(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6217100
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】画像処理装置、プロジェクター、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20171016BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20171016BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20171016BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
H04N5/74 D
G03B21/14 Z
G03B21/00 E
G01B11/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-60539(P2013-60539)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-187520(P2014-187520A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古井 志紀
【審査官】
秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−509767(JP,A)
【文献】
特開2001−266176(JP,A)
【文献】
特開2010−250041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
G03B 21/14
G03B 21/00
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、
前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、
前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段と
を有し、
前記少なくとも6つの補正点は、前記補正用画像の外枠上に位置する6つの補正点を含み、
前記第1の画像は、前記直線上に位置する2つの補正点を含む4つの補正点で形成される矩形画像であり、
前記第2の画像は、前記6つの補正点のうちの前記4つの補正点以外の2つの補正点と前記直線上に位置する2つの補正点との4つの補正点によって形成される矩形画像であり、
前記決定手段は、前記直線を第1の直線とし、前記第1の画像を形成する4つの補正点のうちの前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第2の直線とし、前記第2の画像を形成する4つの補正点のうち前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第3の直線とする場合、前記第1の直線、前記第2の直線及び前記第3の直線が1点で交わるように、前記6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する
画像処理装置。
【請求項2】
投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、
前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、
前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段と
を有し、
前記補正用画像は矩形画像であり、
前記2つの補正点は前記矩形画像を形成する4つの辺のうちの相対する2つの辺上に位置し、
前記決定手段は、前記4本の辺のうちの前記相対する2つの辺以外の2つの辺のそれぞれの延長線と前記直線との交点、及び前記2つの補正点の4つの点について前記直線上における該4つの点の複比が変化しないように、前記少なくとも1つの補正点の位置を決定する
画像処理装置。
【請求項3】
前記決定手段により決定された補正点の位置に基づき、前記投射制御手段が前記投射装置に投射させる補正用画像の歪み補正処理を行う処理手段
を備える請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記変更手段は、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点について、ユーザーの指示による移動可能な方向を制限する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記変更手段は、前記6つの補正点のうちのいずれか1つの補正点について、ユーザーの指示による移動可能な方向を予め定められた第1の方向に制限し、当該補正点の予め定められた第2の方向の座標を、当該補正点以外の補正点の位置に基づき決定する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記変更手段は、前記第1の直線上に位置する2つの補正点、前記第2の直線上に位置する2つの補正点、及び前記第3の直線上に位置する2つの補正点、のうちのいずれかについて、ユーザーの指示による移動可能な方向を予め定められた第1の方向に制限し、当該2つの補正点の予め定められた第2の方向の座標をそれぞれ、当該2つの補正点以外の補正点の位置に基づき決定する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記投射制御手段は、前記決定手段により位置の決定が行われた補正点に関し、前記投射制御手段が前記投射装置に投射させている当該補正点の位置を前記決定手段により決定された位置に近付けるための案内を表す画像を前記投射装置に投射させる
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
投射面に画像を投射する投射装置と、
前記投射装置に少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、
前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、
前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段と
を有し、
前記少なくとも6つの補正点は、前記補正用画像の外枠上に位置する6つの補正点を含み、
前記第1の画像は、前記直線上に位置する2つの補正点を含む4つの補正点で形成される矩形画像であり、
