特許第6216918号(P6216918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6216918
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】垂直軸風車の制動装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/06 20060101AFI20171016BHJP
   F03D 3/06 20060101ALI20171016BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
   F03D7/06 C
   F03D3/06 G
   F03D7/04 J
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-515197(P2014-515197)
(86)(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公表番号】特表2014-517203(P2014-517203A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012061363
(87)【国際公開番号】WO2012172022
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年4月9日
(31)【優先権主張番号】2011/0360
(32)【優先日】2011年6月15日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】513240766
【氏名又は名称】フェアウインド エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】デブレサー, アイヴス
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−261415(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/102459(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/095396(WO,A1)
【文献】 米国特許第04204805(US,A)
【文献】 実開昭59−058777(JP,U)
【文献】 実開昭52−169630(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0007366(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2623774(EP,A2)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直軸(20)風車(10)の制動装置であって、フラップ(30)を備え、前記フラップ(30)が、
非垂直アーム(70)を介して、前記垂直軸(20)と一致する回転軸を有する垂直回転軸(25)に機械的に連結され、
公称位置で前記垂直軸(20)回りに回ることができ、水平ではない揺れ軸(40)回りを揺れることができ、
前記揺れ軸(40)の外部に設置された重心(50)を有し、
前記公称位置は、前記フラップ(30)が前記垂直軸(20)回りを回転することで起きる遠心力であって、前記重心(50)にかかる遠心力が、前記公称位置で前記揺れ軸(40)に対してゼロではないトルクを生み出すことのできるような位置である、制動装置において、
前記制動装置が、リリーストルク(85)、前記非垂直アーム(70)に対する固定部分(150)および可動部分(160)を有するトルクリミッタ(60)をさらに備えていること
前記フラップ(30)が、前記トルクリミッタ(60)の前記可動部分(160)に機械的に接続されていることおよび
前記フラップ(30)が前記垂直軸(20)回りを回転する最大回転速度に達すると、前記トルクリミッタ(60)の前記可動部分(160)によって、前記フラップ(30)が前記公称位置から前記揺れ軸(40)回りに揺れ角度(80)をなして揺れることができ、これによって、前記公称位置で前記フラップ(30)の前記重心(50)にかかる遠心力の作用により、前記トルクリミッタ(60)に前記リリーストルク(85)よりも大きいトルクを引き起し、前記トルクリミッタ(60)によって前記フラップ(30)を揺れ位置で維持し、前記トルクリミッタ(60)によって揺れ位置にある前記フラップ(30)を前記公称位置に戻すことができることを特徴とする、制動装置。
【請求項2】
前記揺れ軸(40)は、前記垂直軸(20)に平行であることを特徴とする、請求項1に記載の制動装置。
【請求項3】
