特許第6215215号(P6215215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6215215乾式電極による生体電位検出のための装置、システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6215215
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】乾式電極による生体電位検出のための装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0408 20060101AFI20171005BHJP
   A61B 5/04 20060101ALI20171005BHJP
【FI】
   A61B5/04 300D
   A61B5/04 300V
   A61B5/04ZDM
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-537338(P2014-537338)
(86)(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公表番号】特表2014-532455(P2014-532455A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】US2012061210
(87)【国際公開番号】WO2013059739
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年10月19日
(31)【優先権主張番号】61/548,988
(32)【優先日】2011年10月19日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514099662
【氏名又は名称】コグニオニクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】COGNIONICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】チー、ユー マイク
【審査官】 関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−065083(JP,A)
【文献】 特開平11−290286(JP,A)
【文献】 特開平06−335459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04 − 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者との間で電気信号を授受するための生体電位電極であって、
外部電気的伝導体、
選択透過膜、および
前記電気的伝導体の一部および前記選択透過膜の一部と電気的に連絡しているように配置される伝導性媒質を含み、
電位は、前記被験者から前記選択透過膜を越えて前記伝導性媒質中に結合し、次に前記電気的伝導体に伝達され、
前記伝導性媒質は、イオン電荷担体をもつ固体ヒドロゲルを含み、
前記伝導性媒質が親水性であって最小の経時水分蒸散を確保し、前記選択透過膜は、被験者の身体と伝導性媒質間のイオン交換を可能にする一方、同時に前記選択透過膜の外部表面が前記身体の皮膚に対し乾燥した表面を呈するように、伝導性媒質から湿気を阻止する、生体電位電極。
【請求項2】
前記電位が前記外部伝導体から前記伝導性媒質を経由し、前記選択透過膜を越えて前記被験者に達する経路により前記被験者に伝達される請求項1に記載の生体電位電極。
【請求項3】
前記選択透過膜が前記伝導性媒質に対して不浸透性であり、前記伝導性媒質を保護し、かつ、乾燥接触表面を前記被験者に呈する請求項1に記載の生体電位電極。
【請求項4】
前記選択透過膜が前記伝導性媒質に接着される請求項1に記載の生体電位電極。
【請求項5】
前記選択透過膜が前記伝導性媒質をカプセル化して前記伝導性媒質を保存、保護する請求項1に記載の生体電位電極。
【請求項6】
前記選択透過膜が透析管を含む請求項1に記載の生体電位電極。
【請求項7】
前記電子伝導体が銀塩化銀表面を含む請求項1に記載の生体電位電極。
【請求項8】
被験者との間で電気信号を授受するための生体電位電極、および高入力インピーダンス緩衝増幅器を備える監視システムにおいて、
