(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の圧電板、前記第2の圧電板および前記第3の圧電板は、それぞれ、結晶軸であるz軸と、前記z軸に直交し、加重を加えると電荷が発生する方向に配向したx軸と、前記z軸および前記x軸に対して直交するy軸とを有しており、
前記第1の圧電板の前記y軸方向は、前記B軸方向と一致している請求項1に記載のセンサー素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、温度変化による不具合を抑制または防止することができるセンサー素子、力検出装置、ロボット、電子部品搬送装置、電子部品検査装置および部品加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本発明のセンサー素子は、互いに直交する3軸をA軸、B軸およびC軸としたとき、
Xカット水晶板で構成され、前記A軸方向に沿った外力に応じて電荷を出力する第1の圧電板と、
Yカット水晶板で構成され、前記第1の圧電板と前記A軸方向に積層され、前記B軸方向の外力に応じて電荷を出力する第2の圧電板と、
Yカット水晶板で構成され、前記第2の圧電板を前記第1の圧電板との間に挟むように、且つ、前記A軸回りに転回した配置で前記A軸方向に積層され、前記C軸方向の外力に応じて電荷を出力する第3の圧電板とを、それぞれ少なくとも1枚ずつ有することを特徴とする。
【0008】
これにより、第1の圧電板と第2の圧電板とのB軸方向の熱膨張係数を実用上一致させることができる。よって、第1の圧電板および第2の圧電板が温度変化によって膨張または収縮する際、同じだけ膨張または収縮することとなる。その結果、第1の圧電板および第2の圧電板では、熱膨張によって、圧縮応力または引張応力が生じるのを抑制または防止することができる。したがって、温度変化によって電荷が出力されるのを抑制または防止することができる。
【0009】
[適用例2]
本発明のセンサー素子では、前記第1の圧電板および前記第2の圧電板は、前記B軸方向の熱膨張係数が実用上一致しているのが好ましい。
これにより、第1の圧電板および第2の圧電板が温度変化によって膨張または収縮する際、同じだけ膨張または収縮することとなる。よって、第1の圧電板および第2の圧電板では、熱膨張によって、圧縮応力または引張応力が生じるのを抑制または防止することができる。したがって、温度変化によって電荷が出力されるのを抑制または防止することができる。
【0010】
[適用例3]
本発明のセンサー素子では、前記第1の圧電板、前記第2の圧電板および前記第3の圧電板は、それぞれ、結晶軸であるz軸と、前記z軸に直交し、加重を加えると電荷が発生する方向に配向したx軸と、前記z軸および前記x軸に対して直交するy軸とを有しており、
前記第1の圧電板の前記y軸方向は、前記B軸方向と一致しているのが好ましい。
これにより、第1の圧電板および第2の圧電板の、B軸方向の熱膨張係数を実用上一致させることができる。
【0011】
[適用例4]
本発明のセンサー素子では、前記第2の圧電板の前記x軸方向は、前記B軸方向と一致しているのが好ましい。
これにより、第1の圧電板および第2の圧電板は、温度変化によって、同じだけ膨張または収縮することができる。
【0012】
[適用例5]
本発明のセンサー素子では、前記第1の圧電板、前記第2の圧電板および前記第3の圧電板では、それぞれ、z軸方向の熱膨張係数がx軸方向およびy軸方向の熱膨張係数よりも小さいのが好ましい。
これにより、第1の圧電板および第2の圧電板の、B軸方向の熱膨張係数を確実に実用上一致させることができる。
【0013】
[適用例6]
本発明のセンサー素子では、前記第2の圧電板と前記第3の圧電板とは、前記B軸方向の熱膨張係数が異なっているのが好ましい。
これにより、第3の圧電板、第2の圧電板および第1の圧電板の順にA軸方向に積層することができる。
【0014】
[適用例7]
本発明のセンサー素子では、前記第1の圧電板、前記第2の圧電板および前記第3の圧電板は、それぞれ複数枚ずつ積層されているのが好ましい。
これにより、第1の圧電板、第2の圧電板および第3の圧電板は、それぞれ、複数枚ずつ積層されている分、出力される電荷を多くすることができる。よって、検出精度の向上を図ることができる。
【0015】
[適用例8]
本発明のセンサー素子では、前記複数の第1の圧電板、前記複数の第2の圧電板および前記複数の第3の圧電板は、この順に前記A軸方向に積層されているのが好ましい。
これにより、第1の圧電板、第2の圧電板および第3の圧電板は、それぞれ、複数枚ずつ積層されている分、出力される電荷を多くすることができる。よって、検出精度の向上を図ることができる。
【0016】
[適用例9]
本発明のセンサー素子は、互いに直交するx軸方向、y軸方向およびz軸方向のうちの少なくとも1方向の熱膨張係数が異なっており、かつ、互いに異なる方向のひずみによりに電荷を出力する3枚の圧電板が積層されたセンサー素子であって、
互いに直交する3方向をA軸、B軸、C軸としたとき、前記3枚の圧電板は、前記A軸方向に積層されており、
前記B軸方向に熱膨張による応力が生じても電荷が発生しないように、前記3枚の圧電板は、前記B軸方向の熱膨張係数が実用上一致していることを特徴とする。
これにより、3枚の圧電板のB軸方向の熱膨張係数を実用上一致させることができる。よって、3枚の圧電板では、熱膨張によって、圧縮応力または引張応力が生じるのを抑制または防止することができる。したがって、温度変化によって電荷が出力されるのを抑制または防止することができる。
【0017】
[適用例10]
本発明の力検出装置は、互いに直交する3軸をA軸、B軸およびC軸としたとき、
Xカット水晶板で構成され、前記A軸方向に沿った外力に応じて電荷を出力する第1の圧電板と、
Yカット水晶板で構成され、前記第1の圧電板と対向して対向して配置され、前記B軸方向に沿った外力に応じて電荷を出力する第2の圧電板と、
Yカット水晶板で構成され、前記第2の圧電板に対して該第2の圧電板の厚さ方向の軸回りにずれた状態で前記第2の圧電板の前記第1の圧電板と反対側に配置され、前記C軸方向に沿った外力に応じて電荷を出力する第3の圧電板とを、それぞれ少なくとも1枚ずつ有するセンサー素子と、
前記センサー素子から出力された電荷に基づいて、前記外力を検出する外力検出回路とを備えていることを特徴とする。
これにより、本発明のセンサー素子と同様の効果を得られるとともに、センサー素子から出力された電荷に基づいて外力を検出することができる。
【0018】
[適用例11]
本発明の力検出装置では、前記センサー素子は、4つ以上設けられているのが好ましい。
これにより、センサー素子が4つ以上設けられている分、力検出装置の検出精度の向上を図ることができる。
【0019】
[適用例12]
本発明のロボットは、アームを複数有し、前記複数のアームの隣り合う前記アーム同士を回動自在に連結してなる少なくとも1つのアーム連結体と、
前記アーム連結体の先端側に設けられたエンドエフェクタと、
前記アーム連結体と前記エンドエフェクタとの間に設けられ、前記エンドエフェクタに加えられる外力を検出する本発明の力検出装置とを備えていることを特徴とする。
【0020】
これにより、前記本発明のセンサー素子と同様の効果が得られる。そして、力検出装置が検出した外力をフィードバックし、より精密に作業を実行することができる。また、力検出装置が検出した外力によって、エンドエフェクタの障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行うことができ、より安全に作業を実行することができる。
【0021】
[適用例13]
本発明の電子部品搬送装置は、電子部品を把持する把持部と、
前記把持部に加えられる外力を検出する本発明の力検出装置とを備えていることを特徴とする。
これにより、前記本発明のセンサー素子と同様の効果が得られる。そして、力検出装置が検出した外力をフィードバックし、より精密に作業を実行することができる。また、力検出装置が検出した外力によって、把持部の障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行うことができ、より安全に電子部品搬送作業を実行することができる。
【0022】
[適用例14]
本発明の電子部品検査装置は、電子部品を把持する把持部と、
前記電子部品を検査する検査部と、
前記把持部に加えられる外力を検出する本発明の力検出装置とを備えていることを特徴とする。
【0023】
これにより、前記本発明のセンサー素子と同様の効果が得られる。そして、力検出装置が検出した外力をフィードバックし、より精密に作業を実行することができる。また、力検出装置が検出した外力によって、把持部の障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行うことができ、より安全に電子部品検査作業を実行することができる。
【0024】
[適用例15]
本発明の部品加工装置は、工具を装着し、前記工具を変位させる工具変位部と、
前記工具に加えられる外力を検出する本発明の力検出装置とを備えていることを特徴とする。
