(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記親油性部分が、抗体の重鎖の天然に存在するC239(Kabat番号付け)システイン残基に親水性スペーサーを介して結合している、請求項3から6のいずれか一項に記載の一価抗体。
配列番号1に記載のアミノ酸G37〜L45の少なくとも1つおよびアミノ酸L57〜A59の少なくとも1つを含むDR3上のエピトープに結合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の一価抗体。
ヒトDR3との結合について「0228」一価抗体と競合し、0228の重鎖のアミノ酸配列が配列番号16に記載のものであり、0228の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号17に記載のものである、請求項1から12のいずれか一項に記載の一価抗体。
RA患者由来の滑液細胞におけるIFN-ガンマ(IFN-γ)の放出を減少させるための、請求項1から13のいずれか一項に記載の一価抗体を含む組成物であって、前記滑液細胞がTL1Aで同時刺激される、組成物。
CD患者からの腸生検材料由来の粘膜固有層単核球(LPMC)における1種または複数種のサイトカインの放出を減少させるための、請求項1から13のいずれか一項に記載の一価抗体を含む組成物であって、前記サイトカインが、TNF-α、IL-6、GM-CSF、およびIFN-ガンマ(IFN-γ)からなる一覧から選択され、前記LPMCがTL1A、IL-12、およびIL-18で同時刺激される、組成物。
CD4+T細胞における1種または複数種のサイトカインの放出を減少させるための、請求項1から13のいずれか一項に記載の一価抗体を含む組成物であって、前記サイトカインが、TNF-α、IL-6、GM-CSF、およびIFN-ガンマ(IFN-γ)からなる一覧から選択され、前記T細胞がTL1Aにより同時刺激される、組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発明者らは、可溶性型ならびに細胞表面発現型のDR3抗原を作製させることは、従来の手法がいずれも上手く行かず、難しいことが分かったことを理解した。ヒト細胞株においてDR3の細胞外ドメインを組換え発現させることにより、通常、大量のオリゴマーおよび高分子量複合体を含有する可溶性タンパク質の分泌がもたらされた(実施例3も参照されたい)。これらのオリゴマー形成したタンパク質バッチは、おそらく免疫化のために最適ではなかった。可溶性タンパク質の発現の最適化(実施例3に記載の通り)と平行して、マウスを、膜に結合したDR3を過剰発現している細胞を用いて免疫化した。しかし、DR3を過剰発現している安定な細胞株の作製は簡単ではなかった。全長DR3におけるデスドメインにより、安定にトランスフェクトされたDR3を過剰発現している細胞株において細胞死が導かれ、したがって、全長DR3を改変することが必要であった(実施例2および5を参照されたい)。抗体レパートリーの多様性および中和性抗DR3Abの生成の尤度を増加させるために、異なるマウス系統(BALB/C、RBFおよびNMRCF1)において免疫化を実施した。
【0010】
数百のDR3結合性抗体を同定した;これらのうち、ほんのわずか(約2%)が、DR3:TL1A結合を遮断/阻害することができた。したがって、DR3:TL1A結合を遮断する能力を有するDR3抗体は、DR3に誘導される作用と拮抗する能力を有することが推定された。しかし、DR3:TL1A結合を遮断する能力を有するか否かにかかわらず、全てのDR3抗体が、TL1Aの存在下、および不在下のどちらにおいても作動性であった、すなわち、いくらかの程度でTL1Aの結合により誘導されるDR3に対する作用を模倣したと思われることが分かった。
【0011】
これらの驚くべき知見に基づいて、発明者らは、全てのDR3抗体が発揮する作動作用に関する説明は、おそらく、任意の二価DR3抗体によりDR3のクラスター化がもたらされること、およびDR3クラスター化が細胞内のDR3シグナル伝達を引き出す潜在性を有する可能性があることであり得るという仮説を立てた。この仮説は、さらに、TNFRファミリーメンバーのFas(CD95)およびTNFR2に関する最近の刊行物において裏付けられる(Wangら(2010)Nature Struc. Mol. Biol. 17、1324-1328;Mukaiら(2010)Sci. Signal.3、ra83)。Wangらは、細胞内シグナル伝達複合体は高次的であり、少なくとも5〜7コピーの受容体を含有することを実証している構造的データおよびソリューションデータを提供している。同様に、Mukaiらは、受容体の細胞外部分のクラスター化がリガンドの結合によって誘導されることを実証している。したがって、どちらの刊行物も、これらのTNFRファミリーメンバーの高次のクラスター化が、シグナル伝達のためにまず必要であり得ることを示している。
【0012】
この仮説を試験するために、パパインによってmAbを切断することにより作製されるFab断片(一価DR3抗体)を、機能アッセイにおいて試験した。これらのアッセイからの驚くべき成果は、一価DR3抗体(DR3:TL1A結合を遮断/阻害する能力を有するDR3抗体に基づいて作出した)が機能アッセイにおいて拮抗性であった、すなわち、DR3に誘導される作用を阻害する能力を有したことであった。したがって、一価DR3リガンド/抗体は、DR3-クラスター化を容易にせず、したがって、作動作用を有さない。
【0013】
TL1A:DR3相互作用を妨げなかった抗体を陰性対照として使用した。この種類の抗体は、mAbとしてのみ、TL1Aの不在下、非常に高い濃度で作動性である。これらの抗体由来の対応するFabは、TL1Aに誘導される作用を妨げることができなかった。
【0014】
定義
「炎症」とは、有害な刺激、例えば、病原体、損傷を受けた細胞、または刺激薬などに対する血管組織の複雑な生物学的応答である。炎症は、生物体による、傷害性の刺激を取り除くため、ならびに組織に対する治癒プロセスを開始するための保護的な試みである。炎症は、感染症のシノニムではなく、感染症は外因性の病原体によって引き起こされるが、炎症は、病原体に対する生物体の免疫系の応答である。
【0015】
通常、免疫系は、体の正常な細胞、または「自己」と外来病原体または異常な細胞、または「非自己」とを区別することができる。免疫系が「自己」を正常として認識する能力を失うプロセスおよびその後の組織または細胞を対象とする応答により、「自己免疫」の状態である寛容性の損失がもたらされる。自己免疫によって生じる病状は、多くの場合、重篤な臨床的帰結を有し、世界中、特に先進国における主要な健康問題の1つである。
【0016】
現在、生物学的治療薬がある特定の自己免疫疾患および/または癌を治療するために利用可能である。例えば、関節リウマチの患者はリツキシマブ(抗CD20)を用いて治療することができ、クローン病の患者はインフリキシマブまたはナタリズマブを用いて治療することができる。残念ながら、これらの生物製剤のいずれか1つを用いた治療を受ける患者はまた、種々の副作用を経験し、かつ/または非応答者であり、かつ/または阻害物質を発生する。病理組織を特異的に標的とし、かつ/または健康な組織には影響を及ぼさず、かつ/またはそれによりもたらされる副作用がより重篤でなく、かつ/またはそれによりもたらされる副作用がより少なく、かつ/または長期使用することができ、かつ/または阻害物質の形成をもたらさない代替的な生物学的医薬品が依然として必要とされている。本発明は、これらの自己免疫疾患の患者および慢性炎症性疾患の患者の間のまだ満たされていない必要性に関する。
【0017】
したがって、本発明のリガンドは、炎症性疾患および状態、例えば、乾癬、1型糖尿病、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、多発性硬化症、関節リウマチ(RA)、自己免疫性心筋炎、川崎病、冠動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、全身性硬化症、乾癬性関節炎、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病、シェーグレン症候群、自己免疫性腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、アレルギー、喘息および他の自己免疫疾患などの治療において使用するために適している。
【0018】
クローン病(CD/肉芽腫性/大腸炎)は、口から肛門までの消化管のいずれかの部分に影響を及ぼす可能性がある腸の炎症性疾患であり、多種多様な症状を引き起こす。クローン病は、主に、腹痛、下痢(血性であり得る)、嘔吐、または体重減少を引き起こすが、消化管の外側の合併症、例えば、皮膚発疹、関節炎、眼の炎症、疲労、および集中力の欠如なども引き起こす場合がある。クローン病に対する公知の薬剤または外科的治療法は存在しない。治療の選択肢は、症状を制御すること、寛解を維持すること、および再発を妨げることに限られている。
【0019】
関節リウマチ(RA):RAは、全身に影響を及ぼす全身性疾患であり、関節炎の最も一般的な形態の1つである。RAは、疼痛、凝り、温感、発赤および腫脹を引き起こす、関節を裏打ちしている膜の炎症を特徴とする。炎症細胞は骨および軟骨を消化し得る酵素を放出する。関節リウマチの結果として、炎症を起こした関節の裏打ち、滑膜は骨および軟骨に浸潤し、損傷を与え、それが、他の生理的作用の中でも関節の劣化および重篤な疼痛につながる可能性がある。病変部関節は、その形状およびアラインメントを失い、それにより疼痛および運動の損失がもたらされる可能性がある。
【0020】
関節リウマチのいくつかの動物モデルが当技術分野で公知である。例えば、コラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルでは、マウスがヒト関節リウマチとよく似た慢性炎症性関節炎を発生する。CIAは、RAと同様の免疫学的特徴および病理学的特徴を共有するので、潜在的なヒト抗炎症性化合物をスクリーニングするための理想的なモデルになっている。
【0021】
「DR3」は、時には、細胞死受容体3、TRAMP、TNFRSF12、TNFR25、TNFRS25、APO-3、DDR3、LARD、TR3、WSL-1、またはWSL-LRと称される。ヒトDR3は、細胞外ドメインに4つのシステインリッチモチーフを含み、細胞質ドメインに「デスドメイン」を含む、TNF受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーである。ヒトDR3は、配列番号1において定義されているアミノ酸配列を含む。DR3の細胞外ドメイン(残基25〜199)は、4つのシステインリッチドメイン(CRD1、CRD2、CRD3およびCRD4)を含む。各CRDは、典型的には、3つのジスルフィド結合を形成する6つのシステイン残基を含有する。さらに、各CRDは、典型的には、TNFRスーパーファミリーの従来のメンバーにおいて観察されるモジュールA1およびB2に細分することができる。
【0022】
「DR3とTL1Aの結合を遮断する/阻害する/減少させる」。本発明による一価のリガンド/抗体は、DR3:TL1A結合を阻害する/遮断する/減少させる能力を有する。これは、ハイスループットな画像に基づくアッセイにおいて試験することができる。このアッセイを、FMAT系において、DR3をトランスフェクトしたCHO細胞に結合する能力についてスクリーニングすること、および野生型細胞に対して対比スクリーニングすることによって行った(実施例4においてより詳細に記載されている)。本発明による一価のリガンド/抗体は、このアッセイにおいて測定したところ、DR3:TL1A結合が少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも25% 好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%および最も好ましくは約100%減少した場合に、DR3:TL1A結合を遮断する、または阻害する、または減少させる力を有する。
【0023】
「延伸性基」/「半減期延長性部分」とは、本明細書では、1つもしくは複数のアミノ酸側鎖官能性、例えば、-SH、-OH、-COOH、-CONH
2、-NH
2など、または1つもしくは複数のN-グリカン構造および/もしくはO-グリカン構造に結合し、いくつかの治療用タンパク質/ペプチドとコンジュゲートした場合に、これらのタンパク質/ペプチドのin vivoでの循環半減期を増加させることができる1つまたは複数の化学基であると理解される。延伸性基/半減期延長性部分の例としては、これらに限定されないが、生体適合性脂肪酸およびそれらの誘導体、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(Gly
x-Ser
y)
n(HAP)、ヒアルロン酸(HA)、ヘパロサン(Heparosan)ポリマー(HEP)、ホスホリルコリンに基づくポリマー(PCポリマー)、フレキシマー(Fleximer)、デキストラン、ポリシアル酸(PSA)、Fcドメイン、トランスフェリン、アルブミン、エラスチン様ペプチド、XTENポリマー、アルブミン結合性ペプチド、CTPペプチド、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0024】
本発明による「PEG化DR3リガンド変異体」は、DR3リガンドポリペプチドの任意のアミノ酸残基または炭水化物部分を含めたDR3リガンドポリペプチドの任意の部分に結合した1つまたは複数のPEG分子を有し得る。PEGまたは他の延伸性基を本発明による一価DR3リガンド上のグリカンとコンジュゲートするために、化学的方法および/または酵素的方法を使用することができる。酵素的なコンジュゲーションプロセスの例は、例えば、WO03031464に記載されている。グリカンは、天然に存在するものであってよい、または、例えば、N結合グリコシル化部位を当技術分野で周知の方法を用いて挿入することによって挿入することができる。本発明による「システイン-PEG化DR3リガンド変異体」は、DR3リガンドに存在するシステインのスルフヒドリル基とコンジュゲートした1つまたは複数のPEG分子を有する。本発明による「システイン-アシル化DR3リガンド変異体」または「システイン-アルキル化DR3リガンド変異体」は、DR3リガンドに導入されたシステインのスルフヒドリル基とコンジュゲートした1つまたは複数の疎水性の半減期延長性部分を有する。さらに、延伸性半減期延長性部分を他のアミノ酸残基に連結することが可能である。
【0025】
哺乳動物種の循環血液中の最も豊富なタンパク質成分は血清アルブミンであり、それは、通常、全血100ミリリットル当たりおよそ3〜4.5グラムの濃度で存在する。血清アルブミンは、循環系におけるいくつかの重要な機能を有するおよそ65,000ダルトンの血液タンパク質である。血清アルブミンは、血液中に見いだされる種々の有機分子の輸送体として、血液を通じた脂肪酸およびビリルビンなどの種々の代謝産物の主要な輸送体として、および、その豊富さに起因して、循環血液の浸透圧調節因子として機能する。血清アルブミンは、1週間を超える半減期を有し、タンパク質の血漿内半減期を増加させるための1つの手法は、タンパク質を、血清アルブミンに結合する部分とコンジュゲートすることであった。アルブミン結合性は、参照により本明細書に組み込まれるJ. Med. Chem.、43、1986、(2000)に記載の通り決定することができる。
【0026】
疎水性/親油性の半減期延長性部分:本発明によるリガンドは、天然において非常に親油性/疎水性である半減期延長性部分とコンジュゲートすることが好ましい。好ましい実施形態では、疎水性の半減期延長性部分は、アルブミン(「アルブミン結合剤」)と非共有結合性の複合体を形成し、それにより、血流での誘導体の循環を促進することができ、また、誘導体が作用する時間を延長する効果も有する。したがって、全体として、好ましい置換基または部分は、アルブミン結合性部分と称することができる。
【0027】
半減期延長性部分は、本発明によるDR3リガンドへのその結合点と比較してアルブミン結合性部分の逆末端に、またはその近くにあることが好ましい。アルブミン結合性部分の他の部分、すなわち、半減期延長性部分とペプチドへの結合点との間の部分は、リンカー部分、リンカー、スペーサーなどと称することができる。しかし、リンカーの存在は任意選択であり、したがって、アルブミン結合性部分が半減期延長性部分と同一であってもよい。
【0028】
特定の実施形態では、アルブミン結合性部分および/または半減期延長性部分は親油性であり、かつ/または、生理的なpH(7.4)で負に荷電している。
【0029】
アルブミン結合性部分および/または半減期延長性部分は、アルキル化、アシル化、もしくはアミド形成などコンジュゲーション化学反応によってペプチドのアミノ基に、またはエステル化、アルキル化などによってヒドロキシル基に、またはオキシム化によって他の基に、共有結合的に結合させることができる。
【0030】
好ましい実施形態では、アルブミン結合性部分および/または半減期延長性部分の活性な硫黄親和性誘導体は、抗DR3 Fabのシステイン残基のチオールと共有結合する。そのような硫黄親和性基としては、これらに限定されないが、マレイミド、ハロ-マレイミド、ハロゲン化物(特に、α-ハロアセチル)、アクリロイル誘導体(例えば、アクリル酸およびアクリルアミド)、ビニルスルホン、反応性ジスルフィド基(例えば、2-ピリジル)が挙げられる。したがって、本発明の抗DR3 Fab'は、チオエーテル結合またはジスルフィド結合を通じてアルブミン結合性部分に連結していることが好ましい。
【0031】
本発明による一価抗体、例えば、Fab'断片などは、インタクトな抗体の重鎖の硫黄架橋のうちの1つの一部を形成する、重鎖由来の天然に存在するシステイン残基を含有するように設計することができる。このシステイン残基は、C239(Kabat番号付け)と称される。システイン残基は遺伝子工学によって挿入することもできるが、コンジュゲーションのために天然に存在するシステイン残基を使用することには安全性の利点が伴う可能性がある。
【0032】
好ましい実施形態では、アルブミン結合性部分および/または疎水性の半減期延長性部分の活性なエステルは、アミド結合の形成の下でシアル酸残基またはシアル酸誘導体のアミノ基と共有結合する(このプロセスは、アシル化と称される)。
【0033】
本発明の非常に好ましい実施形態によると、アルブミン結合性部分は、酵素的な方法、例えば、シアリルトランスフェラーゼの使用を伴う方法などを用いて、グリカンを介してリガンドに結合させる。
【0034】
本目的に関して、「アルブミン結合性部分」、「半減期延長性部分」、および「リンカー」という用語は、これらの分子の反応していない形態ならびに反応した形態を包含する。どちらの形態が意味されているか否かは、この用語が使用される文脈から明らかである。
【0035】
「脂肪酸」という用語は、4〜28個の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸を指し、非分枝かつ/または偶数であることが好ましく、また、飽和型または不飽和型であってよい。
【0036】
「脂肪二酸(fatty diacid)」という用語は、上で定義された脂肪酸であるが、オメガ位に追加的なカルボン酸基を有する脂肪酸を指す。したがって、脂肪二酸はジカルボン酸である。
【0037】
命名法は、当技術分野における通常通りであり、例えば、-COOH、ならびにHOOC-とは、カルボキシを指し、-C
6H
4-はフェニレンを指し、-CO-、ならびに-OC-はカルボニル(O=C<)を指し、C