前記生体電位電極は、外部電気的伝導体、選択透過膜、および前記電気的伝導体の一部および前記選択透過膜の一部と電気的に連絡しているように配置される伝導性媒質を含み、電位は、前記被験者から前記選択透過膜を越えて前記伝導性媒質中に結合し、次に前記電気的伝導体に伝達され、前記伝導性媒質は、イオン電荷担体をもつ固体ヒドロゲルを含み、前記伝導性媒質が親水性であって最小の経時水分蒸散を確保し、前記選択透過膜は、被験者の身体と伝導性媒質間のイオン交換を可能にする一方、同時に前記選択透過膜の外部表面が前記身体の皮膚に対し乾燥した表面を呈するように、伝導性媒質から湿気を阻止し、
前記生体電位電極が高入力インピーダンス緩衝増幅器に接続される
監視システム。
【請求項9】
被験者の皮膚から生体電位電気信号を検出する方法であって、
(a)外部電気的伝導体、選択透過膜、および前記電気的伝導体の一部および前記選択透過膜の一部と電気的に連絡しているように配置される伝導性媒質を含む電極であって、電位は、前記被験者から前記選択透過膜を越えて前記伝導性媒質中に結合し、次に前記電気的伝導体に伝達され、前記伝導性媒質は、イオン電荷担体をもつ固体ヒドロゲルを含み、前記伝導性媒質が親水性であって最小の経時水分蒸散を確保し、前記選択透過膜は、被験者の身体と伝導性媒質間のイオン交換を可能にする一方、同時に前記選択透過膜の外部表面が前記身体の皮膚に対し乾燥した表面を呈するように、伝導性媒質から湿気を阻止する、電極を前記被験者の皮膚と通信状態に置くこと、
(b)前記被験者から前記選択透過膜を超えて前記伝導性媒質に結合された前記電位を受け取ること、および
(c)前記被験者からの前記電位を前記電気的伝導体に伝達すること、を含む方法。
【請求項10】
前記選択透過膜が前記伝導性媒質に対して不浸透性であり、前記伝導性媒質を保護し、かつ、乾燥接触表面を前記被験者に呈する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記選択透過膜が前記伝導性媒質に接着される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記選択透過膜が前記伝導性媒質をカプセル化して前記伝導性媒質を保存、保護する請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求する主題事項の実施形態は、乾燥生体電位センサーからの信号品質を改善する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心電図(ECG:electrocardiograms)、脳電図(EEG:electroencephalograms)または筋電図(EMG:electromyograms)などの生体電位信号の記録は、これまで身体に接着剤により固定される伝導性の「湿式」電極の使用を必要としてきた。この「湿式」は、流体(一般的に液体またはゲル)が身体と記録装置間の確実な低抵抗電気的接続を与え、それにより良好な信号を確保することを指している。これらの伝導性湿式電極は、一般的に電極を身体に固定する接着剤の使用も必要とする。
【0003】
しかし、電解質ゲルおよび皮膚接着剤の使用は、面倒であり、貼付するのに時間がかかることがあり、かつ、長時間観察の場合に、しばしば、装着を拒みたくなるほど不快である。乾燥する電極ゲルから生ずる皮膚の炎症、日常使用中の脱落などの問題のために患者の装着不順守およびデータの喪失がもたらされている。
【0004】
湿式接着剤電極の限界に応じて、湿潤媒質またはゲル媒質を必要としない代替乾式電極が最近研究されている。先へ進む前に、一般的に使用されている2種類の生体電位電極を明確に定義しておくことが有益である。本発明の主題事項およびこの分野一般に関する限り、皮膚接触生体電位電極は、「湿式」と「乾式」に分類することができる。前述したように、湿式電極は、一般的に臨床用および科学的適用において使用され、かつ、特に使用時に電極の表面および被験者の皮膚に曝される伝導性流体の適用を必要とする。流体は、電極パッケージの一体部分である場合(たとえば、使い捨てECG電極)と、別途適用される場合がある(たとえば、標準再使用EEGカップ電極)。いずれにせよ、伝導性流体の目的は、電極と皮膚間の接触インピーダンスを低減すること、および信号転送を容易にすることである。生理食塩水(たとえば、皮膚汗)から高い伝導性をもつ特別調製ゲル(たとえば、EEG頭皮クリーム)まで種々の流体が可能である。その他の湿式電極は、はっきりした液体形状ではなく、ヒドロゲルを利用することもできるが、それにもかかわらず、これらは、大部分水であり、かつ、皮膚の表面を水和する。それ自身の不純物のために伝導性をもつ普通の水道水を使用することも可能である。
【0005】
