバー(502)と分離チャンバー(505)との間に配置される。ドナーチャンバー/反応バッチとカソード液チャンバーは、膜(504)によって分離される。好ましくは、この膜はイオン選択性である。分離チャンバーは、発色団(例えば、好ましくは有機ゲル)で充填される。あるいは、分離チャンバーは、後述のように、マイクロ流体装置または機能化されたナノ濾過または拡散膜で構築することができる(章「E、3.膜」および「4.表面機能化の材料」を参照)(510)。膜分離器の他方の側に、アクセプターチャンバー/容器(508)が配置される。アクセプターチャンバー/容器は、アルギニン溶液または任意の他の可溶化化合物の溶液で充填される。このアクセプターチャンバー/容器は、アノード液を受け入れる役割を果たすさらなるチャンバー/容器(507)に隣接する。これらのチャンバー/容器は、膜(506)によって分離される。あるいは、分離パネルは、毛細管内に充填された有機ゲルである。好ましくは、膜はイオン選択性である。カソード(501)とアノード(509)の間に電圧を印加すると、ドナーチャンバー/容器にアニオンとして存在するイオン化されたカルボン酸化合物、特には脂肪酸は、分離チャンバー/膜を通過し、アクセプターチャンバー/容器に移動する。アクセプターチャンバー/容器内の溶液を、直ちに分析することができる。好ましくは、分析は、電気伝導度測定、分光法、または質量検出法により実施する。あるいは、さらなる薬剤(例えば、指示薬、誘導化剤)を添加して分析を続ける。好適なアノード液およびカソード液は、アルギニン溶液、アルギニン誘導体溶液、HCL、その他である。薬剤の添加、混合、および移動は、好ましくはマイクロ流体系で行われる。これは、特にラボオンチップ(lab−on−the−chip)分析装置の開発に好適である。
【0175】
実用的な応用として、被検者からサンプルとして採取した体液の脂肪酸含有成分の医学−生化学的分析がある。このような分析結果は、診断基準として機能することができる。医学的診断としては、アテローム性動脈硬化症、高血圧、真性糖尿病、肥満、高リポタンパク血症、心筋梗塞、脳卒中、腎不全が挙げられるが、これらに限定されない。科学的応用としては、化学、生化学、薬学、薬理学、材料科学、生物学、工業的食品処理での使用が挙げられる。この分析方法は、遊離脂肪酸の大規模抽出に関する前出の段落で記載した工業的応用でも使用することができる。
【0176】
透析/抽出装置および手順
本発明の主題は、統合された透析器/抽出器である。本発明の一般式(I)または(II)の可溶化化合物を用いた水性媒体または有機媒体中でのカルボン酸の可溶化および分離を実施するため、このような統合された透析器/抽出器は、その応用とは無関係に、ほとんどの実施形態で重要となる以下の基本的な重要構成要素を含まなければならない:
i)カルボン酸を含有する水性媒体または有機媒体を一般式(I)または(II)の可溶化化合物と反応させるための第1チャンバー、
ii)可溶化したカルボン酸を受け入れるための第2チャンバー、
iii)分離膜または中空毛細管アセンブリを含む、前記第1チャンバーと前記第2チャンバーの間の分離パネル、および
iv)濃度勾配、熱勾配、物理化学勾配、気流勾配、電気勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、前記反応溶液を前記第1チャンバーから前記第2チャンバーに前記分離パネルを介して導くための手段。
【0177】
この装置は、医学的治療、医学的分析、食品分析、食品処理、油処理、油分析、燃料処理、化学的および薬理学的または薬学的処理、薬学・化学工業または科学における分析、個人または商業または工業的洗浄からの汚水からのカルボン酸の除去、バイオリアクター・プロセスからのカルボン酸の除去、油性固形物の洗浄、カルボン酸の有機ゲル化またはナノエマルション化にて使用可能である。
【0178】
このような装置を使用するため、以下の重要な工程を含む方法が適用される:
i)カルボン酸を含有する溶液またはエマルションまたは懸濁液の供給
ii)少なくとも等モル量の少なくとも1つの可溶化化合物の添加
iii)相分離、濾過、ナノ濾過、透析、吸着、複合化、蒸留、および/または抽出による、溶液またはエマルションまたは懸濁液からの可溶化したカルボン酸の分離。
【0179】
より具体的には、工程iii)は、好ましくは、以下の分離方法の1つ、またはこれらの組み合わせにより達成される:
濃度勾配、熱勾配、物理化学勾配、気流勾配、電気勾配、あるいはこれらの組み合わせを適用することにより、カルボン酸を個別にあるいは少なくとも1つの可溶化化合物とともに、分離膜あるいは管あるいは中空毛細管アセンブリに通過させる方法、または
相分離を構築する2つ以上の媒体を組み合わせることにより相分離を実施する方法、または
濃度勾配、熱勾配、物理化学勾配、気流勾配、電気勾配、あるいはこれらの組み合わせを適用することにより、カルボン酸を少なくとも1つの可溶化化合物とともに、前記カルボン酸と前記少なくとも1つの可溶化化合物の通過を許容する相分離界面に通過させる方法であって、この相分離界面はゲル、有機ゲル、あるいは固体材料、あるいはこれらの組み合わせからなることを特徴とする方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸を濾過する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸をナノ濾過する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸を透析する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸を吸着する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸を複合化する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いてカルボン酸を蒸留する方法、または
少なくとも1つの可溶化化合物を用いて超臨界流体抽出によりカルボン酸を分離する方法。
【0180】
分離工程では、ゲルおよび/または固体材料は有機又は無機の由来であり得り、多孔性または非多孔性のいずれかであり得る。
【0181】
本発明によれば、前述の装置および方法は以下の分野で使用され得る:医学的治療、医学的分析、食品分析、食品処理、油処理、油分析、燃料処理、化学的または物理化学的反応の調節、低溶解性分子の可溶化、化学的および薬理学的または薬学的処理、薬学または化学工業または科学における分析、個人または商業または工業的洗浄からの汚水からのカルボン酸の除去、バイオリアクター・プロセスまたは土または植物からのカルボン酸の除去、油性固形物の洗浄、カルボン酸の有機ゲル化またはナノエマルション化。前記分析方法は、定量的または定性的であり得る。
【0182】
より具体的な形態では、好ましい実施形態は以下の部品を含む:
a)カルボン酸を含有する水性媒体を可溶化化合物と反応させるための第1チャンバーであって、カルボン酸を含有する水性媒体のための第1入口を有するチャンバー、
b)可溶化化合物用の容器であって、前記容器に前記可溶化化合物を充填するための第2入口を有し、さらに第3入口を介して前記第1チャンバーに接続されている容器、
c)透析/濾過したカルボン酸を含有する溶液を受け入れるための第2チャンバー、
d)前記第1チャンバーと前記第2チャンバーの間の分離パネルであって、分離膜または中空毛細管アセンブリを含むパネル、および
e)濃度勾配、熱勾配、電気勾配、物理化学勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、前記反応溶液を前記第1チャンバーから前記第2チャンバーに前記分離パネルを介して導くための手段。
【0183】
任意に、以下の構成要素をさらに含み得る:
f)前記第2チャンバー内に第4入口を介して供給され、かつ前記第2チャンバーから第1出口を介して流出可能なアクセプター溶液の対流によって前記濾過した溶液を除去することにより、前記濾過した溶液からカルボン酸と可溶化化合物の会合体を除去するための手段、および
g)前記第2チャンバーから第2出口を介して精製した溶液を除去するための手段。
【0184】
このような統合された透析器/抽出器は、広範囲の医薬的および工業的応用において、本発明の水性または有機性媒体中のカルボン酸の可溶化および分離を実施するのに好適である。これらの重要な構成要素は、特性の応用のために設計された装置の重要な部分を構築する。特定の応用のための具体的な実施形態を以下にさらに詳細に説明する。
【0185】
本発明によれば、全ての入口、出口、および輸送手段は、それぞれの流量または輸送速度を制御するための調節装置を有してもよい点に留意すべきである。これらの調節装置は、実施形態ごとに明示的に名称を付さない。本発明において、当該技術分野で周知の全ての調節装置が好適であろう。
【0186】
また、本発明の主題は、前述の統合された透析器/抽出器を使用することにより、水性または有機性媒体中のカルボン酸を可溶化および分離するための重要な工程を適用する方法である。本発明の方法の中核は、以下の工程で表される:
a)結合したおよび結合していないカチオンの複合化、吸着、分離、または透析によってイオン強度を下げることにより、前記溶液を調製する工程、
b)酸又は塩基を添加することによって溶液のpHを調節する工程、
c1)可溶化化合物のモル濃度を、可溶化するカルボン酸の見積もり濃度に対して、1:10〜20:1に調節する工程、および
d)前記カルボン酸を含有する水溶液または有機溶液に、前記可溶化化合物を固体形態または溶液で添加し、マイクロ−またはナノエマルションを生成する工程。
【0187】
任意に、本方法は、さらに以下の工程のいずれかを含んでもよい:
a1)複合化または共有結合によって結合されたカルボン酸を遊離する工程、
c2)可溶化化合物を溶液中に投与する場合、可溶化するカルボン酸との相溶性および反応条件を最適化するために酸性化またはアルカン化により前記溶液のpHを調節する工程、
e)エステラーゼ、加水分解酵素、または複合体ビルダーを添加する工程、
f)水および/または共溶媒を溶液に添加する工程、および/または
g)溶液を加熱および/または混合することによって改善したマイクロ−またはナノエマルションを生成し、これにより反応条件を最適化する工程。
【0188】
本発明の装置および方法についての前述の説明において、ならびに以下の修正および実施形態において、全ての特徴を含む必要はなく、または全ての工程を実施する必要もなく、これらのいくつかは任意である。さらに、いくつかの実施形態では、いくつかの特徴または工程は、対応する特徴または工程により修正、または置き換えられる。従って、方法の工程それぞれの順序は、第一に、アルファベット順に読む必要がある。第二に、添えられた数字は決定的なものである。例えば、工程cと工程c1がある場合、工程c1は工程cの後に実施される。換言すれば、工程c1は工程cと工程dの間に挿入される。同様に、方法において工程c1と工程c2がある場合、これは工程c1を工程c2の前に実施する必要があることを意味する。換言すれば、工程c1は工程bとc2の間に挿入される。一実施形態において、工程が前の実施形態と比較して修正、または置き換えられたものである場合、例えば各実施形態において異なる工程gが記載されるということも生じ得る。これらの代替工程の順序は、正しいアルファベット順に読む必要がある。従って、工程リストに修正された工程gがある場合、これは、もちろん、別の実施形態の工程gはその実施形態には含まれないことを意味する。任意の工程を含む場合、その工程は非アルファベット順で示すことができる。これは、工程の順序をアルファベット順で理解するという方針を変更するものではない。本発明の各装置の修正についても同様である。
【0189】
少なくとも2つのチャンバーが提供される実施形態では、本発明の方法の工程リストは以下のように補足することができる:
g2)濃度勾配、化学勾配、気流勾配、電気勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、反応溶液を第1チャンバーから第2チャンバーに分離パネルを介して導くための工程。
【0190】
任意に、以下の工程をこれらの実施形態に含んでもよい:
h)前記第2チャンバー内に入口を介して導かれ、かつ前記第2チャンバーの出口を介して流出可能なアクセプター溶液の対流により、濾過された溶液からカルボン酸と可溶化化合物の会合体を除去するための工程、および
i)前記第2チャンバーからさらなる出口を介して精製した溶液を除去するための工程。
【0191】
工程g2)、h)、およびi)は、上述のように工程f)の後に実施することができる。本発明の方法の非常に重要な応用は、揮発性脂肪酸から患者の血液を精製することである。
【0192】
従って、本発明の統合された透析器/抽出器のそれぞれの実施形態は、以下の修正、またはさらなる特徴を有する(
図6):
f)前記患者からの血液または血漿を、透析器(603)の前記第1チャンバー(610)に前記第1入口を介して導く手段、
g)前記容器(601)からの可溶化化合物を流入させて溶液を混合することを許容するポンプ装置および混合装置(602)、
h)任意に、前記第1チャンバーは支持材料(604)を含有し、エステル化脂肪酸を遊離化するためにこの支持材料に水分解酵素を固定化する、
i)分離膜(605)または中空毛細管アセンブリを含む、第2透析器の前記第1チャンバーと第1透析器の第2チャンバーの間の第1分離パネル、
j)濃度勾配、化学勾配、気流勾配、電気勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、カルボン酸含有溶液を第1透析器の前記第1チャンバーから前記第1チャンバーの第2チャンバーに導くための手段、
k)前記第2チャンバーから第2透析器(607)の第1チャンバーに前記濾過した溶液をポンプ(606)により送る手段、
l)三次循環により第2透析器(607)の前記第2分離パネルを通過するカルボン酸と可溶化化合物の会合体を除去するための手段、
m)アクセプター溶液貯蔵容器、
n)カルボン酸受容体溶液を前記受容体溶液貯蔵容器(609)から第2透析器の前記第2チャンバー内にポンプ(612)で送るための手段、
o)カルボン酸を取り込んだ受容体溶液を廃棄物容器(608)内に除去するための手段、
p)第2透析器の前記第1チャンバーから排出される可溶化化合物を含有する精製した溶液を、第1透析器の前記第2チャンバーの入口に戻すための手段、および
q)第1透析器の第1チャンバーから排出される再合流した血液画分を被験者(611)の循環内に戻すための手段。
【0193】
さらに好ましい実施形態では、標準的な血液透析が、本発明の方法の各工程の前および/または後に実施される。利点は、腎不全患者に多くの場合実施される通常の血液透析と、揮発性脂肪酸を除去する血液の特殊な精製を、1つの手順にまとめることである。
【0194】
揮発性脂肪酸からex vivo(生体外)で血液サンプルを精製するためにこのような透析器/抽出器を適用する各方法は、さらなる工程、または修正を含む:
g1)前記第1チャンバー内部の支持材料上に固定化した加水分解酵素により被検者の血液中のエステル化脂肪酸を遊離化し、これによりマイクロ−またはナノエマルションを生成する工程、
h)前記第2チャンバーから第2透析器の第1チャンバーに濾過した溶液をポンプで送る工程、
i)濃度勾配、化学勾配、気流勾配、電気勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、カルボン酸含有溶液を第2透析器の前記第1チャンバーから第2透析器の第2チャンバーに第2分離パネルを介して導く工程、
j)三次循環により前記第2分離パネルを通過するカルボン酸と可溶化化合物の会合体を除去する工程、
k)カルボン酸受容体溶液をアクセプター溶液貯蔵容器から第2透析器の前記第2チャンバー内にポンプで送る工程、
l)投入されたカルボン酸受容体溶液を廃棄物容器内に除去する工程、および
m)第2透析器の前記第1チャンバーから排出される可溶化化合物を含有する精製した溶液を、第1透析器の前記第2チャンバーの入口に戻す工程。
【0195】
相分離界面は、多孔性膜、空洞を有するまたは有さないゲル、または多孔性壁を有する管からなる。膜の構成は、平坦、または円形であり、バッチ、キュー、モジュールで処理することができる。管は単管であり、複数の溝を有することができる。好ましい実施形態では、中空チャンバー毛細管を使用する。中空チャンバー毛細管の直径は100〜300μm、長さは200〜400mmである。平行に整列させる中空チャンバー毛細管の数は、意図する血液(血漿)流量に依存する。典型的には、透析器内の毛細管の数は10.000〜40.000である。血液(血漿)と毛細管の接触時間は、2〜50秒でなければならない。
【0196】
界面材料は、無機、有機、または両方の組み合わせからなり得る。材料を以下に記載する(章「E、3.膜」を参照)。好ましい実施形態は、セラミック、ポリマー、金属、または炭素の支持材料の使用である。より好ましいのは、酸化アルミニウムおよびポリカーボネートである。材料の構造は、当該技術分野において周知のように、対称または非対称であり得る。交差する溝/空間/空洞の構成は、幾何学的またはランダムであり得る。溝の直径はかなり多様であり得るが、ウルトラ−、マイクロ−またはナノエマルションを許容する範囲でなければならない。好ましい実施形態は、前述のナノ濾過膜の使用である(章「ナノ濾過法」を参照)。
【0197】
原則として、濾過、透析、または浸透にも同じ膜を使用することができる。しかし、透析または浸透用の膜は、より選択的、または密封式である必要がある。前記支持構造内で入れ子になったゲルの使用は、別の好ましい実施形態で使用される。このようなゲルは、親水性あるいは有機親和性成分またはその両方からなり得る。自己アセンブリを示し、かつ形成後、または溶媒抽出後はナノ構造化された空洞または溝構造を示すゲルが、好ましい実施形態で使用される。
