特許第6216956号(P6216956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6216956高い融解温度を有する溶融加工性ポリアミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6216956
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】高い融解温度を有する溶融加工性ポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20171016BHJP
   C08J 5/00 20060101ALN20171016BHJP
【FI】
   C08G69/26
   !C08J5/00CFG
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-513212(P2015-513212)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公表番号】特表2015-518909(P2015-518909A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2013060781
(87)【国際公開番号】WO2013174995
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】12169528.2
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ラルケンス, ルーディー
(72)【発明者】
【氏名】ニッジェンヒス, アッツェ ジャン
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−325362(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0135860(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/032822(WO,A1)
【文献】 特開平05−202288(JP,A)
【文献】 米国特許第05288799(US,A)
【文献】 特開平08−134206(JP,A)
【文献】 特開平05−230229(JP,A)
【文献】 特表2001−514695(JP,A)
【文献】 米国特許第06172178(US,B1)
【文献】 特表平11−512476(JP,A)
【文献】 米国特許第05965689(US,A)
【文献】 Stereochemistry Driven Distribution of 1,4-Diaminocyclohexane Residues over the Crystalline and Amorphous Phase in Copolyamides 4.14/1,4-DACH.14. A Solid-State NMR and Temperature-Dependent WAXD Study,MACROMOLECULES,米国,American Chemical Society,2005年 6月14日,vol. 38, 14 June 2005,6048-6055
【文献】 Brederode,Some diamines and polyamides containing Cyclohexane rings,PhD Thesis, Rotterdam,デルフト工科大学,1975年 6月 4日,第16頁−第119頁
【文献】 Influence of stereochemistry on the thermal properties of partially cycloaliphatic polyamides,Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry ,米国,Wiley Periodicals, Inc.,2002年 4月30日,第40巻第12号,第1962頁−第1971頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C08G 69/00 − 69/50
C08J 5/00 − 5/02
C08J 5/12 − 5/22
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.その構造において、構造I:
【化1】

による少なくとも1つのシクロヘキサン断片を含むジアミンであって、
上記式中、置換基が1,4−トランス位にあり、nは少なくとも1の整数であり、但しnが2以上である場合にシクロヘキサン環が、1,4−トランス位を介して互いに連結されていることを条件とする、ジアミン;