6H
5-O-はフェノキシを指し、ハロゲン化物とは、ハロゲン-F、-Cl、-Br、-I、および-Atを指す。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明のアルブミン結合性部分は、リンカーおよびシアル酸残基またはシアル酸誘導体を介してペプチドまたはタンパク質と連結した脂肪族アシル基(-(CH
2)
n-CO-、n=1、2、3、...40)またはオメガ-カルボキシ脂肪族アシル基(HO
2C-(CH
2)
n-CO-、n=1、2、3、...40)を含む。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明のアルブミン結合性部分は、リンカーおよびシステイン残基を介してペプチドまたはタンパク質と連結した脂肪族アシル基(-(CH
2)
n-CO-、n=1、2、3、...40)またはオメガ-カルボキシ脂肪族アシル基(HO
2C-(CH
2)
n-CO-、n=1、2、3、...40)を含む。特定の好ましい実施形態では、nは、16または18である。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本発明のアルブミン結合性部分は、リンカーおよびシステイン残基を介してペプチドまたはタンパク質と連結したR-(CH
2)
n-CO-、n=1、2、3、...40型の脂肪族アシル基を含む。Rは、酸性基、例えば、テトラゾール-5-イルまたは-O-C
6H
4-COOHを含む基である。特定の好ましい実施形態では、nは、14または15である。
【0041】
-(CH
2)
12-部分を有する化合物は、本発明に関して、可能なアルブミン結合剤である。そのような化合物をタンパク質またはペプチドに結合させ、その結果、前記タンパク質またはペプチドの血漿中半減期が増加する場合、アルブミン結合剤が血漿中半減期の全体的な増加の一因となり得ることが理解される。
【0042】
好ましい実施形態では、リンカー部分が存在する場合、それは2〜80個のC原子、好ましくは5〜70個のC原子を有する。さらなる好ましい実施形態では、リンカー部分が存在する場合、それは4〜20個のヘテロ原子、好ましくは2〜40個のヘテロ原子、より好ましくは3〜30個のヘテロ原子を有する。ヘテロ原子の特に好ましい例は、N原子およびO原子である。H原子はヘテロ原子ではない。
【0043】
別の実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのOEG分子、および/または少なくとも1つのグルタミン酸残基、またはそうではなく対応するラジカル(OEGは、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸を示す、すなわち、このラジカルは-NH-(CH2)2-O-(CH2)2-O-CH2-CO-である)を含む。好ましい一実施形態では、リンカー部分はジカルボキサミド部分を含み、リンカーは、チオエーテル結合を通じてシステイン残基と連結している。好ましい例では、ジカルボキサミド部分は、2〜30個のC原子、好ましくは4〜20個のC原子、より好ましくは4〜10個のC原子を含有する。
【0044】
好ましい一実施形態では、リンカー部分は、アミド結合によってシアル酸残基と連結したジカルボキサミド部分を含む。好ましい例では、ジカルボキシル残基は、2〜30個のC原子、好ましくは4〜20個のC原子、より好ましくは4〜10個のC原子を有する。さらなる好ましい例では、ジカルボキシル残基は、0〜10個のヘテロ原子、好ましくは0〜5個のヘテロ原子を有する。
【0045】
別の好ましい例では、リンカー部分/スペーサーは、末端のカルボキシル基を通じてアミド結合によってシアル酸残基と連結したアミノ基および末端のカルボキシル基の両方を含有する基を含む。好ましい一実施形態では、この基はOEG基である。「親水性スペーサー」という用語は、本明細書で使用される場合、本発明による一価DR3抗体/リガンドと、少なくとも5個の水素ではない原子を含み、これらの30〜50%がNまたはOである化学的部分を伴うアルブミン結合残基とを分離するスペーサーを意味する。アルブミン結合残基は、親水性スペーサーを介してCys残基に連結していることが好ましい。
【0046】
アミノ酸グルタミン酸(Glu)は、2つのカルボン酸基を含む。そのガンマカルボキシ基が、シアル酸残基もしくはシアル酸誘導体のアミノ基と、または、OEG分子が存在する場合はそのアミノ基と、または、別のGlu残基が存在する場合はそのアミノ基とアミド結合を形成するために使用されることが好ましい。今度はGluのアミノ基が、半減期延長性部分のカルボキシ基と、または、OEG分子が存在する場合はそのカルボキシ基と、または、別のGluが存在する場合はそのガンマカルボキシ基と、アミド結合を形成する。このGluの包含の仕方は、時々簡単に「ガンマGlu」と称される。
【0047】
「Fc融合誘導体」または「Fc融合タンパク質」または突然変異したFcドメインを有するDR3抗体は、本明細書では、Fcドメインと融合した本発明によるDR3リガンドを包含するものとし、Fcドメインは、任意の抗体のアイソタイプに由来してよいが、IgG抗体の循環半減期が比較的長いので、多くの場合IgG Fcドメインが好ましく、IgG1アイソタイプおよびIgG4アイソタイプが好ましい。Fcドメインは、ある特定のエフェクター機能、例えば、補体の結合および/またはある特定のFc受容体との結合などを調節するために、さらに改変することができる。Fcドメインは、新生児のFc受容体に対する親和性を増加させるために、さらに調節することができる。本発明によるDR3リガンドと、FcRn受容体に結合する力を有するFcドメインとの融合により、一般に、融合タンパク質の持続性の循環半減期がもたらされる。IgG1 Fcドメインの234位、235位および237位における突然変異により、一般に、FcγRI受容体との結合の減少がもたらされ、おそらく、FcγRIIa受容体およびFcγRIII受容体との結合の減少ももたらされる。これらの突然変異では、FcRn受容体との結合は変更されず、これによりエンドサイトーシス再利用経路による長い循環半減期が促進される。本発明による融合タンパク質の改変されたIgG1 Fcドメインは、それぞれ、ある特定のFc受容体に対する親和性の低下(L234A、L235E、およびG237A)ならびにC1q-媒介性補体結合の減少(A330SおよびP331S)をもたらす突然変異の1つまたは複数を含むことが好ましい。あるいは、Fcドメインは、場合によって、S241P/S228P突然変異を含むIgG4 Fcドメインであってよい。
【0048】
「抗体」、「モノクローナル抗体」および「mAb」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子およびその断片を指すものとする。全長の抗体は、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合によって相互接続した2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと省略される)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと省略される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VH領域およびVL領域は、より保存された、フレームワーク領域(FR)と称される領域と共に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができる。VHおよびVLのそれぞれは、アミノ末端からカルボキシ末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番で配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成される。抗体は、異なるアイソタイプの形態、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgGA1、IgA2、IgD、およびIgEであってよい。全長の抗体は、通常、二価(bi-valent)/二価(di-valent)である、すなわち両「腕」で抗原に結合する力を有する。対照的に、本発明による一価抗体は、抗原/DR3に特異的なただ1つの結合部位を含む。
【0049】
「Fab領域」/「Fabドメイン」/「Fab断片」/「Fab」は、抗体が結合することができる特異的な標的を規定する可変性の区画を含有する。Fab断片は、本発明による単一特異性/一価DR3リガンド/DR3抗体の例である。
【0050】
本発明による一価DR3リガンド/抗体の例としては、Fab断片、VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH Iドメインからなる一価の断片;例えば、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価の断片であって、これらのFab断片のうちの一方のみがDR3に対して特異的である断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一の腕のVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR);および(v)DR3に対して一価である二重特異性抗体(bi-specific antibody)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされているが、これらを、組換え方法を用いて、VL領域とVH領域の対が一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖にすることができる合成リンカーによってつなぐことができる(単鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、Birdら(1988)Science 242:423-426:およびHustonら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。単鎖抗体の他の形態、例えば、ダイアボディ(diabody)なども、「一価DR3リガンド/抗体」という用語の範囲内に包含される。
【0051】
「ジアボディ」とは、VHドメインおよびVLドメインを単一のポリペプチド鎖上で発現させるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするためには短すぎるリンカーを使用し、それにより、ドメインを別の鎖の相補的なドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を創出させた二価の、二重特異性抗体である(例えば、Hol-liger, P.ら(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448;Poljak、R. J.ら(1994)Structure 2:1121-1123を参照されたい)。
【0052】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する本発明による一価DR3抗体を意味する。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR内、特に、CDR3内に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含んでよい(例えば、in vitroにおけるランダム突然変異誘発または部位特異的突然変異誘発によって、またはin vivoにおける体細胞突然変異によって導入した突然変異)。
【0053】
しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列に移植した抗体、例えば、いわゆる「ヒト化抗体」またはヒト/マウスキメラ抗体を包含するものではない。ヒト化一価DR3抗体も本発明の一部である。
【0054】
「キメラ一価抗体」という用語は、その軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子が、典型的には、遺伝子工学により、異なる種に属する免疫グロブリンの可変領域および定常領域の遺伝子から構築された、本発明による一価DR3抗体を指す。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変性セグメントをヒト定常セグメントとつなぐことができる。
【0055】
「エピトープ」という用語は、本明細書で使用される場合、一価抗体が結合する抗原上の任意の抗原性決定因子を意味する。エピトープ性決定因子は、通常、アミノ酸または糖部分などの分子の化学的に活性な表面分類からなり、多くの場合、特異的な三次元構造特性、ならびに特異的な電荷特性を有する。エピトープを特徴付けるための方法の例としては、HX-MS、NMR、X線、ペプチドウォーキング、アッセイなどが挙げられる。「パラトープ」という用語は、抗原を認識する抗体の一部を指す。
【0056】
本発明の一価DR3抗体は、それらが認識するまたは特異的に結合するDR3のエピトープまたは部分に関して説明または規定することができる。エピトープまたはポリペプチド部分は、例えば、N末端およびC末端の位置によって、または連続したアミノ酸残基単位のサイズによって規定することができる。本発明の一価DR3抗体は、それらの交差反応性に関して説明または規定することもできる。ポリペプチドの任意の他の類似体、オルソログ、またはホモログに結合しない抗体が含まれる。
【0057】
「エピトープ結合」/「競合結合アッセイ」とは、DR3に同時に結合することができる、またはそれができないリガンド/抗体の対を同定するための競合的結合アッセイを用い、それにより、DR3タンパク質上の同じ、または重複したエピトープに結合する(実施例10参照)、または立体障害に起因して同時に結合することができない本発明によるリガンド/抗体を同定することを指す。結合実験により、抗原的に別個のエピトープが存在する証拠がもたらされる。しかし、それら自体で、エピトープをDR3タンパク質上の特異的なアミノ酸配列または場所に同定、または「マッピング」することはない。任意のリガンド/抗体または断片の対に関して、結合についての競合を評価することができる。しばしば、リガンド/抗体のファミリー(またはビン)の都合のよい性質は、抗体ビン/競合群によって定義される特異的なエピトープとの結合と相関し得る。
【0058】
「免疫反応する(immunoreacts)」または「免疫反応すること(immunoreacting)」という用語は、本明細書で使用される場合、リガンド/抗体とそのエピトープの、10
-4M未満の解離定数Kdを伴う任意の結合を意味する。「免疫反応する(immunoreacts)」または「免疫反応すること(immunoreacting)」という用語は、適切な場合には、「特異的に結合する」という用語と互換的に使用される。
【0059】
「親和性」という用語は、本明細書で使用される場合、本発明によるリガンド/抗体とエピトープの結合の強度を意味する。抗体/リガンドの親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]と定義される解離定数Kdによって測定され、ここで、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は結合していない抗体のモル濃度であり、[Ag]は結合していない抗原のモル濃度である。親和定数Kaは、1/Kdによって定義される。抗体の特異性および親和性を競合的阻害によって決定するための好ましい方法は、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1988、Colliganら編、Current Protocols in Immunology、Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience、N.Y.、(1992、1993)、およびMuller、Meth. Enzymol. 92:589-601(1983)において見いだすことができる。
【0060】
「RA患者由来の滑液細胞におけるIFN-ガンマ(IFN-γ)の放出を減少させる」は、本明細書に記載の通り測定することができる。1ml当たり一価抗体約0.1μg、0.5μg、1μg、または5μgの濃度で、本明細書に記載のアッセイ条件を用いて、RA患者由来の滑液T細胞におけるIFN-γ放出が、少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、および最も好ましくは少なくとも95%減少することが理解される。応答性の患者材料では、本発明による抗体により、RA患者材料ならびにCD患者材料におけるインターフェロンの放出(例えば、IFN-ガンマ)が減少する。
【0061】
「CD患者からの腸生検材料由来の粘膜固有層単核球(LPMC)における1種または複数種のサイトカインの放出を減少させる」は、本明細書に記載の通り測定することができる。1ml当たり一価抗体約0.1μg、0.5μg、1μg、または5μgの濃度で、本明細書に記載のアッセイ条件を用いて、CD患者由来のLPMCにおけるサイトカインの放出が、少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、および最も好ましくは少なくとも95%減少することが理解される。応答性の患者材料では、本発明による抗体により、RA患者材料ならびにCD患者材料におけるインターフェロンの放出(例えば、IFN-ガンマ)が減少する。
【0062】
「CD4
+T細胞における1種または複数種のサイトカインの放出を減少させる」は、本明細書に記載の通り測定することができる。1ml当たり一価抗体約0.1μg、0.16μg、0.5μg、1μg、または5μgの濃度で、本明細書に記載のアッセイ条件を用いて、CD4
+T細胞におけるサイトカインの放出が、少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、および最も好ましくは少なくとも95%減少することが理解される。
【0063】
本発明によるDR3リガンドを含む「医薬組成物」は、本発明によるリガンドを含む容器を含むキットとして供給することができる。治療用ポリペプチドは、単回投薬用もしくは複数回投薬用の注射用溶液の形態で、または、注射する前に再構成される滅菌粉末として提供することができる。本発明によるリガンドを含む医薬組成物は、皮下投与および/またはIV投与に適している。本発明による医薬組成物は、1種または複数種の薬学的に許容される担体を含んでよい。
【0064】
「治療」という用語は、本明細書で使用される場合、それを必要とする任意のヒトまたは他の動物対象の医学療法を指す。前記対象は、医師または獣医師による身体検査を受けたことが予想され、医師または獣医師により、前記特異的な治療の使用が、前記ヒトまたは他の動物対象の健康に有益であることを示す仮のまたは決定的な診断がなされている。前記治療のタイミングおよび目的は、対象の健康の現状に従って、個体によって変動し得る。したがって、前記治療は、予防的、待機的、対症的かつ/または治癒的であり得る。
【0065】
本発明に関して、予防的、待機的、対症的かつ/または治癒的な治療は、本発明の別々の態様を示し得る。
【0066】
本発明によるリガンドは、他の薬物(例えば、メトトレキサート、デキサメタゾン、およびプレドニゾン)および/または他の生物学的薬物と一緒に投与することができる。
【0067】
