(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6215084
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/02 20060101AFI20171005BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20171005BHJP
【FI】
F24F11/02 103C
F24F11/02 102A
F25B13/00 104
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-34149(P2014-34149)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-158336(P2015-158336A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆英
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 篤
(72)【発明者】
【氏名】松尾 実
【審査官】
河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−83592(JP,A)
【文献】
特開2007−292407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00−11/08
F25B 5/02,6/02,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の室外機と複数の室内機とが並列に接続され、各前記室内機及び各前記室外機が所定の状態量を一定とするような自律分散制御を行う空調システムであって、
各前記室内機に対応して設けられた複数の室内機制御部と、
各前記室外機に対応して設けられた複数の室外機制御部と
を有し、
各前記室内機制御部及び各前記室外機制御部は、相互通信可能とされ、
いずれかの前記室内機において目標値が変更された場合に、該室内機と対応して動作する室外機を前記室外機制御部間の通信により決定し、決定した前記室外機と目標値が変更された前記室内機とを仮想的にグループ化し、
グループ化された前記室内機及び前記室外機にそれぞれ対応する前記室内機制御部及び前記室外機制御部は、相互に通信を行うことにより、前記目標値に追従するとともにグループ内での前記状態量の変動量を所定範囲内とするような制御指令をそれぞれ生成し、生成した制御指令を対応する前記室内機及び前記室外機にそれぞれ与える空調システム。
【請求項2】
グループ化されていない前記室内機及び前記室外機は、グループ化された前記室内機及び前記室外機における前記状態量が前記目標値に応じて変化している間において操作量をロックし、前記状態量が安定した後に前記操作量のロックを解除する請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
各前記室内機と各前記室内機にそれぞれ対応する前記室内機制御部との間、及び、各前記室外機と各前記室外機にそれぞれ対応する前記室外機制御部との間は、それぞれ1対1通信とされている請求項1または請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
複数の前記室内機制御部及び複数の前記室外機制御部は、1つまたは複数のハードウェアに仮想化された制御部として集約して搭載されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の空調システム。
【請求項5】
複数の室外機と複数の室内機とが並列に接続され、各前記室内機及び各前記室外機が所定の状態量を一定とするような自律分散制御を行う空調システムに適用される制御装置であって、
各前記室内機に対応して設けられた複数の室内機制御部と、
各前記室外機に対応して設けられた複数の室外機制御部と
を有し、
各前記室内機制御部及び各前記室外機制御部は、相互通信可能とされ、
いずれかの前記室内機において目標値が変更された場合に、該室内機と対応して動作する室外機を前記室外機制御部間の通信により決定し、決定した前記室外機と目標値が変更された前記室内機とを仮想的にグループ化し、
グループ化された前記室内機及び前記室外機にそれぞれ対応する前記室内機制御部及び前記室外機制御部は、相互に通信を行うことにより、前記目標値に追従するとともにグループ内での前記状態量の変動量を所定範囲内とするような制御指令をそれぞれ生成し、生成した制御指令を対応する前記室内機及び前記室外機にそれぞれ与える制御装置。
【請求項6】
複数の室外機と複数の室内機とが並列に接続され、各前記室内機及び各前記室外機が所定の状態量を一定とするような自律分散制御を行う空調システムの制御方法であって、
各前記室内機に対応して設けられた複数の室内機制御部と、各前記室外機に対応して設けられた複数の室外機制御部とを相互通信可能な構成とし、