前記第2の画像は、前記6つの補正点のうちの前記4つの補正点以外の2つの補正点と前記直線上に位置する2つの補正点との4つの補正点によって形成される矩形画像であり、
前記決定手段は、前記直線を第1の直線とし、前記第1の画像を形成する4つの補正点のうちの前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第2の直線とし、前記第2の画像を形成する4つの補正点のうち前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第3の直線とする場合、前記第1の直線、前記第2の直線及び前記第3の直線が1点で交わるように、前記6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する
プロジェクター。
【請求項9】
投射面に画像を投射する投射装置と、
前記投射装置に少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、
前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、
前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段と
を有し、
前記補正用画像は矩形画像であり、
前記2つの補正点は前記矩形画像を形成する4つの辺のうちの相対する2つの辺上に位置し、
前記決定手段は、前記4本の辺のうちの前記相対する2つの辺以外の2つの辺のそれぞれの延長線と前記直線との交点、及び前記2つの補正点の4つの点について前記直線上における該4つの点の複比が変化しないように、前記少なくとも1つの補正点の位置を決定する
プロジェクター。
【請求項10】
投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる第1の工程と、
前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する第2の工程と、
前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する第3の工程と
を有し、
前記少なくとも6つの補正点は、前記補正用画像の外枠上に位置する6つの補正点を含み、
前記第1の画像は、前記直線上に位置する2つの補正点を含む4つの補正点で形成される矩形画像であり、
前記第2の画像は、前記6つの補正点のうちの前記4つの補正点以外の2つの補正点と前記直線上に位置する2つの補正点との4つの補正点によって形成される矩形画像であり、
前記第3の工程においては、前記直線を第1の直線とし、前記第1の画像を形成する4つの補正点のうちの前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第2の直線とし、前記第2の画像を形成する4つの補正点のうち前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第3の直線とする場合、前記第1の直線、前記第2の直線及び前記第3の直線が1点で交わるように、前記6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する
画像処理方法。
【請求項11】
投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる第1の工程と、
前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する第2の工程と、
前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する第3の工程と
を有し、
前記補正用画像は矩形画像であり、
前記2つの補正点は前記矩形画像を形成する4つの辺のうちの相対する2つの辺上に位置し、
前記第3の工程においては、前記4本の辺のうちの前記相対する2つの辺以外の2つの辺のそれぞれの延長線と前記直線との交点、及び前記2つの補正点の4つの点について前記直線上における該4つの点の複比が変化しないように、前記少なくとも1つの補正点の位置を決定する
画像処理方法。
【請求項12】
コンピューターを、
投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、
前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、
前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段
として機能させるためのプログラムであって、
前記少なくとも6つの補正点は、前記補正用画像の外枠上に位置する6つの補正点を含み、
前記第1の画像は、前記直線上に位置する2つの補正点を含む4つの補正点で形成される矩形画像であり、
前記第2の画像は、前記6つの補正点のうちの前記4つの補正点以外の2つの補正点と前記直線上に位置する2つの補正点との4つの補正点によって形成される矩形画像であり、
前記決定手段は、前記直線を第1の直線とし、前記第1の画像を形成する4つの補正点のうちの前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第2の直線とし、前記第2の画像を形成する4つの補正点のうち前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第3の直線とする場合、前記第1の直線、前記第2の直線及び前記第3の直線が1点で交わるように、前記6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する
プログラム。
【請求項13】
コンピューターを、
投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、
前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、
前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段
として機能させるためのプログラムであって、
前記補正用画像は矩形画像であり、
前記2つの補正点は前記矩形画像を形成する4つの辺のうちの相対する2つの辺上に位置し、
