(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
携帯電話などに代表される各種の移動端末装置には、RF回路、ベースバンド回路、液晶駆動回路、電源回路など、各種の機能回路が混載された回路モジュールが内蔵されている。これらの各種回路には、要求される機能に応じて半導体素子や水晶発振素子などの能動素子が電子部品搭載用基板に実装され組み込まれている。
【0003】
近年、移動端末装置の小型化、高機能化に伴い、回路モジュールの小型化、高機能化が要求されているが、このような場合、回路モジュールのベース基板である配線基板が小さくなり、配線基板上に各種の電子部品がより近接した状態で実装されることになる。
【0004】
この場合、電子部品が搭載される電子部品搭載用基板についても、配線基板上における占有面積を小さくするために小型化が図られる。
【0005】
ところで、電子部品搭載用基板は、例えば、
図8に示すように、水晶発振素子や半導体素子などの電子部品100を搭載するための搭載領域101を有する平板状の形状をした基体部103と、その基体部103上で搭載領域101を囲むように配置された枠形状の部材(以下、枠体部105という)とで構成されるものである。このような電子部品搭載用基板のサイズを小さくする場合、基体部103の平面の面積を小さくすることもさることながら、これに加えて枠体部105の厚みも薄くする必要がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
しかしながら、電子部品搭載用基板の枠体部105の厚みを薄くすると、配線基板上において、隣設する電子部品100間で電気信号の干渉や結合が起こりやすくなるという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の電子部品実装パッケージの一実施形態を示す分解斜視図である。
図2は、
図1に示した電子部品実装パッケージを構成する電子部品搭載用基板のX−X線断面模式図であり、導体層が枠体部の内周面側に設けられていることを示すものである。
【0014】
本実施形態の電子部品搭載用基板は、上面に電子部品10を搭載するための搭載領域1を有する基体部3と、基体部3上で搭載領域1を囲むように配置された枠体部5とを備えている。この場合、基体部3および枠体部5はいずれもセラミック焼結体により構成されており、枠体部5は基体部3の周縁に一体的に形成された構造となっている。また、この電子部品搭載用基板を構成する枠体部5には網目状の導体層11が設けられている。
【0015】
本実施形態の電子部品搭載用基板によれば、
図1および
図2に示すように、電子部品10の搭載領域1を囲む枠体部5に導体層11が設けられているために、電子部品10が駆動したときに発生する電気信号に起因した電磁界を遮蔽することができる。また、これにより、複数の電子部品10が近接して配置された状態であっても電子部品10間で電気信号の干渉や結合を抑えることができる。この場合、導体層11は枠体部5を取り巻くように全周にわたって形成されていることが望ましい。
【0016】
また、この電子部品搭載用基板では、導体層11が網目状となっている。導体層11が網目状であると、導体層11を平面視したときに、金属の網目の間に枠体部5を構成するセラミック焼結体が存在する状態となることから、導体層11が枠体部5の全面を覆うような構造の場合に比べて、枠体部5と導体層11との間の熱膨張差に起因する変形やこれに基づくクラックの発生を抑制することが可能となる。
【0017】
この場合、本実施形態の電子部品搭載用基板においては、導体層11が枠体部5の内周面5a側に設けられていることが望ましい。上記のような構造を有する導体層11が枠体
部5の内周面5a側、つまり、内壁側に形成されている場合には、電子部品搭載用基板の搭載領域1に配置された電子部品10から発生する電気信号を発生源に近い領域で遮蔽することができることから、隣設する電子部品10間における電気信号等に起因した電磁界の広がりをより小さくすることができる。こうして隣設する電子部品10の間隔をさらに狭くできることから、電子部品10の実装密度をさらに向上させることが可能となる。
【0018】
図3は、本実施形態の他の電子部品搭載用基板を示すものであり、導体層が枠体部に埋設されていることを示す断面模式図である。
【0019】
本実施形態の電子部品搭載用基板においては、導体層11が枠体部5に埋設されていることが望ましい。
【0020】
導体層11が枠体部5に埋設された状態であると、導体層11が枠体部5において芯材として機能し、電磁界等の遮蔽効果に加えて、枠体部5の機械的強度を高めることができる。
【0021】
図4は、本実施形態の他の電子部品搭載用基板を示すものであり、導体層が枠体部から基体部側にも及ぶ構造であることを示す断面模式図である。
【0022】
また、本実施形態の電子部品搭載用基板においては、導体層11が枠体部5から基体部3側にも及ぶ構造であることが望ましい。導体層11が枠体部5から基体部3側にも及ぶ構造であると、基体部3と枠体部5との間の機械的強度を向上させることができ、より強固な電子部品搭載用基板を得ることができる。この場合、導体層11が基体部3の周縁を取り巻くように形成されていると、基体部3の周縁においても電磁界に対する遮蔽効果を高めることができる。