いずれかの前記室内機において目標値が変更された場合に、該室内機と対応して動作する室外機を前記室外機制御部間の通信により決定し、決定した前記室外機と目標値が変更された前記室内機とを仮想的にグループ化し、
グループ化された前記室内機及び前記室外機にそれぞれ対応する前記室内機制御部及び前記室外機制御部は、相互に通信を行うことにより、前記目標値に追従するとともに、グループ内での前記状態量の変動量を所定範囲内とするような制御指令をそれぞれ生成し、
生成した制御指令を対応する前記室内機及び前記室外機にそれぞれ与える空調システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに係り、特に、空調システムの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の室外機と複数の室内機とを共通の冷媒配管で接続してなる空調システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような空調システムにおいて、各室内機制御部及び各室外機制御部が、冷媒圧力の変動を許容範囲内とするという共通の制御ルールに従って、それぞれに対応する室内機及び室外機を制御する自律分散制御が行われる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−292407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の自律分散制御では、システムの安定性と応答性とは相反するものであり、両立させることが難しかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、システムの応答性と安定性とを両立させることのできる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、複数の室外機と複数の室内機とが並列に接続され、各前記室内機及び各前記室外機が所定の状態量を一定とするような自律分散制御を行う空調システムであって、各室内機に対応して設けられた複数の室内機制御部と、各室外機に対応して設けられた複数の室外機制御部とを有し、各前記室内機制御部及び各前記室外機制御部は、相互通信可能とされ、いずれかの前記室内機において目標値が変更された場合に、該室内機と対応して動作する室外機を前記室外機制御部間の通信により決定し、決定した前記室外機と目標値が変更された前記室内機とを仮想的にグループ化し、グループ化された前記室内機及び前記室外機にそれぞれ対応する前記室内機制御部及び前記室外機制御部は、相互に通信を行うことにより、前記目標値に追従するとともに前記グループ内での前記状態量の変動量を所定範囲内とするような制御指令をそれぞれ生成し、生成した制御指令を対応する前記室内機及び前記室外機にそれぞれ与える空調システムである。
【0007】
上記態様によれば、室内機の目標値が変更された場合には、この室内機と対になって動作する室外機が選定され、選定された室外機と目標値が変更された室外機とがグループ化される。そして、グループ化された室内機及び室外機の間で、目標値変更に伴う状態量の変動を所定範囲内に抑制するような制御指令が生成され、各制御指令が対応する室内機及び室外機に与えられる。これにより、目標値変更に伴う状態量の変化をグループ化された室内機と室外機との間に留めることができ、システムを安定させることができる。また、目標値の変更に伴う制御をグループ化された室内機と室外機との間に限定するので、応答性を向上させることができる。
【0008】
上記空調システムにおいて、前記グループ化されていない前記室内機及び前記室外機は、前記グループ化された前記室内機及び前記室外機における前記状態量が前記目標値に応じて変化している間において操作量をロックし、前記状態量が安定した後に前記操作量のロックを解除することとしてもよい。
【0009】
このようにすることで、グループ化された室内機及び室外機における状態量の変動の影響がグループ化されていない室内機や室外機に外乱として生じたとしても、この外乱に応答することを回避することができ、安定した作動を維持することができる。
【0010】
上記空調システムにおいて、各前記室内機と各前記室内機にそれぞれ対応する前記室内機制御部との間、及び、各前記室外機と各前記室外機にそれぞれ対応する前記室外機制御部との間は、それぞれ1対1通信とされていてもよい。
【0011】
このように、対応機器と制御部との通信を1対1通信とすることで、データ通信量を減らすことができ、通信の遅延による応答の遅延を回避することが可能となる。
【0012】
上記空調システムにおいて、複数の前記室内機制御部及び複数の前記室外機制御部は、1つまたは複数のハードウェアに仮想化された制御部として集約して搭載されていてもよい。
【0013】
このように、複数の制御部を1つまたは複数のハードウェア上に仮想化された制御部として集約して搭載させることにより、コストの低減や装置の小型化を図ることが可能となる。
【0014】