これにより、前記本発明のセンサー素子と同様の効果が得られる。そして、力検出装置が検出した外力をフィードバックすることにより、部品加工装置は、より精密に部品加工作業を実行することができる。また、力検出装置が検出する外力によって、工具の障害物への接触等を検知することができる。そのため、工具に障害物等が接触した場合に緊急停止することができ、部品加工装置は、より安全な部品加工作業を実行可能である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のセンサー素子、力検出装置、ロボット、電子部品搬送装置、電子部品検査装置および部品加工装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の力検出装置(センサー素子)の第1実施形態を示す断面図、
図2は、
図1に示す力検出装置(センサー素子)の平面図、
図3は、
図1に示す力検出装置を概略的に示す回路図、
図4は、
図1に示す電荷出力素子を概略的に示す断面図、
図5は、
図1に示す電荷出力素子の熱膨張率および結晶軸を示す分解斜視図、
図6は、
図1に示す電荷出力素子のYカット水晶板を概略的に示す模式図であって、(a)は、自然状態を示す断面図、(b)は、圧縮応力が生じた状態を示す図である。なお、
図1〜
図4の上側を「上(上方)」、下側を「下(下方)」とも言う。
【0027】
力検出装置1は、第1の基板2と、第1の基板2から所定の間隔を隔てて配置され、第1の基板2に対向する第2の基板3と、第1の基板2と第2の基板3との間に設けられたアナログ回路基板(回路基板)4と、第1の基板2と第2の基板3との間に設けられ、アナログ回路基板4と電気的に接続されたデジタル回路基板5と、アナログ回路基板に搭載され、加えられた外力に応じて信号を出力する電荷出力素子(センサー素子)10および電荷出力素子10を収納するパッケージ60を有するセンサーデバイス6と、2つの与圧ボルト(固定部材)71とを備えている。
【0028】
図3に示すように、アナログ回路基板4は、搭載されたセンサーデバイス6の電荷出力素子10から出力された電荷Qaを電圧Vaに変換する変換出力回路90aと、電荷出力素子10から出力された電荷Qbを電圧Vbに変換する変換出力回路90bと、電荷出力素子10から出力された電荷Qcを電圧Vcに変換する変換出力回路90cとを備えている。また、デジタル回路基板5は、加えられた外力を検出する外力検出回路40を備えている。このデジタル回路基板5は、アナログ回路基板4よりも第1の基板2側、すなわち、アナログ回路基板4と第1の基板2との間に配置されている。
【0029】
図1に示すように、センサーデバイス6は、アナログ回路基板4の第2の基板3側の面に配置され、第1の基板2に設けられた後述する凸部(第1の凸部)21と第2の基板3とで挟持されている。すなわち、電荷出力素子10は、パッケージ60を介して凸部21と第2の基板3とで挟持され、与圧されている。なお、第1の基板2と、第2の基板3とのいずれを力が加わる側の基板としてもよいが、本実施形態では、第2の基板3を力が加わる側の基板として説明する。また、電荷出力素子10は、アナログ回路基板4の第1の基板2側の面に配置されていてもよい。
【0030】
第1の基板2、第2の基板3、アナログ回路基板4、デジタル回路基板5の形状は、それぞれ、特に限定されないが、本実施形態では、第1の基板2、第2の基板3、アナログ回路基板4、デジタル回路基板5の平面視で、その外形形状は、円形をなしている。なお、第1の基板2、第2の基板3、アナログ回路基板4、デジタル回路基板5の平面視での前記の他の外形形状としては、例えば、四角形、五角形等の多角形、楕円形等が挙げられる。また、第1の基板2、第2の基板3、アナログ回路基板4の各素子および各配線以外の部位、デジタル回路基板5の各素子および各配線以外の部位の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、各種の樹脂材料、各種の金属材料等を用いることができる。
【0031】
<センサーデバイス>
センサーデバイス6は、電荷出力素子10と、電荷出力素子10を収納するパッケージ60とを有している。
パッケージ60は、凹部611を有する基部(第1の部材)61と、その基部61に接合された蓋体(第2の部材)62とを有している。電荷出力素子10は、基部61の凹部611に設置されており、その基部61の凹部611は、蓋体62により封止されている。これにより、電荷出力素子10を保護することができ、信頼性の高い力検出装置1を提供することができる。なお、電荷出力素子10の上面は、蓋体62に接触している。また、パッケージ60の蓋体62は、上側、すなわち、第2の基板3側に配置され、基部61は、下側、すなわち、第1の基板2側に配置され、その基部61がアナログ回路基板4に固定されている。この構成により、基部61と蓋体62とが、凸部21と第2の基板3とで挟持されて与圧され、その基部61と蓋体62とにより、電荷出力素子10が挟持されて与圧される。
【0032】
また、基部61の構成材料としては、特に限定されず、例えば、セラミックス等の絶縁性材料等を用いることができる。また、蓋体62の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等の各種の金属材料等を用いることができる。なお、基部61の構成材料と蓋体62の構成材料は、同一でもよく、また、異なっていてもよい。
また、パッケージ60の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、第1の基板2の平面視で、四角形をなしている。なお、パッケージ60の平面視での前記の他の形状としては、例えば、五角形等の他の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。また、パッケージ60の形状が多角形の場合、例えば、その角部が、丸みを帯びていてもよく、また、斜めに切り欠かれていてもよい。
【0033】
また、蓋体62は、本実施形態では、板状をなし、その中央部625と外周部626との間の部位が屈曲することで、中央部625が第2の基板3に向って突出している。中央部625の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、第1の基板2の平面視で、電荷出力素子10と同じ形状、すなわち、四角形をなしている。なお、蓋体62の中央部625の上面および下面は、いずれも平面である。
【0034】
また、パッケージ60の基部61の下面の端部には、電荷出力素子10と電気的に接続された複数の端子63が設けられている。各端子63は、それぞれ、アナログ回路基板4と電気的に接続されており、これにより、電荷出力素子10とアナログ回路基板4とが電気的に接続される。なお、端子63の数は、特に限定されないが、本実施形態では、4つであり、すなわち、端子63は、基部61の4つの角部にそれぞれ設けられている。
このようなパッケージ60内には、電荷出力素子10が収納されている。この電荷出力素子10については後に詳述する。
【0035】
<変換出力回路>
電荷出力素子10には、変換出力回路90a、90b、90cが接続されている。変換出力回路90aは、電荷出力素子10から出力された電荷Qaを電圧Vaに変換する機能を有する。変換出力回路90bは、電荷出力素子10から出力された電荷Qbを電圧Vbに変換する機能を有する。変換出力回路90cは、電荷出力素子10から出力された電荷Qcを電圧Vcに変換する機能を有する。変換出力回路90a、90b、90cは、同様であるので、以下では、代表的に、変換出力回路90cについて説明する。
【0036】
変換出力回路90cは、電荷出力素子10から出力された電荷Qcを電圧Vcに変換して電圧Vcを出力する機能を有する。変換出力回路90cは、オペアンプ91と、コンデンサー92と、スイッチング素子93とを有する。オペアンプ91の第1の入力端子(マイナス入力)は、電荷出力素子10の出力電極層122に接続され、オペアンプ91の第2の入力端子(プラス入力)は、グランド(基準電位点)に接地されている。また、オペアンプ91の出力端子は、外力検出回路40に接続されている。コンデンサー92は、オペアンプ91の第1の入力端子と出力端子との間に接続されている。スイッチング素子93は、オペアンプ91の第1の入力端子と出力端子との間に接続され、コンデンサー92と並列接続されている。また、スイッチング素子93は、駆動回路(図示せず)に接続されており、駆動回路からのオン/オフ信号に従い、スイッチング素子93はスイッチング動作を実行する。
【0037】
スイッチング素子93がオフの場合、電荷出力素子10から出力された電荷Qcは、静電容量C1を有するコンデンサー92に蓄えられ、電圧Vcとして外力検出回路40に出力される。次に、スイッチング素子93がオンになった場合、コンデンサー92の両端子間が短絡される。その結果、コンデンサー92に蓄えられた電荷Qcは、放電されて0クーロンとなり、外力検出回路40に出力される電圧Vは、0ボルトとなる。スイッチング素子93がオンとなることを、変換出力回路90cをリセットするという。なお、理想的な変換出力回路90cから出力される電圧Vcは、電荷出力素子10から出力される電荷Qcの蓄積量に比例する。
【0038】
スイッチング素子93は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の半導体スイッチング素子である。半導体スイッチング素子は、機械式スイッチと比べて小型および軽量であるので、力検出装置1の小型化および軽量化に有利である。以下、代表例として、スイッチング素子93としてMOSFETを用いた場合を説明する。
【0039】