B.脂肪酸ベースの、32個から44個までの炭素原子を有するジカルボン酸
から誘導される単位を含む、ポリアミドであって、
1)ジアミンAから誘導される単位が、ジアミンの総量に対して40モル%を超える量を占め、
2)ジカルボン酸Bから誘導される単位が、ジカルボン酸の総量の少なくとも70モル%を占め、
前記ジカルボン酸Bが、二量体化脂肪酸であり、
ISO−11357−3.2,2009に準拠してDSCによって決定される融解温度が360℃未満である、ポリアミド。
【請求項2】
C.B以外の1種または複数種の脂肪族ジカルボン酸、
D.A以外の1種または複数種のジアミン、
E.1種または複数種の単官能性カルボン酸または単官能性アミン、
F.カルボン酸基、アミン基およびその組み合わせから選択される少なくとも3つの基を含む、1種または複数種の多官能性モノマー、
G.1種または複数種のラクタムまたは相当するアミノ酸、
から誘導される1つまたは複数の単位をさらに含む、ポリアミドであって、
3)単官能性モノマーEから誘導される単位が、すべてのモノマーA〜Gの合計の1kg当たりに最大で0.3モルの量で存在し、
4)多官能性モノマーFから誘導される単位が、すべてのモノマーA〜Gの合計の1kg当たりに最大で0.3モルの量で存在する、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
前記ジアミンAが、1,4−トランス−シクロヘキサンジアミンであることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項4】
前記二量体化脂肪酸が水素化脂肪酸であることを特徴とする、請求項に記載のポリアミド。
【請求項5】
A以外の前記ジアミンの少なくとも1つが、1,4−ジアミノブタンであることを特徴とする、請求項2に記載のポリアミド。
【請求項6】
前記1,4−ジアミノブタンが、ジアミンの総量に対して少なくとも10モル%の量で存在することを特徴とする、請求項に記載のポリアミド。
【請求項7】
B以外の前記ジカルボン酸が、少なくとも12個の炭素原子を有することを特徴とする、請求項2、及びのいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載のポリアミドと、少なくとも1種類の第2の成分と、を含む組成物。
【請求項9】
射出成形品または押出し成形品の製造のための、または電気および電子用途、自動車用途、包装用途または太陽電池バックパネル用途における部品としての、請求項1からのいずれか一項に記載のポリアミド、または請求項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、溶融加工性でありながら、高い融解温度を有するポリアミドに関する。本発明は、かかるポリアミドを含む組成物、そのポリアミドを製造するプロセス、およびそのポリアミドの使用にも関する。
【0002】
ポリアミドは一般に、一連の特性を有し、そのため多種多様な分野の産業における用途に非常に有用である。ポリアミドは一般に、良好な機械的、電気的および熱的性質の組み合わせを有する。さらにポリアミドは一般に、様々な物品へと容易に加工することができる。好ましい特性と加工の容易さのこの組み合わせによって、ポリアミドは広く使用される種類のポリマーとなっている。ポリアミドが広く使用される分野は、例えば自動車産業、電気/電子産業、建設および建築産業である。用途の正確な分野に応じて、更なる要求条件がポリアミドに課せられる。
【0003】
ポリアミドが自動車産業において使用される場合には、機械的性質に関して、例えば高い剛性、耐疲労性、テナシティおよび耐衝撃性などの高い条件が課せられる。さらに、産業のこの部門における厳しい条件を満たすために、加熱撓み温度および吸湿性に関して優れた特性が必要とされる。
【0004】
ポリアミドが、電気/電子産業で使用される場合、ポリアミドは一般に、例えば回路基板に素子を取り付ける場合に適用される、はんだ付け工程中に用いられる高温に耐えることができるように、高い融解温度を有する必要がある。しかしながら、十分に高い融解温度を有するすべてのポリアミドが小さな部品に容易に加工できるわけではない。さらに、電気/電子産業で使用されるポリアミドは、水/水分を吸収する傾向が低いことも必要である。ポリアミドが水分を多く吸収しすぎると、ポリアミドで製造された部品の寸法が不安定になる傾向があり、それは部品の歪みが起こり、その結果、その部品がその機能を失い得ることを意味する。
【0005】
建築分野において、例えばギヤ、スイッチ等の製造に使用される材料にも高い条件が課せられる。この分野での詳細な特性は、例えば吸湿性、耐薬品性および耐摩耗性である。
【0006】
ポリアミドに関して特性の複雑な組み合わせが必要とされること、厳密な組み合わせは、ポリアミドが使用される分野に応じて異なることは明らかである。
