(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレーム本体は、下方に配置され、上向きに開口するコ字断面に形成された下フレーム本体と、上方に配置され、下向きに開口するコ字断面に形成された上フレーム本体と、を上下に嵌合して成り、
前記下フレーム本体及び前記上フレーム本体には、互いの上下位置を規定する位置決め部がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の車体後部構造。
前記車体締結部は、下方に配置され、上向きに開口するコ字断面に形成された下側締結部と、上方に配置され、下向きに開口するコ字断面に形成された上側締結部と、を上下に嵌合して成り、
前記上側締結部と前記下側締結部との間には、フランジ付カラーが内設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の車体後部構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当該従来技術のように、フレーム材を強固にするために、剛性の高い材料の使用、補強部材の追加及び板厚の増加を行うと、重量増やコスト増を招くことになる。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、軽量化とコストダウンを図りながら、バッテリパックへの衝撃を軽減できる車体後部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る車体後部構造は、リヤフロアにおいて下方へ凹設されたフロア凹部と、前記フロア凹部に配置されたバッテリパックと、を備えている。前記バッテリパックは、バッテリモジュールと、前記バッテリモジュールの前後両側を車体に対して吊り下げ支持する前後一対の吊下フレームと、一対の前記吊下フレーム同士を連結するロードパス部材と、を備えている。前記吊下フレームは、前記車体に締結される車体締結点と、前記車体締結点の近傍に設けられ車両後突時に衝突荷重を受けて前記吊下フレームが前方へ折れ曲がる起点となる脆弱部と、を有している。
一対の前記吊下フレームは、車幅方向に延びる閉断面状のフレーム本体と、前記フレーム本体の車幅方向の両端部にそれぞれ固定され前記車体締結点を含む車体締結部と、を有している。前記脆弱部は、前記フレーム本体と前記車体締結部との接合部を含む所定範囲に形成される。
【0009】
本発明によれば、車両後突時に吊下フレームは脆弱部を起点に前方へ折れ曲がるため、バッテリパックが車体に対して前方へ相対移動する。このため、バッテリパックへの衝撃を軽減することができる。また、バッテリパックの前方移動により衝撃を軽減でき、バッテリパック自体を強固にする必要がなくなるので、軽量化とコストダウンを図ることができる。
また、脆弱部がフレーム本体と車体締結部との接合部を含む所定範囲に形成されることにより、接合部の強度を調整するだけで脆弱部の強弱を調整できるので、脆弱部の設計が容易となる。
【0012】
また、前記接合部に隣接乃至近接する部位には、前記フレーム本体の車幅方向の端部を切り欠いて成る切欠き部が設けられていることが好ましい。
【0013】
このようにすると、切欠き量を増減するだけで脆弱部の強弱を調整できるので、脆弱部の設計が容易となる。
【0014】
また、前記接合部は、前記フレーム本体と前記車体締結部とを部分的に接合する片側溶接部であることが好ましい。
【0015】
このようにすると、溶接強度を調整するだけで接合部の強度を調整できるので、接合部の強度設定が容易となる。
【0016】
また、前記車体締結部は、前記車体から前記フレーム本体へ向けて立ち上がった後、車幅方向内側に屈曲しており、当該屈曲部位は、前記脆弱部の範囲に配置されていることが好ましい。
【0017】
このようにすると、上方空間も利用してバッテリパックの前方移動量を大きく確保できるとともに、バッテリパックを上下に大型化できる。
【0018】
また、前記フロア凹部の左右両側に配置され、車両前後方向に延在する左右一対のリヤフレームをさらに備えていることが好ましい。前記リヤフレームは、車両前方に位置する高強度部位と、前記高強度部位の車両後方に位置し、車両後方からの荷重に対して前記高強度部位よりも圧縮強度が低い低強度部位と、を有しているとよい。前方の前記吊下フレームの前記車体締結部は、前記高強度部位に締結されており、後方の前記吊下フレームの前記車体締結部は、車両前方へ屈曲して前記高強度部位に締結されているとよい。