前記垂直軸(20)風車(10)は、前記非垂直アーム(70)を介して前記垂直回転軸(25)に機械的に連結した少なくとも1つの羽根(90)を備えていること、および前記フラップ(30)は、前記少なくとも1つの羽根(90)の一部であることを特徴とする、請求項1〜2のうちいずれか一項に記載の制動装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの羽根(90)の一部は、前記少なくとも1つの羽根(90)の一方の端部で、前記トルクリミッタ(60)の前記可動部分(160)に機械的接続されていることを特徴とする、請求項3に記載の制動装置。
【請求項5】
前記端部は、前記少なくとも1つの羽根(90)の下端部であることを特徴とする、請求項4に記載の制動装置。
【請求項6】
前記垂直軸(20)風車(10)は、前記非垂直アーム(70)を介して前記垂直回転軸(25)に機械的に連結した少なくとも1つの羽根(90)を備えていること、および前記フラップ(30)は、前記少なくとも1つの(90)の一部であることを特徴とする、請求項1または2に記載の制動装置。
【請求項7】
前記揺れ角度(80)は、90°であることを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の制動装置。
【請求項8】
前記垂直軸(20)風車(10)は、前記非垂直アーム(70)を介して前記垂直回転軸(25)に機械的に連結した少なくとも1つの羽根(90)を備えていること、前記羽根(90)は、前記垂直軸(20)の外部で前記非垂直アーム(70)の一方の端部に位置すること、および前記フラップ(30)は、前記垂直軸(20)と前記端部との間に設置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の制動装置。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の制動装置を備える垂直軸(20)風車(10)。
【請求項10】
請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の制動装置を3つ備える垂直軸(20)風車(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様によれば、本発明は、垂直軸風車、さらに正確には、ダリウス型垂直軸風車の制動装置に関する。第2の態様によれば、本発明は、このような制動装置を備える垂直軸風車に関する。
【背景技術】
【0002】
風車には主に2系統ある。水平軸風車および垂直軸風車である。垂直軸風車には、水平軸風車に比していくつかの利点があり、例えば、風方向に対する効力にそれほど左右されないという利点である。垂直軸風車は、2つのカテゴリに分類される。サボニウス型(差動抵抗の原理)およびダリウス型である。ダリウス風車のカテゴリでは、発電機のロータを駆動できるモータトルクが、入射角の変化から生じるとともに、羽根が風車の垂直軸回りに完全に1回転するときにこのような風車の羽根にかかる揚力からも生じる。
【0003】
風速が大きい際に風車を破損リスクから保護するためには、羽根の回転速度を低減または制限できる上に、さらにはこの回転を完全に停止できるシステムを備える必要がある。欧州特許第1857671号明細書には、ダリウス型垂直軸風車の羽根の回転速度を制限するために、羽根の後縁近くに取り付けられた小型のエアブレーキが提供されている。このようなエアブレーキは、遠心力によって作動することができる。とりわけ霜状態がひどいときは、このようなエアブレーキを始動できないため、このような装置は信頼性が高くはない。このようなエアブレーキは軽量なため、このエアブレーキにかかる遠心力は、実際にはそれほど大きくなく、例えば霜の存在でエアブレーキの回転が妨げられる力よりも小さいことがある。米国特許第4456429号明細書には、ダリウス型垂直軸風車に対するもう1つの速度制御メカニズムが記載されている。このような風車の羽根は、水平アーム(またはバー)(この特許文献の図1の符号17)を介して垂直軸に連結されている。連結機構(典型的にはヒンジ)が、羽根とこれらの非垂直アームとの間を接続している。羽根が垂直軸回りを回転する速度が増加すると、羽根は、公称位置(羽根がそれぞれのアームに対して垂直になる位置)から、羽根が最大抗力を生み出す位置に向かって回転でき、これによって、羽根の垂直軸回りの回転速度を減速かつ/または制限する。羽根の回転速度が低下すると、バネが羽根を公称位置に引き戻す。
【0004】
米国特許第4456429号明細書に記載されているようなシステムには、いくつかの欠点がある。羽根を水平アームに連結している連結機構の存在および種類を考えれば、羽根は、これらの水平アームから突然ずれた後(これは例えば風速が急速に変化することにより起こる)、これらの水平アームに対して打ち付ける動きをする可能性がある。その結果、風車は不安定になり、羽根は、強い風が吹いても水平アームに対して回転しながら垂直軸回りを回り続けるおそれがある。風車が不安定になることで、風車の構成部品に大きな機械的応力が起こる可能性があり、これによって風車が破損するおそれがある。よって、より効果的で安定性のある垂直軸風車向け制動システムを得ることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1857671号明細書