【0007】
国際公開第98/40428号パンフレットに、その加熱撓み温度および吸湿性が最も重要な特性である自動車部品の製造に特に適しているポリアミド組成物が記述されている。国際公開第98/40428号パンフレットに従って、脂肪族ポリアミドにおいて、鎖単位の1〜40重量%が、i)1種または複数種の脂環式ジカルボン酸および脂肪族ジアミンまたはii)1種または複数種の脂環式ジアミンおよび脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位によって置き換えられる場合に、適切なポリアミドを製造することができる。したがって、鎖単位の最大で40重量%が脂環式化合物をベースとするはずである。一見したところ、その酸またはアミンは、脂環式であってもなくてもよい。40重量%を超える量を組み込むことによって、非常に不利な結晶化挙動が起こり、容認できないほど融点が高くなる。どちらの作用によっても、例えば射出成形による加工が不可能となる。
【0008】
国際公開第97/11108号パンフレットに、電気および電子部品の製造に非常に適したポリアミド組成物が記載されている。ここでも最も重要な特性は、はんだ付け条件下での耐性である。そのため、国際公開第97/11108号パンフレットに従って、そのポリアミドの融解温度は、はんだ付け作業に必要とされる温度をはるかに超えるべきである。この目的は、国際公開第97/11108号パンフレットに従って、その鎖単位の1〜40重量%が、1,4−シクロヘキサンジアミンおよび脂肪族ジカルボン酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸および脂肪族ジアミンから誘導される単位によって置き換えられている、脂肪族ポリアミドによって達成される。したがって、脂肪族ポリアミドにおいて、その鎖単位の最大で40重量%が、シクロヘキサンジカルボン酸またはシクロヘキサンジアミンをベースとする。40重量%を超える量を組み込むことによって、損なわれた結晶化挙動などの望ましくない作用が起こり、例えば射出成形などの従来通りの加工技術でもはや加工できないポリマーが形成される。さらに、国際公開第97/11108号パンフレットにおける材料は、比較的高レベルの吸湿性を示し、多くの用途では高すぎる。
【0009】
国際公開第97/11108号パンフレットおよび国際公開第98/40428号パンフレットから、実質的に脂肪族のポリアミドの特定の材料特性が、限られた量の特定の脂環式化合物を組み込むことによって改善することができることが明らかになっている。しかしながら、ポリアミドの一部の材料特性、例えば結晶化、融点および吸湿性は、まだ満足できるものではない。したがって、先行技術の材料の不利点を克服する、または少なくとも不利点が低減される、向上したポリアミド材料が必要とされている。
【0010】
結晶化挙動、融点および吸湿性に関して向上した特性を有するポリアミドを得ることができることが判明した。本発明によるポリアミドは:
A.その構造において、構造I:
【化1】

による少なくとも1つのシクロヘキサン断片を含むジアミンであって、
上記式中、置換基が1,4−トランス位にあり、nは少なくとも1の整数であり、但しnが2以上である場合にシクロヘキサン環が、1,4−トランス位を介して互いに連結されていることを条件とする、ジアミン;
B.少なくとも13個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸;
から誘導される単位を含み、
1)ジアミンAから誘導される単位は、ジアミンの総量に対して40モル%を超える量を占め、
2)ジカルボン酸Bから誘導される単位は、ジカルボン酸の総量の少なくとも70モル%を占める。
【0011】
好ましくは、本発明によるポリアミドはさらに:
C.B以外の1種または複数種の脂肪族ジカルボン酸、
D.A以外の1種または複数種のジアミン、
E.1種または複数種の単官能性カルボン酸または単官能性アミン、
F.カルボン酸基、アミン基およびその組み合わせから選択される少なくとも3つの基を含む、1種または複数種の多官能性モノマー、
G.1種または複数種のラクタムまたは相当するアミノ酸、
から誘導される1つまたは複数の単位を含み、
1)単官能性モノマーEから誘導される単位は、すべてのモノマーA〜Gの合計の1kg当たりに最大で0.3モルの量で存在し、
2)多官能性モノマーFから誘導される単位は、すべてのモノマーA〜Gの合計の1kg当たりに最大で0.3モルの量で存在する。
【0012】
意外なことに、本発明によるポリアミドは、非常に好ましい特性の組み合わせ、特により高い結晶性、高い融点および低い吸湿性を示すことが判明した。本発明によるポリアミドは意外なことに、そのポリアミドを溶融加工することができるという重要な可能性と、これらの有利な特性を併せ持っている。
