(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ステージ装置をビーム成形アパーチャプレートの開口の列と直交する方向に移動させつつ、前記ステージ装置の移動に応じて前記複数本の荷電粒子ビームをON又はOFFさせることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の荷電粒子ビーム露光装置。
前記ビーム成形アパーチャプレートの開口は、前記半導体基板上のラインパターンのピッチと前記荷電粒子光学系の縮小倍率との積に等しいピッチで配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の荷電粒子ビーム露光装置。
前記ビーム成形アパーチャプレートの前記開口の列は、それぞれ同一形状の開口が同一ピッチで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム露光装置。
前記ブランカープレートには、同一形状の開口及びブランキング電極が同一ピッチで複数列配置されており、前記列と直交する方向のブランキング電極同士が並列に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の荷電粒子ビーム露光装置。
前記ビーム成形アパーチャプレートの前記開口の列は、列ごとにそれぞれ異なる形状の開口が異なるピッチで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム露光装置。
前記ビーム成形アパーチャプレートと前記非対称照明光学系との間に、前記ビーム成形アパーチャプレートに到達する荷電粒子を制限する1次ビーム成形板を備えることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム露光装置。
前記ステージ装置の変位を検出する位置検出器と、前記位置検出器の検出結果に基づいて前記複数の荷電粒子ビームの照射位置を微調整するステージフィードバック偏向器を備えることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム露光装置。
前記コラムセルにおいて、前記荷電粒子源と前記ビーム成形アパーチャとの間に、前記荷電粒子源から放出された荷電粒子ビームを前記開口の方向に細長い断面形状に変形する非対称照明光学系を有することを特徴とする請求項12に記載の荷電粒子ビーム露光装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態の説明に先立って、コンプリメンタリ・リソグラフィの説明を行う。
【0016】
図1は、コンプリメンタリ・リソグラフィを示す図である。
【0017】
コンプリメンタリ・リソグラフィでは、横方向のラインパターンによって形成される配線層と、縦方向のラインパターンによって形成される配線層とを交互に重ね合わせて、配線パターンを形成する。
【0018】
図1(a)は、半導体基板の配線層の中のN層目のラインアンドスペースパターンと、ラインパターンをカットするためのカットパターン83の配置の例を示している。図示のラインアンドスペースパターンでは、横方向(X方向)に延びる一定幅のラインパターン81a及びスペース82aが交互に配置されている。これらのラインアンドスペースパターンは、ArF光源を用いた液浸露光とダブルパターニングを組み合わせた狭ピッチ化技術により形成する。
【0019】
一方、カットパターン83は、単純な線ではなく、微細な矩形パターンであるため、ArF光源を用いた光露光での形成は困難である。そこで、解像度に優れた電子ビーム(荷電粒子ビーム)で露光する。
【0020】
図中の格子状のライン84a、84bは、設計データ上に設定されたパターンの配置位置を示すラインであり、ラインパターン81a及びスペース82aは横方向のライン84aに沿って配置される。
【0021】
一方、カットパターン83は、縦方向の
ライン84bに沿って配置される。カットパターン83の形状はラインパターン81aを縦方向に横切る長さの矩形状パターンであればよい。図示のように、
カットパターン83の全体の中で占める面積比率はわずかである。そのため、電子ビーム露光でも実用的なスループットが得られる。