【0198】
生体材料、食品、廃棄液、または工業的用途で使用される抽出器は、様々なサイズの前述の構成要素を有し得るが、基本的なアセンブリは同じである。
【0199】
分析処理または精製のための考えられる溶液中のカルボン酸濃度は、大きく異なり得る。最適の可溶化では、pHおよびイオン強度によって1:1〜4:1(可溶化化合物:カルボン酸)の比率で調節しなければならない。比率が低いと可溶化が不完全となり、比率が高いとさらなる処理が妨害される。しかし、カルボン酸の含有量は完全に未知であり得る。この問題は、水溶液、またはエマルションの濁度を監視することにより克服することができる。エマルションは濁っており、ミニエマルションは紫外線を照射すると濁りを示す。マイクロ−およびナノエマルションは光学的に透明である。しかし、マルチビーム装置を使った比濁計濁度により、1〜1000nmの粒子を検出することができる。従って、可溶化の進行は、濁度の測定により監視することができる。個々の応用について、規定された透明度に到達して可溶化化合物と溶解する脂肪酸との意図した比率を達成したら、添加すべき可溶化化合物の量を計算することが可能であろう。可溶化する溶液中にカルボン酸のミセルではない粒子が存在する場合、これらの粒子を濾過または遠心分離で取り除くことは有利であり得る。
【0200】
一方、可溶化プロセスの比較的高度ではない使用も用いることができる。アルギニン等の可溶化化合物のほとんどは、無視できる程度の毒性を表す。さらに、これらは高度に可溶性であるため、当該技術分野において周知の透析工程により、これらの非生理学的濃度を除去することができる。従って、混合プロセス中に達成する濃度の固定調節を選択することができる。この濃度は100〜1000mmol/lにすべきであり、混合部分に可溶化化合物溶液を供給する注入ポンプの調節量は、血液(血漿)流量と意図された濃度から計算することができる。
【0201】
統合された透析器/抽出器の典型的な配置を
図7に示す。モジュールは円筒形のカートリッジ(701)からなる。流入側に配置された反応チャンバー(702)は、密封面A(704)を介して分離チャンバー(703)から分離されている。反応チャンバーは、液体を混合するための様々な装置を受け入れることができる。実施例は波状ラメラ(705)を示している。反応チャンバーは、可溶化化合物のために別途の流入口(712)を有する。
【0202】
中空膜毛細管からなる毛細管束(706)は、両方の末端で密封化合物中に埋め込まれ、密封される。膜毛細管は密封面AおよびB(704、707)の密封化合物内に埋め込まれ、この膜毛細管の反応チャンバー(702)側および収集チャンバー(708)側の端部はそれぞれ露出している。密封面は、分離チャンバー(703)が分離されるように密封される。円筒形のハウジングの両端は、接続プラグ(709)を有する入口/出口を保持するキャップにより閉じられる。ハウジングは、分離チャンバーと連通する両方の密封面付近でハウジング壁と交差するさらなる入口/出口(710、711)を有する。入口/出口管は、接続プラグ(図示せず)で塞がれる。ハウジングおよび密封材料は、PU、PA、PEのようなポリマーからなり得る。
【0203】
別の血液精製方法は血液濾過である。従って、精製する血液は、ローラーポンプ装置、および抽出器の下流のバルブ/流量制限装置により、加圧される。所望の濾液分画に応じて、次式により算出される500mmHgまでの膜間圧力を調整することができる:
血液側のP
流入+P
流出/2−濾液側のP
流入+P
流出/2
【0204】
しかし、工業的応用では、より高い圧力を必要とし得る。
【0205】
エステラーゼは、例えば、ポリスルホン、ポリ(テトラフルオロエチレンおよびポリ(フッ化ビニリデン)等のポリマー結合剤と、TiO
2、SrO
2、HfO
2、およびThO
2等の金属酸化物からなる複合膜上に固定化することができる(WO1990/15137)。あるいは、エステラーゼは、複合材料と上述の金属酸化物との間にリン酸基を有する二官能または多官能性複合材料に共有結合することができる(WO1999/32549)。
【0206】
エステル化したカルボン酸は、本発明の手順により直接可溶化することはできない。多くの場合、カルボン酸を加水分解することにより可溶化に好適な状態にすることを示すことができる。これは、加水分解酵素、より具体的には、エステラーゼ、またはリパーゼにより達成可能である。多種多様なこの部類の酵素は生物および植物内で発見されている。血液または血漿中での使用において、グリセリンからアシル残基を加水分解するエステラーゼは興味深い。トリアシルグリセロール加水分解酵素を用いてモノ−、ジ−、またはトリグリセリドからカルボン酸のみを加水分解し(EC3.1.1.3)、リン脂質を残しておくことは興味深いことであり得る。しかし、ある状況では、全ての部類のエステル化カルボン酸の除去が適応する。これは、それぞれのエステラーゼによって達成することができる。(EC3.1)。適応によって、ある種の脂肪酸(例えば、トランス脂肪酸、長鎖飽和脂肪酸)の加水分解が望ましい。一般的に、血液または血漿の精製に使用する場合は、長鎖脂肪酸(C原子>12)の加水分解が、本発明の手順の好ましい実施形態である。エステラーゼは、反応チャンバーから排出されないように、支持材料に固定化しなければならない。固定化された酵素を担持するのに好適な材料は、ラメラ、メッシュ、膜、管、球体、セオライト(ceolites)、またはゲルであり得る。酵素の固定化技術は、使用する支持材料に依存し、本発明の重要な問題ではない。医療用抽出器での使用において好ましい実施形態では、幅100〜500μm、より好ましくは200〜400μmの管形状の空間を含有するブロックとして構成された支持材料として、酸化アルミニウムまたは酸化チタンを使用する。ブロックの表面は酵素で機能化される。別の好ましい実施形態は、PMMA、PEEK、シリコン、シリコーン、またはその他の材料でできた微小球の使用である。好ましい平均直径は、100〜500μm、最も好ましくは200〜400μmである。微小球の表面は酵素で機能化される。さらに好ましい実施形態では、カルボン酸および/またはトリグリセリドは、これらの分子を血液中で担持するリン脂質小胞から放出される。抽出器の好ましい応用形態は、抽出器とは別に貯蔵することができる分離装置としての酵素含有材料の使用である。このモジュール技術の利点は、所定の温度で酵素含有材料を貯蔵する必要がある場合に、貯蔵に必要な空間が低減されることである。さらに、治療手順中に酵素活性が失われた場合、他の構成要素の交換を必要とすることなく、この構成要素を交換することができる。
【0207】
<透析/抽出手順−変形例II>
好ましい実施形態では、可溶化化合物は、分離膜または中空毛細管に固定化される。従って、透析器は簡略化され、以下の部品を含むことができる:
a)血液を被験者から第1空洞チャンバーまで導く手段、
b)第1空洞チャンバー、
c)任意に、脂肪酸を加水分解し、タンパク質、脂質、または細胞膜に吸着または結合した脂肪酸を遊離化するために使用するリパーゼを固定化する部品、
d)第1空洞チャンバーと第2空洞チャンバーとの間に配置され、分離膜または中空毛細管アセンブリを含む分離パネルであって、分離膜または中空毛細管内部で可溶化化合物が固定化されることを特徴とするパネル、
e)気流勾配、電気勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、反応液を第1空洞チャンバーから第2空洞チャンバーに導くための手段、
f)濾液/透析液を受け入れるための第2空洞チャンバー、
g)第2空洞チャンバーからの精製された濾液/透析液を、第1空洞チャンバーからの残留血液画分と再合流させるためのタンク、および
h)再合流した血液画分を被験者の循環内に戻す手段。
【0208】
<工業的用途への応用:二チャンバー分離器>
本発明によれば、原油処理、工業的食品処理において、または生物有機化合物を含有する汚水の処理において、または任意の別の工業的製造または環境技術において生じる水溶液から、脂肪酸を除去する装置も提供される。これらの応用では、以下を含む二チャンバー装置が提供される(
図8):
a)供給ストリーム(803)から連続的に注入される、カルボン酸を含有する脂肪酸含有水溶液を、受け入れるための第1容器(801)、
b)可溶化化合物溶液を第1容器に添加し(804)、前記溶液を適切な混合装置(805)によって脂肪酸含有水溶液と混合する手段、
c)第1容器と第2容器の間に配置され、分離膜(807)または中空管または毛細管アセンブリを含む、分離膜、
d)気流勾配、カソード(806)とアノード(808)間の電界による電気勾配、濃度勾配、化学勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、反応液を第1容器から第2容器に導く手段、
e)第2容器(802)
f)入口(809)から供給され出口(810)から流出可能な適切なアクセプター溶液の対流によって濾液を除去することにより、脂肪酸−可溶化化合物会合体を濾液溶液から除去する手段、および
g)第1容器の精製した溶液を出口(811)から除去する手段。
【0209】
上述の工業プロセスで生じる水溶液から脂肪酸を除去するためのこの装置の別の実施形態では、可溶化化合物は、分離膜または中空管または毛細管アセンブリに固定化される。従って、装置は簡略化され、以下の部品を含むことができる(
図9):
a)脂肪酸含有水溶液(901)と可溶化化合物水溶液(902)を適切な混合装置(903、904)で混合した後、この両方の液体を受け入れる第1容器(905)、
b)分離膜または中空管内部またはスパイラル型モジュール内側に固定化された可溶化化合物を任意に有する分離膜または中空毛細管アセンブリ(906)を含む、第1容器と第2容器の間に配置される分離膜、
c)濃度勾配、化学勾配、気流勾配、電気勾配、またはこれらの組み合わせを適用することにより、反応溶液を第1容器から第2容器に導く手段、
d)出口(909)を介してチャンバーから排出される反応溶液を受け入れる第2容器(908)、
e)第1および第2容器に対して、中空管またはスパイラル型モジュール外側が横断する密封面(912、913)によって密封された、収集チャンバー(907)および、
f)収集チャンバー内の溶質の灌流を許容する、収集チャンバーの流入(911)および流出(910)。
【0210】
本発明の可溶化効果の別の実施形態は、薬学、化学、または工業的処理中における油からの、液体−液体分離によるカルボン酸の可溶化および分離である。カルボン酸は、油、エマルション(O/W、W/O)として、または液体/液体系として存在することができる。従って、本実施形態はさらに、以下の部品を含むことができる:
h)前記第1チャンバー内で、加熱、超音波処理、層流または乱流条件により、カルボン酸含有溶液と可溶化化合物を混合する手段、
i)混合したエマルションを前記第2チャンバーに移動させ、この混合したエマルションを自重または遠心分離により分離するための手段、
j)第2チャンバーの第2出口から、精製した油を受け入れるための第3チャンバー、
k)第2チャンバーの第1出口から、カルボン酸と可溶化化合物の会合体を受け入れるための第4チャンバー、
l)水溶性酸の貯蔵器、
m)前記水溶性酸を前記貯蔵器から前記第4チャンバー内に懸濁するための手段、
n)前記第4チャンバー内で溶液を混合するための手段、
o)前記第4チャンバーから混合した溶液を受け入れるための、自重での相分離に好適な第5チャンバー、
p)混合した溶液を前記第4チャンバーから前記第5チャンバーに導くための手段、
q)前記第5チャンバーから精製したカルボン酸を受け入れるための第6チャンバー、
r)精製したカルボン酸を前記第5チャンバーから前記第6チャンバーに導くための手段、
s)前記第5チャンバーの底部に集まった可溶化化合物と水溶性酸を含有する溶液を受け入れるための第7チャンバー、
t)可溶化化合物と水溶性酸を含有する溶液を第7チャンバーに導く手段、
u)第7チャンバーからの溶液に電気透析装置またはイオン交換装置を通過させ、可溶化化合物をカソード液チャンバーに、および添加した水溶性酸をアノード液チャンバーに分離するための手段、
v)カソード液チャンバーからの溶液を、可溶化化合物の前記容器に導くための手段、
w)アノード液チャンバーからの溶液を、水溶性酸の貯蔵器に導くための手段、
x)電気透析後の精製されたレチン酸溶液を親水性濾過膜に導くための手段、および
y)水性濾液を再利用するための手段、および
任意に、
z)有機溶媒を第7チャンバーの溶液に懸濁および混合するための手段。
【0211】
このような修正した統合された透析器/抽出器を適用するためのそれぞれの方法は、以下のさらなる工程、または修正工程を含む:
f)前記第1チャンバー内で、超音波処理、層流または乱流条件により、カルボン酸含有溶液と可溶化化合物を混合する工程、
g)混合溶液を第2チャンバーに移動する工程、
h)前記第2チャンバー内の前記混合エマルションを重力および遠心分離により分離する工程、
i)精製した油を第2チャンバーの第2出口を介して第3チャンバー内に導く工程、
j)貯蔵器からの水溶性酸を第4チャンバー内に懸濁する工程、
k)第4チャンバー内で溶液を混合する工程、
l)混合溶液を前記第4チャンバーから第5チャンバーに導く工程、
m)前記第5チャンバー内で、第4チャンバーから受け入れた溶液を重力により相分離させる工程、
n)精製したカルボン酸を前記第5チャンバーから第6チャンバーに導く工程、
o)前記第5チャンバーの底部に集まった可溶化化合物と水溶性酸を含有する溶液を第7チャンバーに導く工程、
p)有機溶媒を第7チャンバー内の溶液に懸濁および混合する工程、
q)第7チャンバーからの溶液を電気透析装置に通過させ、可溶化化合物をカソード液チャンバーに、および添加した水溶性酸をアノード液チャンバーに分離する工程、
r)第7チャンバーからの溶液に電気透析を実施する工程、
s)カソード液チャンバーからの溶液を、可溶化された化合物用の前記容器に導く工程、
t)アノード液チャンバーからの溶液を、水溶性酸の貯蔵器に導く工程、
u)電気透析後の精製したレチン酸溶液を、親水性濾過膜に導く工程、および
v)水性濾液を再利用のために貯蔵する工程。
【0212】
前述の2つの実施形態に記載された、水溶液から脂肪酸を除去する装置は、水性または非水性溶液中に存在する他の化合物に吸着または結合した脂肪酸を遊離化するために用いるエステラーゼを固定化する手段をさらに含むことがさらに好ましい。
【0213】
本発明の可溶化効果の別の実施形態は、薬学、化学、生物学、または工業的処理中におけるタンパク質、アミノ酸、およびその他の水溶性分子からなる有機溶液からの、液体−液体分離によるカルボン酸の可溶化および分離である。このような装置は簡略化することができ、以下の部品を含む(
図10):
a)有機物質/カルボン酸含有溶液(1009)を受け入れるための第1容器(1001)、
b)貯蔵容器(1010)からの可溶化化合物溶液を前記溶液に懸濁し、混合装置(1011)を用いて第1容器の溶液を可溶化化合物溶液と混合する手段、
c)混合溶液を第2容器(1002)に導く手段、
d)第1容器から得られる溶液と、貯蔵容器(1003)から得られるCaCl
2または別の複合化材料の溶液とを、ポンプ(1005)によって第2容器に懸濁しながら混合することにより、2つの溶液の完全な混合を確実にし、これにより、可溶化化合物によって可溶化したカルボン酸を沈殿させるための手段、
e)沈殿した粒子(1006)を保持するために、上流に向かう精製した有機溶液を濾過するための手段、
d)沈殿物の連続した機械的除去のための手段(1007)、
e)沈殿物を第3容器に移動させ、移動した沈殿物を洗浄するための手段(1004)、
f)第3容器内の沈殿物を酸性化するための手段、
g)有機溶媒による第3容器内での相分離のための手段、
h)分離したカルボン酸を含有する第3容器の上相を除去するための手段、
i)精製した有機溶液を第2容器(1002)から別の容器(1008)に移動させる手段、および
j)電気透析、透析、カチオン交換樹脂の使用、またはカチオンのキレート化によって可溶化化合物を分離する手段、
【0214】
任意に、以下の工程を、それぞれ独立して挿入することができる:
d1)1つ以上の複合化促進剤を添加し、pHを調節し、および/またはメタノール、クロロホルム、およびジエチルエーテルから選択される有機溶媒を添加するための手段、
i1)1つ以上の精製工程を実施して、精製した水性有機媒体中に依然として存在する有機および/または無機物質を除去するための手段。
【0215】
E.本発明の手順を使用するための材料
1.相分離界面およびその材料
一般的に、全ての種類の分離材料を本発明の手順における可溶化カルボン酸の分離に使用することができる。幅広い分野の応用があるため、相分離界面はそれぞれの条件に適合させる必要がある。可溶化したカルボン酸のサイズが、精製すべき材料、または化合物より小さいプロセスの場合、サイズ排除による古典的な濾過を実施することができる。精製する溶液とカルボン酸の分子サイズの差が小さいほど、採用しなければならないマイクロ−およびナノ流体分離技術は多くなる。これらの使用において、界面の表面特性が分離の有効性を決定する。分離するカルボン酸は様々な応用によって変化し得るため、高い効果を得るために必要な表面特性は異なり得る。一般的に、マイクロ−またはナノ流体条件は、相分離界面で分離するために最良の条件を示す。従って、界面材料は、支持材料、リンカー/充填材料、および機能化材料を様々に組み合わせた複合材料であり得る。支持材料は、有機又は無機の由来であり得る。実施例は、「分離膜材料」の項に記載する。リンカー/充填材料は、有機又は無機であり、「分離膜材料」の項のリストから選択することができる。界面の表面に機能化すべき好ましい化合物は、「表面機能化の材料」の項に記載する。