スイッチング素子93は、ドレイン電極、ソース電極、およびゲート電極を有している。スイッチング素子93のドレイン電極またはソース電極の一方がオペアンプ91の第1の入力端子に接続され、ドレイン電極またはソース電極の他方がオペアンプ91の出力端子に接続されている。また、スイッチング素子93のゲート電極は、駆動回路(図示せず)に接続されている。
【0040】
各変換出力回路90a、90b、90cのスイッチング素子93には、同一の駆動回路が接続されていてもよいし、それぞれ異なる駆動回路が接続されていてもよい。各スイッチング素子93には、駆動回路から、全て同期したオン/オフ信号が入力される。これにより、各変換出力回路90a、90b、90cのスイッチング素子93の動作が同期する。すなわち、各変換出力回路90a、90b、90cのスイッチング素子93のオン/オフタイミングは一致する。
【0041】
<外力検出回路>
外力検出回路40は、変換出力回路90aから出力される電圧Vaと、変換出力回路90bから出力される電圧Vbと、変換出力回路90cから出力される電圧Vcとに基づき、加えられた外力を検出する機能を有する。外力検出回路40は、変換出力回路90a、90b、90cに接続されたADコンバーター401と、ADコンバーター401に接続された演算部402とを有する。
ADコンバーター401は、電圧Va、Vc、Vbをアナログ信号からデジタル信号へ変換する機能を有する。ADコンバーター401によってデジタル変換された電圧Va、Vc、Vbは、演算部402に入力される。
【0042】
すなわち、第1の基板2および第2の基板3の相対位置が互いにA軸方向にずれる外力が加えられた場合、ADコンバーター401は、電圧Vaを出力する。同様に、第1の基板2および第2の基板3の相対位置が互いにB軸方向にずれる外力が加えられた場合、ADコンバーター401は、電圧Vbを出力する。また、第1の基板2および第2の基板3の相対位置が互いにC軸方向にずれる外力が加えられた場合、ADコンバーター401は、電圧Vbを出力する。
【0043】
演算部402は、デジタル変換された電圧Va、Vc、Vbに対して、例えば、各変換出力回路90a、90b、90c間の感度の差をなくす補正等の各処理を行う。そして、演算部402は、電荷出力素子10から出力される電荷Qa、Qc、Qbの蓄積量に比例する3つの信号を出力する。この3つの信号は、電荷出力素子10に加えられた3軸力(せん断力および圧縮/引張力)に対応するので、力検出装置1は、電荷出力素子10に加えられた3軸力を検出することができる。
【0044】
図1および
図2に示すように、この力検出装置1では、第1の基板2に、凸部(第1の凸部)21が設けられている。この第1の基板2と第2の基板3とは、凸部21が内側になり、第1の基板2の面と第2の基板3の面とが間隔を隔て対向している。なお、凸部21の上面(第2の基板3と対向する面)211は、平面である。この凸部21は、第1の基板2と一体的に形成されていてもよく、また、別部材で形成されていてもよい。なお、凸部21の構成材料は、特に限定されず、例えば、第1の基板2と同様のものとすることができる。
【0045】
また、凸部21の位置は、特に限定されないが、本実施形態では、凸部21は、第1の基板2の中央部に配置されている。
また、凸部21部の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、第1の基板2の平面視で、電荷出力素子10と同じ形状、すなわち、四角形をなしている。なお、凸部21の平面視での前記の他の形状としては、例えば、四角形、五角形等の多角形、楕円形等が挙げられる。
【0046】
また、アナログ回路基板4の電荷出力素子10が配置されている部位、すなわち、中央部には、凸部21が挿入される孔41が形成されている。この孔41は、アナログ回路基板4を貫通する貫通孔である。孔41の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、第1の基板2の平面視で、凸部21と同じ形状、すなわち、四角形をなしている。なお、アナログ回路基板4は、凸部21に支持されている。
【0047】
同様に、デジタル回路基板5の電荷出力素子10が配置されている部位、すなわち、中央部には、凸部21が挿入される孔51が形成されている。孔51の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、第1の基板2の平面視で、凸部21と同じ形状、すなわち、四角形をなしている。なお、デジタル回路基板5は、凸部21に支持されている。
なお、アナログ回路基板4には、2つの与圧ボルト71が挿通する2つの孔42が形成され、同様に、デジタル回路基板5には、2つの与圧ボルト71が挿通する2つの孔52が形成されている。
【0048】
凸部21は、アナログ回路基板4の孔41およびデジタル回路基板5の孔51に挿入され、電荷出力素子10に向って突出している。そして、センサーデバイス6は、凸部21と第2の基板3とで挟持され、これにより、電荷出力素子10は、パッケージ60を介して凸部21と第2の基板3とで挟持されている。なお、第2の基板3の下面(第1の基板2と対向する面)36は、平面であり、その下面36がセンサーデバイス6の蓋体62の中央部に当接し、凸部21の上面211が基部61に当接している。
【0049】
また、凸部21の寸法は、特に限定されないが、第1の基板2の平面視で、凸部21の面積は、電荷出力素子10の面積以上であることが好ましく、電荷出力素子10の面積よりも大きいことがより好ましい。なお、図示の構成では、凸部21の面積は、電荷出力素子10の面積よりも大きい。そして、電荷出力素子10は、第1の基板2の平面視で(第1の基板2に対して垂直な方向から見て)、凸部21内に配置され、また、電荷出力素子10の中心線と凸部21の中心線とが一致している。この場合、電荷出力素子10は、第1の基板2の平面視で、凸部21からはみ出していなければよい。これにより、電荷出力素子10全体に与圧を加えることができ、また、力検出の際、電荷出力素子10全体に外力が加わり、より精度の高い力検出を行うことができる。
【0050】
また、第1の基板2と、第2の基板3とは、2つの与圧ボルト71により、固定されている。なお、与圧ボルト71による「固定」は、2つの固定対象物の互いの所定量の移動を許容しつつ行われる。具体的には、第1の基板2と、第2の基板3とは、2つの与圧ボルト71により、互いの所定量の第2の基板3の面方向の移動が許容されつつ固定される。なお、これは、他の実施形態においても同様である。
【0051】
各与圧ボルト71は、それぞれ、その頭部715が第2の基板3側となるように配置され、第2の基板3に形成された孔35から挿入され、アナログ回路基板4の孔42、デジタル回路基板5の孔52を挿通し、その雄ネジ716が第1の基板2に形成された雌ネジ25に螺合している。そして、各与圧ボルト71により、電荷出力素子10に、所定の大きさのZ軸方向(
図4参照)の圧力、すなわち、与圧が加えられる。なお、前記与圧の大きさは、特に限定されず、適宜設定される。
【0052】
また、各与圧ボルト71の位置は、特に限定されないが、本実施形態では、各与圧ボルト71は、第1の基板2、第2の基板3、アナログ回路基板4、デジタル回路基板5の周方向に沿って、等角度間隔(180°間隔)、すなわち、第2の基板3の平面視で、電荷出力素子10を介して対向するように配置されている。これにより、第1の基板2と第2の基板3とをバランス良く固定することができ、また、各電荷出力素子10にバランス良く与圧を加えることができる。なお、与圧ボルト71の数は、2つに限定されず、例えば、3つ以上であってもよい。
【0053】
なお、各与圧ボルト71の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種の樹脂材料、各種の金属材料等を用いることができる。
【0054】
以上説明したように、この力検出装置1によれば、アナログ回路基板4およびデジタル回路基板5が第1の基板2と第2の基板3との間に設けられているので、装置を小型化することができる。
また、凸部21と第2の基板3とで、アナログ回路基板4およびデジタル回路基板5を介することなく、センサーデバイス6を挟持すること、すなわち、パッケージ60を介して電荷出力素子10を挟持することができる。これにより、電荷出力素子10に対して十分に与圧を加えることができ、また、力検出の精度を向上させることができる。
【0055】
また、パッケージ60の蓋体62の中央部625は、第2の基板3に向って突出しているので、第2の基板3の下面36が平面であっても電荷出力素子10に対して十分に与圧を加えることができ、また、力検出の際、外力が加わり難くなることを防止することができる。そして、第2の基板3の下面36が平面であるので、製造時に第2の基板3と電荷出力素子10との位置合わせが不要となり、容易に力検出装置1を製造することができる。
【0056】
<電荷出力素子>
電荷出力素子10は、互いに直交する3軸(A軸、B軸、C軸)に沿って加えられた(受けた)外力のそれぞれに応じて3つの電荷Qa、Qb、Qcを出力する機能を有する。
電荷出力素子10の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、第1の基板2の平面視、すなわち、第1の基板2に対して垂直な方向から見て、四角形をなしている。なお、電荷出力素子10の平面視での前記の他の外形形状としては、例えば、五角形等の他の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。