【0022】
図1(b)は、N+1層目のラインアンドスペースパターンと、N層目のカットパターン83との位置関係の例を示す図である。
【0023】
図1(b)に示すように、N+1層目のラインアンドスペースパターンは、縦方向(Y方向)に延びる一定幅のラインパターン81b及びスペース82bが交互に配置されてなる。ラインパターン81bは、設計データ上の縦方向のライン84bに沿って配置されている。
【0024】
横方向のラインパターン81aと縦方向のラインパターン81bとが交差する部分は、これらのパターンを接続するビアを形成する部分となる。
【0025】
カットパターン83の位置が横方向にずれると、ビアパターンと干渉する恐れがある。そのため、カットパターン83はラインパターン81bの間の部分に正確に配置することが求められ、横方向への要求精度が高い。一方、カットパターン83の縦方向の長さはラインパターン81aの線幅よりも長いため、カットパターン83の縦方向の位置は多少ずれていても特に問題は生じない。
【0026】
上記のカットパターン83の特性に着目して、以下に説明する実施形態では、多数の電子ビームを用いて、簡素な装置構成で効率よく電子ビーム露光を実施できる電子ビーム露光装置について説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態に係る電子ビーム露光装置のブロック図である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係る電子ビーム露光装置10は、電子ビーム
EB0を発生させる電子銃1及びその光学系を収めた円筒状の筐体(コラムセル)11と、コラムセル11の下方に配置されたステージ装置7と、各部を制御する制御装置13とを備える。
【0029】
コラムセル11の電子銃1からは、所定の加速電圧(例えば50keV)の電子ビームEB
0が放出される。電子ビームEB
0は、第1アパーチャ板2の開口2aを通過することで、光軸c周りに対称な円形の断面に成形される。
【0030】
第1アパーチャ板2の下方には非対称照明光学系3が配置されており、電子ビームEB
0を一方向(X方向)に長く、他方(Y方向)に短い縦長の断面形状に変形させた電子ビームEB
1を生成させる。
【0031】
図3は、非対称照明光学系3を静電四重極レンズ群とした例を示す斜視図である。
【0032】
図3に示すように、この非対称照明光学系3は、光軸cの周りに配置された静電四重極電極51aが光軸方向に4段重ねて構成されてなり、光軸c付近に静電四重極場を発生させる。この静電四重極場を適宜調整することで断面が縦長の電子ビームEB
1を成形できる。
【0033】
電子ビームEB
1は、ビーム成形アパーチャプレート21の照射領域S
1に照射される。
【0034】
ビーム成形アパーチャプレート21には、複数の開口部21aが電子ビームEB
1の照射領域S
1の長手方向(X方向)と同じ向きに一列に並んで設けられている。これらの開口部21aにより、開口部21aの数と等しい数の複数の電子ビームEB
3が成形される。
【0035】
図4(a)は、比較例に係る電子ビームEB
1の照射領域S
99を示す図であり、
図4(b)は本実施形態に係る電子ビーム照射領域S
1を示す図である。
【0036】
図4(a)に示す比較例では、非対称照明光学系3を用いずに断面が円形の電子ビームをそのまま照射しているため、照射領域S
99に対する開口部21aの面積の割合が少ない。比較例では電子銃1から放出された電子の大部分が利用されずに捨てられており、ビーム成形アパーチャ板を通過する電子ビームEB
3の電流密度も低い。
【0037】
これに対し、
図4(b)に示すように、本実施形態では非対称照明光学系3を用いて電子ビームEB
1を縦長の断面形状に成型した上でビーム成形アパーチャプレートの上に照射している。この場合には、電子ビームEB
1の照射領域S
1に対する開口部21aの面積の割合が増大し、より多くの割合の電子を露光に利用できる。そのため、より
電流密度が大きな電子ビームEB
3を生成でき、より短い時間の照射でパターンの描画を実施できる。
【0038】
本実施形態において、ビーム成形アパーチャプレート21の開口部21aは、露光の際のステージ装置7の移動方向に対して直交する方向に一列に並ぶように配置することで、複数の電子ビームEB