【0216】
精製するバルク溶液と密接に接触する表面は、相分離界面とは異なる表面特性要件を有し得る。これは、血液精製に使用される応用に当てはまり得る。血液適合性を確保するため、血液または血漿と接触する表面は、周知の適合性材料で覆う必要がある。
【0217】
さらに、可溶化化合物と精製する溶液との混合を防止するため、または必要とする可溶化化合物の量を低減するため、反応領域または相分離界面の材料上に可溶化化合物を固定化することが望ましい場合がある。本発明の手順と組み合わせて加水分解酵素を使用することが必要な場合、その使用についても同じことが当てはまる。
【0218】
2.加水分解酵素
加水分解酵素は主要な酵素群である(EC3)。加水分解酵素は、エステル、エーテル、ペプチド、グリコシド、酸無水物、およびC−C結合を加水分解で切断することができる。加水分解酵素の主要なサブグループはエステラーゼである(EC3.1)。エステラーゼは、エステル結合をアルコールと有機酸に分解する酵素である(鹸化)。エステラーゼのなかのリパーゼ(EC3.1.1)は重要なサブグループを構築する。リパーゼは、全トリグリセリドのほとんどである水溶性脂質基質のエステル結合をジグリセリド、モノグリセリド、脂肪酸、およびグリセロールに加水分解するのを触媒する酵素である。従って、リパーゼはエステラーゼのサブクラスである。リパーゼは食物脂質の消化で重要な生理学的役割を担っており、これらの化合物に貯蔵されたエネルギーを使用可能にする。
【0219】
リパーゼの工業的応用は、菌類および細菌からのリパーゼに関係する。このリパーゼは、ヨーグルトやチーズの発酵と同じくらい昔からヒトの習慣において重要な役割を果たしている。より近代的な応用では、リパーゼは、パン焼き、洗濯用洗剤や、さらには植物油を燃料に変換する際の生物触媒として使用されている。
【0220】
リパーゼの固定化は、再利用のための酵素回収を容易にするという利点を提供する。吸着または取り込みのような方法による固定化と比較して、親油性酵素の共有結合による固定化は、界面活性剤が脂肪分解活性を解消しないという利点を有する。リパーゼはカーボンナノ管上で共有結合により固定化できることが示されているため、リパーゼを固相触媒として使用することができる。リパーゼ固定化の別の応用は、セルロース系有機ゲル上で示されている。リパーゼの共有結合固定化のその他の例として、ミクロンサイズの磁気ビーズ上、セパビーズ上、およびポリフェニルスルホン上が挙げられる。
【0221】
本発明によれば、加水分解酵素は、血液、体内組織、食品、または燃料処理、および油中のモノ−、ジ−、またはトリグリセリドから脂肪酸を遊離するために使用することができる。好ましい実施形態では、エステラーゼが使用される。より好ましくは、リパーゼである。最も好ましいのは、トリアシルグリセロールリパーゼ(E.C.3.1.1.3)、ホスホリパーゼA
2(E.C.3.1.1.4)、コリンエステラーゼ(E.C.3.1.1.8)、およびリポタンパク質リパーゼ(E.C.3.1.1.34)である。
【0222】
3.膜
a)透析で使用する膜の特性
原則として、マイクロ膜として分類される膜については、超ナノフィルターを使用することができる。構造は、対称または非対称の、多孔性または密であり得る。超ナノフィルターは、「分離膜の材料」の項における「支持材料またはポリマー」の項目において列挙された材料からなり得る。膜は、平坦であるか、または中空管あるいは繊維構成を有し得る。横断する穴あるいは溝の表面、および/または供給ストリームとの界面は、「表面機能化の材料」の項に列挙した物質で機能化することができる。
【0223】
好ましい実施形態では、膜を横断する開口部は円筒形または扁平の溝または管からなり、溝または管の直径の変動は小さく(<20%)、表面に対して直角に高度に規則的に膜と交差する。好ましい実施形態は、垂直のナノ管からなる膜、または繋留脂質(二重)層を有するフィルター膜、または膜表面を密封する血漿膜様構造の使用である。
【0224】
カルボン酸の質量輸送は、濃度勾配、化学勾配、気流勾配、電気勾配、またはこれらの組み合わせにより達成可能である。濃度勾配を利用した拡散法が最も一般的に使用される。精製する物質の分配係数がドナー溶液中の分配係数よりも高いアクセプター媒体を使用することにより、拡散能力を高めることができる。原則として、有機アニオンを受け入れるために高親和性を有する材料が、好ましい実施形態で使用される。好ましい部類は、アミノ基(一級、二級、三級、四級)、リン酸基、またはカルシウムを示す分子である。これらの分子、またはその構造体の最小サイズは、透析膜または媒体の開口部(溝)のサイズ範囲の下限よりも大きい必要がある。分子サイズがこれよりも小さい場合は、むしろこれらの分子をマトリックス上に不可逆的に固定化することができる。好ましい実施形態では、アミド官能基を担持する架橋ポリステロール、即ちポリ(アクリルアミド−N−プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリ[(3−(メタクリロイルアミノ)−プロピル]トリメチルアンモニウムクロライド)が使用される。別の好ましい実施形態は、シクロデキストリンおよびタンパク質のような高分子、即ちアルブミンまたは脂肪酸と結合するタンパク質の使用である。これらのタンパク質は、遊離可溶化したり、またはマトリックス上に固定化することが可能であろう。マトリックス材料の選択は、応用分野に依存する。材料は、固体、繊維、メッシュ、顆粒、およびセオライト(ceolites)からなり得る。マイクロビーズおよびセオライト(ceolites)の使用が好ましい。材料は、シリコン、金属、セラミックス、またはポリマーからなり得る。好ましい実施例では、アルミニウム、チタン、シリコーン、ポリアクリレート、ポリ乳酸、ポリカーボネート、セルロースおよびそのエステル、酢酸セルロース、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミド(PA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、および/またはポリエーテルケトン(PEEK)が使用される。
【0225】
3.1 可溶化化合物が固定化された膜
本発明によれば、さらに、可溶化化合物が膜表面の流入側に固定化される分離膜が提供される。
【0226】
本明細書で流入側とは、溶液が膜に導かれてくる膜側を意味する。本発明の透析器では、流入側は、第1空洞チャンバーを意味する。本発明の二チャンバー分離器では、流入側は第1容器を意味する。
【0227】
可溶化化合物は、膜を形成するポリマーに直接固定化するか、またはリンカー分子によって付着させることができる。このようなリンカー分子は、アミノ酸が1〜10個のオリゴペプチドか、またはアミノ酸が最大で数百個のポリペプチドであり得る。これらのペプチドは、アルギニンおよび/またはその他の化合物に共有結合する。可溶化化合物がアルギニンまたはその誘導体である場合、本発明の脂肪酸との相互作用を確実に生じさせるため、固定化したアルギニンはそのグアニジン基への自由なアクセスを提供しなければならない。
【0228】
特に好ましい実施形態では、アルギニンは膜孔内部で固定化される。従って、遊離脂肪酸は、膜全体に導かれている時にアルギニン近くを確実に通過することとなる。この固定化により、精製プロセスの有効性が向上する。従って、使用しなければならないアルギニンは少量で済む。あるいは、透析プロセスの物理的パラメーターを適宜調節することができる。このことは、取扱いに注意を要する血液成分を保護するために、血液透析では特に有利であり得る。
【0229】
本発明によれば、さらに、可溶化化合物が膜表面の流入側ならびに膜孔の内側で固定化される膜が提供される。
【0230】
本発明によれば、さらに、可溶化化合物が毛細管の内側で固定化される中空毛細管が提供される。毛細管を形成するポリマーにより、上記のように、膜孔の内側の場合と同様に可溶化化合物を固定化することができる。本実施形態の利点は、前の段落で既に説明済みである。
【0231】
従って、本発明はさらに、可溶化化合物が毛細管の内側で固定化されることを特徴とする中空毛細管を意味する。
【0232】
3.2 加水分解酵素が固定化された膜
特に好ましい実施形態では、さらに、リパーゼが分離膜の流入側に固定化される。本明細書において、アルギニンおよび/またはその他の可溶化化合物は、膜の流入側、または膜孔の内側、または両方の組み合わせのいずれかで固定化することができる。本実施形態の利点は、リパーゼを固定化する対象となるさらなる手段を必要としないことである。さらに、リパーゼにより遊離化した脂肪酸と固定化したアルギニン(または可溶化化合物)が非常に近接するため、脂肪酸がアルギニンおよび/またはその他の可溶化化合物と相互作用する確率が高まる。距離が離れると、アルギニンまたは可溶化化合物との相互作用の前に遊離した脂肪酸が疎水性構造体に再び吸着する可能性が高まる。
【0233】
3.3 分離膜材料
以下のポリマーは、分離膜での使用に好適であることを示した:
ポリオレフィン、ポリエチレン(HDPE、LDPE、LLPE)、フッ素化エチレン、エチレンと、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1とのコポリマー、エチレンとプロピレンのコポリマー、EPR−生ゴムまたはEPT−生ゴム(ジエン構造他を有する第三成分)、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、メチレン−ドメチレン−ヘキサヒドロナフタリン、シス−シス−シクロオクタジエン−1,5−ヘキサジエン−1,4、ヘキシル−(1−ヘキセン−メチルヘキサジエン)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、エチレン−N−ビニルカルバゾール、メタクリルアミド−N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド−アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリメタクリレート、ポリヒドロキシメタクリレート、スチレン−グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリメチルペンテン、ポリ(メチルメタクリレート−メタクリロイルアミドグルタミン酸、ポリ(グリシジルメタクリレート−co−エチレンジメタクリレート)、スチレン−ポリビニルピロリドン−グリシジルメタクリレートコポリマー、クロスポビドンとのスチレン−ポリビニルピロリドンブレンド、エチレン−トリフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−(メチルペンテン−1)、ポリメチルペンタン、イソブチレンコポリマー、ポリイソブチレン−スチレンコポリマー、ブチル生ゴム、ポリスチレンおよび変性スチレン、クロロメチル化スチレン、スルホン化スチレン、ポリ−(4−アミノスチレン)、
スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル−スチレン−アクリルエステルコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−ジビニルベンゾールコポリマー、スチレン−マレイン酸無水物コポリマー、シス−トランス型、1−2型、3−4型ポリジエン、ブタジエン、イソプレン、精製した天然生ゴム、スチレン−ブタジエンコポリマー(SBR)、三元ブロックポリマー(SBS)、NBRアクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、ポリ−(2,3−ジメチルブタジエン)、脂環式二級アミンで末端処理したポリブタジエンの三元ブロックコポリマー、または−ベンザル−L−グルタミン酸、あるいはN−カルボベンゾキシ−L−リジン、ポリ−(アルケナメル(alkenamere))−ポリペンテナメル(polypentenamere)、ポリ−(1−ヘキサメチル−ヘキサジエン)、ポリ−フェニレン、ポリ−(p−キシリレン)、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−ステアリン酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル−ピバール酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、ポリ−(N−ビニルカルバゾール)、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−(4−ビニルピリジン)、ポリ−(2−ビニルピリジニウムオキシド)、ポリ−(2−メチル−5−ビニルピリジン)、ブタジエン−(2−メチル−5−ビニルピリジン)−コポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロプロピルビニルエーテルコポリマー、テトラフルオロエチレン−エチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−トリフルオロニトロソメタンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロメチレンビニルエーテルコポリマー、テトラフルオロエチレン−(ペルフルオロ−4−シアノブチルビニルエーテル)コポリマー、ポリ−(トリフルオロクロロメチレン)、トリフルオロエチレン−エチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロイソブチレン−フッ化ビニリデンコポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ABS、MBS、
NBRを混合した耐衝撃性PVC、塩素化PE、FVACまたはポリアクリレート、軟質PVC、後塩素化PVC、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニルプロピレンコポリマー、ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニル−塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニリデン−アクリルニトリルコポリマー、ポリアクリル酸、アクリル酸−イタコン酸コポリマー、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エステル−アクリルニトリルコポリマー、アクリル酸エステル−2−クロロエチレンビニルエーテルコポリマー、ポリ−(1,1−ジヒドロペルフルオロ−ブチルアクリレート)、ポリ−(3−ペルフルオロメトキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロピルアクリレート)、ポリスルホン、ポリアクロレイン、ポリアクリルアミド、アクリル酸−アクリルアミドコポリマー、アクリルアミド−マレイン酸コポリマー、アクリルアミド−ヒドロキシメチルメタクリレートコポリマー、アクリルアミド−メチルメタクリレートコポリマー、アクリルアミド−メチルアクリレートコポリマー、アクリルアミド−マレイン酸無水物コポリマー、アクリルアミド−メタクリル酸無水物コポリマー、アクリルアミド−アニリノ−アクリルアミドコポリマー、
アクリルアミド−(N−アクリロール(acrylol)−4−カルボキシメチル−2,2−ジメチルチアゾリン)コポリマー、ポリメタクリルアミド、メタクリル酸−メタクリルニトリルコポリマー、メタクリル酸−3−フルオロスチレンコポリマー、メタクリル酸−4−フルオロスチレンコポリマー、メタクリル酸−3−フルオロアニリドコポリマー、メタクリル酸とメタクリル酸−3−フルオロアニリドあるいはフルオロスチレンのニトロ化コポリマー、またはメタクリル酸と3,4−イソチオシアネートスチレンあるいはN−ビニルピロリドンとマレイン酸無水物あるいはポリビニルアルコールとポリアリルアルコールのコポリマー、ポリアクリロニトリル、アクリルニトリル−2−ビニルピリジンコポリマー、アクリルニトリル−メタリルスルホン酸コポリマー、アクリルニトリル−N−ビニルピロリドンコポリマー、ヒドロキシ基を含有するPAN、アクリルニトリル−酢酸ビニルコポリマー、アクリルニトリル−アクリル酸エステルコポリマー、ポリアリル化合物、ポリジアリルフタレ一ト、ポリトリアリルシアヌレート、ポリ−α−シアノアクリレート、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートおよびアクリルニトリルのコポリマー、メチルメタクリレート−ラウリルメタクリレートコポリマー、P−アセトアミノフェニルエトキシメタクリレート−メチルメタクリレートコポリマー、グリコールジメチルメタクリレート−メタクリレートコポリマー、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート−メチルメタクリレートコポリマー、グリコールジメタクリレート−メタクリレートコポリマー、