【0013】
Polymer Science of the USSR,9(1967),2872においてKalmykovaによって、シクロヘキサン環を有するポリアミドが既に記述されている。しかしながら、それに記載のポリアミドは、溶融加工可性となるには融点が高すぎる。Kalmykovaは、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサンにも言及している。このシス−モノマーをベースとするポリアミドはより低い融点を有するが、その一連の特性が適切ではないことから、目的の用途で使用するのに適していない。シス−モノマーに関する不利な特性は、例えば低い結晶性、そのためガラス転移温度を超える低いモジュラスおよび高い吸湿性である。
【0014】
本明細書において溶融加工性とは、以下で溶融加工にかけられるポリアミドが360℃未満の融解温度を有することを意味する。融解温度は、ISO−11357−3.2,2009に準拠してDSCによって決定される。
【0015】
本発明によるポリアミドは低レベルの吸湿性を有しながら、高い融点を併せ持つ。低レベルの吸湿性を有する先行技術のポリアミドは一般に、低い融解温度と共にこれを併せ持つ。したがって、本発明によるポリアミドは、低い吸湿性と高い融解温度の特有の組み合わせを提供する。吸湿性のレベルが低いと、本発明によるポリアミドから製造された物品の寸法安定性のレベルが高くなる。
【0016】
本発明によるポリアミドは、その構造において、構造I:
【化2】

による少なくとも1つのシクロヘキサン断片を含むジアミンA)であって、
上記式中、置換基が1,4−トランス位にあり、nは少なくとも1の整数であり、但しnが2以上である場合にシクロヘキサン環が、1,4−トランス位を介して互いに連結されていることを条件とする、ジアミンA)から誘導される単位を含む。
【0017】
構造Iによる構造単位は、それ自体が多くの回数繰り返される。この回数は、正の整数nによって示されている。nが正の値の整数である限り、nの値は広範囲にわたって変動し得る。nの適切な値は、例えば1〜5であり、好ましくはnは1または2であり、さらに好ましくはnは1である。nが1である場合に、構造Iによる少なくとも1つのシクロヘキサン断片をその構造中に含む好ましいジアミンは、1,4−トランス−シクロヘキサンジアミンである。nの値が低いと溶融加工性が良くなることから、nの値は低いことが好ましい。nが1を超える値を有する場合には、個々の環構造は、第1環構造の1位および第2環構造の4位を介して互いに連結されるべきである。n=3を有するかかる構造の一例を以下に示す。
【化3】

【0018】
一般構造Iにおけるシクロヘキサン断片は、例えば低級アルキル基で置換され得る。本明細書において、かつ以下で、「低級アルキル基」とは、炭素原子1〜4個を有するアルキル基を意味する。好ましくは、シクロヘキサン断片は置換されておらず、したがって炭素骨格に結合している水素原子のみを有する。
【0019】
本発明によるポリアミドは、ジアミンA)から誘導される単位の次に、少なくとも13個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸B)から誘導される単位を含む。ジカルボン酸が13個未満の炭素原子を有する場合、得られるポリアミドの融点は一般に、その使用を工業的に実現可能にするには高すぎる。ポリアミドが溶融加工で高すぎる融点を有する場合には、溶融状態での滞留時間中に熱劣化が起こり、特にブリスタリングおよび分子量の変化、変色等が生じる。
【0020】
芳香族または脂環式ジカルボン酸などの他の種類の二酸が使用される場合には、融点が容認できないレベルまで増加するため、ジカルボン酸Bは脂肪族ジカルボン酸であるべきである。脂肪族ジカルボン酸における炭素原子数は、少なくとも13である限り、特に重要ではない。脂肪族ジカルボン酸における炭素原子数は、好ましくは少なくとも16、さらに好ましくは16を超える。さらに好ましくは、ジカルボン酸は、1,18−オクタデカン二酸または1,19−ノナデカン二酸である。
【0021】
ジアミンAおよび脂肪族ジカルボン酸Bから製造されるポリアミドは、非常に有利な特性の組み合わせ、特に融点と吸湿性のレベルの好ましい組み合わせを有することが判明した。
【0022】
好ましい一実施形態において、ジカルボン酸は脂肪酸であり、炭素原子13〜22個を有する。かかる脂肪酸ベースのジカルボン酸は、脂肪酸を脂肪酸ベースのジカルボン酸に転化することによって得られる。その方法は当業者には公知である。酵素による脂肪酸のジカルボン酸への酸化は、例えばEshenfeldらによってApplied and Environmental microbiology,Oct.2003,5992−5995に公開されている。化学反応による、脂肪酸ベースのジカルボン酸の入手は、例えばMeckingらによってAngew.Chem.Int.Ed.2010,49,4306−4308に公開されている。