3を用いた
露光が同時に進行するようにする。
【0039】
図2のビーム成形アパーチャプレート21の下方には、ブランカープレート31が配置されている。
【0040】
図5(a)は、ブランカープレート31を拡大して示す平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のIII−III線での断面図である。
【0041】
図5(a)に示すように、ブランカープレート31はビーム成形アパーチャプレート21の近くに配置されており、ブランカープレート31の本体31eの上に開口31aが設けられている。開口31aは、開口部21aよりも大きく形成されており、電子ビームEB
3を通過させることができる。各開口31aの横には、電子ビームEB
3を偏向させるためのブランキング電極31b、31cがそれぞれ設けられている。ブランキング電極31b、31cは、配線31d及び不図示の端子を介して駆動回路に接続されている。なお、ブランキング電極31b、31c及び配線31dは、厚さ数μm〜数十μm程度の導体膜を、ブランカープレート31の本体31eの上にパターニングすることで一体的に形成される。ブランキング電極31b、31cは、電子ビームの照射による損傷を防ぐために、電子ビームEB
3の下流側の面に形成することが好ましい。
【0042】
図5(b)に示すように、ブランキング電極31b、31cへ電圧を
印加すると、開口31aを通過した電子ビームEB
3が符号OFFを付した軌道に示すように、大きく曲げられる。その結果、
図2に示すように、ブランキング電極31b、31cで曲げられた電子ビームEB
offは、ブランカープレート31の下方に
配置された最終アパーチャ5の開口5aの外側に導かれて、最終アパーチャ5によって阻止される。
【0043】
一方、ブランキング電極31b、31cに電極を
印加しない場合には、電子ビームEB
3は最終アパーチャ5の開口5aを通過する。すなわち、個々のブランキング電極31b、31cへの電圧を
印加するか否かによって、個々の電子ビームEB
3のON又はOFFを制御できる。
【0044】
ブランカープレート31の下方には、第1電磁レンズ4a、第2電磁レンズ4b、第3電磁レンズ4c及び第4電磁レンズ4dが設けられている。これらの第1〜第4の電磁レンズ4a〜4dが協同することで、ビーム成形アパーチャプレート21の開口部21aの像が所定の縮小倍率αで縮小されて試料80の表面に結像される。
【0045】
電磁レンズ4bと電磁レンズ4cとの間には最終アパーチャ5が配置されている。最終アパーチャ5の光軸付近には円形の開口5aが設けられており、ブランカープレート31で偏向されなかった電子ビームEB
3のみを通過させる。
【0046】
最終アパーチャ5の下方には、ステージフィードバック偏向器6が設けられている。このステージフィードバック偏向器6は、開口部21aの列と同じ方向(X方向)から光軸Cを挟むように配置された一対の電極板を有している。このステージフィードバック偏向器6により、電子ビームEB
3の照射位置をX方向に微調整できる。
【0047】
一方、コラムセル11の下方には、ステージ装置7が設けられている。ステージ装置7は、その上面に試料80を保持するとともに、駆動装置8により水平方向及び回転方向に駆動可能となっている。
【0048】
また、ステージ装置7の横にはレーザ干渉計又はラインセンサ等よりなる位置センサ9が設けられており、ステージ装置7の位置をnm精度で正確に測定できる。位置センサ9の検出結果は、駆動装置8の制御及びステージフィードバック偏向器6の制御に利用される。
【0049】
以上の本実施形態に係る電子ビーム露光装置10において、カットパターンやビアの露光は、ステージ装置7を開口部21aの列方向(X方向)と直交する方向に移動させながら行う。以下、本実施形態におけるパターンの露光方法について説明する。
【0050】
図6(a)はN層目のラインパターン81aに対する露光の際の電子ビームの
照射領域23を示す図であり、
図6(b)は、ビーム成形アパーチャプレート21の開口部21aの形状と配置を拡大して示す図である。なお、