本発明の第2態様は、複数の室外機と複数の室内機とが並列に接続され、各前記室内機及び各前記室外機が所定の状態量を一定とするような自律分散制御を行う空調システムに適用される制御装置であって、各室内機に対応して設けられた複数の室内機制御部と、各室外機に対応して設けられた複数の室外機制御部とを有し、各前記室内機制御部及び各前記室外機制御部は、相互通信可能とされ、いずれかの前記室内機において目標値が変更された場合に、該室内機と対応して動作する室外機を前記室外機制御部間の通信により決定し、決定した前記室外機と目標値が変更された前記室内機とを仮想的にグループ化し、
グループ化された前記室内機及び前記室外機にそれぞれ対応する前記室内機制御部及び前記室外機制御部は、相互に通信を行うことにより、前記目標値に追従するとともに前記グループ内での前記状態量の変動量を所定範囲内とするような制御指令をそれぞれ生成し、生成した制御指令を対応する前記室内機及び前記室外機にそれぞれ与える制御装置である。
【0015】
本発明の第3態様は、複数の室外機と複数の室内機とが並列に接続され、各前記室内機及び各前記室外機が所定の状態量を一定とするような自律分散制御を行う空調システムの制御方法であって、各室内機に対応して設けられた複数の室内機制御部と、各室外機に対応して設けられた複数の室外機制御部とを相互通信可能な構成とし、いずれかの前記室内機において目標値が変更された場合に、該室内機と対応して動作する室外機を前記室外機制御部間の通信により決定し、決定した前記室外機と目標値が変更された前記室内機とを仮想的にグループ化し、グループ化された前記室内機及び前記室外機にそれぞれ対応する前記室内機制御部及び前記室外機制御部は、相互に通信を行うことにより、前記目標値に追従するとともに前記グループ内での前記状態量の変動量を所定範囲内とするような制御指令をそれぞれ生成し、生成した制御指令を対応する前記室内機及び前記室外機にそれぞれ与える空調システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自律分散制御を前提とする場合に、システムの応答性を安定性とを両立させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空調システムの概略構成を示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る空調システムに適用される制御装置の概略構成を示した図である。
【
図3】一般的な自律分散制御において、室内機の設定温度が変更された場合の高圧側圧力の応答例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態に係る空調システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る空調システム1の冷媒系統について概略的に示した図である。
図1に示すように、空調システム1は、複数の室外機2a、2b及び複数の室内機3a、3bを備えている。室外機2a、2b及び室内機3a、3bはそれぞれ並列に接続されている。ここで、
図1では、室外機及び室内機を2台ずつ備える構成を例示しているが、台数についてはこの例に限定されず、2台以上設けられていればよい。
【0019】
室外機2a、2bはそれぞれ、冷媒を圧縮して送出する圧縮機21、冷媒の循環方向を切り換える四方弁22、冷媒と外気との間で熱交換を行う室外熱交換器23、室外ファン24、冷媒の機液分離等を目的として圧縮機21の吸入側配管に設けられたアキュムレータ25等を主な構成として備えている。また、室外機2a、2bには、高圧側の冷媒圧力を計測する高圧側圧力センサ26、低圧側の冷媒圧力を計測する低圧側圧力センサ27がそれぞれ設けられている。なお、室外機2bは、室外機2aと同様の構成を有しているため、図示を省略している。
【0020】
室内機3a、3bはそれぞれ、膨張弁31、室内熱交換器32、及び室内ファン33を主な構成として備えている。また、室内機3a、3bには、高圧側の冷媒圧力を計測する高圧側圧力センサ36、低圧側の冷媒圧力を計測する低圧側圧力センサ37、空調温度を計測する温度センサ38がそれぞれ設けられている。なお、室内機3bは、室内機3aと同様の構成を有しているため、図示を省略している。
【0021】
室外機2aの高圧側冷媒配管5a、室外機2bの高圧側冷媒配管5b、室内機3aの高圧側冷媒配管6a、室内機3bの高圧側冷媒配管6bは、ヘッダ7により接続されている。また、室外機2aの低圧側冷媒配管15a、室外機2bの低圧側冷媒配管15b、室内機3aの低圧側冷媒配管16a、室内機3bの低圧側冷媒配管16bは、ヘッダ8において接続されている。
これにより、例えば、冷房運転の場合には、室外機2a、2bから送出された冷媒は、ヘッダ7において合流し、室内機2a,2bに分岐して供給可能とされ、室内機2a、2bからの戻り冷媒はヘッダ8において合流し、室外機3a、2bに分岐されて供給可能とされている。また、暖房時においては、逆の冷媒流れとなる。
【0022】
図2は、本実施形態に係る空調システム1の制御装置の概略構成を示した図である。