【0057】
図4に示すように、電荷出力素子10は、グランド(基準電位点)に接地された4つのグランド電極層11と、A軸に平行な外力(圧縮/引張力)に応じて電荷Qaを出力する第1のセンサー12と、B軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qbを出力する第2のセンサー13と、C軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qcを出力する第3のセンサー14とを有し、グランド電極層11と各センサー12、13、14は交互に積層されている。なお、
図4において、グランド電極層11およびセンサー12、13、14の積層方向をA軸方向とし、A軸方向に直交し且つ互いに直交する方向をそれぞれB軸方向、C軸方向としている。
【0058】
グランド電極層11は、グランド(基準電位点)に接地された電極である。グランド電極層11を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、金、チタニウム、アルミニウム、銅、鉄またはこれらを含む合金が好ましい。これらの中でも特に、鉄合金であるステンレスを用いるのが好ましい。ステンレスにより構成されたグランド電極層11は、優れた耐久性および耐食性を有する。
第1のセンサー12は、A軸に沿って加えられた(受けた)外力(圧縮/引張力)に応じて電荷Qaを出力する機能を有する。第1のセンサー12は、A軸に平行な圧縮力に応じて正電荷を出力し、A軸に平行な引張力に応じて負電荷を出力するよう構成されている。
【0059】
第1のセンサー12は、第1の圧電体層(第1の圧電板)121と、第1の圧電体層121と対向して設けられた第2の圧電体層(第1の圧電板)123と、第1の圧電体層121と第2の圧電体層123との間に設けられ、電荷Qaを出力する出力電極層122を有する。
第1の圧電体層121は、互いに直交する3つの結晶軸であるx軸、y軸およびz軸を有している。x軸方向は、加重を加えると電荷が発生する方向に配向した軸である(以下、各圧電体層でも同様である)。第1の圧電体層121では、x軸方向とA軸方向とが一致しており、y軸方向とB軸方向とが一致しており、z軸方向とC軸方向とが一致している。
【0060】
第1の圧電体層121の表面に対し、A軸に平行な圧縮力が加えられた場合、圧電効果により、第1の圧電体層121内に電荷が誘起される。その結果、第1の圧電体層121の出力電極層122側表面近傍には正電荷が集まり、第1の圧電体層121のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第1の圧電体層121の表面に対し、A軸に平行な引張力が加えられた場合、第1の圧電体層121の出力電極層122側表面近傍には負電荷が集まり、第1の圧電体層121のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
また、第2の圧電体層123は、第1の圧電体層121と同様の結晶軸を有しており、第1の圧電体層121をC軸回りに180°回転させた状態で配置されている。
【0061】
第2の圧電体層123の表面に対し、A軸に平行な圧縮力が加えられた場合、圧電効果により、第2の圧電体層123内に電荷が誘起される。その結果、第2の圧電体層123の出力電極層122側表面近傍には正電荷が集まり、第2の圧電体層123のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第2の圧電体層123の表面に対し、A軸に平行な引張力が加えられた場合、第2の圧電体層123の出力電極層122側表面近傍には負電荷が集まり、第2の圧電体層123のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0062】
なお、第1の圧電体層121および第2の圧電体層123の構成材料としては、水晶、トパーズ、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O
3)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等が挙げられる。これらの中でも特に、水晶が好ましい。水晶により構成された圧電体層は、広いダイナミックレンジ、高い剛性、高い固有振動数、高い対荷重性等の優れた特性を有するためである。
また、第1の圧電体層121および第2の圧電体層123のように、層の面方向に垂直な外力(圧縮/引張力)に対して電荷を生ずる圧電体層は、本実施形態では、Xカット水晶板(X板)により構成されている。
【0063】
出力電極層122は、第1の圧電体層121内および第2の圧電体層123内に生じた正電荷または負電荷を電荷Qbとして出力する機能を有する。前述のように、第1の圧電体層121の表面または第2の圧電体層123の表面にA軸に平行な圧縮力が加えられた場合、出力電極層122近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層122からは、正の電荷Qbが出力される。一方、第1の圧電体層121の表面または第2の圧電体層123の表面にA軸に平行な引張力が加えられた場合、出力電極層122近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層122からは、負の電荷Qbが出力される。
【0064】
第2のセンサー13は、B軸に沿って加えられた(受けた)外力(せん断力)に応じて電荷Qbを出力する機能を有する。第2のセンサー13は、B軸の正方向に沿って加えられた外力に応じて正電荷を出力し、B軸の負方向に沿って加えられた外力に応じて負電荷を出力するよう構成されている。
第2のセンサー13は、第3の圧電体層(第2の圧電板)131と、第3の圧電体層131と対向して設けられた第4の圧電体層(第2の圧電板)133と、第3の圧電体層131と第4の圧電体層133との間に設けられ、電荷Qbを出力する出力電極層132を有する。
【0065】
第3の圧電体層131は、互いに直交する3つの結晶軸であるx軸、y軸およびz軸を有している。第3の圧電体層131では、x軸方向とB軸方向とが一致しており、y軸方向とA軸方向とが一致しており、z軸方向とC軸方向とが一致している。
第3の圧電体層131の表面に対し、B軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第3の圧電体層131内に電荷が誘起される。その結果、第3の圧電体層131の出力電極層132側表面近傍には正電荷が集まり、第3の圧電体層131のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第3の圧電体層131の表面に対し、B軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第3の圧電体層131の出力電極層132側表面近傍には負電荷が集まり、第3の圧電体層131のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0066】
第4の圧電体層133は、第3の圧電体層131と同様の結晶軸を有しており、第3の圧電体層131をC軸回りに180°回転させた状態で配置されている。
第4の圧電体層133の表面に対し、B軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第4の圧電体層133内に電荷が誘起される。その結果、第4の圧電体層133の出力電極層132側表面近傍には正電荷が集まり、第4の圧電体層133のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第4の圧電体層133の表面に対し、B軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第4の圧電体層133の出力電極層132側表面近傍には負電荷が集まり、第4の圧電体層133のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0067】
第3の圧電体層131および第4の圧電体層133の構成材料としては、第1の圧電体層121および第2の圧電体層123と同様の構成材料を用いることができる。また、第3の圧電体層131および第4の圧電体層133のように、層の面方向に沿った外力(せん断力)に対して電荷を生ずる圧電体層は、本実施形態では、Yカット水晶板(Y板)により構成されている。
【0068】
出力電極層132は、第3の圧電体層131内および第4の圧電体層133内に生じた正電荷または負電荷を電荷Qaとして出力する機能を有する。前述のように、第3の圧電体層131の表面または第4の圧電体層133の表面にB軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層132近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層132からは、正の電荷Qaが出力される。一方、第3の圧電体層131の表面または第4の圧電体層133の表面にB軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層132近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層132からは、負の電荷Qaが出力される。