前記決定手段は、前記4本の辺のうちの前記相対する2つの辺以外の2つの辺のそれぞれの延長線と前記直線との交点、及び前記2つの補正点の4つの点について前記直線上における該4つの点の複比が変化しないように、前記少なくとも1つの補正点の位置を決定する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、プロジェクター、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターがスクリーンに対して理想的な位置関係からずれて設置されると、スクリーンに投射される画像には歪みが生じる。また、画像が投射されている面が非平面である場合にも、投射される画像には歪みが生じる。そこで、投射される画像の歪みを射影変換により補正する機能をプロジェクターに備えることが知られている。特許文献1には、円柱状スクリーンの投射面の形状に伴う投影画像の歪を補正するために予め設定されている近似式(放物線式)と、該近似式を変形するためにユーザーインターフェースより入力される横方向の変形用変数と縦方向の変形用変数、または、光学中心や直線性、振幅や位置などといった画像変形や光学補正に必要な各種パラメーター(変数値)とにより、変形後の図形の形状を計算することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3914891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、互いに角度を持って交わっている2つの面(「第1の面」および「第2の面」とする)にまたがるように画像を投射する場合、投射された画像が全体として見やすい形状となるように、投射される画像のうち第1の面に投射される部分と第2の面に投射される部分とに対し異なるパラメーターで歪み補正を行う必要がある。このように、本来連続する1つの画像を2つの部分に分割し、それらの各々に異なるパラメーターで歪み補正を行うと、
図9に示すように、2つの面の交線の部分で画像にずれが生じてしまう場合があった。
本発明は、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上において生じ得る画像のずれを軽減する技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段とを有
し、前記少なくとも6つの補正点は、前記補正用画像の外枠上に位置する6つの補正点を含み、前記第1の画像は、前記直線上に位置する2つの補正点を含む4つの補正点で形成される矩形画像であり、前記第2の画像は、前記6つの補正点のうちの前記4つの補正点以外の2つの補正点と前記直線上に位置する2つの補正点との4つの補正点によって形成される矩形画像であり、前記決定手段は、前記直線を第1の直線とし、前記第1の画像を形成する4つの補正点のうちの前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第2の直線とし、前記第2の画像を形成する4つの補正点のうち前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第3の直線とする場合、前記第1の直線、前記第2の直線及び前記第3の直線が1点で交わるように、前記6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する画像処理装置を提供する。この画像処理装置によれば、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上において生じ得る画像のずれを軽減することができる。
また、本発明は、投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段とを有し、前記補正用画像は矩形画像であり、前記2つの補正点は前記矩形画像を形成する4つの辺のうちの相対する2つの辺上に位置し、前記決定手段は、前記4本の辺のうちの前記相対する2つの辺以外の2つの辺のそれぞれの延長線と前記直線との交点、及び前記2つの補正点の4つの点について前記直線上における該4つの点の複比が変化しないように、前記少なくとも1つの補正点の位置を決定する画像処理装置を提供する。この画像処理装置によれば、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上において生じ得る画像のずれを軽減することができる。
【0006】
また、本発明の好ましい態様において、前記決定手段により決定された補正点の位置に基づき、前記投射制御手段が前記投射装置に投射させる補正用画像の歪み補正処理を行う処理手段を更に備えてもよい。この画像処理装置によれば、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上で生じる画像のずれを防ぐ歪み補正を行うことができる。
【0007】
また、本発明の好ましい態様において、前記変更手段は、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点について、ユーザーの指示による移動可能な方向を制限してもよい。この画像処理装置によれば、ユーザーが補正点を移動させることによって投射される画像が2つの部分が接する直線でずれてしまうのを防ぐことができる。
【0009】
また、本発明の更に好ましい態様において、前記変更手段は、前記6つの補正点のうちのいずれか1つの補正点について、ユーザーの指示による移動可能な方向を予め定められた第1の方向に制限し、当該補正点の予め定められた第2の方向の座標を、当該補正点以外の補正点の位置に基づき決定してもよい。この画像処理装置によれば、ユーザーが補正点を移動させることによって投射される画像が2つの部分が接する直線でずれてしまうのを防ぐことができる。
【0010】
また、本発明の更に好ましい態様において、前記変更手段は、前記第1の直線上に位置する2つの補正点、前記第2の直線上に位置する2つの補正点、及び前記第3の直線上に位置する2つの補正点、のうちのいずれかについて、ユーザーの指示による移動可能な方向を予め定められた第1の方向に制限し、当該2つの補正点の予め定められた第2の方向の座標をそれぞれ、当該2つの補正点以外の補正点の位置に基づき決定してもよい。この画像処理装置によれば、ユーザーが補正点を移動させることによって投射される画像が2つの部分が接する直線でずれてしまうのを防ぐことができる。
【0011】
また、本発明の更に好ましい態様において、前記投射制御手段は、前記決定手段により位置の決定が行われた補正点に関し、前記投射制御手段が前記投射装置に投射させている当該補正点の位置を前記決定手段により決定された位置に近付けるための案内を表す画像を前記投射装置に投射させてもよい。この画像処理装置によれば、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上において生じ得る画像のずれを防ぐための案内をユーザーに行うことができる。