一価DR3抗体/リガンドは、組換え技法によって作製することができる。本発明による一価DR3抗体/リガンドをコードするDNA配列を、通常、組換えベクターに挿入する。ベクターは、DNA配列が、DNAの転写のために必要な追加的なセグメント、ならびに、所望の宿主細胞において、クローニングされた遺伝子またはcDNAの転写を導くことができるプロモーターに作動可能に連結している、発現ベクターであることが好ましい。
【0068】
細胞がDNAを受け取った後、細胞を適切な成長培地中で、典型的には1〜2日間成長させて、対象の遺伝子の発現を開始させる。一価DR3抗体/リガンドをコードするDNA配列を導入する宿主細胞は、任意の細胞であってよく、それらとしては、酵母細胞、真菌細胞、細菌細胞および高等真核細胞が挙げられる。本発明において使用するための哺乳動物の細胞株の例はCOS-1、ベビーハムスター腎臓(BHK)および293である。好ましいBHK細胞株は、tk-ts13 BHK細胞株であり、これはBHK 570細胞と称することができる。さらに、本発明の範囲内で、ラットHep I細胞、ラットHep II細胞、TCMK細胞、NCTC 1469細胞、CHO細胞、およびDUKX細胞を含めたいくつかの他の細胞株を用いることができる。
【0069】
次いで、上記の形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を、適切な栄養培地中、一価DR3抗体/リガンドの発現を可能にする条件下で培養し、その後、生じたペプチドの全部または一部を培養物から回収することができる。次いで、細胞によって産生される一価DR3抗体/リガンドを、遠心分離または濾過によって宿主細胞を培地から分離すること、上清または濾液のタンパク質成分を塩、例えば、硫酸アンモニウムによって沈殿させること、問題のポリペプチドの種類に依存する種々のクロマトグラフィー手順、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどによって精製することを含む、従来の手順によって培養培地から回収することができる。
【0070】
トランスジェニック動物技術を、本発明の一価DR3抗体/リガンドを作製するために使用することができる。宿主の雌の哺乳動物、好ましくはヒツジ、ヤギまたはウシの乳腺内でタンパク質を産生させることが好ましい。トランスジェニック植物における作製も用いることができる。発現は、特定の器官、例えば、塊茎などに導くことができる。
【0071】
一価DR3抗体は、上記の通り作製し、その後、ペプチダーゼ消化に供し、生じたFab断片を単離した二価抗体に基づいて得ることもできる。
【0072】
その後、一価DR3抗体/リガンドを、in vivoでの循環半減期が延長されたタンパク質を得るために翻訳後修飾することができる。
【0073】
実施形態の一覧:
以下は、本発明による実施形態の一覧である。この実施形態の一覧は、限定的なものではなく、本発明は、以下の実施形態の任意の組合せを包含することが理解される。
【0074】
実施形態1:DR3とTL1Aの結合を遮断し、その二価の形態がDR3とTL1Aの結合を遮断する作動性抗体である、一価の拮抗性DR3抗体。
【0075】
実施形態2:WO2011106707に記載の11H08抗体のCDR配列(配列番号14〜15)を有する抗体ではない、実施形態1に記載の一価抗体。
【0076】
実施形態3:親油性部分とコンジュゲートした、実施形態1から2のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0077】
実施形態4:前記親油性部分が、-(CH
2)
n-CO-脂肪族アシル基を含み、nが16〜18である、実施形態3に記載の一価抗体。
【0078】
実施形態5:前記親油性部分が、-(CH
2)
n-CO-脂肪族アシル基を含み、nが15である、実施形態3に記載の一価抗体。
【0079】
実施形態6:式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、および(VI):
【0081】
からなる群から選択される親油性部分とコンジュゲートした、実施形態3から5のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0082】
実施形態7:前記親油性部分が、抗体の重鎖の天然に存在するシステイン残基、好ましくはC239(Kabat番号付け)システイン残基に親水性スペーサーを介して結合している、実施形態3から6のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0083】
実施形態8:配列番号1のI43および/またはL45を含むDR3上のエピトープに結合する、実施形態1から7のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0084】
実施形態9:配列番号1に記載のアミノ酸G37〜L45の少なくとも1つおよびアミノ酸L57〜A59の少なくとも1つを含むDR3上のエピトープに結合する、実施形態1から8のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0085】
実施形態10:前記エピトープが、配列番号1に記載のアミノ酸G37〜L45およびアミノ酸L57〜A59を含む、実施形態9に記載の一価抗体。
【0086】
実施形態11:前記リガンドがFab断片である、実施形態1から10のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0087】
実施形態12:DR3に1nM未満の解離定数で結合する、実施形態1から11のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0088】
実施形態13:DR3に500pM未満、好ましくは300pM未満、好ましくは100pM未満、最も好ましくは30pM未満の解離定数で結合する、実施形態12に記載の一価抗体。
【0089】
実施形態14:ヒトDR3のCRD1ドメインに結合する、実施形態1から13のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0090】
実施形態15:配列番号16に記載の3つのCDR配列および配列番号17に記載の3つのCDR配列を含む一価抗体、あるいは二価抗体。別の実施形態では、本発明による一価抗体は、配列番号10に記載の3つのCDR配列および配列番号11に記載の3つのCDR配列を含む。
【0091】
実施形態16:ヒトフレームワーク、配列番号16に記載のCDR3配列および配列番号17に記載のCDR3配列ならびに重鎖における「S49A」復帰突然変異を含む一価抗体、あるいは二価抗体。
【0092】
実施形態17:配列番号16に記載の3つのCDR配列および配列番号17に記載の3つのCDR配列を含む、実施形態16に記載の一価抗体。別の実施形態では、本発明による一価抗体は、それぞれ配列番号16および17に記載の重鎖および軽鎖を含む。
【0093】
実施形態18:IgG4アイソタイプである、実施形態15から17のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0094】
実施形態19:ヒトDR3との結合について一価抗体「0228」と競合し、0228の重鎖のアミノ酸配列が配列番号16に記載のものであり、0228の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号17に記載のものである、実施形態1から18のいずれか1つに記載の一価抗体。別の実施形態では、抗体は0228抗体と同じエピトープに結合する。
【0095】
実施形態20:配列番号12に記載の3つのCDR配列および配列番号13に記載の3つのCDR配列を含む、実施形態1から14のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0096】
実施形態21:ヒトDR3との結合について一価抗体0124と競合し、0124の重鎖のアミノ酸配列が配列番号12に記載のものであり、軽鎖のアミノ酸配列が配列番号13に記載のものである、本発明による一価抗体。別の実施形態では、抗体は、0124抗体と同じエピトープに結合する。
【0097】
実施形態22:配列番号18に記載の3つのCDR配列および配列番号19に記載の3つのCDR配列を含む、一価抗体、あるいは二価抗体。
【0098】
実施形態23:ヒトDR3との結合について一価抗体0130と競合し、0130の重鎖のアミノ酸配列が配列番号18に記載のものであり、0130の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号19に記載のものである、本発明による一価抗体。別の実施形態では、抗体は、0130抗体と同じエピトープに結合する。
【0099】
実施形態24:配列番号20に記載の3つのCDR配列および配列番号21に記載の3つのCDR配列を含む、一価抗体、あるいは二価抗体。
【0100】
実施形態25:ヒトDR3との結合について一価抗体0143と競合し、0143の重鎖のアミノ酸配列が配列番号20に記載のものであり、0143の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号21に記載のものである、本発明による一価抗体。別の実施形態では、前記抗体は、0143抗体と同じエピトープに結合する。
【0101】
実施形態26:配列番号22に記載の3つのCDR配列および配列番号23に記載の3つのCDR配列を含む、一価抗体、あるいは二価抗体。
【0102】
実施形態27:ヒトDR3との結合について一価抗体0152と競合し、0152の重鎖のアミノ酸配列が配列番号22に記載のものであり、0152の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号23に記載のものである、本発明による一価抗体。別の実施形態では、前記抗体は、0152抗体と同じエピトープに結合する。
【0103】
実施形態28:RA患者由来の滑液細胞におけるIFN-ガンマ(IFN-γ)の放出を減少させ、前記滑液細胞がTL1Aで同時刺激される、本発明による一価抗体。細胞はIL-12/IL-18で活性化されることが好ましい。
【0104】
実施形態29:CD患者からの腸生検材料由来の粘膜固有層単核球(LPMC)における1種または複数種のサイトカインの放出を減少させ、前記サイトカインが、IL-6、TNF-α、GM-CSF、およびIFN-ガンマ(IFN-γ)からなる一覧から選択され、前記LPMCがTL1A、IL-12、およびIL-18で同時刺激される、本発明による一価抗体。細胞はIL-12/IL-18で活性化されることが好ましい。
【0105】
実施形態30:CD4+T細胞における1種または複数種のサイトカインの放出を減少させ、前記サイトカインが、TNF-α、IL-6、GM-CSF、およびIFN-ガンマ(IFN-γ)からなる一覧から選択され、前記T細胞がTL1Aにより同時刺激される、本発明による一価抗体。細胞はIL-12/IL-18で活性化されることが好ましい。
【0106】
実施形態31:IgG4型抗体である、実施形態1から30のいずれか1つに記載の一価抗体。
【0107】
実施形態32:脂肪酸およびそれらの誘導体、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒアルロン酸(HA)、ヘパロサン(heparosan)ポリマー、ホスホリルコリンに基づくポリマー、フレキシマー(fleximer)、デキストラン、ポリシアル酸(PSA)、Fcドメイン、トランスフェリン、アルブミン、エラスチン様ペプチド、XTENポリマー、アルブミン結合性ペプチド、およびそれらの任意の組合せからなる一覧のうちの1つまたは複数から選択される1種または複数種の半減期延長性部分とコンジュゲートした、実施形態1から31のいずれか1つに記載の一価抗体。したがって、本発明による一価抗体は、2つ以上の異なる種類の半減期延長性部分とコンジュゲートすることができるということになる。
【0108】
実施形態33:エフェクター機能が低下したFcドメインまたは安定性が増加したFcドメインを含む、本発明による一価抗体。Fcドメインは、以下の突然変異の1つ、2つ、3つ、4つまたは全てを含むIgG1 Fcドメインであることが好ましい:L234A、L235E、G237A、A330S、およびP331S。あるいは、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインであってよく、S241P/S228P突然変異を含むことが好ましい。
【0109】
実施形態34:グリカンを介して、好ましくはシアル酸を介して半減期延長性部分とコンジュゲートした、本発明による一価抗体。
【0110】
実施形態35:ヒト抗体である、本発明による一価抗体。
【0111】
実施形態36:ヒト化抗体である、本発明による一価抗体。
【0112】
実施形態37:1種または複数種のDR3リガンドの結合を遮断する、本発明による一価抗体。DR3がTL1A以外のリガンドに結合することが妥当と思われる。しかし、そのようなリガンドはまだ同定されていない。
【0113】
実施形態38:配列番号8内のCDR配列のうちの少なくとも1つ、および配列番号9に記載のCDR配列のうちの少なくとも1つを含む、本発明による一価抗体(27F16A1抗体と基本的に同じパラトープを含むことが好ましい)。前記抗体は、配列番号8に記載のCDR配列のうちの2つ、および配列番号9に記載のCDR配列のうちの1つを含むことが好ましい。前記抗体は、配列番号8に記載のCDR配列のうちの3つ、および配列番号9に記載のCDR配列のうちの1つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号8に記載のCDR配列のうちの少なくとも1つ、および配列番号9に記載のCDR配列のうちの2つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号8に記載のCDR配列のうちの少なくとも1つ、および配列番号9に記載の3つのCDR配列を含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号8に記載のCDR配列のうちの1つ、および配列番号9に記載のCDR配列のうちの1つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号8に記載のCDR配列のうちの2つ、および配列番号9に記載のCDR配列のうちの2つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号8に記載のCDR配列のうちの3つ、および配列番号9に記載のCDR配列のうちの3つを含むことがより好ましい。そのような本発明による抗体のうちのいずれか1つは、そのようなCDR配列を1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ含んでよく、これまたはこれらのCDR配列由来の1つまたは2つのアミノ酸は、欠失、付加、または突然変異して異なるアミノ酸残基になっており、したがって、配列番号8および配列番号9に記載のCDR配列と比較して1つまたは複数の位置において異なる1つまたは複数のCDR配列がもたらされる。
【0114】
実施形態39:ヒトDR3との結合について一価抗体27F16A1と競合し、27F16A1の重鎖のアミノ酸配列が配列番号8に記載のものであり、27F16A1の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号9に記載のものである、本発明による一価抗体。別の実施形態では、本発明は、27F16A1抗体と同じエピトープに結合する抗体に関する。
【0115】
実施形態40:配列番号10内のCDR配列のうちの少なくとも1つ、および配列番号11に記載のCDR配列のうちの少なくとも1つを含む、本発明による一価抗体(27F44A2抗体と基本的に同じパラトープを含むことが好ましい)。前記抗体は、配列番号10に記載のCDR配列のうちの2つ、および配列番号11に記載のCDR配列のうちの1つを含むことが好ましい。前記抗体は、配列番号10に記載のCDR配列のうちの3つ、および配列番号11に記載のCDR配列のうちの1つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号10に記載のCDR配列のうちの少なくとも1つ、および配列番号11に記載のCDR配列のうちの2つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号10に記載のCDR配列のうちの少なくとも1つ、および配列番号11に記載の3つのCDR配列を含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号10に記載のCDR配列のうちの1つ、および配列番号11に記載のCDR配列のうちの1つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号10に記載のCDR配列のうちの2つ、および配列番号11に記載のCDR配列のうちの2つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号10に記載のCDR配列のうちの3つ、および配列番号11に記載のCDR配列のうちの3つを含むことがより好ましい。そのような本発明による抗体のうちのいずれか1つは、そのようなCDR配列を1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ含んでよく、これまたはこれらのCDR配列由来の1つまたは2つのアミノ酸は、欠失、付加、または突然変異して異なるアミノ酸残基になっており、したがって、配列番号10および配列番号11に記載のCDR配列と比較して1つまたは複数の位置において異なる1つまたは複数のCDR配列がもたらされる。
【0116】
実施形態41:ヒトDR3との結合について一価抗体27F44A2と競合し、27F44A2の重鎖のアミノ酸配列が配列番号10に記載のものであり、軽鎖のアミノ酸配列が配列番号11に記載のものである、本発明による一価抗体。別の実施形態では、本発明による抗体は、27F44A2抗体と同じエピトープに結合する。
【0117】
実施形態42:配列番号12内のCDR配列のうちの少なくとも1つ、および配列番号13に記載のCDR配列のうちの少なくとも1つを含む、本発明による一価抗体(28F26A3抗体と基本的に同じパラトープを含むことが好ましい)。前記抗体は、配列番号12に記載のCDR配列のうちの2つ、および配列番号13に記載のCDR配列のうちの1つを含むことが好ましい。前記抗体は、配列番号12に記載のCDR配列のうちの3つ、および配列番号13に記載のCDR配列のうちの1つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号12に記載のCDR配列のうちの少なくとも1つ、および配列番号13に記載のCDR配列のうちの2つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号12に記載のCDR配列のうちの少なくとも1つ、および配列番号13に記載の3つのCDR配列を含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号12に記載のCDR配列のうちの1つ、および配列番号13に記載のCDR配列のうちの1つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号12に記載のCDR配列のうちの2つ、および配列番号13に記載のCDR配列のうちの2つを含むことがより好ましい。前記抗体は、配列番号12に記載のCDR配列のうちの3つ、および配列番号13に記載のCDR配列のうちの3つを含むことがより好ましい。そのような本発明による抗体のうちのいずれか1つは、そのようなCDR配列を1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ含んでよく、これまたはこれらのCDR配列由来の1つまたは2つのアミノ酸は、欠失、付加、または突然変異して異なるアミノ酸残基になっており、したがって、配列番号12および配列番号13に記載のCDR配列と比較して1つまたは複数の位置において異なる1つまたは複数のCDR配列がもたらされる。