ポリ−2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート−メチルメタクリレートコポリマー、グリコールメタクリレート−グリコールジメタクリレートコポリマー、HEMA−スチレンブロックおよびグラフトコポリマー、ポリ−N,N−P,P−オキシジフェニレンメリトイミド(oxydiphenylenemellitimide)、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート、脂肪族ポリエーテル、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリフルオラール、ポリクロラール、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、プロピレンオキシド−アリルグリシジルエーテルコポリマー、ポリエピクロロヒドリン、エチレンオキシド−エピクロロヒドリンコポリマー、ポリ−1,2−ジクロロメチル−エチレンオキシド、ポリ−2,2−ビス−クロロメチルオキサシクロブタン、エポキシ樹脂、ビス−フェノール−A−ジグリシジルエーテル、エポキシ化フェノール−ホルムアルデヒド、クレゾール−ホルムアルデヒド、樹脂、カルボン酸無水物との架橋物、
ジエチレンアミン等のアミン、イソホロンジアミン、4,4−ジアミノジフェニル−メタン、芳香族ポリエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリフェノール、フェノキシ樹脂、脂肪族ポリエステル、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ−β−プロピオン酸、ポリ−β−ヒドロキシブチレート、ポリピボラクトン(polypivolactone)、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレングリコールアジペート、ポリエチレングリコールセバケート、マレイン酸無水物の不飽和ポリエステル、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、またはHET酸とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、オキセチル化(oxethylated)ビスフェノールまたはシクロドデカンジオール、不飽和ポリエステルとスチレンの共重合による不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、メタクリレート、ビニルモノマー、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、ポリカーボネート、ビスフェノールAのポリカーボネートおよびその誘導体およびポリエーテル、ポリエステル、ビスフェノールAのセグメント化ポリカーボネートおよびその誘導体および脂肪族ポリエーテル、ならびに脂肪族ポリエステル(上記参照)、アクリル酸で表面修飾した、あるいはグラフトした、またはPETの表面を部分的に加水分解したポリエチレングリコールテレフタレート(PET)、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリエチレングリコールテレフタレート−アジペート、ポリエーテルブロックと脂肪族ポリエステルブロックとポリテトラヒドロフランブロックでセグメント化したポリエチレングリコールテレフタレート、ポリ−p−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸−ヒドロキノンコポリマー、ヒドロキシ安息香酸−テレフタル酸コポリマー、ヒドロキシ安息香酸−p,p−ジフェニルエーテルコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−マレイン酸無水物コポリマー、グリセロールのアルキド樹脂、トリメチルプロパン、ペンタエリスリト、フタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸を有するソルビトール、亜麻仁油、ヒマシ油、大豆油、
ヤシ油の脂肪酸、脂肪族ポリスルフィド−(R−Sx−)=硫黄分、芳香族ポリスルフィド、ポリチオ−1,4−フェニレン、フェノールとチオフェンの芳香族ポリスルフィドエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホ−1,4−フェニレン、ポリ−p−フェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエチレンイミン、分枝状ポリエチレンイミン、ポリアルキレンアミン、ポリアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミド、ポリヘキサメチレンドデカンジアミド、ポリトリデカンブラシル酸アミド、ジアミンとトリアミンを有する植物油からのバーサミド(versamides)、ω−アミノカルボン酸とα,β,γ,δ−アミノカルボン酸またはラクタムのポリアミド、テレフタル酸−m−アミノベンザミドコポリマー、例えばイソフタル酸とm−アミノベンゾヒドラジドのポリアミドヒドラジド、例えばフマル酸とジメチルピペラジンのポリピペラジンアミド、テレフタル酸とテトラアミノベンゼン(置換)、またはジアミノフェニルエーテルとジクロロフェニルスルホン(置換と環化)、またはm−フェニレンイソフタルアミドとテレフタルアミドのポリベンゾイミダゾール、例えばピロメリト酸二無水物のポリイミド、メトキシ−m−フェニレンジアミン、例えばピロメリト酸二無水物とジアミノベンジジンのピロン、芳香族ポリアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド、
ポリ−p−ベンズアミド、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、m−アミノ安息香酸−p−フェニレンジアミン−イソフタル酸コポリマー、テレフタル酸とヘキサメチレンテトラアミン、テレフタル酸とトリメチルヘキサメチレンジアミンと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンから、テレフタル酸とジアミノメチレンノボルネンとε−カプロラクタムから、イソフタル酸とラウリンラクタムから、イソフタル酸とジ−4−(シクロヘキシルアミノ−3−メチル)−メタンから、1,12−デカン二酸と4,4’−ジアミンジシクロヘキシルメタンからの、ポリ−4,4’−ジフェニルスルホンテレフタルアミド、複素環を有する芳香族ポリアミド、(例えば、ジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸、およびイソフタル酸)、オキシダゾール、トリアゾール、ビチアゾール、およびベンゾイミダゾール構造を有するジアミン複素環、3−(p−アミノフェニル)−7−アミノ−2,4−(1H,3H)?キナゾリンジオンとイソフタル酸、ポリアミノ酸、ポリ−メチル−L−グルタミン酸、ポリ−L−グルタミン酸他、コポリペプチド(例えばグルタミン酸とロイシン、グルタミン酸とフェニルアラニン、グルタミン酸とバリン、グルタミン酸とアラニン、
リジンとロイシン、p−ニトロ−D,L−フェニルアラニンとロイシン他から合成)、ジアミンと尿素を有するジイソシアネートからのポリ尿素、脂肪族および芳香族ジイソシアネートと、ポリエステル(上記参照)や脂肪族ポリエーテル(上記参照)を含有する二官能性および三官能性ヒドロキシからのポリウレタン(任意に、二官能性のアミノ基、ヒドロキシル基、およびカルボキシ基を含有する材料、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート2,4および2,6、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、グリセリン、エチレングリコール、ペンタエリスリトで修飾される)、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオールと炭化水素、脂肪族および芳香族ジカルボン酸とこれらの誘導体、o,m,p−フェニレンジアミン、ベンジジン、メチレン−ビス−o−クロロアニリン、p,p’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ジアミノプロパン、エチレンジアミン、アミノ樹脂(尿素および環状尿素、メラミン、チオ尿素、グアニジン、ウレタン、シアナミド、酸アミド、およびホルムアルデヒドならびに長鎖アルデヒドとケトン、シリコーンから合成)、ポリジアルキルシロキサン、ジアリールシロキサン、およびアルキル−アリルシロキサン(例えばジメチル−、ジエチル−ジプロピル−、ジフェニル−、フェニルメチルシロキサン)、例えばアリル基等の官能基を含有するシリコーン、アミノ基とビニル基を含有するγ−置換フルオロシリコーン(例えばアミノプロピルトリエトキシシロキサン)、2−カルボキシルプロピルメチルシロキサン、ジメチルシロキサン単位とポリスチレンまたはポリカーボネートブロックを有するブロックポリマー、α,ω−ジヒドロキシ−ポリメチルシロキサンとスチレン、ブチルアクリレートの三元ブロックコポリマー、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン、アボカン(90%シリコーンとポリカーボネート)、シリコーンとポリカーボネートのコポリマー、親水性ポリマーを添加した疎水性ポリマー(例えばポリスルホンポリビニルピロリドン)、セルロースおよびセルロース誘導体(例えば、アセチルセルロース、ペルフルオロブチリルエチルセルロース、
ペルフルオロアセチルセルロース、ポリ芳香族ポリアミドポリマー、硝酸セルロース、カルボキシ−メチルセルロース、再生セルロース、ビスコースからの再生セルロース、および同様のセルロース誘導体)、アガロース、多糖類(カラギーナン、デキストラン、マンナン、フルクトサン、キチン、キトサン(エチレングリコールジグリシジルエーテル、キトサン−EDGE)、ペクチン、グリコサミノグリカン、デンプン、グリコーゲン)、脂肪酸、および全てのデオキシ多糖類とハロゲノ−デオキシ多糖類およびこれらの誘導体、アミノ−デオキシ多糖類またはスルフヒドリル−デオキシ多糖類およびこれらの誘導体、ムレイン(mureine)、タンパク質(例えば、アルブミン、ゼラチン、コラーゲンI〜XII、ケラチン、フィブリンおよびフィブリノゲン、カゼイン、血漿タンパク質、乳タンパク質、クロスポビドン、動物および植物組織からの構造タンパク質、大豆タンパク質、食品工業のタンパク質)。
【0234】
分離膜としては以下のポリマーが好ましい:
シリカ、シリコーン、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリメチルペンタン、多糖類、ポリペプチド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリスルホン酸塩、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリピロール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ芳香族ポリアミド、セファロース、炭化水素類、ポリカーボネート、アクリレートまたはメタクリレートとポリアミドのコポリマー、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、エチレングリコールジアクリレートまたはエチレングリコールジメタクリレートとグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートおよび/またはアリルグリシド(allylglycide)エーテルのコポリマー、再生セルロース、アセチルセルロース、親水性ポリマーを添加した疎水性ポリマー(例えばポリスルホンポリビニルピロリドン)、前述のポリマーの誘導体およびコポリマー。
【0235】
ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)(PIHCA)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)(PIBCA)、ポリ(ヘキシルシアノアクリレート)(PHCA)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)(PBCA)、ポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(PDMAEMA)、ポリモノ−メチルアミノ−エチルメタクリレート(PMMAEMA)、ポリ−N−トリメチル−アミノエチルメタクリレート(PTMAEMC)、ポリアミノエチル−メタクリレート(PAEMC)、ポリアミノエチル−メタクリルアミド(PAHMAC)、ポリアミノヘキシル−メタクリレート(PAHMC)、ポリスチロール(PS)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリエチレンイミン(PEI)。
【0236】
無機材料としては、アルミニウム、鉄、マグネシウム、銅、金、ジルコニウム、イリジウム、チタン、亜鉛、スズ等の金属、ならびにこれらの酸化物、ケイ素およびその酸化物、ならびに単独でまたは窒化ケイ素、窒化アルミニウム、二ケイ化モリブデン、および炭化タングステン等の物質と組み合わせて用いられる炭化ケイ素(SiC)等のケイ素複合体、代替的に炭素およびその酸化物、ならびに窒化ホウ素(BN)、炭化ホウ素(B
4C)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0237】
3.4 中空多孔性毛細管または管
一般的に、全てのポリマーまたはセラミック材料ならびにカーボン管は、上記に記載したように分離膜に好適であり、中空毛細管にも同様に好適である。
【0238】
材料および寸法は、様々な応用で多様である。
【0239】
医療用途
中空繊維の長さは30〜500mm、好ましくは50〜300mmである。このような中空繊維の外径は0.1〜1.5mm、内径は0.01〜1mm、および中空毛細管の壁厚は5〜200μm、好ましくは15〜50μmでなければならない。
【0240】
工業的用途
中空繊維または管の長さは150mm〜2000mm、好ましくは500mm〜1000mmであり得る。このような中空繊維または管の外径は1.5mm〜10mm、内径は1mm〜4mm、および中空毛細管の壁厚は200μm〜500μm、好ましくは300μm〜400μmでなければならない。
【0241】
中空毛細管または管の壁は細孔を含み得る。ガス透過性膜で作成される中空毛細管または管の内外面の空隙率は、10〜90%である。細孔の平均直径は0〜5μm、好ましくは0〜1.5μmである。ほとんど全てのポリマー材料は、中空毛細管または管の構築に好適である。特に好ましいのはポリアクリロニトリルである。また、有機ゲルおよびポリマーで作成される複合材料も好適であり、セラミックス、セルロース、およびこれらの材料の組み合わせも同様である。
【0242】
4.表面機能化の材料
最も適切である化合物は、分離する必要があるカルボン酸に大きく依存する。1つ以上の化合物が使用可能である。原則として、界面の正味ゼータ電位は正電荷または中性電荷でなければならず、表面は有機親和性/親油性および疎水性である必要がある。化合物は、有機又は無機ならびにこれらの組み合わせであり得る。化合物としては、脂肪族または環状炭化水素、ならびにコレステリンのようなこれらの複合化合物、コール酸およびケノデオキシコール酸やウルソデオキシコール酸のようなその誘導体、テトラエーテル脂質およびその抱合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0243】
最も好ましいのは、シクロヘプタトリエニルカチオンのようなカチオン電荷を有する分子、またはヨウ素又は臭素のような求電子置換基を有する分子である。
【0244】
さらに好ましいのは、コリン、エタノールアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ベタイン、および類似体のようなアミノ基(一級、二級、三級、四級)を示す分子である。
【0245】
さらに好ましいのは、イミダゾール、イニダゾール(inidazol)、プリン、ピラゾール、ピリミジン、ピリダジンのようなジアジン、およびアトラジン、シマジン、メラミンのようなトリアジン等の2個以上の窒素原子を有する芳香族炭素分子、より具体的には、テトラフルオロホウ酸2,4,6−トリフェニルピリリウム(2,4,6−TPPT)および1,3−テトラフルオロホウ酸1,3−ベンゾジチオリリウム(1,3−BDYT)、ブロモベンゼンジアゾニウム−、ニトロニウム−、ベンゾジチオリリウム−、およびトリフェニルピリリウムテトラフルオロホウ酸である。
【0246】
さらに好ましい化合物は、以下のようなアルギニンおよびその誘導体:
オキソアルギニンとして知られる5−(ジアミノメチリデンアザニウミル)−2−オキソペンタン酸、ω−メチル−アルギニンとして知られる(2S)−2−アミノ−5−[(N’−メチルカルバミミドイル)アミノ]ペンタン酸、アルギニン−4−ニトロアニリドとして知られる2−アミノ−5−(ジアミノメチリデンアミノ)−N−(4−ニトロフェニル)ペンタンアミド、ベンゾイル−L−アルギニンとして知られる2−ベンズアミド−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタン酸、アリニルアルギニン(arinylarginine)として知られる(2S)−2−[[(2S)−2−アミノ−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタン酸、フェニルアラニルアルギニンとして知られる(2S)−2−[[(2S)−2−アミノ−5−フェニルプロパノイル]アミノ」−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタン酸、L−ノルアルギニンとして知られる(2S)−2−アミノ−4−(ジアミノメチリデンアミノ)ブタン酸、[1−アミノ−4−(ジアミノメチリデンアミノ)ブチル]−ヒドロキシ−オキソホスファニウム、