【0019】
このようにすると、リヤフレーム後部の低強度部位が潰れたとしても、高強度部位に締結される前後の車体締結部は一定の前後間隔を保てるため、バッテリパックへの衝撃を軽減できる。
【0020】
また、前記フレーム本体は、下方に配置され、上向きに開口するコ字断面に形成された下フレーム本体と、上方に配置され、下向きに開口するコ字断面に形成された上フレーム本体と、を上下に嵌合して成ることが好ましい。前記下フレーム本体及び前記上フレーム本体には、互いの上下位置を規定する位置決め部がそれぞれ形成されているとよい。
【0021】
このようにすると、上下の位置決め部によって、フレーム本体の断面寸法を一定にして強度と剛性を好適に確保できる。
【0022】
また、前記車体締結部は、下方に配置され、上向きに開口するコ字断面に形成された下側締結部と、上方に配置され、下向きに開口するコ字断面に形成された上側締結部と、を上下に嵌合して成ることが好ましい。前記上側締結部と前記下側締結部との間には、フランジ付カラーが内設されているとよい。
【0023】
このようにすると、フランジ付カラーによって、車体締結部の断面寸法を一定にして強度と剛性を好適に確保できる。
【0024】
また、前記車体締結部には、凹み部が形成されていることが好ましい。
【0025】
このようにすると、接合部に加えて凹み部も脆弱部として機能するので、吊下フレームの折曲変形が容易となる。
【0026】
また、前記凹み部には、車体搭載時に冶具を係合する冶具用ブラケットが設置されていることが好ましい。
【0027】
このようにすると、凹み部を利用して冶具用ブラケットに冶具を係合しやすくなるため、バッテリパックを車体へ搭載しやすくなる。
【0028】
また、前記ロードパス部材は、コ字断面に形成されていることが好ましい。
【0029】
このようにすると、ロードパス部材の軽量化を図れるとともに、軽量のロードパス部材によって後方の吊下フレームから前方の吊下フレームへ衝突荷重を伝達できる。
【0030】
また、前記吊下フレームの下方に配置された下方フレームと、前記吊下フレームと前記下方フレームとの間に配置された複数の前記バッテリモジュールと、前記吊下フレームに対して前記下方フレーム及び前記バッテリモジュールを取り付ける取付プレートと、後方の前記吊下フレーム及び前記下方フレームの後面に締結する後部カバーと、を備えることが好ましい。
【0031】
このようにすると、バッテリモジュールよりも後方からの衝突荷重を後部カバーで受けて、この後部カバーを通じて上方の吊下フレームと下方フレームとに分散できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る車体後部構造によれば、軽量化とコストダウンを図りながら、バッテリパックへの衝撃を軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
なお、方向を説明する際は、運転者からみた前後左右上下に基づいて説明する。また、「車幅方向」は「左右方向」と同義である。
【0035】
図1に示すように、実施形態に係る車体後部構造1を具備する自動車Vは、リヤフロアパネル20と、左右一対のリヤフレーム30,30と、バッテリパック10と、を主に備えている。その他、リヤフレーム30の車外側には、リヤホイールハウス40が配置されている。実施形態の自動車Vは、図示せぬ駆動モータを駆動源として走行するハイブリッド車、電気自動車等である。
【0036】
リヤフロアパネル20は、車体後部のフロア面を形成する金属製部材である。リヤフロアパネル20には、フロア凹部21が下方へ凹設されている。
【0037】
一対のリヤフレーム30,30は、フロア凹部21の左右両側に配置された金属製部材である。リヤフレーム30は、車両前後方向に延在している。リヤフレーム30については後に詳述する。
【0038】
バッテリパック10は、フロア凹部21内に配置されるものである。バッテリパック10は、
図2に示すように、ケース13と、下方フレーム14と、複数のバッテリモジュール15,15と、複数の取付プレート16,16と、前後一対の吊下フレーム11,11と、複数のロードパス部材12,12と、上方プレート17と、上部カバー18と、後部カバー19と、を備えている。