【0069】
第3のセンサー14は、C軸に沿って加えられた(受けた)外力(せん断力)に応じて電荷Qcを出力する機能を有する。第3のセンサー14は、C軸の正方向に沿って加えられた外力に応じて正電荷を出力し、C軸の負方向に沿って加えられた外力に応じて負電荷を出力するよう構成されている。
第3のセンサー14は、第5の圧電体層(第3の圧電板)141と、第5の圧電体層141と対向して設けられた第6の圧電体層(第3の圧電板)143と、第5の圧電体層141と第6の圧電体層143との間に設けられ、電荷Qを出力する出力電極層142を有する。
【0070】
第5の圧電体層141は互いに直交する3つの結晶軸であるx軸、y軸およびz軸を有している。第5の圧電体層141では、x軸方向とC軸方向とが一致しており、y軸方向とA軸方向とが一致しており、z軸方向とB軸方向とが一致している。
第5の圧電体層141の表面に対し、C軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第5の圧電体層141内に電荷が誘起される。その結果、第5の圧電体層141の出力電極層142側表面近傍には正電荷が集まり、第5の圧電体層141のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第5の圧電体層141の表面に対し、C軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第5の圧電体層141の出力電極層142側表面近傍には負電荷が集まり、第5の圧電体層141のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0071】
第6の圧電体層143は、第5の圧電体層141と同様の結晶軸を有しており、第5の圧電体層141をB軸回りに180°回転させた状態で配置されている。
第6の圧電体層143の表面に対し、C軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第6の圧電体層143内に電荷が誘起される。その結果、第6の圧電体層143の出力電極層142側表面近傍には正電荷が集まり、第6の圧電体層143のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第6の圧電体層143の表面に対し、C軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第6の圧電体層143の出力電極層142側表面近傍には負電荷が集まり、第6の圧電体層143のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0072】
また、第5の圧電体層141および第6の圧電体層143のように、層の面方向に沿った外力(せん断力)に対して電荷を生ずる圧電体層は、本実施形態では、Yカット水晶により構成されている。なお、第5の圧電体層141は第3の圧電体層131をA軸回りに90°転回させた(ずれた)状態で配置されており、第6の圧電体層143は、第4の圧電体層133をA軸回りに90°回転させた状態で配置されている。
【0073】
出力電極層142は、第5の圧電体層141内および第6の圧電体層143内に生じた正電荷または負電荷を電荷Qcとして出力する機能を有する。前述のように、第5の圧電体層141の表面または第6の圧電体層143の表面にC軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層142近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層142からは、正の電荷Qcが出力される。一方、第5の圧電体層141の表面または第6の圧電体層143の表面にC軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層142近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層142からは、負の電荷Qcが出力される。
【0074】
このように、第1のセンサー12、第2のセンサー13、および第3のセンサー14は、各センサーの力検出方向が互いに直交するように積層されている。これにより、各センサーは、それぞれ、互いに直交する力成分に応じて電荷を誘起することができる。そのため、電荷出力素子10は、3軸(A軸、B軸、C軸)に沿った外力(ひずみ)のそれぞれに応じて3つの電荷Qa、Qb、Qcを出力することができる。
【0075】
また、各センサー12、13、14では、圧電体層が2枚ずつ、互いにB軸またはC軸回りに180°回転させた状態で配置されている。これにより、2枚の圧電体層のいずれか一方のみと、出力電極層によって各センサーを構成する場合と比較して、出力電極層近傍に集まる正電荷または負電荷を増加させることができる。その結果、出力電極層から出力される電荷Qを増加させることができる。
【0076】
さて、各圧電体層121、123、131、133、141、143では、x軸方向、y軸方向およびz軸方向の熱膨張係数が異なっている。各圧電体層121、123、131、133、141、143では、x軸方向の熱膨張係数とy軸方向の熱膨張係数が同じであり、z軸方向の熱膨張係数がx軸方向の熱膨張係数およびy軸方向の熱膨張係数よりも小さい。
図5に示すように、各圧電体層121、123、131、133、141、143では、x軸方向の熱膨張係数が13.4×10
ー6(1/K)、y軸方向の熱膨張係数が13.4×10
ー6(1/K)、z軸方向の熱膨張係数7.8×10
ー6(1/K)となっている。
【0077】
例えば、
図16に示すように、第6の圧電体層143、第5の圧電体層141、第2の圧電体層123、第1の圧電体層121、第4の圧電体層133、第3の圧電体層131の順にA軸方向に積層した場合には、第2の圧電体層123のy軸方向と、第5の圧電体層141のz軸方向とが、B軸方向に沿って配置されることとなる。なお、第2の圧電体層123のy軸方向の熱膨張係数は13.4×10
ー6(1/K)であり、第5の圧電体層141のz軸方向の熱膨張係数は7.8×10
ー6(1/K)である。
このように、
図16に示す電荷出力素子では、第2の圧電体層123と第5の圧電体層141とは、B軸方向の熱膨張係数が異なっている。このため、
図16に示す電荷出力素子が、例えば、その周辺部の温度変化により、熱膨張または熱収縮した際、第2の圧電体層123と第5の圧電体層141とは、B軸方向の膨張率または収縮率が異なる。
【0078】
前記熱膨張が生じた場合、第2の圧電体層123には、第5の圧電体層141によって、その熱膨張を妨げる方向に力が作用する。その結果、第2の圧電体層123には、B軸方向の圧縮応力が生じる。一方、前記熱収縮が生じた場合、第2の圧電体層123には、第5の圧電体層141によって、その熱収縮を妨げる方向に力が作用する。その結果、第2の圧電体層123には、B軸方向の引張応力が生じる。
【0079】
ここで、第2の圧電体層123は、前述したように、Xカット水晶板で構成されているため、C軸方向からみたとき、6つの頂点にSi原子とO原子とが交互に配置されたような六角形の単位結晶構造を有している(
図17(a)参照)。この単位結晶構造は、第2の圧電体層123では、Si原子とO原子とを結ぶ3つの対角線のうちの1つの対角線が第2の圧電体層123の厚さ方向とほほ平行となるような状態となっている。
【0080】
このような第2の圧電体層123に、前述したB軸方向の圧縮応力が付与されると、
図17(b)に示すように、の単位結晶構造がA軸方向に引き伸ばされる。このため、出力電極層122に近接するO原子が隣り合うSi原子よりもさらに出力電極層122に近づいた状態となり、グランド電極層11に近接するSi原子が隣り合うO原子よりもさらにグランド電極層11に近づいた状態となる。その結果、出力電極層122では、静電誘導により、第2の圧電体層123側に正電荷が集まり、第2の圧電体層123と反対側(第1の圧電体層121側)に負電荷が集まる。よって、出力電極層122からは、負電荷が検出されることとなる。
【0081】
一方、第2の圧電体層123に、前述したB軸方向の引張応力が付与されると、前記とは逆に、単位結晶構造がA軸方向に押しつぶされる(図示せず)。これにより、出力電極層122に近接するO原子が隣り合うSi原子よりも出力電極層122から離れた状態となり、グランド電極層11に近接するSi原子は、隣り合うO原子よりもグランド電極層11から離れた状態となる。その結果、出力電極層122では、静電誘導により、第2の圧電体層123側に負電荷が集まり、第2の圧電体層123と反対側(第1の圧電体層121側)に正電荷が集まる。よって、出力電極層122からは、正電荷が検出されることとなる。
このように、
図16に示す電荷出力素子では、第2の圧電体層123がその周辺部の温度変化の影響により、正電荷または負電荷を検出してしまうおそれがある。
【0082】
このような不具合を解消するために、