図2に示すように、制御装置10は、室外機2aを制御する室外機制御部40a、室外機2bを制御する室外機制御部40b、室内機3aを制御する室内機制御部50a、及び室内機3bを制御する室内機制御部50bを備えている。以下、室外機制御部40a等を区別せずに、全ての制御部を意味するときは、単に「制御部」という。
【0023】
本実施形態において、室外機制御部40a、室外機制御部40b、室内機制御部50a、及び室内機制御部50bは、通信媒体11を介して相互通信が可能な構成とされている。通信媒体11は、有線、無線を問わず、例えば、イーサネット等のローカルエリアネットワークが一例として挙げられる。
【0024】
また、室外機制御部40aと室外機2a、室外機制御部40bと室外機2b、室内機制御部50aと室内機3a、室内機制御部50bと室外機2bとは、通信媒体12を介した1対1対応の通信とされている。
【0025】
このように、制御部間については、例えば、イーサネット等の通信速度が比較的速い(例えば、1Gbps以上)通信媒体を介して相互通信が可能となるので、データ通信の遅延による応答性の低下することはない。また、一般的に、制御部と機器との間の通信媒体12については、通信速度が比較的遅い(例えば、19.2kbps等)通信媒体が使用されるが、1対1対応の通信とすることで、通信データ量を低減させることで、応答性の低下を回避することが可能となる。
【0026】
なお、室外機制御部40a、室外機制御部40b、室内機制御部50a、及び室内機制御部50bについては、上述した構成の他、例えば、これらの制御部が1つまたは複数のハードウェア上に、仮想化された制御部として形成され、相互間の通信が可能とされているとともに、それぞれが独立動作可能な構成とされていてもよい。このように、仮想化された制御部として各制御部を形成することにより、装置全体の小型化やコスト低減を図ることが可能となる。
【0027】
あるいは、室外機制御部40a、室外機制御部40b、室内機制御部50a、及び室内機制御部50bは、クラウド上に存在していてもよい。
このように、室外機制御部40a、室外機制御部40b、室内機制御部50a、及び室内機制御部50bの存在形態については、特に限定されず、CPU資源やコスト、装置サイズなどに応じて適宜最適な方法を採用すればよい。
【0028】
室外機制御部40a、40b、室内機制御部50a、50bは、通常時において、空調システム1における所定の状態量を一定とするような自律分散制御を行う。
例えば、室内機制御部50a、50bの各々は、それぞれ対応する室内機3a、3bの高圧側圧力(状態量)が予め設定されている所定の室内機高圧許容範囲内(例えば、
図3参照)となるように、低圧側圧力(状態量)が予め設定されている所定の室内機低圧許容範囲内となるように、それぞれの膨張弁31の弁開度を調整して、冷媒流量を制御する。
【0029】
また、室外機制御部40a、40bの各々は、それぞれ対応する室外機2a、2bの高圧側圧力(状態量)が予め設定されている所定の室外機高圧許容範囲内(例えば、
図3参照)となるように、低圧側圧力(状態量)が予め設定されている所定の室外機低圧許容範囲内となるように、それぞれの圧縮機21の回転数を制御する。
ここで、例えば、室内機低圧許容範囲は室外機低圧許容範囲よりも広く設定されており、室内機高圧許容範囲は室外機高圧許容範囲よりも広く設定されている。
【0030】
次に、本実施形態に係る空調システム1において、例えば、リモコン操作等により、室内機の設定温度が変更された場合(上記「通常時」に対して「過渡時」という)における各制御部の動作について説明する。以下の説明では、便宜上、室内機3aの設定温度が変更された場合について説明する。
【0031】
この場合、室内機3aの室内機制御部50aから他の制御部である室内機制御部50b、室外機制御部40a、40bに対して設定温度変更に関する情報が送信される。例えば、室内機制御部50aは、設定温度変更に必要とされる冷媒流量の情報を送信する。室外機制御部40a、40bは相互に情報を交換し、室内機3aの冷媒流量の増減に対応する室外機を決定する。
【0032】
例えば、室外機2a、2bのうち、冷媒流量の増加に伴う負荷率の増減に基づいて運転効率(例えば、成績係数)を求め、運転効率の最もよい室外機に決定する。なお、決定手法については、予めアルゴリズムを各室外機制御部40a、40bに格納しておき、このアルゴリズムに従っていずれかの室外機を選定することとすればよい。以下、説明の便宜上、室外機2aが選定されたものとして説明をする。
【0033】
上記のように、設定温度が変更された室内機3aに対応して動作する室外機2aが決定されると、室内機3aに対応する室内機制御部50aと、室外機2aに対応する室外機制御部40aとを仮想的にグループ化する。例えば、室内機制御部50aと室外機制御部40aとの間でサブドメインを形成する。そして、サブドメイン内の室内機制御部50aと室外機制御部40aとの間で相互通信を行うことにより、変更後の設定温度に追従するとともに、グループ化された室内機3a及び室外機2aにおける冷媒圧力の変動量を所定の範囲内とするような制御指令をそれぞれ生成する。
【0034】