図6(b)ではカットパターンの露光用の開口部21aを例に説明する。ここでは、カットパターンについて説明するが、ビアパターンについてもパターンの形状及び照射位置を変えれば同様の方法で露光できる。
【0051】
図6(a)に示すように、試料80の表面において、開口部21aを所定の縮小倍率αで縮小した照射領域23に電子ビームEB
3が照射される。この照射領域23は、矩形状であり、N+1層目のラインパターン81bの間のスペース部分に位置決めされる。
【0052】
各照射領域23のピッチP
2は、N+1層目のラインパターン81bの同一のピッチで並ぶ。照射領域23のX方向の長さA
2は、隣接するラインパターン81b間のスペースの幅D
2と同じ又はそれ以下に設定される。また、照射領域23のY方向の長さB
2は、N層目のラインパターン81aの幅D
1よりも長く設定される。
【0053】
このような照射領域23の形成するために、ビーム成形アパーチャプレート21の開口部21aの幅A
1、長さB
1及びピッチP
1は、照射領域23の幅A
2、長さB
2及びピッチP
2を、それぞれ縮小倍率α倍とすればよい。
【0054】
なお、カットパターンの幅、長さ及びピッチは、ラインパターンの線幅及びピッチを規定するプロセスノードに応じて変化する。そのため、本実施形態では異なるプロセスノードの試料80の露光を行う場合には、それに応じたサイズ及びピッチの開口部21aを備えたビーム成形アパーチャプレート21を用いて露光を行えばよい。
【0055】
次に、制御装置13の制御の下で、
図6(a)の矢印Mに示す方向にステージ装置7を移動させながら、照射領域23がN層目のラインパターン
81aを横切るように重なったタイミングで、所望の電子ビームEB
3をONさせることで、カットパターンの露光を行う。
【0056】
本実施形態では、ステージ装置7のX方向の変位を常に位置センサ9で検出し、その検出結果に基づいてステージフィードバック偏向器6で照射領域23のX方向の位置を
試料80の表面に追随させることで、X方向の精度を確保する。
【0057】
ステージフィードバック偏向器6は、試料80の回転方向の配置ずれによる誤差の修正にも用いられる。
【0058】
図7は、試料80の回転方向ずれに対する照射領域23の修正方法を示す平面図である。
【0059】
回転方向の配置ずれは、ステージ装置7の機械的な精度や、ステージ装置7に試料80を載置する際の誤差によって発生する。
図7に示すように、ステージ装置7のY方向の移動量の増大とともに、X方向の位置ずれΔXも増加する。そこで、位置決めマークなどを用いて予め試料80の回転方向の角度ずれΔθを測定しておき、ステージフィードバック偏向器6を用いて、ステージ装置7のY方向の移動に伴う照射領域23のX方向の位置ずれを補償する。これにより、試料80に回転ずれが生じていても高い精度でカットパターンの露光を行える。
【0060】
以上のように、本実施形態の電子ビーム露光装置10によれば、ビーム成形アパーチャプレート21の開口部21aを1次元方向に一列に並べるとともに、非対称照明光学系3を用いて、開口部21aのアレイに合わせて電子ビームの断面を偏平に変形させている。これにより、電子銃1の電子の放出量を増加させることなく、高い電流密度で複数の電子ビームEB
3を用いた露光を行うことができる。これにより、多数のビアやカットパターンを短時間で露光できる。
【0061】
また、電子ビームEB
3の位置決めは、ステージフィードバック偏向器6のみでよいため電子光学系を簡素化できる。
【0062】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る電子ビーム露光装置20のブロック図である。なお、本実施形態の電子ビーム露光装置20において、
図2の電子ビーム露光装置10と同一の構成には、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0063】
図8に示すように、本実施形態の電子ビーム露光装置20では、非対称照明光学系3とビーム成形アパーチャプレート21との間に、1次ビーム成形板41が配置されている点で、電子ビーム露光装置10と異なる。
【0064】
1次ビーム成形板41は、ビーム成形アパーチャプレート21の開口部21aの列よりもわずかに幅及び長さが大きい矩形状のスリット開口41aを備えている。このスリット開口41aにより電子ビームEB