【特許文献2】米国特許第4456429号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】I.Paraschivoiu著:「Wind Turbine Design With Emphasis on Darrieus Concept(ダリウス型コンセプトを重視した風力タービンの設計)」、Polytechnic International Press、2002年。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、本発明の目的の1つは、より効率的でより安定性の高い垂直軸風車に対する制動装置を提供することである。この目的のため、この同じ第1の態様によれば、本発明は、垂直軸風車の制動装置であって、フラップを備え、前記フラップが、
− 非垂直アームを介して、前記垂直軸と一致する回転軸を有する垂直回転軸に機械的に連結され、
− 公称位置で前記垂直軸回りに回ることができ、水平ではない揺れ軸回りを揺れることができ、
− 揺れ軸の外部に設置された重心を有し、
前記公称位置は、前記フラップが前記垂直軸回りを回転することで起きる遠心力であって、前記重心にかかる遠心力が、この公称位置で前記揺れ軸に対してゼロではないトルクを生み出すことのできるような位置である、
制動装置に関する。
【0008】
本発明の制動装置は、
− 制動装置が、リリーストルク、非垂直アームに対する固定部分および可動部分を有するトルクリミッタをさらに備えていること;
− フラップが、前記トルクリミッタの前記可動部分に機械的に接続されていること;および
− フラップが垂直軸回りを回転する最大回転速度に達すると、トルクリミッタの前記可動部分によって、フラップが公称位置から揺れ軸回りに揺れ角度をなして揺れることができ、これによって、公称位置でフラップの重心にかかる遠心力の作用により、トルクリミッタにリリーストルクよりも大きいトルクを引き起こすこと
を特徴とする。
【0009】
トルクリミッタは、当業者に公知のものである。トルクリミッタが起動すると、フラップは、トルクリミッタに課された揺れ位置に留まる。一旦フラップが公称位置から揺れると、揺れ位置がフラップの位置になる。そのため、フラップはその後、つまりトルクリミッタが起動した後は、揺れ軸回りに回転することができない。よって、本発明の制動システムは、より安定性の高いものである。このトルクリミッタにより、新たに緩衝システムを設けて羽根がバタバタと動く可能性を緩和する必要がなくなる。最大回転速度に達すれば、フラップは所与の揺れ位置にブロックされるため、フラップのこの新たな位置(揺れ位置)によって追加で起こる抗力は一定になる。そのため、本発明のシステムは、より効果的なものである。このシステムにより、非常ブレーキを備えることもでき、これは特定の極端な状況で有用である。米国特許第4456429号明細書に記載の装置とは異なり、一旦フラップが揺れれば、フラップは公称動作位置には勝手に戻らず、この際に、フラップが揺れ位置に揺れることで風車の回転速度が低下する。トルクリミッタは、抗力が増大する位置(揺れ位置)にフラップを維持する。したがって、本発明のトルクリミッタは、前記フラップが垂直軸回りを回転する速度が最大回転速度よりも小さい速度(フラップが公称位置から揺れ位置に揺れる速度)で、フラップを揺れ位置に維持することもできる。本発明のトルクリミッタは、単に回転運動を誘導する機構であるヒンジの機能を果たすだけのものではない。トルクリミッタによって揺れが可能になるだけでなく、リリーストルクによってリリースも制御される、つまり揺れを起こすために供給すべき最低応力も制御される。本発明のトルクリミッタによって、その範囲内で規定通り(例えば360°、180°、90°)に制御した揺れも可能になる。
【0010】
本発明の制動装置は、この他にも利点を有する。最大回転速度に達すると、本発明の制動装置は、フラップの重心にかかる遠心力でトルクリミッタにトルクがかかることで、フラップを揺れ軸回りに激しく揺らす。このトルクリミッタは、トルクが前記リミッタでリリーストルク以上にならないかぎり起動することはなく、よってフラップが激しく揺れることがない。フラップの重心と揺れ軸との間の距離は、レバーアームである。トルクリミッタは、規定のトルク値に対してしか起動しないため、米国特許第4456429号明細書に記載されているような、単純な連結機構が用いられている装置よりも信頼性の高い制動装置を得ることができる。他方、羽根がその公称位置から徐々にずれていくと、羽根が起こす抗力が徐々に増大するため、最大回転速度に達しなくともその風車の性能は低下してしまう。本発明の制動装置は、最大風速に達したときにかぎって該当する風車の空気力学的性能を修正するため、これには当てはまらない。本発明の制動装置は、羽根が垂直軸回りを回転して起こる遠心力の存在のみによって始動する。制動装置の起動を制御したり、フラップを揺れ位置に揺れさせたりするのに、油圧制御装置、電子制御装置、および/または機械制御装置は一切必要ない。したがって、例えば、制動装置のフラップの揺れを起こすことのできるケーブルまたはロッドを備える必要がない。これによって、信頼性が高く自律的な制動装置を得ることができる。本発明の制動装置は、安価でもある。本発明の制動装置を取り付ける風車が3つの羽根を備えていれば、3つのフラップを設置できる。したがって、フラップを3つ設置するという冗長性により、制動装置の信頼性がさらに一層増大する。