スクシニル−L−アルギニンとして知られる(2S)−5−(ジアミノ−メチリデンアミノ)−2−[(4−ヒドロキシ−4−オキソブタノイル)アミノ]ペンタン酸、N,N−ジメチル−L−アルギニンとして知られる(2S)−2−アミノ−5−[[アミノ(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ]ペンタン酸、β−アラニル−L−アルギニンとして知られる(2S)−2−(3−アミノプロパノイルアミノ)−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタン酸、ホスホアルギニンとして知られる2−アミノ−5−[[アミノ−(ホスホンアミノ)メチリデン]アミノ]ペンタン酸、ノパリンとして知られる2−[[(2R)−5−(ジアミノメチリデンアザニウミル)−1−オキシド−1−オキソペンタン−2−イル]アザニウミル]ペンタンジオエート、オクトピンとして知られる5−(ジアミノメチリデンアミノ)−2−[(1−ヒドロキシ−1−オキソプロパン−2−イル)アミノ]ペンタン酸、ヒドロキシアルギニンとして知られる(2S)−2−アミノ−5−[[アミノ−(ヒドロキシアミノ)メチリデン]アミノ]ペンタン酸、L−N2−(2−カルボキシエチル)アルギニンとして知られる(2S)−2−(2−カルボキシエチルアミノ)−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタン酸、アルギンジウム(arginedium)として知られる[(4S)−4−アザニウミル−5−ヒドロキシ−5−オキソペンチル]−(ジアミノメチリデン)アザニウム、オーグメンチンとして知られる4−(ジアミノメチリデンアミノ)ブタンアミド、
および、以下の様なアルギニンおよびアルギニン関連分子を含有する化合物:
アルギニル−フェニルアラニンアニリド、アグマチンとして知られる2−(4−アミノブチル)グアニジンおよびその構造的類縁体、2−(1−アミノブチル)グアニジン、2−(4−アミノブチル)グアニジン塩酸塩、2−(4−アミノブチル)−1−ブロモグアニジン、2−(4−アミノブチル)−1−クロログアニジン、2−(1−アミノプロピル)グアニジン、2−(1−アミノプロピル)−1−(ジアミノ−メチリデン)グアニジン、2−(3−アミノプロピル)−1−(ジアミノメチリデン)グアニジン、2−(3−アミノプロピル)グアニジン、4−アミノブチル(ジアミノメチリデン)アザニウム、ジアミノメチリデン−[3−(ジアミノメチリデンアミノ)プロピル]アザニウム、2−[3−(ジアミノメチリデンアミノ)プロピル]グアニジン、4−(ジアミノメチリデンアミノ)ブタンアミド、2−(4−アミノブチル)−1−(ジフルオロメチル)グアニジン、[1−(ジアミノメチリデン)ピペリジン−1−イウム−4−イル]メチルアザニウム、[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イウム−1−イリデン]メタンジアミン、3−(2−アミノエチル)−2,5−ジヒドロピロール−1−カルボキシイミドアミド、3−(2−アミノエチルスルファニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−アミン、2−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]グアニジン、3−(2−アミノエチル)アゼチジン−1−カルボキシイミドアミド、2−(3−アミノプロピル)グアニジン、
4−(アミノメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシイミドアミド、2−[2,2−ビス(スルファニル)エチル]グアニジン、5−(アミノメチル)チオフェン−3−カルボキシイミドアミド、ジアミノメチリデン−[4−(ジアミノメチリデンアザニウミル)ブチル]アザニウム、[アミノ−(ジアミノメチリデンアミノ)メチリデン]−ブチルアザニウム、[アミノ(ブチルアザニウムイリデン)メチル]−(ジアミノ−メチリデン)アザニウム、ブチル(ジアミノメチリデン)アザニウム、である。
【0247】
さらに、以下のようなフェニルアラニンおよびその誘導体:
4−グアニジノフェニルアラニン、N−グアニル−dl−フェニルアラニン、アルギニルフェニルアラニンとして知られる(2S)−2−[[(2S)−2−アミノ−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]−3−フェニルプロパン酸、(2S)−2−アミノ−3−[4−[(ジアミノメチリデンアミノ)メチル]フェニル]プロパン酸、2−アミノ−3−フェニルプロパンヒドラジド、(2S)−2−[[(2S)−2−アミノ−3−フェニルプロパノイル]アミノ」−5−(ジアミノメチリデンアミノ)−N−ナフタレン−2−イルペンタンアミド、およびポリフェムシンIまたはII。
【0248】
さらに、以下のようなグアニジンおよびその誘導体:
尿素、2−メチルグアニジン、2−[4−[4−(ジアミノメチリデンアミノ)フェニル]フェニル]グアニジン、3−(ジアミノメチリデンアミノ)−5−[(ジアミノメチリデンアミノ)メチル]安息香酸、(2S)−2−アミノ−3−[4−(ジアミノメチリデンアミノ)フェニル]プロパン酸、サノテンシンとして知られる2−[2−(アゾカン−1−イル)エチル]グアニジン、グアンファシンとして知られるN−(ジアミノ−メチリデン)−2−(2,6−ジクロロフェニル)アセトアミド、2−[(3−ヨードフェニル)メチル]グアニジン、2−メチルグアニジン、2−ブチル−1−(ジアミノメチリデン)グアニジン、2−[(E)−[(1E)−1−(ジアミノメチリデンヒドラジニリデン)プロパン−2−イリデン]アミノ]グアニジン、2−[3−(1H−イミダゾール−5−イル)プロピル]−1−[2−[(5−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)メチルスルファニル]エチル]グアニジン、2−[(3−ヨーダニルフェニル)メチル]グアニジン、2−[ヨード(フェニル)メチル]グアニジン、2−ベンジルグアニジン、[(E)−N’−(N’−ベンジルカルバミミドイル)カルバミミドイル]アザニウム、ベンジル(ジアミノメチリデン)アザニウム、2−[[4−[(ジアミノメチリデンアミノ)メチル]フェニル]メチル]グアニジン、4−フェニル−1,4−ジヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジアミン、2−[[4−[[[アミノ−(ジアミノメチリデンアミノ)メチリデン]アミノ]メチル]フェニル]メチル]−1−(ジアミノメチリデン)グアニジン、2−(2H−テトラゾール−5−イル)グアニジン、4−[5−(4−カルバミミドイルフェノキシ)ペントキシ]ベンゼンカルボキシイミダミド、クレアチニンとして知られる2−[カルバミミドイル(メチル)アミノ]酢酸、4−[2−(4−カルバミミドイルフェニル)イミノヒドラジニル]ベンゼンカルボキシイミダミド、1−シアノ−2−メチル−3−[2−[(5−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)メチルスルファニル]エチル]グアニジン塩酸塩、2−[(Z)−[(1Z)−1−(ジアミノメチリデンヒドラジニリデン)プロパン−2−イリデン]アミノ]グアニジン、1−N−[アミノ−(4−クロロアニリノ)メチリデン]−1−N’−[N’−(4−クロロフェニル)カルバミミドイル]ピペラジン−1,4−ジカルボキシイミドアミド、メチルグリオキサールビス(グアニルヒドラゾン)(ミトグアゾンとして知られる)、
および以下のようなビグアニジン:
メトホルミンとして知られる3−(ジアミノメチリデン)−1,1−ジメチルグアニジン、クロルヘキシジンとして知られる(1E)−2−[6−[[アミノ−[(E)−[アミノ−(4−クロロアニリノ)メチリデン]アミノ]メチリデン]アミノ]ヘキシル]−1−[アミノ−(4−クロロアニリノ)メチリデン]グアニジン、ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、オクタデシル−グアニジニウムクロライド、1,10−ビス(4−クロロフェニル)−1,3,5,10,12,14−ヘキサザジスピロ[5.2.5^9.2^(6)]ヘキサデカ−2,4,11,13−テトラエン−2,4,11,13−テトラアミン、3,5−ジメチル−4−フェニルジアゼニルピラゾール−1−カルボキシイミドアミド塩酸塩、N,N’−ジオクタデシル−グアニジニウムクロライド、2,2,8,8−テトラアルキル−3,4,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド−[1,2−a]−ピリミジン、3−(ジアミノメチリデンアミノ)プロパン酸、2−[5−(ジアミノメチリデン−アミノ)ペンチル]グアニジン、2−[4−(3−アミノプロピルアミノ)ブチル]グアニジン、2−(ジアミノ−メチリデンアミノ)酢酸、3−(ジアミノメチリデンアミノ)安息香酸。
【0249】
さらに、以下等のアミニン:
ブタンイミドアミド、デカンイミドアミド塩酸塩、4−[4−(4−カルバミミドイルフェニル)フェニル]ベンゼンカルボキシイミダミド、N,N−ジメチル−N’−(4−フェニルメトキシフェニル)メタンイミドアミド。
【0250】
さらに、アミノ酸、最も好ましくはフェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、バリン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン、チロシン、プロリン。
【0251】
さらに、これらのアミノ酸の1つ以上からなるペプチド。最も好ましくは、「RDG」−ペプチド配列(Arg−Asp−Glyc);
および、アルブミン、脂肪酸結合タンパク質のような、周知の親油性を有するタンパク質および巨大分子、またはアポリポタンパク質、ラクトグロブリン、カゼインのような、脂肪酸結合特性を有するタンパク質および巨大分子である。さらに、シクロデキストリンまたはポルフィリン等、およびクロリンおよびコルピン(corpin)のような物質。
【0252】
以下等のアミンおよびポリアミン:
コリン(2−ヒドロキシエチル(トリメチル)アザニウム);ホスホコリン、ベタイン(2−(トリメチルアザニウミル)アセテート);ネオスチグミン;2−[2,3−ビス[2−(トリエチルアザニウミル)エトキシ]フェノキシ]エチル−トリエチルアザニウムトリヨージド;カルニチンとして知られる[(2R)−2,4−ジヒドロキシ−4−オキソブチル]−ジメチル−(トリジューテリオメチル)アザニウム;3−ヒドロキシ−4−(トリメチル−アザニウミル)ブタノアート;スペルミジンとして知られる、4−アザニウミルブチル(3−アザニウミルプロピル)アザニウム;ゲロンチンとして知られる、3−アザニウミルプロピル−[4−(3−アザニウミルプロピルアザニウミル)ブチル]アザニウム。
【0253】
さらに、下記等のペプチド−カルボキシレート抱合体:
トランスフェクタムとして知られる、(2S)−2,5−ビス(3−アミノプロピルアミノ)−N−[2−(ジオクタデシルアミノ)アセチル]ペンタンアミド;6−アミノ−2−[[(2S)−2,5−ビス(3−アミノプロピルアミノ)ペンタノイル]アミノ]−N,N−ジオクタデシルヘキサンアミド;2−アミノ−6−[[2−[3−[4−(3−アミノプロピルアミノ)ブチル−アミノ]プロピルアミノ]アセチル]アミノ]−N,N−ジオクタデシルヘキサンアミド;
および、以下等のペプチド:
RGD−ペプチドとして知られる(2S)−2−[[2−[[(2S)−2−アミノ−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]アセチル]アミノ]ブタン二酸;(2S)−2−[[(2S)−2−アミノ−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]ブタン二酸、アリニン(arinine)−アスパラギン−ジペプチド、および
以下のようなポリペプチド:2−[[2−[[2−[[2−アミノ−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]ブタン二酸;2−[[2−(2,6−ジアミノヘキサノイルアミノ)−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]ブタン二酸;4−アミノ−2−[[2−アミノ−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]−4−オキソブタン酸;チモトリナンとして知られる、2−[[6−アミノ−2−[[2−アミノ−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]ヘキサノール]アミノ]ブタン二酸;2−[2−[[2−[[2−アミノ−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]プロパノイルアミノ]ブタン二酸;3−[[2−アミノ−5−(ジアミノメチリデンアミノ)ペンタノイル]アミノ]−4−「(1−ヒドロキシ−1−オキソプロパン−2−イル)アミノ]−4−オキソブタン酸;(2R)−2−[[(2S)−2−アザニウミル−5−(ジアミノメチリデンアザニウミル)ペンタノイル]アミノ]ブタンジオアート。
【0254】
さらに、アルブミン、プロタミン、ゼラチン、ナトリウム利尿ペプチドのようなタンパク質。
【0255】
5. アクセプター/吸着剤−分子/材料
吸着のプロセスは、分子の表面への付着と定義される。分子と表面との間の結合性質に基づいて、吸着現象を物理吸着と化学吸着の2つのカテゴリーに分けることができる。物理吸着では、化学結合は形成されず、吸着体と吸着質との間の引力はファン・デル・ワールス力等の分子間静電気力のみに基づく。化学吸着では、吸着質は、表面との化学的結合の形成により固体に吸着する。
【0256】
カルボン酸と可溶化化合物の会合体(associates)が第2空洞チャンバーまたは第2容器内で吸着される場合、これらの会合体を吸着するのに好適な吸着体を提供しなければならない。
【0257】
化合物および/または材料は、天然又は合成由来であり得る。本発明で使用することができる吸収材料の群の例としては、ゼオライト、粘土、活性炭、活性アルミナ、天然および合成ポリマー、アルカン、タンパク質、およびシリカゲルが挙げられるが、これらに限定されない。吸収材料は、ビーズ、膜、繊維、またはコーティング等の様々な形態で使用することができる。異なった吸収材料の組み合わせも可能である。
【0258】
ゼオライトは、多様なカチオンに適応できる多孔質構造体を有する微小多孔性のアルミノケイ酸ミネラルである。ゼオライトの形状選択性も、分子吸着にゼオライトを使用する根拠である。ゼオライトは、他を排除しながら、一定の分子を優先的に吸着する能力を有する。ゼオライトの例としては、アミサイト、方沸石、バラー沸石、ベルベルヒ沸石、ビキタ沸石、ボッグス沸石、ブリュースター沸石、菱沸石、斜プチロル沸石、コウルス沸石、ダキアルディ沸石、エディントン沸石、剥沸石、エリオン沸石、フォージャス沸石、フェリエ沸石、ガロン沸石、ギスモンド沸石、グメリン沸石、ゴビンス沸石、ゴナルド沸石、グーズクリーク沸石、重土十字沸石、ハーシェル沸石、輝沸石、濁沸石、マリコパ石、マッシィ沸石、メルリーノ沸石、中沸石、モンテソンマ沸石、モルデン沸石、ソーダ沸石、オフレ沸石、パラソーダ沸石、曹達ポーリング沸石、ペンタシル、パーリアル沸石、十字沸石、ポルクス石、スコレス沸石、ソーダライト、曹達ダキアルディ沸石、ステラ沸石、スチオルバイト(stiolbite)、テトラソーダ沸石、トムソン沸石、ツァーニック沸石、ワイラケ沸石、ウェルズ沸石、ウィルヘンダーソン沸石、および、湯河原沸石が挙げられるが、これらに限定されない。
【0259】
粘土は、シリカおよびアルミナの小さい結晶からなるミネラル物質である。粘土ミネラルは、カオリナイト群、モンモリロナイト/スメクタイト群、イライト群、およびクロライト群の4つの主要な群に分けられる。粘土の例としては、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、パイロフィライト、タルク、バーミキュライト、ソーコナイト、サポナイト、ノントロナイト、モンモリロナイト、イライト、アメサイト、ベイリークロア、ベントナイト、シャモサイト、菫泥石、クーク石、コランドフィライト(corundophilite)、月桂石、鉄緑泥石、ゴニエライト(gonyerite)、ニマイト(nimite)、オディナイト、オルソシャモス石、苦土緑泥石、パナンタイト(pannantite)、リピドライト(rhipidolite)、須藤石、および塊緑泥石が挙げられるが、これらに限定されない。
【0260】
活性チャコールまたは活性化石炭とも呼ばれる活性炭は、極度な多孔性となるように処理した炭素の形態であり、これにより吸着または化学反応で使用可能な巨大な表面積が得られる。物理的特性に基づいて、粉末化、粒状化、押出加工、含浸、およびポリマーコーティングされた炭素がそれぞれ存在し得る。
【0261】
ケイ素元素の酸化物であるシリカゲルは、非晶質で高多孔質の部分的に水和した形態のシリカである。シリカは、天然で生じるが、合成的に調製することもできる。結晶性シリカは、ケイ酸の無水物であるため、シリカゲルはケイ酸のポリマー形態である。また、Aerosil(登録商標)のような発熱性シリカ、タルク、ヘクトライト、およびモンモリロナイト等のフィロシリケート、ならびにこれらのポリマーコーティングも使用可能である。
【0262】