1の断面が矩形に成形され、
ビーム成形アパーチャプレート21の上に矩形状の照射領域S
2を形成する。
【0065】
本実施形態では、1次ビーム成形板41を設けることで、ビーム成形アパーチャプレート21に照射される電子の量を減らすことができる。これにより、ビーム成形アパーチャプレート21の発熱による劣化や損傷を防止できる。
【0066】
ビーム成形アパーチャプレート21は、開口部21aの形成のために高精度の微細加工が施されるため高価な部品であるため、劣化や損傷はランニングコストの増大につながる。また、ビーム成形アパーチャプレート21が劣化した場合には、その交換作業を行う際に場合には装置の稼働を停止する必要があり、装置の稼働率が低下してしまう。
【0067】
これに対し、本実施形態によれば、電子ビームによるビーム成形アパーチャプレート21の劣化や損傷を低減でき、電子ビーム露光装置20の稼働率の向上及び運用時のコストの低減を図れる。
【0068】
なお、本実施形態において、1次ビーム成形板41と、ビーム成形アパーチャプレート21との間に、
スリット開口41aの像を結像させるための1又は複数組の電磁レンズを設けてもよい。この場合には、ビーム成形アパーチャプレート21上の照射領域S
2をよりシャープなものとすることができ、電子ビームの収差が低減される。その結果、試料80に表面により鮮明な開口部21aの像を結像させることができ、微細なパターンを精度よく露光できる。
【0069】
(第3実施形態)
図9は、本実施形態に係る電子ビーム露光装置30のブロック図である。なお、電子ビーム露光装置30において、
図2〜
図8で説明した電子ビーム露光装置10、20と同一の構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0070】
図9に示すように、本実施形態の電子ビーム露光装置30は、ビーム成形アパーチャプレート21と、非対称照明光学系3との間に、1次ビーム成形板42と、電磁レンズ61a、61bを備えている。
【0071】
本実施形態の1次ビーム成形板42には、開口部21aと同じ数の矩形状の開口部42aがX方向に一列に並ぶようにして形成されている。開口部42aは、ビーム成形アパーチャプレート21の開口部21aよりも大きく、且つ開口部21aとほぼ同じピッチで形成されている。
【0072】
非対称照明光学系3で偏平に成形された電子ビームEB
1は、1次ビーム成形板42の照射領域S
1に照射される。そして、1次ビーム成形板42の開口部42aを通過することで、複数本の矩形状の電子ビームEB
11に成形される。
【0073】
電子ビームEB
11は、電磁レンズ61a及び電磁レンズ61bによって、ビーム成形アパーチャプレート21の上に結像され、ビーム成形アパーチャプレート21の各開口部21aに対応する照射領域S
11に照射される。
【0074】
本実施形態によれば、1次ビーム成形板42によって、ビーム成形アパーチャプレート21に照射される電子の量を、スリット41aを用いる場合よりも減らすことができるため、ビーム成形アパーチャプレート21の劣化や損傷をより効果的に防止できる。
【0075】
また、1次ビーム成形板42によって電子ビームEB
11の電流量が減るため、電子同士のクーロン相互作用による色収差(電子の速度のばらつき)を減らすことができ、露光パターンの精細度向上を図ることができる。
【0076】
(第4実施形態)
図10は、本実施形態に係る電子ビーム露光装置40のブロック図である。なお、電子ビーム露光装置40において、
図2〜図9を参照して説明した電子ビーム露光装置10、20、30と同一の構成には、同一の符号を説明してその詳細な説明は省略する。
【0077】
図10に示すように、本実施形態の電子ビーム露光装置40は、開口部21aを複数列備えたビーム成形アパーチャ22と、それに対応したブランカープレート34と、開口部21aを選択するための選択偏向器62a、62bとを備えている。
【0078】
図11は、本実施形態に係るビーム成形アパーチャプレート22の部分拡大図である。
【0079】