しかしながら、乾式電極は、伝導性流体の明示的適用の必要を除去する。乾式電極は、その最も単純な形態において、裸の金属板である。この電極は、乾燥皮膚に直接接触して働く。乾式電極もやはり特有の量の「水分」で動作することに着目することが重要である。単純な金属板の場合、皮膚の水分と結合された大気からの周囲水分がやはり信号転送を促進する。これは、特に汗が時間とともに増えるときに特に顕著であり、信号品質を改善する。「水分」の存在は、より複雑な設計の場合でさえ明らかである。一例として、微小針乾式電極は、皮膚に突き刺さり、皮膚の下の水分を伝導のために利用する。
【0006】
しかし、湿式電極と乾式電極の差異は、流体の源、その適用およびその主観的感覚にある。湿式電極と対照的に、乾式電極は、皮膚に対する流体の特定の適用または「湿潤」媒質の曝露を必要としない。乾式電極は、皮膚および電極の表面が乾いていても(たとえば、汗がない)動作し、かつ、枯渇する流体がないので多数回再使用することができる。最後に、乾式電極は、利用者にとって単に「乾いている」ように感じられる。それは、安静状態の被験者の身体上に一般的に存在しない添加水分を導入しないからである。その結果、乾式電極は、快適性および寿命の点において多数の長所をもっており、それにより長期の観察適用の場合に特に適する。主な短所は、低い信号転送による信号品質の明らかな低下であり、それがこの発明の主題事項の実施形態の取り組みの対象である。
【0007】
乾式電極は、同じ生体電位信号を検出することにより動作するが、しかし、それは、伝導性ゲルが存在しないので、はるかに高い電極インピーダンス経由である。標準湿式接着剤電極と比較して、乾式電極は、接着剤なしに使用した場合、不安定なオフセット、高いドリフト、長い整定時間および動きアーチファクトを含む種々の信号品質問題に遭いやすい。乾式電極の信号品質問題の大部分は、乾燥している皮膚−金属電気化学的界面の低品質から生ずる。皮膚に接触する前に湿式/ゲル電解液により緩衝される標準湿式Ag/AgCl電極は、Ag/AgCl半電池電位の安定性により一貫して高い信号品質を可能にする。その結果、身体中のイオン電荷は、湿ったゲルの低い接触インピーダンスを介して電子信号に容易に変換される。一般的に裸金属の「円板」を含む乾式電極は、明示的緩衝電解質が存在しないために、皮膚と接触したときに不安定な界面を形成する。この電極は、身体からの電位を伝えるために寄生容量のほかに環境湿度および汗に依存しなければならない。緩衝電解質の欠如は、ドリフト・ノイズ、高い接触インピーダンスおよび動きアーチファクトの影響を受けやすいこととなって現れる。その結果、乾式電極は、湿式電極に比べて劣る信号品質のために医療用にはあまり受け入れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,590,810号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0073104号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術設計は、非電解界面を緩衝する手段として湿潤剤、一般的に水分を導入することにより信号品質問題の軽減に努めてきた。Kopecky(特許文献1)は、溶液を密閉し、かつ、皮膚に快い表面を呈するPTFE(Teflon(TM))薄膜により覆われた電解質を蓄える空洞を含むセンサーについて記述している。しかし、この薄膜は、身体と電極間の電気伝導を増進するために外部的に適用される湿潤過程を必要とした(すでに発汗している被験者に使用する場合を除く)。同様に、Brun del Re(特許文献2)は、超吸収重合体(SAP:superabsorbent polymer)を閉じ込め層(綿織物が好ましい)内に固定する設計を開示している。このSAPは、使用前にあらかじめ浸され、かつ、水分を多孔質閉じ込め層経由で皮膚上に拡散して結合を改善する。しかし、これらの設計は、電極の表面と皮膚の両方における流体適用を本質的に必要とすることから、依然として湿式電極に分類される。長期間使用の場合、これらには、皮膚に対する湿潤表面の曝露による快適性問題および流体適用(Kopecky)および補充(Brun del Re)の必要性から生ずる使い勝手の問題がある。請求する主題事項の実施形態は、加湿のための作用剤/過程の使用も被験者の皮膚に対する湿気の導入も行わないにも関わらず、標準湿式電極と同様な接触品質を達成することができる真に「乾式」の電極を実現する方法を含んでいる。