【0118】
実施形態43:ヒトDR3との結合について一価抗体28F26A3と競合し、28F26A3の重鎖のアミノ酸配列が配列番号12に記載のものであり、28F26A3の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号13に記載のものである、本発明による一価抗体。別の実施形態では、抗体は、28F26A3抗体と同じエピトープに結合する。
【0119】
実施形態44:本発明による一価抗体またはリガンドをコードするDNA分子。
【0120】
実施形態45:実施形態44に記載のDNA分子を含む発現ベクター。
【0121】
実施形態46:実施形態45に記載の発現ベクター、または実施形態44に記載のDNA分子を含む宿主細胞。
【0122】
実施形態47:本発明によるリガンドまたは抗体を作出するための方法であって、実施形態46に記載の宿主細胞をインキュベーションすることを含む方法。
【0123】
実施形態48:本発明による化合物を含む医薬組成物。組成物は、場合によって、少なくとも1種の薬学的に許容される担体/賦形剤を含む。
【0124】
実施形態49:医薬品としての、本発明によるリガンドまたは本発明による医薬組成物の使用。
【0125】
実施形態50:炎症性疾患を治療するための、本発明によるリガンド、または本発明による医薬組成物の使用。
【0126】
実施形態51:RAを治療するための、本発明によるリガンド、または本発明による医薬組成物の使用。
【0127】
実施形態52:クローン病(CD)を治療するための、本発明によるリガンド、または本発明による医薬組成物の使用。
【0128】
実施形態53:潰瘍性大腸炎(UC)を治療するための、本発明によるリガンド、または本発明による医薬組成物の使用。
【0129】
実施形態54:炎症性疾患を治療する方法であって、本発明によるリガンド、または本発明による医薬組成物を、それを必要とする者に投与するステップを含む方法。炎症性疾患は、RA、クローン病または潰瘍性大腸炎であることが好ましい。
【0130】
本明細書では本発明のある特定の特徴が例示され、記載されているが、多くの改変、置換、変化および等価物が当業者にはすぐに想起されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の主旨の範囲内に入るそのような改変および変化の全てを包含することを意図していることが理解されるべきである。
【0131】
(実施例)
(実施例1)
免疫化およびハイブリドーマの生成
以下の実施例に記載の通り、高い品質の可溶性型の全長DR3を作製することは、このタンパク質の性質がシステインリッチであるので難しい。可溶性型のDR3は、高度に凝集する傾向があり、それにより重要なリガンド結合領域が遮蔽され、免疫化した際に所望の抗体応答を生じることが難しくなる。頑強な抗DR3抗体(Ab)血清力価を得るために、広範にわたる免疫化レジメンを、可溶性全長DR3タンパク質、DR3のECDの一部のみを含有するDR3タンパク質誘導体(例えば、CRD1ドメインのみを用いた免疫化のような)、およびDR3を発現している細胞(実施例3に記載の通り)いずれも免疫化のために使用して実施した。抗体レパートリーの多様性および中和性抗DR3Abの生成の尤度を増加させるために、異なるマウス系統(BALB/C、RBFおよびNMRCF1)において免疫化を実施した。一例では、BALB/Cマウスを、DR3を発現しているCHO細胞5×10
6個を用いて、不完全フロイントアジュバント(IFA)を伴い、または伴わずに、腹腔内に(IP)8回免疫化した後、IFAにおいて、精製したhDR3-Fc(実施例3参照)を用いて6回IP免疫化した。マウス血清を、DR3/hTL1A遮断抗体について、実施例4に記載の通りFACSによってスクリーニングした。DR3/hTL1A遮断Ab価を有するマウスに、DR3-mFcを用いた尾静脈への単回静脈内注射(i.v.)からなる最終的な追加免疫を受けさせた。追加免疫の3日後にマウスを屠殺し、脾細胞を、標準の電気融合手順によってX63Ag8653骨髄腫細胞と融合した。融合細胞を、96ウェルプレート中に播種し、DMEM(Invitrogen)およびFCS(Hyclone)を補充したHAT選択培地中で1週間培養した後、DR3/hTL1A遮断mAbについてスクリーニングした。
【0132】
(実施例2)
スクリーニングおよび免疫化のための細胞
膜貫通(TM)DR3を過剰発現している細胞が、細胞に基づくスクリーニングアッセイにおいて使用するため、およびマウスを免疫化するための必須のツールとして開発されてきた。
【0133】
TM DR3を過剰発現している安定な細胞株の作製は簡単ではなかった。最初に、TMおよびデスドメイン(DD)(完全なAA配列については配列番号1を参照されたい)を含む全長DR3をpcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングし、このベクターを、Ba/F3細胞をトランスフェクトするために使用した。しかし、全長DR3内のDDにより、安定な細胞株において細胞死が導かれる。活性なDDを有する全長DR3を発現させることは単に不可能であった。DR3内のDDを不活化し、それでも膜貫通DR3タンパク質を発現することができるようにするために、2つの新規の構築物を設計し、開発した。CD95の同様の突然変異型について記載されているItohおよびNagata、JBC(268)10932〜10937頁、1993による、突然変異により受容体が不活化される配列番号1における突然変異(L356N)。Screatonら、PNAS(94)4615〜4619頁、1997に従って決定される配列番号1におけるDDの欠失(ΔM339〜P417)。切断型および突然変異型の両方をpcDNA3.1にクローニングし、Ba/F3において発現させた。この結果、表面DR3を過剰発現している2つの安定な細胞株がもたらされた。フローサイトメトリー(FCM)分析から、DR3の発現レベルは、切断型のDR3を用いて開発された細胞株において最も高いことが見いだされた。しかし、それでも発現レベルはスクリーニングアッセイに使用するための細胞株には低すぎた。したがって、Lonza(Basel、Switzerland)からのGS-CHO系を切断型のDR3を発現させるために使用することができるかどうかを調査することを決定した。pcDNA3.1由来のコードcDNAをLonza発現ベクター、pEE14.4に移行した。
【0134】
安定なCHOK1SV細胞の樹立を、Lonzaの製造者プロトコールに従って実施した。CHOK1SV細胞を電気穿孔によってトランスフェクトした。トランスフェクトする前に、pEE14.4プラスミドを、AclI制限酵素を用いて消化することによって直線化した。AclIで消化したpEE14.4プラスミド10μgを、1×10
7個のCHOK1SV細胞を電気穿孔によってトランスフェクトするために使用した。細胞をT75フラスコに播いた。トランスフェクトした翌日、L-メチオニンスルホキシイミン(MSX)を、glutamax(Invitrogen)を伴わないCD-CHO培地中最終濃度50μMまで加えることによって選択を開始した。トランスフェクトした3週間後、細胞を、lympholyte-mammal(Cedarlane)を用いることによって精製し、振とうフラスコに移し、インキュベーター振とう機中、37℃、8%CO
2および125rpmで培養する。この時点から選択圧を25μMのMSXに下げた。DR3発現をFCMによって分析した。しかし、DR3発現レベルは非常に低く、蛍光活性化細胞選別(FACS)によってプールを選別して、発現レベルを上昇させることに決定した。FACSの4日後に、プールをDR3発現について、FCMにより試験し、初めてDR3発現が申し分なかった(
図2)。残念ながら、2〜3週間後にDR3発現レベルは低下し始め、細胞はもはやスクリーニングのために使用することはできなかった。
【0135】
DR3レベルを上昇させ、より安定なプールを作出するための試みにおいて、MSX選択圧を、50μMおよび100μMまで増加させることによって調査し、さらに、プールを、4×96Wプレートにウェル当たり1/2細胞でサブクローニングした。サブクローニングすることにより、FCMにより分析されたDR3発現レベルが高い2つのクローンがもたらされた。しかし、1〜3週間後に、クローンは再度発現を失い始め、不安定に見え、したがって、スクリーニングのために使用することができなかった。プールに対するMSX選択を100μMまで増加させることにより、非常に申し分のない高い発現レベルがもたらされ、さらに、これはある期間にわたって高い発現レベルを保持することができた(
図3)。したがって、スクリーニングおよび免疫化のために使用する生じた細胞株は、切断DR3をトランスフェクトし、CD-CHO+100μMのMSX中で培養したCHOK1SVである。
【0136】
(実施例3)
可溶性DR3の発現および精製
ヒトDR3は、細胞外ドメイン(ECD、残基25〜199)内に4つのシステインリッチドメイン(CRD1、CRD2、CRD3およびCRD4)を含み、細胞質ドメイン内に「デスドメイン」(DD)を含む、非常にシステインリッチなタンパク質である。Bannerら、Cell(73)431〜445頁、(1993)によると、各CRDは、典型的には、3つのジスルフィド結合を形成する6つのシステイン残基を含有する。さらに各CRDは、典型的には、TNFRスーパーファミリーの従来のメンバーにおいて観察されるモジュールA1およびB2に細分することができる(J.H.Naismithら、Trends Biochem. Sci.(23)74〜79頁、1998)。予測CRDおよびモジュールA1およびB2を有するDR3の配列が
図4に示されている。
【0137】
可溶性DR3の作製は、おそらくこのタンパク質のシステイン含有量が高いことに起因して、非常に難しかった。ヒト細胞株においてDR3のECDを組換え発現させることにより、通常、分子間ジスルフィド結合の形成に起因して大量のオリゴマーおよび高分子量複合体を含有する可溶性タンパク質の分泌がもたらされた。これらのタンパク質バッチはTL1Aと結合せず、細胞アッセイにおいて活性ではなかった。
【0138】
凝集の問題を解決するために異なる手法を取った。最初に、DR3の完全なECD(25〜199)をマウスIgG1またはヒトIgG4のいずれかのFcドメインと融合した。HEK293における一過性の作製の結果、収量は低く(<10mg/L)、凝集の程度が高かった。ゲル濾過により、予測二量体を富化することが可能になったが、収量が低く、オリゴマー形成の程度が高かったので、最初は純粋な画分を得ることが不可能であった。他の精製タグ、例えば、ビオチン化、FLAGタグまたは三量体形成ペプチド、Tenascin C(TNC)などについても試験したが、結果は改善されなかった。
【0139】
さらに、オリゴマー形成に関与するタンパク質の部分を決定するために、DR3のECDの一部のみを含有するDR3-Fc融合タンパク質を工学的に作製した。4種のタンパク質を以下の通り設計した:
DR3(CRD1)-Fc(配列番号2)
DR3(CRD1+A1)-Fc(配列番号3)
DR3(CRD1+CRD2)-Fc(配列番号4)
DR3(CRD1+CRD2+A1)-Fc(配列番号5)
【0140】
分子間ジスルフィド結合が形成され、それにより、誤って折りたたまれることは、DR3 ECDの長さが増加することと相関し、これは、おそらくシステインの数の増加を反映していた。同時に、タンパク質の発現の収量は、DR3 ECドメインの長さが増加するのに伴って低下した。ゲル濾過により、これらの構築物全てについて、主に二量体の画分を精製することが可能になったが、タンパク質には生物活性がなかった。この構築物の他に、いくつかの切断構築物およびcys-欠失構築物も、オリゴマー形成に関与する単一のシステインまたは小さな領域を正確に示すための試みにおいて作出した。しかし、関与すると思われる単一の領域または特異的なシステインはなく、DR3配列全体を可溶性型で発現させることは難しいと思われる。
【0141】
さらに、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)とDR3のCRD1との融合タンパク質を作製し、これは同型遺伝子性であった(配列番号6)。
【0142】
DR3のECD、TEV切断部位を含有するリンカーおよびヒトIgG4のFc部分を含むDR3-Fcをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において安定発現させることにより、発現レベルが上昇し、主に二量体のタンパク質(配列番号7)を単離することが可能になった。この画分は、TL1Aに誘導されるDR3シグナル伝達を測定するレポーター遺伝子アッセイにおいて、TL1AとDR3の結合について競合することができた。
【0143】
いくつかのこれらのタンパク質を、マウスを免疫化するために使用した。バッチのいくつかをさらに精製して、少量の、オリゴマーを形成していないDR3を分離した。これらのバッチを表面プラズモン共鳴(SPR)結合アッセイのために使用した。
【0144】
HEK293細胞における一過性の発現:
ベクター:
DR3タンパク質の変異体の全てを、CMVプロモーターに基づく発現ベクター(pTTベクター)を使用することによって発現させた。pTTベクターを、Yves Durocher(DurocherらNucleic Acid Research、2002)により開発されたHEK293-6E EBNAに基づく発現系において一過性に発現させるために生成する。
【0145】
細胞の維持:
HEK293-6E細胞を、25μg/mlのGeneticin(Gibco)、1%v/vの界面活性物質プルロニックF-68(Gibco)および1%v/vのペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を補充したFreeStyle(商標)293発現培地(Gibco)中、浮遊液で成長させた。細胞を、Erlenmeyer振とうフラスコに入れ、37℃、8%CO
2、125rpmの振とうインキュベーターで培養し、1ml当たり細胞0.1〜1.5×10
6個の細胞密度で維持した。
【0146】
DNAトランスフェクション:
・トランスフェクトするために使用した培養物の細胞密度は1ml当たり細胞0.9〜1.1×10
6個であった。
・細胞培養物1ml当たり1μgのDNAを使用した。
・DNAを、1μgのDNA当たり30μlのOpti-MEM培地(Gibco)に希釈し、混合し、室温(23〜25℃)で5分間インキュベートした。
・293Fectin(商標)(Invitrogen)をトランスフェクション試薬として、1μgのDNA当たり1μlの濃度で使用した。
・293Fectin(商標)を、Opti-MEM培地(Gibco)中に30倍希釈し、混合し、室温(23〜25℃)で5分間インキュベートした。
・DNAと293Fectin溶液を混合し、室温(23〜25℃)で25分間インキュベートしておいた。
・次いで、DNA-293Fectin混合物を細胞培養物に直接加えた。
・トランスフェクトされた細胞培養物を、37℃、8%CO
2、125rpmの振とうインキュベーターに移した。
・トランスフェクトした5〜6日後に、細胞培養物の上清を遠心分離によって回収し、その後、0.22μmのPESフィルター(Corning)を通して濾過した。
・可能であれば、タンパク質産生の定量分析を、ForteBio OctetシステムおよびプロテインAバイオセンサーを使用してバイオレイヤー干渉法(Biolayer Interferometry)によって実施した。
【0147】
DR3-Fcタンパク質の精製
細胞の上清を、プロテインA親和性ビーズ(MabSelect Sure;GE Healthcare)を伴うカラムに、20mMのトリス/HCl、pH8.5をバッファーとして用いて直接ローディングした。結合したタンパク質を、10mM、50mMおよび100mMのギ酸ナトリウム、pH3.5を用いて段階的に溶出させた。溶出画分を濃縮し、限外濾過によってPBSバッファーに移した。Superdex200カラム(GE Healthcare)で、PBSをバッファーとして用いてゲル濾過を行った。二量体タンパク質を含有する画分をプールし、限外濾過によって濃縮した。クロマトグラフィーのステップは全て、Akta Explorer FPLC計器(GE Healthcare)を用いて実施した。
【0148】
(実施例4)
TL1A:DR3相互作用を遮断する抗体についてのスクリーニング
マウス血清のプレスクリーニング
マウスの血清における遮断作用の程度に非常に大きな差異があったので、融合を実施する前にマウス血清を遮断作用についてプレスクリーニングすることが必須であることが分かった。
【0149】
マウスを、DR3を過剰発現している細胞株およびDR3タンパク質の両方を用いて免疫化した。異なる抗体レパートリーを有する異なるマウスを得るために、広範にわたる免疫化レジメンを実施した。全細胞免疫化は、単一抗原免疫化とは対照的に、複数抗原の注射を含む。異なる免疫化レジメンにより異なる抗体レパートリーが生じるので、全細胞免疫化を用いる場合はさらなる免疫化の最適化が必要であることが以前に示されている。マウス血清を遮断作用についてスクリーニングすることは、融合のためのマウスを選択するための重要なツールになっている(
図5)。
【0150】
ハイブリドーマの上清のスクリーニング
TL1Aの結合を遮断する能力を有するDR3に対する抗体を選択するために、スクリーニング計画は以下の通りであった:
【0151】
DR3特異的抗体についての一次試験として、ハイスループットな画像に基づくアッセイをセットアップした。このアッセイは、FMAT系において、DR3をトランスフェクトしたCHO細胞に結合する能力についてスクリーニングすること、および野生型細胞に対して対比スクリーニングすることによって行った(DR3細胞株の生成については実施例2を参照されたい)。
【0152】
細胞調製物50μl(50μl中、ウェル当たり細胞50000個)を、力価決定において希釈したモノクローナル抗体または希釈していないハイブリドーマの上清25μlと一緒に96ウェルプレート(Greiner、cat番号65021)に対して標識し、4℃で1時間インキュベートすることによってアッセイを行った。インキュベートし、洗浄(5%のウシ胎仔血清を伴うPBSバッファー、200gで5分間遠心分離)した後、ウェル当たり二次抗体50μl(PBSバッファー中1:400に希釈)を加え、さらに1時間、4℃でインキュベートした。RBFマウスまたはBalb/cマウスJacksons # 115-136-071 1:400からスクリーニングする場合にはAPC抗マウスを使用した。
【0153】
最終的に、洗浄し、黒色FMATプレートに移した細胞を、PerkinElmer Envision Turbo(FMAT)で蛍光を測定して読み取った。
【0154】
最初のスクリーニングの次の部分は、DR3リガンド(TL1A)の結合を遮断する能力を試験することであった。これは、選択されたDR3特異的なハイブリドーマの上清に対して、陽性ハイブリドーマ上清を、TL1A-flagタグの、DR3でトランスフェクトされた細胞への結合を遮断する能力についてスクリーニングすることによって行った。対照として、トランスフェクトしていない細胞の無関連の抗体または上清を使用した。