【0023】
意外なことに1,4−トランス−シクロヘキサンジアミンと組み合わせた、これらからのポリアミドは、高い融点を有しながら溶融加工性であり、かつ吸水性が非常に低いことが判明していることから、好ましくは、その脂肪酸ベースのジカルボン酸は炭素原子18または19個を有する。
【0024】
さらに好ましくは、脂肪酸ベースのジカルボン酸は、ステアリン酸、またはC18飽和および不飽和脂肪酸の混合物から得られ、その不飽和は好ましくは、水素化されている。ジアミンは、よく知られている反応の1つによって、カルボン酸基をアミン基へと変換することによって得ることができる。
【0025】
他の好ましい実施形態において、脂肪酸ベースのジカルボン酸は、炭素原子24〜44個を有する。かかるジカルボン酸は、モノマー不飽和脂肪酸の二量体化によって得られ、二量体化脂肪酸と呼ばれる。
【0026】
二量体化反応後、結果として得られたオリゴマー混合物はさらに、例えば蒸留によって処理され、高含有率の二量体化脂肪酸を有する混合物が形成される。二量体化脂肪酸における二重結合は、接触水素化によって飽和され得る。本明細書で使用される二量体化脂肪酸という用語は、飽和および不飽和のこれらの二量体化脂肪酸の両方のタイプに関する。二量体化脂肪酸は好ましくは、炭素原子を32個から44個まで含有する。最も好ましくは、二量体化脂肪酸は炭素原子を36個含有する。二量体化脂肪酸は通常、混合物として市販されていることから、C原子の量は通常、平均値である。既知の反応の1つによって、その酸基のうちの1つまたは2つをアミン基に置き換えることによって、二量体化脂肪酸の誘導体を生成することも可能である。
【0027】
二量体化脂肪酸の構造および特性に関する更なる詳細が、クローダ社(Croda)(元のユニケマ社(Unichema),エンメリヒ(Emmerich),ドイツ(Germany))の相当するリーフレット「Pripol C36−Dimer acid」またはコグニス社(Cognis)(デュッセルドルフ(Duesseldorf),ドイツ)のパンフレット「Empol Dimer and Poly−basic Acids;Technical Bulletin 114C(1997)」に記載されている。
【0028】
そこから誘導される本発明のポリアミドが、非常に低い吸水性と併せて、より高い熱安定性およびより低い融点を有することから、好ましくは、脂肪酸ベースのジカルボン酸は、水素化二量体化脂肪酸である。水素化二量体化脂肪酸は、例えば商品名Pripol 1009でクローダ社から入手される。
【0029】
ジアミンAおよび脂肪族ジカルボン酸Bの次に、本発明によるポリアミドは任意に、C)B以外の1種または複数種の脂肪族ジカルボン酸および/またはA以外の1種または複数種のジアミン、および/またはE)1種または複数種の単官能性カルボン酸または単官能性アミン、および/またはF)カルボン酸および/またはアミン基を含む1種または複数種の多官能性モノマー、および/またはG)1種または複数種のラクタムまたは相当するアミノ酸から誘導される単位を含み得る。これらの単位はポリアミド中に存在し得るが、本発明の利点を得るためにそれらが存在することが必ずしも必要なわけではない。したがって、それらのすべてが任意である。
【0030】
構造Iによる少なくとも1つのシクロヘキサン断片をその構造中に含むジアミンAの次に、1種または複数種の他のジアミン(D)が存在してもよい。この他のジアミンDは、本質的に脂肪族、脂環式または芳香族であり得る。この任意のジアミンDにおける炭素原子数は特に重要ではない。炭素原子数の適切な範囲は、1〜44、好ましくは2〜10、さらに好ましくは4〜6である。意外なことに、ジアミンD中の炭素原子数が少ないと、より高い結晶性、より良い機械的性質、例えばより高い温度でのより良い剛性などが達成され得ることが判明した。最も好ましくは、ジアミンDは1,4−ジアミノブタンである。使用されるジアミンの総量に対して少なくとも10モル%の量で1,4−ジアミノブタンを使用することが好ましい。
【0031】
ジアミンAの次に、任意のジアミンDを使用する場合には、任意のジアミンDは、ジアミンAがジアミンの総量の少なくとも40モル%を占めるような量で使用すべきである。好ましくは、ジアミンDは、ジアミンの総量に対して少なくとも5モル%、最大で60モル%の量で存在する。60モル%を超えるジアミンDが使用される場合には、結晶性が不利に影響を受け、融点が下がり、吸湿性が増加する。
【0032】