【0039】
ケース13は、上方に開口する箱状の樹脂製部材である。ケース13の内部には、上部カバー18以外の部材が収容される。
【0040】
下方フレーム14は、矩形板状のアルミダイキャスト製部材である。下方フレーム14は、バッテリモジュール15や吊下フレーム11等の下方に配置されている。
【0041】
バッテリモジュール15は、図示せぬ駆動源に電力を供給するものである。図示は省略するが、バッテリモジュール15は、左右方向に積層される複数のバッテリセルや左右一対のエンドプレート等を含んで構成される。バッテリモジュール15の全体形状は、車幅方向に長尺な直方体状を呈している。バッテリモジュール15は、吊下フレーム11と下方フレーム14との間に配置されている。バッテリモジュール15の数量は特段限定されるものではないが、本実施形態では前後左右に2列ずつ合計4個設置されている。図示は省略するが、バッテリモジュール15の周囲であって、かつ、吊下フレーム11と下方フレーム14との間には、高圧部品であるインバータやパワーコントロールユニット(PCU)等が設置される。
【0042】
取付プレート16は、吊下フレーム11に対して下方フレーム14及びバッテリモジュール15を取り付ける金属製部材である。取付プレート16は、鋼板に折曲形状や切り欠きを施すことで所定の複雑形状に形成されている。取付プレート16は、各バッテリモジュール15の左右の端部にそれぞれ取り付けられていて、本実施形態では8つ設置されている。取付プレート16の上端部には、ボルト部16aが上方へ向けて突設されている。ボルト部16aは、吊下フレーム11に付設される図示せぬナットに螺合する。取付プレート16の下端部に形成されたフランジ部は、下方フレーム14にボルトで取り付けられる。
【0043】
前後一対の吊下フレーム11,11は、バッテリモジュール15の前後両側を車体に対して吊り下げ支持する金属製部材である。一対の吊下フレーム11,11は、車幅方向に沿って延在していて、車両前後方向に沿って互いに離間している。以下の説明では、車両前方に位置する吊下フレームを「前側吊下フレーム11A」と称し、車両後方に位置する吊下フレームを「後側吊下フレーム11B」と称する場合がある。吊下フレーム11については後に詳述する。
【0044】
複数のロードパス部材12,12は、一対の吊下フレーム11,11同士を連結する金属製部材である。ロードパス部材12は、車両前後方向に沿って延在している。ロードパス部材12については後に詳述する。
【0045】
上方プレート17は、複数の貫通孔を有する矩形板状の金属製部材である。上方プレート17は、吊下フレーム11,11と上部カバー18との間に介設されている。
【0046】
上部カバー18は、ケース13の上端開口を上方から覆う金属製部材である。上部カバー18は、下方に開口する皿形状を呈している。
【0047】
後部カバー19は、後側吊下フレーム11B、バッテリモジュール15、下方フレーム14を後方から覆う金属製部材である。後部カバー19は、矩形板状を呈している。後部カバー19は、後側吊下フレーム11B及び下方フレーム14の後面にそれぞれボルトで締結固定される。後部カバー19は、車両後突時においてバッテリモジュール15よりも後方からの衝突荷重を受ける機能を備える。また、後部カバー19は、衝突荷重を後側吊下フレーム11Bと下方フレーム14とに分散して伝達する機能も兼ね備えている。
【0048】
次に、
図3乃至
図10を参照して、リヤフレーム30、吊下フレーム11及びロードパス部材12について詳述する。なお、一対の吊下フレーム11,11は概ね前後対称形状を呈しているので、以下の説明では後側吊下フレーム11Bを中心に説明する。
【0049】
図4に示すように、リヤフレーム30は、車両前方に位置する高強度部位31と、高強度部位31の車両後方に位置する低強度部位32とで構成されている。低強度部位32は、車両後方からの衝突荷重に対して高強度部位31よりも圧縮強度が低く設定されている。高強度部位31と低強度部位32の強弱差は、例えば補強部材、リブ、貫通孔の追加、板厚の大小、材料の強弱等によって設けている。
【0050】
図3、
図4に示すように、吊下フレーム11は、車幅方向に水平に延びるフレーム本体11aと、フレーム本体11aの車幅方向の両端部にそれぞれ固定された左右一対の車体締結部11b,11bと、を有している。
【0051】