具体的には室内機制御部50aは、変更後の設定温度に追従するような膨張弁31の開度指令及び室内ファン33の回転数をフィードフォワード制御により生成し、室外機制御部40aは室内機制御部50aにより生成される膨張弁31の開度指令に基づいて、冷媒流量の変化量を推定し、この変化量に応じた圧縮機21の回転数指令および室外ファン24の回転数指令をフードフォワード制御により生成する。
【0035】
そして、室内機制御部50aは、通信媒体12を介して、生成した各種指令を室内機3aに送信するとともに、室外機制御部40aは通信媒体12を介して生成した各種指令を室外機2aに送信する。これにより、室内機3aにおいては、受信した制御指令に基づいて膨張弁31の弁開度及び室内ファン33の回転数が制御され、室外機2aにおいては、受信した制御指令に基づいて圧縮機21の回転数及び室外ファン24の回転数が制御される。
このように、室内機3aの膨張弁31の弁開度及び室外機2aの圧縮機21の回転数がほぼ同時期に変化することにより、室内機3aの膨張弁31の弁開度が変化することに伴う冷媒圧力の変化を、圧縮機21の回転数変化による冷媒流量の変化により吸収することができる。したがって、室内機3aの設定温度が変更されることに伴う冷媒圧力の変化をドメイン内、換言すると、室内機3aと室外機2aとのグループ内に留めることができ、空調システム1における冷媒の圧力変動を所定の範囲内に抑制することが可能となる。
そして、室内機3aの温度が変更後の設定温度に一致することで、空調システム内の冷媒の状態が安定すると、室内機3a及び室外機2aのグループ化が解除される。これにより、各制御部による通常時の自律分散制御が再開される。
【0036】
また、グループ化されていない室内機3b及び室外機2bにおいては、上記グループ化された室内機3aの膨張弁31の弁開度及び室外機2aの圧縮機21の回転数等が変化している期間において、室内機制御部50b及び室外機制御部40bが室内機3b及び室外機2bの膨張弁や圧縮機等の操作量をロックし、空調システム1における冷媒圧力が安定した後に、上記操作量のロックを解除する。
これにより、室内機3a及び室外機2aにおける冷媒圧力の変動の影響が室内機3b及び室外機2bに外乱として生じたとしても、この外乱に応答して室内機3bの膨張弁(不図示)や室外機2bの圧縮機(不図示)の操作量が変動することを回避することができ、安定した作動を維持することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る空調システム1及びその制御装置10並びに制御方法によれば、室内機の設定温度が変化した場合には、この室内機の設定温度変化に対応する室外機を選定し、選定した室内機と室外機とがグループ化される。そして、グループ化された室内機及び室外機の間で、設定温度変更に伴う冷媒圧力の変動を所定範囲内に抑制するように、膨張弁の弁開度及び圧縮機の回転数がほぼ同時期に制御される。これにより、設定温度の変更に伴う冷媒圧力の変化をグループ化された室内機と室外機との間に留めることができ、システムを安定させることができる。また、設定温度の変更に伴う制御をグループ化された室内機と室外機との間に限定するので、応答性を向上させることができる。
【0038】
図3に、一般的な自律分散制御において、室内機の設定温度が変更された場合の高圧側圧力の応答例を示す。例えば、一般的な自律分散制御においては、以下のような制御が行われる。
すなわち、いずれかの室内機の設定温度が変更となった場合、この室内機の膨張弁の弁開度が設定温度に従って制御される。膨張弁の弁開度が変化することにより、冷媒圧力が変化すると、冷媒配管を共通とする他の室内機及び室外機は、この冷媒圧力の変化を予め設定された所定の範囲内に抑制しようと動作する。これにより、各室内機においては、膨張弁の弁開度が調整され、各室外機においては圧縮機の回転数が制御される。このような制御が各室内機及び各室外機においてフィードバック制御において行われることにより、徐々に冷媒圧力が所定の値に収束する。このような自律分散制御では、フィードバックゲインが高ければ
図3に実線で示すように応答性は向上するが、オーバーシュートが発生し、系が不安定となる。一方、フィードバックゲインを低くすると
図3に破線で示すように、オーバーシュートの発生を抑制でき、系は安定するが、応答性が劣る。
【0039】
これに対し、本実施形態に係る空調システム1及びその制御装置並びに制御方法によれば、上述したように、設定温度が変更された室内機に対応して動作する室外機を選定してグループ化し、グループ化した室内機と室外機との間で、冷媒圧力がほぼ一定となるように膨張弁の制御及び圧縮機の回転数制御が行われるので、冷媒圧力の変動を従来に比べて抑制することができ、システムの応答性と安定性の両立を図ることが可能となる。
【0040】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 空調システム
2a、2b 室外機
3a、3b 室内機
11、12 通信媒体
21 圧縮機
24 室外ファン
31 膨張弁
33 室内ファン
40a、40b 室外機制御部
50a、50b 室内機制御部