図5に示すように、本発明では、第6の圧電体層143、第5の圧電体層141、第4の圧電体層133、第3の圧電体層131、第2の圧電体層123および第1の圧電体層121の順にA軸方向に積層されている。これにより、Xカット水晶板で構成された第2の圧電体層123のy軸方向の熱膨張係数と、Yカット水晶板で構成された第3の圧電体層131のx軸方向の熱膨張係数とが実用上一致する。すなわち、第2の圧電体層123と第3の圧電体層131とのB軸方向の熱膨張係数が実用上一致する。これにより、電荷出力素子10では、その周辺部の温度変化により、膨張または収縮した際、第2の圧電体層123と第3の圧電体層131とは、B軸方向の膨張率または収縮率が実用上一致する。よって、第2の圧電体層123および第3の圧電体層131は、温度変化によって同じだけ膨張または収縮する。その結果、第2の圧電体層123および第3の圧電体層131に圧縮応力または引張応力が発生するのを防止または抑制することができる。したがって、温度変化によって出力電極層122から電荷が出力されるのを抑制または防止することができる。
なお、本明細書中では、「実用上一致」とは、第2の圧電体層123のy軸方向の熱膨張係数と、第3の圧電体層131のx軸方向の熱膨張係数とのずれが、一方の熱膨張係数の0%以上1%以下であることを言う。
【0083】
また、
図5に示すように、第4の圧電体層133のx軸方向の熱膨張係数は13.4×10
ー6(1/K)であり、第5の圧電体層141のz軸方向の熱膨張係数は7.8×10
ー6(1/K)である。すなわち、第4の圧電体層133と第5の圧電体層141とは、B軸方向の熱膨張係数が異なっている。このため、温度変化によって、第4の圧電体層133および第5の圧電体層141には、B軸方向の圧縮応力または引張応力が生じることとなる。
【0084】
しかしながら、第4の圧電体層133および第5の圧電体層141は、Yカット水晶板で構成されている。Yカット水晶板の結晶構造は、例えば、
図6(a)に示す第4の圧電体層133のように、6つの頂点にSi原子とO原子とが交互に配置されたような六角形の単位結晶構造を有している。この単位結晶構造は、第4の圧電体層133では、Si原子とO原子とを結ぶ3つの対角線のうちの1つの対角線が第4の圧電体層133のB軸方向とほほ平行となるような状態となっている。このため、第4の圧電体層133の結晶構造では、Si−O結合がB軸方向に沿って存在しており、このSi−O結合がA軸方向に一対対向して存在している。このような第4の圧電体層133では、
図6(b)に示すように、B軸方向の圧縮応力が生じた場合、六角形の単位結晶構造はB軸方向に押しつぶされる。このとき、各Si−O結合は、B軸方向に平行な姿勢を維持している。このため、第4の圧電体層133では、圧電効果が生じず、出力電極層132からは電荷が生じない。
また、第4の圧電体層133では、B軸方向の引張応力が生じた場合、
図6中上側のSi−O結合が、B軸方向に平行な姿勢を維持する(図示せず)。このため、第4の圧電体層133では、圧電効果が生じず、出力電極層132からは電荷が生じない。
【0085】
さらに、第5の圧電体層141の単位結晶構造は、O原子およびSi原子がz軸(B軸)に螺旋状に巻回された単位結晶構造を有している(図示せず)。このため、B軸方向の圧縮応力が生じた場合、螺旋状の単位結晶構造はB軸方向に押しつぶされる。このとき、螺旋状の単位結晶構造はB軸方向に押しつぶされるだけで、Si原子およびO原子は、実質的にA軸方向に移動しない。その結果、第5の圧電体層141では、圧電効果が生じず、出力電極層142からは電荷が生じない。
【0086】
また、第5の圧電体層141では、B軸方向の引張応力が生じた場合、螺旋状の単位結晶構造はB軸方向に引き伸ばされる。このとき、螺旋状の単位結晶構造はB軸方向に引き伸ばされるだけで、Si原子およびO原子は、実質的にA軸方向に移動しない。その結果、第5の圧電体層141では、圧電効果が生じず、出力電極層142からは電荷が生じない。
【0087】
以上説明したように、本発明では、電荷出力素子10は、Xカット水晶板で構成された第1の圧電板と、Yカット水晶板で構成され、第1の圧電板と前記A軸方向に積層された第2の圧電板と、Yカット水晶板で構成され、第2の圧電板を第1の圧電板との間に挟むように、且つ、A軸回りに転回した配置でA軸方向に積層された第3の圧電板とを、それぞれ2枚ずつ有している。これにより、第1の圧電板と第2の圧電板とB軸方向の熱膨張係数が実用上一致する。よって、第1の圧電板および第2の圧電板に温度変化による熱膨張または熱収縮が生じた場合であっても、電荷が出力されるのを抑制または防止することができる。その結果、信頼性の高い電荷出力素子を得ることができる。
また、本発明によれば、電荷出力素子は、外力を検出する際にも、同様の原理で温度変化による電荷が出力されるのを抑制または防止することができる。このため、電荷出力素子の検出精度をより高めることができる。
【0088】
<第2実施形態>
図7は、本発明の力検出装置(センサー素子)の第2実施形態を示す平面図、
図8は、
図7中のA−A線での断面図、
図9は、
図7に示す力検出装置を概略的に示す回路図である。
以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0089】
図7および
図8に示す第2実施形態の力検出装置1は、外力(モーメントを含む)を検出する機能、すなわち、6軸力(A、B、C軸方向の並進力成分(せん断力)およびA、B、C軸周りの回転力成分(モーメント))を検出する機能を有する。
図7および
図8に示すように、力検出装置1は、センサーデバイス6を4つ、与圧ボルト71を4つ有している。各センサーデバイス6の位置は、特に限定されないが、本実施形態では、各センサーデバイス6、すなわち、各電荷出力素子10は、第1の基板2、第2の基板3、アナログ回路基板4の周方向に沿って、等角度間隔(90°間隔)に配置されている。これにより、偏りなく外力を検出することができる。そして、6軸力を検出することができる。また、本実施形態では、各電荷出力素子10は、全て同じ方向を向いているが、これに限定されるものではない。
【0090】
また、第1の基板2には、各センサーデバイス6に対応するように、4つの凸部21が設けられている。なお、この凸部21については、第1実施形態で説明済みであるので、その説明は省略する。
なお、センサーデバイス6の数は、前記4つに限定されるものではなく、例えば、2つ、3つ、または5つ以上でもよい。但し、センサーデバイス6の数は、複数であることが好ましく、3つ以上であることがより好ましい。なお、力検出装置1は、少なくとも3つのセンサーデバイス6を有していれば、6軸力を検出可能である。センサーデバイス6が3つの場合、センサーデバイス6の数が少ないので、力検出装置1を軽量化することができる。また、センサーデバイス6が図示のように4つの場合、後述する非常に単純な演算によって6軸力を求めることができるので、演算部402を簡略化することができる。
【0091】
<変換出力回路>
図9に示すように、各電荷出力素子10には、それぞれ、変換出力回路90a、90b、90cが接続されている。各変換出力回路90a、90b、90cは、前述した第1実施形態の変換出力回路90と同様であるので、その説明は省略する。
【0092】
<外力検出回路>
外力検出回路40は、各変換出力回路90aから出力される電圧Va1、Va2、Va3、Va4と、各変換出力回路90bから出力される電圧Vb1、Vb2、Vb3、Vb4と、各変換出力回路90cから出力される電圧Vc1、Vc2、Vc3、Vc4とに基づき、加えられた外力を検出する機能を有する。外力検出回路40は、変換出力回路90a、90b、90cに接続されたADコンバーター401と、ADコンバーター401に接続された演算部402とを有する。
【0093】
ADコンバーター401は、電圧Va1、Vc1、Vb1、Va2、Vc2、Vb2、Va3、Vc3、Vb3、Va4、Vc4、Vb4をアナログ信号からデジタル信号へ変換する機能を有する。ADコンバーター401によってデジタル変換された電圧Va1、Vc1、Vb1、Va2、Vc2、Vb2、Va3、Vc3、Vb3、Va4、Vc4、Vb4は、演算部402に入力される。
【0094】
すなわち、第1の基板2および第2の基板3の相対位置が互いにA軸方向にずれる外力が加えられた場合、ADコンバーター401は、電圧Va1、Va2、Va3、Va4を出力する。同様に、第1の基板2および第2の基板3の相対位置が互いにC軸方向にずれる外力が加えられた場合、ADコンバーター401は、電圧Vc1、Vc2、Vc3、Vc4を出力する。また、第1の基板2および第2の基板3の相対位置が互いにB軸方向にずれる外力が加えられた場合、ADコンバーター401は、電圧Vb1、Vb2、Vb3、Vb4を出力する。
また、第1の基板2および第2の基板3は、互いにA軸周りに回転する相対変位、B軸周りに回転する相対変位、およびC軸周りに回転する相対変位が可能であり、各回転に伴う外力を電荷出力素子10に伝達することが可能である。
【0095】
演算部402は、デジタル変換された電圧Va1、Vc1、Vb1、Va2、Vc2、Vb2、Va3、Vc3、Vb3、Va4、Vc4、Vb4に基づき、A軸方向の並進力成分Fa、C軸方向の並進力成分Fc、B軸方向の並進力成分Fb、A軸周りの回転力成分Ma、C軸周りの回転力成分Mc、B軸周りの回転力成分Mbを演算する機能を有する。各力成分は、以下の式により求めることができる。
【0096】
Fa=Va1+Va2+Va3+Va4
Fc=Vc1+Vc2+Vc3+Vc4
Fb=Vb1+Vb2+Vb3+Vb4
Ma=k×(Vb4−Vb2)
Mc=j×(Vb3−Vb1)