また、大量の高度に架橋された微粒子からなる合成ポリマーも有用である。この高度架橋構造により、高い表面積と均一の孔径が得られる。合成ポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリエチレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(ビニルピロリドン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0263】
好ましいのはポリ(メチルメタクリレート)およびポリエーテルエーテルケトンである。
【0264】
結合能力は、前述の材料の表面の機能化により高めることができる。これは、有機親和性を示す分子によって達成することができる。この特性は、「表面機能化の材料」の項で説明した分子と同じである。これらの分子は、好ましい実施形態で使用することができる。
【0265】
好ましい部類は、アミノ基(一級、二級、三級、四級)、カルシウム、またはマグネシウムを示す分子である。
【0266】
6. 有機ゲル
ゲルの最も一般的な定義は、巨視的固体、定常流を有さない液体という定義である。換言すれば、ゲルは柔軟および軟弱から、硬質および強固の範囲の特性を有し得る固体のゼリー状材料である。架橋の三次元構造ネットワークがゲルに構造を付与する。
【0267】
有機ゲルは、非結晶性で非ガラス質の熱可逆性固体材料であり、三次元の架橋ネットワークでゲル化した液体有機相からなる。弾性および硬度等の有機ゲルの特性は、その溶解度および粒子寸法により決定される。液体有機相は、いわゆるゲル化剤と呼ばれる低分子量ゲル化薬によりゲル化される。有機ゲルは、多くの場合、有機分子の自己アセンブリに基づく。有機ゲルは、その特徴付けに基づいて、固体マトリックス有機ゲルと流体マトリックス有機ゲルに分けることができる。固体ゲルは、強力な系であり、特定の温度で持続性のある堅いネットワークを形成し、一方液体ゲルは一時的なネットワークにより形成される。ゲルが、加硫ゴム等の持続性の堅いネットワークにより特徴付けられる固体様であるか、または非加硫ゴム等の一時的なネットワークにより特徴付けられる液体様であるかに基づいて、ゲルを分類することもできる。
【0268】
ほとんど全ての有機溶媒は、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ガソリン、灯油、潤滑油および同様の石油分画等の脂肪族および芳香族炭化水素や、塩化メチレン、クロロホルム、炭素、四塩化物、メチルクロロホルム、ペルクロロエチレン、二塩化プロピレン、臭化メチレン、二臭化エチレン、臭化ブチル、塩化アリル、および臭化または塩化プロパルギルの等のハロゲン化炭化水素の定義に含まれているように、問題なくゲル化することができる。ミネラルおよび植物油、レシチン、ポリシロキサン、パラフィン、ネマチックおよびスメクチック液体−結晶性材料、電解質、重合可能な液体等の他の種類の有機液体がゲル化されている。
【0269】
有機液体は、低分子量有機ゲル化剤またはポリマーゲル化剤によりゲル化される。有機ゲル化剤は、水素結合、ファン・デル・ワールス、π−積層、および配位等の非共有結合作用による自己組織化によって形成されたナノ繊維またはナノリボンの絡み合いにより、三次元ネットワークを創出する。分子間相互作用の性質により、ゲル形成は熱可逆的プロセスである。
【0270】
ある種のゲル化剤はある種の溶媒をゲル化することができる。ゲル化プロセスの要件は、ゲル化剤の溶解度が低いことである。なぜなら、溶解度が低く結晶化しにくい化合物はゲルを形成する可能性が最も高いからである。次に、溶媒は、毛細管力により、ゲル化剤のネットワーク孔およびマイクロ結晶内に閉じ込められる。
【0271】
LMWG(低分子量ゲル化剤)として機能することができる分子は、脂肪酸誘導体、ステロイド誘導体、アンスリル誘導体、ステロイド環および縮合芳香環を含有するゲル化剤、アミノ酸型有機ゲル化剤、様々なタイプのゲル化剤、および二構成要素系を含む。
【0272】
LMWGとしては、例えば、炭化水素、ハロアルカン、アルコール、アセトン、アルカン、シクロアルカン、ヘキサデカン、シクロヘキサン、トルエン、p−キシレン、シクロヘキサノン、ジクロロエタン、DMSO、エタノール、プロパノール、鉱油、灯油、クロロベンゼン、菜種油、酢酸エチル、ジアルキルフタハロゲン酸、DMF、DMA、ダイオキシン、シリコンオイル、CHCl
3、CH
2Cl
2、CCl
4、芳香族炭化水素、ピリジン、アセトニトリル、ケトン、ジエチルエーテル、ハロゲン化アルカン、脂肪族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、メタノール、油、テトラリン、デデカン(dedecane)、長鎖脂肪族炭化水素、シクロアルカンル(cycloalkanles)、アルキルラウレエート(lalkyl laureates)、トリアルキルアミン、メタクリレート、およびさらに、金属石鹸、脂肪酸、ペルフルオロアルキルアルカン、ステロイド、ワックス、尿素誘導体、環状ビス尿素化合物、テレフタルアマート、コールアミド、炭化水素、ジェミニ(Gemini)界面活性剤、ボラフォーム(bolaform)アミノ酸アミド、カンフォリル・チオセミカルバジド,シクロペプチド、アミノ酸アミド、アルブミンまたは脂肪酸結合タンパク質等のタンパク質、アントラニル、アントリル誘導体、フェナジン、トリメスアミド(trimesamides)、チオフェン、ヘリセン、レシチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ニトロセルロースまたはゼラチン、大環状ゲル化剤、シクロヘキシルアミド、シクロヘキサノール、コレステロール誘導体、ボラ両親媒性物質アルカリ溶出液、グアニル酸、ヌクレオチド、ブロモフェノールブルー、コンゴレッドデオキシコレート、コール酸等が使用される。
【0273】
有機ゲルは、ゲル化する必要がある溶媒にゲル化剤を付与することにより調製される。これは、いずれの場合も、溶媒にゲル化剤を添加し、この溶液を混合し、必要ならば溶液が生じるまで加熱することにより生じ得る。冷却すると、ゲル化が生じる(加熱ゲル化)。また、ゲル化剤を少量の溶媒に添加し、溶解するまで加熱し、次に溶媒に添加して混合および固化する(冷却ゲル化)。
【0274】
有機ゲルは、薬学、薬物送達、化粧品、美術品保存および研究等の数多くの応用で使用されており、また使用される可能性がある。
【0275】
自己組織化した構造を構築する有機ゲルの能力は、ナノ技術において大きな可能性を提供する。科学者たちは、質量形成物全体にわたって相互に連接されたナノスケールの空洞を有する有機ゲル材料を創出した。これにより、毛細管力により定義される質量移動が可能になる。
【0276】
また、酵素固定化マトリックスとしても有機ゲルを使用することができる。リパーゼは、レシチンとヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはゼラチンを用いて処方されるマイクロエマルションベースの有機ゲルの中にカプセル化されることが記載されている。閉じ込められたリパーゼは、エステル化反応を触媒する能力を維持した。
【0277】
親油特性を有するナノ空洞を示す有機ゲルを使用することが好ましい。有機ゲルのさらに好ましい形態は、キセロゲルの調製である。
【0278】
7. アクセプター溶液
アクセプター溶液は、有機、無機、またはエマルションであり得る。水溶液は、「4.表面機能化の材料」に記載された可溶性あるいは固定化したアクセプター分子、または「5.アクセプター/吸着剤−分子/材料」に記載されたアクセプター材料を含まなければならない。
【0279】
有機溶液は、アルカン、アルケン、アルキン、カルボン酸、エステル、アルデヒド、ケトン、芳香族炭化水素、モノ−、ジ−またはトリアシルグリセロール、シリコーンオイル、n−ヘキサンのような有機溶媒、エステル、テトラヒドロフラン、ケトン、ラクトン、アセトン、アセトニトリル、ニトロメタン、ニトロアラン(nitroarane)、ジメチルホルムアミド、アルコール、メチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ホルムアミドのようなアミド、トリエチルアミンを含むことができる。
【0280】
8. 可溶化化合物調製用添加剤
アルギニン等の多くの可溶化化合物は、塩基としての特性の結果、水中でプロトン化する。得られるpHはそれぞれの濃度に依存する。従って、この可溶化化合物は、高濃度で使用する場合、タンパク質の変性または細胞崩壊を引き起こす場合がある。これらの可溶化化合物はほとんどの場合両親媒性分子であるため、pH値>8で負に荷電したカルボキシ基と正に荷電したα−アミノ基との間の静電相互作用により凝集し、ポリマーを形成する傾向がある。従って、本発明の可溶化化合物溶液をある程度プロトン化して溶液のpHを調節することが望ましい場合がある。好ましいプロトン化剤は、短鎖カルボン酸、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、マレイン酸、スルホン酸、ホスホン酸、過塩素酸、硝酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、亜硝酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフチルスルホン酸、スルファニル酸、カンファースルホン酸、キナ酸、マンデル酸、O−メチルマンデル酸、水素−ベンゼンスルホン酸、ピクリン酸、アジピン酸、D−o−トリル酒石酸、タルトロン酸、α−トルイル酸、(o、m、p)トルイル酸、ナフチルアミンスルホン酸、およびその他の鉱酸、ならびに特に、酢酸、クエン酸、乳酸、アセチルサリチル酸およびサリチル酸、安息香酸、アスコルビン酸、葉酸、またはアスパラギン酸やグルタミン酸等のアミノ酸である。
【0281】
媒体中の脂肪酸を可溶化するために好ましいpHは、7.4〜10である。
【0282】
9. マイクロ−またはナノエマルション
本発明は、さらに、カルボン二酸、三酸、および四酸を含むカルボン酸、特には脂肪酸、脂肪二酸、脂肪三酸、および脂肪四酸と、少なくとも1つの可溶化化合物を、親水性溶媒中、特には水中に含む、マイクロエマルションおよびナノエマルションに関する。この可溶化化合物は、少なくとも1つのアミジノ基および/または少なくとも1つのグアニジノ基を含有し、n−オクタノールと水の分配係数K
owは<6.30である。従って、本発明のマイクロエマルションおよび本発明のナノエマルションは、本明細書にて開示するように、少なくとも1つのカルボン酸、特に脂肪酸と、少なくとも1つの可溶化化合物を含む。
【0283】
可溶化化合物については詳細に上述されており、これらの可溶化化合物はカルボン酸とマイクロエマルションまたはナノエマルションを形成する。可溶化化合物は、上述と同じ好ましい炭素数を有し、上述と同じ好ましい構成を有し、好ましくは上述のようなアルギニン誘導体であり、可溶化化合物について一般的に上述したものと同じ好ましい可溶化反応のpH範囲、可溶化化合物に対するカルボン酸のモル比、および反応条件を有する。
【0284】
B項で定義したマイクロ−およびナノエマルションの主要特徴
基本は、上述のように静電気力により構築される可溶化物質とカルボン酸の自然な分子自己アセンブリである。マイクロ−およびナノエマルションは、ミセルに凝集する傾向が小さい二量体により構築される。ナノエマルションにおいては、全てのカルボン酸が本発明の可溶化物質に結合し、ミセルを含まない単相エマルションが創出され得る。静的光散乱法(DLS)で測定可能な小胞構造体の大半は、分子比1:1のエマルションで<150nmであった。実施例12も参照のこと。可溶化化合物の比率が高い場合、測定可能な小胞は小さくなった。比率が10:1では、小胞の98%は直径<2nmであり、25nmを超える凝集体は見出されなかった。このナノ粒子の自己アセンブリは、ナノエマルションの中心的特徴である。ナノエマルションは、−20〜100°Cの温度では6ヶ月を超える期間完全に透明かつ安定的である。酸(HCl)を添加することによりpHは減少し、その結果溶媒和能力が低減するが、これはアルギニンを添加することにより克服することができる。しかし、溶液のpHは、pH8未満で低下するアルギニンのナノエマルション化能力にとって重要である。
【0285】
本発明のマイクロ−またはナノエマルションの使用のさらに中心的な特徴は、表面張力の低下による可溶化/遊離化効果である。これにより、ナノスケール化した(nanoscaled)空隙および毛細管の浸透および湛水が可能となる。1:1凝集体の両親媒性により、親油性あるいは親水性の物質、または固形分への付着または吸着が可能となる。これにより、この物質または固形分の界面力が変化する。さらに/または、前記本発明のマイクロあるいはナノエマルションの分子、および/または上述の物質あるいは固形分の中またはそこで前記本発明のマイクロ−またはナノエマルション中に溶解された分子の分割が許容される。また、実施例5、9、10で示すように、上述の物質または固形分の溶媒和、液化、脱離、または対流が可能となる。
【0286】
アルギニンまたは式IあるいはIIの可溶化化合物の決定的な利点は、マイクロ−またはナノエマルションを構築するのに共溶媒を必要としないことである。しかし、共溶媒を加えると、記載された可溶化効果を高めることができる。
【0287】
マイクロエマルションおよびナノエマルションのpH値は、好ましくは>7.0、およびより好ましくは7.0〜9.0である。しかし、分離しなければならないカルボン酸の媒体によっては、pH値14までのマイクロエマルションおよびナノエマルションを得ることができるが、血液からカルボン酸を除去しなければならない場合は好ましくは7.0〜8.0のpH範囲が使用される。しかし、マイクロエマルションまたはナノエマルションが透明でない、および/または無色ではない場合に見られるように完全な可溶化が得られない場合、可溶化化合物をさらに添加するか、またはpH値を上げるか、または透明の、ほとんどの場合無色の、マイクロエマルションまたはナノエマルションが得られるまで両方の可能性を使用してもよい。
【0288】
さらに、カルボン酸のマイクロ−またはナノエマルゲーション(micro− or nanoemulgation)を使用して、当該技術分野において周知のように、カルボン酸の化学反応を可能化、または促進あるいは減少、または終了させることができる。この目的のためにカルボン酸を溶解するため、非イオン性液体または両親媒性界面活性剤を使用している。しかし、上記のように化学反応性を変化させるためにアルギニンまたは式IあるいはIIの可溶化化合物を使用することについての報告はこれまでのところ無かった。実施例11に示すように、ナノエマルゲーション(nanoemulgation)がアルキル基およびカルボキシル基の両方の化学反応を高めることがわかった。このようなエマルションの低イオン強度および高安定性は、イオン性または非イオン性の乳化剤に比べて決定的な利点である。さらに、このようなエマルションは、反応物質または生成物に特異的な乳化剤として使用することができる(実施例9)。このような乳化剤は、可溶化したカルボン酸ならびに有機反応溶液から容易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0289】
【
図1】本発明の可溶化プロセスおよび分離技術のフローチャートである。
【
図2】揮発性脂肪酸から血液を精製するための統合された透析器/抽出器である。
【
図4】工業的油処理に使用される、カルボン酸不純物を可溶化するための統合された透析器/抽出器である。
【
図5】本発明の可溶化と併用する分離のための電気泳動的または静電気的に作動する濾過または拡散を示している。
【
図6】揮発性脂肪酸から血液を精製するための統合された透析器/抽出器の他の実施形態を示している。
【
図7】典型的な統合された透析器/抽出器を示している。
【
図8】原油処理、工業的食品処理において、または生物有機化合物を含有する汚水の処理において、または任意の別の工業的製造または環境技術において使用される、統合された透析器/抽出器の実施形態を示している。
【
図9】工業的応用のための簡略化した統合された透析器/抽出器の実施形態を示している。
【
図10】薬学、化学、生物学、または工業的処理中におけるタンパク質、アミノ酸、およびその他の水溶性分子からなる有機溶液からの液体−液体分離によるカルボン酸の可溶化および分離に使用される、簡略化した統合された透析器/抽出器のさらなる実施形態を示している。
【0290】
[実施例]
実施例1
血漿から脂肪酸を透析する実行可能性調査
非エステル化脂肪酸は、水性媒体中に懸濁されるとCMCが低いためミセルを形成し、そのため従来の微細孔を通過するには大きすぎるため、分子が小さいにもかかわらず透析することができない。本発明の可溶化によりCMCを上昇させ、脂肪酸の高い分配を示すナノエマルションを形成することができる。従って、可溶化した脂肪酸はアニオンとして存在する。
【0291】
揮発性脂肪酸から血漿を純化するための本発明の可溶化の使用について、透析モデル装置で調査した。この装置は、複数の管に接続された透析セル(dialysator cell)、2つの貯蔵容器、および2つのローラーポンプから構成された。透析セルは、扁平の周縁部を有する扁平のガラス半球2個で構成された。両方の半球の周縁部は、フェルールでテフロン(登録商標)膜ホルダーに押しつけられ、これにより空洞が密閉された。透析膜ホルダーは、2つのテフロン(登録商標)製Oリングで構成された。このOリングは、直径47mmの膜をふさぎ、両方のOリングをともに圧縮することにより膜を密封するための舌部と溝の設計を有した。ガラス半球のそれぞれは、対極に削孔を有した。この極にガラス漏斗が取り付けられ、漏斗の先端部で半球のガラスと接続し、漏斗の基礎部は膜の方に向けられた。漏斗は入口として機能する。半球のさらなる削孔はガラス管に接続され、出口として機能した。入口および出口はPTFE管と接続した。流入口と接続した管は、ローラーポンプの一部であるシリコーン管と交差させた。流出管と流入管の端部は、充填体積が200mlのPTFE貯蔵器内に接合した。流入管は、圧搾型ガスケットを有するY−アダプターと相互接続させた。これにより、圧力センサーワイヤーを透析チャンバー内に延ばし、外側をシールドした。次の膜の1つを使って、調査を繰り返して実施した:ポリカーボネートトラック−エッチ、0.4μm(Satorius社、ドイツ)、10,000ダルトンカットオフのポリアリルエーテルスルホン(Gambro社、ドイツ)、40kDのPVDF(Rhone−Poulenc社、フランス)、PTFE、0.05μm(Sartorius社、ドイツ)、酸化アルミニウム(Anodisc)、0.02μm(Whatman社、米国)。