【0011】
本発明の制動装置により、羽根が垂直軸風車の垂直軸回りを回転する最大回転速度が制限され、これによって、羽根が受ける応力も制限される。その結果、回転の制限値を適切に設定すれば、広範囲に及ぶ材料を羽根の製造に使用できるようになる。本発明の制動装置は、典型的には、垂直かつ直線状の羽根を有するダリウス型風車に使用されることができ、この風車は、Hダリウス型風車と呼ばれることもある。
【0012】
好ましくは、揺れ軸は、垂直軸に平行である。
【0013】
好適なバージョンでは、垂直軸風車は、非垂直アームを介して垂直回転軸に機械的に連結されている少なくとも1つの羽根を備え、フラップは、少なくとも1つの羽根の一部である。そのため、本発明の制動装置のフラップは、典型的には、欧州特許第1857671号明細書に記載のエアブレーキよりも重く、これによって、霜および/または凍結が激しい状態であってもフラップを揺らすことができる。さらに、本発明のフラップに発生するおそれのある霜によってフラップの重量が増し、これによってフラップがさらに早く起動される。前記少なくとも1つの羽根の一部は、前記少なくとも1つの羽根の一方の端部で、前記トルクリミッタの可動部分に機械的に接続されることが好ましい。さらに好ましくは、前記端部は、前記少なくとも1つの羽根の下端部である。
【0014】
もう1つの実施形態では、垂直軸風車は、非垂直アームを介して垂直回転軸に機械的に連結されている少なくとも1つの羽根を備え、フラップは、前記少なくとも1つの羽根の一部である。
【0015】
揺れ角度は、90°であることが好ましい。
【0016】
もう1つの好適な実施形態では、垂直軸風車は、非垂直アームを介して垂直回転軸に機械的に連結されている少なくとも1つの羽根を備え、この羽根は、前記非垂直アームの一方の端部で、垂直軸の外部に位置し、フラップは、垂直軸と前記端部との間に設置される。
【0017】
第2の態様によれば、本発明は、これ以前の段落に記載したような制動装置を備えている垂直軸風車に関する。好適なバージョンでは、本発明は、これ以前の段落に記載したような制動装置を3つ備えている風車に関する。
【0018】
本発明のこれらの態様およびその他の態様は、図面を参照して本発明の特定の実施形態を詳細に説明した文から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の制動装置のフラップが公称位置にあるときの垂直軸風車の上面図である。
図2】ゼロではない相対風速が起こることによる揚力を印加される、断面が対称な羽根の一例を示す図である。
図3】本発明の制動装置のフラップがこのフラップの公称位置に対して揺れ角度をなして揺れたときの垂直軸風車の上面図である。
図4】揺れ角度90°で揺れる前と揺れた後の本発明の制動装置のフラップの一例を示す図である。
図5】トルクリミッタが受けるトルクに応じたトルクリミッタの揺れ角度の推移を示すグラフである。
図6】フラップが羽根の一片であるときの制動装置の実施形態の一例を示す図である。
図7】制動装置が作動しているときの垂直軸風車の一部の断面図である。
【0020】
図面は、原寸通りではない。全体的に、図面中の同じ構成部品には同じ符号を付している。図に付した参照用数字を限定的なものと考えることはできず、これらの数字が特許請求の範囲に記載されている場合も同様である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の制動装置が作動していないときに上から見た垂直軸20風車10の一例を示す。互いに120°離れた3枚の羽根90が、好ましくは水平な非垂直アーム70(またはバー)を介して、垂直回転軸25に連結されている。垂直回転軸25は、垂直軸20と一致する回転軸を有する。速度がゼロではない風180がこれらの羽根90に当たると、垂直軸20回りに回転する運動が羽根に伝達される。すると羽根90は、発電機のロータを回転駆動して、例えば電力を産生することができる。この回転運動は、羽根90の断面(典型的には「飛行機の翼」状の断面)および羽根90全体に印加されるゼロではない合力の存在が原因で起こる。これらの局面は、当業者に公知のことであり、ダリウス型垂直軸風車の基礎である。羽根90にかかる様々な力を知ることで、ダリウス型垂直軸風車によって発達するモータトルクを決定できる。1枚の羽根90に対して発達する力を、2つに分割することができる。1つは、対象となる羽根に対する風180の相対速度140に垂直な揚力130であり、もう1つは、この相対速度140と平行かつ同一方向の抗力である。相対速度140は、垂直軸20回りの回転運動により各々の羽根90を駆動する速度に左右される。