Mb=k×(Va2−Va4)+a×(Vc1−Vc3)
ここで、j、kは定数である。
【0097】
このように、力検出装置1は、6軸力を検出することができる。
なお、演算部402は、例えば、各変換出力回路90a、90b、90c間の感度の差をなくす補正等を行うようになっていてもよい。
また、
図7および
図8に示すように、第1の基板2と、第2の基板3とは、4つの与圧ボルト71により、固定されている。なお、与圧ボルト71の数は、4つに限定されず、例えば、2つ、3つ、または、5つ以上であってもよい。
【0098】
また、各与圧ボルト71の位置は、特に限定されないが、本実施形態では、各与圧ボルト71は、第1の基板2、第2の基板3、アナログ回路基板4、デジタル回路基板5の周方向に沿って、等角度間隔(90°間隔)に配置されている。これにより、第1の基板2と第2の基板3とをバランス良く固定することができ、また、各電荷出力素子10にバランス良く与圧を加えることができる。
この力検出装置1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0099】
<単腕ロボットの実施形態>
次に、
図10に基づき、本発明のロボットの実施形態である単腕ロボットを説明する。以下、本実施形態について、前述した第1、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図10は、本発明の力検出装置(センサー素子)を用いた単腕ロボットの1例を示す図である。
図10の単腕ロボット500は、基台510と、アーム520と、アーム520の先端側に設けられたエンドエフェクタ530と、アーム520とエンドエフェクタ530との間に設けられた力検出装置1とを有する。なお、力検出装置1としては、前述した各実施形態と同様のものを用いる。
【0100】
基台510は、アーム520を回動させるための動力を発生させるアクチュエーター(図示せず)およびアクチュエーターを制御する制御部(図示せず)等を収納する機能を有する。また、基台510は、例えば、床、壁、天井、移動可能な台車上などに固定される。
アーム520は、第1のアーム要素521、第2のアーム要素522、第3のアーム要素523、第4のアーム要素524および第5のアーム要素525を有しており、隣り合うアーム同士を回動自在に連結することにより構成されている。アーム520は、制御部の制御によって、各アーム要素の連結部を中心に複合的に回転または屈曲することにより駆動する。
【0101】
エンドエフェクタ530は、対象物を把持する機能を有する。エンドエフェクタ530は、第1の指531および第2の指532を有している。アーム520の駆動によりエンドエフェクタ530が所定の動作位置まで到達した後、第1の指531および第2の指532の離間距離を調整することにより、対象物を把持することができる。
なお、エンドエフェクタ530は、ここでは、ハンドであるが、本発明では、これに限定されるものではない。エンドエフェクタの他の例としては、例えば、部品検査用器具、部品搬送用器具、部品加工用器具、部品組立用器具、測定器等が挙げられる。これは、他の実施形態におけるエンドエフェクタについても同様である。
【0102】
力検出装置1は、エンドエフェクタ530に加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する力を基台510の制御部にフィードバックすることにより、単腕ロボット500は、より精密な作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する力によって、単腕ロボット500は、エンドエフェクタ530の障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行うことができ、単腕ロボット500は、より安全に作業を実行することができる。
なお、図示の構成では、アーム520は、合計5本のアーム要素によって構成されているが、本発明はこれに限られない。アーム520が、1本のアーム要素に構成されている場合、2〜4本のアーム要素によって構成されている場合、6本以上のアーム要素によって構成されている場合も本発明の範囲内である。
【0103】
<複腕ロボットの実施形態>
次に、
図11に基づき、本発明のロボットの実施形態である複腕ロボットを説明する。以下、本実施形態について、前述した第1、第2、第3および第4実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図11は、本発明の力検出装置(センサー素子)を用いた複腕ロボットの1例を示す図である。
図11の複腕ロボット600は、基台610と、第1のアーム620と、第2のアーム630と、第1のアーム620の先端側に設けられた第1のエンドエフェクタ640aと、第2のアーム630の先端側に設けられた第2のエンドエフェクタ640bと、第1のアーム620と第1のエンドエフェクタ640a間および第2のアーム630と第2のエンドエフェクタ640bとの間に設けられた力検出装置1を有する。なお、力検出装置1としては、前述した各実施形態と同様のものを用いる。
【0104】
基台610は、第1のアーム620および第2のアーム630を回動させるための動力を発生させるアクチュエーター(図示せず)およびアクチュエーターを制御する制御部(図示せず)等を収納する機能を有する。また、基台610は、例えば、床、壁、天井、移動可能な台車上などに固定される。
第1のアーム620は、第1のアーム要素621および第2のアーム要素622を回動自在に連結することにより構成されている。第2のアーム630は、第1のアーム要素631および第2のアーム要素632を回動自在に連結することにより構成されている。第1のアーム620および第2のアーム630は、制御部の制御によって、各アーム要素の連結部を中心に複合的に回転または屈曲することにより駆動する。
【0105】
第1、第2のエンドエフェクタ640a、640bは、対象物を把持する機能を有する。第1のエンドエフェクタ640aは、第1の指641aおよび第2の指642aを有している。第2のエンドエフェクタ640bは、第1の指641bおよび第2の指642bを有している。第1のアーム620の駆動により第1のエンドエフェクタ640aが所定の動作位置まで到達した後、第1の指641aおよび第2の指642aの離間距離を調整することにより、対象物を把持することができる。同様に、第2のアーム630の駆動により第2のエンドエフェクタ640bが所定の動作位置まで到達した後、第1の指641bおよび第2の指642bの離間距離を調整することにより、対象物を把持することができる。
【0106】
力検出装置1は第1、第2のエンドエフェクタ640a、640bに加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する力を基台610の制御部にフィードバックすることにより、複腕ロボット600は、より精密に作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する力によって、複腕ロボット600は、第1、第2のエンドエフェクタ640a、640bの障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行うことができ、複腕ロボット600は、より安全に作業を実行することができる。
なお、図示の構成では、アームは合計2本であるが、本発明はこれに限られない。複腕ロボット600が3本以上のアームを有している場合も、本発明の範囲内である。
【0107】
<電子部品検査装置および電子部品搬送装置の実施形態>
次に、
図12、
図13に基づき、本発明の実施形態である電子部品検査装置および電子部品搬送装置を説明する。以下、本実施形態について、前述した第1、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図12は、本発明の力検出装置(センサー素子)を用いた電子部品検査装置および電子部品搬送装置の1例を示す図である。
図13は、本発明の力検出装置(センサー素子)を用いた電子部品搬送装置の1例を示す図である。
【0108】
図12の電子部品検査装置700は、基台710と、基台710の側面に立設された支持台720とを有する。基台710の上面には、検査対象の電子部品711が載置されて搬送される上流側ステージ712uと、検査済みの電子部品711が載置されて搬送される下流側ステージ712dとが設けられている。また、上流側ステージ712uと下流側ステージ712dとの間には、電子部品711の姿勢を確認するための撮像装置713と、電気的特性を検査するために電子部品711がセットされる検査台714とが設けられている。なお、電子部品711の例として、半導体、半導体ウェハー、CLDやOLED等の表示デバイス、水晶デバイス、各種センサー、インクジェットヘッド、各種MEMSデバイス等などが挙げられる。
【0109】
また、支持台720には、基台710の上流側ステージ712uおよび下流側ステージ712dと平行な方向(Y(B)方向)に移動可能にYステージ731が設けられており、Yステージ731からは、基台710に向かう方向(X(C)方向)に腕部732が延設されている。また、腕部732の側面には、X方向に移動可能にXステージ733が設けられている。また、Xステージ733には、撮像カメラ734と、上下方向(Z(A)方向)に移動可能なZステージを内蔵した電子部品搬送装置740が設けられている。また、電子部品搬送装置740の先端側には、電子部品711を把持する把持部741が設けられている。また、電子部品搬送装置740の先端と、把持部741との間には、力検出装置1が設けられている。更に、基台710の前面側には、電子部品検査装置700の全体の動作を制御する制御装置750が設けられている。なお、力検出装置1としては、前述した各実施形態と同様のものを用いる。