【0023】
図5は、本実施形態の他の電子部品搭載用基板を示すものであり、導体層11がセラミック膜で覆われている状態を示す断面模式図である。
【0024】
本実施形態の電子部品搭載用基板では、導体層5がセラミック膜13で覆われていることが望ましい。この場合、枠体部5に形成された導体層11に、これを覆うように絶縁性のセラミック膜13が形成されていると、導体層11が枠体部5においてセラミックスに挟まれた状態となることから、枠体部5と導体層11との間で熱膨張係数に大きな違いがあっても熱膨張差に起因する変形を小さくすることができる。
【0025】
また、導体層11が枠体部5の内周面5a側に形成された構成の場合には、導体層11と搭載領域1の電子部品10との間の絶縁性を高めることができることから、電子部品10から出力される電気信号が枠体部5の導体層11に伝わって起こる出力の減衰を小さくできる。
【0026】
また、本実施形態の電子部品搭載用基板では、
図1に示すように、枠体部5の表面に、蓋体15を接合するためのメタライズ層17が形成されていてもよく、さらには、基体部3の裏面側(枠体部5の形成された面とは反対側)に、電子部品10や外部電源と接続するための端子用導体19を設けてもよい。この場合、メタライズ層17、導体層11および端子用導体19とが電気的に接続されていると、電子部品搭載用基板内にアースとしての機能を持たせることができる。また、これらメタライズ層17、導体層11および端子用導体19が電気的に接続されていると電気メッキ用の配線としても機能させることができる。
【0027】
本実施形態の電子部品搭載用基板は、基体部3の面積が0.5〜5mm
2、基体部3の
平均厚みが0.05〜1mmであり、枠体部5の高さが0.25〜1.0mm、枠体部5の平均厚みが0.05〜0.15mmと、基体部3および枠体部5の厚みが薄く、その上面に形成されるメタライズ層7の幅が狭いような小型の電子部品搭載用基板に適している。この場合、電子部品搭載用基板の外形状の体積としては10mm
3以下となる。
【0028】
ここで、枠体部5が基体部3に一体的に形成されるというのは、枠体部5と基体部3とが同時焼成されて焼結されたものという意味である。
【0029】
また、この電子部品搭載用基板は、基体部3と枠体部5とが同じ材質であるのがよい。基体部3と枠体部5とが同じ材質であると、同時焼成される際に、基体部3と枠体部5との焼結速度が近いことから電子部品搭載用基板の反りや変形を低減することができるからである。この場合、同じ材質というのは、基体部3および枠体部5に含まれる主成分のセラミック成分が同じであるという意味である。この場合、主成分とは、基体部3および枠体部5に含まれるセラミック成分の含有量が80質量%以上である場合をいう。
【0030】
なお、基体部3および枠体部5は、高い熱伝導性を有し、かつ高強度であるという点でアルミナを主成分とし、これにSiおよびMgなどの添加剤を含有するものが望ましい。
【0031】
本実施形態の電子部品実装パッケージは、上述した電子部品搭載用基板の搭載面1に水晶振動子等の電子部品10が実装され、枠体部5の上部に蓋体15が設けられていることを特徴とするものである。この電子部品実装パッケージは、電子部品搭載用基板を構成する枠体部5に網目状の導体層11が形成されていることから、電子部品10が駆動したときに発生する電気信号に起因した電磁界を遮蔽することができる。また、この電子部品実装パッケージでは、枠体部5に形成された導体層11が網目状であることから、導体層11が枠体部5の全面を覆うような構造の場合に比較して、枠体部5と導体層11との間の熱膨張差に起因する変形やこれに基づくクラックの発生を抑制することが可能となり、より小型の電子部品実装パッケージを実現することが可能となる。
【0032】
次に、本実施形態の電子部品搭載用基板および電子部品実装パッケージの製造方法について説明する。
図6は、本実施形態の電子部品搭載用セラミック基板の製造工程を示すものであり、網目状の導体層を枠体部の内周面側に形成するときの工程を示す模式図である。
図7は、本実施形態の他の電子部品搭載用セラミック基板の製造工程を示すものであり、網目状の導体層を枠体部の外周面側に形成するときの工程を示す模式図である。
【0033】
まず、
図6(a)に示すように、基体部3および枠体部5を形成するためのシート状成形体21を作製する。その組成は、例えば、Al
2O
3粉末を主成分とし、これにSiO
2粉末およびMgO粉末を所定量添加した混合粉末を用いる。
【0034】
次に、この混合粉末に対して、有機バインダーを溶媒とともに添加してスラリーや混練物を調製した後、これをプレス法、ドクターブレード法、圧延法、射出法などの成形方法を用いてシート状成形体21を形成する。
【0035】
次に、シート状成形体21の表面に、導体層11となる導体パターン23を形成する。この場合、導体パターン23としては専用のスクリーンを適用して網目状のものを形成する。
【0036】
次に、
図6(b)に示すように、一方の面に凸部25を有する金型を用意し、この金型を用いて、作製したシート状成形体をプレス成形し、成形体29を形成する。
【0037】