この実施形態は、高品質の長期観察適用に適する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求する主題事項のいくつかの態様に従って、3つの主要な構成要素を含む装置を提供する。第1の構成要素は、伝導基体の手段により実現することができる電子増幅回路への接続である。第2の構成要素は、増幅回路への接続部に対する電気化学的界面を形成する伝導性のゲルまたは湿潤媒質である。第3の構成要素は、身体と伝導性媒質間のイオン交換を可能にする一方、同時に薄膜の外部表面が使用者の皮膚に対し乾燥した表面を呈するように湿気を阻止できるほど十分に制限的な薄膜である。この電極は、湿潤することも準備することもなく、乾いた皮膚の上に直接置くことができる。生体電位は、皮膚から伝導性媒質へ薄膜を通過するイオン伝導経由で結合され、そして、電子信号に変換される。
【0011】
本件実施形態の多くは、被験者との間で電気信号を送受するための生体電位電極(それは電気的伝導体を含んでいる)、被験者に対し乾いた表面を呈するためにイオン伝導に対し選択的な透過性を有する薄膜、および電気的伝導体の一部分および薄膜の一部分と通信するように配置される伝導性媒質を含んでいる。電位は、被験者から薄膜を通過して伝導性媒質に結合され、次に被験者から電気的に転送される。別の実施形態では、電位は、外部導体から、伝導性媒質を経由し薄膜を越えて被験者に到る経路により被験者に転送され得る。
【0012】
一部の実施形態では、電位は、外部導体から、伝導性媒質を経由し薄膜を越えて被験者に到る経路より被験者へ伝達され、かつ、電位は、被験者から薄膜を越えて伝導性媒質に結合され、次に被験者から電気的導体に伝達され得る。また、一部の実施形態では、媒質は、薄膜の表面の乾燥状態の維持に役立つために親水性である。実施形態は、伝導性媒質を保護し、かつ、乾燥状態の接触表面を被験者に与えるために伝導性媒質に対し不浸透性の薄膜を含むこともできる。
【0013】
実施形態は、伝導性媒質に接着する薄膜を含むこともでき、また、実施形態のいくつかは、伝導性媒質を保存および保護するために伝導性媒質をカプセル化する薄膜を含む。記述される実施形態の多くは、イオン電荷担体をもつゲルまたは流体からなる伝導性媒質を使用する。1つの実施形態では、薄膜は透析管であり、別の実施形態では、生体電位電極は高入力インピーダンス緩衝増幅器に接続される。別の実施形態は、銀塩化銀表面からなる電子伝導体を含む。その他の実施形態は、記述される生体電位電極を使用するシステムおよび方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】請求する主題事項の実施形態による天板、底板、電極、ケーブル、開口部、中空内部、および弾性支持部を示すセンサー組立品の側面図である。
図2図1のセンサー組立品の側面図である。
図3】請求する主題事項による別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
請求する主題事項の実施形態に従って、乾式および/または非接触電極を構築、装着および利用するための種々の装置、システムおよび方法システムを提供する。請求する主題事項の装置およびシステムについて、本発明主題事項の一定の典型的実施形態を示すがしかしそれのみではない図1〜3を参照しつつ一般的に説明する。
【0016】
これらの実施形態では、乾式電極は、電気的伝導体101、たとえばAg/AgClプレートから構成される。電気的伝導体101は、後続の増幅および信号収集のためのその他の回路に接続される。別の実施形態は、Ag/AgCl金属プレートの代わりに、またはそれに加えて別の電気的伝導体を利用することができる。たとえば、標準ECGスナップ電極と同様な、Ag/AgClで被覆されたプラスチック・カップも使用することができる。別の例では、ゴールド・カップまたは銀、スズおよび当業者周知のその他の電極物質などのその他の適切な導体もAg/AgCl金属プレートの代わりに使用することができる。他の実施形態は、1つ以上の織物基板(それらは、Ag/AgClまたはその他の金属インキ・プリントである)を含み得る。しかし、いくつかの実施形態では、Ag/AgClの使用は、高品質の界面、したがって低雑音および低ドリフトをもたらし、それにより優れた信号を与える。電子伝導体101の最終的選択は、所望の価格、サイズおよび信号品質に依存し得る。
【0017】
