【実施例】
【0027】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、OHC型内燃機関10は、クランクシャフト11が収容されるクランクケース12と、このクランクケース12に重ねるように取付けたシリンダブロック13と、このシリンダブロック13に重ねるように取付けたシリンダヘッド14と、このシリンダヘッド14の上に被せたシリンダヘッドカバー15とを有する。
【0028】
シリンダブロック13に、ピストン17を摺動可能に支持するシリンダボア18が形成される。シリンダボア18の中心軸であるシリンダ軸19は、鉛直軸Yに対して前傾している。シリンダブロック13の壁部とシリンダヘッド14の壁部14wには、各々、シリンダ軸19の垂直な面で外方へ複数の冷却用のフィン21が延びている。
【0029】
シリンダボア18内を摺動するピストン17は、コンロッド22を介してクランクシャフト11に連結される。クランクケース12に、クランクシャフト11が収容されるクランク室23と、このクランク室23の後方に仕切壁25を介して変速機26が収容されるミッション室24とが形成される。クランク室23には、クランクシャフト11を回転自在に支持するクランクジャーナル部28が備えられる。
【0030】
ミッション室24には、メインシャフト31とカウンタシャフト32が収容され、メインシャフト31とカウンタシャフト32間に変速ギヤ機構33が収容されている。カウンタシャフト32は、出力軸を兼ねており、ミッション室24から左外方へ突出している。
【0031】
次に、内燃機関上部の構成について説明する。
内燃機関10の燃焼室35は、主に、シリンダブロック13に形成される。詳細には、燃焼室35は、シリンダブロック13のシリンダボア18内を往復摺動するピストン17の頂面17tとこの頂面17tに対向配置されるシリンダヘッド14の間に形成される。シリンダヘッド14において、燃焼室35の天井面後半部に、混合気を吸気する吸気ポート37が形成され、燃焼室35の天井面前半部に、排気を排出する排気ポート38が前方に向け形成される。
【0032】
シリンダヘッド14には、吸気ポート37と燃焼室35の間を開閉する吸気バルブ41が設けられ、この吸気バルブ41の上端は、吸気ロッカアーム45によって押圧可能とされ、この吸気ロッカアーム45は、カムシャフト40に一体的に設けられる吸気カム43によって駆動される。つまり、吸気カム43によって、吸気バルブ41が駆動される。なお、吸気バルブ41は、燃焼室35に開いた開口を閉じる向きに付勢されており、吸気カム43のプロファイルによって押圧されたときに開口する。
【0033】
同様に、シリンダヘッド14には、排気ポート38と燃焼室35の間を開閉する排気バルブ42が設けられ、この排気バルブ42の上端は、排気ロッカアーム46によって押圧可能とされ、この排気ロッカアーム46は、カムシャフト40に一体的に設けられる排気カム44によって駆動される。つまり、排気カム44によって、排気バルブ42が駆動される。なお、排気バルブ42は、燃焼室35に開いた開口を閉じる向きに付勢されており、排気カム44のプロファイルによって押圧されたときに開口する。
【0034】
ここで、カムシャフト40、吸気ロッカアーム45、排気ロッカアーム46は、シリンダヘッド14とこのシリンダヘッド14を覆うシリンダヘッドカバー15の間に形成される動弁機構収容室55に配置されている。
【0035】
動弁機構50は、吸気バルブ41及び排気バルブ42を駆動する機構である。この動弁機構50は、クランクシャフト11に一体的に設けられカムチェーン51を駆動するクランク軸スプロケット52と、カムシャフト40に一体的に設けられるカム軸スプロケット53と、カム軸スプロケット53とクランク軸スプロケット52間に巻き掛けられるカムチェーン51とを有する。シリンダブロック13に、カムチェーン室54(
図4参照)が形成されている。このカムチェーン室54は、動弁機構収容室55とクランク室23の間を連通する空間であって、カムチェーン51を通すことができるスペースである。
【0036】
このような動弁機構50によって、クランクシャフト11が2回転したときに、カムシャフト40が1回転し、前記吸気カム43のプロファイル及び前記排気カム44のプロファイルによって、燃焼室35と吸気ポート37の間及び燃焼室35と排気ポート38の間を各々クランクシャフト11の回転に同期させて開閉する。