「任意のジアミン」という言葉は、そのジアミンを1種類のジアミンのみに制限することを意味するものではない。本発明の範囲内で、ジアミンDは、ジアミンA以外の2種類以上のジアミンも含み得る。したがって、ジアミンDは、ジアミンAの次の他の1種類のみのジアミンを意味し得るが、ジアミンA以外の2種類以上のジアミンの組み合わせも意味し得る。ジアミンDについて上記に示される量は、A以外の2種類以上のジアミンが使用される場合には、ジアミンA以外のすべてのジアミンの総量を意味する。
【0033】
ジアミンAおよび脂肪族ジカルボン酸Bの次に、B以外の1種または複数種の脂肪族ジカルボン酸(C)が存在し得る。このジカルボン酸Cは脂肪族であるべきである。それは直鎖を有し得るが、分枝鎖を有する脂肪族カルボン酸を使用することも可能である。直鎖を使用することが好ましく、直鎖は、その鎖が置換を含有しないことを意味する。その任意のカルボン酸が直鎖脂肪族カルボン酸である場合に得られるポリアミドは、より高い結晶性とより低い吸湿性を有する。ジカルボン酸Cの鎖における炭素原子数は、奇数または偶数であることができ、好ましくは偶数である。その鎖における炭素原子数は特に重要ではなく、適切な範囲は、例えば2〜44である。好ましくは、ジカルボン酸における炭素原子数は、少なくとも6、さらに好ましくは少なくとも10である。ジカルボン酸Cにおける炭素原子数が高いほど、熱安定性が高い材料が得られ、溶融加工の温度を高くすることが可能となる。
【0034】
本発明によるポリアミドの製造で使用される脂肪族ジカルボン酸Cの量は、ジカルボン酸の総量に対して30モル%以下であるべきである。好ましくは、脂肪族ジカルボン酸Cの量は、25モル%未満、さらに好ましくは15モル%未満である。より多い量のジカルボン酸Cで製造されるポリアミドと比較して、脂肪族ジカルボン酸Cの量が少ないほど、得られるポリアミドの結晶性が高くなり、融点の低下が少なくなるため有利である。
【0035】
ジアミンAおよび脂肪族ジカルボン酸Bの次に、1種または複数種の単官能性カルボン酸または単官能性アミン(E)が存在し得る。単官能性成分を使用して、合成中に、最終的に得られるポリアミドの分子量を調節することができる。単官能性成分Eの特性は特に重要ではないが、脂肪族、脂環式または芳香族であり得る。単官能性モノマーは、カルボン酸または単官能性アミンであり得る。適切な単官能性カルボン酸の例は、安息香酸、炭素原子1〜24個を有する脂肪族モノカルボン酸、例えば酢酸およびプロピオン酸などである。脂肪族モノカルボン酸の利点は、それらから得られるポリアミドは、紫外線吸収が少なく、変色を受けにくいことである。
【0036】
適切な単官能性アミンの例は、例えばドデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの、炭素原子2〜24個を有する脂肪族モノアミンである。10個を超える炭素原子を有するモノアミンの利点は、揮発性が低く、したがって、より効率的にポリマーに組み込まれることである。
【0037】
本発明によるポリアミドの製造に使用される単官能性成分Eの量は、モノマーA、B、C、D、E、FおよびG(さらに「A〜G」と省略される)すべての合計の1kg当たり0.3モル以下のレベルであるべきである。成分Eのレベルが低いほど、高いモル質量が得られるため、好ましくは、成分Eのレベルは、モノマーA〜Gすべての合計の1kg当たり0.2モル以下であるべきである。押出し成形に特に適しているポリアミドを得るために、好ましくは成分Eは全く使用されず、したがって、モノマーA〜Gすべての合計の1kg当たり0モルのレベルである。
【0038】
ジアミンAおよび脂肪族ジカルボン酸Bの次に、カルボン酸および/またはアミン基を含む1種または複数種の多官能性モノマー(F)が存在し得る。これによって、メルトレオロジー挙動を制御することが可能となり、例えば、溶融粘度のせん断依存性(shear dependency)を高くすることが可能となる。好ましくは、多官能性モノマーは三官能性であり、かつ少なくとも4個の炭素原子を有する。好ましいモノマーは、ビス−ヘキサメチレン−ジアミンである。
【0039】
本発明によるポリアミドの製造で使用される多官能性成分Fの量は、モノマーA、B、C、D、E、FおよびG(さらに「A〜G」と省略される)すべての合計の1kg当たり0.3モル以下のレベルであるべきである。成分Fのレベルが低いほど、ゲル化が避けられるため、好ましくは、成分Fのレベルは、モノマーA〜Gすべての合計の1kg当たり0.2モル以下であるべきである。さらに好ましくは、成分Fは全く使用されず、したがって、モノマーA〜Gすべての合計の1kg当たり0モルのレベルである。成分Fのレベルが低いほど、流れが高くなり、それは例えば電気および電子分野の用途、例えばコネクター用途において有利である。
【0040】