【0292】
ヒトからの血漿を実験に使用した。オレイン酸(工業銘柄、Sigma社、ドイツ)を添加して100mmolの溶液を得た。調製した溶液は、37°Cで10分間、撹拌しながら溶解した。次に、100mlの脱イオン水またはアルギニン溶液(0.5mol/l)を1:1の体積比で添加した。透析装置のドナー部位に、得られた溶液250mlを充填し、気泡を排除するように注意した。透析装置のアクセプター部位に、10%アルブミン溶液250mlを充填した。各ローラーポンプは200ml/分の体積を両方の半球に運搬した。両方の透析チャンバー内の圧力を同一に維持するように注意し、各半球の圧力差を流出管で相互接続した弁で等しくなるように調節した。30分間ずつ透析を実施した。装置を充填した後、10分ごとにドナー側およびアクセプター側からサンプル体積を採取した。水性サンプルをイソ−オクタン中に移し、窒素流で乾燥させた。2%硫酸を含有するメタノールを添加し、70°Cで15分間サンプルを加熱することにより、メチル化を行った。遠心分離後に有機相を分離し、GCで分析を行った。
【0293】
分析は、アルギニンを用いずに透析を行うと、アクセプター溶液中で見出されるオレイン酸は皆無であるか、またはほんの僅かな量であることを示した。アルギニンを用いて行った透析では、ドナー溶液中のオレイン酸濃度および透析時間に比例してアクセプター溶液のオレイン酸含有量が増加した。この増加は、セルロースまたはポリアリルエーテルスルホンのような親水性膜を使用した場合に小さく、PVDFおよびPTFE膜のような疎水性膜を使用した場合に大きかった。
【0294】
さらなる設定において、電気透析の実行可能性を調査した。この目的のため、記載した透析セルは、両方の漏斗内に白金メッシュを置くことにより修正した。これらの漏斗は、Y−コネクターを介して入れられたシールド線を介して、高電圧発電機(EasyPhor、Biozyme社、ドイツ)に接続された。透析は、前の実験と同一の膜を使って、同一条件下で行ったが、40Vの一定電圧で可変DCを適用した。サンプル調製は、上述のように行った。ステアリン酸およびリノール酸を使って調査を繰り返した。オレイン酸で見出された結果を確認することができた。
【0295】
結論:アルギニン溶液を用いた血漿タンパク質に結合した脂肪酸の可溶化と、電気透析による脂肪酸の分離は、実行可能である。
【0296】
実施例2
血漿の脂肪酸含有量を分析するためのアルギニン溶媒和の使用に関する調査
非エステル化およびエステル化脂肪酸は、生理学的に重要な機能を有する。しかし、重要な脂肪酸の不均衡は、アテローム性動脈硬化症、高血圧、または真性糖尿病のようないくつかの疾病の病原である。従って、その予防、診断、および治療法管理の正確な決定が必要とされている。臨床手順分析は、トリグリセリドの決定についてのみ確立されている。血液中の揮発性脂肪酸の決定に関する利用可能な分析方法は稀であり高価である。トリグリセリドの決定は標準的に行われる。しかし、その結果は、酵素的に遊離化したグリセリンを決定するため、エステル化脂肪酸の真の含有量を見積もったに過ぎない。グリセリンでエステル化脂肪酸の含有量は変化し得るため、実際の濃度は不明確である。さらに、脂肪酸をその部類に従って特徴付けるための普遍的な方法は存在しない。
【0297】
トリグリセリド分画、本発明の分析的手順、および標準化手順を決定するため、10の血液サンプルの臨床手順方法の比較を行った。
【0298】
全ての測定値のために、絶食した人からの血液を血清モノベット(monovette)内に吸い込んだ。サンプルを20分間凝固させ、3000U/分で15分間遠心分離にかけた。最大3つのエッペンドルフ(Eppendorf)バイアル瓶にサンプル体積を分離する前に、血漿を分離および均質化した。GCおよびナノ−有機ゲル−電気泳動に使用するサンプル中の内部標準としてマルガリン酸を使用した。
【0299】
トリグリセリド決定のための酵素的標準手順
標準的な酵素アッセイ(血清トリグリセリド決定キット(Serum Triglyceride Determination Kit)、カタログ番号TR0100、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)社、米国)により、臨床手順を実施した。サンプルは以下のように調製した。
【0300】
遊離グリセロール試薬(Free Glycerol Reagent)(0.8ml)をピペットで各キュベットに入れ、水10ml(0.01ml)、グリセロールスタンダード(Glycerol Standard)を添加した。次に、これらを静かに反転させて混合し、37°Cで5分間培養した。標準物質である水に対する、半加工品、標準品、およびサンプルの540nmでの初期吸光度(IA)を記録した。再構成したトリグリセリド試薬(0.2ml)を各キュベットに添加し、37°Cでさらに5分間培養を続けた。標準物質である水に対する、半加工品、標準品、およびサンプルの540nmでの最終吸光度(IA)を記録した。サンプル中のグリセロール、真のトリグリセリド、および全トリグリセリドの濃度を計算した。
【0301】
反応工程を以下に示す。
【化14】
【数3】
【数4】
【0302】
脂肪酸のGC測定値
Folch(Folch、Lees Sloan Stanley、1957)の修正した方法に従って、GC決定用のサンプルを抽出した。つまり、2グラムのサンプルをコップ内に量り取り、10mlのメタノール+0.01%BHTを添加し、振盪し、2〜3分間沈降させた。CHCl
3(20ml)を添加し、得られた溶液を振盪し、2〜3分間、または冷蔵庫内の窒素下にて一晩、沈降させた。溶液を2回濾過し、KCl7mlを添加し、メタノールで250mlまで充填した。次に、下の分画をNa
2SO
4で清潔な大型遠心管内に濾過して抽出し、溶媒を蒸発させた。次に、0.5mlのヘキサン+0.01%BHTを管内に添加することにより脂質をGCバイアル瓶内に移し、溶解する他の脂質中で十分に振盪させ、その後パスツールピペットを使って全てのサンプルをGCバイアル瓶内に移し、以下のプロトコルに従ってGCを実施した。水性サンプルをイソ−オクタン中に移し、窒素流で乾燥させた。2%硫酸を含有するメタノールを添加し、70°Cで15分間サンプルを加熱することにより、メチル化を行った。遠心分離により有機相を分離し、GCで分析を行った。
【0303】
本発明の分析手順を使った脂肪酸の分析
分析装置は、上述のように作成した。つまり、ドナーチャンバーと分析チャンバーは、分離媒体を設置するためのスロットによって分離される。スロットの周縁部は、チャンバーと、取り外し可能な相分離界面との間の完全な密封を許容するガスケットを有する。アノード液とカソード液の各チャンバーは、相分離界面に対向する部位に配置されたドナーチャンバーとアクセプターチャンバーにそれぞれ分離される。アノード液チャンバーとカソード液チャンバーは、イオン選択性膜によって、ドナーチャンバーとアクセプターチャンバーに分離される。アノード液チャンバーとカソード液チャンバー内に、高電圧発電機(EasyPhor、Biozyme社、ドイツ)に接続された白金電極(ユミコア(Umicor)社、ドイツ)を取り付けた。
【0304】
使い捨て相分離界面は、直径2.5cmおよび深さ3mmのPTFE製Oリングから構成され、Oリングの周縁部まで液体ゾルゲル混合物を充填した。有機ゲルは、他の記載(スズキ(Suzuki)ら著、「2つのアミノ酸に基づく二成分有機ゲル化剤:有機ゲル化剤挙動へのL−リジンと様々なL−アミノ酸の組み合わせの影響」、ラングミュア(Langmuir)、2009年、第25巻、p.8579−8585)に従って調製した。ゲル化後、有機ゲルの両側を、孔径1.0μmのトラックエッチしたポリカーボネート膜(ヌクレオポア(Nucleopore)、ワットマン(Whatman)社、米国)で覆い、Oリングの周縁部に固着した。相分離界面は、ドナーチャンバーとアクセプターチャンバーの間のスロットに密接に嵌め込まれ、密接性を得るために調節された。
【0305】
血漿(1ml)と1mlのアルギニン溶液(200mmol/l)を、2分間ボルテックスし、40°Cで5分間インキュベートし、再び2分間ボルテックスした。トルオール中に溶解させた3つの商業用リパーゼ(リパーゼA1およびA2は前胃リパーゼ、A3は真菌リパーゼであった)を添加し、37°Cで15分間静かに混合した。100μlをピペットで計る前および後にサンプルの重さを量った。ピペットで計った体積を、分析装置のドナーチャンバー内に注いだ。アクセプターチャンバーにアセトニトリル100μlを充填した。アノード液チャンバーとカソード液チャンバーに100mmol/lのアルギニン溶液を充填した。40Vの電位にてDCを15分間印加した。アクセプターチャンバー体積をピペットで計り、プローブ内に移した。プローブ体積に追加したさらなる100μlのアセトニトリルで、アクセプターチャンバーを洗浄した。次に、FT−NIR分光計MPA(バッカー・オプティック(Bucker Optic)社、ドイツ)を用いて脂肪酸の測定を実施した。これらの測定値から、サンプル全体の脂肪酸含有量を計算した。
【0306】
結果:3つの分析法の結果を比較することにより、(1)トリグリセリドを決定するための酵素的間接法は、他の両方の方法と比べると、ヒト血液中の脂肪酸含有量を少なく見積もる、(2)脂肪酸の総量に関する本発明の分析手順とGCの結果は同じである、(3)本発明の分析手順を使った様々な脂肪酸の決定は、GCからの結果と高い相関関係を示す、ことが示される。
【0307】
実施例3
粗植物油を純化するためのアルギニンおよびその他の可溶化化合物の精製
能力に関する調査
粗植物油は、様々な量の非エステル化脂肪酸を含有する。これらの脂肪酸は油の安定性を低下させるため、純化処理中に0.5%未満の数値まで分離される。油処理では、鹸化と蒸留の2つの方法が行われる。これらの純化プロセス中に、エステル化脂肪酸の変質が生じ得る。従って、非エステル化脂肪酸をアルギニンで可溶化および分離する本発明の方法の適合性を調査し、この手順のエステル化脂肪酸の品質への影響を分析することが意図された。
【0308】
大豆および菜種からの粗油を調査した。この目的のため、粗油10リットルを50リットルタンク内に注いだ。10リットルの脱イオン水にアルギニン871gを添加し、0.5モルのアルギニン溶液を調製した。アルギニンを低速回転させ、その溶液を40°Cで2時間加熱することにより溶解した。L−NG−モノメチル−アルギニン、アルギニノコハク酸、L−カナバニン、2−グアニジノグルタル酸を使って対応する調査を実施した。粗油にこれらの溶液を添加し、エマルションを40°Cまで加熱しながら1時間撹拌した。その後、エマルションを24時間静置した。その後、タンクの円錐形の底部に配置した、トリグリセリドが通過できない親水性のふるいに水相を流した。水溶液を計量し、有機相および水層からサンプルを採取した。硫酸を用いて、水相のサンプルを約pH3まで酸性化した。
【0309】
有機相のサンプルを滴定装置のサンプル管内に注いだ。5mlの有機相に、エタノール/ヘキサン(1:1、体積/体積)とエタノール中1%フェノールフタレイン3滴の混合物20mlを添加し、溶液が完全な透明になるまで撹拌した。次に、非エステル化脂肪酸の量を示す、ピンク色がかった色相が表れるまで、サンプルをエタノール中KOHにて滴定した。脂肪酸含有量は次式に従って計算した。
C
FFA[mmol/l]=(V
KOH[l]×C
KOH[mol/l])/Vサンフ゜ル[l]×1000
V
KOH/C
KOH:消費されたエタノール中KOHの体積/濃度
Vサンフ゜ル:適用したサンプルの体積
C
FFA:遊離脂肪酸の濃度
【0310】
工業的精製後の粗油と同一の供給源から得られる食用油のサンプルにつても、非エステル化脂肪酸の含有量を適宜分析した。
【0311】
さらに、有機相からのサンプルを加水分解し、前述のようにGCによって分析した。
【0312】
結果:分析により、最初は2.0および2.6%であった粗油の非エステル化脂肪酸の含有量は、液体−液体抽出と本発明の可溶化を組み合わせることにより、本発明の技術で0.2および0.6%に下げることができることが示された。この非エステル化脂肪酸について見出された数値は、その工業的除去後の数値より非有意に低かった。さらに、GCで分析したトリグリセリド脂肪酸の比較では、抽出方法間でその含有量に差があった。前記液体−液体抽出の有機相の脂肪酸と比較して、鹸化によって精製した油の脂肪酸は、低い濃度の不飽和脂肪酸を示し、同一の炭素数を有する脂肪酸の含有量はほぼ同じであった。一方、蒸留によって精製した油の脂肪酸は、液体−液体抽出と比べて、不飽和脂肪酸のトランス異性体が多く、ならびに不飽和脂肪酸の総含有量が僅かに少ないことを示した。
【0313】
実施例4
粗油および使用済み油中の大量のカルボン酸を溶解するアルギニンの能力に関する調査
粗パーム油の非エステル化脂肪酸の含有量は最大35%、使用済み油の場合は最大40%である。商業用には、非エステル化脂肪酸を除去しなければならない。アルギニン溶液を使った水性抽出を2回実施した。各粗油10Lを、50Lタンク内で0.5mol/lアルギニン溶液30Lと混合した。この混合物を15分間攪拌し、5時間分離させた。水相を排水した。次に、100mmol/lアルギニン溶液10Lを使ってこの手順を繰り返した。1,1−ジメチルビグアニド、Arg−Gly−Asp、NG,NG−ジメチルアルギニン、ポリ−L−アルギニンの各溶液を使って、同様の実験を実施した。実施例2に従って脂肪酸の分析を行った。
【0314】
粗パーム油と使用済み油中の非エステル化脂肪酸の含有量は、それぞれ33%と36%であった。アルギニンを使って抽出することで、これらを最終濃度0.1および0.3%に低減した。その他の試験化合物は、それぞれ最終濃度0.2〜0.5および0.4〜0.9%に低減した。
【0315】
結論:カルボン酸は、たとえ高濃度で存在しても、アルギニンや比較化合物の各水溶液により様々な油から分離することができる。
【0316】
実施例5
カルボン酸および粗油成分を溶解するアルギニンおよびその他の可溶化化合物の能力に関する調査
植物および野菜の抽出可能な油画分は、油生成物を精製するために除去しなければならない非トリグリセリドを様々な含有量で含む。非トリグリセリドは、中でもカルボン酸、色素、ステロール、糖脂質、リン脂質を含む。もちろん、リン脂質、カルボン酸、および糖脂質のような両親媒性物質は、他の非トリグリセリドを取り込む小胞に凝集する。両親媒性物質は、薄層および膜に自己アセンブルする。カルボン酸を含有する両親媒性物質の小胞への本発明の化合物の本発明の可溶化効果により、これらのカルボン酸を、カルボン酸と複合化した両親媒性物質とともに除去できるか否かを調査した。
【0317】
粗ひまわり油および粗トウモロコシ油を、アルギニン、4−グアニジノ安息香酸、シメチジン、ポリヘキサニド、およびメラミン(100mmol/l、体積1:1)の各溶液とそれぞれ激しく撹拌した。自然に相分離し、黄−緑−オリーブ色の濁った水相とクリーム色がかった黄色の油相が得られた。水相はHClで酸性化してpHを5とした。n−ヘキサンと混合することによってカルボン酸を抽出し、上記の方法に従って除去および分析を行った。検体中に脂肪酸が存在し、調査物質間で含有量の差は実質的に無いことが結果として記された。残存する水相は、HP−TLC(リクロスフェア(LiChrospher))でさらに分析を行った。特定できた物質の中にはリン脂質、緑色素、トコフェロール、フィトステロールが含まれた。DGF(ドイツ脂質科学会)のF−I 6(99)に従って、油相中の全リン酸塩含有量を分析した。エタノールKOH溶液で滴定することにより、油中の遊離酸を決定した。調査物質を使った1回目の抽出後、非エステル化脂肪酸の90%超が除去されていたことがわかった。抽出した脂肪酸の算出合計量は、水相のn−ヘキサン抽出から回収した脂肪酸の算出量と相関関係があった。
【0318】
試験物質を使った水性抽出手順により、粗油のリン酸塩含有量の半分超が低減された。
【0319】
結論:本発明のアルギニンおよびその他の可溶化化合物の可溶化効果を使用することにより、油と両親媒性物質の溶液またはエマルション中の複合化カルボン酸を遊離化し、水性媒体中に抽出することが可能である。さらに、可溶化カルボン酸と複合化した両親媒性物質を同時に大規模に(水相に)分離することができる。
【0320】
実施例6
複合化されたカルボン酸を固体生体物質から遊離化、溶解、および抽出するためのアルギニンおよびその他の可溶化化合物の能力に関する調査
ほとんどの生体物質は、他の有機材料と通常は複合化した非エステル化カルボン酸を含有する。これらの固体材料の1つが、その乾燥重量の35%までの脂肪酸および油を含有するコメヌカである。超微細粉砕したコメヌカを、アルギニン、Nω−ニトロ−L−アルギニン、オクトピン、2−グアニジノグルタル酸、およびアグマンチン(agmantin)の各200mmol/l溶液中に懸濁した。各溶液を24時間連続的に攪拌した。各溶液は、ベージュグレーに変色し、全てのケースにおいて非常に濁った。固体物質を濾別した。使用した物質を含む、pHが8〜10の水相をジエチルエーテルで抽出した。その後、水相をアスコルビン酸で酸性化してpHを6とした。非エステル化カルボン酸の抽出およびその決定は実施例5と同様に行った。ジエチルエーテルで抽出した画分を乾燥させて秤量した。その後、実施例5に従って、HP−TLCにより分解および分析を行った。残りの各水溶液についても同様に行った。