示した実施形態では、電気的伝導体は、金属プレートとして描かれている。1本以上の露出ワイヤ、微小針状アレイまたはカップを含むその他の構造も可能である。必要条件は、電気的伝導体が伝導性媒質102と接触することである。形状の選択は、最終製品について希望する形状因子および寸法に依存する。実施形態は、被験者と接触する物体において利用することができる。たとえば、実施形態は、乗用車、バイクおよび飛行機などの座席、事務用椅子などの椅子、ショーツおよびズボンなどの衣服、帽子などの頭に着用するもの、腕時計、ゴーグルなどの眼鏡、度付き眼鏡、スマートグラス、サングラス等に付加またはそれらの中に組み込むことができる。実施形態を物体に取り付けるかまたはその中に組み込むことができる物体のその他の例は、マットレス、下着、枕、道具、よりかかるものなどの家庭用品、実施形態の組み込まれるトレッドミルまたはその他のフィットネス装置のような運動関連装置を含む。同様に、実施形態は、被験者からの信号と被験者への信号の両方を伝えることができるように任意の物体のカバーに組み込むことができる。これらの実施形態は、さらに、信号を分析および伝達するシステムに接続することができる。別の実施形態は被験者に信号を送るために使用でき、また、別の実施形態は被験者との間で信号を送受するために使用することができる。1つの例では、信号を使用して被験者の健康状態または被験者の睡眠サイクルを監視することができ、また、帰還信号を使用して被験者に警告を与えること、または利用者または他の利用者または装置による措置を引き起こすことができる。
【0018】
記述される実施形態では、伝導性媒質102は、電子伝導体101の上に堆積される。実施形態のいくつかにおいては、伝導性媒質102は、高いイオン含有量およびAg/AgCl電極界面との親和性のおかげで伝導に役立ち得るECG電極ヒドロゲル(Skintact(TM)F−301)である。さらに、固体ECGヒドロゲルの親水性は、最小の経時水分蒸散を確保し、また、これらの親水性は、繰り返し使用後における実施形態の寸法および形状の保持を可能にする。その他のECG型ヒドロゲルも、これらは同一または非常によく似ている電気的および機械的特性をもっているので、利用することができる。また、別の実施形態では、生理食塩水または湿潤伝導性ゲル(種々の伝導特性をもつゲルを含む)のようなその他の伝導性媒質を使用することができるが、長期監視適用には、他の媒質より水分の保持において優れている固体ヒドロゲルが好ましい。
【0019】
これらの実施形態では、伝導性媒質102は、それを損傷から保護し、かつ、その水分保持に役立つイオン交換膜103により包み込まれている。イオン交換膜103の反対側は、皮膚に接触する表面である。この表面は、設計により乾燥状態であり、使用する際に加湿または伝導性流体の適用を必要としない。現在の実施形態では、透析膜(SnakeSkin(TM)Dialysis Tubing,10K MWCO)を使用する。この透析膜は、イオンの交換を許容するために十分に大きい細孔をもち、それにより透析膜を公称的に伝導性としている。
【0020】
同時に、この透析膜は、伝導性媒質102をカプセル化し、かつ、漏洩を防止するために十分な不浸透性をもっているのみならず、伝導性媒質102の水分の保持にも役立つ。これは、センサーの寿命を延ばし、かつ、被験者の皮膚に接触するように配置される表面を完全に乾燥した状態または少なくともより乾燥した状態に保つのに役立つ。より乾燥した表面は、最小量の水分、たとえば、被験者の発汗していない皮膚からの水分または電極適用を準備する湿ったスワブからの残留水分を有するであろう。
【0021】
直前に記述した実施形態では、ヒドロゲル伝導性媒質102の高度の親水性および比較的不浸透性の膜(103)のおかげで、電極は、数日、数週間または数ヶ月でさえ、密閉する必要も水分を補給する必要もなく機能を維持する。ここで記述している実施形態の場合、標準オフィス環境の下で密閉されていない容器に6ヶ月保管したサンプルが、なんら手入れまたは維持管理を行わずに、信号品質劣化なしで使用できる完全な利用可能状態を維持した。
【0022】
これらの実施形態では、イオン交換膜は透析管で実現されたが、その他の膜(たとえば、合成物質)も利用できる。適用に応じて、薄膜を選択してコスト、柔軟性、伝導性および/または生体適合性を最適化することができる。
【0023】
図1および2に示すように、標準ECGリードまたは任意のその他の種類のインターフェースと接続するためにスナップ・コネクタ104を金属板103上に配置する。これにより、多数の本実施形態を標準ECGシステムまたは任意のその他の種類の信号処理装置にプラグ接続することができる。電子伝導体101の構造体を支持するために使用されているプラスチック支持体105も示されている。この実施形態には、イオン交換膜103を所定の位置に保持するためにプラスチック支持体105の周りに貼り付けられるかまたはスナップ固定される外輪106も示されている。