羽根90の断面が左右対称な場合(例えばNACA0018の断面)、揚力130および抗力が印加される点(力の中心点)は、断面の弦上にあり、前縁に対する弦長の約4分の1の所にある。図2は、対称な羽根90の断面の一例であり、所与の風方向の場合の相対速度140および揚力130を示している。所与の風速および風方向での各々の羽根90にかかる揚力130および抗力170の幅は、揚力および抗力の無次元数を用いて計算でき、この無次元数は、とりわけ風の吹く角度およびレイノルズ数によって異なる。このような計算は、当業者に公知のものであり、例えば、I.Paraschivoiuの文献がある(「Wind Turbine Design With Emphasis on Darrieus Concept(ダリウス型コンセプトを重視した風力タービンの設計)」、Polytechnic International Press、2002年)。
【0022】
図1に示した構成では、様々な羽根90は、垂直軸20回りの最小の回転運動によって抗力を引き起こすように設置されている。好ましくは、アーム70(またはバー)は、垂直軸20回りの回転運動によってこのアームが起こす抗力170が最小になるように、飛行機の翼状の断面をしている。さらに好ましくは、非垂直アーム70は、羽根90と同じ形状である。非垂直アーム70は、必ずしも水平である必要はない。好適な一実施形態では、これらのアーム70は、傾斜しているため、垂直軸20に対して垂直ではない。羽根90および非垂直アーム70の作製には、異なる種類の材料を使用してよく、そのうちのいくつかの例として、金属、木材、プラスチック、ガラス繊維がある。
【0023】
図3は、本発明の制動装置が作動しているときに上から見た垂直軸20風車10の一例を示している。この制動装置は、1つまたは複数のトルクリミッタ60を備え、このリミッタの各々が、非垂直アーム70に対する固定部分150および可動部分160を備えている。制動装置のフラップ30は、トルクリミッタ60の可動部分160に機械的に連結している。これらのトルクリミッタ60があることで(図3には図示せず)、フラップ30は、垂直軸20回りを回転するフラップ30の速度が最大回転速度に達したときに、揺れ軸40回りを揺れ角度80で揺れることができる。図3に示した好適な一実施形態では、フラップ30は、揺れ軸40回りを90°の揺れ角度80で揺れた。この場合、フラップは、揺れ位置にある。この揺れを受けて、フラップが垂直軸20回りに回転運動する際にフラップ30が引き起こす抗力170は大きくなり、これによって、垂直軸20回りの羽根90の回転運動を制動し、さらには停止させることができる。図3に示した好適なバージョンでは、フラップ30は、比較的大きなレバーアームで制動トルクを印加する。このレバーアームは、風車の半径であり、一般には3から5メートルの間で様々なものがある。この大きなレバーアームによって、風車を制動するのに印加する合力を低減することができ、これによって、制動装置の部材にかかる応力を緩和することができる。レバーアームがこれよりも小さく、そのために部材にかかる応力がさらに大きくなる場合に用いる、例えばディスクブレーキシステムのような中央で制動するシステムよりも、図3に示したような構成が好ましい。






















【0024】
【0025】
フラップ30は、所与のリリーストルク85を有するトルクリミッタ60の可動部分160に機械的に接続されている。本発明の制動装置には、様々なタイプのトルクリミッタ60を使用することができる。例えば、SNT社のSKシリーズを使用することができる。リリーストルク85よりも大きいトルクがトルクリミッタ60に印加されると、トルクリミッタは、可動部分160に接続している構成部品を所与の揺れ角度80で急回転させることができる。好ましくは、本発明のトルクリミッタ60は、中心が揺れ軸40上にある。本発明の制動装置の場合、遠心力が揺れ軸40にかけた(式(式1)で求められた)トルクCが1つまたは複数のリリーストルク85よりも大きいとき、トルクリミッタ60は、1つまたは複数の揺れ角度80を引き起こすことができる。様々な揺れ位置は、実際にリリーストルク85が様々である点を特徴とすることができる。本発明の好適なバージョンでは、トルクリミッタ60は、揺れ角度80が規則的な点が特徴である。標準的な揺れ角度80はいずれも60°だが、他の値(例えば30°、90°、120°)も可能である。そのため、本発明のトルクリミッタ60は、同時に作動するトルクリミッタであって、スリップクラッチではない。スリップクラッチは、発生する揺れ幅の制御はせずに(トルクリミッタの可動部分は、トルク耐性がないために狂ってしまう)、揺れを起こす(または回転運動を解放する)だけのものである。これは、リリーストルクだけでなく揺れ角度80も規定されている本発明のトルクリミッタ60には当てはまらないものである。
【0026】
【0027】