【0321】
結果:ジエチルエーテル画分は、ぬか油中に典型的に見出されるトリグリセリドを含有しており、含有量は使用物質間で有意な差はなかった。トリグリセリドの重量は、コメヌカの乾燥重量の約10〜15%に相当した。n−ヘキサン画分はカルボン酸を含有し、残留した水相中ではリン脂質や糖脂質のような両親媒性物質を色素とともに特定することができた。
【0322】
結論:食品処理中に生じる、一般的にリン脂質等の脂質と複合化する有機固体中には、しばしばカルボン酸が残存する。アルギニンまたはその他の可溶化化合物の水溶液は、これらの複合化カルボン酸を遊離化し、さらにリン脂質等の脂質の固体材料への付着を低減でき、従ってこれらの水性抽出が可能となる。
【0323】
実施例7
鉱油中の凝集したカルボン酸を溶解および抽出するアルギニンの能力に関する調査
化石油は、精油中の腐食の原因となるかなりの量のカルボン酸を含有する。従って、カルボン酸の含有量を減らすことが要求される。鉱油中の最も一般的なカルボン酸は、ナフテン酸である。原油サンプルのカルボン酸含有量を分離する可溶化化合物の能力を調査した。この原油は、油処理会社から贈与されたものであり、密度は0.85g/cm3であった。TAN(総酸価)はKOH滴定により決定した。
【0324】
原油100ml(カルボン酸約40mmolを含む)を、アルギニンあるいはL−2−アミノ−3−グアニジノプロピオン酸、またはL−カナバニンのいずれかの300mmol/l水溶液200mlと、45°Cで1時間混合した。3つのサンプルのそれぞれを、遠心分離によって相分離した。その後、油相を第一工程で使用したアルギニンあるいはL−2−アミノ−3−グアニジノプロピオン酸、またはL−カナバニンのいずれかの100mmol/l水溶液100mlと、室温で30分間混合し、好ましくは遠心分離によって相分離した。その後、油相のTANを決定した。
【0325】
結果:TANは3つのサンプル全てにおいて、可溶化化合物を用いた水性抽出により、1.8mg KOH/gから0.16〜0.3mg KOH/gに減少した。
【0326】
結論:原油のTANは可溶化化合物によって低減することができる。ナフテン酸は原油中に多く含まれるため、有意な低減が可能である。
【0327】
実施例8
アルギニンおよびその他の可溶化化合物の存在下での油の安定性に関する調査
精製したひまわり油を、アルギニン溶液と、様々な濃度および時間で混合した。各溶液の濃度は、100、200、300、および500mmolのアルギニン、ヒスチジン、H−Cit−OHシトルリン、N−ω−ヒドロキシ−L−ノルアルギニン、およびL−NILであった。これらは1:1の体積比で添加された。全ての溶液を60分間激しく攪拌し、その後沈殿により分離させた。各濃度の1つのサンプルを3時間後、さらに7日後、さらに14日後に分析した。脂肪酸濃度を、実施例2の記載に従って決定した。100および200mmolアルギニンの濃度では、脂肪酸濃度は全てのサンプルで同じであった。300および500mmolの濃度では、アルギニン濃度および曝露時間によっては脂肪酸濃度は僅かに上昇した。
【0328】
結論:アルギニンおよびその他の可溶化化合物は、低中度の濃度ではトリグリセリドを加水分解しない。しかし、濃度が高いと、僅かに加水分解が生じる可能性がある。
【0329】
実施例9
燃料生成中に油からカルボン酸を溶解および抽出する可溶化化合物の能力に関する調査
バイオディーゼルの製造は、エステル化カルボン酸の加水分解に依存する。最も一般的には、加水分解は加水分解酵素により行われる。しかし、このような酵素はその反応生成物により阻害される。従って、酵素の活性中心からグリセリンおよびカルボン酸を除去する必要がある。
【0330】
実施例1の透析装置を使用して、大豆油からのトリグリセリドの加水分解を行いながら脂肪酸を連続的に除去する実行可能性と有効性を試験した。Leeの方法(「架橋結合法を使用したシリカゲル上でのリパーゼの固定化(Lipase Immobilization on Silica Gel Using a Cross−linking Method)」、D H Lee、C H Park、J M Yeo、およびS W Kim、ジャーナル・オブ・インダストリアル・アンド・エンジニアリング・ケミストリー(J.Ind.Eng.Chem.)、第12巻、第5号、(2006年)、p.777−782)に従って、リパーゼ(Novozyme435)を固定化した。精製した大豆油150mlと、アルギニン、H−ホモアルギニン−OH、またはポリヘキサニド溶液(100mmol/l)のいずれか50mlとを激しく撹拌し、反応チャンバー内に充填した。循環システムは、相分離させない速度でエマルションを一定に循環させた。排除サイズが0.4μmのPTFEフィルターをドナー/反応チャンバーの漏斗形出口に取り付け、反応溶液を循環させながらシリカビーズをチャンバー内に保持するようにした。アクセプターチャンバーおよび循環システムに、各化合物の200mmol/l溶液を充填した。反応/ドナーチャンバーとアクセプターチャンバーとの間に取り付けられたPTFE分離膜を使用した。実施例1と同様に、加水分解プロセス中に、反応チャンバーとアクセプターチャンバーとの間にDCを印加した。アクセプターチャンバー内の溶液を連続的に循環させ、10分おきにサンプルを採取した。30分後にプロセスを停止した。加水分解したトリグリセリドの算出脂肪酸含有量の82%がアクセプターチャンバー内に存在した。アクセプターチャンバーの溶液を分離し、HCLで酸性化して、pHを4とした。脂肪酸はn−ヘキサン抽出により分離した。分離したヘキサン相(10ml)をメタノール2mlと混合した。前述のシリカ上に固定化したNovozyme435を添加した。溶液を濾過することにより30分後にエステル化反応を停止させた。この溶液を、前の工程で使用した可溶化物質の50mmol/l溶液と激しく撹拌した。相分離後に有機相を分離し、ロータリーエバポレーターに送り、残留したメタノールとヘキサンを蒸留した。
【0331】
結果:アクセプター溶液中の脂肪酸濃度は急激に上昇し、その後横ばいとなった。アクセプター溶液中には、モノ、ジ、あるいはトリグリセリド、またはグリセリンは見出されなかった。アクセプターチャンバーに移動した脂肪酸は、酸性化および溶媒抽出によって同様に移動した水溶性アニオンから精製することができた。精製した脂肪酸は、固定化したエステラーゼによって非水性媒体中でエステル化した。変換されなかった脂肪酸を、水性抽出により可溶化化合物とともに除去した。アルコールおよび溶媒の蒸発の結果、純度>98%の高度に精製された脂肪酸メチルエステル溶液が得られた。
【0332】
結論:アルギニン溶液中のエステル化脂肪酸の加水分解は実行可能であり、従って遊離脂肪酸の対流が改善され、これによりプロセス条件も改善される。加水分解した脂肪酸は、可溶化化合物溶液によってさらに精製され、非水性反応媒体に導かれてメチルエステル化(即ち、メチルエステルの形成)することができる。さらに、可溶化化合物の水溶液を使用して、最終精製工程で非反応性カルボン酸を除去することができる。脂肪酸メチルエステルの蒸留分離を必要とすることなく、溶媒蒸発後に、高度に精製された脂肪酸メチルエステルが生成された。
【0333】
実施例10
水溶液中の難溶解性物質を溶解させる可溶化化合物の能力に関する調査
水性媒体中には多くの反応基質または反応成分が、特に生物学系の、複合化していない形態で存在していなければならない。物質のナノエマルション化は、生物学的輸送メカニズムおよび反応へのアクセス性を改善した。しかし、多くの両親媒性担体系は生物学的毒性または低生体適合性を示す。可溶化化合物の多くは生体適合性である。従って、これらの化合物とカルボン酸のマイクロ−またはナノエマルションの乳化能力を、テトラフェニルポルフィリン(2mg/l)、スーダンレッド(不溶性)、アゾキシストロビン(6.7mg/l)、銅−フタロシアニン(不溶性)、クロルプロファム(110mg/l)等の難溶解性物質(水中溶解度がmg)中で調査した。
【0334】
最初に、ジクロルメタン中テトラフェニルポルフィリン(50mg/ml)、アセトン中スーダンレッド(2mg/ml)、トルオール中アゾキシストロビン(50mg/ml)、アセトニトリル中銅−フタロシアニン(2mg/ml)、エタノール中クロルプロファム(50mg/ml)の有機溶媒中で調査物質を溶解した。
【0335】
オレイン酸(50mmol/l)とアルギニン(80mmol)、リノール酸(50mmol)とL−2−アミノ−3−グアニジノプロピオン酸(100mmol)、および12−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸(50mg)とNω−ニトロ−L−アルギニン(130mmol)の各ナノエマルション(50ml)を、完全に可溶化した物質を含有する有機溶媒中に溶解した。混合物を激しく攪拌した。室温または50°Cまでの温度でゆっくりと攪拌しながら有機溶媒を蒸発させた。溶液が透明になるか体積が100mlになるまでそれぞれのナノエマルションを添加した。各溶液の透明性および残留固体を、直後および24時間後に分析した。
【0336】
結果:調査した水に溶けにくい物質は、適切な有機溶媒中にて予備溶解した後ナノエマルション化することにより、水性媒体中で乳化させることができた。溶媒を用いずにナノエマルション化した物質は、透明エマルションとなり、残留固体を形成しなかった。
【0337】
結論:可溶化化合物とカルボン酸のマイクロおよびナノエマルションは、水に溶解しにくい物質の水性マイクロ−またはナノエマルションを構築し、水性媒体中のこのような物質に生体適合性の輸送または担体系を提供することができる。
【0338】
実施例11
代替の化学反応を可能にするためのカルボン酸のマイクロ−またはナノエマルション化に関する調査
疎水性のカルボン酸は、過酸化反応や重合のような多くの化学反応を可能にするには、溶媒中に溶解する必要がある。これらの反応の多くは水性媒体中で実施可能であるため、溶媒を用いない手順が有利であろう。ナノエマルション化した分子は、反応物質を反応するのに十分な近さまで持ってくる。アルギニンまたはその他の可溶化物質とナノエマルション化したカルボン酸を使用して通常有機溶媒中で実施される化学反応が可能であるか否かについて、2つの実験で試験を行った。
【0339】
マイクロエマルション化したカルボン酸の、酵素的エステル化によって過酸化物と反応する能力を証明するため、2−エチルヘキサン酸と4−グアニジノブタン酸(1.5mol相当)200mmolを、水とTHFの混合物中に室温で溶解した。第3ブチルヒドロペルオキシド(200mmol/l)を添加し、緩やかに攪拌した。溶液を45°Cに加熱し、40mgのリパーゼPSの懸濁液を添加して縮合反応させて、t−ブチルペルオキソ−2−エチルヘキサノエートを得た。この反応は1時間後に終了した。ヨウ素分析で算出した交代率は、残存する過酸化物分画によって算出した。調査を繰り返し、65〜72%の交代率を得た。アグマンチン(agmantin)および6−グアニジノヘキサン酸を使用して実験を繰り返した。それぞれの交代率は55〜78%であった。
【0340】
水/THF(9:1 体積:体積)中に50mmol/lペリラ酸と60mmol/lアルギニンを含むナノエマルションを、2当量m−CPBAの3アリコートと25°Cにて3時間にわたって混合し、さらに12時間攪拌した。反応混合物を酸性化してpHを4とし、CHCl
3で3回抽出した。Na
2SO
4上で有機相を乾燥させ、10mlまで蒸発させ、GCを測定した。GCによる収率は65%であった。また、この手順を、可溶化化合物としてゼラニウム酸、シトロネラ酸、オレイル酸(oleylic acid)、アルギニンを使用して、リノール酸、1,1−ジメチルビグアニド、およびN−ω−ヒドロキシ−L−アルギニンにも適用した。収率は45〜85%であった。
【0341】
結論:本発明の可溶化物質を使用してナノエマルション化したカルボン酸により、溶媒を必要とすることなく水性媒体中で化学反応を生じさせることができる。
【0342】
実施例12
アルギニンおよびその他の可溶化化合物による、様々なカルボン酸の水性媒体中溶解度に関する調査
いくつかの可溶化化合物を水性媒体中で試験し、標準物質である脂肪酸、即ちオレイン酸を可溶化する能力を調査した。
【0343】
初めに、オレイン酸の水性媒体中溶解度へのpHの影響を試験した。これらの試験は、観察されたオレイン酸溶解度がpHの変化によるものであり、主として官能基の相互作用のためではない可能性を排除するために実施された。
【0344】
これらの試験は、室温にてpHが9〜12ではオレイン酸と溶液との間に相互作用はないことを示した。pHが13になるとオレイン酸の溶解が始まる。pH14で、オレイン酸を添加すると、固体沈殿物が形成された。
【0345】
以下の試験で、H
2O中でオレイン酸を試験物質と混合した。引き続いて、logPとpHを測定し、以下に示すスキームに従って、オレイン酸と試験物質の相互作用を見積もるとともに、H
2O中での試験物質の溶解度を見積もった。
【0346】
可溶化化合物の水溶液を、6〜600mmol/l、好ましくは約60mmol/lの濃度で調製した。可溶化化合物水溶液に、0.833mol相当のオレイン酸またはそれぞれのカルボン酸を添加し混合した。この溶液を1時間静置し、pHを測定した。溶解が不完全でpHが7未満の場合、1MのNaOH溶液を濁りが消えるまで滴加した。次に、混合物を攪拌または振盪した。得られたマクロまたはナノエマルションの安定性を評価するため、溶液を60°Cで1時間加熱し、室温まで冷却した。透明溶液の他の一部を4°Cで一晩保存し、その後室温まで再び温めた。その後、溶液の固体形成、残留油、粘度、濁度、およびDLSを測定し、分析を行った。
【0347】
エマルション中にミセルか小胞のいずれかが形成される。そのサイズおよび体積は不均質であり得る。マイクロおよびナノエマルション中では、目に見える小胞サイズのクラスターだけが支配的であり得る。それぞれの分布およびこれらの相対的発生頻度は、動的レーザ光散乱(DLS)により測定することができる。DLSは、オレイン酸のマイクロ−またはナノエマルション可溶化挙動を示したサンプルに対して行われた。DLS測定では、マルバーン(Malvern)社(米国)製Zetasizer Nano Sを使用した。全ての測定は、非希釈、または水で1:10および1:100に希釈して、3回繰り返した。測定のために、水の粘度および水の屈折率を使用した。使用した全ての可溶化化合物が親油性カルボン酸を水に可溶化する原因となったことを実証することができた。
【0348】
表A中の「可溶化化合物」の欄は、水に溶解した可溶化化合物の形態を示している。例えば「塩酸」と記載されている場合、塩酸塩を水に溶解した。しかし、カルボン酸の可溶化に使用したpHでは、可溶化化合物はもはや塩酸塩の形態ではない可能性がある。従って、「可溶化化合物」欄は出発物質を示しており、水性媒体中でカルボン酸を乳化可能な可溶化化合物の活性形態を示すものではない。
【0349】
強度によるピーク最大値:サイズは、体積または粒子数を計量することなく、測定値から直接決定する。
【0350】
サンプル中の割合に応じてピークを示している。
【0351】
ピーク最大値の比率:粒径のパーセント分布
【0352】
溶解度の見積もり:
X = 化合物は完全に溶解
(X) = 化合物は部分的に溶解
((X))= 化合物は(目視上)溶解されないがpHは変化。従って、少なくとも小部分は溶解すると仮定される。
− = 不溶性
【0353】
オレイン酸と試験用基材間の相互作用の見積り:
X = オレイン酸と試験用物質間の相互作用
(X) = オレイン酸と試験用物質間の相互作用。溶液中の水に比べてオレイン酸は顕著に少ない。
E =エマルション
S = 固体沈殿物の形成
E、S = 溶液は曇り、その後固体沈殿物を形成
n.d.= 未決定
【0354】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0355】
以下の可溶化化合物(A)〜(T):
L−アルギニン(A)、L−2−アミノ−3−グアニジノプロピオン酸(B)、L−NIL(C)、N−ω−ニトロ−L−アルギニン(D)、NG,NG−ジメチルアルギニン(E)、アグマチン(F)、1,1−ジメチルビグアニド(G)、L−カナバニン(H)、アルギニノコハク酸(I)、オクトピン(J)、nω−モノメチル−L−アルゲニン(K)、アルギニンメチルエステル(L)、N−ω−ヒドロキシ−L−アルギニン(M)、ヒスチジン(N)、H−ホモアルギニン−OH(O)、L−2−アミノ−3−グアニジノプロピオン(P)、6−グアニジノヘキサン酸(Q)、N−ω−ヒドロキシ−L−ノルアルギニン(R)、4−グアニジノ安息香酸(S)、およびポリヘキサニド(T)、
はそれぞれ、以下のカルボン酸(I)〜()を可溶化するために使用された:
ヘキサデカン酸(I)、エイコサン酸(II)、ステアリン酸(III)、ドコサペンタエン酸(IV)、安息香酸(V)、コーヒー酸(VI)、テレフタル酸(VII)、ナフテン酸(VIII)、ペルフルオロオクタン酸メチル(IX)、エイコサペンタエン酸(20:5)(X)、リノレン酸(18:3)(XI)、およびドコサペンタエン酸(22:5)(XII)。
【0356】
下記の表Bに示されているように、各可溶化化合物を1.5mol当量で8〜10のpH値で使用すると、全てのカルボン酸を可溶化することができた。
【表9】