【0012】
また、本発明は、投射面に画像を投射する投射装置と、前記投射装置に少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場
合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段とを有
し、前記少なくとも6つの補正点は、前記補正用画像の外枠上に位置する6つの補正点を含み、前記第1の画像は、前記直線上に位置する2つの補正点を含む4つの補正点で形成される矩形画像であり、前記第2の画像は、前記6つの補正点のうちの前記4つの補正点以外の2つの補正点と前記直線上に位置する2つの補正点との4つの補正点によって形成される矩形画像であり、前記決定手段は、前記直線を第1の直線とし、前記第1の画像を形成する4つの補正点のうちの前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第2の直線とし、前記第2の画像を形成する4つの補正点のうち前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第3の直線とする場合、前記第1の直線、前記第2の直線及び前記第3の直線が1点で交わるように、前記6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定するプロジェクターを提供する。このプロジェクターによれば、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上において生じ得る画像のずれを軽減することができる。
また、本発明は、投射面に画像を投射する投射装置と、前記投射装置に少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段とを有し、前記補正用画像は矩形画像であり、前記2つの補正点は前記矩形画像を形成する4つの辺のうちの相対する2つの辺上に位置し、前記決定手段は、前記4本の辺のうちの前記相対する2つの辺以外の2つの辺のそれぞれの延長線と前記直線との交点、及び前記2つの補正点の4つの点について前記直線上における該4つの点の複比が変化しないように、前記少なくとも1つの補正点の位置を決定するプロジェクターを提供する。このプロジェクターによれば、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上において生じ得る画像のずれを軽減することができる。
【0013】
また、本発明は、投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる
第1の工程と、前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する
第2の工程と、前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する
第3の工程とを有
し、前記少なくとも6つの補正点は、前記補正用画像の外枠上に位置する6つの補正点を含み、前記第1の画像は、前記直線上に位置する2つの補正点を含む4つの補正点で形成される矩形画像であり、前記第2の画像は、前記6つの補正点のうちの前記4つの補正点以外の2つの補正点と前記直線上に位置する2つの補正点との4つの補正点によって形成される矩形画像であり、前記第3の工程においては、前記直線を第1の直線とし、前記第1の画像を形成する4つの補正点のうちの前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第2の直線とし、前記第2の画像を形成する4つの補正点のうち前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第3の直線とする場合、前記第1の直線、前記第2の直線及び前記第3の直線が1点で交わるように、前記6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する画像処理方法を提供する。この画像処理方法によれば、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上において生じ得る画像のずれを軽減することができる。
また、本発明は、投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる第1の工程と、前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する第2の工程と、前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する第3の工程とを有し、前記補正用画像は矩形画像であり、前記2つの補正点は前記矩形画像を形成する4つの辺のうちの相対する2つの辺上に位置し、前記第3の工程においては、前記4本の辺のうちの前記相対する2つの辺以外の2つの辺のそれぞれの延長線と前記直線との交点、及び前記2つの補正点の4つの点について前記直線上における該4つの点の複比が変化しないように、前記少なくとも1つの補正点の位置を決定する画像処理方法を提供する。この画像処理方法によれば、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上において生じ得る画像のずれを軽減することができる。
【0014】
また、本発明は、コンピューターを、投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段として機能させるためのプログラム
であって、前記少なくとも6つの補正点は、前記補正用画像の外枠上に位置する6つの補正点を含み、前記第1の画像は、前記直線上に位置する2つの補正点を含む4つの補正点で形成される矩形画像であり、前記第2の画像は、前記6つの補正点のうちの前記4つの補正点以外の2つの補正点と前記直線上に位置する2つの補正点との4つの補正点によって形成される矩形画像であり、前記決定手段は、前記直線を第1の直線とし、前記第1の画像を形成する4つの補正点のうちの前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第2の直線とし、前記第2の画像を形成する4つの補正点のうち前記第1の直線上に位置する2つの補正点以外の2つの補正点を結ぶ直線を第3の直線とする場合、前記第1の直線、前記第2の直線及び前記第3の直線が1点で交わるように、前記6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定するプログラムを提供する。このプログラムによれば、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上において生じ得る画像のずれを軽減することができる。