【0155】
FCMに基づく阻害アッセイを、力価決定において希釈したモノクローナル抗体または希釈していないハイブリドーマの上清50μlをDR3陽性細胞(ウェル当たり細胞50000個)に加え、4℃で1時間インキュベートすることによって行った。インキュベートし、洗浄(5%のウシ胎仔血清を伴うPBSバッファー、200gで5分間遠心分離)した後、TL1A-flagタグ(総体積50μlの濃度)を96ウェルプレート(Greiner、cat番号65021)に加えた。再度インキュベートし、洗浄した後、二次抗体(Perkin ElmerからのAPC抗FLAGタグab、最終濃度5μg/ml)(PBSバッファー中に1:400希釈)を加え、さらに1時間、4℃でインキュベートした。
【0156】
平行して、抗体の作動性機能または拮抗性機能を検出するために、実施例5に記載のレポーター遺伝子アッセイを実施した。
【0157】
社内で作製したTL1AはTL1Aの成熟細胞外ドメインである。TL1Aは、N末端FLAG-HIS-TEVタグを含有する。FLAGタグはFACS/FMATでの検出のために使用し、HISタグは精製のために使用し、また、TEV部位により、場合によってTEVを切断し、タグを除去することが可能になる。E.coliにおいて産生させたTL1AがR&D Systemsから市販されている。社内TL1AはHEK細胞において産生させ、潜在的なN-グリコシル化部位を攪乱するための2つのN→Q点突然変異を含有した。組換えカニクイザルTL1Aを同様に産生させた。
【0158】
(実施例5)
DR3レポーター遺伝子アッセイ
Chinnaiyanら1996(Science 1996年、274巻、5289号、990〜992頁)により、DR3はNFカッパBを介してシグナル伝達し、MCF7細胞においてDR3が異所性に発現されると、アポトーシスを誘導することが報告された。我々は、NFカッパBシグナル伝達をレポーターとして利用すること、およびDR3発現の減少を、アポトーシス性の細胞を回避するために使用することを望んだ。
【0159】
HEK293細胞株を、ヒトDR3発現プラスミドおよびNFカッパBルシフェラーゼレポータープラスミドで安定にトランスフェクトした。DR3発現プラスミドは、pcDNA3.1(hygro)+に基づき、SV40プロモーターによって調節されるハイグロマイシン耐性遺伝子を含有し、CMVプロモーターを除去し、2つの熱ショックエレメント(HSE)、最小c-fosプロモーターおよびヒトDR3コード配列を挿入した。レポーターは、pGL3-basicに基づき、Luc+応答は、3つのNFカッパB部位および最小インターフェロンプロモーターによって調節される。SV40プロモーターによって調節されるネオマイシン耐性遺伝子をベクターに挿入した。
【0160】
DR3/HEK293レポーター遺伝子細胞は、I5と称され、40ng/mlのTL1A(R&D Systems)による刺激に対するルシフェラーゼ活性において20〜25倍の応答を生じる。TL1A、作動性抗体および拮抗性抗体/Fabの作用を検出する手順は以下の通りである。I5細胞を、ポリDリシンでコーティングしたblack view96ウェルプレートにウェル当たり細胞20000個で播種する。翌日、TL1Aまたは培地をウェルに加え、4時間インキュベートした後に、Steady-GLOキット(Promega)を使用し、TopCount NXT(Perkin Elmer)計器によって発光をモニターする。中和作用を決定するために、抗体またはFabを細胞と一緒に15分間プレインキュベートした後に、TL1Aを加える。
【0161】
ハイブリドーマの上清をスクリーニングするために、全ての試料を少なくとも2連で、0ng/ml、10ng/mlのTL1Aおよび50ng/mlのTL1Aのいずれも使用して試験した。
【0162】
(実施例6)
TL1A:DR3相互作用を遮断する抗体およびFab
DR3に対する特異性を有し、TL1AとDR3の相互作用の遮断について試験陽性であるモノクローナル抗体(mAb)を同定した。DR3を発現している細胞を用いて一次的に免疫化したマウスから、少なくとも50回の融合後に合計数百の特異的なDR3 mAbが選択された。DR3特異的クローンのTL1A阻害/遮断についてのさらなる試験により74クローンが得られた。
図6は、DR3抗体を遮断する陽性抗体のいくつかを示す。そのような遮断作用を有さない2つの陽性のDR3特異的クローンも包含される。
【0163】
mAbの全てを、そのmAbのFab型と一緒にさらなる試験のために選択した。Table 1(表1)には、実施された試験が要約され、mAbおよびFab番号付けとハイブリドーマクローン番号付けとの間の相関が提供されている。
【0165】
抗体0072、0073および0076は、TL1A:DR3相互作用を用量依存的に遮断することが見いだされた。対応するFab分子(0087、0088および0089)は、この能力を同様に用量依存的に保持した(
図7)。対応して、TL1A:DR3相互作用を阻害することができないDR3結合性mAbに由来するFabは、同様にこの能力を有さなかった(化合物0077および0091、
図7)。
【0166】
Table 2(表2)は、Fab特性の例を示す:全体で、46種のFabを結合性、TL1A-DR3相互作用を遮断する能力、TL1Aに誘導されるT細胞活性化、結合性(さらなる詳細は他の実施例)について特徴付けた。いくつかの選択されたFabが対照と一緒に表に示されている:
【0168】
(実施例7)
DR3抗体およびそれに由来するFabの機能的作用
DR3に対して生じ、TL1AとDR3の相互作用の遮断について試験陽性であるモノクローナル抗体(mAb)はDR3シグナル伝達の潜在的な中和剤であった。
【0169】
ヒトDR3レポーター遺伝子細胞株を、抗体と一緒に15分間インキュベートした後、TL1Aで刺激したか、または培地を加えた。抗体は、非常に高い濃度でのみ、TL1A作用をそれほど大きくなく中和し、対照的に、低用量ではそれ自体が効率的な活性化因子であった。
【0170】
Table 3(表3)は、0072抗体の作用を示す。TL1Aの添加を伴わない0072の活性化プロファイルは釣鐘形であり、これは、二価抗体が、受容体と架橋結合することによってDR3を活性化することを示している。活性化は、ある特定の濃度まで増加し、そこでTL1A媒介性活性化を含めたDR3の活性化が減少する。抗体の濃度がそれよりも高いと、全てのパラトープがもはや受容体によって占有されないが、抗体はなおTL1Aの結合および活性化を遮断し、阻害作用が見られる。DR3の活性化がTL1Aに特異的であることを強調するためにTL1A特異的抗体MAB7441(R&D Systems)を含める。
【0172】
これらのデータに基づいて、DR3に対する親和性を有する一価抗体、例えば、Fab(断片ab)は、おそらく受容体をクラスター化しないが、それでもTL1Aの結合を阻害する可能性があるという仮説を立てた。抗体をパパインで切断し、Fab断片を精製した。TL1AによるDR3の活性化を阻害するFab断片の能力をヒトDR3レポーターアッセイにおいて試験した。4種の異なるDR3抗体由来のFab断片を試験し、それらのうち3種(0072、0073および0076、Fab 0087、0088、0089に対応する)がTL1Aの活性化を遮断することができた(Table 4(表4))。
【0174】
第4のFab 0097(mAb 0077由来)は阻害せず、これは、mAb 0077がTL1AとDR3の結合を遮断しないことと一致する(
図6および7)。Table 5(表5)は、4種のmAb(-0072、-0073、-0076および-0077)の、TL1Aの不在下でDR3遺伝子レポーターアッセイを活性化する能力を示し、ここでも同様に-0077が非常に弱い作動薬であることが証明されている。
【0176】
組換えFabを「I5」ヒトDR3レポーター細胞株アッセイにおいて試験し、40マイクログラム/mlのTL1Aを使用した際のIC50を決定した(Table 6(表6)を参照されたい)。特許WO2011/106707からの11H08抗DR3-Fabの2つの型、H1L2およびH1L4も含めた。H1L2(0227-0000-0230)およびH1L4(0227-0000-0231)のIC50はそれぞれ3.7nMおよび2.8nMであり、0227-0000-0228はその10分の1であり、320pMであった。
【0178】
カニクイザルDR3レポーター細胞株を、ヒトレポーター細胞株と同様に生成した。安定なカニクイザルDR3レポーター細胞株をLyda20と名付け、これは、40ng/mlのヒト可溶性TL1A(0227-0000-0011)またはカニクイザル可溶性TL1A(0227-0000-0141)を加えることによって10〜14倍の応答を生じる。Table 7(表7)に、0123および0228によるカニクイザルDR3の活性化のデータが示されている。
【0180】
マーモセットDR3レポーター細胞アッセイは、一過性のアッセイであり、2つの熱ショックエレメントおよび最小cFosプロモーターによって調節されるNFカッパBレポータープラスミドおよびマーモセットDR3発現ベクターを、FuGene 6トランスフェクション試薬(Roche)を使用してHEK293細胞にトランスフェクトし、2日後にTL1Aで刺激した。Table 8(表8)に、3つの種由来のDR3の活性化がFabの選択のために示されている。
【0182】
27F44抗体に由来するFab分子は、Table 8(表8)に示されている通り、一過性のカニクイザルDR3レポーター細胞において試験したところ、99nMおよび73nMの非常にわずかなIC50を有している。しかし、一過性のマーモセットDR3レポーター細胞アッセイでは、一過性のヒトDR3アッセイと同様のIC50値が示された。
【0183】
11H08/H1L2(0227-0000-0230) Fabおよび11H08/H1L4(0227-0000-0231) Fabの一過性のヒトDR3レポーターアッセイにおけるIC50は4.2nMおよび4.3nMであり、一過性のカニクイザルDR3レポーターアッセイにおけるIC50は3倍高い14nMおよび13nMであり、最終的に、一過性のマーモセットDR3レポーター遺伝子アッセイにおけるIC50は50倍高い219nMおよび377nMである。全ての数字がTable 8(表8)に列挙されている。
【0184】
(実施例8)
フローサイトメトリーによる、活性化されたヒト細胞との結合
Copenhagen University Hospitalからの正常な健康なボランティアからバフィーコートを得た。CD4+T細胞を磁気ビーズ分離によって単離した。細胞を、2ng/mlのIL-12、50ng/mlのIL-18および100ng/mlのTL1A(Novo Nordisk A/Sで作製されたFlag-HIS-TEV-TL1A)を用いて活性化し、5日間培養した。5日目に、細胞を10μg/ml、5μg/ml、1μg/ml、0.5μg/ml、0.1μg/mlまたは0.0001μg/mlの抗DR3 mAbクローン0072、0073もしくは0077、またはFab断片クローン0087、0088および0091で染色した。二次PEコンジュゲートヤギ抗マウス(H+L)を検出のために使用した。
【0185】
結果:モノクローナルIgGクローン0077、およびその対応するFabクローン0091では、細胞との弱い結合のみが実証された。モノクローナルIgGクローン0072および0073は、サイトカイン活性化CD4+T細胞との強力な結合を示し、1μg/ml以下の濃度で最大の結合が観察された。対応するFabクローン(0087および0088)は、同様の効力でサイトカイン活性化細胞と結合したが、結合飽和時にはわずかに低いMFI値を記録した。二次(検出)抗体(抗IgG重鎖および軽鎖)は、全長のIgG抗体クローンのFab部分およびFc部分のどちらにも結合したが、FabクローンのFab部分にしか結合しなかったので、Fab処理した細胞と比較して、IgG処理した細胞の実測MFI値が大きいことが予測された(Table 9(表9))。
【0187】
機能アッセイ:
CD4+T細胞を、CD4 Rosettesep(Stem cell technologies)およびHistopaque(Sigma)を使用して、磁気ビーズ分離によってバフィーコートから単離した。T細胞(96ウェルプレート中、ウェル当たり細胞2×10
5個)を、2ng/mlのIL-12、50ng/mlのIL-18および100ng/mlのTL1A(Flag-HIS-TEV-TL1A;Novo Nordisk)を用いて、抗TL1A(1000ng/ml;MAB7441;RnDSystems)およびDR3 mAbまたはDR3 Fab(5μg/mlまたは10μg/ml)を伴った状態および伴わない状態で、5日間活性化した。使用したDR3 mAbは、0072、0073および0077であった。使用したDR3 Fabは、0087、0088および0091であった。細胞を、5日間活性化した後に[
3H]チミジンでパルスし、16時間後に回収した。あるいは、細胞を3日間活性化し、その後のサイトカイン産生を測定した(実施例6、15、18を参照されたい)。
【0189】
TL1Aで同時刺激することによってT細胞の増殖が3倍に増加した。このTL1A依存性の増加は、抗TL1A中和対照抗体と共インキュベーションすることによって遮断された。抗DR3 mAbの全てならびにFab 0091は、10μg/mlで増殖をわずかに阻害したが、Fab 0087および0088は、アッセイにおいて用いた最低濃度でさえも増殖を完全に遮断した。結論として、Fab 0087および0088は、CD4陽性T細胞の増殖のTL1A依存性同時刺激の下方調節において非常に効率的である。
【0190】
(実施例9)
マウス27F16A1 mAb、27F44A2 mAbおよび28F26A3 mAbのクローニングおよび配列決定
マウスの抗DR3抗体の重鎖配列および軽鎖配列を、ハイブリドーマ:27F16A1、27F44A2および28F26A3からクローニングした。QiagenからのRNeasy-Mini Kitを使用してハイブリドーマ細胞から抽出した全RNAを、cDNAを合成するための鋳型として使用した。ClontechからのSMARTer(商標) RACE cDNA増幅キットを使用して、5'-RACE反応でcDNAを合成した。その後のHC配列およびLC配列の標的増幅を、Phusion High-Fidelity PCR Master mix(Finnzymes)およびフォワードプライマーとしてSMARTer(商標) RACEキットに含まれるuniversal primer mix(UPM)を使用してPCRによって実施した。
【0191】
PCR産物を、ゲル電気泳動によって分離し、GE Healthcare Life SciencesからのGFX PCR DNA and Gel Band Purification Kitを使用して抽出し、InvitrogenからのZero Blunt TOPO PCR Cloning Kitおよび化学的コンピテントなTOP10 E.coliを使用して、配列決定のためにクローニングした。選択されたコロニーに対して、Applied BiosystemsからのAmpliTaq Gold Master Mixおよび13uni/M13revプライマーを使用してコロニーPCRを実施した。コロニーPCR精製を、ExoSAP-IT enzyme mix(USB)を使用して実施した。Eurofins MWG Operon、Ebersberg、Germanyにおいて、T3/T7配列決定プライマーのいずれかを使用して配列決定を実施した。
【0192】
配列を解析し、VectorNTIプログラムを使用してアノテートした。キットおよび試薬は全て製造者の説明書に従って使用した。ハイブリドーマ27F16A1および27F44A2から、単一の独特のマウスLCカッパ型および単一の独特のマウスHC、サブクラスIgG1が同定された(配列番号8〜11)。28F26A3からは、単一の独特のマウスLCカッパ型および単一の独特のマウスHC、サブクラスIgG2aが同定された(配列番号12〜13)。リーダーペプチド配列は含まれていない。
【0193】
BLAST検索
翻訳された抗DR3 27F16A1、27F44A2および28F26A3のVLおよびVHのアミノ酸配列をクエリ配列として使用した。BLASTpプログラムを使用して、GeneSeqP特許データベース(外部データベースからインポートした配列を伴うが、外部パーティーへのアクセスは伴わない内部データベース)内の配列に対してBLAST検索を実施した。最高の同一性スコア100の中で、VHについての最高の同一性スコアは87.4(28F26A3)であり、VLについての最高の同一性スコアは97.3(27F44A2)であった。結論として、抗DR3のVH配列およびVL配列は新規の配列である。
【0194】
(実施例10)
フローサイトメトリーによる、抗体結合の評価
ヒトCD4陽性T細胞を、CD4 Rosettesep(Stem cell technologies)およびHistopaque(Sigma)を使用してバフィーコートから精製した。T細胞を、T75フラスコ中1:1比率のCD3/CD28 Dynabeads(Invitrogen)を用いて、10%のfcsを補充したRPMI中1ml当たりCD4 T細胞2mioで4日間刺激した。磁石を使用してビーズを除去し、細胞を2回洗浄した後、500000細胞/染色に対して抗体の力価を決定した。ヤギ抗マウスフィコエリトリン(Jackson ImmunoResearch)と一緒にインキュベートした後に結合飽和を測定し、その後、細胞を、BD LSRIIでフローサイトメトリーによって分析した。全ての抗体が3μg/mlで飽和に達した。蛍光強度中央値がTable 11(表11)に示されており、染色指数(MFI Ab/MFIアイソタイプ)がTable 12(表12)に示されている。Ab 0070、0072、0073および0076は、0071および0077よりも強力な結合が実証された。
【0197】
全ての抗体のアリコートを、Phycoerythrin labelling kit lightening link(Innova Biosciences)を使用してコンジュゲートした。CD4 T細胞を上記の通り刺激し、磁石を使用してビーズを除去した後に、細胞を洗浄した。標識していない抗体を0μg/mlから最終濃度50μg/mlまで力価決定し、細胞に加えた後、4℃で30分インキュベートした。細胞を洗浄し、直接標識した抗体を2μg/mlで加える。30分インキュベートした後、細胞を洗浄し、フローサイトメーターにかけた。標識した抗体および標識していない抗体の組合せの全てを試験し、蛍光強度中央値を記録した。標識した抗体の結合と競合する標識していない抗体を、結合性として同じビンに群分けした。
【0198】
ab 0070、0072、0073、0076のみが、それらをビンに入れるのに十分に活性化T細胞を染色することができた。Table 13(表13)に示されている通り、0070、0072、0073、0076は互いに競合することができ、したがって、同じビンに群分けされる。大概、これらのmAbは同じエピトープに結合する、エピトープが重複する、または立体障害に起因して同時に結合することができない。
【0200】
(実施例11)
抗体およびFab断片のSPR分析
DR3の異なるドメインへの結合