【0110】
電子部品検査装置700は、以下のようにして電子部品711の検査を行う。最初に、検査対象の電子部品711は、上流側ステージ712uに載せられて、検査台714の近くまで移動する。次に、Yステージ731およびXステージ733を動かして、上流側ステージ712uに載置された電子部品711の真上の位置まで電子部品搬送装置740を移動させる。このとき、撮像カメラ734を用いて電子部品711の位置を確認することができる。そして、電子部品搬送装置740内に内蔵されたZステージを用いて電子部品搬送装置740を降下させ、把持部741で電子部品711を把持すると、そのまま電子部品搬送装置740を撮像装置713の上に移動させて、撮像装置713を用いて電子部品711の姿勢を確認する。次に、電子部品搬送装置740に内蔵されている微調整機構を用いて電子部品711の姿勢を調整する。そして、電子部品搬送装置740を検査台714の上まで移動させた後、電子部品搬送装置740に内蔵されたZステージを動かして電子部品711を検査台714の上にセットする。電子部品搬送装置740内の微調整機構を用いて電子部品711の姿勢が調整されているので、検査台714の正しい位置に電子部品711をセットすることができる。次に、検査台714を用いて電子部品711の電気的特性検査が終了した後、今度は検査台714から電子部品711を取り上げ、Yステージ731およびXステージ733を動かして、下流側ステージ712d上まで電子部品搬送装置740を移動させ、下流側ステージ712dに電子部品711を置く。最後に、下流側ステージ712dを動かして、検査が終了した電子部品711を所定位置まで搬送する。
【0111】
図13は、力検出装置1を含む電子部品搬送装置740を示す図である。電子部品搬送装置740は、把持部741と、把持部741に接続された6軸力検出装置1と、6軸力検出装置1を介して把持部741に接続された回転軸742と、回転軸742に回転可能に取り付けられた微調整プレート743を有する。また、微調整プレート743は、ガイド機構(図示せず)によってガイドされながら、X方向およびY方向に移動可能である。
【0112】
また、回転軸742の端面に向けて、回転方向用の圧電モーター744θが搭載されており、圧電モーター744θの駆動凸部(図示せず)が回転軸742の端面に押しつけられている。このため、圧電モーター744θを動作させることによって、回転軸742(および把持部741)をθ方向に任意の角度だけ回転させることが可能である。また、微調整プレート743に向けて、X方向用の圧電モーター744xと、Y方向用の圧電モーター744yとが設けられており、それぞれの駆動凸部(図示せず)が微調整プレート743の表面に押しつけられている。このため、圧電モーター744xを動作させることによって、微調整プレート743(および把持部741)をX方向に任意の距離だけ移動させることができ、同様に、圧電モーター744yを動作させることによって、微調整プレート743(および把持部741)をY方向に任意の距離だけ移動させることが可能である。
【0113】
また、力検出装置1は、把持部741に加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する力を制御装置750にフィードバックすることにより、電子部品搬送装置740および電子部品検査装置700は、より精密に作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する力によって、把持部741の障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行うことができ、電子部品搬送装置740および電子部品検査装置700は、より安全な作業を実行可能である。
【0114】
<部品加工装置の実施形態>
次に、
図14に基づき、本発明の部品加工装置の実施形態を説明する。以下、本実施形態について、前述した第1、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図14は、本発明の力検出装置を用いた部品加工装置の1例を示す図である。
図14の部品加工装置800は、基台810と、基台810の上面に起立形成された支柱820と、支柱820の側面に設けられた送り機構830と、送り機構830に昇降可能に取り付けられた工具変位部840と、工具変位部840に接続された力検出装置1と、力検出装置1を介して工具変位部840に装着された工具850を有する。なお、力検出装置1としては、前述した各実施形態と同様のものを用いる。
【0115】
基台810は、被加工部品860を載置し、固定するための台である。支柱820は、送り機構830を固定するための柱である。送り機構830は、工具変位部840を昇降させる機能を有する。送り機構830は、送り用モーター831と、送り用モーター831からの出力に基づいて工具変位部840を昇降させるガイド832を有する。工具変位部840は、工具850に回転、振動等の変位を与える機能を有する。工具変位部840は、変位用モーター841と、変位用モーター841に連結された主軸(図示せず)の先端に設けられた工具取付け部843と、工具変位部840に取り付けられ主軸を保持する保持部842とを有する。工具850は、工具変位部840の工具取付け部843に、力検出装置1を介して取り付けられ、工具変位部840から与えられる変位に応じて被加工部品860を加工するために用いられる。工具850は、特に限定されないが、例えば、レンチ、プラスドライバー、マイナスドライバー、カッター、丸のこ、ニッパ、錐、ドリル、フライス等である。
【0116】
力検出装置1は、工具850に加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する外力を送り用モーター831や変位用モーター841にフィードバックすることにより、部品加工装置800は、より精密に部品加工作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する外力によって、工具850の障害物への接触等を検知することができる。そのため、工具850に障害物等が接触した場合に緊急停止することができ、部品加工装置800は、より安全な部品加工作業を実行可能である。
【0117】
<移動体の実施形態>
次に、
図15に基づき、本発明の移動体の実施形態を説明する。以下、本実施形態について、前述した第1、第2および第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図15は、本発明の力検出装置(センサー素子)を用いた移動体の1例を示す図である。
図15の移動体900は、与えられた動力により移動することができる。移動体900は、特に限定されないが、例えば、自動車、バイク、飛行機、船、電車等の乗り物、2足歩行ロボット、車輪移動ロボット等のロボット等である。
【0118】
移動体900は、本体910(例えば、乗り物の筐体、ロボットのメインボデー等)と、本体910を移動させるための動力を供給する動力部920と、本体910の移動により発生する外力を検出する本発明の力検出装置1と、制御部930を有する。なお、力検出装置1としては、前述した各実施形態と同様のものを用いる。
動力部920から供給された動力によって本体910が移動すると、移動に伴い振動や加速度等が生じる。力検出装置1は、移動に伴い生じた振動や加速度等による外力を検出する。力検出装置1によって検出された外力は、制御部930に伝達される。制御部930は、力検出装置1から伝達された外力に応じて動力部920等を制御することにより、姿勢制御、振動制御および加速制御等の制御を実行することができる。
【0119】
以上、本発明のセンサー素子、力検出装置、ロボット、電子部品搬送装置、電子部品検査装置および部品加工装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明は、前記実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0120】
また、本発明では、パッケージ、が省略されていてもよい。
また、本発明では、素子は、第1の基板の平面視で、第1の凸部からはみ出していてもよい。
また、本発明では、素子は、第1の基板の平面視で、第2の凸部からはみ出していてもよい。
【0121】
また、本発明では、与圧ボルトに替えて、例えば、素子に与圧を加える機能を有してないものを用いてもよく、また、ボルト以外の固定方法を採用してもよい。
また、本発明のロボットは、アームを有していれば、アーム型ロボット(ロボットアーム)に限定されず、他の形式のロボット、例えば、スカラーロボット、脚式歩行(走行)ロボット等であってもよい。
また、本発明の力検出装置(センサー素子)は、ロボット、電子部品搬送装置、電子部品検査装置および部品加工装置に限らず、他の装置、例えば、他の搬送装置、他の検査装置、振動計、加速度計、重力計、動力計、地震計、傾斜計等の測定装置、入力装置等にも適用することができる。