ジアミンAおよび脂肪族ジカルボン酸Bの次に、1種または複数種のラクタムおよび/または1種または複数種の相当するアミノ酸が存在し得る。ポリアミドのこの構成単位は、成分Gと呼ばれる。したがって、成分Gとは、1種または複数種のラクタム、1種または複数種のアミノ酸または1種または複数種のラクタムと1種または複数種のアミノ酸との組み合わせを意味し得る。ラクタムを添加して、融点の低いポリアミドを得ることができる。本発明によるポリアミドの製造に使用される成分Gの量は、二官能性モノマーの総量に対して20モル%以下であるべきである。好ましくは、成分Gは、15モル%未満の量で存在し、さらに好ましくは成分Gは全く存在せず、したがって好ましくは成分Gは、0モル%の量で存在する。
【0041】
任意の成分C、D、E、FおよびGは、必須の成分AおよびBと別々に使用され得るが、必須の成分AおよびBの次に、2種類以上の任意の成分を使用することも可能である。そのため、例えば成分AおよびBの次に、成分Cを成分DまたはFまたはGと共に使用することが可能であるが、必須の成分AおよびBの次に、成分D、E、FおよびGのいずれかの組み合わせと共に成分Cを使用することも可能である。成分AおよびBの次に、成分Dを成分CまたはEまたはFまたはGと共に使用することも可能であるが、必須の成分AおよびBの次に、成分C、E、FおよびGのいずれかの組み合わせと共に成分Dを使用することも可能である。成分AおよびBの次に、成分Eを成分CまたはDまたはFまたはGと共に使用することも可能であるが、必須の成分AおよびBの次に、成分C、D、FおよびGのいずれかの組み合わせと共に成分Eを使用することも可能である。成分AおよびBの次に、成分FをCまたはDまたはEまたはGと共に使用することも可能であるが、必須の成分AおよびBの次に、成分C、D、EおよびGのいずれかの組み合わせと共に成分Fを使用することも可能である。成分AおよびBの次に、成分Gと共に成分CまたはDまたはEまたはFを使用することも可能であるが、必須の成分AおよびBの次に、成分C、D、EおよびFのいずれかの組み合わせと共に成分Gを使用することも可能である。
【0042】
本発明は、本発明によるポリアミドと、少なくとも1種類の第2の成分と、を含む組成物にも関する。第2成分の例は、H.Zweifel、R.MaierおよびM.Schillerによる「Plastics additives Handbook」,6th edition,2009,Hanser Verlag,ISBN9781569904305に記載されている。第2成分の例は、ガラス繊維、顔料、難燃剤および安定剤である。
【0043】
本発明は、本発明によるポリアミドを製造するプロセスであって、少なくとも以下の工程:
・出発原料:構造I
【化4】

による少なくとも1つのシクロヘキサン断片をその構造中に含むジアミンA、少なくとも13個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸B、B以外の1種または複数種の脂肪族ジカルボン酸(C)、A以外の1種または複数種のジアミン(D)、1種または複数種の単官能性カルボン酸または単官能性アミン(E)、カルボン酸および/またはアミン基を含む1種または複数種の多官能性モノマー(F)および1種または複数種のラクタムまたは相当するアミノ酸(G)を提供する工程と、
・高圧および高温にて、任意に重縮合触媒の存在下で出発原料の重縮合を開始する工程と、
を含む、プロセスにも関する。
【0044】
本発明による新規なポリアミドは、それ自体が既知の重縮合方法を用いて得ることができる。二段階プロセスが利用される場合が多く、その第1工程では、最初のジアミンAおよびジカルボン酸B、任意にB以外の脂肪族ジカルボン酸(C)、A以外のジアミン(D)、単官能性カルボン酸または単官能性アミン(E)、多官能性モノマー(F)および/またはラクタムまたは相当するアミノ酸(G)の重縮合が、高圧、約200〜300℃の温度で、任意に重縮合触媒の存在下にて開始される。その場合には、モノマーは、相当する塩の状態で存在してもよいし、しなくてもよい。圧力は一般に、約1〜2MPで維持され、重縮合から形成される水は除去される。0.5〜3時間の反応時間後、温度が上昇すると同時に圧力は下がり、その結果、得られる低分子量ポリアミドは溶融状態のままである。続いて、この溶融物をさらに2〜5時間、ポリアミドの融点を超える温度で、任意に窒素ベントを用いて真空中にて縮合する。
【0045】
本発明はさらに、射出成形品または押出し成形品の製造のための、または電気および電子用途、自動車用途、包装用途または太陽電池バックパネル用途における部品としての、本発明によるポリアミド、またはそのポリアミドと少なくとも1種類の第2成分を含む組成物の使用にも関する。
【0046】
[実験]
[相対粘度]