DR3の細胞外部分は、DR3のアミノ末端部分に位置し、4つのTNF受容体システインリッチドメインで構成される。ヒトIgG4のFcドメインと融合した長さが増加したDR3の細胞外ドメインの一部を含有するいくつかの融合タンパク質を発現させ、精製した。SPR分析のために使用したDR3タンパク質は、オリゴマー形成した材料を排除するために精製しておいた。これらのタンパク質を、アミンカップリング化学を用いてCM5センサーチップに固定化した。0070、0072、0073および0076と称される抗DR3抗体の、異なるDR3-Fc融合タンパク質との結合を、Biacore T100計器(GE Healthcare)でプラズモン表面結合測定によって試験した。これらの抗体の全てが、FACSアッセイにおいて、TL1AとDR3の結合を阻害する。これらの4種の抗体は、DR3のアミノ酸25〜71で構成されるアミノ末端CRD(配列番号2)のみを含有する組換えDR3(CRD1)-Fcタンパク質に結合した。TL1AとDR3の結合を阻害しなかった別の抗体0077は、DR3(CRD1)-Fc(配列番号2)には結合しなかったが、DR3のアミノ酸25〜90を含有するDR3(CRD1+A1)-Fc(配列番号3)には結合し、これは、そのエピトープまたはそのエピトープの少なくとも一部が、アミノ酸77から90の間に位置することを示している。
【0201】
Fab断片のいくつかについても同じ分析を実施した。Fab断片0123、0124、0130、0143、0152、0219および0228は、全てDR3(CRD1)-Fc(配列番号2)に結合した。
【0202】
Fab断片230および231とDR3-Fcの結合もSPRによって試験した。どちらのFabも、DR3の完全な細胞外ドメインを含有するDR3(ECD)-Fc(配列番号7)には結合したが、DR3(CRD1)-Fc(配列番号2)にもDR3(CRD1+A1)-Fc(配列番号3)にも結合せず、これは、これらの2つの先行技術のFab断片は、DR3 CRD1ドメインに結合しないことを示している。
【0203】
抗DR3 Fab断片の結合カイネティクスのSPRによる測定
Biacore T200計器(GE Healhtcare)で実験を実施し、Biacore T200 Evaluation Softwareを使用して解析した。抗ヒトIgG抗体(GE HealthcareからのヒトIgG捕捉キット)を、製造者の説明書に従ってCM5センサーチップの全てのフローセル上に固定化した。0.1%のヒト血清アルブミンを伴うHBS-EP(GE Healthcare)をランニングバッファーとして使用した。DR3(CRD1)-Fc(配列番号2)を14RUおよび45RUの間の低表面密度でチップ上に捕捉した。Fab断片を90nMから0.037nMの間の濃度まで希釈し、その後、360秒にわたって注入した。標準の解離時間は900秒であったが、親和性が高いので、正確なk
d値を決定するために、最高濃度に対して最大13000秒まで延長した解離時間を適用した。25℃、30μL/分から60μL/分の間の流速で結合曲線を測定した。
【0204】
3MのCaCl
2を2×20秒用いて再生を行った。生のデータを、捕捉したリガンドおよびバッファーブランクを伴わずに参照フローセルからのシグナルを引き算することによって二重に参照した。Biacore T200 Evaluation Software(GE Healthcare)を使用して1:1結合モデルにあてはめることによってカイネティクスパラメータの決定を実施した。DR3(CRD1)-Fc(配列番号2)の3つの異なる表面密度から得られる平均値を算出し、それがTable 14(表14)に示されている。
【0206】
Fab競合アッセイ
Biacore T200計器(GE Healthcare)で実験を実施した。抗ヒトIgG抗体(GE HealthcareからのヒトIgG捕捉キット)を、製造者の説明書に従ってCM5センサーチップの全てのフローセル上に固定化した。0.1%のヒト血清アルブミンを伴うHBS-EP(GE Healthcare)をランニングバッファーとして使用した。DR3(ECD)-Fc(配列番号7)を、700RUから1200RUの間の表面密度で捕捉した。Fab断片を20μg/mLの濃度で使用した。2つのFab断片の二重注入を、それぞれ300秒および150秒にわたって実施し、その後、3MのCaCl
2を2×20秒用いて再生した。Fab断片の結合応答を、Scrubber(BioLogic Software)を用いて解析した。
【0207】
DR3(ECD)-Fcに同時に結合できなかったFab断片は、同じエピトープビンに属するとみなした。Table 15(表15)に示されている通り、Fab断片124、130、143および228は全てCRD1ドメインを対象とし、同じエピトープビンに入る。同様に、Fab断片230および231は同じCDRドメインを有し、同じく、CRD1とは異なる同じエピトープビンに属する。Fab断片148および163は他のいずれのFabとも競合せず、したがって、別々のエピトープビンに入る。Fab断片148は、2.抗体として注入した場合、124、130、143および228と競合せず、これは、148が異なるビンに属することを示している。しかし、148が最初に結合した場合、130、143または228のいずれもがもはや結合せず、これは、他のFab断片の結合を妨げるDR3-Fcの立体障害またはコンフォメーションの変化のいずれかがあることを示唆している。
【0209】
競合アッセイ
Table 16(表16)に示されている通り、Fab断片228、231、230および148を、0107(0228のMab)および0121(148のMab)の、Mabの、DR3を発現している細胞との結合を遮断する能力についてFACSで試験した。Fab断片230および231は、Mabのいずれとも競合することができず、Mab 017およびMab 0121と同時に結合することができる。
【0211】
(実施例12)
DR3の突然変異誘発によるFab-0228のエピトープマッピング
ヒトDR3のCRD1内のどのアミノ酸が-0123 Fabとの相互作用に関与するかを決定するために、数種のDR3突然変異体を生成した。3つの突然変異、R29Q、I43NおよびL45Vを部位特異的突然変異誘発(Quikchange、Stratagene)によって作出した。突然変異したDR3発現プラスミドおよびNFカッパB-Lucレポータープラスミドを、HEK293細胞に一過性にトランスフェクトし、細胞を抗DR3抗Fab-0228と一緒に短時間プレインキュベートし、その後、ヒトTL1Aを用いて4時間にわたって刺激した。ルシフェラーゼ活性を、Steady-GLO(Promega)を使用することによってアッセイし、TopCount NXT(Perkin Elmer)でモニターした。R29Qは、ヒト野生型よりもわずかによく中和したが、I43N、L45Vの両方および複合突然変異体I43N/L45Vは、はるかに低い効率で中和した(Table 17(表17)を参照されたい)。
【0212】
抗Fab-0123についても試験し、順位は、-0228と同様であった;R29Q>WT>L45V>I43N>I43N-L45V。したがって、残基I43およびL45は、0228のDR3に対する結合親和性を維持するために非常に重要である。したがって、これらの残基は大概、結合性エピトープの一部である。対照的に、R29は、この残基を突然変異させると親和性が維持され、さらにはわずかに改善されるので、0228のDR3への結合のために必須ではないと思われる。しかし、この位置は0228の結合に影響を及ぼすので、R29は結合性エピトープにとって構造的に重要である。
【0214】
(実施例13)
抗DR3のヒト化
0072の配列を、ハイブリドーマ27F44A2のクローニングから得た。本実施例で使用される番号付けは全て、Kabat番号付けスキームを指す。
>0072VH(CDRが太字で示されている)(配列番号10)
EVKLVESGGGLVKPGGSLKLSCSASGFAFSNYDMSWVRQTPEKRLEWVAAFSSDGYTFYPDSLKGRFTISRDNARNTLYLQMSSLGSEDTALYCCARHADYANYPVMDYWGQGTSVTVSS
>0072VL(CDRが太字で示されている)(配列番号11)
DIVLAQSPASLLVSLGQRATISCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGQPPKLLIYLASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDAATYYCQHSRELPLTFGAGTMLELKR
【0215】
0072の配列解析により、ヒト化の間に除去しなければならない重鎖の91位の遊離のシステインが示されている。
【0216】
0072の3Dモデルを、MOE[www.chemcomp.comから入手可能]の標準の技法を使用して組み立て、有効なCDR領域の4.5Åの範囲内の全ての残基(VH:31〜35B、50〜58、95〜102;VL:24〜34、50〜56、89〜97)を、遮蔽残基と定義した。遮蔽残基は全て、CDR内の結合を持続させるために潜在的に重要である。
【0217】
遮蔽残基は、重鎖については2位、4位、27〜37位、47位、50〜59位、69〜71位、78位、91〜103位、軽鎖については3〜5位、7位、23〜36位、46〜60位、62位、65位、67位、69〜71位、87〜98位を含む。
【0218】
生殖系列検索および手動の検査を用いて、VH3_13およびJH4を、重鎖についての適切なヒト生殖系列組合せとして同定し、VKI_02およびJK4を、軽鎖についての適切なヒト生殖系列組合せとして同定した。
【0219】
ここで、ヒト化を以下の規則に従って実施することができる:
- 遮蔽の外側の残基はヒトとみなす。
- 遮蔽の内側およびKabat CDRの内側の残基はマウスとみなす。
- マウス/生殖系列コンセンサスを有する遮蔽の内側およびKabat CDRの外側の残基は、コンセンサス配列とみなす。
- マウス/生殖系列差異を有する遮蔽の内側およびKabat CDRの外側の残基は、潜在的な復帰突然変異に共する。
【0220】
0072の有効なCDR領域を生殖系列に移植することにより、0072、hz0072の基本的なヒト化構築物を形成する。
1. >hz0072VH(配列番号28)
2. EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYDMSWVRQATGKGLEWVSAFSSDGYTFYP
3. GSVKGRFTISRENAKNSLYLQMNSLRAGDTAVYYCARHADYANYPVMDYWGQGTLVTVSS
4.
5. >hz0072VL(配列番号29)
6. DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLASNLES
7. GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSRELPLTFGGGTKVEIK
【0221】
マウスCDRと比較した唯一の差異はCDR_H2にある。
【0222】
遮蔽残基における0072とhz0072との間のいかなる不一致によっても、潜在的な復帰突然変異が創出され、一覧としては以下が挙げられる。
hz0072VH:T28A、S49A、Y91C
hz0072VL:Q3V、M4L、T5M、S60A
【0223】
全ての潜在的なヒト化mAbを調査するために、上記の突然変異体の組合せの全てを作製する必要がある。
【0224】
Table 18(表18)に列挙されているFabタンパク質を、HEK293 6E細胞において発現させ、各変異体の発現レベルをSDS-PAGEゲルによって評価して比較した。Table 18(表18)の結果により、重鎖の部位91に生殖系列Tyrを含有する変異体の全て(化合物0169、0170および0171)で、この部位に他の置換え、Cys(化合物0172)またはSer(化合物0173または0174)のいずれかを含有する変異体と比較して発現レベルが劇的に改善されたことが示された。同様にTable 18(表18)から、軽鎖の部位4におけるヒト型のMetまたはマウス型のLeuは発現レベルに対する明白な作用を有さなかった。これにより、重鎖のY91が、完全に移植された型の0072の発現レベルを改善するために欠かせないことが示された。
【0226】
復帰突然変異の選択
復帰突然変異を挿入することの潜在的な利点を、発現、効力および親和性スクリーニングに基づいて、ならびに生物物理学的な特徴付けによって評価した。
【0227】
発現パターン:種々の復帰突然変異(BM)を含む種々のヒト化型の0072の発現レベルをHEK293-6Eにおいて一過性に評価した(HEK293-6Eにおける一過性の発現については実施例3を参照されたい)。
【0228】
hz0072に加えて、以下のBMを発現に関して個別に評価した:
LC:T5AおよびS60A
HC:T28AおよびS49A
【0229】
実験は3連で実施した。細胞を、トランスフェクトした後5日間成長させた。培地を回収し、forteBIO's Octetによって、プロテインGセンサーを使用して発現レベルを測定した。
【0230】
結果は、HCにおけるBM S49Aにより、hz0072の発現と比較して約2倍の増加がもたらされたことを示している。他のBMはいずれも、発現レベルを上昇させる力を有さなかった(Table 19(表19))。
【0232】
生物物理学的な特徴付け
ヒト化Fabの熱安定性を、示差走査型蛍光定量法(DSF)を使用して測定した。DSFはMyiQ Real-Time PCR検出システム(Biorad Laboratories, Inc)を使用して実施した。pH7.4、最終濃度0.3mg/mlのPBS中の試料を密閉した96ウェルPCRプレートに入れ、色素Sypro Orangeの2000倍希釈した原液を用いてタンパク質アンフォールディング転移をモニターした。蛍光強度を励起/発光波長:480/575nmで測定した。Table 20(表20)は、ヒト化Fabの熱安定性を示す。結果は、復帰突然変異を有する2つのFab(228および229)が71℃において同じ熱安定性(Tm)を有したが、復帰突然変異を有さないヒト化Fab(227)は66℃で熱安定性が低下したことを示す。
【0234】
生物物理学的評価を用いたIgG4骨格の選択
ヒト化FabのIgG1アイソタイプおよびIgG4アイソタイプを、pH7.4、PBS中3mg/mlでBioanalyserを使用して測定して、断片化パターンを調べた。断片化パターンを調べるためにAgilent 2100 Bioanalyzerを用いた。キットはAgilent Protein 230であり、使用したマーカーは7つのピークを伴うProtein 230 Ladderであった。試料2μl、Mill-Q水2μl、試料バッファー2μlおよび0.5MのN-エチルマレイミド(NEMをCH3CNに溶解させた)1μlを用いて非還元試料を調製した。全ての試料を最大5分間100℃まで加熱した。
【0235】
Table 21(表21)は、非還元条件でのFabの遊離のLCの組込み量のBioanalyserデータを示す。結果は、非還元条件において、IgG4 Fabの全てが、IgG1 Fabと比較して少ない遊離のLCを有することを示す。
【0237】
上記の大規模な効力および親和性スクリーニング、発現解析および安定性試験の後に、最終的なヒト化候補として、以下の配列を有するhz0072VH S49A、hz0072VLのIgG4型を選択した:
8. >hz0072VH_S49A(配列番号16)
9. EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYDMSWVRQATGKGLEWVAAFSSDGYTFYP
10. GSVKGRFTISRENAKNSLYLQMNSLRAGDTAVYYCARHADYANYPVMDYWGQGTLVTVSS
11. >hz0072VL(配列番号17)
12. DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLASNLES
13. GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSRELPLTFGGGTKVEIK
【0238】
この候補は、可変ドメイン内に遊離のシステインを有さない。
【0239】
(実施例14)
組換えFab断片の精製:
組換えFab断片を、Akta Explorer FPLCシステム(GE Healthcare)を使用して、クロマトグラフィーのステップによって精製した。組換えマウスFabを含有する細胞培養物の上清を、伝導率を2mS未満に低下させるために希釈した。Fab断片の理論的なpHに応じて、陰イオン交換クロマトグラフィーまたは陽イオン交換クロマトグラフィーのいずれかを、MonoQカラムまたはMonoSカラム(GE Healthcare)を使用して実施した。Fab断片を、5から8.5の間のpH値、低イオン強度のバッファー中、カラムに結合させ、最大1MのNaClの塩勾配を用いて溶出した。Superdex200カラム(GE Healthcare)、およびバッファーとしてPBSを用いてゲル濾過を実施して、オリゴマーFab複合体を除去した。
【0240】
ヒトカッパ免疫グロブリン軽鎖の定常部分を含有するキメラFab断片をKappaSelect(GE Healthcare)を製造者の説明書に従って用いてアフィニティー精製によって精製し、その後、ゲル濾過して高分子量複合体を除去した。
【0241】
mAbをパパインにより切断することによるFabの生成
Fab断片を、Pierce Fab Preparation Kit(Thermo Scientific)を製造者の説明書に従って使用してmAbを切断することによって生成した。いくつかの場合には、Superdex200カラム(GE Healthcare)、およびバッファーとしてPBSを用いたゲル濾過を実施して、高分子量形態を除去した。
【0242】
(実施例15)
一次ヒトT細胞からのサイトカインの放出または一次ヒトT細胞の増殖
CD4 Rosettesep(Stem cell technologies)およびHistopaque(Sigma)を使用して、磁気ビーズ分離によってバフィーコートから単離されたCD4+T細胞を、TCR活性化の不在下で、サイトカインIL-12(2ng/ml)、IL-18(50ng/ml)を用いて、100ng/mlのTL1A(Flag-His-TEV-TL1A;Novo Nordisk)を伴った状態および伴わない状態で刺激した。T細胞の増殖およびサイトカインの放出を測定した。48時間にわたって刺激したCD4+T細胞(ウェル当たり細胞2×10
5個)からの上清を回収し、サイトカインの放出について、Bioplexによって分析した。5日後にT細胞の増殖を測定した。
【0243】
IL-12(2ng/ml)、IL-18(50ng/ml)および100ng/mlのTL1A(Flag-His-TEV-TL1A;Novo Nordisk)で処理したCD4+T細胞では、IL-12/IL-18で処理したT細胞と比較してT細胞の増殖の6倍の増加が実証された。0123 Fabおよび0124 Fabは、0.16μg/mlのFabの濃度ですでに、誘導されたT細胞の増殖を完全に遮断したが、対応するmAb 0072および0108は、T細胞の増殖に影響を及ぼさなかった(
図8)。
【0244】
放出されたサイトカインIL-6、IFNγ、GM-CSFおよびTNFαは全て、IL-12/IL-18で処理したCD4+T細胞によるTL1Aによって48時間後に誘導された。TNFαは、抗DR3 Fab 0124によって、DR3結合性非遮断Fab 0091と比較して有意に(p=*)遮断された(Table 22(表22))。
【0246】
(実施例16)
脂質部分とFabのコンジュゲート
NAP-25カラム、cat番号17-0852-02、GE Healthcare製