【0037】
図2及び
図3に示すように、シリンダヘッド14の左側面上部14f(壁面14f)に、カムシャフト40及びその周辺部をメンテナンスするための開口部56が設けられ、この開口部56は、蓋部材57で塞がれている。この蓋部材57は、カムシャフト40の軸方向から見たときに、円形であり、その中心部に工具ソケットが係合可能な六角ボルト頭部58が形成される。蓋部材57の六角ボルト頭部58に工具ソケットを当て回すことで、蓋部材57を容易に脱着することができる。
【0038】
シリンダヘッド14に、シリンダヘッドカバー15が被せられるときに当たる合わせ面14tが形成され、この合わせ面14tにシリンダヘッドカバー15が取付けられる。このシリンダヘッドカバー15は、樹脂製で構成した。シリンダヘッドカバー15を軽量な樹脂製で構成したので、内燃機関10の軽量化を図ることができる。
【0039】
図3に示すように、シリンダヘッド壁面14fに、カムシャフト40の軸方向に開口し蓋部材57で覆うことができる開口部56が形成されている。この開口部56は、蓋部材57を取外したときに、カムシャフト40及びその周辺部が露出する大きさ及び露出する位置に設けられている。
【0040】
次に、カムシャフト及びその周辺部の詳細な構造について説明する。
図4に示すように、シリンダヘッド14の動弁機構収容室55に、左右のカムシャフト支持孔61(61L、61R)が設けられ、当該左右のカムシャフト支持孔61に各々カムシャフトベアリング62が保持され、当該カムシャフトベアリング62にカムシャフト40が保持される。
【0041】
カムシャフトベアリング62の近傍に、このカムシャフト40の軸方向でカムシャフトベアリング62を規制する固定部材64が配置される。この固定部材64は、板状部材65であり、この板状の固定部材64は、ワッシャ状の座部67wが一体的に設けられているボルト部材67でシリンダヘッド14に固定される。
【0042】
次に、カムシャフトベアリングの中心と蓋部材の中心の位置関係等について説明する。
カムシャフト40は、このカムシャフト40を軸方向に沿って見たときに、シリンダブロック13に形成したシリンダボア18の軸線19(
図1参照)方向で、開口部56の軸中心56Cに対しカムシャフト40の軸中心40Cが燃焼室35(
図1参照)から離間する方向に配置されている。
【0043】
図3を併せて参照し、カムシャフト40の軸中心40Cと固定部材64は、開口部56の軸中心56Cを挟むように配置される。また、カムシャフト40を軸方向に沿って見たときに、カムシャフトベアリング62と固定部材64とは、開口部56に全て露出されている。また、カムシャフト支持孔61の近傍にてシリンダヘッド14に、板状の固定部材64を囲うように凹部68が形成されている。
【0044】
次に、カムシャフトにカム軸スプロケットを固定する構造について説明する。
カムシャフト40の端部に、カムシャフト40に駆動力を伝達するカム軸スプロケット53を止めるスプロケットホルダ71が備えられる。このスプロケットホルダ71に、スプロケット(カム軸スプロケット53)を締結する締結孔72が形成される。
【0045】
カムシャフト40を軸方向に沿って見たときに、スプロケットホルダ71の回転軌跡と固定部材64とは、少なくとも一部が重なるように構成される。カムシャフト40を軸方向に沿って見たときに、スプロケットホルダ71の回転軌跡は、開口部56の範囲内にある。
【0046】
組立に際しては、締結孔72に合わせてスプロケット(カム軸スプロケット53)をスプロケットホルダ71にセットし、締結孔72に締結部材73をねじ込んで、カムシャフト40にカム軸スプロケット53を取付ける。なお、スプロケットホルダ71は、回り止めねじ74によりカムシャフト40に一体的に設けられる。
【0047】
以上に述べたOHC型内燃機関の作用を次に述べる。
図5(a)は、実施例に係るOHC型内燃機関の開口部の軸中心とカムシャフトの軸中心との関係を説明する図であり、
図5(b)は、比較例に係るOHC型内燃機関の開口部の軸中心とカムシャフトの軸中心との関係を説明する図である。
【0048】
図5(a)の実施例に示すように、カムシャフトの軸中心40Cが開口部の軸中心56Cから、燃焼室35(
図1参照)から離間する方向になるように、カムシャフト40(