図6は、本発明の制動装置の好適な実施形態を示し、この場合、フラップ30は、垂直軸風車20の羽根90の一部である。図6に示した例では、羽根90の一部であるフラップ30は、羽根90の下端でトルクリミッタ60に接続されている。さらに正確には、フラップ30は、(図6には図示していない)非垂直アーム70に対して可動式であるトルクリミッタ60の可動部分160に接続されている。トルクリミッタ60は、この同じ非垂直アーム70に対する固定部分150も備えている。これ以外の構成も可能である。したがって、羽根90の一部であるフラップ30は、羽根90の上端でトルクリミッタ60の可動部分160に接続されてもよい。好ましくは、複数のフラップ30を単一の羽根90に連結し、1つの同じ羽根90の様々な断片を構成する。この様々なフラップ30は、トルクリミッタ60の1つの同じ可動部分160に機械的に接続されてよい。1つの同じ羽根90に2つのフラップ30を連結する場合、フラップは、それぞれが羽根90の別々の端部(上端と下端)に設置されることが好ましい。図6では、トルクリミッタ60は、揺れ軸40の周囲に設置された円筒管110に取り付けられている。好ましくは、円筒管110によって、羽根90の別の部分と一体化したスリーブを介して、フラップ30を羽根90のこの別の部分に固定できる。フラップ30を適切に誘導するためには、フラップは、摩擦防止材を具備していることが好ましい。フラップ30の高さを修正すれば、制動力を修正することができる。フラップを高くするほど抗力は強くなるため、制動はさらに大きくなる。フラップ30が垂直軸20風車10の羽根90の一部である実施形態では、フラップ30の高さは、200mmから1mの間であることが好ましい。さらに好ましくは、また本発明の同じ実施形態の場合、フラップ30の高さは、羽根90の高さの1/16に設定される。したがって、羽根F64−10(高さ8メートル)の場合、フラップ30の高さは、500mmに設定されることが好ましいであろう。羽根F16−05(高さ4m)の場合、フラップ30の高さは、250mmに設定されることが好ましいであろう。
【0028】
もう1つの実施形態では、フラップ30は、垂直軸風車10の羽根90である。したがって、この場合、羽根90全体が揺れることで制動される。
【0029】
第2の態様によれば、本発明は、前述したような制動装置を備える垂直軸20風車10に関する。前記垂直軸20風車10は、垂直で直線状の羽根90を備えていることが好ましく、このような風車10は、当業者から「Hダリウス型風車」という名称で呼ばれることがある。図7は、本発明のこの第2の態様の好適な形態による垂直軸20風車10の一部の断面図である。この図7では、制動装置は、作動していると仮定されている、つまりフラップ30が揺れたと仮定されている。図7に示した好適な実施形態では、非垂直アーム70は傾斜し、フラップ30は羽根90上に位置している。この好適な実施形態では、フラップ30は実際に、羽根90の高さの中間に、この羽根90を2つの非垂直アーム70に固定する固定部の間に位置している。もう1つの好適な実施形態では、フラップ30は、非垂直アーム70上に、垂直軸20と非垂直アームの両端との間に位置し、この両端に、羽根90が機械的に接続される。風車10が羽根90を1つしか備えていない場合、この羽根は、羽根90が垂直軸20回りを柔軟に回転できるように、適切に均衡を保たれることが好ましい。風車が羽根90を複数、例えば3つ備えている場合、風車は、フラップ30を同数、この例では3つ備えていることが好ましい。
【0030】
本発明を特定の実施形態と関連付けて説明したが、これらの実施形態は、純粋に説明としての効力を持つものであって、限定的なものと考えてはならない。全体的に、本発明は、上記に説明かつ/または記載した例に限定されるものではない。特に、本発明は、冒頭で述べた実施形態の技術的特徴を組み合わせたものにも係る。「備える(comprendre)」、「含む(inclure)」、「有する(comporter)」という動詞、またはその他のあらゆる派生語、およびその活用形の使用は、言及した構成部品以外の構成部品の存在を排除できるものでは断じてない。1つの構成部品を紹介するための「1つの(un、une)」という不定冠詞、または「その(le、laまたはl’)」という定冠詞の使用は、これらの複数の構成部品の存在を排除するものではない。特許請求の範囲に記載の符号は、その符号の範囲を限定するものではない。
【0031】
要約すると、本発明を以下のように説明することもできる。揺れ軸回りを揺れることのできるフラップであって、前記フラップが、揺れ軸の外部に設置された重心を有する垂直軸風車の制動装置。本発明の制動装置は、この制動装置がリリーストルクを有するトルクリミッタをさらに備えていること、フラップが前記トルクリミッタに取り付けられていること、および前記トルクリミッタによって、前記フラップが前記揺れ軸の回りを揺れ角度をなして揺れることができ、前記フラップが前記垂直軸を回転する速度が、トルクリミッタにリリーストルク以上のトルクを引き起こす速度であることを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7