Hitrap Q-sepharose FFカラム(コード:17-5156-01)、GE Healthcare製
TSPP:トリフェニルホスフィン-3,3',3''-トリスルホン酸三ナトリウム塩水和物、cat番号39538、Alfa Aesar製
TDSPP:ビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二水和物二カリウム塩、cat番号151888-20-9、Strem Chemicals製
TEA:トリエタノールアミン、製品番号:90279、Sigma製
エチレングリコール、cat番号1.00949.1000、MERCK製
NaCl:コード:207790010、Acros Organics製
EDTA、二ナトリウム塩、二水和物、cat番号SC-29092、ChemCruz製
PBSタブレット、cat番号18912-014、GIBCO製
Vivaspin 20、10000 MWCO、PES膜、cat番号VS2001、Sartorius製
PD10 G-25カラム、cat番号17-0851-01、GE Healthcare製
【0247】
略語
CV:カラム体積
FLD:蛍光検出
MQ:MilliQ水(高度に精製された水)
m/z:質量電荷比
MS:質量分析
M+H:単独でプロトン化された種の質量
HPLC:高圧液体クロマトグラフィー
RP:逆相
LC-MS:液体クロマトグラフィー-質量分析
NMR:核磁気共鳴分光法
rtまたはRT:室温
Boc:tert-ブチルオキシカルボニル
O-t-Bu:tert-ブチルエステル
t-Bu:tert-ブチル
DCM:ジクロロメタン、CH
2Cl
2、塩化メチレン
DIC:ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
Fmoc:9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル
Lys(Mtt)-OH:(S)-6-[(ジフェニル-p-トリル-メチル)-アミノ]-2-アミノ-ヘキサン酸
Thx:トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸
NMP:N-メチルピロリジン-2-オン
OEG:(2[2-(アミノ)エトキシ]エトキシ)酢酸
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
TIS:トリイソプロピルシラン
TNBS:トリニトロベンゼンスルホン酸
HC:重鎖
LC:軽鎖
wt:野生型
アミノ酸の略語はIUPAC慣用名に従う。
バッファーの略語は、Stoll, V. S.およびBlanchard, J. S.、Methods of Enzymology、182、1990、Academic Press、24-38に従う。
【0248】
コンジュゲーション、概論
重鎖(HC)のC末端のまたはその近くの不対のシステインを有する、疎水性延伸性基とコンジュゲートするためのFabを構築した。このシステインは、例えば、マレイミドまたはハロ-アセチル基を担持する硫黄親和性アルキル化試薬とコンジュゲートするためのものであった。Fabを、突然変異したCysとジスルフィド結合したシステイニル化(cysteinylation)を伴う分子として発現させた。突然変異したCysを、アルキル化試薬との反応のために遊離させるために、ホスフィン試薬を使用して還元した。還元した後、タンパク質を還元試薬から分離し、アルキル化試薬を加えることによってアルキル化に供した。最後に、コンジュゲートを、標準の低圧クロマトグラフィーによって精製した。
【0249】
4-(1H-テトラゾール-16-イル-ヘキサデカノイルスルファモイル)ブタノイル-OEG-γGlu-γGlu-OEG-N
ε(C(O)CH
2Br)Lys-OH(アルブミン結合剤I):
【0251】
化合物Iを、ABI433 synthetizer(Applied Biosystems)での標準のFmoc-ペプチド化学を使用して、1mM規模でスキーム1に従って固体支持体上で合成した。Fmoc-OEG-OHおよびFmoc-Glu-OtBu保護されたアミノ酸を使用してペプチドをFmoc-Lys(MTT)-Wang樹脂上に集合させた。4-(16-1H-テトラゾール-5-イル-ヘキサデカノイルスルファモイル)酪酸を、DCM/NMP中DIC/NHS、2eq.を用いて手動で一晩カップリングし、TNBS試験により反応が完了したことが示された。次いで、樹脂を、50mLのDCM/TFA/TIS/水(94:2:2:2)を用いて、フロースルー配置で黄色が消失するまで約20分間処理し、その後、DIPEA/DMFを用いて洗浄し、中和した。DCM/NMP(1:1)中ブロモ酢酸(4mM)を、NHSとDICの混合物、1mMを用いて活性化し、濾過し、樹脂に加え、さらに1mMのDIPEAを加えた。1時間後に反応を完了させた。樹脂をTFA/TIS/水(95:2.5:2.5)80mLで1時間処理した。N
2の流れで蒸発させ、Et
2Oを加えることによって沈殿させ、Et
2Oで洗浄し、乾燥させた。粗生成物を、分取HPLCで、水中0.1%のTFAに対して30〜80%の0.1TFA/MeCNの勾配を用いて精製した(2回の流動)。画分を採取し、約50%のMeCNを用いて凍結乾燥させ、化合物Iをもたらした。
【0252】
TOF-MS:質量1272.52(M+1)
【0253】
上記の例は、固相合成を用いてアルブミン結合剤化合物Iを高い純度で調製することが可能であることを示す。
【0255】
Fab 0120とアルブミン結合剤Iのコンジュゲーション
PBSバッファー中Fab 0120(25mg、0.53μmol、4.2mg/ml)を、20mMのトリエタノールアミン、2mMのEDTA、pH8.5中トリフェニルホスフィン-3,3',3''トリスルホン酸三ナトリウム塩水和物(TSPP、40mg/ml、350μl、最終濃度3.7mM)の溶液と混合した。反応混合物を、r.t.で150分にわたってインキュベートした。次いで、平衡化した3つのNAP-25カラムでバッファーを交換することによって小分子量物質を除去し、20mMのトリエタノールアミン、2mMのEDTA、400mMのNaCl、pH8.5を用いて溶出した。次いで、バッファーを交換した還元Fab溶液を、20mMのトリエタノールアミン、2mMのEDTA、400mMのNaCl、pH8.5中アルブミン結合剤I(490μl、16mM、最終濃度:0.8mM)の溶液と混合した。反応混合物(およそ9.5ml)をr.t.で20時間にわたってインキュベートし、次いで、20mMのトリエタノールアミン、10%エチレングリコール、pH8.0のバッファー10mlで希釈した。その後、混合物について、20mMのトリエタノールアミン、10%エチレングリコール、pH8.0で平衡化した4つのNAP25カラムでバッファーを交換した。バッファーを交換した材料を、Akta Puifier 100システム(GE Healthcare)を使用して、20mMのトリエタノールアミン、10%エチレングリコール、pH8.0で平衡化した5mlのHitrap Q-セファロースFFカラムにローディングした。結合していない材料(コンジュゲートしていないFabを含む)を、このバッファーを用いて洗い落とし、生成物を、20mMのトリエタノールアミン、10%エチレングリコール、1MのNaCl、pH8.0の直線勾配を用いて1.5時間にわたって溶出した。生成物はおよそ380mMのNaClで溶出し、ピークプロファイルは対称であった。関連性のある画分をプールし、Vivaspin 20デバイスを3500g(10000 MWCO、Sartorius)で使用して限外濾過によって濃縮し、最終的にバッファーをPBSバッファーに交換した。最終的な単離された生成物は、A280測定によって決定したところ11.9mg(48%)、濃度1.7mg/mlであった。SDS-PAGEおよびMS分析により、生成物の同一性が確認された(実測m/z 49919(M+H)、算出 49917(M+H))。
【0256】
上記の例は、Fabとアルブミン結合剤Iの、上首尾の部位特異的なコンジュゲーションを示す。コンジュゲートすることにより、生成物が好収量および高純度で生じる。
【0257】
Fabとアルブミン結合剤II〜VIのコンジュゲーション
アルブミン結合剤II〜VIは、以下に示される構造を有する。
【0259】
アルブミン結合剤I〜VIのコンジュゲーションは、上記の化合物Iについて記載されているものと同じ手順に従った。アルブミン結合剤IVおよびVIの場合では、化合物は、Fab溶液に加える前は完全には可溶性ではなかった。いくつかの場合には、可溶化を容易にするために有機溶媒を加えた。アルブミン結合剤II〜VI上の酸性基の数が少ないので、コンジュゲートは、pHを8.6に上昇させなければAIEXカラムに結合しなかった。アルブミン結合剤II〜VIの場合では、純粋な一置換生成物にはさまざまな量の多重に改変されたFabが混入していた。これらをイオン交換クロマトグラフィーによって除去することは難しかった。
【0260】
全てのコンジュゲートの同一性を、SDS-pageおよびTable 23(表23)に示されているLC-MSの例によって確認した。純度は、II、IIIおよびVとのコンジュゲートについては>90%であることが決定されたが、IVおよびVIとのコンジュゲートは、およそ30%のコンジュゲートしていないFabに基づく不純物を含有した。
【0262】
上記の例は、種々の異なるアルブミン結合剤が、IgG1およびIgG4のどちらが起源のFabとも良好な収量および純度でコンジュゲートすることができることを示す。
【0263】
上記の例は、種々の異なるアルブミン結合剤が、IgG1およびIgG4のどちらが起源のFabとも良好な収量および純度でコンジュゲートすることができることを示す。
【0264】
種々のFabとアルブミン結合剤Iのコンジュゲーション
以下のFabをコンジュゲートした:0118、0119、0127、および0147(Table 25(表25)参照)。これらのFabは、C末端に、または0157の場合ではC末端の近くに不対のシステイン残基を含有した。FabはIgG1またはIgG4に由来し、全てDR3受容体に結合する異なるクローンに対応した。上記の方法に従って反応させたところ、LC-MSデータによるとコンジュゲートが好収量で形成された。以下のMSデータを得た(Table 24(表24))。
【0266】
上記の例は、種々のFabが、異なるアルブミン結合剤分子と良好な収量および純度でコンジュゲートすることができることを示す。
【0268】
(実施例17)
主要な目的は、DBA/1マウスにiv投与した後およびsc投与した後の薬物動態パラメータを特徴付けることであり、主要な焦点は、Fab断片を改変した後の延長の程度を評価するために、終末相半減期に当てられた。
【0269】
試験デザインおよび方法
2つの試験からの結果が本概要に含まれる(DKPF111105およびDKPF110703)。どちらの試験も、雄のDBA/1マウスにおいて実施し、マウスに、尾静脈内への静脈内(i.v.)投薬または鼠径部に皮下(s.c.)投薬した。投薬はFabについては5mg/kgであり、改変されたFabについては1mg/kgであった。スパースサンプリングデザインを使用し、各試料採取時点で3つの血液試料を採取し、試料を投薬前から、化合物に応じて投薬の7日後まで採取した(例えば、Fabを試験する場合は投薬の7時間後までのみ試料を採取したが、コンジュゲートしたFabを試験する場合には投薬の7日後まで試料を採取した)。
【0270】
採取した血漿試料は全て、ELISAアッセイを用いて分析し、簡単に述べると、プレートを、hDR3-Fc融合タンパク質(配列番号7)でコーティングし、希釈した血液試料を加え、分析物(FabまたはコンジュゲートしたFab)がhDR3に結合し、次いで、結合した分析物をペルオキシダーゼ標識した抗Fab抗体によって検出し、標準の方法を用いて吸収を測定した。測定された血漿中濃度値に基づいて、薬物動態パラメータを、市販のソフトウェアPhoenix WinNonlin(Pharsight Corp.)を使用し、標準の非コンパーメント方法を用いて評価した。
【0271】
結果
Fabの終末相半減期を延長するために、アルブミン結合技術に基づいていくつかの異なるリンカーを評価し、分子のいくつかについてFabの終末相半減期を20時間超まで増加させることが可能であった(Table 26(表26))。Fabの半減期は1時間未満であると推定され、これは、Fabと、全てがはるかに長い半減期を示しているコンジュゲートしたFabとを比較した差異を例示している(Table 26(表26))。
【0273】
(実施例18)
抗DR3活性の決定の仕方としてのインターフェロン-ガンマ放出の読取り
新鮮なヒト末梢血単核球(PBMC)を、血液バフィーコート(307 Hospital Blood Center of PLA;Beijing、PRC)から、Ficoll(GE Healthcare、Cat番号17-5442-02)において2000rpmで20分間遠心分離することによって分離した。DPBS中で洗浄した後、細胞ペレットを吸引し、予め温めたアッセイ培地(RPMI1640、10%熱失活させたFBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)に、1ml当たり1×10
6個で再懸濁させ、フラスコ内で一晩培養した。次いで非接着性リンパ球を取り出し、T細胞同時刺激アッセイに使用した。
【0274】
同時刺激アッセイのために、組換えヒトTL1A(12μg/mL)を共刺激分子として、一次刺激、0.3μg/mLの抗CD3 mAb(BD Pharmingen cat番号555336)で37℃のインキュベーターで3時間、縁以外の全てのウェルを予めコーティングした乾燥96ウェルU底アッセイプレート(Corning costar 3799)にウェル当たり50μlで加えた。試験する抗DR3 Fab(0170、0171、0173、0169および0118)を、96ウェルディープウェルプレート(Nunc 278743)中、ウェル当たり1.5mLで0.012〜12μg/mLの範囲の4×濃度について1:3段階的力価決定した後に、2連でアッセイプレートにウェル当たり50μLで移した。次いで、アッセイプレートに、富化したリンパ球0.1mLを、ウェル当たり細胞2×10
5個で加え、最終体積をウェル当たり0.2mLにした。37℃のインキュベーター中、5%CO
2で40時間細胞培養した後、サイトカインの分泌をIFN-γELISAキット(eBioscience Cat番号88-7316-88)によって測定するために、上清120mLを培養プレートの各ウェルから回収した。T細胞アッセイにおいて分泌されたあらゆるサイトカインを測定するために、製造者の提言に従って、試験する上清を1:20希釈した。
【0275】
復帰突然変異を伴う(173、170および169)または伴わない(171)いくつかのヒト化抗DR3 Fabを、健康なドナーの末梢血由来の一次T細胞の、TL1Aにより同時刺激されるサイトカイン分泌を遮断するそれらの能力について評価した。
【0276】
Table 27(表27)に示されている通り、抗CD3プライミングにより、中程度のレベル(約50ng/mL)のIFN-γ分泌が引き起こされ、これは、組換えTL1Aによる同時刺激によって3倍超に増強された(約159ng/mL)が、TL1A処理単独では、最小量のサイトカインの放出(1.2ng/mL)のみがもたらされた。TL1Aによる同時刺激条件下で、試験するヒト化抗DR3 Fabの全てが、IFN-γ分泌を用量依存的かつ完全に阻害し(IC
50約0.01〜0.03μg/mL)、抗CD3プライミングに対する作用は最小であった。複数のドナーを用いたいくつかの実験から同定された陰性対照として、非リガンド遮断性キメラ抗DR3 Fab 0118は、予測通り、Tリンパ球のTL1Aによる同時刺激に対して有意な作用を示さなかった。異なる血液ドナーを用いた別の実験における0171 Fabおよび0170 Fabの第2のバッチに対しても同様の結果が得られた。
【0278】
(実施例19)
抗DR3抗体Fabは、関節リウマチ患者の滑液中のエフェクターT細胞のTL1Aによる同時刺激を遮断する
ヒト化抗DR3 Fabは、前の実施例において健康な個体の末梢血から単離された一次T細胞の活性を阻害することが示された。さらに、一部のFabについても、関節リウマチ(RA)患者に由来する滑液T細胞のエフェクター機能を遮断するそれらの能力について評価した。T細胞のエフェクター機能としては、これらに限定されないが、本実施例において分析したIFN-γ分泌が挙げられる。分泌されるIFN-γのレベルを、実施例18に記載のものと同じELISAキットによって測定した。
【0279】
新鮮なヒト滑液(SF)細胞を、DMARD(Beijing University People's Hospital、PRC)の関節内注射の副産物(廃棄物)としてのRA患者の膝関節液から、2000rpmで10分間遠心分離することによって分離した。細胞ペレットを吸引し、予め温めたアッセイ培地(RPMI1640、10%熱失活させたFBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)に1mL当たり1×10
6個で再懸濁させた。滑液細胞の少量の試料(0.1mL当たり約10
5個)を、Tリンパ球の存在(%)についてFACS分析によって試験した。T細胞同時刺激実験において>5〜10%のリンパ球集団を伴うRA/SF細胞試料を使用した。
【0280】
同時刺激アッセイのために、組換えヒトTL1A(12μg/mL)を共刺激分子として、一次刺激、0.3μg/mL抗CD3 mAb(BD cat番号555336)で37℃のインキュベーターで3時間、縁以外の全てのウェルを予めコーティングした乾燥96ウェルU底アッセイプレート(Corning costar 3799)に、ウェル当たり50μlで加えた。試験する抗DR3 Fab(0170、0171、0173および0118)を、96ウェルディープウェルプレート(Nunc 278743)中、ウェル当たり1.5mLで0.012〜4μg/mLの範囲の4×濃度について1:3段階的力価決定した後に、2連でアッセイプレートにウェル当たり50μLで移した。次いで、アッセイプレートに、RA/SF細胞0.1mLを、ウェル当たり細胞2×10
5個で加え、最終体積をウェル当たり0.2mLにした。37℃のインキュベーター中、5%CO
2で40時間細胞培養した後、サイトカインの分泌をIFN-γELISAキット(eBioscience Cat番号88-7316-88)によって測定するために、上清120mLを培養プレートの各ウェルから回収した。製造者の提言に従って、T細胞アッセイにおいて分泌されたあらゆるサイトカインを測定するために、試験する上清について適切な希釈因子を決定した。
【0281】
ヒト化抗DR3 Fab(171)およびその骨格が突然変異した変異体(173および170)を、RA患者の膝関節由来の滑液T細胞のTL1Aにより同時刺激されるサイトカイン分泌を遮断するそれらの能力について評価した。
【0282】
Table 28(表28)に示されている通り、抗CD3プライミングにより、中程度のレベル(約1228pg/mL)のIFN-γ分泌が誘導され、これは、組換えTL1Aによる同時刺激によって約2倍(約2188pg/ml)に増強されたが、TL1A処理単独では、検出可能なサイトカインの放出は示されなかった。TL1Aによる同時刺激条件下で、試験する3種のヒト化抗DR3 Fabは、IFN-γ分泌を用量依存的かつ完全に阻害し(IC
100約0.1μg/mL