また、本発明は、コンピューターを、投射面に画像を投射する投射装置に、少なくとも6つの補正点を含む補正用画像を投射させる投射制御手段と、前記投射制御手段によって前記投射面に投射された前記少なくとも6つの補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に従い変更する変更手段と、前記少なくとも6つの補正点のうちの2つの補正点を結ぶ直線によって、前記補正用画像を第1の画像と第2の画像とに分割した場合に、当該第1の画像と当該第2の画像との接合部分で前記補正用画像が連続した状態を維持するように、前記少なくとも6つの補正点のうちの少なくとも1つの補正点の位置を決定する決定手段として機能させるためのプログラムであって、前記補正用画像は矩形画像であり、前記2つの補正点は前記矩形画像を形成する4つの辺のうちの相対する2つの辺上に位置し、前記決定手段は、前記4本の辺のうちの前記相対する2つの辺以外の2つの辺のそれぞれの延長線と前記直線との交点、及び前記2つの補正点の4つの点について前記直線上における該4つの点の複比が変化しないように、前記少なくとも1つの補正点の位置を決定するプログラムを提供する。このプログラムによれば、投射される画像を直線で分割して得られる2つの部分の各々を個別に歪み補正する場合に、これらの2つの部分が互いに接する直線上において生じ得る画像のずれを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】プロジェクターの内部構成を示すブロック図。
【
図3】補正用画像および補正点(初期位置)を例示する図。
【
図4】補正用画像および補正点(位置の設定変更後)を例示する図。
【
図7】ユーザーによる補正点の位置変更における制限の一例を示す図。
【
図8】変形例にかかる補正点の位置の決定方法を示す図。
【
図9】互いに角度を持って交わる2つの面にまたがるように投射される歪み補正された画像(従来技術)の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るプロジェクター1の内部構成を示すブロック図である。なお、
図1においてプロジェクター1とともに示されるコントローラーRCは、赤外線通信等の無線でプロジェクター1を制御するための装置、いわゆるリモートコントローラーである。
【0017】
プロジェクター1は、入力された映像信号に応じた画像(以下「主画像」という)をスクリーンSCに投射する装置である。本実施形態において用いられるスクリーンSCは、互いに角度をもって交わる2つの面(交線が鉛直方向)で構成される屈曲したスクリーンである。以下、スクリーンSCを構成する2つの面を区別する場合、それらを「左面」および「右面」と呼ぶ。プロジェクター1の投射軸がスクリーンSCに対して理想的な状態から傾いている場合、スクリーンSCに映し出される主画像は全体として歪んだものとなる。プロジェクター1は、スクリーンSCに映し出される主画像のうち主として左面に投射される部分と右面に投射される部分とに個別に歪み補正を行うことにより、主画像の全体の歪みを補正する機能(以下、「歪み補正処理」という)を有する。
【0018】
プロジェクター1は、ユーザーがコントローラーRCまたは操作パネル80(後述)を操作して歪み補正処理のパラメーターを入力するための状態である調整状態を備える。調整状態において、プロジェクター1はユーザーが歪み補正処理のパラメーターを入力するためのユーザーインターフェースとして機能する画像(以下、「補正用画像」という)をスクリーンSCに投射する。補正用画像には基準となる補正点が複数個、設定されており、ユーザーはコントローラーRCまたは操作パネル80を操作してこれらの補正点の位置を変更することにより、歪み補正処理のパラメーターを入力することができる。歪み補正処理のパラメーターおよび補正点の具体例は後述する。
【0019】
プロジェクター1は、CPU(Central Processing Unit)10、ROM(Read Only Memory)20、RAM(Random Access Memory)30、IF(インターフェース)部40、画像処理回路50、投射ユニット(投射装置の一例)60、受光部70、操作パネル80、および入力処理部90を有する。CPU10は、制御プログラムを実行することによりプロジェクター1の各部を制御する制御装置である。ROM20は、各種プログラムおよびデータを記憶した記憶装置である。ROM20は、CPU10が実行する制御プログラム20A、および補正用画像を示す補正用画像データを記憶する。RAM30は、CPU10がROM20に記憶されたプログラムを実行するときにワークエリアとして用いられる。IF部40は、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤーやパーソナルコンピューターなどの外部装置から映像信号を取得する。IF部40は、外部装置と接続するための各種端子(例えば、USB(Universal Serial Bus)端子、LAN(Local Area Network)端子、S端子、RCA端子、D−sub(D-subminiature)端子、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)端子など)を備える。IF部40は、また、取得した映像信号から、垂直・水平の同期信号を抽出する。画像処理回路50は、映像信号により示される画像に画像処理を施す。
【0020】