図11に示すように、本実施形態のビーム成形アパーチャ22には、X方向に並んだ開口部21aの列が、Y方向に離れて少なくとも2列設けられている。各開口部21aは、同じ形状であり、X方向の位置も等しい。なお、図示の例では開口部21aは2列となっているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、3列またはそれ以上であっても構わない。
【0080】
一方、
図10に示すように、ビーム成形アパーチャプレート22の下には、ブランカープレート34が配置される。
【0081】
図12は、ブランカープレート34の平面図である。このブランカープレート34には、ビーム成形アパーチャプレート22の開口部21aに対応する部分に開口部31aが形成されている。各開口部31aは、開口部21aよりも大きく形成されており、開口部21aを通過した電子ビームが通過可能となっている。
【0082】
そして、これらの開口部31aのY方向の両側に、ブランキング電極31b、31cがそれぞれ設けられている。本実施形態では、X方向に同じ位置に形成された開口部31aの
ブランキング電極31b同士を配線37aを介して並列に接続し、ブランキング電極31c同士を配線37bを介して並列に接続する。
【0083】
これにより、開口部31aの並列数を増大させた場合であっても、駆動回路65a、65bの数を増加させる必要がなくなり、装置構成を簡略化できる。
【0084】
さらに、
図10に示すようにビーム成形アパーチャ22の上方には、第1の選択偏向器62aと第2の選択偏向器62bとが設けられている。
【0085】
第1の選択偏向器62aは、1次ビーム成形板41を通過した電子ビームEB
1を、Y方向に偏向させ、第2の選択偏向器62bは第1の選択偏向器62aで偏向された電子ビームEB
1を、光軸cに平行な向きに揃える。
【0086】
図13は、選択偏向器62a、62bによる電子ビームEB
1の照射領域S
2の変更を示す図である。
【0087】
図13の矢印に示すように、第1の選択偏向器62a及び第2の選択偏向器62bによって、照射領域S
2の位置を他のビーム成形アパーチャプレート22上の開口部21aの列に切り替えることができる。
【0088】
電子ビーム露光装置40では、長時間露光を行うことにより、ブランカープレート34の開口部31aによるブランキング動作
に異常が生じたり、ビーム成形アパーチャプレート21が劣化していずれかの電子ビーム
EB3に異常が生じるおそれがある。
【0089】
このような場合であっても、
図13に示すように、選択偏向器62a、62bを用いて別の開口部21aの列に切り替えることで、電子ビーム露光装置40を停止させることなく、露光を進めることができる。
【0090】
(第4実施形態の変形例)
図14は、本変形例に係るビーム成形アパーチャプレート23の部分拡大図である。
【0091】
図14に示すように、本変形例のビーム成形アパーチャプレート23には、それぞれ異なる形、サイズ及びピッチの開口部21a〜21dの列が複数設けられている。
【0092】
すなわち、ビーム成形用アパーチャプレート23には、カットパターン用の開口部21aの列と、ビアパターン用の開口部21bの列とが形成されている。さらに、異なるプロセスノードに対応したカットパターン用の開口部21c及びビアパターン用の開口部21dが形成されている。
【0093】
本変形例では、選択偏向器62a、62bを用いて電子ビーム
EB1の照射位置を、開口部21aの列から開口部21bの列に変えることで、カットパターンの露光とビアパターンの露光とを切り替えることができる。
【0094】
また、異なるプロセスノードの配線パターンが混在する試料80の露光を行う場合には、例えば開口部21aの列から開口部21cの列に電子ビームEB
1の照射位置を切り替えることで露光を続けることができる。
【0095】
これにより、ビーム成形アパーチャプレートの交換作業が不要となり、電子ビーム露光装置40を停止させることなく、カットパターンや
ビアパターンの露光を実施できる。
【0096】
(第5実施形態)
図15は、本実施形態に係る電子ビーム露光装置50のブロック図である。なお、電子ビーム露光装置50において、
図2〜
図14に示す電子ビーム露光装置10、20、30、40と同一の構成については同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0097】