後縮合によって得られたポリマーの相対粘度を測定した。相対粘度の測定はISO307に基づいて行った。測定のために、予備乾燥させたポリマー試料を使用し、その乾燥は高真空(すなわち、50ミリバール未満)下にて105℃で16時間行われた。相対粘度の決定は、25.00±0.05℃にてm−クレゾール100g中にポリマー1グラムの濃度で行った。Schott社からDIN−Ubbelohde(毛管定数0.3および内径1.5mm)を使用して、溶液(t)および溶媒(t0)の流動時間を25℃で測定した。相対粘度はt/t0として定義され、Haagenbach補正で補正される。
【0047】
[DSCによる熱的キャラクタリゼーション(ASTM D3417−97 E793−85/794−85に準拠)]
[融解温度、Tの決定:]
第2融解温度Tの測定は、加熱および冷却速度10℃/分を用いてN雰囲気中でMettler Toledo Star System(DSC)を使用して行った。測定のために、予備乾燥粉末状ポリマー約5mgの試料を使用した。高真空、つまり50ミリバール未満および105℃にて、予備乾燥を16時間行った。10℃/分で試料を20℃から最高温度、Tmaxまで加熱し、すぐに10℃/分で0℃に冷却し、0℃で5分間維持し、続いて10℃/分で再びTmaxに加熱した。融解温度Tに関して、第2加熱サイクルにおける融解ピークのピーク値が決定された。
【0048】
[融解エンタルピーの決定]
融解エンタルピーに関して、第2加熱サイクルにおける融解ピークの積分値が決定された。
【0049】
[実施例]
以下の実施例において、簡略表示が用いられ、1,4−トランス−シクロヘキサンジアミンは、DACHと略記され、1,18−オクタン二酸は18と略記され、二量体化脂肪酸Pripol 1009は36と略記される。
【0050】
[実施例1:ポリアミドPA DACH18の製造]
2Lのオートクレーブに、1,4−トランス−シクロヘキサンジアミン(1.94モル)、水346.3g、1,18−オクタン二酸(1.87モル)をこの順序で攪拌しながら装入することによって、塩を生成した。混合物を35分で37℃から220℃に加熱した。混合物を220℃で5分間維持した。その後、混合物を250℃に加熱すると同時に、40分間にわたって蒸留することによって水256gを除去した。次いで、雰囲気不活性化(atmospheric inertised)容器内に反応混合物を放出し、固体粉末としてポリアミドが得られた。続いて、このようにして得られたプレポリマーを粉砕して、1〜20mmのサイズの粒子を形成し、続いてN2/H2O(1800/700g/時)のストリーム中で240℃にて16時間、後縮合した。
【0051】
第2加熱における実験的融点(Tm2):333℃(DSC測定におけるTmax=380℃)。
【0052】
[実施例2:ポリアミドPA DACH18/418(0.90/0.10(モル/モル))の製造]
2Lのオートクレーブに、1,4−トランス−シクロヘキサンジアミン(1.80モル)、1,4−ジアミノブタン(0.28モル)、水(357g)、1,18−オクタン二酸(1.92モル)をこの順序で攪拌しながら装入することによって、塩を生成した。混合物を35分で37℃から210℃に加熱した。混合物を210℃で5分間維持した。次いで、混合物を240℃に加熱すると同時に、40分間にわたって蒸留することによって水270gを除去した。その後、雰囲気不活性化容器内に反応混合物を放出し、固体粉末としてポリアミドが得られた。続いて、このようにして得られたプレポリマーを粉砕して、1〜20mmのサイズの粒子を形成し、続いてN2/H2O(1800/700g/時)のストリーム中で240℃にて16時間、後縮合させた。
【0053】
第2加熱における実験的融点(Tm2):310℃(DSC測定におけるTmax=380℃)。
【0054】
[実施例3:ポリアミドPA DACH36の製造]
2Lのオートクレーブに、1,4−トランス−シクロヘキサンジアミン(1.25モル)、水(90g)、クローダ社から市販の水素化(飽和)二量体脂肪ジカルボン酸Pripol 1009(分子量、M=565g/モル、1.18モル)を装入することによって、塩を生成した。不活性化後に混合物を35分で37℃から220℃に加熱した。混合物を220℃で30分間維持した。次いで、反応温度を220℃で維持しながら、圧力を2時間にわたって気圧に下げた。その圧力が気圧になった後、温度を1時間の間に250℃に上げ、その温度で3時間維持した。過剰圧力による加圧によって、反応溶融物をオートクレーブから放出し、冷却後に粒状化した。生成物を真空中にて80℃で24時間乾燥させた。
【0055】
第2加熱における実験的融点(Tm2):201.7℃(DSC測定におけるTmax=280℃)。第2加熱における。融解エンタルピーΔHm2:27J/g。
m−クレゾール中の相対粘度(RV):1.67。
【0056】
重量減少によって測定された、40℃の水中での厚さ0.5mmのメルトプレスフィルムの平衡吸湿量(2枚のプレート間の材料を250℃で5分間維持し、5分間にわたって室温に冷却することによってプレスされる):0.1重量%。