投射ユニット60は、光源601と、液晶パネル602と、光学系603と、光源駆動回路604と、パネル駆動回路605と、光学系駆動回路606とを有する。光源601は、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、若しくはメタルハライドランプなどのランプ、またはその他の発光体を有し、液晶パネル602に光を照射する。液晶パネル602は、光源601から照射された光を画像データに応じて変調する光変調装置である。この例で液晶パネル602は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する。液晶パネル602は、例えば、XGA(eXtended Graphics Array)の解像度を有し、1024×768個の画素により構成される表示領域を有する。この例で、液晶パネル602は透過型の液晶パネルであり、各画素の透過率が画像データに応じて制御される。プロジェクター1は、RGBの三原色に対応した3枚の液晶パネル602を有する。光源601からの光はRGBの3色の色光に分離され、各色光は対応する液晶パネル602に入射する。各液晶パネルを通過して変調された色光はクロスダイクロイックプリズム等によって合成され、光学系603に射出される。光学系603は、液晶パネル602により画像光へと変調された光を拡大してスクリーンSCに投射するレンズ、投射する画像の拡大・縮小及び焦点の調整を行うズームレンズ、ズームの度合いを調整するズーム調整用のモーター、フォーカスの調整を行うフォーカス調整用のモーター等を有する。光源駆動回路604は、CPU10の制御に従って光源601を駆動する。パネル駆動回路605は、CPU10から出力された画像データに応じて液晶パネル602を駆動する。光学系駆動回路606は、CPU10の制御に従って光学系603が有する各モーターを駆動する。
【0021】
受光部70は、コントローラーRCから送信される赤外線信号を受光し、受光した赤外線信号をデコードして入力処理部90に出力する。操作パネル80は、プロジェクター1の電源のオン/オフまたは各種操作を行うためのボタンおよびスイッチを有する。入力処理部90は、コントローラーRCまたは操作パネル80による操作内容を示す情報を生成し、CPU10に出力する。
【0022】
CPU10は、ROM20に記憶されたプログラムを実行することにより、投射制御手段101、変更手段102、決定手段103を実現する。投射制御手段101は、補正用画像を表すデータ(以下「補正用画像データ」という)を、同期信号により示されるタイミングで投射ユニット60に出力する。この実施形態では、補正用画像として、矩形状の画像を用いる。投射ユニット60はCPU10から供給されるデータに従って補正用画像をスクリーンSCに投影する。
【0023】
変更手段102は、投射制御手段101によって投射された補正用画像に設定された複数の補正点のうち少なくとも1つの補正点の位置を、ユーザーの指示に基づいて変更する。決定手段103は、直線によって補正用画像を第1の矩形画像と第2の矩形画像とに分ける場合に、第1の矩形画像と第2の矩形画像との接合部分で補正用画像が連続した状態を維持するように画像を射影変換する。この実施形態では、決定手段103は、複数の補正点のうちいずれか1つの補正点について、ユーザーによる位置の変更の方向を制限する。
【0024】
図2は、プロジェクター1が行う歪み補正処理を示すフローチャートである。以下の処理は、例えば、ユーザーがコントローラーRCを操作して、歪み補正処理を開始するための指示を入力したことを契機として、CPU10が制御プログラム20Aを読み出して実行することにより開始される。ステップS101において、CPU10は、調整状態へ移行し、ROM20に記憶された補正用画像データを読み出して投射ユニット60に供給する。投射ユニット60は、CPU10から供給される補正用画像データに従って、補正用画像をスクリーンSCに投射する。
【0025】
図3は、スクリーンSCに投射される補正用画像の一例を示す図である。この実施形態では、補正用画像は矩形状をしており、4つの頂点と上辺上及び下辺上の計6箇所に補正点p1、p2、p3、p4、p5、p6が設定されている。これらの補正点のうち、上辺上および下辺上に設定されている補正点p2およびp5は各々、初期位置として上辺の中点、下辺の中点に設定されている。ユーザーは、例えばコントローラーRCを操作して、補正点p2および補正点p5の各々を、上辺上または下辺上で左右方向に移動させることができる。通常、ユーザーは
図4に示されるように、補正点p2および補正点p5がスクリーンSCの左面と右面の交線上に位置するように、それらの補正点の位置を移動させる。これにより、6つの補正点の基準位置が設定される。
【0026】
ここで、スクリーンSCに投射される画像のうち左面に投射される部分と右面に投射される部分を個別に歪み補正する場合に、それらの歪み補正後の画像の接合部分にずれが発生する理由について図面を参照しつつ説明する。平面の投射面に画像を投影する場合、元の図形を構成する点(x,y)と投影後の図形を構成する点(X,Y)との間には次式で示すような射影変換の関係がある。ただし、A乃至Hは投射面と画像の投射軸との位置関係によって定まる定数である。
【数1】
【0027】
従って、式(1)の定数A乃至Hに望ましい値を設定し、画像を式(1)に従い画像を構成する点の座標を射影変換した後、補間演算を行うことで、投影面に投影されると望ましい形状を示す画像(歪み補正後の画像)が生成される。スクリーンSCのように投射軸に対する角度が異なる2つの平面(左面および右面)からなる投射面に画像を投射する場合、画像のうち左面に投射される部分と右面に投射される部分との各々に関し、異なるA乃至Hの値を用いて射影変換を行う必要がある。
【0028】
図5は、補正用画像がスクリーンSC用に歪み補正される様子を示す図である。
図5(a)は歪み補正前の補正用画像を示し、
図5(b)は歪み補正後の補正用画像を示す。
図5(b)に示すように、左面に投射される部分と右面に投射される部分がそれぞれ異なるパラメーターにより射影変換されるため、両者の接合部分で画像が必ずしも連続するとは限らない。
【0029】
このように、1つの画像を直線(以下、「分割線」という)で分割した2つの部分を個別に歪み補正する場合、歪み補正後の画像全体の左辺と右辺と分割線の3つの直線が1点で交わるように歪み補正を行えば、個別に歪み補正された左右の2つの部分を接合した際、その接合部分に不連続が生じない。歪み補正後の左右の2つの部分の形状は、調整状態においてユーザーがコントローラーRC等を操作して、補正点の位置を変更することにより指定される。しかし、ユーザーが目視により、上記の条件を満たすように補正点の位置の変更を行うことは容易ではない。従って、ユーザーにより上記の条件を満たさない位置に補正点が変更される結果、
図5(b)に示すように接合部分が不連続な画像が投射されてしまうことになる。
【0030】
そこで、本実施形態では、接合部分のずれを回避すべく、補正点p1、p2、p3、p4、p5、p6のうちの5つについてはユーザーが任意の方向に位置を変更できるようにする一方、残りの1つの補正点については、x座標とy座標のいずれか一方のみを設定可能とするようにユーザーによる補正点の操作に制限を設ける構成としている。一具体例として、以下の説明においては、補正点p1、p2、p3、p4、p6については、ユーザーは操作パネル80又はコントローラーRCを用いて、その