図15に示すように、電子ビーム露光装置50は、非対称照明光学系3と1次ビーム成形板42との間に、1次ビーム成形板43への電子ビームEB
1の照射位置を調整する電磁偏向器63a、63bを備えている。
【0098】
1次ビーム成形板43には、複数の開口43a、43b、43cが形成されている。 開口43aはX方向に細長いスリットとなっており、開口43bはX方向に一列に並んだ矩形の開口である。開口部43cは、Y方向に細長いスリットとなっている。
【0099】
本実施形態の電子ビーム露光装置50は、電磁偏向器63a、63bを用いていずれかの開口43a〜43cに細長い電子ビームEB
1を照射する。
【0100】
なお、開口部43cのように、Y方向に縦長の開口に電子ビームEB
1を照射する場合には、
図3に示す非対称照明光学系3(四重極静電偏向器)の各電極
51aに印加する電圧の組み合わせを光軸周りに90°ずらせばよい。
【0101】
1次ビーム成形板43の下方には、ビーム成形アパーチャプレート24が設けられている。本実施形態のビーム成形アパーチャプレート24には、1次ビーム成形板43の開口部43a、43b、43cに対応する位置に、複数の開口部21a、24aが設けられている。このうち、開口部24aは、Y方向に一列に配置されている。
【0102】
この開口部24aを通過した電子ビームは、Y方向に一列に並ぶ。これにより、ステージ装置7をX方向に移動させながら電子ビームを照射することで、Y方向に延びたパターンに対するカットパターンを露光できる。
【0103】
そのため、本実施形態の電子ビーム露光装置50では、試料80を90°回転させることなく、X方向に延びるラインパターン81aに対するカットパターンと、Y方向に延びるラインパターン81bに対するカットパターンとを露光できる。
【0104】
(第6実施形態)
図16は、第6実施形態に係る電子ビーム露光装置60を示すブロック図である。なお、本実施形態において、
図2〜
図15に示す電子ビーム露光装置10、20、30,40、50と同一の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0105】
図16に示すように本実施形態の電子ビーム露光装置60は、真空チャンバー12内に複数のコラムセル11を備えており、これらのコラムセル11の下に試料80を保持するステージ装置7が設けられている。各コラムセル11内には、電子光学系を構成する電子銃、ビーム成形アパーチャプレート、ブランカープレート、最終アパーチャ、電磁レンズ群、及びステージフィードバック偏向器等(
図2〜
図15参照)が収められている。各コラムセル11からは、例えば2000本程度の電子ビームEB
3が照射される。
【0106】
図17は、
図16の電子ビーム露光装置60におけるコラムセル11の配置の一例を示す平面図である。
【0107】
図17に示すように、各コラムセル11は、例えば直径40mm程度の円筒状に形成されており、試料80として直径300mm〜400mmの半導体ウエハの上に例えば60本程度配置されている。各コラムセル11から発生した複数の電子ビームEB
3は、照射領域66に示す幅の領域に照射される。
【0108】
ステージ装置7を矢印に示すようにY
1又はY
2方向に移動させることで、試料表面にカットパターンやビアパターンの露光を行う。また、Y
1又はY
2方向にコラムセル11のピッチと同じ40mm程度移動させた後は、試料80をX
1方向に照射領域66の幅だけ移動させた後、Y
1又はY
2方向に移動させることで、露光を行う。
【0109】
本実施形態によれば、複数本のコラムセル11を用いて、同時に多数の電子ビームを用いて露光を行うため、より露光のスループットが向上する。
【0110】
各コラムセル11で2000本の電子ビームEB
3を発生させる場合には、コラムセル数を60本とした場合には全体で120000本の電子ビームEB
3で露光を行うことができる。
【0111】
各コラムセルあたりの露光面積が900mm
2となる程度のコラムセル配置数とした場合に、感度が100μC/cm
2のレジストに対して露光を行う場合について、露光の速度を試算したところ、1時間当たり10枚程度の処理能力が得られることが確認できた。