このプレス成形の工程において、シート状成形体21は、金型の凸部25によって加圧
された部分が成形体29の枠体部5に相当する部分の内周面となり、網目状の導体パターン23が成形体29の内周面に形成される。
【0038】
なお、網目状の導体層11を枠体部5の外周面側に形成する場合には、
図7に示すような工程を採用するとよい。
【0039】
この場合、まず、
図7(a)に示すような配置になるように導体パターン23を形成する。
【0040】
次に、
図7(b)に示すように、一方の面に凸部25a、25bを有する金型を用意し、この金型を用いて、作製したシート状成形体をプレス成形し、成形体29を形成する。
【0041】
このプレス成形の工程において、シート状成形体21は、金型の凸部25a、25bによって加圧された部分が成形体29の枠体部5に相当する部分となり、網目状の導体パターン23が成形体29の外周面に形成される。
【0042】
なお、網目状の導体層11が枠体部5に埋設した構造にする場合には、金型の凸部25、25a、25bの表面でシート状成形体21と導体パターン23とが面一になる程度に成形時の加圧圧力を高めてやればよい。
【0043】
また、導体層11の表面にセラミック膜13が形成された構造にする場合には、シート状成形体21の表面に形成した導体パターン23のさらにその表面にセラミック成分を含む膜を形成する。このときセラミック成分を含む膜としては、グリーンシートを重ねる方法かまたはセラミックスラリを印刷する方法などを適用すればよい。
【0044】
次に、この成形体29を所定の温度条件で焼成することにより電子部品搭載用基板を得ることができる。
【0045】
次に、得られた電子部品搭載用基板の搭載領域1に電子部品10を実装し、枠体部5の表面に形成したメタライズ層17にロウ材を介して蓋体15を接合することにより、本実施形態の電子部品搭載パッケージを得ることができる。
【実施例】
【0046】
Al
2O
3粉末93質量%に対して、SiO
2粉末を5質量%、MgO粉末を2質量%の割合で混合した後、さらに、有機バインダーとしてアクリル系バインダーを19質量%、ワックスとしてパラフィンワックスを3質量%、有機溶媒としてトルエンを混合してスラリーを調製した後、ドクターブレード法にて平均厚みが400μmのシート状成形体を作製した。
【0047】
次に、得られたシート状成形体に網目状の導体パターンを形成し、場合によっては、導体パターンの表面にさらにセラミック膜(薄いグリーンシートを重ねる)を形成し、
図6および
図7に示した構造の金型を用いて、80℃の温度で加熱プレスを行い、切断して、
図2、
図3、
図4および
図5にそれぞれ示すような構造の成形体を形成した。
【0048】
次に、この成形体の枠体部となる部分の上面および基体部の下面にタングステンと銅との混合粉末を主成分とする導体ペーストを用いて所定の形状のメタライズ層を形成し、次いで、還元雰囲気中、最高温度が1350〜1400℃となる条件にて1時間の焼成を行った。焼成された基板のメタライズ層にはニッケル、金めっきを順に施した。
【0049】
得られた電子部品搭載用基板は、平面の面積が2mm×2mm、基体部の厚みが0.1
mm、枠体部の平均厚みが0.15mm、枠体部の搭載面からの高さが0.5mmであった。
【0050】
次に、得られた電子部品搭載用基板の搭載領域に電子部品としてインダクタ素子を実装し、ロウ材(銀ロウ)を介して蓋体を接合して電子部品搭載パッケージを作製した。
【0051】
次に、この電子部品実装パッケージに設けた外部端子から内部のインダクタ素子に入力電力を与えて電気信号を発信するようにし、電子部品実装パッケージの外側に設置した磁気センサーを用いて漏れてくる電磁界を検出するようにした。
【0052】
また、作製した電子部品搭載用基板を300℃に加熱した半田槽に約1秒間浸漬する方法で耐熱衝撃試験を行った。
【0053】
比較例として、導体パターンを形成しなかったもの(試料No.1)およびシート状成形体の表面に形成する導体パターンを膜状としたもの(試料No.2)を、上記と同様の焼成条件にて作製し、同様の評価を行った。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から明らかなように、枠体部に網目状の導体層を設けた試料(試料No.3〜7)は、導体層が膜状である試料(試料No.2)に比較すると、磁界強度が高い値となったが、導体層を形成していない試料(試料No.1)に比較すると、磁界強度が低く、電子部品搭載用基板の外側への磁界の広がりが抑えられていることを確認した。また、300℃の温度で耐熱衝撃試験を行ったときにもクラックの発生した試料は認められなかった。
【0056】
また、作製した電子部品搭載用基板をオートグラフを用いて枠体部側から加圧する方法で300MPaまでの圧力の範囲で加圧による変形を評価したところ、網目状の導体層を
枠体部に埋設させた試料(試料No,4〜6)は、網目状の導体層を有しない試料(試料No.1)、網目状の導体層を枠体部の内周面上に形成した試料(試料No.3)および外周面上に形成した試料(試料No.7)に比べて、枠体部の変形量が小さく、この中で、網目状の導体層を枠体部から基体部にまで及ぶ構造にした試料(試料No.5)の変形量が最も小さかった。