x座標及びy座標の変更を指示することによりその位置を変更可能である。一方、補正点p5については、ユーザーはy座標の変更は指示可能であるものの、x座標の変更は指示できず、補正点p5のx座標は上記の条件を満たすように、プロジェクター1により自動的に決定される。
【0031】
図2に戻り、プロジェクター1が行う歪み補正処理の説明を続ける。ユーザーは、コントローラーRC又は操作パネル80を用いて、補正点の位置を変更することにより、歪み補正後の画像の形状を指定する。具体的には、ユーザーはコントローラーRC又は操作パネル80を操作して、補正点p1、p2、p3、p4、p5、p6のいずれかを選択した後、選択した補正点の位置をx軸方向もしくはy軸方向に移動させる操作を行う。ただし、補正点p5が選択された場合、ユーザーはその補正点をx軸方向に移動させる操作を行っても、その操作はプロジェクター1に受け付けられない。
【0032】
CPU10は、操作パネル80又はコントローラーRCからユーザーによる補正点の選択および選択された補正点の位置の変更の指示を示す信号を受け取ると、その信号に従い、ユーザーに選択された補正点の座標を変更する(
図2のステップS102)とともに、補正点p5(中央下の補正点)のx座標を決定する(ステップS103)。その際、CPU10は、補正点p1と補正点p4を結ぶ直線(すなわち補正用画像の左辺)L1と、補正点p3と補正点p6とを結ぶ直線(すなわち補正用画像の右辺)L2と、補正点p2と補正点p5とを結ぶ直線(すなわち分割線)L3とが、1点で交わるように、補正点p5のx座標を決定する。具体的には、例えば、CPU10は、左辺L1と右辺L2の交点の座標を算出し、算出した交点の座標と補正点p2とを結ぶ直線を表す式を特定し、特定した式のy座標の値に、補正点p5のy座標の値を代入することによって、補正点p5のx座標を算出する。
【0033】
図6は、上記のようにCPU10により補正点p5のx座標が決定された場合の変更後の補正点p1〜p6の位置関係の一例を示す図である。図示のように、歪み補正後の補正用画像の左辺L1と右辺L2と分割線L3とが点p0で交わるように補正点p5のx座標が決定される。
【0034】
再び
図2の説明に戻る。CPU10はユーザーによるいずれかの補正点の位置の変更の指示に従い、指示された補正点および補正点p5の座標を変更すると、補正用画像における補正点の表示位置を変更後の座標に応じた位置に変更するとともに、変更後の補正点の座標に従い補正用画像に歪み補正処理を行う。そのように歪み補正処理の行われた補正用画像はスクリーンSCに投射され、接合部分でずれを生じない補正用画像がスクリーンSC上に表示されることになる。
【0035】
ただし、ステップS103においてCPU10によりx座標が自動的に決定されることにより定まる変更後の補正点p5の位置は、必ずしもスクリーンSCの左面と右面の交線の上に位置するとは限らない。従って、ユーザーは通常、CPU10により自動調整される補正点p5の位置がスクリーンSCの交線上となるように、補正点の選択および選択した補正点の位置の変更の操作を繰り返す。その操作に応じて、ステップS102、S103の処理が繰り返される(ステップS104;NO)。
【0036】
その後、ユーザーが操作パネル80又はコントローラーRCを操作して、補正点の位置の調整の終了を指示すると(ステップS104;YES)、CPU10は操作パネル80又はコントローラーRCから受け取る信号に従って、調整状態の処理を終了する(ステップS105)。
【0037】
上記のように、調整状態において決定された変更後の補正点p1〜p6の座標は例えばRAM30に記憶され、正画像の投射における歪み補正のパラメーターとして使用される。具体的には、CPU10は、正画像の投射に際し、変更前(基準位置)の補正点p1、p2、p5、p4の座標を変更後の補正点p1、p2、p5、p4の座標に射影変換するように定数A乃至Hを設定した式(1)に従い、正画像の左側の部分(補正点p1、p2、p5、p4の座標を頂点とする矩形部分)を歪み補正処理するとともに、変更前(基準位置)の補正点p3、p2、p5、p6の座標を変更後の補正点p3、p2、p5、p6の座標に射影変換するように定数A乃至Hを設定した式(1)に従い、正画像の右側の部分(補正点p3、p2、p5、p6の座標を頂点とする矩形部分)を歪み補正処理して、歪み補正後の正画像を生成する。そのように生成された歪み補正後の正画像が、投射ユニット60によりスクリーンSCに投射される。その結果、分割線でずれの生じない正画像がスクリーンSCに表示されることになる。
【0038】
上述したように、この実施形態では、左辺L1、右辺L2、分割線L3の3本の直線が1点で交わるように補正点p5のx座標がCPU10により自動的に決定される。その結果、歪み補正後の画像がスクリーンSCに投射された際、左右の画像の接合部分がずれることなく連続的に繋がる。
【0039】
<変形例>
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下で説明する変形例のうち、2つ以上のものが組み合わされて用いられても良い。
【0040】
(1)変形例1
上述の実施形態では、補正点p5のx座標の変更をユーザーが指定出来ないように制限を設ける構成としたが、補正点p5のx座標に代えて、y座標をユーザーによる変更を不可とする座標としてもよい。この場合は、ユーザーによって補正点p5のx座標の変更が指定されると、CPU10は、指定された補正点p5のx座標及び他の補正点の座標に基づいて、補正点p5のy座標を決定する。すなわち、ユーザーの操作に応じて、補正点p5の位置が、補正用画像の左辺L1と右辺L2との交点と、補正点p2とを結ぶ直線(分割線L3)上を移動するように変更される限り、どのような方法で補正点p5の座標が決定されてもよい。
【0041】
また、ユーザーによる位置の変更の指定に制限を設ける補正点は補正点p5に限られず、補正点p1〜p6のうちいずれであってもよい。要は、6つの補正点のうちの5つの補正点についてはユーザーがその位置を任意の方向に変更可能とし、残りの1つの補正点については、ユーザーによる変更の指定が許可される方向が一方向(例えば、x軸方向またはy軸方向)に制限される構成であればよい。
【0042】
(2)変形例2
図7は、補正点の位置の変更における制限の他の例を示す図である。
図7に示す例では、補正点p1、p3、p4、p6については、ユーザーはその座標を任意の方向に変更可能である一方、補正点p2、p5についてはy座標のみが変更可能であるとともに、補正点p2と補正点p5を結ぶ直線の傾きを設定可能とされている。この場合、CPU10は、例えば、補正用画像の左辺L1と右辺L2の交点の座標を求め、求めた交点の座標とユーザーによって設定された直線の傾きとから、補正点p2、p5を通る直線の式を特定し、特定した式とユーザーによって設定された補正点p2、p5のy座標とから、補正点p2、p5のx座標を決定する。