【0024】
図3は、構成要素数は少ないが同様な機能を持つ別の実施形態を描いている。この実施形態は、電子伝導体101、伝導性媒質102およびイオン交換膜103を含む電極を示している。薄膜を所定の位置に保持するプラスチック支持体を使用するのではなく、この薄膜は、伝導性媒質102の頂部に直接配置され、かつ、伝導性媒質102の固有の粘着性により所定の位置に保持され、それにより構造が簡素化されている。安定性を高めるために、イオン交換膜103を電極のエッジに接着剤で貼り付けることもできる。一例として、最も初期の実施形態の1つは、標準ECG電極(Skintact(TM)F−301)を改造することにより構築された。ここでは透析管であるイオン交換膜103は、ゲルおよび周囲の接着発泡体の上に配置され、ゲルを膜の内部に密閉した。別の実施形態は、ヒドロゲル電極を利用したが、この場合にはゲル自体が接着剤として働き、かつ、電極(3M 2670−5)の全表面に広がった。この実施形態は、接着または密閉のための任意のその他の手段を用いることなく、ゲルの上に薄膜を置くことにより実現された。この実施形態では、媒質102が固体ゲルである場合には、伝導性媒質102を密閉することまたはそれを空洞内に閉じ込める必要がなく、構造の簡素化に役立つ。多数の実施形態の別の便益は織物基板による柔軟性の向上であり、それは、この実施形態を被験者の身体によりよく適合させることを可能にする。
【0025】
前述したように、この発明の主題事項の実施形態は、電子伝導体101、伝導性媒質102およびイオン交換膜103の積み重ねにより形成される電極からなる。イオン交換膜102は、水分の障壁および伝導性媒質102の保護カバーとして働く。その結果は、これらの実施形態が乾燥した電極表面を利用者の皮膚に呈すること、それらが利用者にとってより高いレベルの快適性を維持すること、これらが長期観察適用の場合に伝導性媒質102の保存に役立つことである。これらの実施形態は、イオン伝導に対して電気的に「透明」である一方、同時に身体からの生体電位信号を電子回路による増幅および収集のために電子伝導体101に結合する。薄膜がイオン電荷担体に対し透過性であり、かつ、伝導性媒質102と電子伝導体101間の接合により形成されて明確に定義される電気化学的界面を提供するので、これらの実施形態は、皮膚との低インピーダンスの抵抗接触も与える。
操作
操作としては、ぬれていない被験者の皮膚に電極を置くが、この際、電極または被験者に関する準備は不要である。身体からの生体電位信号は、薄膜を超えて伝導性媒質の中へ、および電子伝導体へ授受される。生体電位信号(たとえば、ECG、EEG、EMG)を表示、格納または分析のために調整、収集する生体電位増幅回路に、電子伝導体を電気的に接続する。使用後、電極を利用者から単に取り外す。それは、処分するか、清掃、保存して再利用することができる。補水などの電極の手入れは、装置の寿命期間にわたり不要のはずである。
【0026】
この電極は非粘着性であるので、電極を被験者の皮膚に快適に固定できるハーネス・システムと併用することが好ましい。このシステムは、標準湿式電極が快適性、便利性、および皮膚炎症の問題を引き起こす長期観察適用に理想的に適している。信号品質をさらに向上させ、かつ、アーチファクトを拒否するために、高い入力インピーダンス(>10Mオーム)能動電子増幅器を電極付近に配置して低インピーダンス出力の信号ケーブル、駆動ケーブルおよび配線を緩衝することができる。
【0027】
乾燥皮膚接触適用で使用される実施形態について記述したが、本件実施形態の多くは、衣服またはその他の物体経由で信号を検出するために使用する場合のような生体電位信号の乾燥非皮膚接触検出のためにも使用することができる。結合が高抵抗物質(たとえば、綿製シャツ)経由のような場合にさえ、これらの実施形態は、電気化学的界面の安定化にも役立つ。これらの実施形態は、結合を最大化するただの金属板より快適な表面も与える。最後に、この電極の比較的低い接触インピーダンスは、湿潤ゲルの使用が好ましくない電気刺激適用における使用にとってもこの電極を適切とし得る。
【0028】
上述の実施形態について、明確性および理解のために図解および例を用いてある程度詳しく説明したが、添付請求項の精神または範囲から逸脱することなくそれに対する一定の変更および改良が行われ得ることは、本発明の主題事項の教示を踏まえると当業者にとって明らかである。たとえば、これらの実施形態は、その他のシステムおよび動物の測定について使用することもできる。
図1
図2
図3