図6、
図7に示すように、フレーム本体11aは、下側に配置された下フレーム本体11cと、上側に配置された上フレーム本体11dとで構成されている。下フレーム本体11cの車幅方向の端部には、前後の側壁を切り欠いて成る下側切欠き部11hが一対設けられている(
図7では一方のみ図示)。上フレーム本体11dの車幅方向の端部には、前後の側壁と上壁を切り欠いて成る上側切欠き部11iが設けられている。
【0052】
下フレーム本体11c及び上フレーム本体11dには、互いの上下位置を規定する下位置決め部11jと上位置決め部11kがそれぞれ形成されている。下位置決め部11jは、切り欠かれた各側壁の上端から内向きに折曲されており、前後一対設けられている。上位置決め部11kは、切り欠かれた各側壁の先端から下位置決め部11jへ向けて下方に突出するとともに内向きに折曲されており、前後一対設けられている。
【0053】
図8に示す車幅方向から見た断面視において、下フレーム本体11cは上向きに開口するコ字断面(凹溝状)に形成されており、上フレーム本体11dは下向きに開口するコ字断面(凹溝状)に形成されている。フレーム本体11aは、下フレーム本体11cと上フレーム本体11dとを上下に嵌合して成り、第1閉断面11gを有している。下フレーム本体11cと上フレーム本体11dとは、重ね合わされた部位にミグ溶接を施すことによって接合されている。
【0054】
図4に示すように、車体締結部11bは、車体の一部であるリヤフレーム30に対してボルトで締結固定される部位である。
図4に示す高強度部位31と低強度部位32との境界は、車両前後方向においてフレーム本体11aの後端と一致する部位に配置されている。前側吊下フレーム11Aの車体締結部11bの車外側部位は、高強度部位31にボルトで締結固定されている。後側吊下フレーム11Bの車体締結部11bの車外側部位は、高強度部位31と低強度部位32との境界よりも前側に位置するように車両前方へ屈曲しており、高強度部位31にボルトで締結固定されている。
【0055】
図5に示す車体締結部11bの車内側部位は、リヤフレーム30からフレーム本体11aの端部へ向けて斜め上方に立ち上がった後、車幅方向内側に屈曲している。すなわち、車体締結部11bの車内側端部には、屈曲部11lが形成されている。
【0056】
車体締結部11bは、下側に配置された下側締結部11eと、上側に配置された上側締結部11fとで構成されている。下側締結部11eと上側締結部11fとは、重ね合わされた部位にミグ溶接を施すことによって接合されている。上側締結部11fの屈曲部11l付近には、下方へ略楕円状に窪む凹み部11mが形成されている。
【0057】
車体締結部11bには、バッテリパック10の車体搭載時に冶具を係合する冶具用ブラケット50が設置されている。冶具用ブラケット50は、車内側に開口するコ字断面を呈しており、凹み部11mを前後両側及び車外側から覆うように設置されている。冶具用ブラケット50の前後の側壁は、車体締結部11bの前後の側壁にそれぞれ溶接接合されている。冶具用ブラケット50の車外側の側壁は、凹み部11mに対して車幅方向外側に離間して対向配置されている。
【0058】
図9に示す車幅方向から見た断面視において、下側締結部11eは上向きに開口するコ字断面(凹溝状)に形成されており、上側締結部11fは下向きに開口するコ字断面(凹溝状)に形成されている。車体締結部11bは、下側締結部11eと上側締結部11fとを上下に嵌合して成り、第2閉断面11nを有している。
【0059】
下側締結部11eには、円形状の挿通孔11oが上下方向に貫通している。上側締結部11fには、円形状の貫通孔11pが上下方向に貫通している。第2閉断面11nの車外寄りには、上下に延びる円筒状のフランジ付カラー11qが内設されている。フランジ付カラー11qの内周部は、挿通孔11o及び貫通孔11pと上下で対応する位置に設けられている。フランジ付カラー11qの上端外周面には、所定長だけ縮径された縮径部11rが形成されている。縮径部11rの上端部は、貫通孔11pに嵌め込まれるとともに、貫通孔11pを通じて外部へ僅かに突出している。
【0060】