【0043】
(3)変形例3
上述の実施形態では、CPU10は、6つの補正点のうちの1つの補正点について、ユーザーによる位置の変更の方向を制限するようにしたが、ユーザーによる補正点の位置の変更の方向を制限する代わりに、歪み補正後の画像の接合部分にずれを生じないような補正点の位置にユーザーが補正点の位置を変更するように導く案内(以下、「ガイド画像」という)をスクリーンSCに表示させる構成としてもよい。具体的には、例えば、CPU10は、補正点p1、p2、p3、p4、p6のx座標及びy座標並びに補正点p5のx座標又はy座標に基づいて、補正点p5をどの方向にどれだけの距離、動かせばよいか特定し、特定した結果を示す矢印や「右への移動ボタンを3回押して下さい」といったメッセージを示すガイド画像を生成し、補正用画像にオーバーレイして投射ユニットに投射させる。
【0044】
また、他の例として、例えば、CPU10は、接合部分のずれがなくなるように補正点p2の位置を変更する場合と補正点p5の位置を変更する場合のそれらの移動量を特定し、特定した移動量が小さいほうの補正点の変更を促すガイド画像を生成し、投射ユニットに投射させるようにしてもよい。また、CPU10は調整状態においてガイド画像を常にスクリーンSCに表示させる必要はなく、例えば、現在指定されている補正点の位置と接合部分のずれを生じない補正点の位置との距離が所定の閾値以上である場合など、予め定められた条件を満たす場合にのみ、ガイド画像を表示させる構成としてもよい。
【0045】
(4)変形例4
上述の実施形態では、補正用画像として、6つの補正点を含む画像を用いたが、7つ以上の補正点を含む画像が補正用画像として用いられてもよい。また、補正用画像の形状は矩形以外の多角形であってもよい。矩形以外の多角形の画像を補正用画像として用いる場合であっても、CPU10は、上述の各実施形態と同様に、6つの補正点によって定まる3本の直線が1点で交わるように、6つの補正点のうちの少なくともひとつの座標を決定すればよい。
【0046】
(5)変形例5
上述の実施形態では、鉛直方向の交線によって主画像が左右に分割された例を示したが、水平方向の交線によって主画像が上下に分割される場合にも、本発明は応用可能である。この場合には、補正用画像の上辺と下辺と分割線とが一点で交わるようにすればよい。
【0047】
(6)変形例6
図8は、本変形例に係る補正点の位置の決定方法の一例を示す図である。
図8(a)は歪み補正前の補正用画像の一例を示す図であり、
図8(b)は歪み補正後の補正用画像の一例を示す図である。
図8(a)において、補正点Aは補正用画像の左辺と分割線との交点を示す。補正点Bは補正用画像の上辺と分割線との交点を示す。補正点Cは補正用画像の下辺と分割線との交点を示す。補正点Dは補正用画像の右辺と分割線との交点を示す。補正点EおよびFは各々、補正用画像の左下および右上の頂点を示す。
図8(b)における補正点A´、B´、C´、D´、E´、F´はそれぞれ、
図8(a)における補正点A、B、C、D、E、Fが歪み補正により変換されたものである。
【0048】
スクリーンSCと投射軸との位置関係により、歪み補正前の画像における分割線が垂直でない場合、歪み補正の前後で、補正点A、B、C、Dの複比が変化しなければ、即ち以下の式(2)を満たせば、画像が接合部分でずれない。
【数2】
【0049】
そこで、本変形例では、ユーザーは上記6つの補正点のうちの5点の位置を指定可能とし、CPU10は、ユーザーにより指定された5つの補正点の座標と上述の(2)式とから、残りの1つの補正点の座標を決定する。
なお、補正点A、B、C、Dの複比が変化しなければ、画像が接合部分でずれないことは、射影変換と複比に関する一般的な性質(射影変換では複比が保たれること、直線上の射影変換は、変換前後の3点が決まれば一意に定まること、及び直線上の3点に対して、与えられた複比になるような4点目は一意に決まること)から容易に証明することができる。
ここで、補正点Bと補正点Cとを結ぶ直線(直線BC)を垂直に近付けていくと、補正点Aと補正点Dは、共に垂直方向の無限遠点に、補正点A´と補正点D´は、同一の1点に収束する。つまり、直線BCが垂直の場合に接合部分で画像がずれないようにするためには、上述の実施形態で示したように、直線BCの延長線が左辺と右辺の交点(補正点A、D)を通ることが条件となる。
【0050】
(7)変形例7
プロジェクター1は本発明に係る画像処理装置の一例である。本発明に係る画像処理装置はプロジェクターに限らず、例えばPC(パーソナルコンピューター)等の他の装置であってもよい。この場合は、例えば、PCにおいて画像補正を行い、補正後の画像をプロジェクターに出力すればよい。
【0051】
(8)変形例8
本発明に係る処理は、上述のフローチャートに記載されたものに限定されない。例えば、上述の実施形態においては、補正用画像が単独でスクリーンSCに投射される例を示したが、主画像と補正用画像とが合成された合成画像がスクリーンSCに投射されてもよい。
【0052】
(9)変形例9
各実施形態においてプロジェクター1によって実行される制御プログラム20Aは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク(HDD、FD(Flexible Disk))など)、光記録媒体(光ディスク(CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk))など)、光磁気記録媒体、または半導体メモリ(フラッシュROMなど)などの各種記録媒体に記憶された状態で提供されてもよい。また、制御プログラム20Aは、インターネットなどのネットワーク経由でダウンロードされてもよい。
【0053】
(10)その他の変形例
プロジェクター1の内部構成は、
図1で説明したものに限定されない。
図2に示した各ステップの処理を実行できれば、プロジェクター1はどのような内部構成を有していてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…プロジェクター、10…CPU、20…ROM、20A…制御プログラム、30…RAM、40…IF部、50…画像処理回路、60…投射ユニット、601…光源、602…液晶パネル、603…光学系、604…光源駆動回路、605…パネル駆動回路、606…光学系駆動回路、70…受光部、80…操作パネル、90…入力処理部、RC…コントローラー、SC…スクリーン。