図4参照)が配置されている。
【0049】
図4を併せて参照し、開口部56の軸中心56Cは、カムシャフト40の軸中心40Cに比べて燃料室側に近づくように配置される。開口部56の軸中心56Cを燃焼室側に寄せて配置したので、シリンダヘッド14のシリンダ軸線(シリンダ軸19)方向の長さを短くすることができる。
【0050】
図5(b)の比較例に示すように、開口部の軸中心56Cbが、カムシャフトの軸中心40Cbに比べて燃焼室35(
図1参照)から遠ざかるように配置される場合には、その分、シリンダヘッド14とシリンダヘッドカバー15の合わせ面14tを燃焼室側から遠ざける必要がある。そうすると、シリンダヘッド14のシリンダの軸線方向(シリンダ軸19)の長さが長くなる。
【0051】
図5(a)に戻り、本発明では、開口部の軸中心56Cは、カムシャフトの軸中心40Cに比べて燃料室側に近づくように配置されるので、シリンダヘッド14とシリンダヘッドカバー15の合わせ面14tを燃焼室側に近づけることができる。すなわち、シリンダヘッド14のシリンダ軸19方向の長さが短くなるので、シリンダヘッド14の軽量化を図ることができる。
【0052】
加えて、内燃機関10のシリンダ軸19方向が鉛直に延びる又は傾斜して延びるように内燃機関10を配置したときに、シリンダヘッド14のシリンダ軸19方向の長さが短くなるので、内燃機関10の低重心化を図ることができる。
【0053】
図4に戻り、カムシャフトベアリング62と固定部材64とは、開口部56に全て露出可能に構成されているので、蓋部材57を外したときに、固定部材64を外して、この固定部材64によって保持されるカムシャフトベアリング62を取外すことが可能になる。従って、カムシャフト40回りのメンテナンス性を高めることができる。
【0054】
カムシャフト40を軸方向に沿って見たときに、スプロケットホルダ71の回転軌跡と固定部材64とは、少なくとも一部が重なっている。
仮に、スプロケットホルダ71の回転軌跡と固定部材64とが重ならないように配置すると、スプロケットホルダ71の回転軌跡と固定部材64とが重なる構造に比べ、シリンダヘッド14の長さがシリンダ軸19方向に長くなる。
【0055】
この点、本発明では、スプロケットホルダ71の回転軌跡と固定部材64とは、少なくとも一部が重なっているので、シリンダヘッド14の長さを短くできる。シリンダヘッド14の長さが短くなれば、内燃機関10を小型化することができる。
【0056】
図3を併せて参照し、スプロケットホルダ71に、スプロケット(カム軸スプロケット53)を締結する締結孔72が形成され、スプロケットホルダ71の回転軌跡は、開口部56の範囲内にある。これにより、スプロケットホルダ71がどの角度位置に停止していてもカム軸スプロケット53の取外しが可能になる。結果、カム軸スプロケット53の着脱に係るメンテナンス性が向上する。
【0057】
カムシャフト支持孔61の近傍に、板状部材(固定部材64)を囲う凹部68が形成されている。この凹部68に固定部材64を配置することで、カムシャフト40の軸方向において、固定部材64及びボルト部材67の突出を抑えることができる。結果、内燃機関10を軸方向で小型化することができる。
【0058】
また、カムシャフト支持孔61の近傍に、ボルト部材67のフランジ部(座部67w)を囲う凹部68が形成されている。この凹部68にボルト部材67のフランジ部(座部67w)を配置することで、カムシャフト40の軸方向において、ボルト部材67の突出を抑えることができる。結果、内燃機関10をカムシャフト軸方向で小型化することができる。
【0059】
次に、OHC型内燃機関の別実施例について説明する。
図6に示すように、固定部材64は、ボルト部材67と一体のフランジ部67fであり、このボルト部材67のフランジ部67fを囲うように凹部68が形成されている。この凹部68にボルト部材67のフランジ部67fを配置することで、カムシャフト軸方向において、ボルト部材67の突出を抑えることができる。結果、内燃機関10をカムシャフト軸方向で小型化することができる。
固定部材64の構造以外の構造については、実施例と異なる点はなく、作用効果についても実施例と同様なものであり説明を省略する。
【0060】
尚、本発明は、実施の形態ではOHC型内燃機関に適用したが、DOHC型内燃機関にも適用可能であり、一般の内燃機関に適用することは差し支えない。