)、抗CD3プライミングに対する作用は最小であった。陰性対照として、非リガンド遮断性キメラ抗DR3 Fab 0118は、予測通り、Tリンパ球のTL1Aによる同時刺激に対して有意な作用を示さなかった。異なるRASF試料を用いた5つの実験における0171 Fab(3バッチ)および0170 Fab(2バッチ)の異なるバッチに対しても同様の結果が得られた。
【0284】
(実施例20)
抗DR3 FabのHX-MSによるエピトープマッピング
HX-MS技術は、タンパク質の水素交換(HX)が質量分析(MS)によって容易に追跡することができることを活用する。水素を含有する水性溶媒と重水素を含有する水性溶媒を交換することにより、タンパク質の所与の部位に重水素原子が組み込まれることによって1Daの質量が増加する。この質量増加を、交換反応のクエンチした試料において、質量分析によって時間に応じてモニターすることができる。重水素標識情報は、クエンチ条件下、生じたペプチドの質量が増加した後にペプシン消化することによってタンパク質内の領域に亜局在させることができる。
【0285】
HX-MSの1つの使用は、タンパク質-タンパク質複合体が形成すると水素交換が減少する領域を同定することによって分子相互作用に関与する部位を探索することである。通常、結合インターフェースは、溶媒の立体排除に起因して水素交換が顕著に減少することによって明らかになる。タンパク質-タンパク質複合体の形成は、HX-MSにより、単に、それぞれの結合パートナーの存在下、および不在下でいずれかのタンパク質メンバーに組み込まれた重水素の総量を時間に応じて測定することによって検出することができる。HX-MS技法は、ネイティブな構成成分、すなわちタンパク質および抗体またはFab断片を使用し、溶液中で実施される。したがって、HX-MSにより、in vivo条件を模倣する可能性がもたらされる(HX-MS技術に関する最近の概説については、WalesおよびEngen、Mass Spectrom. Rev. 25、158(2006)を参照されたい)。
【0286】
使用したタンパク質バッチ:
hDR3:Fcと融合したhDR3の完全な細胞外ドメイン(配列番号7)。この分子は、Fcの二量体形成に起因して、hDR3に関して二量体である。発現バッチはタンパク質のオリゴマー形成型も含有するが、精製された二量体の画分のみをHX-MS実験に使用した。
【0287】
Fab分子:0120、0130、0143、0148、0163、0228、0230および0231(Table 29(表29)参照)。全てのタンパク質について、実験前にバッファーをPBS、pH7.4に交換した。
【0288】
器械使用およびデータ記録
HX実験を、nanoACQUITY UPLC Systemで、HDX Technology(Waters Inc.)をSynapt G2質量分光計(Waters Inc.)と合わせて用いて実施した。Waters HDXシステムは、LeapShellソフトウェア(Leap Technologies Inc/Waters Inc.)により操作されるLeap robot(H/D-x PAL;Waters Inc.)を含有し、これにより、重水素交換反応の開始、反応時間の制御、クエンチ反応、UPLCシステムへの注入および消化時間の制御を実施した。Leap robotは2つの温度制御スタックを備えており、それぞれ、バッファー貯蔵およびHX反応のために20℃に維持され、タンパク質およびクエンチ溶液の貯蔵のために2℃に維持される。Waters HDXシステムは、プレカラムおよび分析用カラム、ならびにLC管材料および切り換え弁を1℃で保持する温度制御チャンバーをさらに含有した。別々に温度制御されたチャンバーにはペプシンカラムが25℃で保持される。インラインペプシン消化物のために、200pmolのhDR3を含有するクエンチした試料100μLをローディングし、25℃に置いたPoroszyme(登録商標) Immobilized Pepsin Cartridge(2.1×30mm(Applied Biosystems))を、100μL/分の定組成流速(0.1%ギ酸:CH
3CN 95:5)を用いて通過させた。生じたペプチドを捕捉し、VanGuardプレカラムBEH C18 1.7μm(2.1×5mm(Waters Inc.))で脱塩した。その後、弁を切り換えて、プレカラムを分析用カラムUPLC-BEH C18 1.7μm(1×100mm(Waters Inc.))とインラインに置き、nanoAQUITY UPLCシステム(Waters Inc.)から200μl/分で送達される10〜40%のBの9分勾配を用いてペプチドを分離した。移動相は、A:0.1%ギ酸およびB:CH
3CN中0.1%ギ酸からなった。ESI MSデータ、および別々の上昇エネルギー(MS
E)実験を、Synapt G2質量分光計(Waters Inc.)を使用して陽イオンモードで獲得した。ロイシン-エンケファリンをロックマス([M+H]
+イオン、m/z 556.2771)として使用し、データを連続モードで収集した(さらなる説明については、AndersenおよびFaber、Int. J. Mass Spec.、302、139-148(2011)を参照されたい)。
【0289】
データ解析
消化性ペプチドを、別々の実験において、ペプチドおよび断片を、Synapt G2(Waters Inc.)のイオン移動性を利用してさらにアラインメントする標準のMS
E方法を用いて同定した。MS
Eデータを、ProteinLynx Global Server version version 2.5(Waters Inc.)を使用して処理した。HX-MSの生のデータファイルをDynamXソフトウェア(Waters Inc.)で処理した。DynamXでは、ロックマス補正および重水素の組込み決定、すなわち、重水素化されたペプチドの質量中心決定が自動的に実施される。さらに、全てのペプチドを手動で検査して、ソフトウェアによる正確なピークおよび重水素化の割当てを確実にした。
【0290】
エピトープマッピング実験
アミドの水素/重水素交換(HX)を、hDR3をFab 0120、0130、0143、0148、0163、0228、0230または0231の存在下または不在下で、対応する重水素化されたバッファー(すなわち、D
2O中、最終的に96% D
2O、pH7.4(未補正の値)に調製したPBS)に7倍希釈することによって開始した。HX反応は全て20℃で行い、2μMのhDR3を10μMのFabの不在下または存在下で含有し、したがって、Fabを5倍モル過剰にした。10秒〜3000秒の範囲の適切な時間間隔で、HX反応物のアリコート50μlを、氷冷したクエンチングバッファー(1.35M TCEP)50μlでクエンチし、最終的にpH2.5(未補正の値)にした。
【0291】
結果および考察
hDR3細胞外ドメインの一次構造の75%を包含する20種の消化性ペプチドのHX時間経過を、0120 Fab、0130 Fab、0143 Fab、0148 Fab、0163 Fab、0228 Fab、0230 Fabまたは0231 Fabの不在下または存在下で、10〜3000秒モニターした。hDR3は、N67位およびN106位に2つのN-グリコシル化部位を含有し、したがって、ペプチドマップはこれらの領域にギャップを有する。
【0292】
Fab 0120、0130、0143、0148、0163、0228、0230または0231の存在下または不在下で、初期の時点(<300秒)で観察された交換パターンは、2つの異なる群に分けることができる:ペプチドの一方の群は、Fabの結合に影響されない交換パターンを示す。対照的に、hDR3のペプチドのもう一方の群は、Fabが結合すると交換からの保護を示す(Table 29(表29))。ペプチドにおいて観察された交換保護により、この領域がFabの結合に関与することが示される。したがって、エピトープは、部分的に、特異的なペプチドによって規定される領域内に位置する、またはそれどころか完全にその領域内に位置する可能性がある。しかし、HX-MSの分解能は消化性ペプチドに基づくので、所与の領域内での交換保護は、その領域内のあらゆる残基が必ずFabの結合に関与することを意味するものではない。
【0293】
0148および0163のエピトープマッピング
Fab 0148および0163は、hDR3に結合するが、TL1Aの結合を遮断しないFab分子である。これらのFab分子を対照として試験に含めた。エピトープシグナルはFab 0148のCRD3の領域P140〜L153において観察された(Table 29(表29))。この実験は5倍余剰のFabを用いて実施したが、0148とhDR3の等モルの配分を用いたHX-MS実験では、このFabを標準の等モル条件下でマッピングすることができることが確認される。
【0294】
Fab 0163についての弱いエピトープシグナルが、一部CRD4領域内の領域G163〜F169で、および一部領域Y170〜L184で観察された。
【0295】
0120、0130、0143および0228のエピトープマッピング
Fab 0228は、いくつかの実験において、3〜5倍余剰のFab分子を使用してマッピングされた。エピトープシグナルはCRD1の領域R32〜G54、G37〜L45およびF46〜A59で観察された。しかし、消化性ペプチドの交換保護の相対的なレベル、および領域F46〜Y56における交換保護が弱いことまたは存在しないことに基づいて、0228に対するエピトープは領域G37〜L45およびL57〜A59において最も強力であると結論づけられる。領域G37〜L45は、突然変異誘発によって0228/0123とhDR3との結合に重要であることが見いだされた残基も包含し、したがって、これらの実験からのデータは完全に一致する(実施例12、Table 16(表16))。驚いたことに、hDR3と比較して非常に余剰な0228 Fabを使用することが必要であった。通常は、HX-MSによってエピトープマッピングを実施する場合には等モル比のmAbまたはFabを使用することで十分である。0228とhDR3の等モルの配分を用いると、0228が非常に高い親和性を有するにもかかわらず(実施例11、Table 14(表14))、エピトープシグナルは観察されなかった(データは示していない)。これらの知見は、0228エピトープが、実験条件下で完全には溶媒を利用できない領域にあることを示す。したがって、0228の親和性が高いにもかかわらず交換保護が低いことは、Fab分子がhDR3自己相互作用の優位に現れるか、またはそれと競合している結果であり得る。hDR3自己相互作用は、例えばTNFRスーパーファミリーの他のメンバーについて記載されている通り(Mukaiら(2010)Sci. Signal.3、ra83)、細胞外ドメインの非特異的な凝集の帰結またはクラスター化の帰結であり得る。さらに、C末端領域において弱い作用を観察することができた。0228および0120は、CRD1のみを含有するタンパク質と結合する場合には完全な親和性を有するので(実施例11、Table 14(表14))、C末端の作用は、大概、Fabが結合した際のコンフォメーション再配置の結果であり、DR3とFcを融合しているヒンジ領域内の移動の結果であってよい。
【0296】
SPR実験から、0120、0130および0143は全て、hDR3との結合について0228と、および互いと競合することが確立された(実施例11、Table 15(表15))。したがって、これらのFabは、エピトープを部分的または完全に共有する。
【0297】
一致して、これらのFabに対するHX-MSによっても、同じ領域G37〜L45内のエピトープシグナルが示されている。しかし、交換保護の大きさはより弱い。上記の知見に基づいて、クラスター化インターフェースにおいてHX-MSが交換保護を示すようにするためには、非常に余剰な結合性分子を有することが必要であり、また、高親和性の相互作用であるべきであることを推測することができる。
【0298】
0230および0231のエピトープマッピング
Fab 0230および0231(WO2011106707からの11H08)に対するエピトープマッピングでは、いかなるエピトープも示されなかった。hDR3に対するエピトープマッピングを上首尾にするためには良好な親和性が必要であるという上記の知見を考慮すると、これらのFab(WO2011106707)の親和性が比較的弱いことがHX-MSによる上首尾のエピトープマッピングを妨げると推測することができる。
【0300】
2つ以上の割当ては、2つ以上の実験で、交換保護の大きさに関してわずかに異なる結果が得られたことを示す。
【0301】
(実施例21)
本明細書に記載の抗体の概要
Table 30(表30)は、本明細書に記載の抗体の概説および使用した異なるmAb/Fab形式に応じたそれらの名称を提供している。命名法の注釈:Table 30(表30)では4桁の識別(例えば、0228)が使用される。しかし、同じ化合物について異なる命名法が見られる場合がある。例えば、化合物0228は、0227-0000-0228、0227-0228、00228、または228とも称される。これらの命名法は全て同じ化合物を示す。この規則は全ての化合物に適用される。
【0305】
(実施例22)
結合実験
材料および方法:Copenhagen Hospitalからの正常な健康なボランティアからバフィーコートを得た。CD4+T細胞を磁気ビーズ分離によって単離した。細胞を、2ng/mlのIL-12、50ng/mlのIL-18および100ng/mlのTL1A(Novo Nordisk A/Sで作製されたFlag-HIS-TEV-TL1A)を用いて活性化し、5日間培養した。5日目に、細胞を10μg/ml、5μg/ml、1μg/ml、0.5μg/ml、0.1μg/mlまたは0.0001μg/mlの抗DR3 mAbクローン0072、0073、もしくは0077を用いて、またはFab断片クローン0087、0088もしくは0091を用いて染色した。二次PEコンジュゲートヤギ抗マウス(H+L)を検出のために使用した。試料は2連であった。染色強度をFACSによって評価した。
【0306】
結果:モノクローナルIgGクローン0077、およびその対応するFabクローン0091については細胞との結合を検出することはできなかった。モノクローナルIgGクローン0072および0073は、サイトカイン活性化CD4+T細胞との強力な結合を示し、1μg/ml以下の濃度で最大の結合が観察された。対応するFabクローン(0087および0088)は、同様の効力でサイトカイン活性化細胞と結合したが、結合飽和時にはわずかに低いMFI値を記録した。二次(検出)抗体(抗IgG重鎖および軽鎖)は、全長のIgG抗体クローンのFab部分およびFc部分のどちらにも結合したが、FabクローンのFab部分にしか結合しなかったので、全長の抗体で処理した細胞の実測MFI値はFab処理した細胞と比較して大きいことが予測された(Table 31(表31))。
【0308】
(実施例23)
T細胞の増殖:
CD4+T細胞を、CD4 Rosettesep(Stem cell technologies)およびHistopaque(Sigma)を使用して、磁気ビーズ分離によってバフィーコートから単離した。T細胞(96ウェルプレート中ウェル当たり細胞2*10
5個)を、2ng/mlのIL-12、50ng/mlのIL-18および100ng/mlのTL1A(Flag-HIS-TEV-TL1A;Novo Nordisk)を用いて、抗TL1A(1000ng/ml;MAB7441;RnDSystems)またはDR3 mAbまたはDR3 Fab(5または10μg/ml)を伴った状態および伴わない状態で、5日間活性化した。使用したDR3 mAbは、0072、0073および0077であった。使用したDR3 Fabは、0087、0088および0091であった。全ての試料を3連で行った。細胞増殖をチミジンの組込みによって測定した。細胞を、5日間活性化した後に[
3H]チミジンでパルスし、16時間後に回収した。組み込まれたチミジンを、Top計数器によって1分当たりの数(cpm)として検出した。
【0309】
結果:TL1Aで同時刺激することにより、T細胞の増殖が3倍に増加した。このTL1A依存性の増加は、抗TL1A中和対照抗体と共インキュベーションすることによって遮断された。抗DR3 mAbの全てならびにFab 0091は、10μg/mlで増殖をわずかに阻害したが、Fab 0087および0088は、アッセイにおいて用いた最低濃度でさえも増殖を完全に遮断した。結論として、Fab 0087および0088は、CD4陽性T細胞の増殖のTL1A依存性同時刺激の下方調節において非常に効率的である。
【0310】
同様の実験において、IL-12(2ng/ml)、IL-18(50ng/ml)および100ng/mlのTL1A(Flag-His-TEV-TL1A;Novo Nordisk)で処理したCD4+T細胞では、IL-12/IL-18で処理したT細胞と比較してT細胞の増殖の6倍の増加が実証された。0123 Fabおよび0124 Fabは、0.16μg/mlのFabの濃度ですでに、誘導されたT細胞の増殖を完全に遮断したが、対応するmAb 0072および0108は、T細胞の増殖に影響を及ぼさなかった。Table 32(表32)に、mAb 0072と対応するFab 0123の対についてのデータが示されている。チミジンの組込みによって検出された増殖は、1分当たりの数として示されている(cpm)。
【0312】
抗DR3 Fabの影響を受けるサイトカインの放出
CD4 Rosettesep(Stem cell technologies)およびHistopaque(Sigma)を使用して、磁気ビーズ分離によってバフィーコートから単離されたCD4+T細胞を、TCR活性化の不在下でサイトカインIL-12(2ng/ml)、IL-18(50ng/ml)を用いて、100ng/mlのTL1A(Flag-His-TEV-TL1A;Novo Nordisk)を伴った状態および伴わない状態で刺激した。活性化されたCD4+T細胞(ウェル当たり細胞2×10
5個)由来の上清を48時間後に回収し、サイトカインの放出について、Bioplexによって分析した。
【0313】
放出されたサイトカインIL-6、IFNγ、GM-CSFおよびTNFαは全て、48時間後に、TL1Aにより、IL-12/IL-18で処理したCD4+T細胞によって誘導された。IL-6、IFNγ、GM-CSF、TNFαは、IL-12/IL-18により活性化された細胞と比較して、TL1Aによって16倍(p=0.05)、1.2(p=0.02)、7.5倍(p=0.04)、4.4(p=0.0007)誘導された。IL-6(p=0.04)、GM-CSF(p=0.04)およびTNFα(p=0.0008)は全て、DR3結合性非遮断性Fab 0091と比較して、抗DR3 Fab 0124によって有意に遮断された(Table 33(表33))。
【0315】
(実施例24)
クローン病患者からの腸生検材料から単離された粘膜固有層単核球を使用した機能的試験
【0316】
クローン病患者からの腸生検材料から単離された粘膜固有層単核球(LPMC)と、それに対して非IBD対照を、IL-12(2ng/ml)、IL-18(50ng/ml)および100ng/mlのTL1A(Flag-His-TEV-TL1A;Novo Nordisk)を用いて、抗DR3 Fab 0124および非遮断対照0091を伴った状態および伴わない状態で活性化した。
【0317】
炎症を起こしたクローン病患者由来のLPMCは、IFNγを誘導することによってIL-12/IL-18+TL1Aに応答することができ、TL1Aに誘導されたIFNγのレベルは0124によって有意に遮断された(p=0.0001、n=4)、Table 34(表34)。DR3 Fab 0124および0228は、クローン病患者由来の、IL-12/IL-18により刺激されたTL1Aで処理したLPMCによるGM-CSF、TNF-a、およびIFNgの分泌をさらに阻害する。