フランジ付カラー11qの下面は、下側締結部11eの開口縁部に上側から当接しており、フランジ付カラー11qの環状段差面は、上側締結部11fの開口縁部に下側から当接している。すなわち、フランジ付カラー11qは、下側締結部11eと上側締結部11fとの上下間隔を保持しており、車体締結部11bの断面寸法を一定にする機能を備える。フランジ付カラー11qと挿通孔11oと図示せぬリヤフレーム30の挿通孔には、車体締結部11bとリヤフレーム30とを締結するための図示せぬボルトが挿通される。フランジ付カラー11qと挿通孔11oは、特許請求の範囲の「車体締結点」を構成する。
【0061】
図6、
図7、
図10に示すように、車体締結部11bの車内側の端部は、フレーム本体11aの車外側の端部に外嵌している。フレーム本体11aと車体締結部11bとは、重ね合わされた部位にミグ溶接(
図6、
図7、
図10の黒塗り箇所及び符号11s参照)を施すことによって接合されている。かかる接合部11sは、フレーム本体11aと車体締結部11bとの重ね合わせ部位を部分的に接合する片側溶接部である。
【0062】
接合部11sは、下側切欠き部11h及び上側切欠き部11iに隣接乃至近接している。また、接合部11sは、凹み部11mに近接している。すなわち、吊下フレーム11において、接合部11s、下側切欠き部11h、上側切欠き部11i、凹み部11mを含む所定範囲は、車両後突時に衝突荷重を受けて前方へ折れ曲がる起点となる脆弱部11tを構成している。脆弱部11tは、車体締結点となるフランジ付カラー11q及び挿通孔11oの近傍に設けられている。屈曲部11lは、脆弱部11tの範囲内に配置されている。
【0063】
図3、
図4に示すように、ロードパス部材12は、車両後突時において後側吊下フレーム11Bに加わった衝突荷重を前側吊下フレーム11Aへ伝達する機能を備える。ロードパス部材12の前端部は、前側吊下フレーム11Aの後側壁に溶接固定されている。ロードパス部材12の後端部は、後側吊下フレーム11Bの前側壁に溶接固定されている。ロードパス部材12の数量は特段限定されるものではないが、本実施形態では車幅方向に互いに離間して4つ設置されている。吊下フレーム11,11とロードパス部材12,12は、梯子状に組み合わされている。ロードパス部材12の形状は特段限定されるものではないが、本実施形態では
図11に示す下向きに開口するコ字断面に形成されている。
【0064】
次に、
図12(a)(b)を参照して、本実施形態に係る車体後部構造1の車両後突時の動作について説明する。
図12(a)(b)では、説明の便宜上、バッテリパック10及びバッテリモジュール15を模式的に二点鎖線で描いている。
【0065】
図12(a)に示すように、後突前の状態では、一対の吊下フレーム11,11は、車幅方向に沿って略直線状であって、車両前後方向に所定の間隔Gを空けて配置されている。
【0066】
自動車Vが後突すると、後部カバー19を通じて上方に位置する後側吊下フレーム11Bと下方に位置する下方フレーム14とに衝突荷重が入力される(
図2参照)。
【0067】
後側吊下フレーム11Bに入力された衝突荷重は、ロードパス部材12を通じて前側吊下フレーム11Aに伝達される。下方フレーム14に入力された衝突荷重は、フロア凹部21を区画形成する壁部に伝達される。すなわち、後側吊下フレーム11B、ロードパス部材12及び下方フレーム14は、衝突荷重を後方から前方へ伝達する荷重伝達部材として機能するので、吊下フレーム11,11と下方フレーム14との間に配置されるバッテリモジュール15や高圧部品に衝突荷重が加わりにくくなる。
【0068】
後側吊下フレーム11Bと前側吊下フレーム11Aに衝突荷重が加わると、
図12(b)に示すように、後側吊下フレーム11Bと前側吊下フレーム11Aは、車幅方向の両端部に形成された脆弱部11tを起点に前方へ折れ曲がる。そして、後側吊下フレーム11Bと前側吊下フレーム11Aは、脆弱部11tよりも車幅方向内側が前方へ変位する。このとき、後側吊下フレーム11Bと前側吊下フレーム11Aの変位量が同等又は略同等となるため、後突の前後において間隔Gがほとんど変化しない。
【0069】
後側吊下フレーム11Bと前側吊下フレーム11Aが変位すると、バッテリモジュール15を含むバッテリパック10が車体に対して前方へ相対移動する。
【0070】
次に、本実施形態に係る車体後部構造1の作用効果について説明する。
【0071】
本実施形態に係る車体後部構造1によれば、車両後突時に吊下フレーム11,11が脆弱部11tを起点に前方へ折れ曲がって、これに伴ってバッテリパック10が車体に対して前方へ相対移動するため、バッテリパック10への衝撃を軽減することができる。
また、バッテリパック10の前方移動により衝撃を軽減でき、バッテリパック10自体を強固にする必要がなくなるので、軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0072】
本実施形態によれば、脆弱部11tはフレーム本体11aと車体締結部11bとの接合部11sを含む所定範囲に形成されるため、接合部11sの接合強度を調整するだけで脆弱部11tの強弱を調整できる。このため、脆弱部11tの設計が容易となる。
【0073】
本実施形態によれば、接合部11sは下側切欠き部11h及び上側切欠き部11iに隣接乃至近接しているため、切欠き量を増減するだけで脆弱部11tの強弱を調整できる。このため、脆弱部11tの設計が容易となる。
【0074】
本実施形態によれば、接合部11sはフレーム本体11aと車体締結部11bとの重ね合わせ部位を部分的にミグ溶接により接合する片側溶接部であるため、溶接強度を調整するだけで接合部11sの強度を調整できる。このため、接合部11sの強度設定が容易となる。
【0075】
本実施形態によれば、車体締結部11bの車内側部位はリヤフレーム30からフレーム本体11aの端部へ向けて斜め上方に立ち上がった後、車幅方向内側に屈曲しているため、バッテリパック10を上下に大型化できる。
また、車体締結部11bの屈曲部11lは脆弱部11tの範囲内に配置されているため、上方空間も利用してバッテリパック10の前方移動量を大きく確保できる。
【0076】
本実施形態によれば、前側吊下フレーム11A及び後側吊下フレーム11Bの車体締結部11bは高強度部位31にボルトで締結固定されているため、リヤフレーム30の低強度部位32が潰れたとしても、高強度部位31に締結される前後の車体締結部11b,11bは一定の前後間隔を保てる。このため、バッテリパック10への衝撃を軽減できる。
【0077】
本実施形態によれば、下フレーム本体11c及び上フレーム本体11dの互いの上下位置を規定する下位置決め部11jと上位置決め部11kによって、フレーム本体11aの断面寸法を一定にして強度と剛性を好適に確保できる。
【0078】
本実施形態によれば、下側締結部11eと上側締結部11fとの上下間隔を保持するフランジ付カラー11qによって、車体締結部11bの断面寸法を一定にして強度と剛性を好適に確保できる。
【0079】
本実施形態によれば、上側締結部11fには凹み部11mが形成されており、この凹み部11mも脆弱部11tとして機能するので、吊下フレーム11の折曲変形が容易となる。
【0080】
本実施形態によれば、冶具用ブラケット50は凹み部11mを前後両側及び車外側から覆うように設置されているため、凹み部11mを利用して冶具用ブラケット50に冶具を係合しやすくなる。このため、バッテリパック10を車体へ搭載しやすくなる。
【0081】
本実施形態によれば、ロードパス部材12は下向きに開口するコ字断面に形成されているため、ロードパス部材12の軽量化を図れるとともに、軽量のロードパス部材12によって後側吊下フレーム11Bから前側吊下フレーム11Aへ衝突荷重を伝達できる。
【0082】
本実施形態によれば、後部カバー19は後側吊下フレーム11B及び下方フレーム14の後面にそれぞれ締結固定されるため、バッテリモジュール15よりも後方からの衝突荷重を後部カバー19で受けて、この後部カバー19を通じて上方に位置する後側吊下フレーム11Bと下方に位置する下方フレーム14とに分散できる。
【0083】
以上、本実施形態に係る車体後部構造1について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0084】
例えば、吊下フレーム11やロードパス部材12の形状は実施形態のものに限定されることなく、適宜変更してよい。実施形態ではロードパス部材12を車両前後方向に沿って直線上に設置したが、車両前後方向に対して右側又は左側に傾斜設置してもよい。
【0085】
実施形態では、下側切欠き部11h、上側切欠き部11i、凹み部11mを設けたが、これらを省略してもよい。
【0086】
実施形態では、フランジ付カラー11qを設けたが省略してもよい。この場合には、挿通孔11oと貫通孔11pは、特許請求の範囲の「車体締結点」を構成し、車体締結部11bとリヤフレーム30とを締結するためのボルトが挿通される。